JP2012502025A - 二酸化炭素の還元 - Google Patents

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Abstract

本発明は、N-複素環式カルベン(NHC)若しくはそのカルボキシレート又は両者の存在下で二酸化炭素をシランに暴露してメチルシリルエーテルを生成する段階を含む、二酸化炭素の還元方法を提供する。

Description

本発明は、二酸化炭素の還元方法に関する。
二酸化炭素は、無毒性、不燃焼性、非引火性の気体であり、代謝及び燃焼の安定な最終生成物である。二酸化炭素は、大気中に多く存在し、地球温暖化をもたらす温室効果ガス(GHG)であることが知られている。大気中の二酸化炭素含量を削減して地球温暖化を防ぐことができる方法があれば、このような方法が有用な物品又は精密化学製品も生成できる場合には特に、非常に魅力的であろう。燃料の燃焼によって、より大量の二酸化炭素が生成される。二酸化炭素を燃料に直接転化できれば、食料農業と競合しないカーボンニュートラルな(carbon-neutral)エネルギー源が実現されるであろう。しかし、二酸化炭素は非常に安定な分子であり、これまで、その利用法は供給原料に限られている。
ヒドロシランによる二酸化炭素の接触還元は発熱的に進行し、工業化学プロセスにおける二酸化炭素の利用可能性を提供する。このような反応のための高活性でロバスト(robust)な触媒の開発が、依然として大きな科学的課題となっている。ヒドロシランへの二酸化炭素付加についてのこれまでの報告は、触媒としての活性遷移金属錯体の使用を含むものであった。ルテニウム及びイリジウム錯体が1980年代前半に初めて、二酸化炭素のヒドロシリル化用触媒として報告された。最近になって、ルテニウム-アセトニトリル錯体で触媒される二酸化炭素のヒドロシリル化によるホルモキシシランの生成が、Pitter及び共同研究者によって報告された(Deglmann, P.、Ember, E.、Hofman, P.、Pitter, S.、Walter, O.、Chem. Eur. J. 2007、13、2864;Jansen, A.、Gorls, H.、Pitter, S.、Organometallics 2000、19、135)。Matsuo及びKawaguchiは、ジルコニウム-ボラン錯体で触媒されるヒドロシランによる二酸化炭素の均一還元による、メタンの生成を報告した(Matsuo ,T.、Kawaguchi, H.、J. Am. Chem. Soc. 2006、128、12362)。このような種々の系においては、含まれる有機金属触媒の空気及び水分感受性並び低活性によって、実際的応用が制限された。
WO2008/039154
Deglmann, P.、Ember, E.、Hofman, P.、Pitter, S.、Walter, O.、Chem. Eur. J. 2007、13、2864 Jansen, A.、Gorls, H.、Pitter, S.、Organometallics 2000、19、135 Matsuo, T.、Kawaguchi, H.、J. Am. Chem. Soc. 2006、128、12362 Holbrey, J. D.、Reichert, W. M.、Tkatchenko, I.、Bouajila, E.、Walter. O.、Tommasi, I.、Rogers, R. D.、Chem. Commun. 2003、1、28 Duong, H. A.、Tekavec, T. N.、Arif, A. M.、Louie, J.、Chem. Commun. 2004、1、112 Y. Zhang、L. Zhao、P. K. Patra、D. Hu、J. Y. Ying、Nano Today 2009、4、13
したがって、二酸化炭素を還元又は固定するための改良方法、好ましくは有用な生成物を生成するこのような方法が必要とされている。
本発明の目的は、前記制限の1つ又は複数を実質的に克服するか又は少なくとも改善することである。
本発明の第1の態様において、N-複素環式カルベン(NHC)若しくはそのカルボキシレート又は両者の存在下で二酸化炭素をシランに暴露して、メチルシリルエーテルを生成する段階を含む、二酸化炭素の還元方法が提供される。
以下の選択肢を、第1の態様とは個別に、又は第1の態様と任意選択で適当に組合せて使用してもよい。
この方法は、メチルシリルエーテルを加水分解してメタノールを生成させる段階を含むことができる。この加水分解段階は、塩基性条件下で実施できる。
NHC又はそのカルボキシレートは触媒であることができる。これは、前の反応において使用されたものであってもよい。
NHCは金属を含まなくてもよい。NHCは、N,N’-二置換イミダゾリジン-2-イリデン又はN,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンであることができる。NHCはダイマーNHCであることができる。NHCはオリゴマーNHCであることができる。NHCはポリマーNHC(ポリNHC)であることができる。NHCは、金属を含まないポリNHCであることができる。
二酸化炭素を、NHCのカルボキシレートの存在下でシランに暴露することができる。この場合には、方法は、NHCと二酸化炭素とを反応させてNHCのカルボキシレートを生成させる段階を含むことができる。
この方法は、対応するN-複素環式塩を塩基と反応させることによって、前記のN-複素環式塩からNHCを生成させる段階を含むことができる。NHCは、対応する塩からその場で生成させることができる。塩基は非求核塩基であることができる。非求核塩基は、例えば、水素化物(例えば、水素化ナトリウム若しくはカリウム)又はt-ブトキシド(例えば、ナトリウム若しくはカリウムt-ブトキシド)であることができる。
シランは、二酸化炭素に対してモル過剰で使用できる。或いは、二酸化炭素を、シランに対してモル過剰で使用することもできる。シランと二酸化炭素とをほぼ等モル量で使用することもできる。
シランはジオルガノシランであることができる。この場合、方法は、ジオルガノシランをオリゴジオルガノシロキサン若しくはポリジオルガノシロキサン若しくはシクロオリゴジオルガノシロキサン又はこれらの任意の2種若しくは全ての混合物に転化させる段階を含むことができる。
二酸化炭素は気体の混合物中に存在していてもよい。気体の混合物は酸素を含んでもよく、酸素を実質的に含まなくてもよい。
NHC又はそのカルボキシレートはポリマーであってもよい。前の反応からのポリマーNHCを強塩基で処理することによって前記NHCを再生してから、前記NHCを二酸化炭素に暴露することもできる。
一実施形態において、N,N’-二置換イミダゾリジン-2-イリデン若しくはN,N’-二置換イミダゾル-2-イリジン又はこれらのいずれかのカルボキシレートの存在下で二酸化炭素をシランに暴露して、メチルシリルエーテルを生成する段階を含む、二酸化炭素の還元方法が提供される。
別の実施形態において、N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンカルボキシレートの存在下で二酸化炭素をシランに暴露して、メチルシリルエーテルを生成する段階を含む、二酸化炭素の還元方法が提供される。
別の実施形態において、
・N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンと二酸化炭素とを反応させて、対応するN,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンカルボキシレートを生成させる段階と、
・前記N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンカルボキシレートの存在下で二酸化炭素をシランに暴露して、メチルシリルエーテルを生成する段階
とを含む、二酸化炭素の還元方法が提供される。
別の実施形態において、
