本発明は、気液接触器および排気洗浄システムおよび方法に係り、より詳しくは、気体からの擾乱を最小限に抑えることのできる形状を有する均一間隔の複数のフラット液体ジェットを生成するノズルアレイに係る。さらに、様々な実施形態は、モジュールに集積された複数の小型の単一ユニット処理を提供し、これらの設計は従来の設計の欠点を克服したものである。単一ユニット処理をモジュール化することにより、モジュールに単に便利な整数を乗算することで小さなシステムを拡大して、処理のスケールに対応できるようになる。
さらに、薄型のフラット液体ジェットを生成することのできる単一気液接触器は、非常に小型である設計の気流率の範囲内で行われる1または複数のモジュールに乗算および集積することができ、これは均等物である反応装置の歩留まりにおいて従来の逆流反応装置よりも格段に小型である。1または複数のモジュールへの集積は、直列または並列いずれで行われてもよい。
直列の実施形態では、モジュールを1つずつ順次各モジュールを流れる気体と組み合わせる。もちろんモジュールのなかには、バイパスされる、または再循環するループを有するものがある。さらにモジュールは、気体分子の捕捉およびシーケンスの対象となる反応の所望の選択性に応じて、同じ液相で実行されたり、異なる液相で実行されたりする。
並列の実施形態では、モジュールは、互いの次または互いの上に含められ、同じ気体供給の全ての処理または洗浄が行われるよう、またここで各モジュールが隣接するモジュールと略均等な気体または気体分子量で処理するようにする。概して、並列のモジュールは、各々に対する処理が隣接するモジュールのものと同時に行われることから、互いに同一の液相で実行を行う。
本発明の一実施形態は、この単一のモジュールの設計標準よりも高い気流率または小さい質量移動係数に対応することを目的とし、モジュール自身は、便利な整数のユニットで乗算されて、対象プロセスの形式を重複する複数のシステムに分割することなく、より長い接触時間を有するより大きな機能モジュールとすることができる。さらに、この設計ロジックは、化学プロセッサの他のサブモジュール(例えば液体捕捉システムおよび液体配送システム)に拡張されてよく、これら全てが単一の気流の主流プレナムおよび単一の液体処理段階に対応している。資本が多くかかる機器(例えば気流および/または液流システムからのポンプおよびブロワー)は、直線的にスケールされて、増加したモジュールを供給することができ、これらモジュールの固有の設計は、互いに連結されることで、非常に小型な設計における機能的に単一の処理を形成する。
本発明の別の実施形態では、モジュールは、液体ジェット(例えば薄型のフラットジェット)を利用することで非常に高い率で液相を流す(force)ことができ、これにより質量移動を生じさせる重力または浮力に対する依存をなくさせる。液体は、非常に高い率で流れることがあり、気相は同じベクトル沿いに、あるいは流れと逆の流れ方向に、横方向にも非常に高速に流れることがある。全ての流れは高速であるので、流れの方向は、重力または熱対流による制約ではなくて、設計の都合により選択することができる。さらに、質量移動および体積移動係数は非常に高く、接触する長さは、ここでも、モジュール的にスケーリングが可能であり、負荷および反応歩留まりの両方に対応することができる。
本発明の別の実施形態では、気液接触器は、気体反応物質について選択的且つ高い質量移動率を、高い体積の気体の流速から、小さなシステム体積に制約される継続して充填される気体の流速へと達成するよう構成される。さらに、本発明の様々な方法では、大きく且つ密度の高い充填された高速の安定した液体ジェット(例えば薄型のフラット液体ジェット)を、高速気流と相互作用させる。ジェットを形成するオリフィスおよび密度を、液体溶媒または粘度および表面張力といった反応特性に基づいて最適化することができる。概して、チャンバサイズまたは処理スケール全体を考慮しない場合には、液体粘度が増加すると、液体ジェットの安定性も向上する。従ってノズルアレイのノズル密度は、ノズルのサイズが減少すると増加する。これは必須ではないが、ジェット対ジェットの間隔を低減させ、接触器の比表面積を増加させ最適化する目的からは望ましいと考えられる。これに対して、低い表面エネルギーは、ジェットを不安定にする傾向にあり、幾つかの条件において小さな液滴の形成につながり、これは本発明では望ましくないが、現在の技術水準では普通に見られる。低い表面エネルギーの場合、液圧を下げて、ノズルサイズを大きくすることで、任意の流体についてジェット特性を最適にすることができる可能性がある。
本発明の一実施形態では、従来の方法およびシステムに比して、気体反応物および液体反応物の処理の効率性が高まる。方法およびシステムの効率は、大きな体積質量移動係数および結果生じる小さなサイズ、液体ジェットの低耐性および設計のモジュール化され組み合わせられた性質によるシステムにおける最小のポンプ機能を要する低圧溶媒処理により達成される。従って、本発明の実施形態は予期しない結果を達成するが、その一例は、従来の気液接触器の少なくとも半分未満の資本コストで、従来の反応装置と比して、少なくとも10倍も小さいフットプリント且つ略均一の性能が達成される、というものである。
本発明の一実施形態は、気液接触モジュールに関する。気液接触モジュールは、液体の入口および出口、並びに、気体の入口および出口を含む。モジュールはさらに、液体の入口および気体の入口と連通するノズルアレイを含み、ノズルアレイは、気体からの擾乱を最小限に抑えることのできる形状を有する均一間隔の複数のフラット液体ジェットを生成する。モジュールはさらに、液体を通過させ、同時に、気体の通過を防ぐ気液分離器を含む。モジュールは他のモジュールと直列および並列に接続することができる。
モジュールは、複数の異なる材料(例えば銅、ニッケル、クロム、鋼、アルミニウム、被覆金属、およびこれらの組み合わせ)から製造可能である。加えて、モジュールは、プラスチック材料、または構造ポリマー、ポリイミド、これらの化合物、組み合わせの少なくとも1つを含んでよい。
ノズルアレイは、複数の異なる構成(例えば千鳥構成)で形成可能である。ある千鳥構成では、第1のノズル行、第2のノズル行、および第3のノズル行が、第2のノズル行がオフセットされて、第1のノズル行と第3のノズル行との間に位置するように構成される。
ノズルアレイはさらに、所定の間隔を有する複数のノズルを含んでよい。ノズルは、約0.2cmを超える距離で分離された少なくとも2つのノズルを含んでよい。ノズルは任意の数の行および列を含んでよい。好適な実施形態では、少なくとも3つのノズル行が均一の距離をおいて配置および分離されている。ノズル間の距離は、約0.1cmから約5.0cmの範囲である。
ノズルは、複数の異なる幾何学形状を有する液体チャネル(例えばU形状チャネル、V形状チャネル、等)から形成されてよい。チャネルは、様々な方法を用いて形成可能である(方法には、マシニングあるいは金属、化合物、セラミック板の形成方法、または、ノズルオリフィスを管状に、または管の一部の形状にマシニングする方法を含むが、これらに限定はされない)。単一の板をマシニングする場合、UまたはU形状のチャネルを板の液体側にマシニングされる。次いでこれらチャネルの板の処理側は、第2のV形状の溝により分岐され、その深さが液体チャネル空間を貫く。第2の溝の深さに応じて、液体チャネルと処理側のチャネルとの間の交差点に形成される孔またはノズルのサイズが異なってくる。
交差点で貫通するレベルが高いほど、より大きなノズルが形成される。つまり、円錐の交差点でVまたはU形状のチャネルとなる量に応じて大きなノズルが生じる。管状のノズルを形成する場合には、正接の切断点は、半径の外側における(処理側の)管の半径の軸に対して約90度の角度をもって形成される。ノズルを供給する液体チャネルは、約2mmを超える深さを有する。本発明の実施形態では、チャネルの深さは約2mmから約20mmの範囲であってよい。
別の実施形態では、ノズルの形状が、長軸と短軸との間の比率が0.5未満の略長円形状であってよい。他の実施形態では、ノズルは、約0.25mm2から約20mm2の範囲の投影横断面積を有してよい。投影横断面積は、バッ冷却器イトで二次元面に投影してみたノズルの二次元形状の位置の立面図により決定されるが、実際の形状は、切断点の深さおよび半径の両方、および/または、チャネルの曲率の形状に基づいて三次元且つ複雑なものとなることは言うまでもない。
本発明の別の実施形態は、気液接触器により気相分子を処理する方法に係る。本方法は、複数の略平面である液体ジェットを形成することを含み、これら液体ジェットの各々が平面液体シートに形成される。複数の液体ジェットは、互いに略平行な平面に配置される。この方法は、さらに、少なくとも1つの反応性または可溶性の気相分子を有する気体を提供する。
本実施形態では、気相分子と液体ジェットとの間の質量移動に関する相互関係により、気相分子の少なくとも一部分を取り除く。気相分子は、例えば石炭火力発電所からの工業排気、または、汚染物質、汚染物等のその他の工業排気(例えばSOx、NOx、CO2、Hg)およびこれらの組み合わせを含みうる。もちろん、HCl、HBr、HF、H2SO4、HNO3等の酸性ガス、CO、H2S、アミン(アンモニアを含む)、アルカノールアミン、尿素、ホルムアミド、アルコール、カルボン酸塩(酢酸等)、これらの組み合わせおよび幅広い様々な他の気相分子等の他の気体分子を取り除くこともできる。本発明の限定は、反応性または可溶性である範囲の気相分子反応物または溶質、および液相を提供するという機能のみである。本発明の明細書の主な記載は水溶液系を対象としているが、当業者であれば本気液接触器の発明を非水溶液系にも適用可能であることを容易に理解する。例えば医薬品の部分的なフッ素化または石油化学製品の供給原料の塩素化が公知である。
本発明の一実施形態では、液体は、公知である気体に含まれる汚染物質を除去するよう選択されてよい。基礎水溶液は、SO2その他の燃焼排ガスの構成物を取り除くのに利用されてよい(例えば、約0.1Mから約1.0のNaOH、NH4HCO3、Na2SO3等を含む溶液)。公知であるが、これら液体反応物の濃度は、気液の相互作用の質量移動および好適な生成物に応じて調節が可能である。
加えて、液体の幾らかの例には、水、アンモニア、アンモニウム塩、アミン、アルカノールアミン、アルカリ塩、アルカリ土類塩、過酸化物、次亜塩素塩酸、カルシウム塩、マグネシウム、およびこれらの組み合わせのうち少なくとも1つの水溶液が含まれてよい。他の水溶液には、海水、塩水、これらの組み合わせ等が含まれてよい。
海水または塩水は、pH制御その他の技術的要素に基づいて、SO2またはCO2、またはこれら両方を洗浄するときに利用可能である。加えて、これら液体も、HClまたはHF等の他の酸性ガスを洗浄するときに有効である。
方法により少なくとも1つのジェットが形成される。ジェットは、様々な物理的寸法を有してよい。例えば、ジェットは5cmおよび20cmの範囲の長さ、1cmから15cmのジェット幅、10μmから1000μmの間のジェット厚みを有してよい。さらに、ジェットの長さ対幅の比率が、0.3から20の範囲であってよい。
本発明の別の実施形態として、複数の組み合わせられたサブシステムを含む気液接触システムが提供される。これら組み合わせられたサブシステムは、反応チャンバ、反応チャンバに連結された気体の入口、反応チャンバに連結された気体の出口、反応チャンバに連結された液体プレナム、液体プレナムに連結されたノズルアレイ、および反応チャンバに連結された気液分離器を含む。ノズルアレイに関しては、ノズルアレイは実質的に平面状の液体ジェットを提供するよう構成される。さらに、各液体ジェットは平面の液体シートを含み、複数の液体ジェットが、それぞれ互いに実質的に平行な面に存在するように配置される。
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、その例を添付図面に示している。
図1は、本発明の一実施形態におけるフラットジェットを生成するシステムのブロック図である。図1を参照すると、システム0は、高密度で表面積の大きい液体ジェット(例えば薄型のフラット液体ジェット)を生成するためのフラットジェットオリフィスアレイを含む。本実施形態では、単一のプレートからノズルアレイの小さなセグメントをマシニングして形成する。これにより、V形状の液体チャネルを示すが、本例では、処理側のオリフィスは、溝の反対側に円錐を有するV液体チャネルと交差する。しかし、結果生成されるノズルオリフィスは依然として楕円形状である。ノズルアレイが含むオリフィスは、互いに距離を保って離れているような千鳥構成である。この距離はx方向に約0.1cmから約5cmという範囲であり、y方向に約2mmであってよい。好適な実施形態では、この距離はx方向に2cmであり、y方向に2mmである。もちろんオリフィス間の距離は、オリフィスアレイ全体にわたり一定である必要はない。
オリフィスは、V形状の入口1、および円錐形でありジェットへと繋がる出口2チャネルを有する。入口1と出口2チャネルの相互作用によりオリフィスが形成される。ノズル板3の横断面図は、入口4および出口5チャネルの輪郭を示す。オリフィスを出るジェットの概略を7に示す。入口8および出口9チャネルの横断面を拡大した図を提供している。薄型のフラット液体ジェットが、可変長で形成されてよい(例えば、ジェット長さ対ジェット幅の比率が、約10:1であり、ジェットが約10μmから約100μmの範囲の厚みを有してよい)。ジェット長さは、約5cmから約20cmの範囲であってよい。ジェット幅は、約0.5cmから約20cmの範囲であってよい。
図2は、本発明の別の実施形態における励起酸素を生成するシステムのブロック図である。COILは比面積が大きい液体(例えば塩基性過酸化水素)を生成する機能を有する本発明の一実施形態におけるノズルアレイを利用するので、先行技術である設計よりも効率的であり、重量が少なく、小型である。図2ではCOILは参照番号10で表されている。COIL10は、励起酸素を生成するときに利用される。COIL10は、マニホルド14に取り付けられた気体反応物源12(例えば塩素ガス)を含む。マニホルド14は、励起酸素生成チャンバ20に気体ジェットを挿入させる孔(不図示)等の複数の開口を有する。COIL10は、さらに、液体反応物22の源(例えば、単一の塩基(single base)で形成される塩基性過酸化水素)を有する。一実施形態では、単一の塩基は、水酸化カリウム(KOH)である。塩基性過酸化水素22の源は、パイプ224により複数のノズル26に連結される。ノズル26は、液体の塩基性過酸化水素用の薄型フラットジェット28を形成するよう構成される。過酸化水素22用の薄型フラットジェット28は、塩素ガス用のジェットと反応して、励起酸素32を生成する。COIL10は、さらに、塩基性過酸化水素を再利用のために収集する方法(例えばリサイクルループ)を含んでよい。
液体ジェットの利用により、過酸化水素22の比表面積が増加して、塩素ガス12との反応効率が上昇する。薄型フラット液体ジェットの比表面積は関連技術の円形ジェットのものの3倍を超える値であることが試験で証明されている。過酸化水素の表面積が増えることに加えて、フラットジェットは、先行技術のノズルが必要とする小さい喉部を必要としない。より詳しくは、先行技術のノズルは、約150μmから約350μmの範囲の喉部のサイズを有していた。ノズル26は、約250μmより大きい喉部を利用することができ、より好適には、600μmを超える喉部を利用することができる。従って、ノズル26では、汚染物質(たとえば過酸化水素と塩素ガスとの反応により生じる塩)が詰まるという可能性が少ない。加えて、これによりシステム10が、初期モル濃度が高い塩基性過酸化水素溶液(例えば、約10モル/Lという高いモル濃度)を利用することができるようになる。先行技術のシステムでは概して、システムに塩等の汚染物質が詰まることから、初期モル濃度を5モル/Lに制限していた。殆どのシステムは過酸化水素を再利用するが、ひとたびモル濃度が約2.5モル/Lに下降するとシステムの性能は顕著に劣化する。この結果、殆どの先行技術のシステムでは、モル濃度の差分を約2.5モル/Lから約5モル/Lの範囲に制限していたが、本実施形態では、モル濃度の差分を約2.5モル/Lから約10モル/Lの範囲とすることができる。従って装置は、先行技術のシステムの1/3の塩基性過酸化水素を搬送して、3倍の容量を有することが可能となる。
別の実施形態では、COILは、過酸化水素源の入口およびアルカリ源(Li、Na、K)およびアルカリ土類(Mg、Ca)次亜塩素酸塩用のフラットジェットノズルを有する励起酸素生成チャンバを含む。過酸化水素は気体である。ノズルは、約300μmを超える長さであり比表面積の大きい薄型フラットジェットを生成することのできる最小サイズの複数のオリフィスを有する。励起酸素生成チャンバおよびヨウ素用の入口に連結された通路を有する光子生成チャンバが設けられる。
図3は、本発明の別の実施形態における向上した化学酸素ヨウ素レーザのブロック図である。図3では、向上したCOILは概して参照番号50で示されている。COIL50は気体(例えば導管またはパイプ54により複数の入口を介して励起酸素生成チャンバ56に物理的に連結された塩素ガス)の源52を有する。液体反応物源58(例えば塩基性過酸化水素58)をパイプ60からフラットジェットノズルアレイ62に輸送する。ノズル62により、液体の塩基性過酸化水素58が塩素ガス52と混合される。この反応により、一重項デルタ酸素を含む励起酸素64が生成される。励起酸素64は、光子生成チャンバ66に輸送される。ヨウ素源68は、光子生成チャンバ66の入口70に連結される。ヨウ素源68は励起酸素64を崩壊させ、光子を放出する。光子生成チャンバ66は、レージング72に励起酸素の流れに垂直な出力を与えるミラーを有する。消費される酸素74は光子生成チャンバ66を出る。レーザ50は、再利用目的に塩基性過酸化水素を再生するシステムを含んでよい。COIL50は、過酸化水素の表面積を増やし、塩基性過酸化水素の初期モル濃度を上げるためにノズルアレイ62を利用する。この結果、COIL50はより効率的なものとなり、先行技術のシステムよりも小型および軽量を達成する、あるいは、レーザ発射容量を増加させることができる。
図4は、本発明の一実施形態におけるフラットジェットノズルの一実施形態の上面右側透視図である。図4においてノズル80は、一対の対向する板86の第1端部84に頂点83を取り付けるV形状のチャンバ82を有する。一対の対向する板86の第2端部88は円錐形のノズル90に取り付けられる。液体(例えば塩基性過酸化水素)は、V形状の液体供給チャネルまたはチャンバ82に流れ込み、一対の対向する板86の間を強い勢いで流れた(force)後にノズル90へ出て、フラット液体ジェット94を形成する。ノズル面積に応じて、ジェット流量および速度、ジェットの厚み96は、約5μmから約100μmの範囲であってよく、幅98は1cmから約5cmの範囲であってよい。
本実施形態では、幅の厚みに対する比率は、係数10より大幅に大きい。例えば、約10m/sのジェット速度においては、フラットジェットストリームの長さは、約15センチメートルあるいはそれ以上の長さであってよい。一番狭い通路100は、円錐形のノズル90が、一対の対向する平面板86と合流する箇所であり、約600μmを越える。このノズル80により、液体(例えば塩基性過酸化水素)の表面積が大きくなり、これにより、塩基性過酸化水素と塩素との間の反応効率は格段に上がる。さらに、ジェット表面積が大きく、このノズル80のジェット厚みが小さいことにより、約10cm−1から約20cm−1の範囲という非常に大きな比表面積が生成され、生成器の体積を小さくして、レーザキャビティに供給される励起酸素の歩留まりを高くする。加えて、ノズル80は、汚染物質(例えば、塩素と塩基性過酸化水素とが反応することで生じる塩)が詰まりやすい小さな喉部あるいは通路を必要としないので、システムでは、より高い初期モル濃度の塩基性過酸化水素の利用が可能となる。
図5は、図4のフラットジェットノズルの底面左側透視図である。図5のフラットジェットノズル80は、一対の対向する平面板86の第2端部に取り付けることのできる複数の円錐形のノズルを含む。一対の対向する平面板86の第2端部からの唯一の出口が円錐形のノズルを通る。本記載は、COILの用途に着目したものとなっているが、これらの実施形態は、いずれの2相反応装置または接触システムにも適用可能である点に留意されたい。この2相反応装置システムは、気相反応物質と液相反応物質との間の相互作用を格段に増加させる。この結果、反応は、先行技術による2相反応装置の設計のものよりも、大幅に効率的なものとなる。
これまで、同様の容量を有する先行技術のCOILレーザより軽量、小型、且つ効率的であるCOILについて記載してきた。これにより、レーザは、より小型の輸送システムで利用可能となる、または、現在の輸送システムの容量を増加させることができる。
<排気接触システムおよび方法>
上述したように、システム0は、薄型で高密度、且つ表面積の多いフラットジェットを生成するノズルアレイを提供する。システム0をCOILと利用する点から説明した。代替的な実施形態では、システム0の原理の多くを汚染物質軽減システムおよび方法に適用する。一実施形態における汚染物質軽減システムおよび方法は気液接触器を含む。気液接触器は、複数のノズル板を含む。本実施形態では、各ノズル板が図6から図17に示す複数のノズルを含み、複数のノズル1010がノズルアレイを形成する。
