JP2012251693A - 熱輸送装置及び原子炉格納容器の冷却装置 - Google Patents

熱輸送装置及び原子炉格納容器の冷却装置 Download PDF

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Abstract

【課題】外部動力なしに自動的に動作するとともに、冷却能力が高く、かつ、設計自由度の高い熱輸送装置を提供する。
【解決手段】上昇管1と、上昇管1の上端に設けられた脱泡器5と、一端が脱泡器5に接続され他端が凝縮器6に接続された上部連通管3と、前記凝縮器6に接続された下降管2と、前記下降管2の下部と前記上昇管1の下部を連通する下部連通管4と、前記各管を循環する作動流体8とを有し、少なくとも前記上昇管1と脱泡器5が受熱部11を構成し、少なくとも前記凝縮器6と下降管2が冷却部12を構成するループ型ヒートパイプの熱輸送装置であって、前記上昇管1は下方から上方に向けて径が拡大する拡径部7を有するとともに、前記脱泡器5、上部連通管2及び凝縮器6は気相と液相の自由界面を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、各種発熱機器を冷却するための熱輸送装置に関し、特に、外部動力を使用しない受動的な熱輸送装置及び原子炉格納容器の冷却装置に関する。
例えば、原子力発電所や産業用及び民生用機器の多くは、非常時又は通常時に発熱する機器を有しているが、苛酷事故時の冷却のために又は装置の省エネ化や小型化・軽量化等のために、外部動力を使用しない冷却装置の要望が高まっている。
例えば、原子力発電所では、原子炉設備の信頼性や安全性を一層高めるため、原子炉格納容器内部の発生熱、特に、電源喪失事故、冷却材損失事故のような苛酷事故時における源炉格納容器内の発生熱を、外部動力を用いないで長期的にかつ安定的に冷却する熱輸送装置が求められている。そのような熱輸送装置としてループ型のヒートパイプを用いることが提案されている(特許文献1)。
また、電子・電気機器分野では、機器の小型・軽量化や大容量化が進み、発熱密度の増大が課題となっている。発熱密度の高い代表的な機器として、電動機の電源であるコンバータやインバータなどの電力変換装置が挙げられる。これらの装置内部には半導体素子が用いられており、稼動の際には、半導体素子が短時間で急激に発熱する。この除熱のため、外部動力を必要としないループ型のヒートパイプを用いた冷却装置が提案されている(特許文献2)。
特開平6−88893号公報 特許第2926684号公報
上述した従来のループ型ヒートパイプは、受熱部で発熱体からの熱を受け取り、作動流体が沸騰することで蒸気となり、冷却部で液体に戻すことで作動流体を循環させ発熱体を冷却するものである。しかしながら、このヒートパイプは、冷却部を鉛直方向上方に設置する必要があるため、熱の輸送方向が限定される弱点を有する。これを改善するヒートパイプのシステムとして、作動流体が沸騰することで気泡が発生し、この気泡の上昇で生じる駆動力により作動流体を受熱部と冷却部との間で循環させ発熱体を冷却するものがある。しかしながら、気泡が上昇する過程で、気泡の成長や結合等によって気泡が大径化し作動流体の駆動力が小さくなり、冷却能力が低下する恐れがあった。特に、大型の発熱体や高熱の発熱体に対しては、冷却能力の低下によって、発熱体を長期的かつ安定的に冷却することが困難となる場合があった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、外部動力なしに自動的に動作するとともに、冷却能力が高く、かつ設計自由度の高い熱輸送装置及び原子炉格納容器の冷却装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る熱輸送装置は、上昇管と、上昇管の上端に設けられた脱泡器と、一端が脱泡器に接続され他端が凝縮器に接続された上部連通管と、前記凝縮器に接続された下降管と、前記下降管の下部と前記上昇管の下部を連通する下部連通管と、前記各管を循環する作動流体とを有し、少なくとも前記上昇管と脱泡器が受熱部を構成し、少なくとも前記凝縮器と下降管が冷却部を構成するループ型ヒートパイプの熱輸送装置において、前記上昇管は下方から上方に向けて径が拡大する拡径部を有するとともに、前記脱泡器、上部連通管及び凝縮器は気相と液相の自由界面を有することを特徴とする。