・N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジニウム塩と塩基とを反応させて、N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンを生成させる段階と、
・前記N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンと二酸化炭素とを反応させて、対応するN,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンカルボキシレートを生成させる段階と、
・前記N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンカルボキシレートの存在下で二酸化炭素をシランに暴露して、メチルシリルエーテルを生成する段階
とを含む、二酸化炭素の還元方法が提供される。
別の実施形態において、
・N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンカルボキシレートの存在下で二酸化炭素をシランに暴露して、メチルシリルエーテルを生成する段階と、
・前記メチルシリルエーテルを加水分解して、メタノールを形成する段階
とを含む、二酸化炭素の還元方法が提供される。
別の実施形態において、
・N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジニウム塩と塩基とを反応させて、N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンを生成させる段階と、
・前記N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンと二酸化炭素とを反応させて、対応するN,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンカルボキシレートを生成させる段階と、
・前記N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンカルボキシレートの存在下で二酸化炭素をシランに暴露して、メチルシリルエーテルを生成する段階と、
・前記メチルシリルエーテルを加水分解して、メタノールを形成する段階
とを含む、二酸化炭素の還元方法が提供される。
別の実施形態において、
・N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジニウム塩と塩基とを反応させて、N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンを生成させる段階と、
・前記N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンと二酸化炭素とを反応させて、対応するN,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンカルボキシレートを生成させる段階と、
・前記N,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンカルボキシレートの存在下で二酸化炭素をジオルガノシランに暴露して、メチルシリルエーテルを生成する段階と、
・前記メチルシリルエーテルを加水分解して、メタノールを形成する段階
とを含む、二酸化炭素の還元方法が提供される。
本発明の第2の態様において、N-複素環式カルベン(NHC)若しくはそのカルボキシレート又は両者の存在下で二酸化炭素を含む気体にシランを暴露する段階を含む、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を少なくとも部分的に除去する方法が提供される。
この方法は、暴露段階の前に前記気体から水蒸気を除去する段階を含むことができる。
前記気体は空気であることができる。気体は、工業プロセスからの廃ガス(waste gas)又は排ガス(exhaust gas)であることができる。気体は、燃焼プロセスからの廃ガス又は排ガスであることができる。
本発明の好ましい実施形態を、専ら例としてであるが、添付した図面に関して以下に説明する。
DMF-d7中における13CO2、ジフェニルシラン及びImes-CO2触媒(1,3-ビス-(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾリウムカルボキシレート、5モル%)のNMRチューブ反応の13CO NMRスペクトルを示す。スペクトルA、B及びDはプロトンデカップリングスペクトルであり、スペクトルCはプロトンデカップリングの不存在下でのスペクトルBを示す。スペクトルA及びBは、13CO2(*)が13CH2(OSiR3)2(▼)及び13CH3O-SiR3(#)に転化されたことを示す。スペクトルDは、更なるシランがスペクトルBの混合物に添加された後のスペクトルを示し、全ての13CO213CH3O-SiR3に転化されたことを示している。 本明細書中に記載した反応に関して提案される触媒サイクル及び反応経路を示す。 90分後の、DMF-d7中における13CO2、ジフェニルシラン及びImes-CO2触媒(5モル%)のNMRチューブ反応のプロトンNMRスペクトルを示す。 24時間後の、DMF-d7中における13CO2、ジフェニルシラン及びImes-CO2触媒(5モル%)のNMRチューブ反応のプロトンNMRスペクトルを示す。 18時間の反応後のGC-MSスペクトルを示す。反応条件:CO2バルーン、Ph2SiH2 1ミリモル、Imes-CO2触媒(10モル%)、PhOH 2ミリモル及びDMF 2ml。 1時間の反応後のGC-MSスペクトルに見られる中間体を示す。反応条件: CO2バルーン、Ph2SiH2 1ミリモル、Imes-CO2触媒(10モル%)及びTHF 2ml。 18時間の反応後のGC-MSスペクトルを示す。反応条件: CO2バルーン、Ph2SiH2 1ミリモル、Imes-CO2触媒(10モル%)及びDMF 2ml。 18時間の反応後のGC-MSスペクトルを示す。反応条件: CO2/O2(体積比=1:1)バルーン、Ph2SiH2 1ミリモル、Imes-CO2触媒(10モル%)及びDMF 2ml。Ph2SiH2は全て消費された。6.8分のピークは外部標準に関連する。 実施例3の特定のランにおけるPh2SiH2の完全消費に必要な反応時間を示すグラフである。反応条件:ジフェニルシラン1ミリモル、触媒添加量10モル%、CO2バルーン、溶媒2ml、室温。ラン#5では、一夜の反応後にPh2SiH2が完全には消費されていなかった。
本発明は、水素供給源としてシランを用いる、二酸化炭素をメタノールに転化させるための新規な技術を提供する。これは、N-複素環式カルベン(NHC)有機触媒によって触媒された初めての二酸化炭素還元反応に相当する。これは、二酸化炭素(空気からの)をメタノールに直接転化してポリシロキサンを形成することを可能にする化学的な二酸化炭素固定プロトコールを実証する。本文脈では、二酸化炭素の「還元(reduction)」(「還元する(reduce, reducing)」などの関連語)は、二酸化炭素からの酸素の除去を意味する場合がある。「還元」は、二酸化炭素の炭素原子の還元を表す場合がある。「還元」は、二酸化炭素の炭素原子に直接結合した酸素原子の数の減少を表す場合がある。「還元」は、二酸化炭素の炭素原子への炭素-酸素結合の数の減少を表す場合がある(この場合、炭素-酸素二重結合は2つの炭素-酸素結合を表すものとみなす)。
これまで、シランによる二酸化炭素の還元のために、有機金属触媒が検討されてきた。遷移金属触媒に比較して、本発明のNHC触媒は、金属を含まず、より安価で、効率的にも優れている。また、NHC触媒は、より穏やかで、より柔軟な反応条件を可能にし、耐空気性(air-tolerant)である。NHC触媒は更に、選択性の高い最終生成物の生成を可能にする。無金属系を提供する利点には、コスト削減、環境保全効果、操作の簡潔性及び有害廃棄物の削減などがある。本明細書中に記載した反応は、二酸化炭素の固定にも応用できる。この反応は二酸化炭素を化学原料とし、二酸化炭素をメタノールに転化することができる。
