本発明は、複数の端末が共通の回線で接続された通信システム、通信方法に関し、例えばOLT(Optical Line Terminal:局側終端装置)と複数のONU(Optical Network Unit:利用者側終端装置)とで構成されるPON(Passive Optical Network)システム等に関する。
PONシステムでは、ONUから送信される上り方向のデータが衝突しないようにOLTとONU間で同期をとりながら通信を行う。OLTは、上り方向のデータが衝突しないよう各ONUに対する送信許可を与えるように計画する。この際、各ONUとの間の距離による遅延を考慮する。そのため、OLTは、各ONUとの間のラウンドトリップタイムを計測するが、光ファイバによる伝送ではジッタやワンダなどの伝送路の変動があるため、周期的に計測を行う必要がある。
一方、データ通信は常時行われているわけではなく、たとえば夜間などは全くデータ通信が行われない。しかし、ラウンドトリップタイムの計測は、上記のようにデータ通信の有無に関わらず周期的に行われている。データ通信が行われない場合にも、ラウンドトリップタイムの計測のためにONUを常時通信可能な状態としておくことは電力を浪費することになる。そのため、ONUから省電力状態への移行を要求することにより、ONUを間欠的に省電力状態に遷移させる技術が検討されている。
また、ONUからの上りデータがない場合に、そのようなONUに無駄な送信帯域を割当てず、スループットを向上するPONシステムが検討されている(特許文献1)。このPONシステムでは、予め設定された一定期間、ユーザデータがない状態をOLTが検知した時に、OLTはONUの登録を抹消し、当該ONU対して光リンクを一時的に停止する旨を通知する。その後、ONUには送信帯域が割り当てられず、リンクを維持するためのフレームの送信も抑制されるため、ONUはフレームの送信回数を減らすことができる。
特許文献1に記載されたPONシステムでは、一定データを送信しないONUに対してリンクを切断するため、ONUの負荷を低減できる。しかし、ONUが上りデータの送信を再開する場合には、未接続のONUを発見するディスカバリ処理を再度行い、リンクを新らたに確立してONUを再登録する。そのため、例えば低ビットレートでの通信が継続している場合には、この通信方法は使用できない。また、OLTはONUとのリンクを切断してしまうためONUや上り通信回線自体に通信異常が発生した場合には、異常を検知することができない。さらに、OLTはONUの登録を抹消してしまうため、通信異常状態のONUは、ディスカバリ処理によっても発見されず、通信異常の発見が困難になる。
この発明の通信方法は、複数のONUを共通の光ファイバを用いてOLTに接続する光通信システムの通信方法であって、下記ステップ(a)〜(e)を備えたものである。
(a) ONUが光送信器を休止する省電力状態に移行することをOLTへ通知し、
(b) この通知に基づきOLTが当該ONUの省電力状態を検知し、
(c) OLTが光送信器を休止中のONUに送信帯域を割当て、送信帯域通知を当該ONUに送信し、
(d) 送信帯域通知を受信したONUが、一時的に光送信器を起動するとともにOLTへ応答信号を送信し、再び省電力状態に移行し、
(e) OLTは、光送信器を休止中のONUに割当てた送信帯域を観測し、応答信号に基づいて、当該ONUが省電力状態であるのか、当該ONUとの通信に障害が発生したのかを検出する。
また、他の通信方法は、複数のONUを共通の光ファイバを用いてOLTに接続する光通信システムの通信方法であって、下記ステップ(a)〜(e)を備えたものである。
(a) ONUが光送信器を所定のスリープ期間休止するスリープモードに移行することをOLTへ通知し、
(b) この通知に基づきOLTが当該ONUのスリープモード移行を検知し、
(c) OLTがスリープ期間に省電力状態のONUに送信帯域を割当て、送信帯域通知を当該ONUに送信し、
(d) 送信帯域通知を割当てられたONUが、スリープモードから非スリープモードに復帰する場合には光送信器を起動し送信帯域で応答信号を送信する、一方、スリープモードを継続する場合には応答信号の送信を省略可能であり、
(e) OLTは、光送信器を休止中のONUに割当てた送信帯域を観測し、応答信号に基づいて、当該ONUが省電力状態であるのか、当該ONUとの通信に障害が発生したのかを検出し、スリープ期間においては応答信号に基づく障害検出を抑制する。
この発明のONUは、光ファイバに接続され、受信を継続しながら送信を停止して消費電力を低減する省電力状態での動作が可能な光送受信器と、光送受信器の省電力状態への移行を制御するとともに、省電力状態で動作中にOLTから制御信号を受信した場合には、一時的に光送受信器の送信を有効に制御して応答信号を出力する制御装置と、を備える。
この発明のOLTは、光ファイバに接続された光送受信器と、利用者側光回線終端装置の光送受信器が省電力状態で動作し送信停止中であっても、当該利用者側光回線終端装置に送信帯域を割当て、局側光回線終端装置の送受信器が受信した応答信号に基づき当該利用者側光回線終端装置との通信に障害が発生しているのか、省電力状態で動作中であるのかを判別する制御装置と、を備える。
この発明の他のONUは、光ファイバに接続され、受信部による受信を継続しながら送信部を断続的に停止して消費電力を低減するスリープモードでの動作が可能な光送受信器、及びスリープモード中に送信部を断続的に停止する制御を行うとともに、スリープモード中の送信部の停止期間にOLTにより送信帯域が割当てられ、かつスリープモードを継続する場合に、OLTへの応答信号の送信を省略可能に構成され、送信部の周期的な停止期間の合間に送信帯域が割当てられた場合には応答信号を送信する制御装置を備える。
この発明の他のOLTは、光ファイバに接続された光送受信器と、利用者側光回線終端装置の光送受信器がスリープモードで動作し送信停止中であっても、当該利用者側光回線終端装置に送信帯域を割当て、光送受信器の断続的な送信停止期間の合間に、スリープモード中の利用者側光回線終端装置に割当てた送信帯域を観測することにより、当該利用者側光回線終端装置との通信に障害が発生しているのか、当該利用者側光回線終端装置がスリープモードで動作中であるのかを判別する制御装置と、を備える。
本発明にかかる通信方法、光通信システム、局側光回線終端装置、並びに利用者側光回線終端装置は、断続的な通信によるパワーセーブ動作において障害検出を行うことができる。
図1は、本発明の実施の形態における通信システムの構成示す構成図である。
図2は、本発明の実施の形態1における通信方法を示すシーケンス図である。
図3は、本発明の実施の形態1におけるOLTの通信制御を示すフローチャートである。
図4は、本発明の実施の形態1におけるONUの通信制御を示すフローチャートである。
図5は、本発明の実施の形態1における通信方法(障害発生時)を示すシーケンス図である。
図6は、本発明の実施の形態1における通信方法(電源切断時)を示すシーケンス図である。
図7は、本発明の実施の形態1における通信方法(変形例)を示すシーケンス図である。
図8は、本発明の実施の形態2における通信方法を示すシーケンス図である。
図9は、本発明の実施の形態2におけるOLTの通信制御を示すフローチャートである。
図10は、本発明の実施の形態2におけるONUの通信制御を示すフローチャートである。
図11は、本発明の実施の形態2における通信方法(障害発生時)を示すシーケンス図である。
図12は、本発明の実施の形態2における通信方法(電源切断時)を示すシーケンス図である。
図13は、本発明の実施の形態2における通信方法(変形例)を示すシーケンス図である。
図14は、本発明の実施の形態2におけるOLTの通信制御(変形例)を示すフローチャートである。
実施の形態1.
・ハードウェア構成
図1は、本発明にかかるPONシステムの実施の形態1の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態のPONシステムは、OLT1と、ONU10-1〜10-3と、を備える。OLT1とONU10-1〜10-3はスプリッタ40を介して加入者線30で接続されている。スプリッタ40は、OLT1に接続する加入者線30をONU10-1〜10-3の数に分岐する。また、ONU10-1は、端末20-1および20-2に接続されている。なお、ここではONUを3台とした例を示しているが、ONUの台数はこれに限らず何台でもよい。
OLT1は、PONプロトコルに基づいてOLT側の処理を実施するPON制御部2と、ONU10-1〜10-3から受信する上りデータを格納するためのバッファである受信バッファ3と、ONU10-1〜10-3へ送信する下りデータを格納するためのバッファである送信バッファ4と、光信号の送受信処理を行う光送受信器5と、上りデータと下りデータを波長多重するWDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラ(WDM)6と、ネットワークとの間でNNI(Network Node Interface)の物理インタフェース機能を実現する物理層処理部(PHY)7と、を備える。光送受信器5は、受信処理を行う光受信器(Rx:Receiver)51と、送信処理を行う光送信器(Tx:Transmitter)52と、を備える。
ONU10-1は、PONプロトコルに基づいてONU側の処理を実施するPON制御部11と、OLT1への送信データ(上りデータ)を格納するためのバッファである送信バッファ(上りバッファ)12と、OLT1からの受信データ(下りデータ)を格納するためのバッファである受信バッファ(下りバッファ)13と、光送受信器14と、上りデータと下りデータを波長多重するWDM15と、端末20-1,20-2との間で、それぞれUNI(User Network Interface)の物理インタフェース機能を実現する物理層処理部(PHY)16-1,16-2と、を備える。
光送受信器14は、送信処理を行う光送信器(Tx:Transmitter)141と、受信処理を行う光受信器(Rx:Receiver)142と、を有する。PHY16-1は、受信処理を行う受信部(Rx:Receiver)161-1と、送信処理を行う送信部(Tx:Transmitter)162-1と、で構成され、PHY16-2は、受信処理を行う受信部(Rx:Receiver)161-2と、送信処理を行う送信部(Tx:Transmitter)162-2と、を有する。
なお、ONU10-1に接続される端末を2台としているが、端末の数はこれに限らず、何台でもよく、端末の数に応じた物理層処理部(PHY)を備える。また、図1では代表としてONU10-1の構成例を示したが、ONU10-2,10-3もONU10-1と同様の構成である。
OLT1のPON制御部2は、従来のPONシステムと同様に、ONU10-1〜10-3に対して送信時間帯が重ならないようにそれぞれ送信許可を与えるように上りデータの帯域割り当てを行い、ONU10-1〜10-3の送信データの衝突を防いでいる。この帯域割り当ては、どのような方法を用いてもよいが、たとえば、「Su-il Choi and Jae-doo Huh著,“Dynamic Bandwidth Allocation Algorithm for Multimedia Services over Ethernet(登録商標) PONs”,ETRI Journal,Volume 24,Number 6,December 2002 p.465〜p.466」に記載されているDynamic Bandwidth Allocation Algorithm等を用いることができる。
つぎに、本実施の形態のOLT1とONU10-1〜10-3の全体動作を説明する。PON制御部2は、PHY7経由でネットワークから受信した下りデータ(下り通信データ)を送信バッファ4に格納する。OLT1からデータを送信する際には、PON制御部2が、送信バッファ4に格納されている下りデータを読み出して光送受信器5に出力し、光送受信器5のTx52が送信データを光信号としてWDM6へ出力し、WDM6が光送受信器5から出力される光信号に対して波長多重を行い、加入者線30経由でONU10-1〜10-3へ下り信号として出力する。また、PON制御部2が、送信許可の指示を送信する送信帯域割当等の制御メッセージを送信する場合には、PON制御部2が生成した制御メッセージを光送受信器5に出力し、以下、下りデータと同様にONU10-1〜10-3へ送信する。なお、図1のPONシステムでは、波長多重を行うためWDM6,15を用いているが、単一波長で通信する場合には、WDM6、15は必須ではない。
ONU10-1〜10-3では、OLT1から下り信号を受信すると、WDM15が下り信号を分離して光送受信器14へ出力し、光送受信器14のRx142が下り信号を電気信号の下りデータに変換してPON制御部11へ出力する。PON制御部11は、光送受信器14のRx142から出力された下りデータを受信バッファ13に格納する。PON制御部11は、受信バッファ13に格納された下りデータを読み出してそのデータの宛先に応じてPHY16-1,16-2の両方または片方に出力する。下りデータを受け取ったPHY16-1,16-2は、下りデータに対して所定の処理を実施して、自身が接続する端末20-1,20-2へ送信する。
一方、ONU10-1〜10-3から上りデータを送信する場合には、PON制御部11は、端末20-1,20-2からPHY16-1,16-2経由で取得した上りデータを送信バッファ12に格納する。そして、OLT1から与えられた送信帯域に基づいて送信バッファ12に格納した上りデータを読み出して光送受信器14へ出力する。光送受信器14のTx141は、上りデータを光信号(上り信号)に変換し、WDM15,加入者線30経由でOLT1に送信する。
OLT1のPON制御部2は、ONU10-1〜10-3から加入者線30,WDM6,光送受信器5のRx51経由で受信した上りデータを受信バッファ3に格納する。また、PON制御部2は、受信バッファ3に格納した上りデータを読み出して、PHY7経由でネットワークへ出力する。
また、ONU10-1〜10-3は、OLT1から制御メッセージについては、PON制御部11が、WDM15および光送受信器14のRx142経由で受信し、制御メッセージの指示に基づいた動作の実施、制御メッセージに対する応答の生成などを行う。
・パワーセーブ動作
次に、通信システムの省電力動作の一例として、PONシステムのパワーセーブ動作について図2を用いて説明する。
(d1)-(d2) & (u1)-(u2) 通常運用状態での通信
