JP2012242377A - 電気機器の巻線診断システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】正常状態の巻線に対して、インパルス電圧を印加したときに巻線の両端の電圧を基に、巻線正常時の特徴量の代表点を求め、短絡と絶縁劣化を模擬した状態の巻線に対して、インパルス電圧を印加したときの電圧を基に、短絡時の特徴量と絶縁劣化時の特徴量の代表点を求めて、絶縁劣化時の特徴量の代表点に対して危険度を表す短絡発生確率を定め、巻線絶縁劣化時の短絡発生確率とその時の特徴量の代表点と、巻線正常時の特徴量の代表点を基に、標準偏差を決定しておき、診断対象巻線を診断する診断行程において、診断対象巻線に対してインパルス電圧を印加したときの電圧に基づく診断対象巻線の特徴量と、巻線正常時の特徴量の代表点と標準偏差を用いて確率値を導出し、該確率値から、診断対象巻線が正常か、絶縁劣化が進行しているかを診断する。
【選択図】図8
Description
本発明の電気機器の巻線診断システムは、
電気機器の巻線に対して所定特性のインパルス電圧を印加するインパルス電圧発生回路と、
前記巻線に対して前記所定特性のインパルス電圧が印加された場合に当該巻線両端の電圧を計測する電圧計測手段と、
診断対象巻線と同特性の正常状態の巻線に対して、前記インパルス電圧と同特性のインパルス電圧を印加したときに当該巻線両端の電圧を基に、巻線正常時の特徴量を抽出し、該特徴量の代表点を求めるとともに、
診断対象巻線と同特性の巻線において、短絡もしくは絶縁劣化を模擬した状態を再現して、それらの巻線に対して、前記インパルス電圧と同特性のインパルス電圧を印加したときに当該巻線の両端の電圧を基に、巻線短絡時もしくは絶縁劣化時の特徴量を抽出し、絶縁劣化時の特徴量の代表点を求めて、該代表点に対して危険度を表す短絡発生確率を定め、各種短絡時の特徴量の分布の軌跡を考慮して、該巻線絶縁劣化時の短絡発生確率とそのときの特徴量の代表点と、前記巻線正常時の特徴量の代表点を基に、特徴量分布上で巻線絶縁劣化時の特徴量と発生する確率が等しくなる点の集合体の標準偏差を決定しておく演算手段と、
前記標準偏差と前記巻線正常時の特徴量の代表点を記憶しておく診断情報記憶手段と、
診断対象巻線を診断する診断行程において、診断対象巻線に対して前記インパルス電圧発生回路から前記インパルス電圧と同特性のインパルス電圧を印加したときに前記電圧計測手段で訐測された電圧に基づいて、診断対象巻線の特徴量を抽出し、該診断対象巻線の特徴量と、前記診断情報記憶手段に記憶させておいた巻線正常時の特徴量の代表点と標準偏差を用いて確率値を導出し、該確率値から、診断対象巻線が正常か、絶縁劣化が進行しているかを診断する診断手段と、を備えたことを要旨とする。
インパルス電圧発生回路からインパルス電圧を巻線に印加した場合、巻線の両端で観測される電圧をν(n)(但しnはサンプリング数)とする。
いま、この巻線とインパルス電圧発生回路から構成される回路の等価回路定数のレジスタンスをR、インダクタンスをL、キャパシタンスをCとすると、巻線とインパルス電圧発生回路から構成される回路の各等価回路定数の乗算値LCおよびRCは、擬似逆行列を用いて式(1)のように求めることができる。
である。また式(1)おいてTは転置行列を表す。
なお、巻線を有する電気機器として電動機を考える。
電動機において、固定子に組み込まれた巻線を診断対象とした場合の本発明の説明を、実際の実験データを用いて行う。
同じ型番で製造ロットが異なる電動機を3台用意する。
そして、それらの固定子巻線のある端子間の巻線、例えば、V−W間の巻線に対してインパルス電圧を印加した場合には、巻線の両端に、図9に示すような電圧波形が観測される。
この電圧に対してある時間間隔でサンプリングして計測する。
サンプリングした電圧は、図9中で波形上に「●点」で示す。このサンプリングする電圧の時間区間としては、電圧波形の一周期以上とする。
ここではサンプリングする区間が電圧波形の一周期以上となるように、50点をサンプリングする。また、サンプリング開始点は、電圧波形が最小となる点としている。
図1は、横軸にLC、縦軸にRCを取る。この図1から分かるように、製造ロットは異なるものの、巻線が正常であれば、そのときの特徴量はほぼ同じ領域にかたまって分布することが確認できる。