汚染物質軽減システムおよび方法について、先ずは固有の発明におけるノズル1010を、次に、ノズル板および固有のノズル配置を、気液反応装置の構成を、汚染物質軽減システムおよび方法全体の構成を、最後に様々な汚染物質に関するシステムの実装例について、底面を上にした概略図を参照して説明する。汚染物質軽減システムおよび方法のサブコンポーネントが、汚染物質軽減システムおよび方法に関するものを超えて数多くの用途に利用可能であることは、以下の記載から明らかである。
<ノズル>
上述したように、システム0に関して過酸化水素のフラットジェットを供給するオリフィスを説明する。オリフィスは、V形状の入口1と円錐形の出口2チャネルとをジェット形成目的に有する。入口1と出口2チャネルとの交差点がオリフィスを形成する。ノズル板の横断面図は、入口3および出口4チャネルの輪郭を示す。オリフィスを出るジェットの概略を5に示す。入口6および出口7チャネルの横断面を拡大した図を提供している。ジェット長さ対ジェット幅の比率は、約10:1であり、厚みは、約10μmから約100μmの範囲である。
反応物質またはソーベントの表面積の増加に加えて、フラットジェットは、関連技術のノズルが要する小さな喉部を必要としない。前にも説明したように、関連技術のノズルは、最大で約150μmから約350μmの範囲の喉のサイズを有する。これと対照的に、本発明の実施形態は、フラットジェットノズルが、小さなノズルのサイズに比して、約250μmあるいはそれ以上大きい喉部を有してよい。例えば、フラットジェットノズルは、約250μmから2000μmの範囲の喉部を有してよい。従って、本発明の実施形態のノズルは、汚染物質(例えば液体のソーベントと気体との反応により形成される塩)により詰まりが生じる可能性が低く、これにより、本発明のシステムはロバストなものとなる。さらに、反応物質の初期モル濃度を上げてもよくなり、さらにはより細かい溶媒スラリーを利用することができるようになる。約10モル/Lといった高いモル濃度を利用することができるようになるが、先行技術のシステムでは一般的に、塩および/または固体の副産物または沈殿物の詰まりのせいで、初期モル濃度が約5モル/Lに制限されていた。殆どのシステムが液体のソーベントまたは反応物質を再利用するが、モル濃度はひとたび大幅に降下すると、システムの性能は大幅に劣化する。本発明の実施形態では、ソーベントまたは反応物質の液体を、簡単な濃度の監視および反応物質を適切に液体システム内に滴定することで容易に補充することができる。
図8から図13に示すノズル1010は、上述した円錐形のノズル90に類似している。例えば類似点は、生成されるノズルの切れ目を、近似される円錐とU形状のチャネルとの間の交差点として示すことができ、もっともこれは円錐形状のマシニングツールビットを利用する方法ではない方法で製造される。ノズル1010は、液体が流れるときにフラットジェットを生成し、気液接触システムにおける気体からの擾乱を最小限に抑えることのできる形状を有する均一間隔の複数のフラット液体ジェットを生成する構成を有する。栓流特性を有するフラットジェットも生成できる。最初に生成されるフラットジェットは、乱流特性が非常に低く、フラットジェットの特性を大幅な長さ維持することができる。
図6は、ノズルバンクの前駆体の一実施形態の横断面図である。図7は、図6に示すノズルバンクの前駆体の側面図である。図6から図8を参照すると、前駆体ロッド1012が、ノズル1010およびノズルバンク1011を形成するのに利用される。ロッド1012は、様々な寸法を有し、概して、パイプ半分を平坦にした形状に類似している。前駆体の材料は、複数の異なる幾何学的形状をとることができる(例えば楕円形、長円形、半円形)。
ロッド1012は、シェルロッドの厚み1015、ロッドの直線高さ1016、およびロッドの全高さ1017を有する。本発明の実施形態では、シェルロッドの厚み1015は、約0.015インチから約0.055インチの範囲であってよく、ロッドの直線高さ1016は、約0.05インチから約0.75インチの範囲であってよく、ロッドの全高さ1017は約0.25インチから約0.95インチの範囲であってよい。好適な実施形態のロッドのシェルロッドの厚み1015は約0.035インチであり、ロッド幅1014の最大計測値が約0.323インチであり、ロッドの直線高さ1016が約0.10インチであり、ロッドの全高さ1017が約0.31インチであり、ロッド長1018が約7.470インチであってよい。全幅1014は約0.323インチであり、ノズル端部1019は、図9で示されるように、ノズルバンク1011の端部から約0.035インチのところから始まっている。
本実施形態のノズルバンク1011を作成するプロシージャは以下の通りである。ノズルバンク1011はプログレッシブダイを利用して形成される。ダイを切断する第1段階で、適切なサイズの矩形の金属片が形成される。ダイの材料としては、単一の金属または合金(例えばステンレス鋼)が利用されてよい。加えて、金属の選択は、利用される液体化学物質およびその腐食性および反応性に応じて行うことができるので、銅、ニッケル、クロム、アルミニウム、またはこれらの金属を含む合金を含む他の金属を選択することもできる。
第2段階では、図6および図7の特定の幾何学的形状を形成する。ロッド1012は、デバリングされ、鋭角な端部または隅部がなくされると好適である。次いで、複数のノズル1010を、ノズル1010をロッド1012内に整合させることで形成する。好適な実施形態では、ノズル1010は、電気放電加工機(EDM)を利用して形成される。例えばロッド1012は、固定具に取り付けられて、製造EDMに入れられ、ノズルをロッド1012へと形成する(図8から図11参照)。
図12では、エンドキャップ1023がノズルバンク1011に溶接され、ノズルバンク1011が板に溶接されている(図13参照)。溶接は、先行技術として公知な方法で行うことができる(例えばレーザ溶接)。図8から図13ではノズル行1011が、完成したノズル1010を含むものとして示されている。ノズル1010は、約90度の角度で切断されていることが図11から分かる。ノズルの切断深さは、約1mmから約2.5mmの範囲であってよい。好適な実施形態では、ノズル1010の切断深さ1020は約0.058インチである。チャネルの深さは約2mmから20mmの範囲であってよい。
これらのノズルは、中心1021間が均一な距離または不均一な距離となるよう形成されてよい。本発明の実施形態では、中心間の距離は約0.1cmから約5cmの範囲であってよい。好適な実施形態では、ノズルの中心1021間の距離が約0.158インチである。加えて、ノズルバンク1011には任意の数のノズルが存在してよい。好適な実施形態では、ノズルバンク1011には45個のノズルが形成される。加えて、端部空間1022がノズルバンク1011の両端部に形成される。好適な実施形態では、端部空間1022は約0.235インチに形成される。図12は、ノズルエンドキャップ1023を溶接した様子を示す。図13は、ノズルバンク1011を、チャネルのシーム1025に沿って板1024に溶接した様子を示す。本実施形態の構成は、液体体積に比して大きな表面積を提供でき、さらに、低体積の接触器に通常の大気圧で多数のジェットを提供できることから有利である。別の実施形態では、記載してきた溶接の代わりに、チャネルを板に直接マシニングすることができる。加えて、ノズルは、幅の狭い実質的に長円形のスリット(約0.5mm未満の最小寸法、且つ、長さが約50mmを超えるよう)を有してよい。このノズルは、好適な実施形態と比べると液流体積が不要に大きいかもしれないが、表面積の大きい薄型フラット液体シートを形成することはできる。
<ノズル板>
ノズル1010をノズルバンク1011上、または板1024上に配置することで、ノズルが形成する液体ジェットは、小さな容量で密に充填される。流体の流れを予測可能とすることにより、干渉なく、しかも乱流を形成することなくジェットが密に充填される。好適な実施形態の流体の流れは、入ってくる液体の流れが液体のノズル供給チャネルの方向に対して約90度というものである。このときに水流体における最良の液体ジェット特性が生成されることが分かっている(つまり、液体供給チャネルに沿った、または平行の流体の流れでは、結果生じるジェットが流体の流れに沿った方向に変更され、悪影響となる)。これと対照的に、ノズル板1020が形成するジェット層流においては、隣接するストリーム行同士が交差せずに密に充填されたジェットが生成される。従って乱流が殆ど形成されず、流体が均等に分配される。
図14は、本発明の別の実施形態におけるノズル板の側面図である。図15は、図14のノズル板の上面図である。図16は、図14のノズル板の透視図である。図17は、図15に示すAで切断した図14のノズル板の詳細な分解図である。
図14から図17を参照すると、ノズル板は概して参照番号1020で示されている。本実施形態では、個々のノズル1010各々が、形成後のチャネル1015に切断され、チャネル1015における一行のノズルを形成している。幾つかのチャネルが板1020に形成されて、オリフィス板またはノズルジェットアレイを形成する。上述したようにチャネル1015は、一枚の板に溶接されるノズルバンク1011であってよい。または、チャネルおよびノズルが、マシニングにより単一の板から形成されてもよく、この結果は概して図21から図24に示す通りである。
本実施形態では、これらのノズル1010が正確な間隔を保って配置されており、ジェットが意図した体積を満たすが互いに交差しないよう、生成されるジェットが満たす容量を最大化している。ジェット間の間隔を密にしすぎると、ジェット同士が衝突したり小さな液滴へと分裂したりして、密着したフラットジェットでなくなり、本実施形態の効果が低減されるという好ましくない結果となる。また一方で、ジェット間の間隔を離しすぎると、気相分子と反応することのできる比表面積が小さくなり、やはり本実施形態の効果が低減する。最適な間隔とは、主に、ノズルの設計およびサイズ、反応の効果(あるいは質量移動)、流体の粘度、および流体の表面エネルギーを組み合わせた関数として決定される。
図18は、図14のノズル板が生成する平坦薄型のフラット液体ジェットのアレイの透視図である。図19は、図14のノズル板が生成する平坦薄型のフラット液体ジェットのアレイの正面図である。図20は、図14のノズル板が生成する平坦薄型のフラット液体ジェットのアレイの側面図である。
図18から図20は、液体をノズルに強い勢いで流したときに形成されるフラットジェットのアレイまたはマトリックスを示す。本実施形態では、各ノズル1010が、平坦で安定したジェット1050を形成するよう構成されている。好適な実施形態では、ジェットは幅が約2cm、長さが約25cm、且つ、厚みが約0.1mmとなるように形成される。もちろん他の寸法を利用することもできる。各ノズルの行1055により、一行のジェット1060が形成され、複数の行を並べることで、フラット液体ジェットのマトリックスまたはアレイ1065が形成される。この板は、24行のジェット1055を形成するよう構成される。もちろん行の数は加減してもよい。好適なジェットの行の数は、気液接触器のサイズおよびノズルアレイまたはジェット板の製造の実際的な態様および付属の流体処理ハードウェアにより決定されてよい。しかし、上面側におけるサイズに基本的な制約はない。非常に小さな反応装置(例えば研究用途の寸法に作成されたもの)については、2つの液体チャネルの提供に必要となる実際の行の数は3つであり(且つ、半分が反応装置の壁であることから、各端部に1チャネルの半分が搭載されることになる)。動作においては、気体は、フラットジェット間を、ジェットの平坦な側に平行に流れるよう構成され、これにより非常の大きな表面積となり、密な接触が達成される。
図21は、本発明の別の実施形態におけるノズル板の流体の出口側を示す。図22は、図21のノズル板の流体の入口側を示す。
図21および図22を参照すると、ノズル板は概して参照番号1101で表されている。ノズル板1101は、オフセットされ千鳥構成の複数のノズル1010を含む。一実施形態では、図18に示すように、気体は、ジェットが生成する平坦な表面に平行に流れるよう構成されてよい。ノズル1010の千鳥構成またはオフセットされた構成は乱流ではなくて気体の横流のチャネルを遮蔽することから、千鳥構成ではない構成と比べて僅かに流れを増加させることができる。
図23は、本発明の別の実施形態のノズル板の流体の出口側を示す。図24は、図23のノズル板の流体の出口側を示す。
図23および図24を参照すると、ノズル板は概して参照番号1110で示されている。流体は図23に示す面を出て、気体は、ジェットの平坦表面に平行に流れるよう構成されてよい。図24は、ノズル板1110の逆側を示す。ノズル板は複数のノズル1010を含み、これらが上述したノズルアレイ1112(ノズルバンク1011参照のこと)に設定される。代替的な実施形態では、ノズルアレイ1112は取り外し可能に構成されてよい。ノズルアレイを取り外すことのできる機能により、ノズルが腐食したような場合、または、ノズル寸法を変更する必要がある場合(例えば異なる粘度の異なる流体を利用する場合等)にも適応することができるようになる。
図25は、ノズルバンクが取り除かれたノズル板の流体の出口側を示す。図26は、図25のノズル板の流体の入口側を示す。図25から図26は、ノズルの行1113がノズルアレイアセンブリ1120から取り外し可能であり、ノズルバンク1113が取り外されている様子を示す。ノズルバンク1113を取り外すことができる機能により、ユーザは、ノズル板1120を洗浄したり、板全体の取り替えではなく破損したノズルバンク1113だけを取り替えたりすることができるようになる。加えて、取り外し可能なノズルバンク1113は、接触器の比面積(specific area)の調節の助けとなり、製造プロセスを助ける(例えば、非常に高い質量移動を伴う気相分子は、捕捉または反応歩留まりを満たすために比面積をあまり必要としない)。従って、既存のシステムにおける全液体の流量を低減させる目的から、ノズルバンクを潜在的に取り除くことができるようになる。
例えば一実施形態では、図25および図26に示すノズルバンクまたはノズルの行1113を、平坦な管1130(図27および図28参照)から切断した。管1130は、適切な管から長さ方向に切断され、僅かに平坦化された、または、マンドレルの上の平坦なシートから形成した。複数のノズル1010を管1130に切断した。これはノズルバンク形成の代替的な方法である。管1130は、平坦な状態で示されており、オリフィス製造のために電気放電加工機(EDM)で形成された溝を設けられている。管1130を長さ方向に切断して、平坦でない端部を除去すると、溝1113が実質的に完成して、ノズル板1120に嵌合可能な状態になる。
<気液接触器>
図29は、本発明の別の実施形態における気液接触器の概略の切断図である。気液接触器は、本明細書で説明するようにCOILの気液接触器の効率を上げ、空気混入(entrainment)を低減させることができる。気液接触器のノズルは、形状を気流の中でも維持できる、安定した平面状の液体ジェットを形成するよう構成されている。
これらのノズルは、平面状の液体ジェットの密に充填され平行なマトリックスを形成するアレイ状のノズルプレートに製造可能である。フラットジェットアレイは、空気力学的な形状をしており、比較的高い気流において安定したジェット形成を提供することができる。つまり、ノズルアレイは、気体からの擾乱を最小限に抑えることのできる形状を有する均一間隔の複数のフラット液体ジェットを形成するよう構成される。さらに、ノズルアレイは、気流に平行な液体シートを生成して、比較的大きな接触面積および低い気圧降下を提供する。気流は、液体ジェットを横断しても(横流)、逆流であっても、並流であってもよい。
ノズルでジェットを生成するのに必要な液圧降下(liquid pressure drop)も低く、これにより、液体側および気体側両方のポンプコストは低くなる。主要な制約を加えるオリフィス(例えばノズルアレイ)にわたり液圧降下が生じる。例えば、本実施形態が機能する液圧の範囲は、2psiおよび50psiの間であり、最良の範囲は3psiおよび15psiの間である。さらに、2psi未満の液圧でも、依然として薄型フラットジェットを形成することができる(ノズルの寸法に応じて)が、液体の速度は遅くなり、高い速度の気流においては大幅な偏向が生じる。同様に、50psiを超える圧力でも、良好な薄型のフラットジェットを生成することができるが、この水圧を提供するのに要するエネルギーが高く、システムの寄生エネルギー損失が増える。
これらの利点に加えて、ノズルが液体を霧状にしないために、液体を霧状にするシステムに比して気体への液体混入が大幅に低減する。気液接触器は非常に多い比面積(例えば20cm−1)を有し、これにより、高い接触効率および小さなフットプリント(例えば、接触器および支持ポンプに対して100ft2/MVと同等未満)が実現される。表2に、気液接触器の比面積およびその他のパラメータを示す。
図29を参照すると、気液接触器は概して参照番号1600で示されている。本実施形態では、横流構成が利用されており、気体は接触器1600の左から右へ流れる。液体は接触器1600の上部1610に入口プレナム1630から入り、接触チャンバ1650の上部のノズル板1640を強い勢いで流れる。フラット液体ジェットは、これらノズルにより形成され、チャンバ内を流れ下る。気体は、図29のシステムの左から右へ、平行なジェット間を流れ、ここで質量移動が起こり、さらに低圧降下デミスター1660を通り、出口1670へと向かう。液体は接触器の底面のアンチスプラッシュグリッド1680を通じて収集され、適宜処理されて、場合によってはリサイクルされる。アンチスプラッシュグリッドサブモジュール1680は、フラットジェットを受ける形状を有する孔を有するグリッドである。アンチスプラッシュガードまたは気体・流体分離器も、実質的に動作中の液体のバックスプラッシュを最小限に抑えるよう構成される。アンチスプラッシュグリッド1680の孔は、液体捕捉出口プレナム1620の出口1700および/または1690に対して僅かに角度を持って配置されて、流体に対して加圧することなく流体を流出させることができる。
以下の表2および表3は、幾つかの気液接触器(本発明のものを含む)の接触効率および利点/欠点を比較するものである。
気液接触器は、元はCOILの化学反応装置に利用されたが、この用途に限定はされない。気液接触器は、高効率、単一の段階、低コスト、気体と液体との間の小さいフットプリント接触が好ましい任意の用途等の複数の異なる用途に利用可能である。数例を挙げると、気体の冷却等の気体と液体とが直接接触する熱伝達、燃焼排ガスストリームからの汚染物質吸収等の質量移動、COIL用途等の液体と気体との間の化学反応、および好気性消化等の生体反応が挙げられる。多段階の横流の接触は、接触器を直列に接続して、液体を下流の接触器の出口から次段の上流の接触器の入口へとポンプすることで行われる。あるいは、直流設置された気液接触器に2つの異なる液体ソーベントまたは反応物質を独立してポンプして流入させて、単一のトレイン気流の擾乱なしに2段階の反応を起こすこともできる。気液接触器の実施形態は、非常に高い体積の質量移動係数、低い気圧降下、低い液圧降下、比較的小さなサイズ、詰まりに対する耐性、低い液体の混入、低い資本および動作コストといった特性を有する気液接触器を生成する。これは、互いに平行且つ気流に平行に密に充填された、平坦で、安定している、霧状ではない液体ジェットのマトリックスを形成する特殊なノズルのアレイを有するオリフィス板(本明細書ではノズル板と称される)を利用して行われる。単一の段階の気液接触器の一実施形態を以下に説明する。気体の流量および複数のジェット行により、この単一の段階の接触時間が決定される。
本実施形態では、ジェット板は、気液接触器1600内に収容されている。気体は左1672から入り、接触チャンバ1650のフラット液体ジェットを通り、デミスター1660を通り、気体出口1670から出る。液体は入力プレナム1630から入り、一連のノズル板1640を強い勢いで流れ下り、フラット液体ジェットを形成してから、気液分離器1680を通り、接触器の底部の液体収集チャンバ1620に入る。その後、液体は出口1690および1700を出て、処理を受ける、および/または、リサイクルされる。
図30は、本発明の別の実施形態における複数の気液接触器の概略配置を示す。図30を参照すると、多段階の横流デバイス接触器は、概して参照番号3000で表されており、直列に接続されている。多段階の横流デバイス接触器3000は、第1の気液接触器3002、第2の気液接触器3004、および第3の気液接触器3006を含む。もちろん、3を超える数の気液接触器があってもよい(例えば、気液接触器の数は用途に応じて決定することができる)。つまり、利用される接触器の数は、特定の化学物質が必要とする最終的な捕捉または反応歩留まりの関数として決定される。連続する接触器は、当技術分野で公知な連続化学物質抽出と実質的に似た概念であってよい。気流は各接触器を通り、液体はトレインの下流端3008から上流端3010への横流として流れる。
各段階間の液体ポンプ(不図示)により、液体は各接触器に提供される。オプションとしては、単一の液体供給プレナムが、全て直列にインストールされた気液接触器モジュールに対して機能を提供することができ、これには、単一の液体ポンプがその液体を単一の直列液体供給プレナムへ提供すること、または単一のポンププレナムから並列に供給することのみが必要となる。