本発明の実施形態によれば、外部動力を必要としないとともに、駆動力及び冷却能力が高く、設計自由度の高い熱輸送装置及び原子炉格納容器の冷却装置を提供することができる。
第1の実施形態に係る熱輸送装置の全体構成図。 第2の実施形態に係る熱輸送装置の全体構成図。 第3の実施形態に係る熱輸送装置の全体構成図。 第3の実施形態の変形例に係る熱輸送装置の全体構成図。 第4の実施形態に係る熱輸送装置の全体構成図。 第4の実施形態の変形例に係る熱輸送装置の全体構成図。 第5の実施形態に係る熱輸送装置の全体構成図。 第6の実施形態に係る熱輸送装置の全体構成図。 第9の実施形態に係る原子炉格納容器の全体構成図。
以下、本発明に係る熱輸送装置の実施形態を、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る熱輸送装置を、図1を用いて説明する。
(構成)
本第1の実施形態の熱輸送装置は、図1に示すように、基本的に受熱部11と冷却部12とを有するループ型ヒートパイプから構成される。
この熱輸送装置は、発熱体(図示せず)からの熱を受熱する受熱部11として機能する上昇管1と、上昇管の上部に設けられた脱泡器5と、一方が脱泡器5に接続され他方が凝縮器6に接続される上部連通管3と、凝縮器6に接続された下降管2と、下降管2の下部と上昇管4の下部を連通させる下部連通管4と、内部を循環する作動流体8と、から構成される。
脱泡器5、上部連通管3及び凝縮器6は、気相21と液相22の自由界面が存在する構成であり、かつ、上昇管1はその途中に拡径部7を有し、上方の上昇管1の内径を下方よりも大きくしている。なお、階段状の拡径部7を設ける代わりに下方から上方に向けて上昇管1の径を漸次大きくする構成としてもよい。
また、図1の例では拡径部7は一つであるが、これに限定されず、図4に示すよう拡径部7を複数設けてもよい。
また、作動流体としては、例えば水、アンモニア、アルコール類、フロン等が用いられ、使用される環境温度に応じて選定される。
ここで、作動流体が水の場合は、飽和蒸気圧を装置稼動前に適宜調整することにより沸騰温度、稼働温度を調整することができる。また、水は入手が容易であり、仮に配管が破損した場合においても、周囲に及ぼす影響は小さい。
(作用)
このように構成された熱輸送装置において、管内に封入された作動流体8が受熱部11で熱を受熱すると作動流体8が沸騰することにより気泡23が生じ、この気泡23の上昇により生じる駆動力で各管内を循環する。その際、上昇管1は上方に向けて拡径しているので、気泡の成長や結合による大径化を抑制し、気泡を微細構造のまま上昇管1内を上昇させることができる。これにより、気泡表面積の合計の減少を抑制することで作動流体の駆動力の低下を防止し、大きな駆動力で作動流体を循環させることができる。
また、脱泡器5、上部連通管3及び凝縮器6では、気相21と液相22の自由界面を有する構成としており、これにより、当該部位での脱泡能力を向上させ、冷却能力の向上を図ることができる。
また、冷却部12、すなわち、冷却側に配置されている凝縮部6及び下降管2は、図示しない空気又は水等の冷却源により冷却され、凝縮された作動流体8は再度受熱部11に向けて循環する。
なお、上部連通管3及び下部連通管4も冷却側に配置されている部分については冷却部12として機能し、脱泡器5も受熱部11として機能する。また、冷却部12を構成する上部連通管3、凝縮部6、下降管2及び下部連通管4、並びに受熱部11を構成する上昇管1、脱泡部5等に、熱交換を促進するためにフィン等を設けてもよい。
また、本実施形態では上部連通管4の両端部に脱泡器5、凝縮器6を接続する構成としているが、これに限定されず、脱泡器5、凝縮器6と各管を一体的に製造してもよく、これにより製作コストを低減することができる。
(効果)
以上説明したように、本第1の実施形態によれば、外部動力を必要としないとともに、駆動力及び冷却能力の高い熱輸送装置を提供することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る熱輸送装置を、図2を用いて説明する。
第2の実施形態の熱輸送装置は、図2に示すように、凝縮器6が脱泡器5より下方に設置されている。これにより、上昇管1を通じて脱泡器5に輸送された液相22は、上部連通管3を介して凝縮器6へ重力により輸送されるため、熱輸送能力を一層向上することができる。