本発明は、N-複素環式カルベン(NHC)若しくはそのカルボキシレート又は両者の存在下で二酸化炭素をシランに暴露して、メチルシリルエーテルを生成する段階を含む、二酸化炭素の還元方法を提供する。本明細書中で、用語「シラン」は、分子当たり少なくとも1つのSi-H結合を有する化合物を意味するのに用いる。用語「オルガノシラン」は、少なくとも1つの有機基(例えば、アルキル基又はアリール基)が珪素原子に直接結合しているシランを意味するのに用いる。したがって、オルガノシランは、分子当たり少なくとも1つのSi-有機結合及び少なくとも1つのSi-H結合を有する。多くの場合、オルガノシランは、分子当たり1つの珪素原子を有するので、少なくとも1つの有機基と少なくとも1つのSi-H結合とが同一珪素原子に結合している。オルガノシランが1つより多い珪素原子を有する場合には、Si-H及び有機基は同じ珪素原子に結合していても、異なる珪素原子に結合していてもよい。オリゴジオルガノシロキサン、ポリジオルガノシロキサン及びシクロオリゴジオルガノシロキサンは、構造-O-Si(R2)-の反復単位を有するオリゴマー(場合によっては環状オリゴマー)及びポリマーである。これらの構造において、珪素上のR基は一般に同一であるが、異なっていてもよく、置換されていてもよいアルキル又はアリールであることができる。これらの種は一般にSiH基を含まないが、場合によってはSiH基を含んでいてもよい。用語「メチルシリルエーテル」は、CH3-O-Si基を含む化合物を意味するのに用いる。メチルシリルエーテルは、分子中にSi-H基を含んでいても、含んでいなくてもよい。
二酸化炭素をシランに暴露する段階は、約1〜約20時間、又は約1〜10時間、1〜5時間、1〜2時間、2〜20時間、50〜20時間、10〜20時間、2〜10時間、5〜10時間若しくは5〜15時間、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15若しくは20時間、実施することができる。この段階は、この時間よりも長時間実施することもできるが、シランに対してモル過剰の二酸化炭素が存在する場合にシランの完全消費に必要な時間としては前記時間が典型的である。この時間は、NHCの性質及び使用温度によって決まるであろう。この温度は、約10〜約50℃、又は約10〜30℃、10〜20℃、20〜50℃、30〜50℃若しくは20〜30℃、例えば、約10、15、20、25、30、35、40、45若しくは50℃であることができる。
この方法において生成されるメチルシリルエーテルを、加水分解してメタノールを生成することができる。これは、メチルシリルエーテルへの水又は水性混合物の添加によって実施できる。これは、その場で実施してもよいし、別の段階として実施してもよい。この加水分解段階は、塩基性条件下で実施できる。これは、メチルシリルエーテルを含む反応混合物への塩基(例えば、塩基水溶液)の添加によって実施できる。別法として、メチルシリルエーテルを反応混合物から少なくとも部分的に分離するか又は少なくとも部分的に精製してから、塩基を添加することもできる。この塩基は無機塩基であることができる。これは水酸化物であることができる。これは水溶液であることができる。これは、例えば、水酸化ナトリウム水溶液であることができる。塩基は、メチルシリルエーテルに対してモル過剰で使用できる。塩基は、メチルシリルエーテルに対して少なくとも約1.5倍モル過剰、又は少なくとも1.75、2、2.5若しくは3倍モル過剰(又は約1〜3倍、1〜2倍、2〜3倍若しくは1.5〜2.5倍モル過剰、例えば、約1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2、2.5若しくは3倍モル過剰)で使用できる。この加水分解は、室温又は任意の他の適当な温度で実施できる。加水分解は、約10〜約80℃、又は約10〜50℃、10〜30℃、10〜20℃、20〜80℃、50〜80℃、20〜50℃、20〜30℃若しくは60〜70℃、例えば、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75若しくは80℃で実施できる。加水分解をメタノールの沸点(1気圧で約65℃)より高温で実施する場合には、加水分解の進行につれて、メタノールを反応混合物から連続的に蒸留することができる。加水分解に費やす時間は、加水分解に使用する温度によって幾分異なるが、約1〜約24時間であることができる。これは、約1〜12時間、12〜24時間、6〜18時間又は18〜24時間、例えば、約1、6、12、18若しくは24時間であることができる。
NHC又はそのカルボキシレートは触媒量で使用できる。NHC又はそのカルボキシレートは、二酸化炭素を基準として、約0.1〜約10モル当量%(% molar equivalent)、又は約0.1〜5モル当量%、0.1〜2モル当量%、0.1〜1モル当量%、0.5〜10モル当量%、1〜10モル当量%、5〜10モル当量%、0.5〜5モル当量%、0.5〜2モル当量%若しくは1〜2モル当量%、例えば、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9若しくは10モル当量%の量で使用できる。NHC又はそのカルボキシレートは、シランを基準として、約1〜約25モル当量%、又は約1〜20モル当量%、1〜10モル当量%、1〜5モル当量%、5〜25モル当量%、10〜25モル当量%、5〜20モル当量%若しくは5〜10モル当量%、例えば、約1、2、3、4、5、10、15、20若しくは25モル当量%の量で使用できる。触媒は再循還させることができる。即ち、触媒は、前の反応で使用されたものでもよい。特に、NHCは後続反応で再使用できる。触媒は、後続反応中、その活性を少なくとも約80%、又は少なくとも約85、90若しくは95%保持することができる。この方法は、NHCの活性が低下してしまった場合には、NHCを再生する段階を含むことができる。再生は、NHCを塩基に暴露する段階を含むことができる。この塩基は、N-複素環式塩からのNHCの生成に関して記載するものであることができる(下記参照)。したがって、塩基は非求核塩基であることができる。これは強塩基であることができる。これは、非求核性強塩基、例えば、水素化物又はt-ブトキシドであることができる。
NHCは金属を含まないことができる。NHCは遷移金属を含まないことができる。NHCはモノマーであることができる。NHCはダイマーであることができる。NHCはオリゴマーであることができる。NHCはポリマーであることができる。NHCは、反応混合物中に可溶であっても、不溶であってもよく、後者の場合には不均一触媒として使用できる。特に、ポリマーNHC又はそのカルボキシレートは不均一触媒として使用できる。NHCは安定なNHCであることができる。NHCカルボキシレートは安定なNHCカルボキシレートであってもよいし、安定なNHCのカルボキシレートであってもよいし、その両者であってもよい。これに関連して、「安定な」は、活性を実質的に低下させずに(例えば、約10%又は5、2若しくは1%より多く低下させずに)それを空気及び/又は水分に暴露できること、或いは化学的純度を実質的に低下させずに(例えば、約10%又は5、2若しくは1%より多く低下させずに)それを前記条件に暴露できることを示すことができる。この暴露は、少なくとも約5分、或いは少なくとも約10分又は少なくとも約1、2、6若しくは12時間であることができる。この暴露は、約10〜約30℃、例えば、約25℃の温度であることができる。これは、この反応に用いる条件下での安定性を示すことができる。NHCは、N,N’-二置換イミダゾリジン-2-イリデン若しくはN,N’-二置換イミダゾル-2-イリジン又はこれらのいずれか若しくは両者のダイマー、オリゴマー若しくはポリマーであることができる。2つの窒素原子上の置換基は同一であっても、異なっていてもよい。置換基は、独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又は他の型の基であることができる。適当なアルキル基としては、C1〜C6直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)、C3〜C6分岐鎖基(例えば、イソプロピル、t-ブチル、s-ブチル、ネオペンチル)及びC3〜C6シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル又はシクロヘキシル)が挙げられる。適当なアリール基としては、フェニル、2,4,6-トリメチルフェニル及び2,6-ジイソプロピルフェニルが挙げられる。適当なヘテロアリール基としては、ピリジル、チオフェニル、ピロリル、フリルなどが挙げられる。前記基はいずれも、未置換でも置換されていても