気液接触器は、様々な異なる材料から形成することができる。例えば接触器はステンレス鋼から形成することができる。材料は、液体および/または気体化学物質およびその腐食性または反応性(例えば銅、ニッケル、クロム、アルミニウム、およびこれらの合金)に基づいて選択されてよい。加えて、被膜された成分またはパイプ材料を利用することもできる(例えば、ガラスライニングされたもの、エポキシ樹脂または粒子で被膜されたもの等)。あるいは、接触器の構造上および/または流体処理部品の一部が、プラスチックまたはポリマー、繊維補強エポキシ樹脂またはポリマー、構造的ポリマー、ポリイミド、およびこれらの混合物および合成物で製造されてもよい。
<アンモニア水による汚染物質除去>
本明細書に記載される本発明の実施形態は、アンモニアを利用することで、排気から汚染物質を除去する用途に利用可能である。汚染物質除去の重要なコスト推進要因は、燃焼排ガスの汚染物質の分圧の低さ、あるいは気体吸収率が低いことである。例えば、反応率は概して、反応物の初期濃度の関数として定まり、濃度が高いほど反応が速くなる。しかし、初期濃度が低いと、質量移動が、気体または液体分子の反応または除去において制約を課す変数となる。本発明の実施形態では、低い質量移動係数を、高い相対比面積および高い流量でオフセットしている。
関連技術では、燃焼排ガス(FGD)脱硫システムを開発して発電プラントに設置して、SO2およびSO3が酸性雨および空気汚染となる問題に取り組んでいる。殆どのFGDシステムは、燃焼排ガスを湿ったライムストーンに接触させることで、SO2をCaSO3として吸収して、その後、CaSO4(ジプサム)に酸化して、沈殿させ、販売する、または埋め立てる。ライムまたはライムストーンベースのFDの欠点は、様々な汚染物質(たとえばNOx、Hg、またはCO2)に対応できないことである。別の欠点は、FGDシステムに大きなフットプリントおよび資本投資が必要であることである(例えば噴霧塔および酸化タンク等)。
高い気体吸収および除去のために好適なソーベントは、高い液体ジェット性能、高い気体搭載容量、高い酸化安定性、低い反応熱、低いソーベントコスト、低い腐食性、および販売可能な製品ストリームといった特性を有するシステムである。ソーベントの一例はアンモニア水である。アンモニア、アンモニア塩、および尿酸をボイラーまたは燃焼排ガスに注入することで、選択的触媒低減(SCR)または選択的非触媒低減(SNCR)によりNOxを低減させることができる。アンモニアおよびその塩は、SOxおよび複数の汚染物質を制御することができる。
加えて関連技術による、水性吸収剤を利用する複数の汚染物質制御では、燃焼排ガスのNOxの主要成分であるNOが、選択的触媒低減(SCR)または選択的非触媒低減(SNCR)によりN2に還元される、またはNO2に酸化される必要がある、というのも、NOは水に対する溶解度が非常に低いからである。NO2に酸化される場合には、NOxは塩基性溶液または硝酸で吸収されうる。アンモニアベースのシステムを利用する場合には、貴重な副産物が生成される。硝酸アンモニウムおよび硫酸アンモニウムは肥料として利用することができる。アンモニアは、モノエタノールアミン(MEA)またはジエタノールアミン(DEA)よりもCO2を捕捉するのに効率的であり、CO2は油田の回復手段として優れている。
本発明の実施形態は、幾つかの対象汚染物質(例えば、酸性ガス、アンモニア、VOC、SOx、NOx、CO2、Hg、およびこれらの組み合わせを含むがこれらに限定はされない)を捕捉することができる。さらに、本発明の一部の実施形態は、単一の、小さなフットプリント、システムを有し、貴重な副産物を生産するよう構成される。加えて、実施形態ではスラリーとの接触がないので、関連する材料の処理が困難とならない。スラリーを利用しないことにより、アンモニア再生器(あるいはCO2ストリッパ)における相変化を完成させる熱を利用する必要がなくなる。
本発明の実施形態では、燃焼排ガスから、バッグハウスまたは電気集塵装置(ESP)でフライアッシュを洗浄してなくし、適宜、第1の湿式接触のために冷却する。そして、燃焼排ガスのSO2およびNOを、気体の過酸化水素で酸化させる、あるいは、過酸化水素水溶液を利用して第1の気体洗浄装置で酸化させてよい。気体洗浄装置は、本明細書で説明するように、高効率で、フットプリントが小さい、水平の横流気液接触装置である。気体洗浄装置は、燃料排気ガスを塩基性硫酸アンモニウム水溶液(basic aqueous ammonium sulfate)で洗浄して、酸性ガス(SO2、SO3、NO2、HCl、HF等)を除去する。補給アンモニア(make-up ammonia)をpH制御のために追加して、水酸化物イオンを供給して、加水分解されたガスが生成する水素イオンと反応させる。これにより、ガスが可溶性アンモニウム塩に変換され、その蒸気圧が略ゼロに低下する。SOxの約99%の吸収度よりも良好な結果が得られる。酸化および/または吸収プロセスにより水銀も除去することができる(HgOxは元素Hgよりもずっと可溶性が高い)。本発明の一部の実施形態における汚染物質除去の一部の反応メカニズムは以下の通りである。
NH3加水分解:
NH3 + H2O ⇔ NH4 + + OH- (1)
SO2捕捉:
H2O + SO2 → H+ + HSO3 - (2)
1/2O2 + HSO3 - → HSO4 - (3)
2NH3 + HSO4 - + H2O → (NH4)2SO4 + OH- (硫酸アンモニウム) (4)
NOx捕捉:
NH3 + H2O ⇔ NH4 + + OH- (5)
H2O2 + OH- → HO2 - + H2O (6)
HO2 - + NO → NO2 + OH- (7)
2NO2 + H2O2 → 2HNO3 (8)
NH3 + HNO3 → NH4NO3 (硝酸アンモニウム) (9)
Hg捕捉
H2O2 + Hg0 → Hg(II) + 生成物 (10)
H2S捕捉
H2S (aq) →HS- + H+ (11)
HS- + NH3 + H+ →NH4HS (12)
硫黄および酸化窒素が塩(NH4)NO3および(NH4)2SO4として捕捉されると、接触溶液が濃縮および沈殿して、販売または処理される。重金属(Hg)およびハロゲン化物(ClおよびF)は、別途pH調節段階で沈殿させられる。希釈された接触溶液は気体洗浄装置へとリサイクルされる。
これらのプロセスを経た燃焼排ガスは、全ての汚染物質を95%除去されて、きれいになったものよりさらに良好であり、部分的にCO2を除去する準備ができている。第2の気体洗浄装置は、アンモニア水および/またはアンモニア塩の組み合わせを液体に利用する。CO2が吸収され、炭酸アンモニウムおよび水と反応して、重炭酸アンモニウムを形成する。低温および高いpHには、CO2吸収が好適である。補給アンモニアはpHおよび気体洗浄溶液の遊離アンモニアのレベルを制御する。アンモニアの濃度が高いと、pHが上がり、CO2の吸収およびCO2の負荷が増加し、さらには、アンモニアの蒸気圧が上がる。本発明の実施形態におけるCO2捕捉の簡略化された反応メカニズムは以下を含む。
2NH3 + H2O + CO2 ⇔ (NH4)2-CO3 (炭酸アンモニウム) (13)
(NH4)2 CO3 + CO2 + H2O ⇔ 2NH4HCO3 (重炭酸アンモニウム) (14)
接触器からの濃度の高い溶液をCO2ストリッパに送り、そこでは昇温されており、逆反応が行われて、気体CO2が解放され、炭酸アンモニウムが生成される。高温および低pHにはCO2の放出が好適である。低pHにはアンモニアの吸収が好適であるので、低pHによりCO2の放出が促進され、アンモニアは溶液内に留めることができる。CO2は分離され圧縮されて、炭酸アンモニウムを気体洗浄装置に戻す。
関連技術のアンモニアベースのシステムに共通の問題は、吸収液体内に溶解したアンモニアが気相に戻り、燃焼排ガス内のスタックが蓄積される、という「アンモニアスリップ」である。この現象により、アンモニアが燃焼排ガスの構成物と反応して固体を沈殿させた場合、可視プルームが生じる。加えてアンモニアスリップは、大幅に試薬コストを上昇させる。
一実施形態では、図30に示す複数の気液接触器を汚染物質除去に利用する。本実施形態では、各気液を異なる目的に構成することができる。例えば気液接触器3006は、特に、最初の2つの接触器3002、3004それぞれでスリップしうるアンモニアを全て捕捉するよう設計されてよい。本実施形態では、酸性ガス(SOx、NOx、およびCO2)を吸収するのに最適なpHは7を超える値である、というのもこれらのガスの蒸気圧は高いpHで最低になるが、アンモニアの蒸気圧は高いpHで最高になるからである。第1の気液接触器3002の最適条件において、約99%より良好にSO2を捕捉することができる。第3の接触器3006は、第1の気液接触器3002および第2の気液接触器3004を、酸性ガスを吸収するのに最適な条件下で、高いアンモニアスリップを伴って動作させることができる、というのも第3の接触器3006はアンモニアを捕捉するのに最適な条件下で動作されるからである。捕捉されたアンモニアは、最初の2つの気液接触器に戻される。気液接触器が高効率且つ小型であるということは、第3の気液接触器を提供可能であるということであり、これにより非常に高い捕捉効率が達成されるということである。
本実施形態では複数種類の効率(エネルギー消費および除去システムのコスト削減による、燃焼排ガスから複数の汚染物質を除去する高い効率性の達成、除去システムのサイズを最小限に抑えることによる、燃焼排ガスからの複数の汚染物質を除去する高い効率性の達成、並列に組み合せ可能とすることで様々な設備のサイズに適合可能なモジュール型のシステムを作成することによる、燃焼排ガスから複数の汚染物質を除去する高い効率性の達成、汚染物質の選択的および連続的除去を可能とするべく直列に組み合わせ可能な非常に低い流れ抵抗(圧力降下)を有するモジュール型のシステムを作成することによる、燃焼排ガスから複数の汚染物質を除去する高い効率性の達成、重複(高い利用性)および維持可能性(周期的メンテナンスのための選択的アクセスまたはユニットの故障時用)を提供するために組み合わせられるモジュール型システムを作成することによる、燃焼排ガスから複数の汚染物質を除去する高い効率性の達成、組み立てラインプロセスで大量生産可能なモジュール型のシステムを作成することによる、燃焼排ガスから複数の汚染物質を除去する高い効率性の達成、および、様々な種類およびサイズの電力生成および化学プロセス設備から燃焼排ガスから複数の汚染物質を除去する高い効率性の達成)が達成された。
さらに実施形態は、体積の大きな燃焼排ガスの流量からの、燃焼排ガスの汚染物質の選択的な高い質量移動率を、少ないシステム体積に制約される連続補充される液体にする方法およびシステムとして記載されうる。本方法およびシステムでは、高い粘度、広範囲で薄型の長く安定したジェットの高密度の充填アレイが、高速の燃焼排ガスの流れと反応する。ジェットを形成するオリフィスを、粘度および表面張力といった液体ソーベントの特性に基づいて最適化することができる。横流および逆流設計は2つの異なる実施形態を表す。
方法およびシステムの効率性は、体積の大きな質量移動、および結果生じる小型性、最小のポンプ機能を要求する低圧ソーベント処理、および、空気力学的に形成されたジェットの低抵抗性および設計のモジュール型且つ組み合わせ可能な性質のための低抵抗性によるシステム全体の低圧の燃焼排ガスの気圧降下により達成される。表3−4も参照のこと。これにより、燃焼排ガスの汚染物質の除去プロセスの効率性が格段に上がり、CO2、SOx、NOx、およびHg等の汚染物質の除去が経済的に可能となる。
別の実施形態では、小さいスケールのバージョンを汚染物質除去の大きな商用的手段の排気に容易に適合させることができる。また別の実施形態では、化学プラントからの揮発性の有機化合物が排気物から除去される。また別の実施形態では、非常に乾燥した気流を低温の液流を利用することで達成することができる。別の実施形態では、気体を増湿させたり減湿させたりすることで、微粒子物質を取り除くことができる。
図31は、一実施形態における複数汚染物質除去システムの概略図である。図31では、複数汚染物質除去システムは概して参照番号2100で示されている。システム2100は、SOx、NOx、CO2、Hg、HCl、およびHFを捕捉するよう構成されていてよい。本実施形態では、ボイラー2110からの燃焼排ガス2120は、特定の除去点2130(例えば沈殿室またはネットフィルタ)で先ず洗浄により、フライアッシュ等の微粒子を除去され、適宜、冷却ステーション2140で冷却される。時点2150で、燃料ガスは概ねN2、H2O、CO2、SO2、NO、Hg、HCl、およびHFを含むものとなっている。これはもちろんボイラー2110の処理に依存している。燃焼排ガスはその後本明細書で記載するように高効率の気液接触器2160内でアンモニア水および溶解されたアンモニア塩と接触させられる。溶解されたアンモニア塩は、リサイクルストリーム2170からの、沈殿ステップ2190からの浮遊物2110からのものであり、亜硫酸アンモニウム(SO3)、硫酸塩(SO4)、硝酸塩(NO3)、塩化物(Cl)、フッ化物(F)、および場合によっては少量の炭酸塩(CO3)、および重炭酸塩(HCO3)を含む。炭酸アンモニウムおよび重炭酸アンモニウムは、略化学量論量の補給アンモニアを利用することで最小限に維持されてよい。
ステップ2165で、本発明の実施形態で記載する気液接触器で液相の酸化処理が行われる。もちろん幾つかの酸化剤を利用してNOをNO2に変換してより良好な吸収性を得ることができる。SO3 −も液相のSO4 2−に酸化させる。液体のブリードストリーム2220を沈殿器に送って、重金属およびアンモニア塩を除去する。第1のステップ2230では、pH調節により、重金属(Hg等)を沈殿させる2210。第2のステップ2190で、液体を濃縮して、アンモニア塩を沈殿させる。沈殿ステップからの重金属の固体を適切に処理して(2240)、アンモニウム塩の固体は肥料として販売する(2250)。Hgの除去後にアンモニア塩を濃縮液体肥料として販売可能な場合には、第2の沈殿工程は省くことができる。
次に、N2、H2O、およびCO2のみを含む燃料排ガス2120を、本明細書に記載する別の高効率気液接触器2260内で、アンモニアおよび溶解した炭酸アンモニウム/重炭酸アンモニウムに接触させる。ここでも、アンモニアは補給ストリームであり、溶解した塩はリサイクルストリーム2270からのものである。アンモニアを対象物に添加して、接触液体のpHを最適に保つ。CO2は、CO2ストリッパ2280に送られる液体内に、重炭酸アンモニウムとして吸収される。ここで、昇温を行い(且つ、必要に応じてpHを調節する)、逆反応を行い、CO2を気体2290として放出して、炭酸アンモニウムを液相2300のまま残して、CO2吸収体へリサイクルする。CO2は次いで圧縮され(2310)、販売または隔離されてよい(2320)。隔離処理には、劣化天然ガスウェル、石油の二次回収、その他の方法を利用することができるが、これらは本発明の範囲外なので詳述は避ける。
CO2吸収ステップの後で、記載したように第3の高効率接触器2330で燃焼排ガスを水に接触させて、前の接触器からスリップしうるアンモニアをすべてストリップさせる(strip out)。接触液体(水)のpHは、必要に応じて調節することで、アンモニアを完全に吸収させる。ブリードストリーム2340をCO2ストリッパ2300またはSOx吸収器に送ってよい。
最後に、窒素、水、幾らかの酸素、および、未吸収のCO2から構成される洗浄された燃焼排ガス2350を2360で加熱して、凝縮状態を低下させて、IDファン2370およびスタックへ送る。燃焼排ガスヒータ2360および冷却器2140を熱媒体液(liquid heat carrier)に相互接続することで、プロセスを経済的に実行することができる。気液熱交換器2140内で冷却液体を熱い燃焼排ガスに接触させる。冷却した燃焼排ガスは第1の吸収器2160に送られる。今は熱い液体は下流の燃焼排ガスヒータ2360へ送られ、最終の吸収器2330からの冷却された燃焼排ガス2350と接触させられる。気液熱交換器2360は、冷却器2140に送り返される液体を冷却して、燃焼排ガス2350を加熱して、周囲への排気準備を行う。熱い液体はさらに、CO2ストリッパ2300への熱入力としても利用されうる。
オプションとして、工業処理で発生した排熱をCO2のストリップまたは排気の再加熱用の熱源として利用することで、防露処理を省くこともできる。例えば、電力プラントではこれはフライアッシュバッグハウスから得ることができる。
またオプションとして、適宜CO2捕捉処理を省くようにプロセスを修正することもできる。つまり、システムをSOx、NOx、Hg、HClおよびHFの捕捉処理、ならびに、硫酸アンモニウムおよび硝酸塩を肥料として生成することに重きを置いたものとすることができる。
図32は、本発明の別の実施形態における複数汚染物質除去システムの概略図である。図32の処理は、SOx、HCl、およびHFのみの捕捉処理のみを行うよう簡略化されたものとなっている。処理2400は、最も簡単に吸収される酸性ガスのみを捕捉するよう設計されている。ボイラー2110からの燃焼排ガス2120は、特定の除去点2130(例えば沈殿室またはネットフィルタ)で先ず洗浄により、フライアッシュ等の微粒子を除去され、適宜、冷却ステーション2140で冷却される。時点2150で、燃焼排ガスは概ねN2、H2O、CO2、SO2、NO、Hg、HCl、およびHFを含むものとなっている。
その後、燃焼排ガス2150は、本明細書で記載するように、高効率気液接触器2410内で、リサイクルストリーム2420からの水酸化ナトリウムまたは硫酸塩/亜硫酸塩(sulfite salt)と接触させられる。酸化ステップ2430は、気液接触器内で、液相で行われる。空気中あるいは燃焼排ガスに含まれる酸素を用いて亜硫酸塩(SO3 2−)を酸化することで、液相の硫酸塩(SO4 2−)が生じる。液体のブリードストリーム2440を沈殿器2450に送って、重金属および硫酸塩(sulfate salt)を除去する。第1のステップ2460では、pH調節2460により、重金属(Hg等)を沈殿させる。第2のステップでは、水酸化カルシウム2470を添加して、硫酸カルシウムを沈殿させ、沈殿器2480で分離、乾燥、および除去することができる。この沈殿器からの浮遊物2490をリサイクルストリームに戻す。沈殿ステップで生じた重金属の固体は適切に処理してよく(2510)、硫酸カルシウムはジプサムとして販売することができる(2520)。
最後に、窒素、水、NOx、およびCO2から構成される洗浄された燃焼排ガス2350をヒータ2360で加熱して、凝縮状態を低下させて、IDファンおよびスタック2370へ送る。上述したように、燃焼排ガスヒータ2360および冷却器2140を熱媒体液(liquid heat carrier)に相互接続することで、プロセスを経済的に実行することができる。
<SO2除去>
SO2捕捉機能を向上させるための様々な性能領域には、反応装置の容器サイズおよび圧力降下を小さくすること、および販売可能な副産物を生じる効率的な質量移動ソーベントシステムを利用すること等が含まれる。これら対象となる性能を達成するには、高いSO2吸収動力学と付加価値のある生産ストリームとを連結した革新的設計手法が必要である。
気液質量移動処理は、気液の界面に沿って行われる。気体の液体ソーベントへの吸収率は、液相質量移動係数kL、比表面積(気液界面の表面積の体積に対する比率)a、および、バルク流体CLと気液界面CL *との間の濃度勾配により制御される。多くの気液反応システムでは、CL *の可溶性が低く、濃度勾配の制御には制限がある。気体吸収率を上げるべく、本気液接触器の実施形態では、質量移動動力学、気液混合および/または界面表面積の体積に対する比率を上げる方法がとられる。
本発明の実施形態では、SO2を効率的に捕捉するべ冷却器イムストーン/ライム(CaCO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)/水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化アンモニウム(通常はアンモニア水と称され、省略記号がAAである)、ダブルアルカリ(水酸化ナトリウムにライムを添加したもの)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)を含むがこれらに限定はされない幅広い様々な水性の溶媒とともに接触器を利用することができる。酸化剤(OX)を追加することでSO2の酸化が促進され、これにより硫酸塩SO4 2−の形成が促進される。好適な実施形態では、OX剤は、過酸化水素である(H2O2)。アンモニア水および過酸化水素を組み合わせた利用は、硫酸アンモニウム(肥料)等の販売可能な収益を生む副産物ストリームを生成することから、特に好適である。加えて、H2O2の分解生成物(水と酸素)は、環境および機器に優しい。
水性の水酸化アンモニウムおよび過酸化水素が含まれる際のSO2酸化で利用可能な化学ステップは以下の通りである。
NH3 + H2O + SO2 → NH4 + + HSO3 - (1)
NH4 + + HSO3 - + NH3 → 2NH4 2+ + SO3 2- (2)
H2O2 + SO3 2- → H2O + SO4 2- (3)