図2では、ディスカバリ等の処理が終了し、通常の通信状態(Normal mode)での通信が開始された後のシーケンスが示されている。図2ではONU10は1つのみ記載されているが、実際にはOLT1は複数のONU10と同様の方法で通信する。PONシステムでは、上り通信(uplink)は時分割多重通信により、送信帯域が複数のONU10に割当てられる。OLT1は、この時分割多重を制御するため、ONU10に送信帯域Bwを指定して通信を許可する許可信号(Grant)を送信する。送信帯域は送信時間ということもできるため、言い換えれば、OLT1はONU10に送信時間を割当て許可信号を送信する。Grantは、各ONU10を識別できる情報、通信開始時間、及び通信終了時間(若しくは通信継続時間)を含む。
ONU10は、このGrantで指定された指定帯域で上りデータ(Data)を送信する。OLT1は送信帯域Bwで上りデータを受信し、コアネットワーク側に存在する上位装置へのデータ中継を行うとともに、ONU10との通信障害についても検知する。ここで、OLT1は指定した送信帯域Bwに上りデータが送信されてこなかった場合、この送信帯域に対応するONU10に異常があったこと判定する。この通信障害監視については、後述する。
(d3)-(d8) & (u3)-(u8) 省電力状態での通信
ONU10が省電力状態での通信が可能となったとき、もしくは省電力状態での通信が必要になったとき、ONU10はOLT1に省電力状態に遷移することを通知する。この通知はどのような要求信号を使用してもよいが、例えば、Dying_Gasp信号を送信する。
この通知を受信すると、OLT1は当該ONU10が省電力状態に入ったことを検知し、当該ONU10への帯域割当てを所定の期間(sleep time)休止する。この通信方法は、sleep timeとして任意の値を設定可能であるが、1時間単位のような長期間ではリンクを正常に維持することが難しいため、例えば、ミリ秒のような短い期間を指定する。
ONU10は、省電力状態に遷移すると、光送受信器14のTx141のレーザーパワーを切り、オフ状態に制御する。なお、このときONU10は、光送受信器14のRx142のパワーカットは行わず、OLT1からの制御信号や下りデータの受信は続ける。一方、OLT1も、省電力状態に移行したONU10にGrantを送信しないが、他の制御信号や下りデータは送信する。図2において、ONUシーケンスの右側にONU10のTx141の電源供給状態を"ON","OFF"で示した。省電力状態、すなわちスリープモードでは、その期間に断続的に電源のオンオフが繰り返される。"OFF"で示された期間は、Tx141のレーザーパワーを停止している停止期間である。断続的な停止期間と停止期間との間に、ONU10はTx141を起動し一時的な起動時間(Tentative wake-up time)を作り出す。"Sleep time"は予め定められた時間長であり、この例では帯域更新周期の開始時が基準となって停止期間の絶対的な時間を特定している。図2では"Sleep time"と"OFF"期間と一致していないが、これは上りデータを送信したONU10が次の帯域更新周期を待たずに供給電力をカットするためである。他の実施例ではこの例に限らず"Sleep time"と"OFF"期間とを一致させるようにしてもよい。
OLT1は、各ONU10毎にsleep timeを計測し、sleep timeが経過したらONU10にGrantを送信する(d6)。このGrantは、省電力状態にあるONU10を一時的に起こすために送信される。ONU10は、この一時起動時間にOLT1からGrantを受信すると、省電力状態で動作中であっても一時的に光送受信器14のTx141にレーザーパワーを供給し、オン状態にする。なお、sleep timeの終了時間は分かっているため、ONU10はOLT1からの帯域割当の通知を待たずに電源をオン状態にすることも可能である。そして、ONU10は省電力状態を継続する場合には、上述(u3)で説明したようにスリープ要求を再送し、再び光送受信器14のTx141のレーザーパワーを切って省電力状態に移行する(u6)。
OLT1は、省電力状態のONU10に割当てた帯域を観測し、正常に要求信号が送られてきたかを検知する。このとき、省電力状態のONU10から正常に信号が送られてこない場合には、アップリンクの通信路、若しくはONU10自体に障害が発生したと判断して、警報を発令する。この障害発生時の動作については、図5を用いて後述する。
(d9)-(d10) & (u9)-(u10) 省電力解除時の通信
ONU10で、多量のデータ送信が必要な場合など、省電力状態の解除が必要な場合には、sleep time後の一時起動時間でONU10は、省電力状態の解除を要求する。この省電力状態の解除は、ONU10が特定の信号を送信することによって行ってもよいが、例えば、指定された帯域で有効な上りデータを送信することでも実現可能である。有効な上りデータを送信することで省電力状態の解除することにより、送信ビットが節約され送信データの帯域を有効に使用することができる。
OLT1は、上述(d6)後の動作と同様、タイミング(d9)の後に省電力状態のONU10に割当てた帯域を観測し障害検知を行う。同時に、ONU10が省電力要求を送信してきた場合には、OLT1は当該ONU10に対する省電力状態での運用を継続するが、上述のように省電力状態の解除要求を受信した場合には、省電力状態での運用を解除し、当該ONU10に対して通常運用での動作を開始する。
上述の動作によれば、OLT1はONU10に対するリンクは維持したままで、ONU10による省電力動作を許容することができ、同時に、通常はデータを送信してこないONU10との通信に障害が発生した場合でも早期に障害の発生を検知できる。さらにONU10は、光送受信器14のTx141に対するレーザーパワー供給を停止して消費電力を抑えることが可能であるとともに、障害監視のために必要な通信においても、間引かれたGrantにより帯域更新周期の度に何らかの信号送信を強要される場合と比べて、消費電力を抑えることが可能となる。
送信帯域割当周期とは、OLT1が送信帯域の割当てを通知し、当該ONU10に送信帯域を割当てる周期である。上述の間引かれたGrantは、省電力状態のONU10には通常状態で動作していたときに比べ、長い送信帯域の割当て間隔を持ったGrantである。
省電力状態のONU10に割当てる送信帯域割当周期は、どのように決めてもよいが、一例としては、送信帯域割当周期がMPCP(Multi-Point Control Protocol)タイムアウト警報の検出時間Tと一致した値を持つようにすることができる。送信帯域割当周期をMPCPタイムアウトの時間よりも長く設定すると、スリープモード中のONU10がこのMPCPタイムアウトに引っかかってしまうため、OLT1は送信帯域割当周期をMPCPタイムアウトの時間以下に設定する。また、ONU10に複数回(n回)の送信期間を与え、一回も受信できなかった場合に、MPCPタイムアウトと判定すると無用な警報等が抑止される。そのため、例えば、MPCPタイムアウトTミリ秒と設定されている場合に、OLT1は送信帯域割当周期をT/nミリ秒に設定する。
また、OLT1とONU10の間のリンクは維持されるため、ユーザ端末同士が通信を継続中であっても、消費電力を低減できる。
・OLTの通信制御詳細
次に、図3を用いてOLT1の通信処理の詳細について説明する。
図3はOLT1のPON制御部2(PON controller)の処理を示している。まず、PON制御部2は、ディスカバリによって発見されリンクが張られているONU10のリスト(ActiveONUList)に基づき、アップリンクの送信帯域を割当てるべきONU10を特定し、各ONU10に送信帯域を割当てる(ステップS1)。このとき例えば、1周期の送信帯域をN分割したとき、対応するONU10の識別子IDは、idbw = ONU[bw], bw = 1,2, ... , N で与えられる。
ActiveONUListでは省電力中のONU10は除外されているため、PON制御部2はこのリストを参照することにより省電力動作中のONU10には送信帯域を割当てないように動的帯域割当てを行うことができる。
次に、PON制御部2は、Grant及び下りデータをフレームにまとめ、送受信器5を制御して、このフレームをONU10に送信する(ステップS2)。Grant及び下りデータは、同一のフレームで送っても良いし、別々のフレームで送信することも可能である。
続いて、PON制御部2は、Rx51が受信した各送信帯域の受信処理を以下のステップで行う(ステップS3)。
まず、PON制御部2は、次の送信帯域に割当てたONU10を特定する(ステップS4)。このとき、送受信器5のRx51はアップリンクの受信を同時並行で行っており、PON制御部2は、Rx51が受信したデータを処理のため内蔵メモリ等に読み込む(ステップS5)。PON制御部2は、受信した上り信号の種類を調べ(ステップS6)、有効な信号がない場合にはステップS17に、省電力状態の要求信号(Dying_gasp)を検出した場合にはステップS12、その他のデータ信号等である場合には、ステップS7の処理を行う。
ステップS7においてPON制御部2は、受信データの送信元ONU10を調べ、このONU10がActiveONUListに含まれていない場合には、ActiveONUListに追加する。ここでOLT1は省電力状態のONU10が通常のデータを送信してきたことにより、当該ONU10が省電力状態を解除したことを検知する。
受信データには、ONU10からの帯域要求が含まれており、PON制御部2は受信フレームから帯域要求を読み取り、ステップS1における次回の帯域割当てのために当該ONU10の識別子(ID)と対応させてこの帯域要求をメモリに記録する(ステップS8)。帯域要求は、ONU10の送信バッファ12におけるデータの蓄積量(占有度)などによって表現されている。ONU10が送信バッファ12の占有度に関するレポートを送信し、このレポートに基づきOLT1が動的帯域割当てを行う方法をSR-DBA(status reporting DBA)という。なお、帯域要求は明示的に行う必要はなく、OLT1がONU10に割当てた帯域に対して、実際にONU10が送信したデータ量を観測することにより、割当てる帯域を調整することも可能である。これをTM-DBA(traffic-monitoring DBA)という。ステップS8においてこのTM-DBAにおけるトラフィック観測を行ってもよい。
次に、PON制御部2は受信バッファ3に保持された受信データを、PHY7を介してネットワークへ送信する(ステップS9)。
PON制御部2は、各ONU10とのアップリンクの通信状態を常に監視している。もし、ONU10がフレームを送信するタイミングで期待されるフレームを受信できなかった場合、LOSi(Loss of signal for ONUi)という警報信号を出力する。この警報信号はネットワーク管理に必要な警報であり、LOSiが発生した場合にはネットワークオペレータに通知され、ネットワークオペレータはこのLOSiに基づき障害対策を行う。ステップS10はこのLOSiのための障害カウントをクリアする処理である。LOSiはi番のONU10から例えば信号を4回連続で受信できなかった場合に真の障害と判断され、出力されるものであり、障害カウントはこの不受信の連続数をカウントしている変数である。PON制御部2は、LOSiのカウントのカウントアップを後述するステップS17で行う。
ステップS10の処理が終了すると、PON制御部2は次の帯域を処理するためステップS3のループ処理の最初に戻る。このループ処理は、bw番目の帯域に対する処理を1〜N番目まで繰り返す処理である。
次に、ステップS6で、OLT1がスリープ要求(Dying_Gasp)信号を受信した場合の処理について説明する。
この実施の形態では、Dying_Gaspは2種類ある。1つはONU10がリンクを切って電源をオフにする場合に出力するDying_Gasp(0)と、もう1つはONU10がスリープ要求として出力するDying_Gasp(1)である。Dying_Gasp信号は、Dying_Gasp信号であることを示す信号識別子、ONU10のID、スリープ要求であることを示すフラグ(オプション)を含むフォーマットを有している。PON制御部2は、ステップS12で受信したDying_Gasp信号がスリープ要求であるかを調べ、スリープ要求すなわち、Dying_Gasp(1)信号である場合にはステップS13の処理に進む。
ステップS12にて、PON制御部2は当該ONU10が省電力状態に移行したことを検知し、これを記録する、具体的には、送信帯域の割当て対象リストであるActiveONUListから当該ONU10のIDを除外する処理を行う。また、PON制御部2は省電力期間の計測をするために、i番目のONU10に対してsleep timeのタイマをセットする(ステップS14)。このsleep timeは、OLT1が予め記憶している時間、あるいは通信状況に基づいて計算した時間でもよいし、ONU10から具体的な時間を取得してこの値をセットしてもよい。また、sleep timeの測定は、省電力期間を判別できるものであればどのような方法を用いてもよく、所定の経過時間に従ってカウントアップ、カウントダウンするような相対的な時間経過の測定や、クロックの絶対時間を指定した絶対的な時間観測によって行うことも可能である。次にPON制御部2は、上述の上りデータ受信処理(ステップS9)に移行し、同様の処理を繰り返す。なお、Dying_Gasp(1)とともに上りデータも同一帯域(或いはフレーム)で送信できる仕様とすると、ONU10が送信バッファ12に微少なデータ断片のみを残してデータ送信が完了する状況でも、即座に省電力状態に入ることができるという利点がある。一方、省電力状態が可能な状況では、ONU10は上りデータを持っていない場合も多いので、スリープ要求を受け取った場合には、このフレームの上りデータの処理をしない仕様としても構わない。
一方、ステップS12にて、Dying_Gasp(0)を受信したと判定した場合には、PON制御部2は、ONU10の電源が切られた状態となったことを検知し(ステップS15)、当該ONU10をActiveONUListから外すとともに、当該ONU10に割当てていたリンクの情報とリソースを削除する処理を行う。このとき、OLT1は、ONU10にはリンクが切断されたこと、リンク情報など全ての情報を廃棄するように指示するDeactivate信号(Deactivate_ONU-ID)を送信する。ONU10はこの信号を受け、光送受信器14の電源をオフにする。この処理が終了すると、PON制御部2は再び次の帯域を処理するためステップS3の処理に戻る。