よい。したがって、例えば、置換基はベンジル基(即ち、フェニルで置換されたメチル基)であることができる。NHCは、立体障害性NHCであることができる。カルベン中心(例えば、N,N’-二置換イミダゾリジン-2-イリデン又はN,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンのC2)は、立体的に込み合っていてもよい。場合によっては、ダイマーNHCを使用できる。例えば、ピリジン-2,6-ジメチリルリンカーによって、2つのイミダゾリリデン基が連結されていてもよい。各イミダゾリリデン上の残りの窒素原子は、前述のように置換されていてもよい。
ポリマーNHCは、WO2008/039154に記載されてきており、この特許文献は相互参照することによって本明細書中に組み入れる。ポリマーNHCは、複素環式基を含むことができ、ポリマーカルベンのモノマー単位は、リンカー基によって連結されている2つの複素環式基を含むことができる。例えば、適当なポリマーNHCは、構造Iを有することができる。
Figure 2012502025
前記構造Iにおいて、
Figure 2012502025
は、単結合又は二重結合を表し、ここで、
Figure 2012502025
が二重結合を表す場合には、置換基E、F、G及びZは存在しない。置換基A、B、C及びD、並びに存在する場合には、E、F、G及びZはそれぞれ独立して、水素又は水素ではない置換基であることができる。これらは独立して、水素、アルキル(例えば、直鎖アルキル、分岐鎖アルキル、シクロアルキル)、アリール(例えば、フェニル、ナフチル)、ハリド(例えば、ブロモ、クロロ)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、ピロリル、フラニル、フラニルメチル、チオフラニル、イミダゾリル)、アルケニル(例えば、エテニル、1-若しくは2-プロペニル)、アルキニル(例えば、エチニル、1-若しくは3-プロピニル、1-、3-若しくは4-ブタ-1-イニル、1-若しくは4-ブタ-2-イニルなど)又は他の置換基であることができる。A、B、C及びD、並びに存在する場合には、E、F、G及びZは全て同一であってもよいし、一部又は全てが異なっていてもよい。アルキル基は、炭素数が約1〜約20(但し、環状又は分岐鎖アルキル基は、炭素数が少なくとも3である)、又は約1〜12、1〜10、1〜6、1〜3、3〜20、6〜20、12〜20、3〜12若しくは3〜6、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18若しくは20であることができ、例えば、メチル、エチル、1-又は2-プロピル、イソプロピル、1-又は2-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、メチルシクロヘキシルなどであることができる。置換基は、任意選択で置換されていてもよく(例えば、アルキル基、アリール基、ハリド若しくは他の置換基で)、又はO、S、Nなどのヘテロ原子を含んでいてもよい(例えば、置換基はメトキシメチル、メトキシエチル、エトキシメチル、ポリオキシエチル、チオメトキシメチル、メチルアミノメチル、ジメチルアミノメチルなどであることができる)。置換基A、B、C及びD、並びに存在する場合には、E、F、G及びZは、独立して、キラルでもアキラルでもよい。構造I中のR及びR’はリンカー基である。R及びR’はそれぞれ独立して、剛性リンカー基であってもよいし、非剛性又は半剛性リンカー基であってもよい。適当な剛性リンカー基としては、芳香族基、ヘテロ芳香族基、脂環式基、適当な剛性を有するアルケン及び適当な剛性を有するアルキンが挙げられる。適当なリンカー基としては、任意選択で置換されているエテニル(例えば、エテンジイル、プロペン-1,2-ジイル、2-ブテン-2,3-ジイル)、エチニル(例えば、エチンジイル、プロピンジイル、ブタ-2,3-イン-1,4-ジイル)、アリール(1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、1,3-ナフチレン、1,4-ナフチレン、1,5-ナフチレン、1,6-ナフチレン、1,7-ナフチレン、1,8-ナフチレン)、ヘテロアリール(例えば、2,6-ピリジンジイル、2,6-ピランジイル、2,5-ピロールジイル)、又はシクロアルキルリンカー基(例えば、1,3-シクロヘキサンジイル、1,4-シクロヘキサンジイル、1,3-シクロペンタンジイル、1,3-シクロブタンジイル)が挙げられる。適当な非剛性又は半剛性リンカー基は、-(CH2)m-[式中、mは1〜約10である]を含み、これらは、任意選択で置換されていてもよく且つ/又は分岐鎖であってもよく、例えば、1,2-エタンジイル、1,2-若しくは1,3-プロパンジイル、1,2-、1,3-、1,4-若しくは2,3-ブタンジイル、2-メチル-ブタン-3,4-ジイルなどであることができる。リンカー基は、任意選択で置換されていてもよく(例えば、アルキル基、アリール基、ハリド若しくは他の置換基で)、又はO、S、Nなどのヘテロ原子を含むことができる(例えば、適当なリンカー基は、-CH2OCH2-、-CH2OCH2CH2-、-CH2OCH(CH3)-、-(CH2OCH2)p-[式中、pは1〜約100である]、-CH2NHCH2-、CH2N(CH3)CH2-、-CH2N(Ph)CH2-、-CH2SCH2-などであることができる)。ポリNHCを製造するための一般的手順は、イミダゾールをNaHなどの強塩基で処理する段階と、得られたイミダゾールアニオンをその場でジハロ化合物(例えば、1,4-ジブロモブテン、α,α’-ジクロロ-p-キシレンなど)で処理して、イミダゾール基がリンカーによって連結されているビスイミダゾールを形成する段階とを含む。次いで、この化合物を、第2のジハロ化合物(例えば、1,2-ジブロモメタン、1,4-ジブロモブチレンなど)に暴露することによって重合させることができる。このポリマーをナトリウムt-ブトキシドなどの塩基で処理することによって、ポリNHCが得られる。当業者ならば、種々の構造のポリNHCを生成する、この方法の適当な変形形態を容易に理解できるであろう。
二酸化炭素は、NHCのカルボキシレートの存在下でシランに暴露することができる。このカルボキシレートは、NHCと二酸化炭素との付加物とみなすことができる。この付加物では、カルボキシル(-CO2 -)基がNHCの(例えば、イミダゾール又はイミダゾリン環の)C2に結合している。本明細書においては、複素環の標準的なナンバリングに準拠している。したがって、イミダゾール又はイミダゾリジン環においては、2つの窒素原子をN1及びN3と称し、それらの間の炭素原子をC2と称する。残りの2つの炭素原子をC4及びC5と称する。C4及びC5は、独立して、非置換であってもよいし(即ち、水素置換基のみを有してもよいし)、置換されていてもよい。それらは、独立して、前述のようなアルキル、アリール又はヘテロアリール基で置換されていてもよい。それらは、NHCの環に縮合している環の一部を形成していてもよい。縮合環は、例えば、5、7又は7個の原子(C4及びC5を含めて)を有することができる。C4及びC5以外の原子はそれぞれ独立して、Cであってもよいし、ヘテロ原子、例えば、N、O、Sであってもよい。縮合された環は、存在する場合には、脂環式、芳香族又はヘテロ芳香族であることができる。