2NH4 + + SO4 2- → NH4SO4 (硫酸アンモニウム) (4)
本発明の実施形態では、排ガス洗浄処理により二酸化硫黄が高効率で除去される。本実施形態のシステムは、再形成オリフィス板(または記載したノズル板)を有するノズルアレイと、幅広い範囲の流体および処理条件に適合する流体合成技術を含む。SO2の除去は、気体を高い表面から体積型気液接触ユニットへと通過させることにより行われる。排ガスは、関連技術よりも実質的に接触器体積および気流圧力降下が小さい気液接触器を水平方向に通過する(横流と称する)。水性のソーベントおよび実質的な表面積を有する、複数の低圧、垂直方向のフラットジェットアレイが横流の気流を交差するように走っている。フラットジェットアレイは、空気力学的な形状とすることで、比較的高い気体速度において、液体粒子の混入が少ない安定したジェット流を形成する。
好適な実施形態では、二酸化硫黄の吸収および除去用のソーベントは、高いSO2容量、高い酸化安定性、低い反応熱、低いソーベントコスト、低い腐食性、および販売可能な製品ストリームといった特性を有するシステムである。効果的なSO2除去の溶媒の例としては、28重量%のアンモニアを収容する水溶液が上げられる。接触器を最適化するべく、流体およびジェット性能の観点から、約1%から約2%のポリマーまたは懸濁液をアンモニア水溶液に添加して、接触器の性能を高めることができる。添加物の例としては、アンモニア水に反応せず、且つ、質量移動の妨げとならないようなものが挙げられる。ポリマーまたは懸濁液によって、最小の液体側の圧力降下で最大のジェット性能(ジェットの幅、長さ、厚み、表面積)を得ることのできるソーベント特性(例えば粘度)の形成が可能となる。ポリマー添加物の例としては、ジエチレングリコールが挙げられる。他のポリマー添加物の例には、ポリエチレンオキシドまたはポリビニルアルコールが含まれる。無機物添加物の一例はベントナイトである。
さらなる化学化合物を含めることが、SO2の酸化率ひいては質量移動動力学を助けるために好適である。好適なソーベントシステムへの添加物の一例としては、過酸化水素が挙げられる。高いpHで過酸化水素が分解しすぎることを避けるべく、安定剤をソーベントの混合物に添加する。高いpHにおける過酸化水素の安定剤の一例としては、ポリ(α−ヒドロキシアクリル酸)が挙げられる。過酸化水素の酸化力は、過酸化水素の触媒を添加することでさらに向上しうる。酸化水素の触媒の一例は鉄(III)テトラ−アミド大環状リガンド(TAML)である。
図33は、本発明の別の実施形態における気相および液相間の相互作用を生じさせる一般的な気液接触器の概略図である。気液接触システムは、気体供給ユニット2605に連結されて気体を気液接触器2645に供給する気体入口2600を含む。システムはさらに、ポンプ2615と液体捕捉タンク2620とに連結された液体試薬タンク2610を含む。捕捉タンク2620は、気液接触器2645に連結されることで気液接触器2645から液体を収集する。オプションとして、捕捉タンク2625は液体再循環ポンプ2625に連結されてもよい。液体再循環ポンプ2625は、液体再循環法を行うことができる。流れ制御弁2630は、液体プレナム2635に連結されることで液体プレナム2635への液体を制御する。液体ジェットを形成するためのノズルアレイ2640が、液体プレナムと気液接触器2645とに連結される。気液接触器264は、気液ジェット接触ゾーンを含む。気体を液体ソーベントジェットから分離する気液分離器2650が気液接触器2645内に配置される。出てゆく気体から小さな気体液滴を除去することのできるデミスター2660が気体出口2655付近に配置される。
気体入口は複数の異なる気体を含んでよい。例えば、SOx、NOx、CO2、Hg、およびこれらの組み合わせを含みうる汚染物質、汚染物等の工業排気が含まれてよい。もちろん、HCl、HBr、HF、H2SO4、HNO3、CO、H2S、アミン(アンモニアを含む)、アルカノールアミン、尿素、ホルムアミド、アルコール、カルボン酸塩(酢酸等)、これらの組み合わせおよび幅広い様々な他の気相分子等の酸性ガス等の他の気体分子を取り除くこともできる。本発明の限定は、反応性または可溶性である範囲の気相分子反応物または溶質、および液相を提供するという機能のみである。本発明の明細書の主な記載は水溶液系を対象としているが、と業者であれば本気液接触器の発明を水性ではないシステムにも適用可能であることを容易に理解する。
本実施形態では、SO2を含む排ガスを気液チャンバに注入する方法が記載される。気体プレナムは、液体フラットジェット全体に均等に気体を流す。液体ジェットは、ソーベントを液体プレナムにポンプして、ソーベントをノズルオリフィス全体に行き渡らせることで生成される。生成されるジェットは垂直下方に接触チャンバへと流れ下り、気液分離器を通って捕捉タンクへ到達する。気液チャンバでは、垂直に流れるソーベントが気体の横流と交差する。二酸化硫黄はソーベント液体に吸収され、排ガスストリームから除去される。洗浄後の排ガスは、接触チャンバの出口から排出される。ソーベントは再循環されて、連続して排ガスストリームからSO2を除去する。
気液接触器の性能を、図33の小型のサブスケールテストベッド上に示す。表4は、この例における幾何学パラメータをまとめたものである。
この例で利用されているジェットオリフィスの構成は、ノズル板および気液接触器との関連で説明されている。処理前に、ジェットオリフィス板へのポンプ支持圧力を変化させることで、ジェットの長さ、幅、および厚みについて液体ジェットの表面積を最適化させる。ジェット表面積(長さおよび幅)に関するさらなる最適化は、添加物(例えばジエチレングリコール)を利用してソーベント粘度/表面張力特性を向上させることで、または、オリフィスノズルの再成形により可能となる。
気液接触器の動作条件および性能の一例を表5に示す。約28重量%のアンモニア水を含むソーベントシステムをテストした。ソーベントの混合物には粘度または酸化に関与する添加物を添加していない。排ガスとしては、N
2にSO
2を500ppmv加えたものを利用した。気体の混合物を、大気温度および大気圧の条件下で接触器に注入して、カリブレーションしたマスフローコントローラを利用して計測した。計測された時間間隔に液体ジェットがカリブレーションされた受け手側の容器へ排出された量を記録することで、液体の体積流量を計測した。上記のテスト条件におけるSO
2吸収に関するテスト結果は、酸化剤促進剤(H
2O
2)を使用しなくても95%のSO
2が除去された、というものであった。
<NOx捕捉デバイス>
本発明の別の実施形態は、気液接触器の利用によるNOxの捕捉に関する。NOxは、主に酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO2)からなる主要な汚染物質である。燃焼プロセスに応じて、NOxの90%を超える割合を酸化窒素が占める。NOxは、窒素と酸素とが高い燃焼温度(>華氏2700度)で反応することで、および、窒素が燃料内で酸化されることで生じる。NO2捕捉機能を向上させるための様々な性能領域には、反応装置の容器サイズおよび圧力降下を小さくすること、および効率的な質量移動ソーベントシステムを利用すること等が含まれる。
気液質量移動処理は、気液の界面で行われる。気体の液体ソーベントへの吸収率は、液相質量移動係数kL、比表面積(気液界面の表面積の体積に対する比率)a、および、バルク流体CLと気液界面CL *との間の濃度勾配により制御される。多くの気液反応システムでは、CL *の可溶性が低く、濃度勾配の制御には制限がある。気体吸収率を上げるべく、本気液接触器は、質量移動動力学、気液混合および界面表面積の体積に対する比率を高めるように設計される必要がある。
本発明の一実施形態は、例えば図33を参照して記載するような高性能気液接触器を含む。システムは、高密度で、大きな表面積であり、空気力学的な形状の薄型フラットジェットを利用することで、質量移動および接触器の性能を全体的に向上させることができる。気液接触器は、約1cm−2から約50cm−2という向上した比表面積、関連技術の充填塔の体積の約1/10という生成器の体積、接触器の気圧降下が5torr/線形ft(lineal ft)未満といったように低いこと、液体ジェット駆動圧力が50psi未満であること(より好適には20psi未満であること)、および、気体の流れへの液体の混入が最小限に抑えられていることに特徴付けられる。
好適な実施形態では、システムは、約10cm−1から約20cm−1の範囲の比表面積、関連技術の充填塔の体積の約1/10という生成器の体積、接触器の気圧降下が1Torr/線形フット未満といったように低いこと、ジェット駆動圧力が約5−10psiの範囲であること、および、気体の流れへの液体の混入が最小限に抑えられていることという特徴を含む。
NOxを効率的に捕捉するべく、水酸化アンモニウム(通常はアンモニア水と称され、省略記号がAAである)、金属キレートまたは尿酸を含むがこれらに限定はされない幅広い様々な水性のソーベントとともに気液接触器を利用することができる。酸化剤(OX)を追加することでNOのNO2への酸化が促進され、これにより溶媒吸収率が増す。様々な酸化剤(OX)には、亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)水酸化ナトリウム−カリウム過マンガン酸塩(KOH−KMnO4)、および過酸化水素(H2O2)が含まれる。好適な実施形態では、接触器がアンモニア水と過酸化水素とを利用する、というのも、H2O2の分解生成物(水と酸素)は環境および機器に優しく、いずれも構造の通常の材料を腐敗させず、さらには、農作物の肥料として販売することができるために処理コストの減少に繋げることのできる硫酸アンモニウムを生成する。
水酸化アンモニウムおよび過酸化水素が含まれる際のNOおよびNO2の酸化化学メカニズムは以下であると考えられている。
NH3 + H2O → NH4 + + OH- (1)
H2O2 + OH- → HO2 - + H2O- (2)
HO2 + NO → NO2 + OH- (3)
NO2 + NO2 → N2O4 (4)
N2O4 + H2O → HNO2 + HNO3 (5)
HNO2 + H2O2 → HNO3 + H2O (6)
HNO3(水性) → H+ + NO3 - (7)
NH4 + + NO3 - → NH4NO3 (硝酸アンモニウム) (8)
一実施形態では、高効率で二酸化硫黄が除去される排ガス洗浄処理を利用する。システムはノズルアレイを含む。ノズルアレイは、再形成オリフィス板(またはノズル板)を有し、幅広い範囲の流体および処理条件に適合する流体合成技術を含む。本実施形態では、NOxの除去は、気体を高い表面から体積型気液接触器ユニットへと通過させることにより行われる。排ガスは、実質的に接触器体積および気流圧力降下が小さい気液接触器を水平方向に通過する(横流と称する)。水性のソーベントおよび実質的な表面積を有する、複数の低圧、垂直方向のフラットジェットアレイが横流の気流を交差するように走っている。ノズルアレイは、空気力学的な形状とすることで、比較的高い気体速度において、液体粒子の混入が少ない安定したジェット流を形成するフラットジェットアレイを生成するよう構成される。
本発明の実施形態では、二酸化硫黄の吸収および除去用のソーベントは、高いNOX容量、高い酸化安定性、低い反応熱、低い溶媒コスト、低い腐食性、および販売可能な製品ストリームといった特性を有するシステムを含みうる。好適な実施形態では、効果的なNO2除去の溶媒の例としては、28重量%のアンモニアを収容する水溶液が上げられる。流体およびジェット性能の観点から、約1%から約2%のポリマーまたは懸濁液をアンモニア水溶液に添加して接触器の性能を高めることで、ノズル板(ここで記載する)を最適化することができる。アンモニア水に反応せず、且つ、質量移動の妨げとならないようなものが好適な添加物である。最小の液体圧力降下で最大のジェット性能(ジェットの幅、長さ、表面積)を得ることのできるソーベント特性(例えば粘度)の形成が可能となるポリマーまたは懸濁液を利用することができる。ポリマー添加物の例としては、ジエチレングリコールが挙げられる。他のポリマー添加物の例には、ポリエチレンオキシドまたはポリビニルアルコールが含まれる。無機物添加物の一例はベントナイトである。さらなる化学化合物を含めることが、NOの酸化率ひいては質量移動動力学を助けるために好適である。好適なソーベントシステムへの添加物の一例としては、過酸化水素が挙げられる。高いpHで過酸化水素が分解しすぎることを避けるべく、安定剤をソーベントの混合物に添加する。高いpHにおける過酸化水素の安定剤の一例としては、ポリ(α−ヒドロキシアクリル酸)が挙げられる。過酸化水素の酸化力は、過酸化水素の触媒を添加することによりさらに強化される。過酸化水素の触媒の一例は鉄(III)テトラ−アミド大環状リガンド(TAML)である。
図33を参照して説明したように、本システムをNO
x捕捉に利用することができる。プロセスを、気液チャンバ2645にNO
xを含む排ガスを注入することから説明する。気体プレナム2605は、液体フラットジェット全体に均等に気体を流す。液体ジェットは、ソーベントを液体プレナム2635にポンプして、ソーベントをノズルオリフィス全体に行き渡らせることで生成される。生成されるジェットは垂直下方に接触チャンバへと流れ下り、気液分離器を通って捕捉タンク2620へ到達する。気液チャンバ2645では、垂直に流れるソーベントが気体の横流と交差する。二酸化硫黄はソーベント液体に吸収され、排ガスストリームから除去される。洗浄後の排ガス2655は、接触チャンバの出口から排出される。溶媒は再循環されて、連続して燃焼排ガスストリームからNO
Xを除去する。気液接触器の性能を、図33の小型のサブスケールテストベッド上に示す。表6は、この例における幾何学パラメータをまとめたものである。
この例で利用されているジェットオリフィスの構成は上述した通りである。処理前に、ジェットオリフィス板へのポンプ支持圧力を変化させることで、ジェットの長さ、幅、および厚みについて液体ジェットの表面積を最適化させる。ジェット表面積(長さおよび幅)に関するさらなる最適化は、添加物(例えばジエチレングリコール)を利用してソーベントの粘度/表面張力特性を向上させることで、または、オリフィスノズルの再成形により可能となる。
気液接触器の動作条件および性能の一例を表7に示す。約28重量%のアンモニア水を含む溶媒システムを、表2に示す任意の動作条件下でテストした。溶媒として、NO2の除去を促す酸化剤(Ox)または粘度に関与する添加物を含まないものを利用した。排ガスは、窒素(N2)にNO2を500ppmv加えたものを利用した。気体の混合物を、大気温度および大気圧の条件下で接触器に注入して、カリブレーションしたマスフローコントローラを利用して計測した。計測された時間間隔に液体ジェットがカリブレーションされた受け手側の容器へ排出された量を記録することで、液体の体積流量を計測した。接触器からの還元されたNO2の濃度は、NO2の400nmにおける光吸収を計測することで計測できる。背景のNO2の濃度を、各実行前に記録した。NO2/N2の安定した流れを先ず生成し、ジェット流を伴わずに(AOff)吸光度を記録した。次にジェット流(28重量%のAA)を反応器チャンバに注入して、吸光度を記録した。還元されたNO2の量(吸収された量のこと)は、百分率で、%NO2還元=100x(Aoff−Aon)/Aoff…(1)のように表される。
図34は、NO2除去システムの吸収度とランタイムとの間の関係を示すグラフである。図34では、液体アンモニア水ジェットのonおよびoffによる代表的なNO2吸収スペクトルが示されている。y軸は、400nmにおける吸光を表し、x軸は、時間を秒単位で示す。この例から分かるように、ジェット流の開始直後に吸光の生存期間が短いことは、チャンバにおける流れの摂動に起因したものである。4つのテストの実行の平均を各テスト結果に対して実行した。記載されたテスト条件におけるNO2吸光のテスト結果は、NO2の除去が−35%と、酸化促進剤(H2O2)がなくても適切であった。
<Hg捕捉デバイス>
本発明の別の実施形態は、気液接触器の利用によるNOxの捕捉に関する。気液質量移動処理は、気液の界面に沿って行われる。気体の液体ソーベントへの吸収率は、液相質量移動係数kL、比表面積(気液界面の表面積の体積に対する比率)a、および、バルク流体CLと気液界面CL *との間の濃度勾配により制御される。多くの気液反応システムでは、グラフは、CL *の可溶性が非常に低く、濃度勾配の制御には制限がある。従って気体吸収率を高めるには、質量移動動力学を高め、界面表面積の体積に対する比率を上げる必要がある。
本発明の一実施形態は、例えば図33を参照して記載するような高性能気液接触器を含む。システムは、高密度で、大きな表面積であり、空気力学的な形状の薄型フラットジェットを利用することで、質量移動および接触器の性能を全体的に向上させることができる。気液接触器は、約1cm−2から約50cm−2という向上した比表面積、関連技術の充填塔の体積の約1/10という生成器の体積、接触器全体の気圧降下が5torr/線形ft(lineal ft)未満といったように低いこと、液体ジェット駆動圧力が50psi未満であること(より好適には20psi未満であること)、および、気体の流れへの液体の混入が最小限に抑えられていることに特徴付けられる。
好適な実施形態では、システムは、約10cm−1から約20cm−1の範囲の比表面積、関連技術の充填塔の体積の約1/10という生成器の体積、気圧降下が1Torr未満であること、ジェット駆動圧力が約5psiであること、および、気体の流れへの液体の混入が最小限に抑えられていることという特徴を含む。
気液接触器は、元素水銀(Hg0)をHg(II)に酸化する様々な水性のソーベントとともに利用可能である。Hg(II)状態になると、水銀は水溶液で可溶性になり、Hg(II)が触媒活性により元素水銀(HgO)を排ガスストリームから除去することができる。酸化剤(OX)には、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)および過酸化水素(H2O2)が含まれるが、これらに限定はされない。接触器で利用されるのに好適な酸化剤は、Hg0酸化率を向上させる触媒(Cat)が添加物として加えられた過酸化水素(H2O2)である。添加物は例えば、HgCl2、TAML(鉄(III)テトラ−アミド大環状リガンド)、カタラーゼまたはペルオキシダーゼである。
水性の過酸化水素が含まれる際のHg酸化の化学メカニズムは以下であると考えられている。
H2O2 + Hg0 → Hg(II) + 生成物 (1)
H2O2 + Cat + Hg0 → Hg(II) + 生成物 (2)
本実施形態では、高効率で水銀を除去する排ガス洗浄処理に、高効率の気液接触器を利用する。システムは、再形成オリフィス板(またはノズル板)を有し、幅広い範囲の流体および処理条件に適合する流体合成技術を含むノズルアレイを含む。Hgの除去は、ここに参照として組み込まれる米国特許第7,379,487号明細書に記載されているように気体を高い表面から体積型気液接触器ユニットへと通過させることにより行われる。排ガスは、実質的に接触器体積および気流圧力降下が小さい気液接触器を水平方向に通過する(横流と称する)。水性のソーベントおよび実質的な表面積を有する、複数の低圧、垂直方向のフラットジェットアレイが横流の気流を交差するように走っている。フラットジェットアレイは、空気力学的な形状とすることで、比較的高い気体速度において、液体粒子の混入が少ない安定したジェット流を形成する。
好適な実施形態では、水銀の吸収および除去は、高いHg容量、高い酸化安定性、低い反応熱、低いソーベントコスト、低い腐食性、および販売可能な製品ストリームといった特性を有するシステムにより行われる。ソーベントの一例は、元素Hg0のHg(II)への酸化を促進させるべく、過酸化水素を約10重量%、触媒を約0.1重量%含む水溶液である。ノズル板の構成は、約1%から約2%の懸濁液を過酸化水素の水溶液に添加して接触器の性能を高めることで最適化されてよい。添加物は、過酸化水素水溶液に反応せず、且つ、質量移動の妨げとならないように設計されてよい。添加物により、最小の液体圧力降下で最大のジェット性能(ジェットの幅、長さ、表面積)を得ることのできるソーベント特性(例えば粘度)の形成が可能となる。添加物の一例はベントナイトである。
さらなる化学化合物を含めることが、Hgの酸化率ひいては質量移動動力学を助けるために好適である。好適な溶媒システムへの添加物の一例としては、過酸化水素が挙げられる。高いpHで過酸化水素が分解しすぎることを避けるべく、安定剤を溶媒の混合物に添加する。高いpHにおける過酸化水素の安定剤の一例としては、ポリ(α−ヒドロキシアクリル酸)が挙げられる。過酸化水素の酸化力は、過酸化水素の触媒を添加することでさらに向上しうる。酸化水素の触媒の一例は鉄(III)テトラ−アミド大環状リガンド(TAML)である。