ステップS17は、ステップS6にてONU10に割当てられた送信帯域で、有効な信号が受信されなかった場合の処理であり、PON制御部2はこの処理により通信障害を検知する。ここで、単に光送受信器14のTx141の電源をオフにして省電力状態にしているだけの省電力モードを備えるシステムでは、省電力状態のONU10は当然上りデータ等を送信してこないためOLT1は障害検知をすることができない。この実施の形態では、省電力動作中のONU10に対しても、OLT1が一時的に送信帯域を割当て、ONU10もsleep time後に一時的にTx141の電源をオンにしてフレームを送信する。そのため、ステップS6で、割当られた送信帯域にONU10がフレームを送信してくるか否かで上りリンクの通信障害を検知できる。ここで、当該帯域でフレームが受信できなかった場合、PON制御部2は当該i番のONU10に対する不受信回数をカウントする変数LOS[i]をカウントアップする。
PON制御部2は、変数LOS[i]が予め定められた規定数LOS_Max(例えば4)に達した場合には、当該ONU10の上りリンクに通信異常が発生したと判断し、上述の警報LOSiを発する(ステップS19)。また、PON制御部2はステップS16の処理に移行し、リンクを切断する。一方、変数LOS[i]がLOS_Maxに達していない場合、PON制御部2は警報は出さずに、次の帯域に対する処理(ステップS3)に戻る。
以上の処理を1つの帯域更新周期内の全ての送信帯域に行った後、PON制御部2は省電力動作中の各ONU10について、sleep timeが満了しているONU10がないかを調べる。もし、sleep timeが満了しているONU10が見つかった場合には、一時的に当該ONU10を起動するため、そのIDをActiveONUListに追加する(ステップS20)。この処理により、ステップS17〜19で説明した省電力動作中のONU10の監視動作が可能になる。また、ONU10が省電力状態を継続する場合には、ステップS1で割当てられた送信帯域を使ってスリープ要求を送り返すため、ONU10はリンクを維持しながら再び消費電力を抑えた動作を継続することができる。
次にPON制御部2は、次の帯域更新周期の動作を継続するかを判断し、続ける場合には、ステップS1の処理に戻り、上述の動作を再開する。
・ONUの通信制御詳細
次に、図4を用いてONU10の通信処理の詳細について説明する。
図4はONU10のPON制御部11が実行する通信制御を示すフローチャートである。通信制御は大きくダウンリンク受信制御(ステップS30−S33)とアップリンク送信制御(S35−S51)に分かれる。
ダウンリンク受信制御
まず、ダウンリンクの受信制御について説明する。光送受信器14のRx142は、OLT1から送信されるダウンリンクフレームを受信し、受信バッファ13にこの受信データを記録する。PON制御部11は、光送受信器14が受信したフレームを観測し(ステップS30)、フレームに含まれるヘッダ情報からアップリンクの送信帯域情報を抽出する(ステップS31)。送信帯域情報は、割当て対象のONU10が特定できる情報と、送信開始時間、送信終了時間が特定できる情報を持っている。
PON制御部11は、また、受信フレームからペイロード部分を抽出し、上位層処理手段へ出力する(ステップS32)。この処理は、ONU10に接続されている端末20-1,20-2に合わせた上位プロトコルで受信したデータを送信するための処理である。次に、PON制御部11は、受信制御を終了し電源を切るかを判断し、電源を切らず受信を継続する場合はステップS30に戻り、上述の受信制御を継続する。
アップリンク送信制御
次に、アップリンクの送信制御について説明する。
PON制御部11は、ステップS35で、OLT1から送信帯域の割当て(Grant)を待つ。送信帯域が割当てられたら、PON制御部11は光送受信器14のTx141に電力を供給し、レーザーパワーオンの状態にする(ステップS36)。この処理は、特に省電力状態から復帰するときに必要であるため、通常の運用状態で動作中で既にTx141がオン状態であるときは改めて、電力供給を開始する処理を行う必要はない。
ここで、PON制御部11は、実際の送信帯域の開始時間前であって、光送受信器14のTx141が起動し光出力が安定するまでの時間以上前に、Tx141に対して電源供給を指示する。この実施の形態の帯域更新周期は非常に短いサイクルであり、省電力状態から一時的起動状態(Tentative wake-up)への移行は非常に短い時間で、かつ、頻繁に行われる。従って、Tx141の起動時の光出力の挙動を考慮せずに、送信時間の直前で起動した場合には、OLT1において受信不能、エラー率の悪化などの影響がでるためである。従って、図4に示されるように送信帯域が割当てを検知したら、PON制御部11はTx141の電源供給を開始する。この後、他のフレーム作成作業などを行い、PON制御部11が実際にフレームの送信をするのはこの後のステップS46である。
次に、PON制御部11は、送信バッファ12のデータ蓄積状態や端末20-1、20-2等の下流側の接続機器の動作状態を検知し(ステップS37)、省電力状態(Sleep mode)に遷移するかどうかを判断する(ステップS38)。例えば、OLT1は送信バッファのデータ蓄積状態が、データがない状態であるか、所定の期間、所定のしきい値以下の少ないデータ量の蓄積しかなく余裕があると判断したときに、省電力状態に遷移すると判断する。省電力状態であるときにはアップリンクは維持されるため、ONU10は、送信バッファの容量や通信回線の伝送速度に対して、比較的小さい帯域のデータは送信できる点に注目すべきである。また、ONU10が省電力状態に遷移する判断基準の他の例としては、(1)各端末の電源状態とオン状態の台数や通信応答がある端子の数、(2)接続する端末(ここでは端末20-1,20-2)の全てが省電力状態に入ったことを、例えばIEEE802.3azに規定されるLPI受信などの方法で検出したか否か等がある。
省電力状態に遷移しないと判断した場合、PON制御部11は送信バッファ12に蓄積されている送信データに基づき、送信ペイロードを作成する(ステップS39)。このペイロードは上位層で処理及び作成されたデータである。続いて、次の周期の送信帯域を確保するため、送信バッファ12のデータ占有率等を基にステータスレポートが作成される(ステップS40)。これはPON制御部11が、例えば、OMCI(Optical Network Unit Management and Control Interface)等のプロトコルによって指示されたバッファサイズに対して、実際にバッファに蓄積されているデータの割合で表わされ、この割合を所定の符号化方法で符号化し、レポートを作成する。ステータスは、アップリンクの通信トラヒックが分かるようなものであれば、どのような基準で作成されてもよい。また、TM-DBAを使用する場合には、このレポートは必須ではない。
一方、省電力状態に遷移する場合、PON制御部11は後述のステップS50で省電力状態に移行するため、省電力状態に遷移するという情報(フラグ)を内蔵メモリに記録する。また、PON制御部11はスリープ要求であるDying_Gasp(1)信号を生成する(ステップS51)。
ステップS41にて、PON制御部11はONU10の電源を切るかどうかを判断する。電源を切る場合、PON制御部11は送信フレームの中にDying_Gasp(0)信号を挿入しOLT1に送信するため、この信号を作成する(ステップS42)。電源を落とすと、Rx142も含めて光送受信器14の電源供給が止められ、ONU10は送受信ともに不可能な状態になる。従って、PON制御部11が実際に電源を落とすのは必要な送信処理を終了したステップS49以降になる。
PON制御部11は、上述のステップで作成した各種信号をまとめて、これらを収容するフレームを作成する(ステップS44)。このとき、PON制御部11はフレームヘッダーを作成して(ステップS43)、そのフレーム内に挿入する。
フレームの作成が終了すると、PON制御部11はステップS31で抽出した送信帯域情報で指定された送信開始時間まで待って(ステップS45)、フレームの送信を開始する(ステップS46)。フレームの送信が終了すると、PON制御部11は省電力状態(Sleep mode)に遷移するか否かを判断し(ステップS47)、省電力状態に遷移する場合にはTx141の電源供給を止める(ステップS48)。具体的には、PON制御部11は光送受信器14のTx141に対してパワーダウンまたはシャットダウンなどの電気信号を送信することによりTx141を省電力状態とすることができる。この処理により、PON制御部11はスリープモードにおける断続的な送信停止期間(送信部の停止期間)を作りだす。
最後に、PON制御部11は電源をオフするか、次の送信のために待機するかを判断し(ステップS49)、電源をオフする場合には光送受信器14等の電源を切って処理を終了する。ここで、単発的な通信エラーによりDying_Gasp(0)信号が正しくOLT1に伝達されない場合、無用の警報がOLT1で頻発してしまうため、電源オフ前に複数回Dying_Gasp(0)信号を送信してから電源をオフするようにすることができる。この場合、PON制御部11はステップS49でDying_Gasp(0)信号の送信回数をカウントし、所定回数に達するまではステップS35の処理に戻るようにする。
一方、電源オフしないと判断した場合には、PON制御部11はステップS35に戻り、上述と同様の処理を繰り返す。
・障害発生時の動作
次に、通信障害が発生した場合の通信システムの動作について説明する。
図5は、省電力状態で動作中のONU10に、通信障害が発生した場合を示すシーケンス図である。ONU10は送信タイミング(u3)後に省電力状態に移行し、この後、端末20-1から送信データを大量に受信しタイミング(u4)後に省電力状態から復帰しようとする。ここで、加入者線30で通信障害が発生してしまうと、データの送信が行えなくなる。OLT1は、ONU10が光送受信器14のTx141の電源をオフしデータを送信してこないことを知っているため、OLT1からみればアップリンク通信が一時的に無くても異常はなく、OLT1は異常が発生していることは検知できない。しかし、この実施の形態の通信システムでは、sleep time中は当該ONU10の上り通信は抑止しながら、一方でsleep time後(d6)に一時的に送信帯域を省電力状態のONU10に割当てる。そのため、OLT1は、(d6)で割当てた帯域を観測することにより、省電力状態のONU10とのリンクに通信異常(Loss of Signal for ONUi)がないかを検知することができる。
図5の例では、タイミング(d6)で割当てた帯域Bwで当該ONU10からの応答信号がない場合、続くタイミング(d7)でも同ONU10に帯域Bwを割当て、合計2回の帯域観測を行い、2回目の帯域の観測結果でLOSi警報を出力している。なお、この帯域割当ては連続する帯域更新周期で割当てる必要はなく、間欠的に送ってもよい。また、観測する回数も任意の数を設定することができる。
警報LOSiを出力したOLT1は、当該ONU10とのリンクを切断し、この旨をDeactivate_ONU-IDを3回出力して、ONU10に知らせる。Deactivate_ONU-IDを受け取ったONU10は、リンクの切断を検知し、リンクに関して保持していた情報を破棄して、データ送信を中止しなければならない。この後、ONU10はOLT1からの通信待ちの状態(standby mode)に移行する。
リンクが切断された後、ONU10がOLT1との間で再接続するためには、ONU10はOLT1から送信されるディスカバリ要求に応答し、自己をOLT1に登録する。OLT1は、ディスカバリによってONU10を登録し、リンクを確立するまで送信帯域を当該ONU10に割当てない。
・電源オフ時の動作
続いて、ONU10が電源オフするときの動作について説明する。
図6は、ONU10が省電力状態後に電源オフする場合を説明するシーケンス図である。タイミング(u8)まで、ONU10は省電力状態での動作をしているが、例えば、ユーザがONU10の電源を切る操作をした場合などで、ONU10に電源オフの動作開始をする必要が生じる。このとき、ONU10が省電力状態からすぐに電源を切ってしまうと、OLT1はこれを検知できずにLOSiを発してしまうことになる。そこで、ONU10は、sleep time後の帯域割当てまで待って(d9)、OLT1にDying_Gasp(0)信号を送信し(u9)、その後に電源を切る。
一方、OLT1もDying_Gasp(0)信号を受信したことで、ONU10との間に通信障害が発生したり、スリープ状態から復帰していないことを認識できるため、無用の警報出力を防ぐことができる。
・Sleep timeの可変設定とAcknowledgement
図7は、省電力状態のsleep timeをシグナリングにより決定する通信方法のシーケンスを示している。ONU10は、スリープ要求を出力するときに、自己の通信状態に応じて設定したsleep timeを指定してOLT1に出力する。例えば、ONU10は、上りのデータが全くない時はsleep timeを長く、非常に小さい帯域若しくは断続的な通信が続く場合にはsleep timeを短く設定する(しかし、省電力状態には遷移する)など、ONU10の通信状態に応じてsleep timeを変更してスリープ要求を出力することができる(u3)。
一方、OLT1も、ONU10の要求と最大遅延条件などネットワーク条件に応じてsleep timeを設定することができる。このOLT1は、ONU10からスリープ要求を受信すると、スリープ状態を許可可能かを判断し、また、要求されたsleep timeを考慮しつつ、許可可能なsleep timeを決定し、このsleep timeとともにスリープ要求に対する肯定応答信号(Acknowledgement)を送信する(d4)。なお、OLT1は肯定応答信号と一緒に当該ONU10に対する送信帯域割当てを通知しなくともよい。
ONU10は、肯定応答信号を受信するまで省電力状態に移行せず、肯定応答信号を受信してから省電力状態に移行する。このように、肯定応答信号を待つことにより、OLT1との間で状態の誤認が生じなくなり、OLT1が誤って警報を発するというような事態を抑制することができる。また、ONU10は許可されたsleep timeの間、省電力状態で動作することができるため、通信状況に応じて消費電力の低減と通信のバランスを適切に調整することができる。
なお、上述の説明では、ONU10とOLT1の両方がsleep timeを送信したが、sleep timeを調整可能にするためには、どちらかの装置のみがsleep timeを送信するようにしてもよい。また、通信システムは肯定応答信号がないシーケンスを使用することも可能である。
実施の形態2.