NHCカルボキシレートの存在下で二酸化炭素をシランに暴露する場合には、この方法は、NHCと二酸化炭素とを反応させて、NHCカルボキシレートを生成させる段階を含むことができる。これは、溶媒中で実施できる。溶媒は極性であることができる。溶媒は非プロトン性であることができる。溶媒は極性非プロトン性溶媒であることができる。溶媒は使用前に乾燥させることができる。溶媒は、例えば、DMF、DMSO、HMPT、塩化メチレン、クロロホルム、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、THF、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサン又は他の溶媒であることができる。NHCは溶媒中で溶液であってもよいし、懸濁液であってもよいし、一部が懸濁液で一部が溶液であってもよい。この反応は、約1〜約24時間にわたって、又は約1〜12時間、12〜24時間、6〜18時間若しくは18〜24時間にわたって、例えば、1、2、3、4、5、6、12、18若しくは24時間にわたって実施できる。この反応は、約10〜約50℃、又は約10〜30℃、10〜20℃、20〜50℃、30〜50℃若しくは20〜30℃、例えば、約10、15、20、25、30、35、40、45若しくは50℃において実施できる。この反応は、二酸化炭素の雰囲気下又は二酸化炭素を含む気体の雰囲気下で実施できる。二酸化炭素又は二酸化炭素を含む気体は乾燥していることができる。これは使用前に乾燥させることができる。これは、約1000ppm未満、又は約500、200、100、50、20若しくは10ppm未満の水分レベルを有することができる。この方法は、空気をこの水分レベルまで乾燥させる段階を含むことができる。場合によっては、この方法は、これより高い気体中水分レベルに耐えうる。二酸化炭素の分圧は、約0.1〜約1気圧、或いは約0.1〜0.5気圧、0.1〜0.2気圧、0.2〜1気圧、0.5〜1気圧若しくは0.2〜0.5気圧、又は約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9若しくは1気圧であることができる。二酸化炭素の分圧は、1気圧より高くてもよいし、0.1気圧より低くてもよい。カルボキシレートはその場で生成できる。したがって、一部の実施形態においては、NHCを前述のようにして対応するカルボキシレートに転化させ、シランを反応混合物に直接加え、それによってメチルシリルエーテルを生成させる。本明細書中で、用語「その場で」は、更なる使用の前に生成物を単離しないことを示すのに用いる。したがって、カルボキシレートをその場で生成させる場合には、これは、カルボキシレートをその前駆体から生成させ、次にカルボキシレートを単離することなく使用することを示す。
この方法(NHC若しくはカルボキシレートと反応させるための、若しくはNHCからカルボキシレートを生成させるための、又は両者のための)において使用する二酸化炭素は、任意の適当な供給源から得ることができる。二酸化炭素は、純粋な気体として又は清浄な気体混合物として購入できる。二酸化炭素は、低レベル(一般に約500ppm未満であるが、場合によってはこれより多い)の二酸化炭素を含む周囲空気であってもよいし、このような周囲空気から得てもよい。二酸化炭素は、燃料の燃焼によって得てもよい。二酸化炭素は、例えば、工業プロセスからの廃ガスに相当してもよいし、それを含んでいてもよい。二酸化炭素は、燃焼ガスを含むことができる。前述の一部の場合には、この方法は、二酸化炭素を封鎖するための方法、又は二酸化炭素を含む気体を少なくとも一部分スクラブして、気体中の二酸化炭素レベルを低下させるための方法に相当することができる。場合によっては、二酸化炭素を含む気体混合物を、この方法に使用する前に前処理して、含まれる二酸化炭素の濃度を増加させてもよい。これは、混合物から他の成分を除去することによって、例えば、膜分離又は他の適当な方法によって達成できる。これは、本明細書中に記載した方法の効率を高める働きをすることができる。
この方法は、対応するN-複素環式塩からNHCを生成させる段階を含むことができる。これは、N-複素環式塩を塩基で処理する方法を含むことができる。NHCはその場で塩から生成させることができる。したがって、一部の実施態様においては、N-複素環式塩を塩基で処理して、NHCを形成する。次いで、NHCをその場で二酸化炭素と反応させて、NHCカルボキシレートを形成し、シランを添加することによって、更なる二酸化炭素と反応させて、メチルシリルエーテルを形成する。前述のように、メチルシリルエーテルはその場で加水分解して、メタノールを形成できる。したがって、この反応は、N-複素環式塩を出発原料として又はNHCから、メチルシリルエーテル又はメタノールを形成する、ワンポット反応として実施することができる。
NHCの形成は、溶媒中で実施できる。この溶媒は、NHCカルボキシレートの形成に関して前述したのと同じ群から選択できる。塩基は非求核塩基であることができる。塩基は強塩基であることができる。塩基は非求核強塩基であることができる。塩基は、N-複素環式塩からNHCを生成させることができる十分に強い塩基であることができる。塩基は水素化ナトリウム若しくは水素化カリウム又はナトリウムt-ブトキシド若しくはカリウムt-ブトキシド或いは他の非求核強塩基であることができる。
シランは、二酸化炭素に対してモル過剰で使用してもよいし、二酸化炭素を基準として1モル当量未満であることもできる。シランは、二酸化炭素を基準として、約10〜約1000モル%、又は約10〜100モル%、10〜50モル%、10〜20モル%、20〜100モル%、50〜100モル%、100〜1000モル%、500〜1000モル%、100〜500モル%、100〜200モル%、50〜200モル%、20〜200モル%若しくは50〜500モル%、例えば、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900若しくは1000モル%の量で使用できる。過剰のシランを用いる場合には、CO2の全てをメタノールに転化できる。過剰のCO2を用いる場合には、シランの全てをメタノールに転化できる。シランとCO2とを等モル量で用いる場合は、いずれも、一般に約95%の収率で、メタノールに転化できる。したがって、場合によっては、このモル%は、10モル%未満又は1000モル%超(例えば、約5、2、1、0.5、0.1、0.1、2000、5000若しくは10000%)であることができる。
シランは、1、2、3又は4個のSi-H結合を有することができる。シランは、モノオルガノシラン若しくはジオルガノシラン若しくはトリオルガノシランであってもよいし、シラン自体であってもよい。珪素上の有機基は、存在する場合には、独立して、前記で定義したようなアルキル、アリール又はヘテロアリールであることができる。この方法は、オリゴジオルガノシロキサン若しくはポリジオルガノシロキサン若しくはシクロオリゴジオルガノシロキサン又はこれらの任意の2種若しくは全ての混合物、或いはヘキサオルガノジシロキサン若しくはオルガノシルセスキオキサン又はシリカ、或いは他のSi-O含有種を生成できる。シランのモル当量に関する前記言及において、これは、シランの珪素原子に関するモル当量、又は全体としてのシランのモル当量、又はシラン中のSi-Hのモル当量であることができる。場合によっては、シランは、ダイマー、トリマー又はオリゴマーであることができる。珪素原子の少なくとも1つ、場合によっては珪素原子の全てがSi-H結合を有するならば、シランは、例えば、ジシラン又はトリシランであることができる。したがって、例えば、シランは、1,1,2,2-テトラフェニルシラン(Ph2(H)Si-Si(H)Ph2)であることができる。場合によっては、シランには、アルキル、アリール及びヘテロアリール以外の基が珪素原子に結合していてもよい。