次に、上記3台のW相の巻線において、1ターン短絡が発生した場合の特徴量分布も同様に図1に示す。ここで「1ターン短絡」とは、コイルの一巻目と二巻目が短絡した状態のことを指す。
この図1の結果から分かるように、巻線が1ターンでも短絡を起こした場合に得られる特徴量分布は、正常状態のときと同様に、ほぼ同じ領域にかたまって分布することが確認できる。
また、巻線が正常な場合と、1ターンでも短絡が発生した場合とでは、巻線両端の電圧から求められる特徴量LCおよびRCの分布する領域に明らかに違いが見られることも確認できる。
上記3台の電動機のうち1台の電動機のW相において、1ターン短絡から順番に6ターン短絡までの短絡を再現し、巻線状態毎にインパルス試験を実施する。そして、このとき得られた電圧波形から式(1)を基に同定した特徴量LCとRCの特徴量分布を図12に示す。ここでは巻線状態毎にインパルス試験を複数回繰り返し行い、(LC,RC)の組を求める。この結果より、短絡の状態毎に特徴量はかたまって分布することが確認できる。図12の凡例において、「H」は巻線が正常のときを意味し、「1T」は「1ターン短絡」を意味する。
今回の固定子巻線では、短絡ターン数を増加させていったときの各特徴量の分布は図12に示すように移り変わる。即ち、この移り変わりの軌跡は、巻線が正常時の特徴量分布を基準とすると、図13の点線のように楕円を描くと考えることができる。
次に、絶縁劣化時のコイルにおいて、そのときの特徴量LCおよびRCについて注目する。
電動機の固定子巻線においてコイル間の絶縁強度が低下していくと、絶縁が正常な状態(図2)から導体同士が完全につながる短絡状態(図3)に至る。
そこで、この絶縁強度を一種の抵抗と見なすことで、コイルの絶縁を抵抗R1によりモデル化することができる。そのイメージ図を図4に示す。
巻線が正常な場合は、R1は非常に大きな値をとるが、巻線が短絡すると、R1=0となる。そこで、コイルの絶縁劣化の進行過程を、抵抗R1の値を変えることで模擬する。
ここでは抵抗値として、R1=0.100,0.050,0.033[Ω]の三種類を用いる。
このとき巻線両端で観測された電圧から求めた特徴量LCおよびRCの値を、図5に示す。
但し図5では、図1に示した3台の巻線正常時の特徴量から代表点を求めておき、その点のみを示している。
図5の結果より、コイル間の絶縁劣化が進むにつれて、特徴量LCおよびRCの分布は、巻線正常時の分布領域から1ターン短絡時の分布領域へと次第に移動していくことが確認できる。
一般に、特徴量LCおよびRCは、正常もしくは劣化進行程度といった巻線の状態に応じて、特徴空間上のある固まった領域に分布することから、巻線正常時に得られる特徴量の代表点を基準として、巻線の絶縁劣化時に得られる特徴量の代表点と同じ発生確率を持つ点の集合体の内側に存在する確率を算出する。
n次元の特徴量x=(x1,x2,…,xn)の各要素がガウス分布に従うとした場合、そのときの同時確率密度関数p(x)は式(2)で表すことができる。
す。式(2)の指数部分において
とおく。式(3)は楕円体を表し、さらにこの楕円体上のすべての点は
という等確率を持つことを意味する。
を用いることで、
と変形することができる。さらに新たに変換
を用いてxを置換することで、式(5)は
z1 2+z2 2+…+zn 2=l2 ・・・(7)
と変形することができる。
さらに式(8)において、
と置くことで、
と変形することができる。
式(10)のs(r)drは、n次空間の球の半径rからr+drまでの区間の微小体積を表す。
n=2の場合には、式(5)は楕円面となるが、n=3の場合には、式(5)は楕円体となる。
一般に、式(5)で表現される等確率楕円体の内側の確率は、あるクラスの分布を覆う確率を意味する。そのため、巻線正常時に得られる特徴量の代表点とある特徴量との間の距離で決定される等確率楕円体の内側の確率は、正常クラスを覆う確率を意味する。
例えば、診断対象とする巻線から得られる特徴量が正常クラスの代表点に近接する場合には、このときの等確率楕円体は正常クラスを殆ど覆うことができないため、上記楕円体の内側の確率は0%に近づく。
一方、特徴量が正常クラスの代表点から遠く離れた点に位置するならば、等確率楕円体は正常クラスを広く覆うことができ、このときの上記確率は100%に近づくことになる。