図33を参照して説明したように、このシステムをHg捕捉に利用することができる。プロセスを、気液チャンバ2645にHgを含む排ガスを注入することから説明する。気体プレナムは、液体フラットジェット全体に均等に気体を流す。液体ジェットは、ソーベントを液体プレナム2635にポンプして、溶媒をノズルオリフィス全体に行き渡らせることで生成される。生成されるジェットは垂直下方に接触チャンバへと流れ下り、気液分離器を通って捕捉タンク2620へ到達する。水銀はソーベント液体に吸収され、排ガスストリームから除去される。気液チャンバ2645では、垂直に流れる溶媒が気体の横流と交差する。洗浄後の排ガス2655は、接触チャンバの出口から排出される。ソーベントは再循環されて、連続して排ガスストリームからHgを除去する。
<H2S捕捉デバイス>
本発明の別の実施形態は、気液接触器の利用によるH2Sの捕捉に関する。硫化水素は非常に毒性の強い、可燃性であり、不快な臭いを放つガスであり、幅広い範囲で毒と考えられているが、なかでも中枢神経系に影響を与える。人工的な硫化水素源は、天然ガスおよび硫黄の収容量が多い原油の加工により主に生じる。天然ガスにおけるH2Sの濃度は、28%までにもなる。人工排出は、世界中のH2S排出の約10%を占める。製油の水素化脱硫処理がH2Sの産業排出の大部分を占める。H2Sの他の産業排出源は、コークス炉、製紙工場、および製皮業である。
H2S排出および硫黄の収容量が多い燃料製品(ガソリンおよびディーゼル)に関する環境問題により、厳しい政府による制御がなされるようになった。これらの規制により、天然ガスおよび製油処理のコストが大幅に上がる結果となった。H2Sを除去するための技術はこれまでに複数提案されている。
最も普及している方法は、当技術分野で知られているクラウスプロセスであり、これにより、H2Sを酸素燃焼により元素である硫黄に変換する。クラウスプロセスの問題の1つは、原料のCO2がH2Sと反応して、硫化カルボニルおよび二硫化炭素が形成されるということである。別の問題は、均衡点の問題として、未反応のH2Sが元素の硫黄製品に混入するということである。H2Sを除去する他の方法には、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、およびメチルジエタノールアミン)、酸化鉄/炭酸ナトリウム、チオヒ酸塩(thiosarsenate)、キニーネ、および金属バナジウムプロセスを含む。しかしながら、H2Sを燃焼排ガスから除去するための高性能でコスト効率に優れた市場的に実現可能な方法は未だ存在しない。H2S捕捉の強力なコスト推進要因は(人件費と建築機器を除いて)試薬費、処理および汚物処理、ハードウェア(吸収容器、燃焼排ガス処理および配管業務)および設置スペース面での制約である。
効率的でコスト効率に優れた硫化水素除去機能の提供は主要な技術的課題である。H2S捕捉機能を向上させるための様々な性能領域には、反応装置の容器サイズおよび圧力降下を小さくすること、および販売可能な副産物を生じる効率的な質量移動溶媒システムを利用すること等が含まれる。本発明の一実施形態は、これら対象となる性能を、高いH2S吸収動力学と付加価値のある生産ストリームとを連結した革新的設計手法で達成することに関する。
<フラットジェット噴霧接触器>
気液質量移動処理は、気液の界面に沿って行われる。気体の液体ソーベントへの吸収率は、液相質量移動係数kL、比表面積(気液界面の表面積の体積に対する比率)a、および、バルク流体CLと気液界面CL *との間の濃度勾配により制御される。多くの気液反応システムでは、CL *の可溶性が低く、濃度勾配の制御には制限がある。従って気体吸収率を高めるには、質量移動動力学を高め、界面表面積の体積に対する比率を上げる必要がある。
本発明の一実施形態は、例えば図33を参照して記載するような高性能気液接触器を含む。システムは、高密度で、大きな表面積であり、空気力学的な形状の薄型フラットジェットを利用することで、質量移動および接触器の性能を全体的に向上させることができる。気液接触器は、約1cm−2から約50cm−2という向上した比表面積、関連技術の充填塔の体積の約1/10という生成器の体積、接触器全体の気圧降下が5torr/線形ft(lineal ft)未満といったように低いこと、液体ジェット駆動圧力が50psi未満であること(より好適には20psi未満であること)、および、気体の流れへの液体の混入が最小限に抑えられていることに特徴付けられる。
好適な実施形態では、システムは、約10cm−1から約20cm−1の範囲の比表面積、関連技術の充填塔の体積の約1/10という生成器の体積、気圧降下が1Torr未満といったように低いこと、ジェット駆動圧力が約5psiであること、および、気体の流れへの液体の混入が最小限に抑えられていることという特徴を含む。
気液接触器は、H2Sおよび他の硫黄ベースの化合物を酸化する様々な従来の液体(水性ベースの)ソルベントとともに利用可能である。酸化剤(OX)には、アンモニア水、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、およびメチルジエタノールアミン)、酸化鉄/炭酸ナトリウム、チオヒ酸塩(thiosarsenate)、キニーネ、および金属バナジウムプロセス、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、および過酸化水素(H2O2)が含まれるが、これらに限定はされない。接触器で利用されるのに好適な酸化剤は、酸化率を向上させる触媒(Cat)が添加物として加えられ、過酸化水素の分解を制御する安定剤が加えられた塩基性の(pH>7)過酸化水素(H2O2)水溶液である。触媒の添加物は例えば、TAML(鉄(III)テトラ−アミド大環状リガンド)である。安定剤は例えば、ポリ−α―ヒドロキシルアクリル酸、珪酸ナトリウム、またはジメチレントリアミンペンタ酢酸であってよい。
水性の塩基性の過酸化水素が含まれる際に生じうるH2S酸化の化学メカニズムは以下であると考えられている。
H2S + OH- → HS- + H2O (1)
4H2O2 + HS- → SO4 2- + H+ + 4H2O (2)
<H2S除去プロセス>
本実施形態は、硫化水素を高効率で除去する排ガス洗浄プロセスに関している。本発明は、再形成オリフィス板(または記載したノズル板)を有するノズルアレイと、幅広い範囲の流体および処理条件に適合する流体合成技術を含む。H2Sの除去は、気体を高い表面から体積型気液接触器ユニットへと通過させることにより行われる。排ガスは、関連技術よりも実質的に接触器体積および気流圧力降下が小さい気液接触器を水平方向に通過する(横流と称する)。水性のソーベントおよび実質的な表面積を有する、複数の低圧、垂直方向のフラットジェットアレイが横流の気流を交差するように走っている。
フラットジェットアレイは、空気力学的な形状とすることで、比較的高い気体速度において、液体粒子の混入が少ない安定したジェット流を形成する。二酸化硫黄の吸収および除去用のソーベントは、高いH2S容量、高い酸化安定性、低い反応熱、低い溶媒コスト、低い腐食性、および販売可能な製品ストリームといった特性を有する。ソーベントの一例は、H2Sの酸化を促進させるべく、過酸化水素を約10重量%、触媒を約0.1重量%含む水溶液である。接触器を最適化するべく、約1%から約2%の懸濁液を過酸化水素水溶液に添加して、接触器の性能を高めることができる。添加物の例としては、過酸化水素水溶液に反応せず、且つ、質量移動の妨げとならないようなものが挙げられる。添加物の例によって、最小の液体圧力降下で最大のジェット性能(ジェットの幅、長さ、表面積)を得ることのできるソーベント特性(例えば粘度)の形成が可能となる。添加物の一例はベントナイトである。
さらなる化学化合物を含めることが、H2Sの酸化率ひいては質量移動動力学を助けるために好適である。好適なソーベントシステムへの添加物の一例としては、過酸化水素が挙げられる。高いpHで過酸化水素が分解しすぎることを避けるべく、安定剤をソーベントの混合物に添加する。高いpHにおける過酸化水素の安定剤の一例としては、ポリ(α−ヒドロキシアクリル酸)が挙げられる。過酸化水素の酸化力は、過酸化水素の触媒を添加することでさらに向上しうる。酸化水素の触媒の一例は鉄(III)テトラ−アミド大環状リガンド(TAML)である。
図33を参照して説明したように、本システムをH2S除去に利用することができる。プロセスを、気液チャンバ2645にH2Sを含む排ガスを注入することから説明する。気体プレナム2605は、液体フラットジェット全体に均等に気体を流す。液体ジェットは、ソーベントを液体プレナム2635にポンプして、ソーベントをノズルオリフィス全体に行き渡らせることで生成される。生成されるジェットは垂直下方に接触チャンバへと流れ下り、気液分離器を通って捕捉タンク2620へ到達する。気液チャンバ2645では、垂直に流れる溶媒が気体の横流と交差する。硫化水素はソーベント液体に吸収され、排ガスストリームから除去される。洗浄後の燃焼排ガス2655は、接触チャンバの出口から排出される。ソーベントは再循環されて、連続して燃焼排ガスストリームからH2Sを除去する。
<CO2捕捉デバイスのフラットジェット噴霧接触器>
別の実施形態は、気液接触器の利用によるCO2の捕捉に関する。気液質量移動処理は、気液の海面に沿って行われる。気体の液体溶媒への吸収率は、液相質量移動係数kL、比表面積(気液界面の表面積の体積に対する比率)a、および、バルク流体CLと気液界面CL *との間の濃度勾配により制御される。多くの気液反応システムでは、CL *の可溶性が低く、濃度勾配の制御には制限がある。気体吸収率を上げるべく、本気液接触器は、質量移動動力学、気液混合および界面表面積の体積に対する比率を高めるように設計される必要がある。
本発明の一実施形態は、上述したように高性能気液接触器に関しており、高密度で、大きな表面積であり、空気力学的な形状の薄型フラットジェットを利用することで、質量移動および接触器の性能を全体的に向上させることができるアレイに基づいている。
本発明の一実施形態は、例えば図33を参照して記載するような高性能気液接触器を含む。システムは、高密度で、大きな表面積であり、空気力学的な形状の薄型フラットジェットを利用することで、質量移動および接触器の性能を全体的に向上させることができるアレイに基づく。気液接触器は、約1cm−2から約50cm−2という向上した比表面積、関連技術の充填塔の体積の約1/10という生成器の体積、接触器全体の気圧降下が5torr/線形ft(lineal ft)未満といったように低いこと、液体ジェット駆動圧力が50psi未満であること(より好適には20psi未満であること)、および、気体の流れへの液体の混入が最小限に抑えられていることに特徴付けられる。
好適な実施形態では、システムは、約10cm−1から約20cm−1の範囲の比表面積、関連技術の充填塔の体積の約1/10という生成器の体積、気圧降下が1Torr未満といったように低いこと、液体ジェット駆動圧力が約5psiであること、および、気体の流れへの液体の混入が最小限に抑えられていることという特徴を含む。
CO2を効率的に捕捉するべく、接触器は、モノエタノールアミン(MEA)、メチルアミノプロパノール(AMP)およびピペラジン(PZ)等のヒンダードアミン、炭酸カリウム(K2CO3)および水酸化アンモニウム(通常はアンモニア水と称され、省略記号がAAである)を含むがこれらに限定はされない幅広い様々な水性ベースのソーベントと利用可能である。アンモニア水とともに接触器を利用することは、重炭酸アンモニウムを生成し、肥料である尿酸に変換したり、化学原料として販売したりすることができ、処理コストが減少するので、特に好適である。アンモニア水におけるにおけるCO2捕捉および副産物生産の化学メカニズムは以下であると考えられている。
2NH3 + H2O + CO2 → (NH4)2CO3 (炭酸アンモニウム) (1)
(NH4)2 CO3 + CO2 + H2O → 2NH4HCO3 (重炭酸アンモニウム) (2)
NH4HCO3 + 熱、圧力 → (NH2)2CO (尿酸) (3)
<CO2除去プロセス>
本実施形態は、本発明の一実施形態の気液接触器により高効率で二酸化炭素を除去する排ガス洗浄プロセスである。システムは、再形成オリフィス板(またはノズル板)を有し、幅広い範囲の流体および処理条件に適合する流体合成技術を含むノズルアレイを含む。CO2の除去は、上述したように、気体を大きな表面から気液接触ユニットへと通過させることで行われる。排ガスは、実質的に接触器体積および気流圧力降下が小さい気液接触器を水平方向に通過する(横流と称する)。水性の溶媒および実質的な表面積を有する、複数の低圧、垂直方向のフラットジェットアレイが横流の気流を交差するように走っている。フラットジェットアレイは、空気力学的な形状とすることで、比較的高い気体速度において、液体粒子の混入が少ない安定したジェット流を形成する。二酸化炭素の吸収および除去のソーベントは、高い二酸化炭素容量、高い酸化安定性、低い反応熱、低い溶媒コスト、低い腐食性、および販売可能な製品ストリームといった特性を有するものであってよい。効果的なCO2除去の溶媒の例としては、28重量%のアンモニアを収容する水溶液が上げられる。気液接触器を最適化するべく、約1%から約2%のポリマーまたは懸濁液をアンモニア水溶液に添加して、接触器の性能を高めることができる。
添加物の例としては、アンモニア水に反応せず、且つ、質量移動の妨げとならないようなものが挙げられる。好適なポリマーまたは懸濁液によって、最小の液体圧力降下で最大のジェット性能(ジェットの幅、長さ、表面積)を得ることのできるソーベント特性(例えば粘度)の形成が可能となる。ポリマー添加物の例としては、ジエチレングリコールが挙げられる。他のポリマー添加物の例には、ポリエチレンオキシドまたはポリビニルアルコールが含まれる。無機物添加物の一例はベントナイトである。
図33を参照して説明したように、本システムをCO2除去に利用することができる。プロセスを、気液チャンバ2645にCO2を含む排ガスを注入することから説明する。気体プレナム2605は、液体フラットジェット全体に均等に気体を流す。液体ジェットは、ソーベントを液体プレナム2635にポンプして、ソーベントをノズルオリフィス全体に行き渡らせることで生成される。生成されるジェットは垂直下方に接触チャンバへと流れ下り、気液分離器を通って捕捉タンク2620へ到達する。気液チャンバ2645では、垂直に流れるソーベントが気体の横流と交差する。二酸化炭素はソーベント液体に吸収され、排ガスストリームから除去される。洗浄後の排ガス2655は、接触チャンバの出口から排出される。ソーベントは再循環されて、連続して燃焼排ガスストリームからCO2を除去する。
気液接触器の性能を、図33の小型のサブスケールテストベッド上に示す。表7は、この例における幾何学パラメータをまとめたものである。
この例で利用されているジェットオリフィスの構成は上述した通りである。処理前に、ジェットオリフィス板へのポンプ支持圧力を変化させることで、ジェットの長さ、幅、および厚みについて液体ジェットの表面積を最適化させる。ジェット表面積(長さおよび幅)に関するさらなる最適化は、添加物(例えばジエチレングリコールまたはベントナイト)を利用して溶媒粘度/表面張力特性を向上させることで、または、オリフィスノズルの再成形により可能となる。
気液接触器の動作条件および性能の一例を表8に示す。アンモニア水とMEAという2つのソーベントシステムを、任意の動作条件下でテストした。ソーベントの混合物には粘度に関与する添加物を加えていない。排ガスは、空気とCO2とが、通常はCO2対空気の希釈率1:9で混合されたものを利用した気体の混合物を、大気温度および大気圧の条件下で接触器に注入して、カリブレーションしたマスフローコントローラを利用して計測した。計測された時間間隔に液体ジェットがカリブレーションされた受け手側の容器へ排出された量を記録することで、液体の体積流量を計測した。還元された(吸収された)CO2の量は、百分率で、%CO2還元=100x(Cin−Cout)/Cin…(1)のように表され、ここで、CinおよびCoutは、それぞれ接触器に出入りするCO2の濃度である。接触器に出入りするCO2の相対量は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)により4.2μm付近のCO2の基本吸収帯域を統合することで決定される。
図35は、液体のアンモニア水のジェットがON/OFFするCO
2のFTIR(フーリエ変換分光光度計)吸収スペクトルのグラフである。図35では、4つのテストの実行の平均を各テスト結果に対して実行した。背景のCO
2の濃度を、各実行前に記録した。記載されたテスト条件におけるCO
2吸収のテスト結果は、CO
2の除去が90%を超える割合であった。グラフは、CO
2分子の吸光度が、2400cm
−1から2250cm
−1という基本吸光領域の光範囲であった。グラフから、基本CO
2領域にある吸光種の低減を明らかに示しており、これは効率的な除去が行われたことを示している。これらのスペクトルに基本的数学的分析を行うことにより、これらの吸光レベルを与える濃度が分かり、これらの割合を調べることで除去を百分率で示すことができる。
<気体の汚染物質を除去するフラットジェット噴霧接触器のシステム>
本発明の実施形態では、気液接触器により気体ストリームの汚染物質を取り除くことができる。システムは、ある相(気体)の質量を別の相(液体)に変換する。このプロセスでは、気体ストリームは、液体噴霧形状またはプール状のソーベントを通過させられる、またはこれと接触させられる。気体の汚染物質はソーベントに溶解するので、液体ソーベント内に溶解される、または吸収されて、気体ストリームから除去される。吸収プロセスの程度は、質量移動処理により統括され、これには気体および液体の拡散、および、可溶性および化学反応が含まれる。
気液質量移動処理は、気液の界面に沿って行われる。気体の液体溶媒への吸収率は、液相質量移動係数kL、比表面積(気液界面の表面積の体積に対する比率)a、および、バルク流体CLと気液界面CL *との間の濃度勾配により制御される。多くの気液反応システムでは、CL *の可溶性が低いことから、濃度勾配の制御には制限がある。気体吸収率を上げるべく、本気液接触器は、質量移動動力学、気液混合および界面表面積の体積に対する比率を高めるように設計される必要がある。
本発明の一実施形態は、本明細書に記載するような高性能気液接触器を含む。システムは、高密度で、大きな表面積であり、空気力学的な形状の薄型フラットジェットを利用することで、質量移動および接触器の性能を全体的に向上させることができる。気液接触器は、約1cm−2から約50cm−2という向上した比表面積、関連技術の充填塔の体積の約1/10という生成器の体積、接触器全体の気圧降下が5torr/線形ft(lineal ft)未満といったように低いこと、液体ジェット駆動圧力が50psi未満であること(より好適には20psi未満であること)、および、気体の流れへの液体の混入が最小限に抑えられていることに特徴付けられる。
好適な実施形態では、システムは、約10cm−1から約20cm−1の範囲の比表面積、関連技術の充填塔の体積の約1/10という生成器の体積、気圧降下が1Torr未満であること、ジェット駆動圧力が約5psiであること、および、気体の流れへの液体の混入が最小限に抑えられていることという特徴を含む。
様々な種類の水性のソーベントをポリマー添加物と組み合わせて利用して効率的な気体汚染物質を捕捉することで、ジェット表面積が向上する。H2SおよびCO2等の酸性ガスは、通常、アルカノールアミン、モノエタノールアミン(MEA)およびジエタノールアミン(DEA)で除去される。基本のSO2およびNOxソーベントは、炭酸カルシウム混合物(ライムストーン/ライム)および水酸化アンモニウム(アンモニア水)をそれぞれ含む。ソーベントシステムをカスタマイズして、全てを1つにした捕捉システムは、汚染制御接触器を簡略化して小型にできることから好適である。全てを1つにしたシステムは、直列または並列に構成することができる。さらに、全てを1つしたシステムは、本明細書で記載する気液接触器を利用する。
好適な実施形態では、ジェット表面積を向上させる添加物はポリビニルアルコール、酸化ポリビニル、エチレングリコールまたはジエチレングリコールである。無機物懸濁液(例えばベントナイト)もジェット表面積を向上させる処理に好適である。アンモニア水は、CO2、SO2、NOxおよびH2Sを除去する機能を有することから、好適なソーベントである。酸化剤(例えば過酸化水素)を添加することで、水溶液に吸収されにくいNOおよびHgの酸化を助けることができる。高いpHで動作する過酸化水素を活性化させる触媒としては、鉄(III)テトラ−アミド大環状リガンド(TAML)が挙げられる。高いpHにおける過酸化水素の安定剤の好適な例としては、ポリ(α−ヒドロキシアクリル酸)が挙げられる。アンモニア水は、重炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、および硫酸アンモニウムがNOxおよびSO2がアンモニア水と反応した結果副産物として生じることから、特に好適な溶媒である。これら生成物は肥料として販売可能なので、動作コストを低減させることができる。全てを1つにした捕捉および副産物生成システムのためのベーシックな化学物質は以下の通りである。
SO2捕捉:
NH3 + H2O + SO2 → NH4 + + HSO3 - (1)
NH4 + + HSO3 + NH3 → 2(NH4) + SO3 2- (2)
2H2O2 + SO3 2- → H2O + H2SO4 (硫酸) (3)
H2SO4 + H2O → 2H+ + SO4 2- + H2O (4)
2NH4 + + SO4 2- → (NH4)2SO4 (硫酸アンモニウム) (5)