実施の形態2は、省電力状態(スリープモード)のONU10にも送信帯域を割当て、スリープ中のアップストリームの遅延を低減する実施の形態である。通信システムのハードウェア構成は、図1で説明した上述の通信システムと同様である。
図8は、この実施の形態の通信方法を示したシーケンスである。図8において、OLT1の送信タイミング(d4),(d5),(d7),(d8)を見ると分かるように、この実施の形態では、図2のシーケンスと異なり、OLT1はスリープモードのONU10に対しても送信帯域を割当てる。従って、ONU10はsleep timeの終了を待たずに、スリープモードを解除し、通常モードに遷移して上りデータの送信を再開することができる。
一方、警報監視の点では、スリープモードのONU10は自己の判断でフレームを送信したり、しなかったりするため、工夫が必要である。そのため、OLT1は、スリープモード中のONU10に割当てた送信帯域は観測するが、警報監視のためのLOSiのカウントをマスクし、この送信帯域で有効な信号を受信できなかったとしても、警報を出力しないように制御を行う。図8の左側にLoss of Signalの警報監視状態を"ON"(監視有効)と"MASK"(監視無効)が記載されている。この図より、sleep time中でLoss of Signalの警報監視が"MASK"されていることが分かる。
・OLTの通信制御詳細
次に、図9を用いてOLT1の通信処理の詳細について説明する。
図9はOLT1のPON制御部2の処理を示している。図9において、図3と同一の符号は図3と同一又は相当の処理を示している。図3ではPON制御部2はステップS1やステップS13で省電力状態のONU10には、送信帯域を割当てないように制御した。一方の図9の制御では、PON制御部2はステップS60でスリープモードのONU10も含めて送信帯域を割当てる。なお、スリープモードで動作中のONU10は必要な送信帯域が小さいと思われるため、PON制御部2は通常モードのONU10に比べて少ない送信帯域を割当てる。
ステップS61では上り信号の種類を識別するが、PON制御部2はDying_Gasp(1)信号の代わりに、PLOAM(Physical Layer OAM Operations, Administrations and Maintenance)メッセージによるスリープ要求を検知する。スリープ要求には、ONU10を特定可能な識別子(当該ONU10とのリンクの識別子でも可)、PLOAMメッセージがスリープ要求であることを示すメッセージ種別の識別子が含まれている。なお、スリープ要求は実施の形態1と同様にDying_Gasp(1)信号であってもよい。受信した上り信号にスリープ要求が含まれていた場合、PON制御部2はステップS13で当該ONU10がスリープモードに移行したことを検知するが、このとき上述のように当該ONU10を送信帯域の割当て対象から除外する必要はない。
また、ステップS61で帯域bwにおいて、有効な受信信号がないと判定した場合には、PON制御部2はステップS62で、その帯域に割当てられたONU10がスリープモードであるかどうかをタイマtiを調べることによって検知する。そして、スリープモードであると判定した場合には、PON制御部2は警報処理(ステップS17〜19)をマスクし、ステップS11に移行して次の送信帯域の処理を行う。
OLT1は以上のように、スリープモードのONU10に送信帯域を割当てながら、スリープモード中のONU10には、フレームの送信をしないことを許容し、障害監視の誤報を防ぐ手段を備えている。
・ONUの通信制御詳細
次に、図10を用いてONU10の通信処理詳細について説明する。
図10はONU10のPON制御部11が実行する通信制御を示すフローチャートである。図10において、図4と同一の符号は図4と同一又は相当の処理を示している。図10の通信制御において、ONU10はスリープモードで送信帯域が割り当てられても、スリープモードではその送信帯域を使ってデータを送信しない(ステップS70、S71)。そのため、ONU10はTx141を起動する必要がなく消費電力を節約できる。また、ステップS70でPON制御部11は送信データがあるか否かを判断し、スリープモードであっても送信データがある場合には、ステップS36以降の送信処理を実行する。このため、図10に記載の通信方法を採用するONU10では、sleep timeの満了前にスリープモードを解除し、スリープモード中の送信遅延を低減することができる。
ステップS72では、PON制御部11は、図4のDying_Gasp(1)信号の代わりに、PLOAM Messageを使ったスリープ要求を作成する。一方、ステップS73では、電源オフ時のDying_Gasp信号として通常のDying_Gasp信号が作成される。
・障害発生時の動作
次に、通信障害が発生した場合の通信システムの動作について説明する。
図11は、省電力状態で動作中のONU10に、通信障害が発生した場合を示すシーケンス図である。スリープモード中のタイミング(d1),(d2),(d5),(d6)では、障害監視がマスクされ、LOSiは誤検知されない。一方、ONU10の送信タイミング(u4)後にアップリンクで障害が発生したとき、OLT1の送信タイミング(d6),(d7)で割当てた送信帯域BwでOLT1はLOSiの障害を検知し、警報LOSiを出力する。
・電源オフ時の動作
続いて、ONU10が電源オフするときの動作について説明する。
図12は、ONU10が省電力状態後に電源オフする場合を説明するシーケンス図である。タイミング(u8)まで、ONU10は省電力状態での動作をしているが、例えば、ユーザがONU10の電源を切る操作をした場合などで、ONU10に電源オフの動作開始をする必要が生じる。このとき、ONU10が省電力状態からすぐに電源を切ってしまうと、OLT1はこれを検知できずにLOSiを発してしまうことになる。そこで、ONU10は、sleep time後の帯域割当てまで待って(d9)、OLT1にDying_Gasp信号を送信し(u9)、その後に電源を切る。
一方、OLT1もDying_Gasp信号を受信したことで、ONU10との間に通信障害が発生したり、スリープ状態から復帰していないことを認識できるため、無用の警報出力を防ぐことができる。
・Sleep timeの可変設定とAcknowledgement
図13は、図7と同様に省電力状態のsleep timeをシグナリングにより決定する通信方法のシーケンスを示している。ONU10は、スリープ要求を出力するときに、自己の通信状態に応じて設定したsleep timeを指定してOLT1に出力する。例えば、ONU10は、上りのデータが全くない時はsleep timeを長く、非常に小さい帯域若しくは断続的な通信が続く場合にはsleep timeを短く設定する(しかし、省電力状態には遷移する)など、ONUの通信状態に応じてsleep timeを変更してスリープ要求を出力することができる(u3)。
一方、OLT1も、ONU10の要求と最大遅延条件などネットワーク条件に応じてsleep timeを設定することができる。このOLT1は、ONU10からスリープ要求を受信すると、スリープ状態を許可可能かを判断し、また、要求されたsleep timeを考慮しつつ、許可可能なsleep timeを決定し、このsleep timeとともにスリープ要求に対する肯定応答信号(Acknowledgement)を送信する(d4)。なお、OLT1は肯定応答信号と一緒に当該ONU10に対する送信帯域割当てを通知しなくともよい。
ONU10は、肯定応答信号を受信するまで省電力状態に移行せず、肯定応答信号を受信してから省電力状態に移行する。このように、肯定応答信号を待つことにより、OLT1との間で状態の誤認が生じなくなり、OLT1が誤って警報を発するというような事態を抑制することができる。また、ONU10は許可されたsleep timeの間、省電力状態で動作することができるため、通信状況に応じて消費電力の低減と通信のバランスを適切に調整することができる。
なお、上述の説明では、ONU10とOLT1の両方がsleep timeを送信したが、sleep timeを調整可能にするためには、どちらかの装置のみがsleep timeを送信するようにしてもよい。また、肯定応答信号がないシーケンスも使用することも可能である。
・PLOAM Messageによるスリープモードの明示的な解除
上述の実施の形態1及び2では、省電力状態(スリープモード)から通常状態に復帰する場合、ONU10は割当てられた帯域でスリープ要求を伴わないデータ送信を実行する。OLT1はこのデータ送信を受信することによって、当該ONU10が通常状態に移行したことを検知するが、ONU10及びOLT1は、この省電力状態(スリープモード)をPLOAM Messageを用いた明示的なスリープ解除要求を用いて実行することもできる。図14のフローチャートは、この明示的なSleep解除要求を処理するOLT1の通信制御を示している。 図14において、図9と同一の符号は、図9と同一又は相当の処理を示している。
図14のステップS64は、OLT1が受信したスリープ要求が遷移要求であるのか、解除要求であるのかを判別する処理である。PLOAM Messageのフォーマットは、どのようなものでも構わない。例えば、スリープ要求は、ONU10を特定可能な識別子(当該ONU10とのリンクの識別子でも可)、PLOAMメッセージがスリープ要求であることを示すメッセージ種別の識別子、及び、遷移/解除のいずれかを示すフラグを含む。このフラグは、スリープ要求がスリープモードへの遷移を要求しているのか、解除を要求しているのかを示すフラグである。また、他の例としては、フラグの代わりに、メッセージ種別の識別子を遷移/解除とで区別可能に割当てる方法も考えられる。このように明示的にスリープモードの解除を行うことにより、より確実にスリープモードの遷移と解除をONU10とOLT1の両者が認識できるため、処理がより確実になる。また、スリープモードの解除に対するAcknowledgement信号を返信するハンドシェイク方法を採用すれば、通信システムの確実性がさらに向上する。
以上、この発明の実施の形態について説明した。この発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の主旨に包含されるかぎりどのような変形が行われてもよい。例えば、この通信方法が適用される通信システムは、PONシステムである必要はなく。アクティブ素子を用いた光通信システムにも適用することができる。また、光通信に限らず、端末間を電気信号を用いて通信する通信システムに適用することも可能である。
この発明の通信システム、或いは通信方法は、第1に消費電力を抑えることができる優れた通信システムである。従って、上述の実施の形態から障害監視機能を除いたとしても使用可能であり、その場合でも消費電力を抑えることができるという発明の効果を奏する。また、第2の付加的効果として、消費電力を抑えた通信システムでリンクを維持しながら障害監視を行うこともできるという特長がある。
この発明は、省電力化が必要な通信方法、通信システムに適している。
1 OLT、2 PON制御部、3,13 受信バッファ、4,12 送信バッファ、5,14 光送受信器、6 WDM、7 PHY、10−1〜10−3 ONU、11 PON制御部、20−1,20−2 端末、30 加入者線、40 スプリッタ、51,142,161−1,161−2 Rx、52,141,162−1,162−2 Tx。
本発明は、複数の端末が共通の回線で接続された通信システム、通信方法に関し、例えばOLT(Optical Line Terminal:局側終端装置)と複数のONU(Optical Network Unit:利用者側終端装置)とで構成されるPON(Passive Optical Network)システム等に関する。
PONシステムでは、ONUから送信される上り方向のデータが衝突しないようにOLTとONU間で同期をとりながら通信を行う。OLTは、上り方向のデータが衝突しないよう各ONUに対する送信許可を与えるように計画する。この際、各ONUとの間の距離による遅延を考慮する。そのため、OLTは、各ONUとの間のラウンドトリップタイムを計測するが、光ファイバによる伝送ではジッタやワンダなどの伝送路の変動があるため、周期的に計測を行う必要がある。
一方、データ通信は常時行われているわけではなく、たとえば夜間などは全くデータ通信が行われない。しかし、ラウンドトリップタイムの計測は、上記のようにデータ通信の有無に関わらず周期的に行われている。データ通信が行われない場合にも、ラウンドトリップタイムの計測のためにONUを常時通信可能な状態としておくことは電力を浪費することになる。そのため、ONUから省電力状態への移行を要求することにより、ONUを間欠的に省電力状態に遷移させる技術が検討されている。
また、ONUからの上りデータがない場合に、そのようなONUに無駄な送信帯域を割当てず、スループットを向上するPONシステムが検討されている(特許文献1)。このPONシステムでは、予め設定された一定期間、ユーザデータがない状態をOLTが検知した時に、OLTはONUの登録を抹消し、当該ONU対して光リンクを一時的に停止する旨を通知する。その後、ONUには送信帯域が割り当てられず、リンクを維持するためのフレームの送信も抑制されるため、ONUはフレームの送信回数を減らすことができる。