このように、等確率楕円体の内側の確率は、代表点を中心とした正常クラスを占める確率であり、この確率を短絡発生確率とすることで、巻線の状態、すなわち短絡が発生したのか、それとも絶縁の劣化が進行中で危険な状態に陥りつつあるのかといった危険度を確率的に表現し、診断することが可能となる。
正常な巻線に対して、インパルス電圧を印加して、そのとき巻線両端で観測される電圧をある時間区間、計測し、その電圧を基に巻線の状態を診断するのに有用な特徴量を抽出するとともに、それらの特徴量の代表点を求めておく。
例えば、同条件下で複数回、インパルス電圧を印加した場合には、複数個の特徴量が得られるが、その場合は複数個の特微量の点から代表点を求める。代表点としては、複数個の特微量の点の平均をとることでそれとしても良い。
例えば、同条件下で複数のインパルス電圧を印加した場合には、複数個の特徴量が得られるが、その場合は複数個の特徴量の点から代表点を求めておいても良い。代表点としては、複数個の特徴量の平均をとることでそれとしても良い。
例えば、同条件下で複数のインパルス電圧を印加した場合には、複数個の特徴量が得られるが、その場合は複数個の特微量の点から代表点を求める。代表点としては、複数個の特微量の点の平均をとることでそれとしても良い。そして、この絶縁劣化を模擬した状態の巻線から得られた特徴量の代表点に対して危険度を表す短絡発生確率を定める。
数ターン短絡時の特徴量の分布の軌跡と、絶縁劣化時の特徴量の代表点、いま定めた短絡発生確率、巻線正常時の特徴量の代表点を基に、特徴分布上で等確率となる点の集合体の標準偏差を決定する。
図8に示すように、電気機器の巻線診断システム1において、端子T1,T2には、例えば電動機の巻線を診断対象とする診断対象巻線2Aと、診断対象巻線2Aを診断する場合に必要な診断情報を学習するときに用いられる正常な巻線と短絡や絶縁劣化を模擬した巻線で構成される学習用巻線2Bが接続される。尚、診断対象巻線2Aと学習用巻線2Bは同特性に製作されている。
また、端子T1,T2に接続された診断対象巻線2Aまたは学習用巻線2Bに対して所定特性のインパルス電圧を印加するインパルス電圧発生回路3が設けられている。
上記電圧計測部4で計測される電圧はアナログ値であるため、そのアナログ信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換回路5が設けられており、A/D変換回路5から出力されたデジタル信号は診断部7に出力される。
このように演算された標準偏差と巻線正常時の特徴量の代表点をメモリ6に設けた特徴量空間に記憶する。
なお、上記標準偏差と巻線正常時の特徴量の代表点は、外部の演算手段で演算し、その結果をメモリ6に記憶させても良い。
抵抗R1=0.033Ωとして絶縁劣化を模擬した巻線に対してインパルス電圧を印加したときに得られた電圧から求められた特徴量LCおよびRCの分布の代表点をA点とする(図6参照)。ここで、A点は、RC軸上で、巻線正常時の特徴量と、1ターン短絡時の特徴量のクラスの中間領域に位置していることから、このA点のときの危険度の確率、即ち短絡発生確率PAを仮に50%と設定する。A点は、抵抗値が0.033Ωとなったときの特徴量の点である。
図6に示す特徴量分布上では、正常時と1ターン短絡時の特徴量の中間点は、コイル間の抵抗値が0.033Ωよりも更に低下した状態と考えられる。しかし、0.033Ω時の確率を50%と設定することで、絶縁劣化の進行状態を早い段階で危険と認識することができる。
PAが与えられると、式(11)を変形することで得られる式(12)により、l2の値を算出することができる。
そこで、この1ターンから6ターン短絡までの特徴量の分布の軌跡を用いて標準偏差を決定する。
まずは図13において点線で示すこの楕円の軌跡を求める。以下の説明では、この楕円のことを便宜上、楕円Sとする。
楕円の式は
で表現することができる。
次に、劣化時の特徴量のA点と発生確率が同じ点の集合が、上記で求めた楕円Sと相似関係にある楕円とする。この楕円を楕円Aとし、LC軸の標準偏差をσ1、RC軸の標準偏差をσ2とする。楕円Aが楕円Sと相似関係にあるためには、楕円Aの各特徴量の標準偏差の比が上記で求めたkの値となるように、標準偏差を決定すれば良い。
まず、A点がRC軸上で、正常時と1ターン短絡時との特徴量分布のほぼ中央に位置することから、A点の短絡発生確率を50%、すなわち、PA=0.5と設定すると、式(12)よりl2が求まる。