NOx捕捉:
NH3 + H2O → NH4 + + OH- (1)
H2O2 + OH- →HO2 - + H2O (2)
HO2 - + NO → NO2 + OH- (3)
NO2 + NO2 → N2O4 (4)
N2O4 + H2O →HNO2 + HNO3 (5)
HNO2 + H2O2 → HNO3 + H2O (6)
HNO3 (水溶液) → H+ + NO3 - (7)
NH4 + + NO3 → (NH4)NO3 (硝酸アンモニウム) (8)
Hg捕捉:
H2O2 + Hg0 → Hg(II) + 生成物 (1)
H2S捕捉:
H2S + H2O → HS- + H3O+ (1)
HS- + NH3 + H2O → NH4HS + OH- (2)
<気体汚染物質除去のためのシステムプロセス>
本発明の一実施形態は、気体汚染物質除去のためのノズルアレイを含むシステムに関する。ノズルアレイは、再形成オリフィス板(またはノズル板)を有し、幅広い範囲の流体および処理条件に適合する流体合成技術を含む。汚染物質ガスの除去は、気体を高い表面から体積型気液接触器ユニットへと通過させることにより行われる。排ガスは、実質的に接触器体積および気流圧力降下が小さい気液接触器を水平方向に通過する(横流と称する)。水性ベースのソルベントおよび実質手金あ表面積を有する複数の低圧、垂直方向のフラットジェットアレイが横流の気流を交差するように走っている。フラットジェットアレイは、空気力学的な形状とすることで、比較的高い気体速度において、液体粒子の混入が少ない安定したジェット流を形成する。
好適な実施形態では、気体の吸収および除去のために好適なソーベントは、高い液体ジェット性能、高い気体搭載容量、高い酸化安定性、低い反応熱、低いソーベントコスト、低い腐食性、および販売可能な製品ストリームといった特性を有するシステムである。上述したように、ジェットノズル板の構成は、ある実施形態では、約1−2%のポリマーまたは懸濁液をソーベント溶液に加えて接触器の性能を向上させることで最適化することができる。
好適な添加物の例としては、ソーベントに反応せず、且つ、質量移動の妨げとならないようなものが挙げられる。好適なポリマーまたは懸濁液によって、最小の液体圧力降下で最大のジェット性能(ジェットの幅、長さ、表面積)を得ることのできるソーベント特性(例えば粘度)の形成が可能となる。ソーベントの例としては、28重量%のアンモニアを収容し、ポリマー添加物または懸濁液を加えて、最小の駆動圧力において最適なジェット幅、長さ、および厚みが得られるように液体の粘度を高めた水溶液が上げられる。ポリマー添加物の一例はジエチレングリコールである。無機物懸濁液の例はベントナイトである。
さらなる添加物を含めることが、汚染物質の酸化ひいては質量移動動力学を助けるために好適である。汚染物質の分子の酸化を促進させる添加物の一例としては、Hg0およびSO2、過酸化水素が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。高いpHで過酸化水素が分解しすぎることを避けるべく、安定剤をソーベントの混合物に添加する。高いpHにおける過酸化水素の安定剤の一例としては、ポリ(α−ヒドロキシアクリル酸)が挙げられる。過酸化水素の酸化力は、過酸化水素の触媒を添加することでさらに向上する。酸化水素の触媒の一例は鉄(III)テトラ−アミド大環状リガンド(TAML)である。
一実施形態では、図33に示した気液接触器を汚染物質ガスの除去に利用することができる。プロセスを、気液チャンバ2645に排ガス2600を注入することから説明する。気体プレナム2605は、液体フラットジェット全体に均等に気体を流す。液体ジェットは、ソーベントを液体プレナム2635にポンプして、ソーベントをノズルオリフィス全体に行き渡らせることで生成される。生成されるジェットは垂直下方に接触チャンバ2645へと流れ下り、気液分離器2650を通って捕捉タンク2620へ到達する。気液チャンバ2645では、垂直に流れる溶媒が気体の横流と交差する。汚染物質ガスはソーベント液体に吸収され、排ガスストリームから除去される。洗浄後の排ガス2655は、接触チャンバの出口から排出される。ソーベントは再循環されて、連続して排ガスストリームから汚染物質を除去する。表9は、本実施形態の幾何学パラメータの好適な実施形態をまとめたものである。
処理前に、ジェットオリフィス板へのポンプ支持圧力を変化させることで、ジェットの長さ、幅、および厚みについて液体ジェットの表面積を最適化させる。ジェット表面積(長さおよび幅)に関するさらなる最適化は、最適な添加物を利用してソーベントの粘度/表面張力特性を向上させることで、または、オリフィスノズルの再成形により可能となる。しかし、これらテストには、液体ソーベントにポリマー添加物を加えない。
気液接触器の動作条件および性能の一例を表10に示す。アンモニア水とMEAという2つのソーベントシステムを、任意の動作条件下でテストした。ソーベントの混合物には粘度または酸化に関与する添加物を添加していない。排ガスは、空気とCO
2とが、通常はCO
2対空気の希釈率1:9で混合されたものを利用した。気体の混合物を、大気温度および大気圧の条件下で接触器に注入して、カリブレーションしたマスフローコントローラを利用して計測した。計測された時間間隔に液体ジェットがカリブレーションされた受け手側の容器へ排出された量を記録することで、液体の体積流量を計測した。還元された(吸収された)CO
2の量は、百分率で、%CO
2還元=100x(C
in−C
out)/C
in…(1)のように表され、ここで、C
inおよびC
outは、それぞれ接触器に出入りするCO
2の濃度である。接触器に出入りするCO
2の相対量は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)により4.2μm付近のCO
2の基本吸収帯域を統合することで決定される。液体のアンモニア水を含む薄型フラット液体ジェットがON/OFFする代表的なCO
2のFTIR吸収スペクトルを図39に示す。4つのテストの実行の平均を各テスト結果に対して実行した。背景のCO
2の濃度を、各実行前に記録した。記載されたテスト条件におけるCO
2吸収のテスト結果は、CO
2の除去が90%を超える割合であった。
<石炭燃焼電力プラントにおけるパイロットテスト>
この実験では、トレイラーマウントされた2MWユニット(10,000ACFM気流)を、石炭燃焼電力プラントでのパイロットテスト用に設計および製造した。デバイスシステムは、ガスプレナム、燃焼排ガスブロワー、熱交換サブモジュール、液体捕捉およびアンチスプラッシュサブモジュールを含む気液接触モジュール、デミスターサブモジュール、ノズルアレイアセンブリ、ソーベントポンプ、液体処理サブモジュール、診断およびその他の付属コンポーネントからなる。システムは、閉ループの安定状態またはバッチ構成で実行して、電力プラントにおいて優先的な汚染物質を含む汚水の排水要件を満たすように設計されている。初期のパイロットテストは、0.13MWスケール(公称値で650ACVMの燃焼排ガス)で、スリップストリームに行われ、所要時間およびリスクを低減させた。650ACFMスリップストリームは、2つの6インチの鋼製パイプを利用して洗浄装置に流用された。接触器内の燃焼排ガスの速度は、0.2ft2の入口チャネル面積を利用して電力プラント廃棄物ダクトの速度(56ft/s、17m/s)に整合させた。接触器における気体の滞留時間は、約0.04秒であった。システムを5psi液圧降下で動作させたところ、燃焼排ガスに約0.1psiという最小の気圧降下が観察された。SO2、NO、NO2、CO、およびCO2の燃焼排ガスの排出を、環境保護局(EPA)により性能が検証された燃焼排ガス解析器を用いて計測した。スリップストリームがユニットに150Fおよび11.2psiAの温度および圧力で入力された。0.1重量%のNaOH溶液をシステム内に循環させて、SO2を洗浄した。
図36は、2MWプロトタイプのシステムを示す。図37は気液接触器を示す。図38は、図36のシステムの溶媒ポンプを示す。
図36を参照すると、気液接触器3210は、本明細書で記載するフラット液体ジェット接触システムを含む。溶媒供給プレナム3220は、接触器3210に接触するソルベントを提供する。図37では、燃焼排ガスが燃焼排ガス入口点3230から入り、接触器3210内に進む。燃焼排ガスは燃焼排ガス出口点3250から外へ出る。図38では溶媒ポンプ3260が示されている。図39−図40は、Y軸の気液接触器を利用する/しない場合の石炭燃焼電力プラントからの燃焼排ガスの対象となる汚染物質の濃度をX軸の時間との関係で示すグラフである。TESTO335電気化学分析器を3つ全ての分析的測定に利用した。図39は、0.13MWの均等物である燃焼排ガスにおける接触器を利用した第1の小さなスケールのテストでのSO2の濃度を示す。燃焼排ガスを起動させると、SO2の濃度は、略200ppmで実質的に安定状態に達した。接触器のシステムの利用を開始すると、これらSO2の排出レベルが直ちに略計器検出リミットにまで低減して、安定状態に戻った。TESTO計器は、接触器を取り外してもシステムのサンプリングを続け、その結果、SO2濃度が元の汚染レベルに向かって急激に上昇したことが示された。図40は、同じ機械システムで、異なるソーベントを利用したときのCO2レベルを示す図である。TESTO分析器は、4分の期間内にCO2レベルが低減しそのレベルで安定したことを明らかに示している。
さらに深いSO2除去の効率(>99%)が、排出要件を満たし、効率的なCO2汚染物質除去のための燃焼排ガスを前処理する目的から必要となりうる。0.13MWの洗浄装置の利用により、約99.5%のSO2の除去効率(平均約99%)が達成されたことが図39から明らかである。約19重量%のアンモニア水を利用した複数の汚染物質除去のためのスコーピングテストも図40に示すように行った。システムはCO2吸収のために最適化されてはいないが(低く、短い滞留時間)、ユニットはこれら条件下でスリップストリームCO2の50%を超える量を吸収した。加えて、99.5%を超えるSO2および80%を超えるNOxを同時にアンモニア水を利用して除去した。ジェットおよび媒体の最適化により、90%のCO2除去効率を達成するためには2つのユニットのみが必要となることが想定される。
結果を急速にスケーリングして利用することで、同じ電力プラントの並列型気液接触モジュールを含む約2MW(8400ACFM)モジュール型パイロット洗浄装置の動作を示すことができた。気液接触器の入口チャネル領域は約3.9ft2であり、これは約58ft/s(18m/s)の電力プラントの廃液に整合する流れの速度および約0.07秒の滞留時間を提供する。溶媒の流速は2800GPMであり、約330GPM/1000ACFMのL/Gを提供する。ジェットの液圧降下は、約6psiであった。デミスターサブモジュールおよびジェット充填サブモジュールを含む約2MWの接触段階全体の気圧降下は0.4psiであり、ここの気圧降下は、約3.3ftのジェット充填で約0.1psiであった。入出力される燃焼排ガス温度は、それぞれ華氏250度および華氏115度であった。安定状態で(溶媒排出なしに)24時間テストを、平均SO2洗浄効率を99%で行った。
図41は、より大きな接触器を約2MWの均等な燃焼排ガスの流れが通過する、SO2捕捉についての大規模なテストを示す。複数のON/OFFサイクルを行って、動作の一貫性を保証した。図41は、H2O、NaOH(0.1重量%)を利用する2MWスケールによるSO2の洗浄結果を示すグラフである。グラフは、x軸に時間(アワー)を示し、y軸に単位をppmとする濃度を示す。示されているように350ppmを超えるSO2において燃焼排ガスが汚染物質の分子として排出されている。気液接触モジュールは実質的に全てのSO2を除去した。より具体的には、これが再生可能かテストするために接触器液体ジェットを遮断したところ、SO2濃度は、図41に示す350ppmを超える値に戻った。液体ジェットモジュールの利用を開始すると、SO2濃度は基準値付近にまで下がった。これを一貫して繰り返すことにより、図41に示すものと同じ結果が生成された。さらに、最近のフォローアップテストによってSO2除去効率が確かめられた。加えて、消費媒体を利用してシミュレーションされた汚水処理実験を実験室で行って、硫酸カルシウムの沈殿を証明した。
本発明の実施形態は、モジュール型気液接触器、または幅広い範囲の燃焼排ガス条件において複数の燃焼排ガス汚染物質(SOx、NOx、CO2および粒子)を除去する燃焼後技術を含む気液接触器に関する。湿式洗浄システムは、機械的な、または放出規則を順守しなかったことによる動作停止を受け易い。気液接触洗浄システムは、性能、柔軟性、利便性および信頼性の面で優れた継続的なオンライン処理を行う小さなフットプリントのパッケージとして設計されている。
実際の性能メトリック(例えばSO2除去)は従来の方法、機器設計に直接匹敵するものではあるが、プロセス的に等価な本発明に示す設計、方法、およびシステムは、これら成果を達成する際のサイズが従来のシステムの半分未満であり、コストが従来のシステムの資本コストの10倍以上も小さい、というように驚くべきものである。
モジュール型気液接触洗浄ユニットの製造およびスケーリングにモジュール型設計法を利用する。洗浄モジュールを並列または直列に追加することで、必要な汚染物質除去性能が達成される。これは、低圧降下(例えば約0.4psiの圧力降下)および低寄生電力要件(例えば一段階について約0.8%未満)により達成される。この方法により製造が標準化され、しかも、サイト要件ごとの洗浄装置のカスタマイズも可能になる。モジュール型気液接触器は工場においてアセンブリライン製造プロセスで製造される。
<気液接触モジュール>
図42は、60MW洗浄ユニットおよび支持構造を表す。図43は、図42の洗浄塔の2MWセクションの1セクションの正面図である。図44は、図42の洗浄塔の2MWセクションの1セクションの側面図である。図45は、入口チャネルおよびジェット充填ゾーンの配置を示す。本実施形態では、システムは、約600lbs未満および約5ftx10ftx10ftの寸法を有するよう構成される。これらユニットはさらに、約85,000cfmを超える燃焼排ガスの流れを処理可能であってよく、適宜拡大縮小といったスケーリングが可能である。
ユニットは、並列に積層するよう、且つ、電力プラントに応じたサイズに設計される。ある並列構成においては、モジュールは互いの上、または隣(隣り合わせ)に構成されてよい。入力される気体ストリームを、並列モジュール間で、各モジュールが均等な処理を行うことができるように分割する(例えば均等に)。一実施形態では、10個の2MVベースモジュールを垂直に積層することで、20MWの合成モジュール(85,000cfm)を生成する。そして3つの20MWモジュールを水平方向に連結して60MWのシステムを生成して、60MWのシステムを含む3つの20MWモジュール間で、入力される気体ストリームが均等に分割されるようにする。
本実施形態では図42に示すように、ソーベント格納タンク3315から、洗浄システムの溶媒供給プレナム3305に、1つのノズルアレイに構成された複数のノズルを介してポンプすることで、ソーベントを供給する。ノズルアレイは、主に平面状の液体ジェットを提供し、各液体ジェットは液体の平面シートを含み、複数の液体ジェットは実質的にそれぞれの平行面に位置している。フラット液体ジェットは、洗浄塔3345に形成され、ここで気体の流れ3320はジェットの平坦な表面に対して平行に通過する。ソーベントが塔の底部に落ちると、熱交換器3340は、ソーベントが接触プロセスで吸収した熱を捕捉する。次いでソーベントは導管3335内からポンプ筐体3330へと流れ、そこからさらに大部分が水処理システム3325へとポンプされる。
3325で示される水処理システムは、あくまで概略を示したものであり、液体の二次または三次処理に応じて、接触システムのこのセグメント3325は小さくても大きくてもよい。小さなシステムの一例は、捕捉された気相分子を拡散するための熱交換器のみを含み、図42の「ボックス」に嵌合するようなものであってよい。一方で、大きなシステムは、利用される化学物質および用途に応じて大型であってよい沈殿タンク、沈降タンク、および固体圧縮サブシステムを含んでよい。
3330で示すポンプ筐体は、当技術分野で公知な接触システムに適切な体積の液体を供給する用途に適切なサイズの液体ポンプであってよい。3330で示すブロックはオプションとしてよく、サイト環境およびポンプの選択、および、選択されたポンプを雨または雪から保護する必要があるかどうかに応じて設けるかどうかを決定する。
図43−図45では、スプレーバックベースユニットの構成が示されている。本実施形態のベースユニットまたはベースモジュールは、約25cmx130cmの入力チャネルと、スプレーパックの3400ノズル(85個のノズルの40行)全部に基づいて約5スプレー/cm2を含む約1.7m2のスプレーパック領域からなる。図43は、廃液入口3360、廃液出口3350、およびジェット充填ゾーン3355を示す。ジェット充填ゾーン3355は、液体ジェットと気体分子とが互いに接触する実際の接触器の体積である。図45では、ジェット洗浄充填3365の側面断面が示され、その後方には、廃液ストリームからの流体の混入を防ぐためのスプレーまたはデミスター3370が続いている。液体ジェットが高速くても、特に気体の速度が速くなると、液体の蒸留が幾らか気流に混入する。この混入物には、小さな液滴(例えばエアロゾルまたは霧)が含まれる。デミスターは、小さな霧の液滴が図29の1660で表される元素を含むゾーンを通る小さなゾーンを含み、これらエレメントの表面上で凝縮させて、液体槽システムに流れて戻される。この特定の実施形態では、これらエレメントとは垂直ロッドであるが、小さな圧力降下を引き起こし、凝縮/合体面と乱気流とを組み合わせることのできるような任意の設計を含めることができる(例えばメッシュ、熱交換器のエレメント、または空気力学的なプレートまたはバッフルを含むがこれらに限定はされない)。
図46は、本発明の別の実施形態による取り外し可能なノズル板を備えるジェット充填ゾーンを示す。図47は、図46のジェット充填ゾーンのノズル板の構成を示す。図48は、図46のジェット充填ゾーンの封止システムを示す。示されているように、モジュール型の気液接触器は、利便性、アクセス可能性、および信頼性を鑑みて設計される。システム(例えば気液接触器または洗浄ユニット)は、オリフィス板を含むノズルアレイをスナップ式で設計しており、動作を中断させることなく消耗した、または詰まったオリフィスを交換することができる。システムはさらに、機械機器または支持システムに重複をもたせるよう設計することができる。例えば大きなプラント設備は、約20%の予備コンセプトを含むことで、必要な場合に、プラントの動作の妨げとならずに並列なユニットを補修することができる。図46を参照すると、取り外し可能な板3410の部分的に取り外された位置が示されている。取り外し可能な板3410は、複数の並列なフラット液体ジェットを形成する複数の行のノズルを有する複数のノズル板を含む。図47は、取り外し可能な板3410の全部分を示している。取り外し可能な板3415は設定位置で示されており、取り外し可能な板3410は取り外された状態が示されている。図48は、ジェット板3425を封止表面3435に対してエラストマーシール3430で封止するよう設計される封止メカニズム3440を示す。図示されているのは、ジェット板3425の端部の小さな断面の側面図と標準的なジェット板(3410または3415)の端部の小さな拡大図である。本実施形態では、ジェット板は3415に対して取り付けられており、3415の端部は、フレーム3435に取り付けられたピン3440が溝3445に嵌合する一連の小さな角度を有する溝を有している。溝3445の角度は、封止方向に生じるトルクにより、溝の角度がピン3440に対するカムとして機能して、エラストマーシール3430に加圧するように構成される。これはあくまで1つの特定の実施形態にすぎないが、機械システムの当業者には、流体面の封止も、同様の機能を果たし、容易に想到可能な代替物であることが明らかである。
<SOx、NOx、および粒子プロセスにおけるモジュール型の気液接触器>
別の実施形態は、高度な汚水および製品流処理機能を備えた小型且つ高性能で、低コスト、水をあまり利用しない、エネルギー効率の高い気液接触システムまたは洗浄システムを含むNa/Caデュアルアルカリプロセスを用いた深い燃焼排ガスSO
2の除去に関して分析された設計に関する。このプロセスの設計要件を表11に示す。
<燃焼排ガス調節システム>
本発明の一実施形態を利用して燃焼排ガスを処理する用途において利用される方法を一般的な用語を用いて説明することができる。これらの一般化は、サイトおよび利用要件に応じてカスタマイズできるが、主に4つのセクションに分類することができる。図49は、汚染物質除去システムのプロセスフロー図である。図49では、気液接触システムの基本的なプロセスフロー図は、主要なシステムコンポーネントと主要なストリームの点とを示している。4つのセクションとは、セクション1:燃焼排ガスまたはプロセスガスのセクション、セクション2:洗浄装置または反応器セクション、セクション3:ソーベントまたは反応物入力、および、セクション4:反応性生物処理およびソーベントのリサイクル(または放出)である。本実施形態の主旨から、これら4つのセクションを燃焼排ガスの脱硫への利用を例にとって詳述するが、当業者であれば、これらプロセスにさらなる修正を加えることで、高効率な気液接触システムによる恩恵を受けることのできる多数の様々なプロセスについて想到するであろう。
