JP2012242007A - 太陽光コジェネレイションモジュール - Google Patents
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Abstract
太陽電池は太陽光エネルギーを電力に変える変換効率が13〜15%前後である現在、必要な装置の総受光面積が大きくなり、装置価格が高くなるため、商用電力に比し実用的な経済効果が達成し難い。そこで電力と同時に温熱を獲得する太陽光コジェネレイションパネルが有望であるが製品として具体化する上で構造面、材料面で多くの課題がある。
【解決手段】
いづれも平板形状の発電セル組み立てとモジュール基板と冷却機構とを一体にするための構造と材料とを見出し、それらを組み合わせて同時に接合させることによって高信頼度で低価格のモジュールが製品化できることを示し、太陽光コジェネレイションモジュールを実用化する為の基礎技術として明示した。
【選択図】 図1
Description
エネルギー効率の点では、太陽光発電装置に照射される太陽光エネルギーが電力へ変換される変換効率(ECR)は実用化されている装置で12〜16%程度であり、残りのエネルギー量88〜84%は利用できていない。この結果、エネルギー供給装置として必要なエネルギー量を供給するには大面積の装置を必要とし、発電された電力コストが商用電力で得られるコストである23円/kWhの2倍近く即ち40円/kWh程度の高価格になってしまい、前述した初期投資の回収期間は25年程度に長期化し、普及が進まない主な原因となっている。
このため発電セル自体の変換効率(ECR)の向上のための新しい技術開発が期待されている。
またシリコンアモルファスをガラス面乃至はプラスチックフィルム面に形成したもの乃至はそれをシリコン結晶と積層させてECRを向上させたものも出現している。また銅やインヂュームなどシリコンと異なった材質をセル材料としてガラス基板に極薄で蒸着させた薄膜セルと呼ばれるものもシリコン基盤セルの代替として資源不足を回避するものも有望である。即ち発電セルの基板としてシリコンそのもの、ガラス板、樹脂板など多くの種類のものがある。
数十年前から、一つのモジュールで電力と温熱を得ることができる太陽光コジェネレイションモジュールの研究及び開発が検討されてきている。即ち発電セルの背面にヒートシンクとしての金属板を設置し、その金属板と一体化された配管や媒体通路に水や冷媒を通じて発電セルで生じた温熱を収集するものである。この方式によれば太陽光発電装置と太陽熱温水器を別々に設置したものに比べて同じ出力を得る場合に全体のモジュールの受光面積が小型化でき、コストダウンと同時に設置スペースの削減という二つの効果が達成でき、また装置の設置工事も簡略化できる。さらに発電セルを強制的に冷却する事により発電セルの温度を低下させることができ、次の様な効果も期待できる。
発電セルの発電効率が向上する
熱帯地方など外界温度の高い地域や太陽光照射にお強い地域でセル周りの温度上昇を防止でき、長寿命を保証できる。
モジュールを連結した発電回路の焼結損傷(ホットスポット)の防止に効果がある。
基本的な優位点としては、電力と給湯用温熱や暖房用温熱が同時に得られるという利点があり、家庭や店舗その他電力と熱を利用するところで極めて有効である。
本発明が扱う技術分野が目指す太陽光コジェネレイションモジュールの温熱出力の価格によってそのモジュールの初期価格の50〜60%を負担でき、出力電力には初期価格の40〜50%の負担に軽減される。 その結果、出力電力は市販の商用電力より低い価格即ち平成22年における日本国内の市場電力価格24円/Kwh程度の価格を実現できるという大いなる効果がある。
その理由は
1、複雑な材料からなる高機能複合体になるため実用上の長期信頼性の確保が難しい。
即ち、発電セルの材料はシリコン、ガラスなど熱膨張係数が極めて小さくかつ伝熱性能が悪い材料からなるが、一方その背面に配置されるヒートシンクや冷却配管に使われる材料は伝熱性能が高い金属材料で、線膨張係数が極めて大きい。この結果1)モジュールの性能・効率を高めるための熱的な密着構造
2)マイナス20℃からプラス120℃にわたる広範囲の温度変化によって生じる大きな熱歪の差から生じる大きなストレスに耐える信頼性
3)電気的絶縁確保のための電気的な分離構造