特許文献1に記載されたPONシステムでは、一定データを送信しないONUに対してリンクを切断するため、ONUの負荷を低減できる。しかし、ONUが上りデータの送信を再開する場合には、未接続のONUを発見するディスカバリ処理を再度行い、リンクを新らたに確立してONUを再登録する。そのため、例えば低ビットレートでの通信が継続している場合には、この通信方法は使用できない。また、OLTはONUとのリンクを切断してしまうためONUや上り通信回線自体に通信異常が発生した場合には、異常を検知することができない。さらに、OLTはONUの登録を抹消してしまうため、通信異常状態のONUは、ディスカバリ処理によっても発見されず、通信異常の発見が困難になる。
この発明の通信方法は、複数のONUを共通の光ファイバを用いてOLTに接続する光通信システムの通信方法であって、OLTは、光送信器を所定のスリープ期間一時的に休止するスリープモードでの動作が可能なONUに送信帯域を割当て、送信帯域通知を当該ONUに送信し、OLTは、スリープモードに移行したONUに対する送信帯域割当周期を、スリープモードに移行する前のONUに対する送信帯域割当周期よりも長くする。
この発明のONUは、光ファイバに接続され、送信部を所定のスリープ期間一時的に停止して消費電力を低減するスリープモードでの動作が可能な光送受信器、及びスリープモード中にOLTにより送信帯域が割当てられた場合に、OLTへの応答信号を光送受信器に送信させる制御装置を備え、スリープモードに移行した場合の送信帯域割当周期は、スリープモードに移行する前の送信帯域割当周期よりも長い。
この発明のOLTは、光ファイバに接続された光送受信器、及び光送信器を所定のスリープ期間一時的に休止するスリープモードでの動作が可能なONUに送信帯域を割当て、送信帯域通知を当該ONUに送信し、スリープモードに移行したONUに対する送信帯域割当周期を、スリープモードに移行する前のONUに対する送信帯域割当周期よりも長くする制御装置、を備える。
本発明にかかる通信方法、光通信システム、局側光回線終端装置、並びに利用者側光回線終端装置は、断続的な通信によるパワーセーブ動作において障害検出を行うことができる。
図1は、本発明の実施の形態における通信システムの構成示す構成図である。
図2は、本発明の実施の形態1における通信方法を示すシーケンス図である。
図3は、本発明の実施の形態1におけるOLTの通信制御を示すフローチャートである。
図4は、本発明の実施の形態1におけるONUの通信制御を示すフローチャートである。
図5は、本発明の実施の形態1における通信方法(障害発生時)を示すシーケンス図である。
図6は、本発明の実施の形態1における通信方法(電源切断時)を示すシーケンス図である。
図7は、本発明の実施の形態1における通信方法(変形例)を示すシーケンス図である。
図8は、本発明の実施の形態2における通信方法を示すシーケンス図である。
図9は、本発明の実施の形態2におけるOLTの通信制御を示すフローチャートである。
図10は、本発明の実施の形態2におけるONUの通信制御を示すフローチャートである。
図11は、本発明の実施の形態2における通信方法(障害発生時)を示すシーケンス図である。
図12は、本発明の実施の形態2における通信方法(電源切断時)を示すシーケンス図である。
図13は、本発明の実施の形態2における通信方法(変形例)を示すシーケンス図である。
図14は、本発明の実施の形態2におけるOLTの通信制御(変形例)を示すフローチャートである。
実施の形態1.
・ハードウェア構成
図1は、本発明にかかるPONシステムの実施の形態1の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態のPONシステムは、OLT1と、ONU10-1〜10-3と、を備える。OLT1とONU10-1〜10-3はスプリッタ40を介して加入者線30で接続されている。スプリッタ40は、OLT1に接続する加入者線30をONU10-1〜10-3の数に分岐する。また、ONU10-1は、端末20-1および20-2に接続されている。なお、ここではONUを3台とした例を示しているが、ONUの台数はこれに限らず何台でもよい。
OLT1は、PONプロトコルに基づいてOLT側の処理を実施するPON制御部2と、ONU10-1〜10-3から受信する上りデータを格納するためのバッファである受信バッファ3と、ONU10-1〜10-3へ送信する下りデータを格納するためのバッファである送信バッファ4と、光信号の送受信処理を行う光送受信器5と、上りデータと下りデータを波長多重するWDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラ(WDM)6と、ネットワークとの間でNNI(Network Node Interface)の物理インタフェース機能を実現する物理層処理部(PHY)7と、を備える。光送受信器5は、受信処理を行う光受信器(Rx:Receiver)51と、送信処理を行う光送信器(Tx:Transmitter)52と、を備える。
ONU10-1は、PONプロトコルに基づいてONU側の処理を実施するPON制御部11と、OLT1への送信データ(上りデータ)を格納するためのバッファである送信バッファ(上りバッファ)12と、OLT1からの受信データ(下りデータ)を格納するためのバッファである受信バッファ(下りバッファ)13と、光送受信器14と、上りデータと下りデータを波長多重するWDM15と、端末20-1,20-2との間で、それぞれUNI(User Network Interface)の物理インタフェース機能を実現する物理層処理部(PHY)16-1,16-2と、を備える。
光送受信器14は、送信処理を行う光送信器(Tx:Transmitter)141と、受信処理を行う光受信器(Rx:Receiver)142と、を有する。PHY16-1は、受信処理を行う受信部(Rx:Receiver)161-1と、送信処理を行う送信部(Tx:Transmitter)162-1と、で構成され、PHY16-2は、受信処理を行う受信部(Rx:Receiver)161-2と、送信処理を行う送信部(Tx:Transmitter)162-2と、を有する。
なお、ONU10-1に接続される端末を2台としているが、端末の数はこれに限らず、何台でもよく、端末の数に応じた物理層処理部(PHY)を備える。また、図1では代表としてONU10-1の構成例を示したが、ONU10-2,10-3もONU10-1と同様の構成である。
OLT1のPON制御部2は、従来のPONシステムと同様に、ONU10-1〜10-3に対して送信時間帯が重ならないようにそれぞれ送信許可を与えるように上りデータの帯域割り当てを行い、ONU10-1〜10-3の送信データの衝突を防いでいる。この帯域割り当ては、どのような方法を用いてもよいが、たとえば、「Su-il Choi and Jae-doo Huh著,“Dynamic Bandwidth Allocation Algorithm for Multimedia Services over Ethernet(登録商標) PONs”,ETRI Journal,Volume 24,Number 6,December 2002 p.465〜p.466」に記載されているDynamic Bandwidth Allocation Algorithm等を用いることができる。
つぎに、本実施の形態のOLT1とONU10-1〜10-3の全体動作を説明する。PON制御部2は、PHY7経由でネットワークから受信した下りデータ(下り通信データ)を送信バッファ4に格納する。OLT1からデータを送信する際には、PON制御部2が、送信バッファ4に格納されている下りデータを読み出して光送受信器5に出力し、光送受信器5のTx52が送信データを光信号としてWDM6へ出力し、WDM6が光送受信器5から出力される光信号に対して波長多重を行い、加入者線30経由でONU10-1〜10-3へ下り信号として出力する。また、PON制御部2が、送信許可の指示を送信する送信帯域割当等の制御メッセージを送信する場合には、PON制御部2が生成した制御メッセージを光送受信器5に出力し、以下、下りデータと同様にONU10-1〜10-3へ送信する。なお、図1のPONシステムでは、波長多重を行うためWDM6,15を用いているが、単一波長で通信する場合には、WDM6、15は必須ではない。
ONU10-1〜10-3では、OLT1から下り信号を受信すると、WDM15が下り信号を分離して光送受信器14へ出力し、光送受信器14のRx142が下り信号を電気信号の下りデータに変換してPON制御部11へ出力する。PON制御部11は、光送受信器14のRx142から出力された下りデータを受信バッファ13に格納する。PON制御部11は、受信バッファ13に格納された下りデータを読み出してそのデータの宛先に応じてPHY16-1,16-2の両方または片方に出力する。下りデータを受け取ったPHY16-1,16-2は、下りデータに対して所定の処理を実施して、自身が接続する端末20-1,20-2へ送信する。
一方、ONU10-1〜10-3から上りデータを送信する場合には、PON制御部11は、端末20-1,20-2からPHY16-1,16-2経由で取得した上りデータを送信バッファ12に格納する。そして、OLT1から与えられた送信帯域に基づいて送信バッファ12に格納した上りデータを読み出して光送受信器14へ出力する。光送受信器14のTx141は、上りデータを光信号(上り信号)に変換し、WDM15,加入者線30経由でOLT1に送信する。
OLT1のPON制御部2は、ONU10-1〜10-3から加入者線30,WDM6,光送受信器5のRx51経由で受信した上りデータを受信バッファ3に格納する。また、PON制御部2は、受信バッファ3に格納した上りデータを読み出して、PHY7経由でネットワークへ出力する。
また、ONU10-1〜10-3は、OLT1から制御メッセージについては、PON制御部11が、WDM15および光送受信器14のRx142経由で受信し、制御メッセージの指示に基づいた動作の実施、制御メッセージに対する応答の生成などを行う。
・パワーセーブ動作
次に、通信システムの省電力動作の一例として、PONシステムのパワーセーブ動作について図2を用いて説明する。
(d1)-(d2) & (u1)-(u2) 通常運用状態での通信
図2では、ディスカバリ等の処理が終了し、通常の通信状態(Normal mode)での通信が開始された後のシーケンスが示されている。図2ではONU10は1つのみ記載されているが、実際にはOLT1は複数のONU10と同様の方法で通信する。PONシステムでは、上り通信(uplink)は時分割多重通信により、送信帯域が複数のONU10に割当てられる。OLT1は、この時分割多重を制御するため、ONU10に送信帯域Bwを指定して通信を許可する許可信号(Grant)を送信する。送信帯域は送信時間ということもできるため、言い換えれば、OLT1はONU10に送信時間を割当て許可信号を送信する。Grantは、各ONU10を識別できる情報、通信開始時間、及び通信終了時間(若しくは通信継続時間)を含む。
ONU10は、このGrantで指定された指定帯域で上りデータ(Data)を送信する。OLT1は送信帯域Bwで上りデータを受信し、コアネットワーク側に存在する上位装置へのデータ中継を行うとともに、ONU10との通信障害についても検知する。ここで、OLT1は指定した送信帯域Bwに上りデータが送信されてこなかった場合、この送信帯域に対応するONU10に異常があったこと判定する。この通信障害監視については、後述する。
(d3)-(d8) & (u3)-(u8) 省電力状態での通信
ONU10が省電力状態での通信が可能となったとき、もしくは省電力状態での通信が必要になったとき、ONU10はOLT1に省電力状態に遷移することを通知する。この通知はどのような要求信号を使用してもよいが、例えば、Dying_Gasp信号を送信する。
この通知を受信すると、OLT1は当該ONU10が省電力状態に入ったことを検知し、当該ONU10への帯域割当てを所定の期間(sleep time)休止する。この通信方法は、sleep timeとして任意の値を設定可能であるが、1時間単位のような長期間ではリンクを正常に維持することが難しいため、例えば、ミリ秒のような短い期間を指定する。
ONU10は、省電力状態に遷移すると、光送受信器14のTx141のレーザーパワーを切り、オフ状態に制御する。なお、このときONU10は、光送受信器14のRx142のパワーカットは行わず、OLT1からの制御信号や下りデータの受信は続ける。一方、OLT1も、省電力状態に移行したONU10にGrantを送信しないが、他の制御信号や下りデータは送信する。図2において、ONUシーケンスの右側にONU10のTx141の電源供給状態を"ON","OFF"で示した。省電力状態、すなわちスリープモードでは、その期間に断続的に電源のオンオフが繰り返される。"OFF"で示された期間は、Tx141のレーザーパワーを停止している停止期間である。断続的な停止期間と停止期間との間に、ONU10はTx141を起動し一時的な起動時間(Tentative wake-up time)を作り出す。"Sleep time"は予め定められた時間長であり、この例では帯域更新周期の開始時が基準となって停止期間の絶対的な時間を特定している。図2では"Sleep time"と"OFF"期間と一致していないが、これは上りデータを送信したONU10が次の帯域更新周期を待たずに供給電力をカットするためである。他の実施例ではこの例に限らず"Sleep time"と"OFF"期間とを一致させるようにしてもよい。