二酸化炭素は、ニートで使用してもよいし、1種又は複数の他の気体との混合物として使用してもよい。他の気体は、NHC又はそのカルボキシレートに対して不活性であってもよい。二酸化炭素は、約1〜約99容量%、又は約1〜50容量%、1〜20容量%、1〜10容量%、10〜99容量%、20〜99容量%、50〜99容量%、90〜99容量%、95〜99容量%、10〜50容量%、50〜90容量%若しくは80〜90容量%、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98若しくは99容量%に相当する量で、混合物中に使用できる。この混合物は、空気であることができる(この場合には、二酸化炭素のレベルは1容量%未満であることができる)。二酸化炭素又は気体の混合物は、使用前に乾燥させることができる。これは、使用前に脱酸素化することができる。二酸化炭素又は気体の混合物は、反応混合物上部の雰囲気として使用できる。これは、反応混合物にバブリングさせることができる。これは、少なくとも一部を反応混合物に溶解させることができる。この反応は、酸素の存在下で実施できる場合がある。これにより、反応は以前の系よりもはるかにロバストになる。このため、気体の混合物は酸素を含むことができる。この反応は、若干の水の存在下で実施できる。このため、二酸化炭素又は気体の混合物は、水を含むことができる。本明細書中に記載した反応は、二段法で実施できる場合もある。第1段階はSi-OMe(即ち、メチルシリルエーテル)を生成させ、第2段階はメタノールを生成させる加水分解である。第1段階は、ある程度は水に感受性である可能性があるが、第2段階は水の存在下で実施する。反応をほとんど、連続系で実施する場合には、触媒に移動相中の全反応体を固定できる。
本明細書中に記載した方法は、回分法として実施できる。これは、連続法又は半連続法としても実施できる。後者は、触媒が不均一触媒、例えば、ポリマーNHC又はそのカルボキシレートである場合に適当であることができる。このため、例えば、二酸化炭素含有気体の流れが触媒床を上向きに通過すると同時に、触媒床は、触媒床を下向きに通過するシランの溶液を含むことができる。溶液及び気体の流速を適切に調整することによって、メチルシリルエーテルを連続的に生成させながら、二酸化炭素を連続的に消費させることができる。メチルシリルエーテルを、任意選択で、連続的又は回分式に加水分解して、メタノールを生成させることができる。別法として、二酸化炭素が溶存しているシラン溶液の流れを触媒床に通して、メチルシリルエーテルを連続的に生成させることもできる。
本明細書中に記載したのは、安定なN-複素環式カルベン(NHC)を触媒として用いる、二酸化炭素の初めての有機触媒ヒドロシリル化である。注目すべきことに、メタノールが、極めて穏やかな条件下で空気供給原料から直接得られる最終生成物であることがわかった。
NHCは、有機合成における有機触媒としては定着している。空軌道を有する一重線カルベンは、場合によっては、遷移金属中心の化学的挙動に、例えば、二水素の分裂において、よく似ていることがある。しかし、NHCは1つの孤立電子対を有するので、求核物質として挙動し得る。求核性NHCは、二酸化炭素を活性化してイミダゾリウムカルボキシレートを形成できることが知られている。しかし、このようなカルボキシレートの適用は、NHC-金属錯体の前駆体及びハロゲンを含まないイオン性液体としての使用に限られてきた。イミダゾリウムカルボキシレートは、化学量論的トランスカルボキシレーション反応にも使用されてきた。NHCによる、イミダゾリウムカルボキシレートからの二酸化炭素の脱離及び触媒サイクルの閉鎖はこれまで達成されていない。この研究で、本発明者らは、ヒドロシランが、水素化物供与体として作用することによって二酸化炭素を活性化し、最終的には二酸化炭素をメタノールに還元できると考えた(スキーム1参照)。
スキーム1-全体的な化学量論的反応
Figure 2012502025
典型的な反応において、1,3-ビス-(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾリウムカルボキシレート(Imes-CO2、0.05ミリモル)を、バイアル中のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)2mLに溶解させ、二酸化炭素をバルーンによってバイアル中に導入した。ジフェニルシラン1ミリモルをバイアル中に投入し、反応混合物を室温で撹拌した。反応を、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)によって監視した。6時間で全てのジフェニルシランが完全に消費されていることがわかった。予想していたホルモキシシラン生成物が反応の初期段階で微量生成物として生じ、反応の進行につれて消失することがわかった。更なる研究から、反応中間体ジフェニルジホルモキシシラン(Ph2Si(OCHO)2)及びジフェニルホルモキシシラン(Ph2SiH(OCHO))が不安定であることが示された。これらは、更にビス(シリル)アセタール(Si-O-CH2-O-Si)及びシリルメトキシド(Si-OMe)へと還元された。DMF-d7中における反応に関するプロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、〜3.5ppmに、メトキシド生成物に相当する主ピーク群を示した。また、4.5〜5.0ppm及び8.5ppmに、シリルアセタール及びホルモキシシラン中間体に相当する若干の微量ピークが確認された。これらの中間体を更に、GC-MSによって確認した。
反応の介在プロセスを更に詳しく調べるために、同位体濃縮13CO2 (13C、99%)を用いて反応を実施した。DMF-d7溶媒中、シラン0.1ミリモル及びイミダゾリウムカルボキシレート0.01ミリモルを含む、J.Youngバルブが装着されたNMRチューブ中に13CO2を導入した。反応は、13CプロトンデカップリングNMRスペクトル分析法によって監視した。90分以内に、3つの新しいピーク群:(i)ホルモキシシランの形成に相当する〜160ppmのピーク;(B)シリルアセタール中間体の形成を示す〜85ppmのピーク;(C)メトキシド生成物に関連する〜50ppmのピークが出現した。反応の進行につれて、85ppmのピークの相対強度は低下したが、50ppmのピークの相対強度は増加した。これは、シリルアセタール中間体が更に反応してメトキシド生成物を形成することを裏付けた(図1参照)。13C-1Hカップリング(ゲート付きデカップリング)NMR実験も行った。85ppmに相当するピークは三重線に分裂し、50ppmのピークは四重線に分裂し、結合定数はそれぞれ、168.1Hz、142.9Hzであった。この観察は、CO2が、ヒドロシランを水素供給源として触媒によってメトキシド生成物に還元されることを明白に裏付けた。反応は、室温で急速に進行した。90分後、プロトンNMR分析によって示されるように、ヒドロシランからの水素原子のほぼ50%がメトキシドに転化された。この転化率は、24時間の反応後に85%まで増加した。これらの結果から、遷移金属触媒が最終還元生成物を得るのに数週間を要するのに比較して、NHCはこの反応に対して高効率の触媒であることが示された。この研究はまた、過剰量のシランが同一最終生成物に関してはるかに速い速度をもたらすことを示した。この場合、中間生成物は検出されなかった。