以上を同時に充たす構造及び材料技術の実現は大変難しく確立されていない。
2、一方、温熱を利用するための冷却媒体(一般には水、不凍液)を広い範囲に渡って設置される装置システム全体に循環させる構造であり、
1)結露による錆、
2)接合箇所からの媒体漏洩、
3)媒体の循環ポンプ寿命
など、太陽電池システムに比べて信頼性の課題がある。
3、最大の課題は
1)発電セル層とヒートシンク及び冷却配管との接合の長期信頼性
2)積雪加重、大風の風圧や振動、水分や湿分、温度変化、日照といった過酷な運転環境における複合構造物としての長期寿命
を確保するための構造と材料及び製造方法が確立できていないことである。
4、これら課題を解消するため、
1)高機能材料使用のコストが増し、構造が複雑になってコストが高くなる
ことが新たな課題となっている。これは、コジェネレイションの出力向上効果を相殺してしまい、単純な太陽電池と同等な経済効果しか得られないということもある。
以上の様な課題がある。
本発明が対象としているコジェネレイションモジュールの性能および商品性の目標を以下の様に定めて技術開発を進めてきた。
1、光照射エネルギーを電力と温熱に変換する上での高い変換効率の達成
電力:13〜14%以上(太陽電池と同等乃至はより優れた発電特性)
温熱:40%以上(太陽熱温水器と同等な効率)
トータルエネルギー:54%程度(最高効率の達成)
2、コスト目標:太陽電池モジュールに対しコストアップ25%以下のコスト達成
3、太陽電池と同等の運転寿命:20年以上(修理、メンテナンスを含め)の達成。
このために発電する発電部分とそれを支えるモジュール基板とモジュール基板を通して発電部分を冷却する冷却機構部分からなる電熱出力部分の電気絶縁性確保、電熱冷却特性確保、錆や劣化防止、剥離防止、焼き付き防止、など設置運転時の台風などによる外部ストレスに耐える構造、材料、製造方法の実現である。
即ち、本発明の太陽光コジェネレイションモジュールに関わる基幹技術は
電熱出力部分の強度確保とモジュール全体の合理的な構造
電熱出力部分各所の電気絶縁構造と高い伝熱性能構造
モジュール基板と発電部分及び冷却機構との接合方法と耐久性
金属製の冷却機構の構造と寸法精度及び材料
に関する技術である。
こうした背景の中で、太陽光発電装置から同時に熱を得るための太陽光コジェネレイション装置の技術は多くの研究や開発がされて来ている。
その中で特許文献1は集熱パネルと熱コレクタの組み合わせを基本として一次冷媒による冷却方法などについての技術が提示されている。しかしながらモジュールの基板となる構造物が無く全体の平坦度を保つ強度が十分では無い。その上に冷媒通路は上部集熱板と下部集熱板を接着乃至は溶接して形成しているから冷媒のリークのリスクは大きい。 アルミ製の上部集熱板の発電セルへの熱歪の緩和についての工夫も無く、長期使用中にヒートサイクルの繰り返しによる発電セルの破損、不具合発生のリスクは大きい。上部集熱板と下部集熱板はアルミのブロック構造であるためその重量は増加してコストの上昇及びその重量増の点で据付工事性の問題がある。以上の点でこの様な構造では商品化は大きな困難を含んでいる。
特許文献2はコジェネレイションモジュールの基本構造を提示しているが、セル上面からガラスを通じての放熱ロスが決定的に性能低下をきたす事、モジュール全体の平面強度を確保するための基盤となる部品が無く白色ガラスと集熱器では積雪や台風などによる風圧振動などの負荷に対し全体の強度が不足する。集熱板は細切れ形状であり、フィルムとの接着を行うEVAフィルムなどの接合強度の信頼性は著しく劣化し、数年の使用で剥離することが考えられる。また各EVA接合は別工程で熱溶着されており、一回の加熱操作で全体を接合する方式に比べ生産性の低下、品質の低下が心配である。
以上、詳細を説明してきたが、従来の技術では商品化を達成するには幾つかの課題が残されている事がわかる。商品としての生産性と高い信頼性を持ち且つ実用的な価格で販売できるコストを達成することが必要で、その為に必要な構造と材料及び製造方式に関する多くの技術が確立されなければならない。
特許文献6には平板部材(モジュール基板)の下面に同等の部材からなる波型形成部材を溶接した事例が示されているが、これには平板部材の強度、溶接による歪や変形の示唆が無く、平板部材の板圧を波型部材の板圧より厚くして強度を確保するという重要な視点での提言は無い。