OLT1は、各ONU10毎にsleep timeを計測し、sleep timeが経過したらONU10にGrantを送信する(d6)。このGrantは、省電力状態にあるONU10を一時的に起こすために送信される。ONU10は、この一時起動時間にOLT1からGrantを受信すると、省電力状態で動作中であっても一時的に光送受信器14のTx141にレーザーパワーを供給し、オン状態にする。なお、sleep timeの終了時間は分かっているため、ONU10はOLT1からの帯域割当の通知を待たずに電源をオン状態にすることも可能である。そして、ONU10は省電力状態を継続する場合には、上述(u3)で説明したようにスリープ要求を再送し、再び光送受信器14のTx141のレーザーパワーを切って省電力状態に移行する(u6)。
OLT1は、省電力状態のONU10に割当てた帯域を観測し、正常に要求信号が送られてきたかを検知する。このとき、省電力状態のONU10から正常に信号が送られてこない場合には、アップリンクの通信路、若しくはONU10自体に障害が発生したと判断して、警報を発令する。この障害発生時の動作については、図5を用いて後述する。
(d9)-(d10) & (u9)-(u10) 省電力解除時の通信
ONU10で、多量のデータ送信が必要な場合など、省電力状態の解除が必要な場合には、sleep time後の一時起動時間でONU10は、省電力状態の解除を要求する。この省電力状態の解除は、ONU10が特定の信号を送信することによって行ってもよいが、例えば、指定された帯域で有効な上りデータを送信することでも実現可能である。有効な上りデータを送信することで省電力状態の解除することにより、送信ビットが節約され送信データの帯域を有効に使用することができる。
OLT1は、上述(d6)後の動作と同様、タイミング(d9)の後に省電力状態のONU10に割当てた帯域を観測し障害検知を行う。同時に、ONU10が省電力要求を送信してきた場合には、OLT1は当該ONU10に対する省電力状態での運用を継続するが、上述のように省電力状態の解除要求を受信した場合には、省電力状態での運用を解除し、当該ONU10に対して通常運用での動作を開始する。
上述の動作によれば、OLT1はONU10に対するリンクは維持したままで、ONU10による省電力動作を許容することができ、同時に、通常はデータを送信してこないONU10との通信に障害が発生した場合でも早期に障害の発生を検知できる。さらにONU10は、光送受信器14のTx141に対するレーザーパワー供給を停止して消費電力を抑えることが可能であるとともに、障害監視のために必要な通信においても、間引かれたGrantにより帯域更新周期の度に何らかの信号送信を強要される場合と比べて、消費電力を抑えることが可能となる。
送信帯域割当周期とは、OLT1が送信帯域の割当てを通知し、当該ONU10に送信帯域を割当てる周期である。上述の間引かれたGrantは、省電力状態のONU10には通常状態で動作していたときに比べ、長い送信帯域の割当て間隔を持ったGrantである。
省電力状態のONU10に割当てる送信帯域割当周期は、どのように決めてもよいが、一例としては、送信帯域割当周期がMPCP(Multi-Point Control Protocol)タイムアウト警報の検出時間Tと一致した値を持つようにすることができる。送信帯域割当周期をMPCPタイムアウトの時間よりも長く設定すると、スリープモード中のONU10がこのMPCPタイムアウトに引っかかってしまうため、OLT1は送信帯域割当周期をMPCPタイムアウトの時間以下に設定する。また、ONU10に複数回(n回)の送信期間を与え、一回も受信できなかった場合に、MPCPタイムアウトと判定すると無用な警報等が抑止される。そのため、例えば、MPCPタイムアウトTミリ秒と設定されている場合に、OLT1は送信帯域割当周期をT/nミリ秒に設定する。
また、OLT1とONU10の間のリンクは維持されるため、ユーザ端末同士が通信を継続中であっても、消費電力を低減できる。
・OLTの通信制御詳細
次に、図3を用いてOLT1の通信処理の詳細について説明する。
図3はOLT1のPON制御部2(PON controller)の処理を示している。まず、PON制御部2は、ディスカバリによって発見されリンクが張られているONU10のリスト(ActiveONUList)に基づき、アップリンクの送信帯域を割当てるべきONU10を特定し、各ONU10に送信帯域を割当てる(ステップS1)。このとき例えば、1周期の送信帯域をN分割したとき、対応するONU10の識別子IDは、idbw = ONU[bw], bw = 1,2, ... , N で与えられる。
ActiveONUListでは省電力中のONU10は除外されているため、PON制御部2はこのリストを参照することにより省電力動作中のONU10には送信帯域を割当てないように動的帯域割当てを行うことができる。
次に、PON制御部2は、Grant及び下りデータをフレームにまとめ、送受信器5を制御して、このフレームをONU10に送信する(ステップS2)。Grant及び下りデータは、同一のフレームで送っても良いし、別々のフレームで送信することも可能である。
続いて、PON制御部2は、Rx51が受信した各送信帯域の受信処理を以下のステップで行う(ステップS3)。
まず、PON制御部2は、次の送信帯域に割当てたONU10を特定する(ステップS4)。このとき、送受信器5のRx51はアップリンクの受信を同時並行で行っており、PON制御部2は、Rx51が受信したデータを処理のため内蔵メモリ等に読み込む(ステップS5)。PON制御部2は、受信した上り信号の種類を調べ(ステップS6)、有効な信号がない場合にはステップS17に、省電力状態の要求信号(Dying_gasp)を検出した場合にはステップS12、その他のデータ信号等である場合には、ステップS7の処理を行う。
ステップS7においてPON制御部2は、受信データの送信元ONU10を調べ、このONU10がActiveONUListに含まれていない場合には、ActiveONUListに追加する。ここでOLT1は省電力状態のONU10が通常のデータを送信してきたことにより、当該ONU10が省電力状態を解除したことを検知する。
受信データには、ONU10からの帯域要求が含まれており、PON制御部2は受信フレームから帯域要求を読み取り、ステップS1における次回の帯域割当てのために当該ONU10の識別子(ID)と対応させてこの帯域要求をメモリに記録する(ステップS8)。帯域要求は、ONU10の送信バッファ12におけるデータの蓄積量(占有度)などによって表現されている。ONU10が送信バッファ12の占有度に関するレポートを送信し、このレポートに基づきOLT1が動的帯域割当てを行う方法をSR-DBA(status reporting DBA)という。なお、帯域要求は明示的に行う必要はなく、OLT1がONU10に割当てた帯域に対して、実際にONU10が送信したデータ量を観測することにより、割当てる帯域を調整することも可能である。これをTM-DBA(traffic-monitoring DBA)という。ステップS8においてこのTM-DBAにおけるトラフィック観測を行ってもよい。
次に、PON制御部2は受信バッファ3に保持された受信データを、PHY7を介してネットワークへ送信する(ステップS9)。
PON制御部2は、各ONU10とのアップリンクの通信状態を常に監視している。もし、ONU10がフレームを送信するタイミングで期待されるフレームを受信できなかった場合、LOSi(Loss of signal for ONUi)という警報信号を出力する。この警報信号はネットワーク管理に必要な警報であり、LOSiが発生した場合にはネットワークオペレータに通知され、ネットワークオペレータはこのLOSiに基づき障害対策を行う。ステップS10はこのLOSiのための障害カウントをクリアする処理である。LOSiはi番のONU10から例えば信号を4回連続で受信できなかった場合に真の障害と判断され、出力されるものであり、障害カウントはこの不受信の連続数をカウントしている変数である。PON制御部2は、LOSiのカウントのカウントアップを後述するステップS17で行う。
ステップS10の処理が終了すると、PON制御部2は次の帯域を処理するためステップS3のループ処理の最初に戻る。このループ処理は、bw番目の帯域に対する処理を1〜N番目まで繰り返す処理である。
次に、ステップS6で、OLT1がスリープ要求(Dying_Gasp)信号を受信した場合の処理について説明する。
この実施の形態では、Dying_Gaspは2種類ある。1つはONU10がリンクを切って電源をオフにする場合に出力するDying_Gasp(0)と、もう1つはONU10がスリープ要求として出力するDying_Gasp(1)である。Dying_Gasp信号は、Dying_Gasp信号であることを示す信号識別子、ONU10のID、スリープ要求であることを示すフラグ(オプション)を含むフォーマットを有している。PON制御部2は、ステップS12で受信したDying_Gasp信号がスリープ要求であるかを調べ、スリープ要求すなわち、Dying_Gasp(1)信号である場合にはステップS13の処理に進む。
ステップS12にて、PON制御部2は当該ONU10が省電力状態に移行したことを検知し、これを記録する、具体的には、送信帯域の割当て対象リストであるActiveONUListから当該ONU10のIDを除外する処理を行う。また、PON制御部2は省電力期間の計測をするために、i番目のONU10に対してsleep timeのタイマをセットする(ステップS14)。このsleep timeは、OLT1が予め記憶している時間、あるいは通信状況に基づいて計算した時間でもよいし、ONU10から具体的な時間を取得してこの値をセットしてもよい。また、sleep timeの測定は、省電力期間を判別できるものであればどのような方法を用いてもよく、所定の経過時間に従ってカウントアップ、カウントダウンするような相対的な時間経過の測定や、クロックの絶対時間を指定した絶対的な時間観測によって行うことも可能である。次にPON制御部2は、上述の上りデータ受信処理(ステップS9)に移行し、同様の処理を繰り返す。なお、Dying_Gasp(1)とともに上りデータも同一帯域(或いはフレーム)で送信できる仕様とすると、ONU10が送信バッファ12に微少なデータ断片のみを残してデータ送信が完了する状況でも、即座に省電力状態に入ることができるという利点がある。一方、省電力状態が可能な状況では、ONU10は上りデータを持っていない場合も多いので、スリープ要求を受け取った場合には、このフレームの上りデータの処理をしない仕様としても構わない。
一方、ステップS12にて、Dying_Gasp(0)を受信したと判定した場合には、PON制御部2は、ONU10の電源が切られた状態となったことを検知し(ステップS15)、当該ONU10をActiveONUListから外すとともに、当該ONU10に割当てていたリンクの情報とリソースを削除する処理を行う。このとき、OLT1は、ONU10にはリンクが切断されたこと、リンク情報など全ての情報を廃棄するように指示するDeactivate信号(Deactivate_ONU-ID)を送信する。ONU10はこの信号を受け、光送受信器14の電源をオフにする。この処理が終了すると、PON制御部2は再び次の帯域を処理するためステップS3の処理に戻る。
ステップS17は、ステップS6にてONU10に割当てられた送信帯域で、有効な信号が受信されなかった場合の処理であり、PON制御部2はこの処理により通信障害を検知する。ここで、単に光送受信器14のTx141の電源をオフにして省電力状態にしているだけの省電力モードを備えるシステムでは、省電力状態のONU10は当然上りデータ等を送信してこないためOLT1は障害検知をすることができない。この実施の形態では、省電力動作中のONU10に対しても、OLT1が一時的に送信帯域を割当て、ONU10もsleep time後に一時的にTx141の電源をオンにしてフレームを送信する。そのため、ステップS6で、割当られた送信帯域にONU10がフレームを送信してくるか否かで上りリンクの通信障害を検知できる。ここで、当該帯域でフレームが受信できなかった場合、PON制御部2は当該i番のONU10に対する不受信回数をカウントする変数LOS[i]をカウントアップする。
PON制御部2は、変数LOS[i]が予め定められた規定数LOS_Max(例えば4)に達した場合には、当該ONU10の上りリンクに通信異常が発生したと判断し、上述の警報LOSiを発する(ステップS19)。また、PON制御部2はステップS16の処理に移行し、リンクを切断する。一方、変数LOS[i]がLOS_Maxに達していない場合、PON制御部2は警報は出さずに、次の帯域に対する処理(ステップS3)に戻る。