遷移金属触媒を用いたこれまでの研究では、CO2還元反応は金属水素化物中間体を出発原料とし、還元反応は同一の金属中心で行われた。本発明の全体的な触媒系に関する詳細な機構はまだ不明であるが、本発明者らは、考えられる機構経路(図2に示されるスキーム2)を提示する。但し、この機構に拘束するつもりはない。このスキームにおいては、求核性カルベンが、二酸化炭素を活性化して、イミダゾリウムカルボキシレートを形成するであろう。その結果、この付加物がシランに対してより反応性となり、それによってSi-H結合もまた、遊離カルベンによって活性化されることもある。イミダゾリウムカルボキシレートのカルボキシル部分は、電気的により陽性のシラン中心に作用し、水素化物の移動を促進して、ホルモキシシランA及びFを形成するであろう。ホルモキシシランは、この触媒サイクルの重要な中間体であった。これは、NHC触媒の存在下で他の遊離ヒドロシランと反応するであろう。これによって、わずかな他の中間体B、C及びD並びに最終メトキシド生成物E及びGが形成されるであろう。この触媒サイクルは、水素化物供与体として供給されたヒドロシランが使い尽くされるまで続くであろう。スキーム2中に提示される中間体A、B、D、E及びFはGC-MSによって検出されている。
反応からホルモキシシラン中間体を単離するための取り組みは、中間体の不安定性及び短寿命のために、成功しなかった。評価された1つの方策は、嵩高いアルコールの投入によるホルモキシシラン中間体の安定化であった。反応混合物にフェノールを加えると、安定な中間体である置換ホルモキシシランPh2Si(OCHO)(OC(O)OPh)が、Ph2Si(OPh)2副生成物との混合物として単離された。
強塩基によるイミダゾリウム塩の処理によってその場で生成させたカルベン触媒を用いて、反応を行った。反応器への二酸化炭素のその後の導入は、イミダゾリウムカルボキシレートと同じ活性を示した。カルベン部分の現場生成に非求核塩基を用いた場合には、反応はうまく行われた。カリウムt-ブトキシドなどの求核塩基からの対アニオンは、電気的に陽性のシランと反応してtert-ブトキシド-シラン付加物を不所望な副生成物として形成する可能性もある。この反応は、塩基として1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)を用いた場合には実現しなかったが、水素化ナトリウム及びカリウムt-ブトキシドはこの反応に対して優れた塩基であることがわかった。この反応は一般に、極性非プロトン性溶媒中でうまく行われたが、溶媒としてメタノールを用いると、求核性メトキシドがヒドロキシシランに付加した。DMF、テトラヒドロフラン(THF)及びアセトニトリルは、この反応に対して良好な溶媒であることがわかったが、この反応はTHF及びアセトニトリル中ではより遅いことが観察された。
種々のNHCリガンドを、ジフェニルシランによるCO2還元において検討した(表1)。一般に、検討したNHCは全て、CO2還元に効果的であった。嵩高い置換があるNHCは、より高い効率を示した。本発明者らはまた、触媒としてメシチルイミダゾリリデンを用いる種々のヒドロシランによるCO2還元を検討した。この反応は、基質のSi-H結合周囲の立体障害に対して感受性であった。三置換シランとの反応は、遅く、不活性であった。
二酸化炭素をメタノールに転化するために、CO2還元生成物を加水分解に供した。24時間の反応時間後、ジフェニルシランとメシチルイミダゾリリデン触媒との典型的CO2還元混合物に2当量のNaOH/H2Oを加えた。メタノールが良好な収率で生成されたことが、外部標準を用いたGCによって明らかであった。
シランによるCO2還元のための遷移金属触媒は通常、非常に酸素感受性であったため、実際的応用が制限されていた。これに対して、このNHC触媒系は、二原子酸素(di-oxygen)に対して耐性である。ジフェニルシラン及びメシチルイミダゾリリデン触媒を用いるCO2還元において、乾燥空気を供給原料として用いると、反応はスムーズに進行して、中間体及びメトキシド生成物を形成し、7日間で完了した。混合CO2/O2供給原料を用いた反応は、純CO2供給原料を用いた反応と同じ結果を示した。これにより、乾燥空気供給原料中CO2のメタノールへの変換へ本システムの実際的応用の可能性が明らかになり、これは工業プロセスには非常に魅力的であろう。
実験
特に断らない限り、溶媒及び化学薬品は全て、商業的供給業者から入手した。反応のセットアップには、乾燥溶媒及び窒素グローブボックスを用いた。種々のイミダゾリウム塩及びシランは、Sigma-Aldrich Co.から購入した。Imes-C02は、文献((a)Holbrey, J. D.、Reichert, W. M.、Tkatchenko, I.、Bouajila, E.、Walter. O.、Tommasi I.、Rogers, R. D.、Chem. Commun. 2003、1、28、(b) Duong, H. A.、Tekavec, T. N.、Arif, A. M.、Louie, J.、Chem. Commun. 2004、1、112)に従って合成した。CO2及びO2は、SOXALから入手し、13C濃縮CO2はSigma-Aldrich Co.から購入した。GC-MSは、島津製作所のGCMS QP2010システムで実施した。ガスクロマトグラフィー(GC)は、AgilentのGC6890Nシステムで実施した。遠心分離は、Eppendorf Centrifuge 5810R(4000rpm、10分)で実施した。1H及び13C NMRスペクトルは、BrukerのAV-400(400MHz)装置で記録した。
典型的な反応手順
イミダゾリウム塩(0.25ミリモル)及び水素化ナトリウム(0.25ミリモル)を、クリンプトップバイアル中、溶媒0.5mLに溶解させ、30分間撹拌して、カルベンを生成させた(溶液mL当たり0.5ミリモル)。次いで、脱プロトン化によって得られた無機塩が底部に沈降するように、この溶液を遠心分離した。カルベン溶液0.2mLを新しいバイアルに移し、溶媒2mLを投入した。バイアルをシールし、二酸化炭素をバルーンによってバイアル中に導入した。反応を10分間撹拌し、その後、シラン1ミリモルを投入した。内部標準のメシチレンを加えた(0.5ミリモル)。
指定反応時間後、反応混合物のアリコートを取り出し、GC-MS分析の前に塩化メチレンで希釈した。
転化率の研究のために、メシチレン及び種々の濃度のジフェニルシランを用いて、GC較正曲線を作成した。1時間おきに反応混合物からアリコートを取り出し、GC分析の前に塩化メチレンで希釈した。
乾燥空気との反応のために、供給圧縮空気を硫酸カルシウム乾燥管に通してから、反応混合物中にバブリングさせた。反応混合物からのサンプルをGC-MS分析に供した。また、バルーンから空気を供給して、類似の反応を行った。
反応を、種々のシランを用いて試験した。三置換シランを含む反応は遅く、3時間後になって初めて生成物が観察された。反応は、シラン中心に結合された基によっても影響された。トリフェニルシラン及びジフェニルメチルシランは室温では二酸化炭素と反応しなかった。シランの活性順序は、PhSiH3>>Ph2SiH2>>PhSiHMe2>Et2SiHMe>Et3SiH(Ph2SiHMe及びPh3SiH)であることがわかった。
加水分解反応
反応混合物の加水分解によってメタノールを生成するために、18時間後に、2当量のNaOH/H2O溶液を加えることによって、反応を止めた。これを更に24時間撹拌してから、内部標準としてイソプロパノールのアリコートを加えた。得られた混合物をGC分析に供した。
Figure 2012502025
NMRチューブ反応
1,3-ビス-(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾリウムカルボキシレートを、文献方法によって合成し、Imes-CO2(0.05ミリモル/mL)の原液をDMF-d7中で調製した。触媒0.01当量に相当するアリコートをNMRチューブに移し、DMF-d7 0.5mLを加えた。続いて、シラン0.1当量を加え、チューブをシールし、次いで排気し、13CO2を用いて再充填し、これを2回の凍結-減圧-融解サイクルで行った。反応を、13Cデカップリング及びカップリングNMRスペクトル分析によって監視した(図3及び4参照)。
中間体の単離