いま、特徴量をLCとRCの2次元とした場合には、式(5)は式(14)のようになる。
また、このときの標準偏差の値は、それぞれ
である。
σ2をメモリ6に記憶させておく。
診断を実施する際には、巻線に対してこれまでと同じ条件のインパルス電圧を印加して、そのとき巻線両端で観測される電圧をある時間区間、計測して、その電圧を基に式(1)を用いて特徴量LCおよびRCを抽出する。このときの特徴量LCおよびRCの値をxd1とxd2とし、それをD点とする。そして、予め求めておき、メモリ6に記憶させておいた
ld 2を算出する。
また、絶縁劣化時の代表点A点に相当する確率PAの値と、正常巻線から得られる特徴量
タ等の画面に表示させることができ、絶縁劣化の過程を視覚的に表現することもでき、機器の保守・メンテナンスに役立てることができる。
例えば、1ターン短絡のみの特徴量分布を用いて標準偏差を決定しても良い。前記で説明したときよりも楕円Sを小さく設定することで、短絡発生確率は全体的に高くなるが、劣化の早い段階で確率値が高くなり、早期での検出が可能になるといった利点がでる。楕円Sとそのときの楕円A、すなわち50%等確率楕円面の軌跡、ならびに30%、10%等確率楕円面の軌跡とともに、図15に示す。またこのときの標準偏差の値は、それぞれ
である。
短絡もしくは絶縁劣化状態にある固定子巻線を準備して、それらの固定子巻線のU−V間、V−W間、W−U間の相間に対して、インパルス電圧を印加するインパルス電圧印加試験を50回繰り返し行う。
今回の試験には、三相誘導電動機(定格出力2.2kW、定格電流200V、定格電流8.6A、4極)の固定子巻線を試料として用いる。この誘導電動機の固定子のスロットは36個、巻線はダブル・スター結線である、1スロットあたり45本のコイルが挿入されている。
この場合、健全相であるU−V間に対して50回のインパルス電圧印加試験から算出した短絡発生確率の平均は0.3%であった。それに対して、短絡相を有するV−W間とW−U間に対する50回のインパルス電圧印加試験から算出した短絡発生確率の平均は、それぞれ97.5%と96.5%であった。
その結果、健全相であるU−V間に対して50回のインパルス電圧印加試験から算出した短絡発生確率の平均は0.2%であったのに対して、短絡相を含むV−W間とW−U間でのインパルス電圧印加試験から算出された短絡発生確率の平均は共に16.9%であった。抵抗0.033Ω時の絶縁強度と比較すると、抵抗0.083Ωの方は短絡の危険性が低いことが分かる。
その結果、健全相であるU−V間に対して50回のインパルス電圧印加試験から算出した短絡発生確率の平均は0.3%であったのに対して、短絡相を含むV−W間とW−U間でのインパルス電圧印加試験から算出された短絡発生確率の平均は、それぞれ70.5%と69.8%であった。つまり、抵抗0.033Ω時と比べると、短絡の危険度が高くなっていると言える。
これらの短絡発生確率を表1にまとめる。
また、抵抗0.020Ω時のV−W間から得られた50回の特徴量の平均を代表点(D点)として、50%、30%、10%等確率楕円面の軌跡とともに図11に示す。抵抗0.020Ω時の短絡発生確率は70.5%であるが、このときの特徴量は、50%等確率楕円面よりも外側の、より短絡状態に近い領域に位置していることが分かる。
それに対して本発明は、特徴量が観測される確率に着目し、巻線の短絡や劣化状態をそのときの巻線間の抵抗値と結び付けて診断できるため、その確率値の持つ物理的意味が明確となり、実際の運用面で有用となる。
図10は、図8に示したインパルス電圧発生回路3に代え、逆起電力発生回路を用いて診断対象となる巻線Wに逆起電力を発生させることにより、この逆起電力をインパルスとするものである。
図10に示すように、逆起電力発生回路15は、巻線に直流電流を流すための直流電源12と、直流電源12に直列に接続されたスイッチ13と、スイッチ13がオンされた状態で充電されるコンデンサ14とを備えている。このコンデンサ14に対して並列に診断対象巻線2A,学習用巻線2Bを接続した状態でスイッチ13がオンされると、巻線2A,2Bに直流電流が通電されるため、この状態でスイッチ13がオフされると、巻線2A,2Bに逆起電力が発生する。この逆起電力は、巻線2A,2Bに印加されたインパルスと同等に作用するため、この逆起電力を特徴量検出部において検出する。以降の処理は、これまでに記した実施の形態例と同じである。