セクション1を参照すると、燃焼排ガス5402は、産業処理(石炭火力発電所等)により生成され放出される。燃焼排ガスはセクション2にプロセス点1(PP1)で入り、流れる気体はセクション2で処理され、その後PP2を通り、オプションである燃焼排ガスヒータ5404で適宜加熱され、PP3でファンまたはブロワーに到達し、燃焼排ガスをPP4で燃焼排熱スタック5406に集め、放出に備えさせる。燃焼排ガスは、燃料源および燃焼の効率性に応じて複数の汚染物質を含む可能性がある。本実施形態では、SOx、NOx、H2O、SO2、HCl、およびHFのみが、図49に示す反応システムに供給を行うボイラー内に形成されている、と仮定する。燃焼排ガス5402の生成と放出との間で、この燃焼排ガスストリームのスリップストリーム(一部または全て)を汚染物質減少させるべく、または洗浄システムへと再度方向付ける(例えばセクション2−4)。
セクション2は、本発明の様々な実施形態に応じて洗浄装置または反応装置として機能する気液接触モジュール型アセンブリ5408を含む。このセクションでは、図49に示す化学物質を利用するときにSO2、HCl、HF、および幾らかのNO2が燃焼排ガスから除去される。この燃焼排ガスストリームおよび図49に示す化学物質からのCO2の効率的な除去はほんの僅かであり、利用される化学物質およびソーベントのpHに応じて劇的に向上する可能性があるが、本実施形態では、CO2は殆ど捕捉されないと仮定する。接触器5408は、SO2、HCl、およびHFを捕捉する。液体ジェットの液体を含む流体は水溶液である。気体が混入したこの水溶液が捕捉タンク5410に捕捉される。セクション2では、捕捉した流体を、PP6において再循環ポンプで再循環する。この再循環された流体のスリップストリームをプロセス弁5418を用いて引き出して、セクション4の二次処理を行う。
セクション3は、化学活性、液体のpHを調節したり反応物質を補給したりするよう構成された、ソーベントおよび溶媒を補充する流体セクションである。蒸発により失われる液体は全て、ローカルの水源5412によりPP7で補給される。液体は、比較的高いpHで構築され(7を超える値)、NaOH源5414によりPP8でこのレベルに維持される、または、可溶性の亜硫酸塩の濃度がより安定した状態に達したら、セクション4でライム5416を加えることによりpHを維持することもできる。
セクション4は、溶解した、または反応した気相分子を、固体の生成物(例えばCaSO4)、固体の汚物(例えばCaSO3)、その他の利用可能な生成物(例えば肥料/NH4SO4またはNH4NO3)に化学変化、または鉱化させる二次処理セクションである。プロセス液体はセクション2からPP12で沈殿タンク5420に運ばれて、ライム/Ca(OH)2 5416がPP15で添加されて、pHを上げ、Ca2+を提供してSO3 2−で(または完全に酸化したモードではSO4 2−で)反応/沈殿する。結果生じるCaSO3の混合物がPP16で沈降タンク5422に流入して、スラリー保持タンク5424に沈降した後に格納される。十分な量のCaSO3が捕捉されると、フィルタプレス5426に移動して、液体を除去され、PP29を通過して、塩水保持タンク5428に移動する。フィルタプレス5426からの固体5430は、ゴミ処理場で処理されたり、三次プロセス用にジプサム/シートロック用のCaSO4として販売されたりする。塩水タンク5428からの液体はPP26でリサイクルまたは再生用に柔軟化ステップ5432で移動させられて、余分なCa2+を除去され、ソーダ灰(Na2CO3)5434を追加されることでNa+を補充される。再生されたソーベントは、PP3でセクション2に二次プロセス弁5436を介して送り戻される。
図49の特定の実施形態では、20MWシステムが、燃焼排ガスの一部を140MWの石炭燃焼電力プラントから取り出す。燃焼排ガスは、硫黄分の少ない石炭(例えばワイオミング州のパウダーリバー盆地産のもの)を燃焼することで生成される。本実施形態で考慮する特定の属性を表12に示す。石炭の燃焼により、およそ約350から約400ppmのSO2が燃焼排ガスに生成され、これはこのシステム例における主な除去対象である汚染物質である。他の汚染物質にはHCl、HF、NOx、および幾らかのHgが含まれる。これはセクション1の正面側であり、このスリップストリームの気体流量が略84,000ACFMであることはプロセス点1(PP1)にも示されている通りである。PP1で入ってくる燃焼排ガスの温度は、約華氏250度から約華氏300度の範囲であり、電力プラントのフライアッシュバッグハウスからくるものである。フライアッシュバッグハウスは、石炭燃焼から生成されるバルクフライアッシュを除去し、さらに温度を上述した一貫した範囲に低減させる役割を果たす。この燃焼排ガスの水濃度は、質量で約6%から約8%の範囲である。
PP1で、燃焼排ガスのスリップストリームがセクション2(洗浄セクション)に入る。燃焼排ガスは、気液接触器5404をおよそ10m−秒−1の気体速度で流れる。ここで気液接触器を説明する。利用されるソーベント液体は、NaOHとSO2との初期反応に最初に形成される亜硫酸ナトリウムである。重量50%の水酸化ナトリウム溶液をソーベントループの水に添加して、最初にpHをおよそ6.5にしてこの値に維持する。NaOHは、連続処理中に用いられ、適宜このpHを約6.5に維持することができる。始動時には、水はSO2を幾らか吸収することができるが、これによりpH値が急速に降下して、酸性の水溶液になる。従ってNaOHは、pHを大体中性に維持して、Na+をSO3 2−の対イオンとして提供する役割を果たす。以下の式は、SO2を除去する、このシステムの対象となる主な反応を示す。
SO2 + H2O → 2H+ + SO3 2- (1)
2NaOH + 2H+ + SO3 2- → 2Na+ + SO3 2- + 2H2O (2)
安定状態における処理中には、これは、SO2と有効に反応する、約0.5Mの濃度になり、反応により水中に亜硫酸水素ナトリウムを形成する亜硫酸ナトリウム溶液である。全反応を表す化学式は以下の通りである。
Na2SO3 + SO2 + H2O → 2NaHSO3 (1)
接触器を出た燃焼排ガスは、蒸発により約華氏100度から約華氏125素の範囲の温度に大幅に冷却されたものである。接触器の下流且つモジュールの中にあるデミスターは、余分な水分を除去する。燃焼排ガスがSO2の枯渇した気液接触器領域を出ると(PP2)、オプションで燃焼排ガスヒータ5404により加熱されてよく(露点を大きく越える温度にまで)、IDファン5440を通り、燃焼排ガス排出スタック5406に放出される。燃焼排ガス調節の他のオプションに、気熱交換器への気体を利用して、湿式のスタック構成に変換する、または電力プラントの処理蒸気を再加熱に利用するという方法がある。場合によっては、熱い脱着ガスを、ストリッパを出た後の熱脱着ステップで利用して燃焼排ガスを再加熱する際に有用であることから、ソーベント処理システム全体からの廃熱を利用することもできる。気液接触器5408の連続処理により、亜硫酸水素ナトリウムの構築につながり、SO2反応生成物を除去しない限りSO2の吸収効率が低減する。従って、セクション2の液体ソーベントの再循環システムのスリップストリーム(PP12)を連続して二次化学処理システムに引き出す。
セクション4に示すこの二次処理システムでは、SO2が完全に鉱化して、亜硫酸カルシウムの固体生成物を形成する(PP16)。亜硫酸カルシウムは、後にろ過されて(PP18)、余分な水分を除去され、ゴミ処理場等で適切に処理される(PP24)。ライム(Ca(OH)2)は、亜硫酸を固体沈殿物へ鉱化して(PP15)、さらにpHを、ソーベントループへのさらなるNaOH添加物の代替物として適切なレベルに維持する役割を果たす。二次処理で行われる反応は、以下の通りである。
2Ca(OH)2 + 4NaHSO3 → (CaSO3)2H2O + 2Na2SO3 + 3H2O
カルシウムのスケールの問題は、後の「軟化」ステップ(PP26)で炭酸ナトリウム(水に溶解する −PP31)を利用する標準的なイオン交換プロセスを用いて、フィルタプレスプロセス(PP32)に転用される炭酸カルシウム(このpHでは溶解しない)を形成することで、余分なカルシウムを除去することで回避することができる。この同じステップにおいて、チオ硫酸塩ナトリウムを添加して(PP34)、亜硫酸塩(SO3 2−)の硫酸塩(SO4 2−)への酸化を抑制することができる。このプロセスは、一次SO2捕捉試薬であるNa2SO3を再生する役割も果たす。
CaSO3 + Na2CO3 → CaCO3 + Na2SO3
柔軟化および活性ソーベント化学物質の再生の後で、これを主要な接触器プロセスループ(PP33)にリサイクルして戻す。
<SO2およびプロセスモジュール除去システム>
プロセスの分析および気液接触器の洗浄吸収システムの大きさは、表12の設計パラメータに基づいて決定される。
気液接触器(吸収器)は、横流行性のフラットジェット噴霧ノズルを利用して連続した、安定状態モードで動作させられる。吸収器は、最小の水、反応器の体積、圧力降下、および接触時間においてSO2除去効率を最大化する高い体積質量移動(Kca〜64s−1)を行うことができることを示している。
吸収器は、低い電力消費に変換される低い気体側の圧力降下および低い液体側の圧力降下を示す。液体ジェットオリフィスにおける圧力降下は、約10psi未満であり、これにより動作中の流体電力要件を大幅に低減させることができる。溶媒を循環させる28,000gpmの液体ポンプは、吸収ループ内のバルク電力消費を構成する。電力引き出しP(kW)は、「.75x流量(gpm)xΔP」/「1714xポンプ効率」であり、約8psiの圧力降下について約150kWであり(または約20MWeの電力引き出しであり)、約28,000gpmで約65%のポンプ効率である。フラットジェットシステムにおける気体側の圧力降下は、3.3ftの充填ジェットにつき約0.1psiと小さい(w.c.で2.7)。
これと比較して、関連技術の充填塔の平均圧力降下は、1フットの充填で、H2Oが約1.0インチ、または、通常の10フィート吸収ベッドで、H2Oが約10インチである。従来の技術と比した場合に気液接触器では電力消費が少なく、吸収器は、より高いL/G比率(330ガロン/1000ACFM)で動作することができるので、従来の吸収器のもの(L/G90−130)より高い除去効率が達成される。
吸収システムは、燃焼排ガスから対象となる汚染物質(例えばSOx、NOx、および粒子物質)を捕捉するのみならず、重金属、塩化物、およびフッ化物を捕捉することができる。粒子物質は、殆どが2.5μm以下のバッグハウスから運ばれるフライアッシュである。金属およびハロゲン化物は、石炭から導出され、燃焼石炭の種類に依存する。これら全ての構成物質を溶媒処理システムの吸収ループから除去する。燃焼排ガスにおける全ての構成物質から吸収ループへのモル流量は、溶媒処理システムの吸収ループにおけるこれら汚染物質のモル流量に等しいので、固体および塩水ストリームの外に出る。吸収ループ内の全ての構成物質の濃度は安定した状態に到達する。
気体の可溶性、溶媒温度、およびpHも、汚染物質の吸収に重要な役割を果たす。本実施形態のシステムは、比較的低い液体温度(例えば、約華氏100度から約華氏125度)で動作して、気体の可溶性を最適化して溶媒の蒸発を最小限に抑える。汚染物質の気相paと水相Caの間の均衡点の可溶性(300K)は、ヘンリー係数KH=Ca/paで与えられる。
SO2 (g) → H2SO3, KH = 1.4M/atm (1)
H2SO3 → H+ + HSO3 -, K1 = 0.014 M (2)
HSO3 - → H+ + SO3 2- , K2 = 7.1 x 10-8 M (3)
HSO3 - + 1/2O2 → SO4 2- + H+ , k > 106 M-1s-1 (4)
説明をし易くする目的から、S(IV)は、+4酸化状態における全ての形状の硫黄の合計([S(IV)]tot=[SO2]+[HSO3−]+[SO3 2−])であり、S(VI)は、+6酸化状態の全ての硫黄の合計であり、[S(VI)]tot=[SO3]+[HSO4 −]+[SO4 2−]である、とする。SO2ガスは水に溶解するので、溶質は、KH、K1およびK2が支配する均衡点に従って重硫酸塩(HSO3 −)および亜硫酸塩(SO3 2−)生成物に変換される。このプロセスは、H+生成物が形成される場合にpHに依存する。より多くのH+が生成されると(pHが下がる)、均衡点は反応物生成にシフトして戻る。3.5未満のpH値では、相当量のSO2が溶媒から排気される。SO2の除去効率およびコストを最適化するべく、水酸化ナトリウムを安定した状態で添加する、あるいは、他の化学ベースを溶媒ループに注入してシステムのpHを約6−7付近に保つ必要がある。
SO2(g) + 1/2O2(g) + 2NaOH(aq) → Na2SO4(aq) + H2O (1)
<亜硫酸塩の酸化システム>
亜硫酸塩の硫酸塩への強制的な酸化は、単純な空気スパージャで(14kWのエアコンプレッサを利用して)別個のタンクで行うことができる。スパージャは単純ではあるが、気液接触効率が低いので、空気の流量は完全な酸化に必要な化学量論量の約3倍に設定される。100%の酸化を仮定すると、約533lb/時間の亜硫酸塩が硫酸塩に酸化される。フルスケールのシステムでは、スパージャの代わりに追加の高効率な気液接触器を利用すると、費用効率が高いと思われる。
<溶媒の処理システム>
システムを完全酸化モードで実行する場合の(大部分の硫黄および硫酸塩(SO
4 2−)ではそうであるが)硫酸塩の沈殿および除去に関する設計基準を表13に示す。システムは、安定状態における動作中の液体における<50ppmのHSO
3 −および14.4%のSO
4 2−について設計されている。溶媒プロセスストリームの流量は、SO
xの安定状態のループ濃度に直接依存しており、これにより溶媒プロセスシステムの設計におけるサイズ要件が定まる。
<高度な設計、ソーベント、およびプロセスオプション>
表14に、様々な溶媒を示し、これは水酸化ナトリウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ライムストーン(炭酸カルシウム)、およびおそらくはフライアッシュを含む。各ソーベントには、特定のソーベント処理システムが必要であり、各電力生成サイトが、独自の固体および液体の廃棄要件を持っている場合がある。
ソーベント/ソーベント処理/廃棄システムの選択は、性能、試薬のコスト、およびサイトの副産物の廃棄要件が駆動要因となる。反応および動作コストに関して充填塔でSO
2除去に最もよく利用されている試薬を比較した結果を表15に示す。
腐食剤およびアンモニアベースのシステムは、最高の反応性および深いSO2除去の可能性を持っているが、コストがより高くなるという欠点を有している。これら反応物質のコストは、溶媒を吸収器に戻してリサイクルができるデュアルループ処理により大幅にオフセットされる。全ての可能性のなかで、最も期待の持てるものは、NaOH/Ca(OH)、NaCO/Ca(OH)、NH/Ca(OH)デュアルループである。フライアッシュは、試薬コストをゼロにすることができる可能性を有するが、最高の危険性を孕んでいる。
Na/Caデュアルループは好適であるが、NH/Caデュアルループも可能性のある選択肢である。非常に反応性が高く可溶性のソーベント、明瞭な接触溶液、および、比較的高価なアンモニアをリサイクルできるソーベント処理ループといった利点を有する。ナトリウムに比したアンモニアの利点は、沈殿ステップによりアンモニアを気体として分離するので、戻りループが、吸収器をスケールしうるカルシウムその他の汚染物質を含まない、ということである。加えて、本発明の実施形態における気液接触システムは、CO2吸収システムと組み合わせると、アンモニアを両方の目的に利用することができる。というのもアンモニアは揮発性であり、追加の(小型の)洗浄ユニットを燃焼排ガスベントラインに配置することでアンモニアのスタックへのスリップを防ぐことができるからである。
フライアッシュは、アルカリ性であり入手が容易であることから、FGD吸収剤として利用できる可能性がある。表16は、冷却器スCのフライアッシュ(亜瀝青炭)の通常の組成をリストにしたものである。FGDをフライアッシュ捕捉物と組み合わせようとした初期の試みは、FGDスラリーの下流が汚染され、処理が難しい特性から困難であった。ここに参照として組み込むKohl等の「気体精製」、Gulf Professional Publishing、第五版、1997年を参照のこと。しかし、フライアッシュを注意深く準備して(例えば最適なSO
2−CaO/MgO化学両論的レベルで)、気液接触器自身の内部におけるセメント質の反応を防ぐことで、接触器の動作をフライアッシュが洗浄動作を損なわない条件で行うことができる可能性がある。あるいは、これらC
a/Mgの同様の反応が望ましい場合もあり、これを利用してソーベント処理領域内でセメント質の材料を商用製品として製造することもできる。加えて、副産物であるジプサムを製品にすることが望ましい場合には、溶媒処理システムおよびフライアッシュをジプサムから分離する廃棄スキームが望まれる。
<システムについての総括>
Na/Caデュアルアルカリ接触プロセスおよびシステムは、従来のシステムよりも高い技術的および経済的性能という利点を有する。表17は、本実施形態の20MWの場合における接触システムおよび一般的な(MWごとの)システムの主要な基本性能パラメータをまとめたものである。
深いSO2除去には、高速で効率のよい質量移動の動力学が必要であり、これにはNaOHの利用が適している。水酸化カルシウム/炭酸カルシウムを利用するシステムは低コストの溶媒ではるが、低反応の溶媒でもある。反応性を高めるべ冷却器イム/ライムストーンベースの吸収器をスラリー(固体)で動作させることができる。しかし、固体は、吸収器の表面のスケーリング(亜硫酸カルシウム/硫酸カルシウムの形成により)に影響を受け易く、場合によっては質量移動をさらに妨げることもある。Na/Caを利用することに伴う大幅なコスト低減は、ナトリウム(NaOH)が溶媒処理ループで再度要求されることに起因している。デュアルループシステムの動作コストは、シングルループのライムストーンシステム以下である(特に、ここに参照として組み込むKohl等の「気体精製」、Gulf Professional Publishing、第五版、1997年におけるような硫黄の多い燃料では)。最も安価な試薬はカルシウム(Ca(OH)2)であり、これはジプサム(製品となる副産物)を沈殿させるのに利用される。デュアルループシステムのプロセス上の利点は、より高い硫黄の負荷を処理でき、接触液体が腐食せず、効率性のかなり高い気液接触器を動作させることができることである。欠点は、複雑性が増すことと、2つの試薬を必要とすることである。これに比して、シングルループの湿式ライムストーンFGDプロセスでは、全ての必要なステップが単一の容器内で行われ、ここで言う必要なステップとは、ライムストームを炭酸カルシウムとして溶解して、気液接触を行い、SO2を吸収して、カルシウムと反応させ、酸化させ、沈殿させる、というものである。この結果、単一の、比較的単純なシステムとなる。欠点は、スラリーが腐食/摩耗しやすい性質を有することから外来のノズル材料が必要となる点、および噴霧塔の効率が低いことから大きな接触面積ひいては大きな塔が必要となる、という点である。
ここで記載される20MWおよび200MWを越える接触システムにおける主要な機器コンポーネント用の寄生性の塔を表18にまとめる。これらの実施形態では、燃焼排ガスの排気ブロワー(IDファン)が既に配置されているのでカウントできないことを前提としている。バルクの電力引き出しを溶媒の再循環ポンプに連結する。接触システムは、大きな(従来の噴霧ノズルの>10X)フラットジェットオリフィス面積により、低い液体側の流体からの、および機械的応力で動作する。本実施形態では、記載される20MW液体ポンプ(28,000GPM)が、中間的なポンプの効率(〜65%)によりシステムからかなりの電力を引き出す。フルスケール動作(>200MW)で利用可能なより大きな液体ポンプ(>100,000GPM)が、これよりかなり効率性に優れるであろうことが推定されるので(〜85%)、これを利用することでかなり(1.7X)低い寄生電力負荷が達成されよう。
<CO2プロセスの気液接触器>
これらの利点により、小型で低コスト、低圧力降下、および高いエネルギー効率の洗浄システムを含み、CO2除去効率(>90%)およびエネルギーコスト(<20%)という環境目標を達成することができ、コストおよびエネルギー節約プロセス面での秀逸性が証明された。アンモニア溶液を利用する3つの可能性ある吸収/再生反応法については、Yeh等の「燃料処理技術」第86巻、14−15号、1533−1546ページ、2005年10月に記載されており、これをここに参照として組み込む。
2NH3 (aq)+ CO2(g)+ H2O → (NH4)2CO3(l), デルタHr=-24.1 kcal/モル (-986 BTU/lb CO2) (1)