中間体の単離のために、フェノール2当量をDMF中溶液として混合物に加える以外は、典型的な反応に関して前記で概説した手順に従って、反応を実施した。反応をGC-MSによって監視し、溶媒を真空下で除去した。2種の生成物を、GC-MSによって検出した:(Ph2Si(OCHO)(OC(O)OPh)、MW=364、tr=17.4分;Ph2Si(OPh)2、MW=368、tr=21.3分(図5参照)。
図6から8は、種々の条件及び反応時間での反応のGC-MSクロマトグラムを示す。
本明細書中に記載した研究は、NHC有機触媒によって触媒された初めてのCO2還元反応に相当する。遷移金属触媒に比較して、NHCは、優れた効率を示し、より穏やかで、より柔軟な反応条件の使用を可能にする。NHCによるCO2の接触還元はまた、耐空気性の触媒系を用いて選択性の高い最終生成物を生成する。これは、非常に将来性のある化学的CO2固定プロトコールであり、ポリシロキサンの形成による、空気中CO2のメタノールへの直接転化に応用できる。
ポリ-N-複素環式カルベン触媒上における、シランを用いた二酸化炭素のメタノールへの転化
本発明者らは、N-複素環式カルベンが、周囲条件下における二酸化炭素のメタノールへの転化を触媒できることを実証した。本明細書中には、この転化が、不均一反応系中でポリ-N-複素環式カルベン(ポリ-NHC)によって触媒できることが示されている。ポリ-NHC触媒は効率が高く、多数回の回収及び再使用が可能である。ポリ-NHCは、先行文献(Y. Zhang、L. Zhao、P. K. Patra、D. Hu、J. Y. Ying、Nano Today 2009、4、13)に記載された方法に基づいて、合成した。この文献の内容を、相互参照によって本明細書中に組み入れる。
CO2のヒドロシリル化
触媒の調製
1ミリモル当量のポリ-イミダゾリウム、等モル量の水素化ナトリウム及び10mLの無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を、20mLクリンプトップバイアル中に入れた。このバイアルをシールし、懸濁液を1時間撹拌してから、CO2をバルーンによって導入した。反応混合物を一夜撹拌してから、懸濁液を遠心分離し、上清を除去した。次いで、残りの固体を、ジクロロメタンを10mLずつ3回用いて洗浄し、乾燥するまでSchlenkライン下に一夜放置した。
この反応は、ポリ-イミダゾリウムカルボキシレート0.1ミリモル当量と、8mLクリンプトップバイアル中へのDMF(2mL)及びシラン1ミリモルの添加とを用いた。次いで、バイアルを排気し、CO2をバルーンによって導入した。
現場反応
0.1ミリモル当量のポリ-イミダゾリウム(即ち、その量の、1ミリモルのイミダゾリウム基を含むポリイミダゾリウム)、等モル量の水素化ナトリウム及び2mLの無水DMFを、8mLクリンプトップバイアル中に入れた。このバイアルをシールし、懸濁液を1時間撹拌してから、CO2をバルーンによって導入した。反応混合物を1時間撹拌してから、1ミリモルのシランを加えた。2時間おきにサンプルからアリコートを取り出し、メシチレンを外部標準としてGC-MS分析に供した。
結果及び考察
固体ポリ-NHC触媒はこの反応を効果的に触媒し、Ph2SiH2を12時間で完全消費した。この固体触媒は、再循還が容易であり、後続ランは最初のランよりもはるかに速かった。固体触媒は、最大5回のランに再循還させることができた。触媒失活は6回のラン後に認められ、12時間の反応後であってもPh2SiH2の不完全な消費が観察された。結果を図xに示してある。しかし、強塩基(NaH)を用いた反応による触媒の再生後、ポリ-NHCは高活性となり、シランは後続ランにおいて4時間で完全消費された。
核磁気共鳴(NMR)及びガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MC)の研究から、IMes触媒を用いた場合と同様なSi-OMe生成物が、ポリ-NHC触媒でも形成されることが示された。反応混合物の上清を収集し、分析した。2当量のNaOH/H2O溶液の添加による反応上清の加水分解によって、メタノールが生成された。これを更に24時間撹拌してから、イソプロピルアルコールのアリコートを内部標準として加えた。1mLのアリコートをサンプルから取り出し、ジクロロメタンで希釈してから、得られた混合物を、Agilent HP-5カラム((5%-フェニル)-メチルポリシロキサン結合相)を用いるGC分析に供した。各再循還ラン後に40%のメタノール収率(シランに基づく)が達成された。

Claims (20)

  1. N-複素環式カルベン(NHC)若しくはそのカルボキシレート又は両者の存在下で二酸化炭素をシランに暴露して、メチルシリルエーテルを生成する段階を含む、二酸化炭素の還元方法。
  2. 前記メチルシリルエーテルを加水分解してメタノールを生成させる段階を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記加水分解の段階を塩基性条件下で実施する、請求項2に記載の方法。
  4. 前記NHC又はそのカルボキシレートが触媒である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記NHC又はそのカルボキシレートが、前の反応で使用されたものである、請求項4に記載の方法。
  6. 前記NHCが金属を含まない、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記NHCが、N,N’-二置換イミダゾリジン-2-イリデン又はN,N’-二置換イミダゾル-2-イリジンである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記二酸化炭素を前記NHCのカルボキシレートの存在下でシランに暴露し、且つ前記方法が前記NHCを二酸化炭素と反応させて、前記NHCのカルボキシレートを生成させる段階を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 対応するN-複素環式塩を塩基と反応させることによって、前記N-複素環式塩から前記NHCを生成させる段階を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記生成をその場で実施する、請求項9に記載の方法。
  11. 前記塩基が非求核塩基である、請求項9又は10に記載の方法。
  12. 前記塩基が水素化ナトリウム又はカリウムt-ブトキシドである、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記シランを二酸化炭素に対してモル過剰で用いる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記シランがジオルガノシランである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記ジオルガノシランを、オリゴジオルガノシロキサン若しくはポリジオルガノシロキサン若しくはシクロオリゴジオルガノシロキサン又はこれらの任意の2種若しくは全ての混合物に転化する段階を含む、請求項14に記載の方法。
  16. 前記二酸化炭素が気体の混合物中に存在する、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記NHC又はそのカルボキシレートがポリマーである、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前の反応からのポリマーNHCを強塩基で処理することによって前記NHCを再生させてから、前記NHCを二酸化炭素に暴露する段階を含む、請求項17に記載の方法。
  19. N-複素環式カルベン(NHC)若しくはそのカルボキシレート又は両者の存在下で二酸化炭素を含む気体にシランを暴露する段階を含む、二酸化炭素を含む気体から二酸化炭素を少なくとも部分的に除去する方法。
  20. 前記暴露段階前に気体から水蒸気を除去する段階を含む、請求項19に記載の方法。
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