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る熱輸送装置を、図3を用いて説明する。
第3の実施形態の熱輸送装置は、上昇管1又は下降管2を、受熱側又は冷却側に向けて並列に複数配置した構成としている。
この場合、脱泡器5又は凝縮器6はそれぞれ複数の上昇管1又は下降管に接続される。また、脱泡器5と凝縮器6を連結する上部連通管3及び下部連通管4は1本又は複数本配置される。
なお、上昇管1又は下降管2の本数は受熱又は冷却分布に応じて適宜変更可能である。
本実施形態の変形例を図4に示す。この例では、配管径が受熱又は冷却分布に応じて最適な径になるように適宜変更されている。
本実施形態によれば、受熱量及び受熱・冷却分布に応じて上昇管1又は下降管2の本数及び径を適宜調整することにより、熱輸送装置の冷却能力の最適化を図ることができる。
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係る熱輸送装置を、図5及び図6を用いて説明する。
第4の実施形態の熱輸送装置は、図5に示すように、上昇管1の入口部に旋回流発生器25を設けた構成としている。この場合、旋回流のない流れと比較して管壁での熱伝達を大きくできるため、熱輸送能力を一層向上することができる。
旋回流は、旋回羽根やねじりテープを管内に設置すること、又は管内周面に、傾斜溝、螺旋溝等を形成することにより発生させることができる。なお、これに限定されず、他の旋回流発生手段を用いてもよい。
図6は、本実施形態の変形例であり、上昇管1の流路に配された拡径部7に旋回流発生器8を設けた構成としている。
本実施形態によれば、熱伝達の向上を図ることができるとともに、気泡分布の均一化及び気泡の微細化が可能となり、熱輸送能力を一層向上することができる。
[第5の実施形態]
第5の実施形態に係る熱輸送装置を、図7を用いて説明する。
第5の実施形態の熱輸送装置は、図7に示すように、上部連通管3に仕切り板9を配置した構成としている。仕切り板9は上部連通管3の長手方向に複数設けられる。
これにより、下流へと向かう液相22に存在する、所定の大きさ以上の気泡23を仕切り板9でせき止め消滅させることができるため、微細構造の気泡による作動流体の駆動力を維持することができる。
なお、仕切り板9として、所定径以下のメッシュ部材を用い、同様に所定の大きさ以上の気泡を消滅させるようにしてもよい。この場合、仕切り板9を設ける場合に比較して作動流体8の流れを阻害しない。
また、上部連通管3だけではなく、脱泡器5、凝縮器6又は上昇管1の上部に仕切り板9を配置してもよい。
[第6の実施形態]
第6の実施形態に係る熱輸送装置を、図8を用いて説明する。
第6の実施形態の熱輸送装置は、図8に示すように、上部連通管3から下部連通管4へ熱を輸送する熱輸送部材10を配置した構成としている。
この場合、上昇管1に流入する作動流体8を熱輸送部材で運ばれた熱によって予熱し、特に、上昇管1の下部での泡発生量を増加させることにより、熱輸送能力を一層向上させることができる。
なお、熱輸送装部材10として、例えば、銅、アルミ、金など熱伝導性の良い金属部材、又はウイック式のヒートパイプを用いることができる。
[第7の実施形態]
第7の実施形態に係る熱輸送装置を説明する。
第7の実施形態の熱輸送装置は、作動流体8中に当該作動流体の沸点以下である蓄熱物質を内包する多数の不溶性のマイクロカプセル(図示せず)を混入させた構成としている。作動流体が水の場合、マイクロカプセルの蓄熱物質として融点が30〜70℃のパラフィン系の相変化物質が用いられる。
これにより、上昇管1で加熱された作動流体8は、作動流体8に気泡23が発生する前にマイクロカプセル内の蓄熱物質が相変化を起こすため、その潜熱を熱輸送に利用できる。これにより、作動流体8の熱輸送能力を大幅に向上させることができるため、冷却能力も向上する。
[第8の実施形態]
第8の実施形態に係る熱輸送装置を説明する。
第8の実施形態の熱輸送装置は、作動流体8中に気泡表面に吸着する吸着材を添加した構成としている(図示せず)。吸着材は、作動流体8内の気泡表面に吸着され、これにより、気泡の成長及び気泡同士の結合拡大を抑制することができるため、作動流体の駆動力を高く維持することができる。