以上の処理を1つの帯域更新周期内の全ての送信帯域に行った後、PON制御部2は省電力動作中の各ONU10について、sleep timeが満了しているONU10がないかを調べる。もし、sleep timeが満了しているONU10が見つかった場合には、一時的に当該ONU10を起動するため、そのIDをActiveONUListに追加する(ステップS20)。この処理により、ステップS17〜19で説明した省電力動作中のONU10の監視動作が可能になる。また、ONU10が省電力状態を継続する場合には、ステップS1で割当てられた送信帯域を使ってスリープ要求を送り返すため、ONU10はリンクを維持しながら再び消費電力を抑えた動作を継続することができる。
次にPON制御部2は、次の帯域更新周期の動作を継続するかを判断し、続ける場合には、ステップS1の処理に戻り、上述の動作を再開する。
・ONUの通信制御詳細
次に、図4を用いてONU10の通信処理の詳細について説明する。
図4はONU10のPON制御部11が実行する通信制御を示すフローチャートである。通信制御は大きくダウンリンク受信制御(ステップS30−S33)とアップリンク送信制御(S35−S51)に分かれる。
ダウンリンク受信制御
まず、ダウンリンクの受信制御について説明する。光送受信器14のRx142は、OLT1から送信されるダウンリンクフレームを受信し、受信バッファ13にこの受信データを記録する。PON制御部11は、光送受信器14が受信したフレームを観測し(ステップS30)、フレームに含まれるヘッダ情報からアップリンクの送信帯域情報を抽出する(ステップS31)。送信帯域情報は、割当て対象のONU10が特定できる情報と、送信開始時間、送信終了時間が特定できる情報を持っている。
PON制御部11は、また、受信フレームからペイロード部分を抽出し、上位層処理手段へ出力する(ステップS32)。この処理は、ONU10に接続されている端末20-1,20-2に合わせた上位プロトコルで受信したデータを送信するための処理である。次に、PON制御部11は、受信制御を終了し電源を切るかを判断し、電源を切らず受信を継続する場合はステップS30に戻り、上述の受信制御を継続する。
アップリンク送信制御
次に、アップリンクの送信制御について説明する。
PON制御部11は、ステップS35で、OLT1から送信帯域の割当て(Grant)を待つ。送信帯域が割当てられたら、PON制御部11は光送受信器14のTx141に電力を供給し、レーザーパワーオンの状態にする(ステップS36)。この処理は、特に省電力状態から復帰するときに必要であるため、通常の運用状態で動作中で既にTx141がオン状態であるときは改めて、電力供給を開始する処理を行う必要はない。
ここで、PON制御部11は、実際の送信帯域の開始時間前であって、光送受信器14のTx141が起動し光出力が安定するまでの時間以上前に、Tx141に対して電源供給を指示する。この実施の形態の帯域更新周期は非常に短いサイクルであり、省電力状態から一時的起動状態(Tentative wake-up)への移行は非常に短い時間で、かつ、頻繁に行われる。従って、Tx141の起動時の光出力の挙動を考慮せずに、送信時間の直前で起動した場合には、OLT1において受信不能、エラー率の悪化などの影響がでるためである。従って、図4に示されるように送信帯域が割当てを検知したら、PON制御部11はTx141の電源供給を開始する。この後、他のフレーム作成作業などを行い、PON制御部11が実際にフレームの送信をするのはこの後のステップS46である。
次に、PON制御部11は、送信バッファ12のデータ蓄積状態や端末20-1、20-2等の下流側の接続機器の動作状態を検知し(ステップS37)、省電力状態(Sleep mode)に遷移するかどうかを判断する(ステップS38)。例えば、OLT1は送信バッファのデータ蓄積状態が、データがない状態であるか、所定の期間、所定のしきい値以下の少ないデータ量の蓄積しかなく余裕があると判断したときに、省電力状態に遷移すると判断する。省電力状態であるときにはアップリンクは維持されるため、ONU10は、送信バッファの容量や通信回線の伝送速度に対して、比較的小さい帯域のデータは送信できる点に注目すべきである。また、ONU10が省電力状態に遷移する判断基準の他の例としては、(1)各端末の電源状態とオン状態の台数や通信応答がある端子の数、(2)接続する端末(ここでは端末20-1,20-2)の全てが省電力状態に入ったことを、例えばIEEE802.3azに規定されるLPI受信などの方法で検出したか否か等がある。
省電力状態に遷移しないと判断した場合、PON制御部11は送信バッファ12に蓄積されている送信データに基づき、送信ペイロードを作成する(ステップS39)。このペイロードは上位層で処理及び作成されたデータである。続いて、次の周期の送信帯域を確保するため、送信バッファ12のデータ占有率等を基にステータスレポートが作成される(ステップS40)。これはPON制御部11が、例えば、OMCI(Optical Network Unit Management and Control Interface)等のプロトコルによって指示されたバッファサイズに対して、実際にバッファに蓄積されているデータの割合で表わされ、この割合を所定の符号化方法で符号化し、レポートを作成する。ステータスは、アップリンクの通信トラヒックが分かるようなものであれば、どのような基準で作成されてもよい。また、TM-DBAを使用する場合には、このレポートは必須ではない。
一方、省電力状態に遷移する場合、PON制御部11は後述のステップS50で省電力状態に移行するため、省電力状態に遷移するという情報(フラグ)を内蔵メモリに記録する。また、PON制御部11はスリープ要求であるDying_Gasp(1)信号を生成する(ステップS51)。
ステップS41にて、PON制御部11はONU10の電源を切るかどうかを判断する。電源を切る場合、PON制御部11は送信フレームの中にDying_Gasp(0)信号を挿入しOLT1に送信するため、この信号を作成する(ステップS42)。電源を落とすと、Rx142も含めて光送受信器14の電源供給が止められ、ONU10は送受信ともに不可能な状態になる。従って、PON制御部11が実際に電源を落とすのは必要な送信処理を終了したステップS49以降になる。
PON制御部11は、上述のステップで作成した各種信号をまとめて、これらを収容するフレームを作成する(ステップS44)。このとき、PON制御部11はフレームヘッダーを作成して(ステップS43)、そのフレーム内に挿入する。
フレームの作成が終了すると、PON制御部11はステップS31で抽出した送信帯域情報で指定された送信開始時間まで待って(ステップS45)、フレームの送信を開始する(ステップS46)。フレームの送信が終了すると、PON制御部11は省電力状態(Sleep mode)に遷移するか否かを判断し(ステップS47)、省電力状態に遷移する場合にはTx141の電源供給を止める(ステップS48)。具体的には、PON制御部11は光送受信器14のTx141に対してパワーダウンまたはシャットダウンなどの電気信号を送信することによりTx141を省電力状態とすることができる。この処理により、PON制御部11はスリープモードにおける断続的な送信停止期間(送信部の停止期間)を作りだす。
最後に、PON制御部11は電源をオフするか、次の送信のために待機するかを判断し(ステップS49)、電源をオフする場合には光送受信器14等の電源を切って処理を終了する。ここで、単発的な通信エラーによりDying_Gasp(0)信号が正しくOLT1に伝達されない場合、無用の警報がOLT1で頻発してしまうため、電源オフ前に複数回Dying_Gasp(0)信号を送信してから電源をオフするようにすることができる。この場合、PON制御部11はステップS49でDying_Gasp(0)信号の送信回数をカウントし、所定回数に達するまではステップS35の処理に戻るようにする。
一方、電源オフしないと判断した場合には、PON制御部11はステップS35に戻り、上述と同様の処理を繰り返す。
・障害発生時の動作
次に、通信障害が発生した場合の通信システムの動作について説明する。
図5は、省電力状態で動作中のONU10に、通信障害が発生した場合を示すシーケンス図である。ONU10は送信タイミング(u3)後に省電力状態に移行し、この後、端末20-1から送信データを大量に受信しタイミング(u4)後に省電力状態から復帰しようとする。ここで、加入者線30で通信障害が発生してしまうと、データの送信が行えなくなる。OLT1は、ONU10が光送受信器14のTx141の電源をオフしデータを送信してこないことを知っているため、OLT1からみればアップリンク通信が一時的に無くても異常はなく、OLT1は異常が発生していることは検知できない。しかし、この実施の形態の通信システムでは、sleep time中は当該ONU10の上り通信は抑止しながら、一方でsleep time後(d6)に一時的に送信帯域を省電力状態のONU10に割当てる。そのため、OLT1は、(d6)で割当てた帯域を観測することにより、省電力状態のONU10とのリンクに通信異常(Loss of Signal for ONUi)がないかを検知することができる。
図5の例では、タイミング(d6)で割当てた帯域Bwで当該ONU10からの応答信号がない場合、続くタイミング(d7)でも同ONU10に帯域Bwを割当て、合計2回の帯域観測を行い、2回目の帯域の観測結果でLOSi警報を出力している。なお、この帯域割当ては連続する帯域更新周期で割当てる必要はなく、間欠的に送ってもよい。また、観測する回数も任意の数を設定することができる。
警報LOSiを出力したOLT1は、当該ONU10とのリンクを切断し、この旨をDeactivate_ONU-IDを3回出力して、ONU10に知らせる。Deactivate_ONU-IDを受け取ったONU10は、リンクの切断を検知し、リンクに関して保持していた情報を破棄して、データ送信を中止しなければならない。この後、ONU10はOLT1からの通信待ちの状態(standby mode)に移行する。
リンクが切断された後、ONU10がOLT1との間で再接続するためには、ONU10はOLT1から送信されるディスカバリ要求に応答し、自己をOLT1に登録する。OLT1は、ディスカバリによってONU10を登録し、リンクを確立するまで送信帯域を当該ONU10に割当てない。
・電源オフ時の動作
続いて、ONU10が電源オフするときの動作について説明する。
図6は、ONU10が省電力状態後に電源オフする場合を説明するシーケンス図である。タイミング(u8)まで、ONU10は省電力状態での動作をしているが、例えば、ユーザがONU10の電源を切る操作をした場合などで、ONU10に電源オフの動作開始をする必要が生じる。このとき、ONU10が省電力状態からすぐに電源を切ってしまうと、OLT1はこれを検知できずにLOSiを発してしまうことになる。そこで、ONU10は、sleep time後の帯域割当てまで待って(d9)、OLT1にDying_Gasp(0)信号を送信し(u9)、その後に電源を切る。
一方、OLT1もDying_Gasp(0)信号を受信したことで、ONU10との間に通信障害が発生したり、スリープ状態から復帰していないことを認識できるため、無用の警報出力を防ぐことができる。
・Sleep timeの可変設定とAcknowledgement
図7は、省電力状態のsleep timeをシグナリングにより決定する通信方法のシーケンスを示している。ONU10は、スリープ要求を出力するときに、自己の通信状態に応じて設定したsleep timeを指定してOLT1に出力する。例えば、ONU10は、上りのデータが全くない時はsleep timeを長く、非常に小さい帯域若しくは断続的な通信が続く場合にはsleep timeを短く設定する(しかし、省電力状態には遷移する)など、ONU10の通信状態に応じてsleep timeを変更してスリープ要求を出力することができる(u3)。
一方、OLT1も、ONU10の要求と最大遅延条件などネットワーク条件に応じてsleep timeを設定することができる。このOLT1は、ONU10からスリープ要求を受信すると、スリープ状態を許可可能かを判断し、また、要求されたsleep timeを考慮しつつ、許可可能なsleep timeを決定し、このsleep timeとともにスリープ要求に対する肯定応答信号(Acknowledgement)を送信する(d4)。なお、OLT1は肯定応答信号と一緒に当該ONU10に対する送信帯域割当てを通知しなくともよい。
ONU10は、肯定応答信号を受信するまで省電力状態に移行せず、肯定応答信号を受信してから省電力状態に移行する。このように、肯定応答信号を待つことにより、OLT1との間で状態の誤認が生じなくなり、OLT1が誤って警報を発するというような事態を抑制することができる。また、ONU10は許可されたsleep timeの間、省電力状態で動作することができるため、通信状況に応じて消費電力の低減と通信のバランスを適切に調整することができる。
なお、上述の説明では、ONU10とOLT1の両方がsleep timeを送信したが、sleep timeを調整可能にするためには、どちらかの装置のみがsleep timeを送信するようにしてもよい。また、通信システムは肯定応答信号がないシーケンスを使用することも可能である。
実施の形態2.