以上が従来の関連分野技術の一端である。本発明では具体的にモジュールの基本構造および電気絶縁などの不可欠な技術についての発明を提示しようとするものであり、従来に新規性のある発明である。
結晶シリコンを連結して発電部を構成した方式
ガラス基板上に銅、インジューム、ガリューム、セレンなどを蒸着乃至はスパッタリングで搭載させた薄膜セル構造の方式
いずれの方式も優れた発電特性を持つが同時に両方共にガラス(線膨張係数は10.0×10のマイナス6乗/℃)やシリコン結晶(線膨張係数は3.0×10のマイナス6乗/℃)という極めて線膨張係数の小さな極めて硬い平板形状部材で構成される。この材料の発電セルをヒートシンクとしてのモジュールの基板となる金属板上に接合して載せる為には線膨張係数の小さなヒートシンクの材質の選定と、さらにシリコン結晶発電セルの最大寸法を制約することが必要である。
一方モジュールの基板としてその平坦精度と伝熱特性と強度を確保でき、最も線膨張係数の小さな材質は鉄板乃至は鋼板である。その防錆特性を高めるにはステンレス鋼板が選定されるが、ニッケルを含むオーステナイト系ステンレスは線膨張係数が大きい(17.3×10のマイナス6乗/℃)のでマルテンサイト系乃至はフェライト系のステンレス鋼(線膨張係数は10.4×10のマイナス6乗/℃)が最適である。
モジュールの基本構造となる高い強度の構造基板(モジュール基板)が必要と考えられる。この構造基板は発電セル部分を上面に且つ金属製の冷却機構をその下面に十分な強度と信頼性で保持し、錆などに強く、軽量で、且つ低コストで製造できることが必要である。従ってこの基板は平板状の金属材料であり、かつ発電セルとの熱膨張歪の最小化の点で熱膨張係数の小さな鉄板、鋼板ステンレス板が選定され、モジュールの外周枠体と一体で、全体の構造強度を保つ必要がある
(2)平坦度
尚且つ、この強度部材乃至は基板の上面には、破断し易いシリコン結晶の発電セルや平坦なガラス基板を支持する構造となるためにこの構造基板は精度の高い平面であることが必要である。
(3)熱歪緩和
このモジュール基板は発電セル材料と熱的に密着した関係に接合されるから、温度変化によって生じる熱歪みにより生じる応力歪にも対応できることも重要となる。即ち、シリコン結晶やガラスは温度変化に対し線膨張係数が極めて小さな材料である(3.0×10のマイナス6乗/℃)のに対しアルミニウムではその十倍近くの熱歪みによる変形が生じるため、その歪の差を緩和して、尚熱的な接合が維持することはむつかしく、本発明では線膨張係数の小さな鉄板などを適材として提示している。
(4)伝熱性能
発電セルにおいて生じる温熱を取り出す場合には発電セルと冷却機構とをモジュール基板をはさんで、できる限り密着させる事が必要で、全ての部分に於いて、前述した様に温度変化による相対歪を吸収できる構造と材料であることが求められる。 銅、アルミニウム、鉄、ガラス、樹脂の順に熱伝導に優れ、一方樹脂、アルミニウム、銅、鉄、ガラス、シリコン基板の順に温度膨張係数が高い。これらの特性を活かして温熱を効率よく取り出し且つ相互の熱歪みを吸収する構造と材料の利用が求められる。
一方、モジュール基板はモジュールの構造体であるモジュール支持枠との一体化と同時に相互の膨張率の違いを吸収できると同時に50℃を超える高温度のモジュール基板の熱を保つ為、モジュール支持枠から熱的に分離して温熱出力を確保する必要があり、本発明では鉄をベースとしたモジュール基板構造を提示している。
冷却用の媒体は水、不凍液が使われるが、この媒体を発電セルの運転寿命と同等の20年以上の期間にわたり漏れの発生が無く安定して運転させるため、簡略化された構造の金属製の冷却機構とそれを構成する冷却媒体管路の構造が必要である。基本的には溶接や接合が確実な製法と構造で、長期使用に耐える金属材料が望ましい。二枚板の溶接構造などは完全に漏れを防止することが重要であるが本発明ではこの構造を用いたものも提示している。冷却配管の錆びの問題を解決する方法として冷却回路を樹脂製にする方法も有力であるが、樹脂は線膨張係数がアルミより更に大きく(20〜90×10のマイナス6乗/℃)熱伝導率が極めて小さい(0.3W/m℃)という問題があり、採用できない。
(6)発電セル〜冷却配管の接合信頼性