なお、吸着材として、作動流体8や熱により化学的反応を引き起こさない材料が望ましく、例えば、酸化チタン、アルミナ、シリカ等からなる微粒子や界面活性剤が用いられる。
[第9の実施形態]
上記第1乃至第8の実施形態の熱輸送装置を原子炉格納容器に適用した例を図9に示す。図9において、上昇管1と脱泡器5は原子炉格納容器30の内部に、凝縮器6と下降管2は原子炉格納容器30の外部の冷却室31内に配置され、冷却室31は冷却水又は空冷等からなる冷却設備を備えている。
このような熱輸送装置を格納容器の周方向及び/又は上下方向に複数設けることにより、緊急時において格納容器内に発生した熱を、外部動力を用いないで効果的に除熱することができるため、原子力発電設備の信頼性や安全性を高めることができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、組み合わせ、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…上昇管、2…下降管、3…上部連通管、4…下部連通管、5…脱泡器、6…凝縮器、7…拡径部、8…作動流体、9…仕切り板、10…熱輸送部材、11…受熱部、12…冷却部、21…気相、22…液相、23…気泡、25…旋回流発生器、30…原子炉格納容器、31…冷却室。

Claims (14)

  1. 上昇管と、上昇管の上端に設けられた脱泡器と、一端が脱泡器に接続され他端が凝縮器に接続された上部連通管と、前記凝縮器に接続された下降管と、前記下降管の下部と前記上昇管の下部を連通する下部連通管と、前記各管を循環する作動流体とを有し、少なくとも前記上昇管と脱泡器が受熱部を構成し、少なくとも前記凝縮器と下降管が冷却部を構成するループ型ヒートパイプの熱輸送装置であって、
    前記上昇管は下方から上方に向けて径が拡大する拡径部を有するとともに、前記脱泡器、上部連通管及び凝縮器は気相と液相の自由界面を有することを特徴とする熱輸送装置。
  2. 前記上昇管に前記拡径部を複数設けたことを特徴とする請求項1記載の熱輸送装置。
  3. 前記凝縮器を前記脱泡器より下方に位置させたことを特徴とする請求項1又は2記載の熱輸送装置。
  4. 前記上昇管又は下降管を複数設けたことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の熱輸送装置。
  5. 前記上昇管の入口部又は拡径部に旋回流発生器を設けたことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の熱輸送装置。
  6. 前記脱泡器、上部連通管及び凝縮器の少なくとも一つに仕切り板を設けたことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の熱輸送装置。
  7. 前記仕切り板としてメッシュ部材を用いたことを特徴とする請求項6記載の熱輸送装置。
  8. 前記上部連通管と下部連通管を熱輸送部材で接続したことを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の熱輸送装置。
  9. 前記作動流体に、内部に作動流体のよりも低融点の蓄熱物質を内包する多数の不溶性のマイクロカプセルを含有させたことを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の熱輸送装置。
  10. 前前記作動流体に、気泡表面に吸着する微粒子又は界面活性剤を含有させたことを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の熱輸送装置。
  11. 前記微粒子は酸化チタン、アルミナ又はシリカからなることを特徴とする請求項10記載の熱輸送装置。
  12. 前記作動流体は水であり、熱輸送装置の稼働前に飽和蒸気圧を所望の圧力に調整することを特徴とする請求項1乃至11いずれかに記載の熱輸送装置。
  13. 前記受熱部を原子炉格納容器内に、前記冷却部を原子炉格納容器外に配置することを特徴とする請求項1乃至12いずれかに記載の熱輸送装置。
  14. 請求項13に記載の熱輸送装置を原子炉格納容器の周方向及び/又は上下方向に複数配置したことを特徴とする原子力格納容器の冷却装置。
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