また、実施例では、巻線を有する電気設備として、電動機の固定子巻線を対象に話を進めたが、巻線であれば電動機の固定子巻線に限らず、発電機,変圧器などの電気機器の巻線全てを診断対象巻線とすることができる。
2A 診断対象巻線
2B 学習用巻線
3 インパルス電圧発生回路
4 電圧計測部
5 A/D変換回路
6 メモリ
7 診断部
8 表示部
12 直流電源
13 スイッチ
14 コンデンサ
15 逆起電力発生回路
Claims (7)
- 電気機器の巻線に対して所定特性のインパルス電圧を印加するインパルス電圧発生回路と、
前記巻線に対して前記所定特性のインパルス電圧が印加された場合に当該巻線の両端に発生した電圧を計測する電圧計測手段と、
診断対象巻線と同特性の正常状態の巻線に対して、前記インパルス電圧と同特性のインパルス電圧を印加したときに当該巻線の両端に発生した電圧を基に、巻線正常時の特徴量を抽出し、該特徴量の代表点を求めるとともに、
診断対象巻線と同特性の巻線において、短絡もしくは絶縁劣化を模擬した状態を再現して、それらの巻線に対して、前記インパルス電圧と同特性のインパルス電圧を印加したときに当該巻線の両端の電圧を基に、巻線短絡時もしくは絶縁劣化時の特徴量を抽出し、絶縁劣化時の特徴量の代表点を求めて、該代表点に対して危険度を表す短絡発生確率を定め、各種短絡時の特徴量の分布の軌跡を考慮して、該巻線絶縁劣化時の短絡発生確率とそのときの特徴量の代表点と、前記巻線正常時の特徴量の代表点を基に、特徴量分布上で巻線絶縁劣化時の特徴量と発生する確率が等しくなる点の集合体の標準偏差を決定しておく演算手段と、
前記標準偏差と前記巻線正常時の特徴量の代表点を記憶しておく診断情報記憶手段と、
診断対象巻線を診断する診断行程において、診断対象巻線に対して前記インパルス電圧発生回路から前記インパルス電圧と同特性のインパルス電圧を印加したときに前記電圧計測手段で計測された電圧に基づいて、診断対象巻線の特徴量を抽出し、該診断対象巻線の特徴量と、前記診断情報記憶手段に記憶させておいた巻線正常時の特徴量の代表点と標準偏差を用いて確率値を導出し、該確率値から、診断対象巻線が正常か、絶縁劣化が進行しているかを診断する診断手段と、
を備えたことを特徴とする電気機器の巻線診断システム。 - 前記インパルス電圧発生回路と前記巻線から構成される回路の等価回路定数の抵抗をR、インダクタンスをし、キャパシタンスをCとしたとき、その乗算値であるLCとRCを、前記巻線の特徴量としたことを特徴とする請求項1に記載の電気機器の巻線診断システム。
- 絶縁劣化を抵抗のみでモデル化し、巻線間に抵抗を挿入することで、前記絶縁劣化を模擬した状態の巻線としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気機器の巻線診断システム。
- 巻線で短絡ターン数を増加させていったときに、巻線の短絡状態毎から得られる特徴量の分布の軌跡を楕円もしくは円として見なし、絶縁劣化状態にあるときの特徴量の代表点と等確率となる点の集合が上記楕円もしくは円の軌跡と相似関係となるように、絶縁劣化状態にあるときの特徴量の代表点とその代表点に対して設定した短絡発生確率、ならびに巻線が正常のときの特徴量の代表点から、各特徴量の前記標準偏差を求めたことを特徴とする請求項1に記載の電気機器の巻線診断システム。
- 特徴量分布上に、診断対象とする巻線から得られた特徴量の点と、等確率楕円体を一緒に表示させることで、絶縁劣化の過程を視覚的に表示させることを特徴とする請求項1乃至請求項6何れか記載の電気機器の巻線診断システム。
- ある時間区間の電圧値を用いて前記特徴量LCおよびRCを求める際に、この時間区間を電圧波形の1周期以上としたことを特徴とする請求項2に記載の電気機器の巻線診断システム。
- 前記インパルス電圧を印加したときに巻線両端で観測される電圧に対してサンプリングする際に、波形に特徴のある点(例えば、電圧値が最大もしくは最小を取る点)などをサンプリング開始の基準としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気機器の巻線診断システム。
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