例えば、冷却配管をモジュールの基板に接合する方法はロー付け、接着など多くの方策があるが、配管を基板に単純に接合する方法は基板内の伝熱特性、冷却管周囲の伝熱特性、接合の剥がれ、基板の変形、等という視点で適した方法が見出せない。この部分の接合には本発明では、ホットメルト接合のための下面のカバー材としての機能と基板から冷却配管に効果的に伝熱させる機能を果たし且つ軽量で低コストであり伝熱性能の高いアルミニウム製の薄板でカバーするなどの方法が適している。その形状もまた以下に詳しく述べる様なニーズを満たすものが望まれる。
モジュールの基板を間にサンドイッチ状態に挟んで発電セルと冷却配管及びそのカバー材を伝熱可能な状態で、且つ夫々の材料の熱歪み量の差により剥がれたり材料破損させることが無く、且つ生産性に優れた、且つ製造コストに優位な接合方法による接合が必要である。
モジュールの運転環境は温度範囲:−20℃〜80℃、湿度範囲:10〜100%、
風速:40m/秒を想定している。この環境条件で作動したときのモジュール最高温度は冷却媒体機能が停止したときには125℃程度となる。こんなに高温度になるのは温熱収集装置として上面と下面及び外周の断熱を強化しているためである。
−20℃に近い低温度環境での凍結についても十分な担保策が取られている必要がある。
(8)生産性とコスト
問題となるのは発電セルと冷却配管の接合に関するところである。前述した信頼性を担保するために複雑な製造方法を採用する事はコストアップになるため避けなければならない。モジュールは一軒で多数枚数を使用するから、その製造の生産性は通常の単一機器のそれより格段に洗練化させることが必要である。
以上の機能要求を満たす構造と材料として本発明では全体構造の同時一体化接合について技術を提示している。
以上、(1)〜(8)を満たしたモジュールの開発の成功実現を目指して本発明は研究
検討されてきた技術である。
(A)出力エネルギー目標として電力は太陽電池単独と同等、温熱も太陽熱温水器単独出力から電力出力を差し引いた値以上の性能レベルを達成する。
(B)運転寿命として20年、サービスメンテナンスを前提として30年を達成する。
(C)モジュールコストとして単一機能の太陽電池をベースに20〜30%コストアッ
プ以下を目標とする。
以上の目標課題の設定値は、これを実現する事により出力エネルギー価格半減という最大の目標を達成できると試算されるからである。
従って家庭用コジェネレイション装置の場合、単独の太陽光発電セル方式(約30平方メートル)に比べて必要な全受光面積は10〜15平方メートル程度に小型化しても実用的な効果を満たすことができる。一方、従来の太陽熱温水器の受光面積が4〜6平方メートルであるのに較べ大面積であるが、電力出力があること、さらには得られる温熱量が多く、温水給湯ばかりでなく暖房や衣類浴室乾燥などの熱需要にも対応可能になるなど、その出力エネルギーの利用価値が高いことが優位である。
本発明ではスーパーストレート型の結晶シリコン発電セルとCIGS薄膜型発電セルを対象にした技術を提示している。何れの場合も結晶シリコン乃至はガラス板がヒートシンク(モジュール基板)と近接して接合される構造となる。
発電セル組み立ては結晶シリコンの場合は多数枚数の発電セルを銅のリボン電線(インターコネクター)などで連結し回路を形成して発電出力させるし、CIGS型ではガラス基板上に発電セルを形成しているが、結晶シリコンと異なり大きな面積のものが出来てきている。従って電気と温熱をハイブリッドに出力させるハイブリッド式太陽光モジュールの構造に若干の違いが生じるが、基本的な構造と材料、加工技術は共通なものがあり、本発明ではその視点から練り上げた技術である。
その材質は線膨張係数が発電セルであるシリコン(この膨張係数はゼロに近い程度に小さい)に近い材質であることが絶対条件となる。最も適した材質は鉄板やニッケル成分の無いステンレス鋼板で、鉄板の場合には防錆の点から表面塗装やメッキ加工したもの、樹脂コートしたものなどを対象としている。その肉厚は強度、重量、コストなどを勘案して0.5mm〜1.2mm程度が選定される。その表面処理は受光した光の吸収特性向上、電気絶縁性、錆、剥離強度などの長期信頼性を勘案して最適な処理方法を選択する。