実施の形態2は、省電力状態(スリープモード)のONU10にも送信帯域を割当て、スリープ中のアップストリームの遅延を低減する実施の形態である。通信システムのハードウェア構成は、図1で説明した上述の通信システムと同様である。
図8は、この実施の形態の通信方法を示したシーケンスである。図8において、OLT1の送信タイミング(d4),(d5),(d7),(d8)を見ると分かるように、この実施の形態では、図2のシーケンスと異なり、OLT1はスリープモードのONU10に対しても送信帯域を割当てる。従って、ONU10はsleep timeの終了を待たずに、スリープモードを解除し、通常モードに遷移して上りデータの送信を再開することができる。
一方、警報監視の点では、スリープモードのONU10は自己の判断でフレームを送信したり、しなかったりするため、工夫が必要である。そのため、OLT1は、スリープモード中のONU10に割当てた送信帯域は観測するが、警報監視のためのLOSiのカウントをマスクし、この送信帯域で有効な信号を受信できなかったとしても、警報を出力しないように制御を行う。図8の左側にLoss of Signalの警報監視状態を"ON"(監視有効)と"MASK"(監視無効)が記載されている。この図より、sleep time中でLoss of Signalの警報監視が"MASK"されていることが分かる。
・OLTの通信制御詳細
次に、図9を用いてOLT1の通信処理の詳細について説明する。
図9はOLT1のPON制御部2の処理を示している。図9において、図3と同一の符号は図3と同一又は相当の処理を示している。図3ではPON制御部2はステップS1やステップS13で省電力状態のONU10には、送信帯域を割当てないように制御した。一方の図9の制御では、PON制御部2はステップS60でスリープモードのONU10も含めて送信帯域を割当てる。なお、スリープモードで動作中のONU10は必要な送信帯域が小さいと思われるため、PON制御部2は通常モードのONU10に比べて少ない送信帯域を割当てる。
ステップS61では上り信号の種類を識別するが、PON制御部2はDying_Gasp(1)信号の代わりに、PLOAM(Physical Layer OAM Operations, Administrations and Maintenance)メッセージによるスリープ要求を検知する。スリープ要求には、ONU10を特定可能な識別子(当該ONU10とのリンクの識別子でも可)、PLOAMメッセージがスリープ要求であることを示すメッセージ種別の識別子が含まれている。なお、スリープ要求は実施の形態1と同様にDying_Gasp(1)信号であってもよい。受信した上り信号にスリープ要求が含まれていた場合、PON制御部2はステップS13で当該ONU10がスリープモードに移行したことを検知するが、このとき上述のように当該ONU10を送信帯域の割当て対象から除外する必要はない。
また、ステップS61で帯域bwにおいて、有効な受信信号がないと判定した場合には、PON制御部2はステップS62で、その帯域に割当てられたONU10がスリープモードであるかどうかをタイマtiを調べることによって検知する。そして、スリープモードであると判定した場合には、PON制御部2は警報処理(ステップS17〜19)をマスクし、ステップS11に移行して次の送信帯域の処理を行う。
OLT1は以上のように、スリープモードのONU10に送信帯域を割当てながら、スリープモード中のONU10には、フレームの送信をしないことを許容し、障害監視の誤報を防ぐ手段を備えている。
・ONUの通信制御詳細
次に、図10を用いてONU10の通信処理詳細について説明する。
図10はONU10のPON制御部11が実行する通信制御を示すフローチャートである。図10において、図4と同一の符号は図4と同一又は相当の処理を示している。図10の通信制御において、ONU10はスリープモードで送信帯域が割り当てられても、スリープモードではその送信帯域を使ってデータを送信しない(ステップS70、S71)。そのため、ONU10はTx141を起動する必要がなく消費電力を節約できる。また、ステップS70でPON制御部11は送信データがあるか否かを判断し、スリープモードであっても送信データがある場合には、ステップS36以降の送信処理を実行する。このため、図10に記載の通信方法を採用するONU10では、sleep timeの満了前にスリープモードを解除し、スリープモード中の送信遅延を低減することができる。
ステップS72では、PON制御部11は、図4のDying_Gasp(1)信号の代わりに、PLOAM Messageを使ったスリープ要求を作成する。一方、ステップS73では、電源オフ時のDying_Gasp信号として通常のDying_Gasp信号が作成される。
・障害発生時の動作
次に、通信障害が発生した場合の通信システムの動作について説明する。
図11は、省電力状態で動作中のONU10に、通信障害が発生した場合を示すシーケンス図である。スリープモード中のタイミング(d1),(d2),(d5),(d6)では、障害監視がマスクされ、LOSiは誤検知されない。一方、ONU10の送信タイミング(u4)後にアップリンクで障害が発生したとき、OLT1の送信タイミング(d6),(d7)で割当てた送信帯域BwでOLT1はLOSiの障害を検知し、警報LOSiを出力する。
・電源オフ時の動作
続いて、ONU10が電源オフするときの動作について説明する。
図12は、ONU10が省電力状態後に電源オフする場合を説明するシーケンス図である。タイミング(u8)まで、ONU10は省電力状態での動作をしているが、例えば、ユーザがONU10の電源を切る操作をした場合などで、ONU10に電源オフの動作開始をする必要が生じる。このとき、ONU10が省電力状態からすぐに電源を切ってしまうと、OLT1はこれを検知できずにLOSiを発してしまうことになる。そこで、ONU10は、sleep time後の帯域割当てまで待って(d9)、OLT1にDying_Gasp信号を送信し(u9)、その後に電源を切る。
一方、OLT1もDying_Gasp信号を受信したことで、ONU10との間に通信障害が発生したり、スリープ状態から復帰していないことを認識できるため、無用の警報出力を防ぐことができる。
・Sleep timeの可変設定とAcknowledgement
図13は、図7と同様に省電力状態のsleep timeをシグナリングにより決定する通信方法のシーケンスを示している。ONU10は、スリープ要求を出力するときに、自己の通信状態に応じて設定したsleep timeを指定してOLT1に出力する。例えば、ONU10は、上りのデータが全くない時はsleep timeを長く、非常に小さい帯域若しくは断続的な通信が続く場合にはsleep timeを短く設定する(しかし、省電力状態には遷移する)など、ONUの通信状態に応じてsleep timeを変更してスリープ要求を出力することができる(u3)。
一方、OLT1も、ONU10の要求と最大遅延条件などネットワーク条件に応じてsleep timeを設定することができる。このOLT1は、ONU10からスリープ要求を受信すると、スリープ状態を許可可能かを判断し、また、要求されたsleep timeを考慮しつつ、許可可能なsleep timeを決定し、このsleep timeとともにスリープ要求に対する肯定応答信号(Acknowledgement)を送信する(d4)。なお、OLT1は肯定応答信号と一緒に当該ONU10に対する送信帯域割当てを通知しなくともよい。
ONU10は、肯定応答信号を受信するまで省電力状態に移行せず、肯定応答信号を受信してから省電力状態に移行する。このように、肯定応答信号を待つことにより、OLT1との間で状態の誤認が生じなくなり、OLT1が誤って警報を発するというような事態を抑制することができる。また、ONU10は許可されたsleep timeの間、省電力状態で動作することができるため、通信状況に応じて消費電力の低減と通信のバランスを適切に調整することができる。
なお、上述の説明では、ONU10とOLT1の両方がsleep timeを送信したが、sleep timeを調整可能にするためには、どちらかの装置のみがsleep timeを送信するようにしてもよい。また、肯定応答信号がないシーケンスも使用することも可能である。
・PLOAM Messageによるスリープモードの明示的な解除
上述の実施の形態1及び2では、省電力状態(スリープモード)から通常状態に復帰する場合、ONU10は割当てられた帯域でスリープ要求を伴わないデータ送信を実行する。OLT1はこのデータ送信を受信することによって、当該ONU10が通常状態に移行したことを検知するが、ONU10及びOLT1は、この省電力状態(スリープモード)をPLOAM Messageを用いた明示的なスリープ解除要求を用いて実行することもできる。図14のフローチャートは、この明示的なSleep解除要求を処理するOLT1の通信制御を示している。 図14において、図9と同一の符号は、図9と同一又は相当の処理を示している。
図14のステップS64は、OLT1が受信したスリープ要求が遷移要求であるのか、解除要求であるのかを判別する処理である。PLOAM Messageのフォーマットは、どのようなものでも構わない。例えば、スリープ要求は、ONU10を特定可能な識別子(当該ONU10とのリンクの識別子でも可)、PLOAMメッセージがスリープ要求であることを示すメッセージ種別の識別子、及び、遷移/解除のいずれかを示すフラグを含む。このフラグは、スリープ要求がスリープモードへの遷移を要求しているのか、解除を要求しているのかを示すフラグである。また、他の例としては、フラグの代わりに、メッセージ種別の識別子を遷移/解除とで区別可能に割当てる方法も考えられる。このように明示的にスリープモードの解除を行うことにより、より確実にスリープモードの遷移と解除をONU10とOLT1の両者が認識できるため、処理がより確実になる。また、スリープモードの解除に対するAcknowledgement信号を返信するハンドシェイク方法を採用すれば、通信システムの確実性がさらに向上する。
以上、この発明の実施の形態について説明した。この発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の主旨に包含されるかぎりどのような変形が行われてもよい。例えば、この通信方法が適用される通信システムは、PONシステムである必要はなく。アクティブ素子を用いた光通信システムにも適用することができる。また、光通信に限らず、端末間を電気信号を用いて通信する通信システムに適用することも可能である。
この発明の通信システム、或いは通信方法は、第1に消費電力を抑えることができる優れた通信システムである。従って、上述の実施の形態から障害監視機能を除いたとしても使用可能であり、その場合でも消費電力を抑えることができるという発明の効果を奏する。また、第2の付加的効果として、消費電力を抑えた通信システムでリンクを維持しながら障害監視を行うこともできるという特長がある。
この発明は、省電力化が必要な通信方法、通信システムに適している。
1 OLT、2 PON制御部、3,13 受信バッファ、4,12 送信バッファ、5,14 光送受信器、6 WDM、7 PHY、10−1〜10−3 ONU、11 PON制御部、20−1,20−2 端末、30 加入者線、40 スプリッタ、51,142,161−1,161−2 Rx、52,141,162−1,162−2 Tx。