NH3(l) + CO2(g) + H2O → NH4HCO3(l), デルタHr = -15.3 kcal/モル (-622 BTU/lb CO2) (2)
(NH4)2CO3(l) + CO2+H2O →2NH4HCO3(l), デルタHr = -6.4 kcal/モル (-262 BTU/lb CO2) (3)
反応は吸収に関して記載されたものであるので発熱性である。最もエネルギー効率の高いCO2捕捉および溶媒の再生成法は、式(1)における炭酸/重炭酸反応である。吸収反応は低温で行われることが望ましいので、洗浄装置の液体を華氏90度にまで冷まして、ストリッパの液体を華氏140度にまで加熱してCO2ガスを1atmで放出させる。炭酸/重炭酸アンモニウム化学物質を利用すると、その生成エネルギーがEMAの半分未満であることから、アルカノールアミンベースの溶媒を利用するときと比べて、大幅に動作コストを低減させる可能性がある。
<気液接触プロセスのフロー図およびCO2の分析>
図50は、別の実施形態における汚染物質除去システムからのプロセスフロー図である。先ず燃焼排ガスが接触器に入り、SOx、NOx、および粒子物質といった汚染物質を除去される。そしてCO2吸収器に入り、そこで例えばチルドされた炭酸アンモニウム溶液またはピペラジンと接触させられ、CO2の大部分が重炭酸アンモニウムとして、または、ピペラジンのカルバミン酸塩としてそれぞれ捕捉される。他のアミン、アルカノールアミン、および/または塩基(例えばKOH、NaOH等)もこのループで利用可能である。利用される化学システムは、水酸化アンモニウム/炭酸アンモニウムのシステムであり、い冷却器かのアンモニアが燃焼排ガスにアンモニアスリップとして混入し、アンモニア洗浄装置に運搬されて、除去される。
洗浄された燃焼排ガスは、凝縮熱交換器に運ばれて、露点を約華氏40度超える温度に加熱されてから、スタックから排出される。炭酸アンモニウム/重炭酸アンモニウムの吸収ストリームは冷却装置および熱ポンプで再循環された後に、洗浄装置に戻される。吸収溶液のサイドストリームを除去して、過熱してから、ストリッパへ戻して、捕捉したCO2を放出する。希薄な溶液は吸収ループへ戻る。ストリップされたCO2は、幾らかの水蒸気およびアンモニアを搬送しており、これは凝縮熱交換器で圧縮中に除去される。水分およびアンモニアは吸収ループへ戻される。洗浄後のCO2は圧縮トレインに送られて隔離される。主要なエネルギー節約プロセスステップは、熱ポンプを利用して炭酸アンモニウム吸収溶液を冷却して、その熱をストリッパの溶液から遠ざけることで、その温度を上昇させてCO2を分離させることにより行われる。熱ポンプを利用して吸収トリームのエネルギーを捕捉して、熱をストリッパストリームに送ることで、約10%の寄生電力を節約することができる。
表20に、システムのサイズおよび分析の設計基準を示す。プロセスは、図50に示す6つの主要プロセスセクションに分割されており、具体的には、セクション1が燃焼排ガス調節システムであり、セクション2がCO
2吸収ループであり、セクション3がCO
2ストリッパループであり、セクション4がアンモニアまたはアミンスリップループであり、セクション5が冷却システムであり、セクション6がCO
2圧縮トレインである。全ての流量および熱負荷は20MWで示されているシステムについて算出されたものである。
<燃焼排ガス調節システム>
図50に示す本実施形態では、燃焼排ガス調節システムは、燃焼排ガスがオプションである熱交換器/冷却装置5004に入っていく際の入口5002および出口5006を含む。燃焼排ガス調節システムは、既になんらかの処理(例えばSO2、HCl、その他の酸性ガスの除去処理)を受けた可能性のある、気体を受け取る。熱交換器/冷却装置5004は、入ってくる気体の構成物および吸収器の化学に左右されることが当技術分野で公知であることから、オプションとすることができる(例えば、アンモニア/炭酸アンモニアであれば冷却装置が必要となる)。燃焼排ガスは冷却されてSO2を洗浄される(例えば、本発明の一実施形態における接触システムで(不図示))。本実施形態では、燃焼排ガス5002は、CO2、N2、H2O、O2、その他の希ガス等の汚染物質を含んでいる。
<CO2吸収ループ>
セクション2では、吸収ループが気液接触器5008および捕捉タンク5010を含む。セクション5の熱交換器/冷却装置5012はオプションのコンポーネントである。ここでも、熱交換器/冷却装置5012は、入ってくるガスの構成物よび吸収器の化学に左右されることが当業者には公知であることから、オプションとすることができる。本実施形態では、気液接触器をセクション1の出口5006に連結する。気液接触器5008は、捕捉タンク5010および熱交換器/冷却装置5012(セクション5)に、リサイクルループの一部として連結される。
動作においては、CO2を含む燃焼排ガスを気液接触器5008の入口5014を通るように方向付け、CO2の一部を分離させる。セクション2のCO2吸収ループは、当技術分野で公知な液体の適切な流れ、リサイクルおよび動作に必要とされる様々な値およびポンプを含む。接触器5008で気体と接触した後に、吸収溶液は、再循環ループの一環としてさらなる量のCO2を捕捉タンク5010へと搬送する。
本実施形態では、CO2吸収ループのエネルギー要件は、セクション5の熱交換器/冷却装置5012により処理される。ここで記載する、炭酸アンモニウム、アミン、またはアルカノールアミンを利用する一般的な化学では、通常のシステムに見られる燃焼排ガスの温度を下回る温度に冷却される場合に、CO2がより好適に吸収される。従って必要に応じて、セクション5の熱交換器/冷却装置5012は、冷却機能を提供して、吸収溶液にとって最適な動作条件を維持することができる。
<CO2ストリッパループ>
セクション3は、出口5020を有する熱交換器/冷却装置5018に連結された入口5016を含む。出口5020は、気液接触器5022に連結されている。気液接触器5022は、リサイクルループを有する捕捉タンク5023に連結された出口5024を有する。気液接触器5022は、捕捉したCO2を吸収溶液から除去するよう構成されている。CO2ストリップ処理は、複数の手段(例えば、圧力変動、pH調節、またはCO2/吸収溶液の加熱)により行うことができる。セクション3のコンポーネントは、選択する方法に応じて変更可能である。いずれの場合にも、CO2の放出の後に吸収溶液を捕捉して、吸収溶液をセクション2の主要な吸収ループに再循環させると有利である。セクション3の出力はスタック5034に送られる。
<NH3/PZ吸収ループ>
アンモニアまたはアミン吸収ループであるセクション4は、CO2吸収器5008を出た燃焼排ガスからアンモニアまたはアミンのスリップを捕捉するよう設計される。この処理は、吸収溶液の温度に従って(より冷たいとスリップ量が少なくなる)NH3を含む場合に特有である。NH3/PZ吸収ループは、入口5024に連結された気液接触器5026を含む。気液接触器5026は、捕捉タンク5030に連結された出口5028、リサイクルループ、および出口5032を含む。ピペラジンまたはアルカノールアミン等のアミンを吸収溶液として利用する場合には、セクション4を設ける必要性があまりないので、このセクションの実装は、全プロセス要件および温度を調べて決定することができる。このセクション4は、より小さな分子重量のアミンがスリップしてしまい、より高い分子重量のアミンはスリップしないので、処理する必要性がないことから、オプションのプロセスとすることができる。出力5032は燃焼排ガススタック5034に送ってよい。
<CO2圧縮トレイン>
セクション6は、CO2を吸収溶液からストリップさせるプロセス面積を示す。CO2圧縮トレインは、気液接触器5022に連結された圧縮器5036を含む。このセクションは、気液接触器5022からの純粋なCO2を捕捉して加圧するよう構成されている。つまり、このセクションの後には、二次的な工業利用のために便利な方法で搬送するべく、原油の二次回収(EOR)、金属イオン封鎖、その他の二次ステップを行うことが望ましい。これらオプションの一つは、CO2を圧縮トレインで圧縮して、超臨界圧で隔離して液体のCO2を形成して、これをトラックまたはパイプラインで最終用途に輸送する方法を含むことができる。
<CO2捕捉の他の溶媒システム>
図50のセクション2および3では、様々なソーベントをCO2捕捉および/またはストリップに利用することができる。ソーベントは、基本の溶媒として選択される炭酸アンモニアベースの溶媒を含んでよい。しかしシステムは、アンモニア、ジエタノールアミン(DEA)、およびモノエタノールアミン(MEA)等のアミンを含む洗浄溶媒、および、促進剤を含む炭酸(promoted carbonate)、ピペラジン、三次または阻害されたアミン(メチルジエタノールアミン(MDEA)および2−アミノメチルプロパノールアミン(AMP)、金属有機フレームワークおよび分子カプセル化)を含む、様々な燃焼後の湿式洗浄溶媒で行うことができる。
CO2システムの実施形態は、燃焼後のCO2捕捉の強みおよび利点を幾つか提示している。例えば、小さな接触器の体積で非常に大きな接触表面積が利用可能になる。これは、2つの領域における経済的な節約につながり、必要なフットプリントが小さいことは、資本コストが少なくて済むことを意味しており、液体側の圧力降下が小さいことは、動作コストが少なくて済むことを示している。資本コストおよび動作コストが低いことにより、可能なCO2のソーベントの範囲が増す。例えば、安価なソーベントが低い反応率を有して大きな接触面積を必要とする場合(例えば海水または深塩水帯水層の場合)、CO2気液接触システムでは依然として現実的な方法であるが、通常の標準的な気液接触器(例えば気泡塔または噴霧塔)では普通は考慮されないであろう。
燃焼排ガス、アルカノールアミンおよび炭酸アンモニウム/重炭酸アンモニウム(AC/ABC)用の、殆どの成熟したCO2捕捉システムでは、最大エネルギー消費が反応熱と関連性をもっている。AC/ABC反応に関与するエネルギーは、CO2の吸収脱着に必要な全エネルギーの約70%を消費する。ABC溶液は、CO2を吸収するために華氏55度に冷却する必要があり、それをストリッパに放出するには華氏265度に加熱する必要がある。エネルギー低減を達成するオプションは2つの要素を含む。つまり、CO2を吸収脱着の際の反応熱が小さいシステムを見つけること、あるいは、吸収中に放出される熱を脱着反応に流用することである。炭酸アンモニウム/重炭酸アンモニウムは現在最低エネルギーである化学ソーベントである。物理的な溶媒は、必要とする再生エネルギーが殆どゼロであるが、高圧で最もよく動作する。膜系は、吸収エネルギーを脱着プロセスに流用することができるが、現在は小型のシステムのみで利用されている。以下では、CO2を燃焼排ガスから捕捉するのに利用可能な代替的プロセスを分類して説明する。
代替的なCO2吸収システムを探すにあたっては、ソーベントが利用技術と合致する必要がある。気液接触器、乾式接触システム、および膜接触システムという3つの燃焼後の吸収技術を開発した。気液接触システムは液体ソーベントを必要とする。気液システムは、吸収と脱着とを2つの別個のプロセスステップに分割して、2つの別個の容器で異なる圧力および温度で行う。このシステムは通常、発熱吸収のための冷却および吸熱吸収のための加熱というステップ両方においてエネルギー出費が行われる。このプロセスは、温度および/または圧力を変動させる必要があり、多くのエネルギーを必要とする。重炭酸ナトリウムを利用する乾式再生ソーベントシステムは、ソーベントが固相である以外は、気液接触器と同じ処理である。
しかし膜系は基本的に異なっている。膜系の膜は、透過性材料からなり2つのストリームを分離する非常に薄い隔壁であり、スポンジ状の材料に保持される固体または液体であってよい。膜は、分離する気体を選択するよう設計されている。膜の材料が固体であろうと液体であろうと、膜は濃縮されている側でCO2を吸収して、CO2が脱着されている希釈側に移動させる。駆動力は非常に薄い膜にわたるCO2の濃度勾配である。膜系の美学は、吸収および脱着を同じ容器で、同じ温度で、殆ど同じ圧力で行うことができるということである。吸収および脱着は、非常に薄い膜内の互いに数ミクロンの範囲内で行われるので、吸収エネルギーを一定の温度で脱着反応に移動させることができる。従ってエントロピーの変化がゼロであり、必要な正味エネルギーもゼロである。膜内の液体は、選択的にCO2を運ぶことができるものを選ぶことができる。欠点は製造費、膜の寿命、非常にきれいな燃焼排ガスという要件、および莫大な接触領域が必要となる点(商業システム全体で約百万平方メートルが必要となる)である。100m2の断面までのダクトに入る数十万ACFMという燃焼排ガスを、各繊維の断面積が60nm2である数十億の繊維へとチャネリングする必要がある。
気液接触器における燃焼後の吸収に利用可能な代替的な溶媒システムには、化学的および物理的なものが含まれる。湿式化学ソーベントはアミン、炭酸塩、促進剤、ハイブリッド、およびpH変動を含む。湿式物理ソーベントは、金属有機フレームワーク、イオン液体、海水、および地下塩水を含む。グリコールは高圧システムであり、燃焼前の吸収により適していることから説明しない。セレクソルは、現在天然ガスの洗浄に利用されている商業グリコールシステムの一例であり、高圧プロセスである。CO2気液接触器に利用可能な各湿式ソーベントについて以下で説明する。
含水アミンは、当業者が認識している電力プラントのCO2捕捉に関する現在の技術水準である。アミンソーベントは、アンモニア(NH3)、モノエタノールアミン(MEA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、2−ミノメチルプロパノールアミン(AMP)、PZピペラジン(PZ)、その他を含む。全て最初にCO2と反応して(CO2 + 2RNH2 ⇔ RNH2COO ⇔ RNHCOOH)、カルバミン酸アミン(amine carbamate)を生成する。加えて、アミンおよび水がCO2と反応して、重炭酸アミンを生成する(RNH2 + H2O + CO2 ⇔ RNH3 + + HCO3 -)。吸収/脱着は、最低エネルギー反応で行うことができる(重炭酸塩⇔炭酸塩)。全てのアミン系が気液接触器およびストリッパを必要とする。ここで説明されている系は、非常に効率的な気液接触器であるという点で好適である。いかなるアミン系でも利点は生じるが、アンモニアが安価であり、アンモニアの反応エネルギーがMEA等のアルカノールアミンより低いことから、炭酸/重炭酸アンモニウムのソーベントを選択した。
アルカリ炭酸塩は、Na、K、およびCa、炭酸塩/重炭酸塩を含む。アルカリ炭酸塩は、1900年代初期には周辺温度およびCO2の圧力吸収の目的に重点的に利用されたが、近年、より効率的なアルカノールアミンに取って代わられた。CO2の水溶液への吸収速度は通常遅いので、しばしば促進剤(触媒または酵素)を添加して速度を上げている。
促進剤の例には、ここに参照として組み込むKohl等の「気体精製」、Gulf Professional Publishing、第五版、1997年が記載しているホルムアルデヒド、MEA、DEA、グリシン、および炭酸脱水酵素が含まれる。CO2吸収に利用可能な最も速い触媒は炭酸脱水酵素という酵素である(ここに参照として組み込む、MC Trachtenberg、L Bao,SL Goldman等、2004年、第七回温室ガス制御技術に関する国際会議(GHGT−7)、バンクーバ、BCを参照のこと)。アミノ酸も、MEAまたはDEA同等の、あるいはこれらを超えるCO2の吸収の促進剤として、Jacco van Holst、Patricia.P.Politiek、John P.M.Niederer、Geert F.Versteeg等、第八回温室ガス制御技術に関する国際会議、2006年における「アミノ酸塩溶液を利用した燃焼排ガスからのCO2捕捉」に記載されており、これをここに参照として組み込む。酵素および触媒は反応エネルギーを変化させたり、その均衡点を変更したりしないが、活性エネルギーを低下させ反応速度を数マグニチュードというオーダで増加させたりはする。水中におけるCO2の加水分解およびその後の重炭酸塩への反応は非常に遅々たるものである。速度増加の効果は、接触に必要な滞留時間を低下させることで、必要な接触面積を小さくすることである。しかし、生物学的な酵素であることから、CAは温度に反応し易く、高い脱着温度で行われる温度変動プロセスには利用できない。これは、圧力変動プロセスを利用せざるをえないことを意味する。燃焼排ガス中のCO2の分圧は約0.15atmなので、純粋なCO2を捕捉する場合には、脱着の全圧が大体0.1atm未満である必要がある。CAの他の候補としては、全ての燃焼排ガスを接触前に加圧する方法がある。他の促進剤(DEA等)は、現在のところ高温および高圧で行われるホット炭酸カリウムプロセスで利用されている。
ハイブリッドソーベントは、炭酸ソーベントサンド(sorbentsand carbonate)にアミンを組み合わせたものを利用している。現在利用されている例は、K2CO3/PZであり、これは、MEAよりエネルギー利用量が少ないことが予期されるピペラジン(PZ)が促進剤として利用されている炭酸カリウム水溶液である。このシステムは現在、テキサス大学オースチン校で研究されている。CO2の吸収率および負荷は、MEAよりK2CO3/PZのほうが大幅に大きい。加えて、PZの損失および劣化は、MEAよりも格段に少ないことは、Plasynski等による「炭酸カリウムによる吸収による二酸化炭素捕捉、炭酸隔離、プロジェクトの全貌」、USDOE、NETL、四月(2008年)に記載されている通りである。GLC吸収器のこのシステムへの主要な貢献は、接触効率を高め、フットプリントを小さくし、圧力降下を小さくすることにより、資本および動作コストが達成される、という効果である。
最後に説明する化学吸収/脱着システムはpH変動であり、これはエネルギーコストが非常に高いことから通常は言及されない。CO2は塩基に似たNaOHで吸収され、酸に似たHClで放出される。結果生じる塩を電解して、酸および塩基を再生する。エネルギー入力は、圧力または温度変動ではなくて、電気化学的に利用される。算出される必要エネルギーは、他のプロセスのものよりずっと高い。それでもこのプロセスは、SO2吸収用途に商用化されている。物理ソーベントはグリコール、金属有機フレームワーク(MOF)、イオン液体、海水、および地下塩水を含む。これらは、ソーベントとの化学反応ではなくて、物理的吸収を利用する。化学反応にはエネルギーが関与しないが、脱着プロセスには圧力変化が必要である。
700psiの合成ガスでCO2を燃焼前に分離する処理として提案されている圧力変動プロセス(セレクソルプロセス等)において利用される高温中では、グリコールが最も良好に動作する。気液接触システムは、高圧吸収プロセスには利用できない。
金属有機フレームワーク(MOF)は、CO2ガスの小さな気泡を包含する分子の「ケージ」である。MOFは非常に選択性が高く、吸収/脱着率が優れており、高いCO2容量を有し、気液接触器および液体膜に利用可能である。ただ、高い試薬コストおよび気液接触器では利用された実績がない点がリスクである。
イオン液体は、室温で液体である有機塩であり、水溶液ではない。イオン液体は、CO2およびSO2の両方を吸収するので、燃焼排ガス洗浄に多いに期待されている。気液接触器および液膜に利用可能である。MOF同様、イオン液体は実験室スケールのみでの合成が可能であり、試薬コストが非常に高くなる可能性がある。さらには、気液接触器でのテストは行われたことがない。
地下塩水または海水に関しては、CO2隔離法として好まれている方法が深塩水帯水層への注入であることから、捕捉および隔離の両方として可能性のある方法は、CO2を天然のアルカリ地下塩水で吸収して、溶液内に再度注入する、というものである。これにより、気体として注入するCO2を脱着して圧縮する際のエネルギーが不要となる。地下水のアルカリ度に応じて、吸収率が遅々たるものになり大きな接触面積を必要とする可能性もある。GLC接触器の表面積を非常に大きくすることが完璧な解決法となる。加えて、多くの天然に生じる塩水帯水層がCaおよび/Mgに富んだものであるとはいえ、地下水のアルカリ度をライムにより増強させる必要がある場合もあり、資本および動作コストの最適なトレードオフ関係を考慮に入れる必要がある。
このプロセスは、基本的に無限の吸収および廃棄が可能な(もちろんサイトには依存するが)CO2またはSO2のいずれか/両方の海水吸収に類似している。加えて、海水には、炭酸塩または硫酸塩として容易に固体沈殿を形成することのできるCaおよびMgがある程度自然に豊富に含まれている。この割合またはその他の所望の割合は、硝酸塩、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、またはハロゲン化物等の様々なマグネシウムおよび/またはカルシウム塩を利用して人工的に生成することもできる。これら塩の可溶性は、出発化合物、pH、対象溶液の温度に依存して劇的に変化するので、当業者は自身の目的および対象となる化合物を考慮に入れる必要がある。
以下の表は、気液接触器に利用可能な様々なCO
2ソーベントシステム間の利点、欠点、および推定コストを比較したものである。
当業者には本発明の範囲および精神を逸脱しない範囲で本発明に対する様々な変更例および変形例が明らかである。従って本発明は、請求項およびその均等物の範囲内で生じる本発明の変更例および変形例を含むことを意図している。