モジュール基板と冷却機構としての冷却配管との接合にも熱応答性の接合用樹脂を用いる。前述した透明のEVAを用いても良いし、必ずしも透明では無い熱応答性の樹脂フィルムを用いても良い。
しかして、全体で七層の構造物としての太陽電池コアを最も平易な方法により製作することができるわけである。
七層の伝熱出力部はその構造上、製造上の特徴から次の様な特長を有する。
1、七層という多層で一体の立体構造のためその強度が高い。
2、全接合面が密着するため伝熱特性に優れており、温熱出力を確保できる。
3、一層毎に接合用樹脂層が介在するので相互の熱歪みを緩和する機能がある。
4、モジュール基板には熱歪み緩衝に最適な金属材料を選択使用できる。
5、全面積を真空状態で接合しているから剥がれに対し、信頼性が高い。
6、生産性が高く、製造設備投資が少なくて済む。
7、中間層の部材は完全に外界と隔離できるから、錆、劣化などを防止する事ができる。
8、溶接や螺子占めなど其の他多くの接合加工が無く、製造不良のリスクも小さく、製品の長期使用の信頼性を高める事が容易である。
9、熱処理接合による組み立てであり、接合対象となる部材の構造、材料、形状などを自由に選択可能であり、最適な組み合わせが可能である。
10、以上の結果コスト的に優位である。
という、商品化する上での極めて優位な成果を得ることができる。
この部分が剥がれると、発電セルの冷却不能になり、ひいては発電セル不良や前述したEVA接合樹脂の劣化、剥離に結びつき、致命的な不良となる。三つの金属部材は異なる材料では熱歪による剥離ストレスが、さらには製造時の内部歪による反り変形による剥離ストレスが問題である。さらにそれらストレスによるモジュール基板に反りや変形が生じ、この結果発電セルやセル間を結ぶ電気回路部材の劣化、破断などを引き起こすからである。
モジュール基板の平坦度や強度を維持し、上面に接合されたシリコンの発電セル(約3.0×10のマイナス6乗/℃)や発電セル基板としてのガラス平板(約10.0×10のマイナス6乗/℃)の線膨張係数に最も近く、金属としては小さな線膨張係数(約10〜12×10のマイナス6乗/℃)の鉄板やステンレスの平板を用いる。鉄板は防錆の点で亜鉛メッキ乃至は亜鉛リッチアルミメッキした平板を用いる。ステンレスは線膨張係数が大きくなるニッケル成分を含むオーステナイト系では無く、フェライト系乃至はマルテンサイト系を用いることにより上記の線膨張係数が実現できる。
一方冷却機構としては、冷却媒体の漏洩を防止する上で最も信頼性の高い銅管を用い、これを蛇行状に曲げ成型してモジュール基板の下面に接合する。この銅管内を連通する冷却媒体としての水や不凍液により発電セルの発熱熱量を冷却し、その結果発電セルの発電効率を向上させてホットスポットなどの焼付け不良を防止する。発電セルからなる発電部とモジュール基盤と銅管からなる冷却機構の間にEVAなどのホットメルト樹脂フィルムを挟み、真空状態で加熱して接合する。このとき最も重要なことはこの接合工程を同時に行うことである。ホットメルト接合には融解、架橋、冷却固着というプロセスが一回のみ許されるから、同等かほぼ同等の特性を持つホットメルト樹脂を用いて同時に一度に接合しなければ信頼性の高い接合を実現できない。
請求項4はガラス板ベースの発電セルの場合、即ちCIGSなどの化合物系太陽電池ではガラスベースの形状寸法は長方形のものが多い。銅管の冷却配管は接合の時に伸び切り、冷却されて短縮する。このときガラスベースの長方形の方向と銅管の軸方向を一致させることは次の様な効果が期待できる。モジュール基板の鉄板とガラスが接合されて高い強度が実現できるため、銅管の収縮に耐えてモジュールの基板の平坦度を維持し易い。また銅管にそって発電セルの温度は均一化されるのでモジュール全体の発電特性が向上する。
モジュール基板と冷却配管の間の接合をEVAなどのホットメルト樹脂シートを用いて
ラミネーション炉中で行う場合、モジュール基板と冷却配管を事前に機械的に固定することを提示している。図4に示す様に小さな金属バンドで冷却配管を跨いだ形でモジュール基板にスポット溶接して固定しておけば、ラミネーション工程の作業は簡略化でき、且つ相互の位置決めも正確になる。さらに機械的な固定によりホットメルト接合の剥がれ不良も防止できる。
1、太陽光を利用して電力と温熱を同時に同一のセルから獲得する機能(コジェネレイション)を持った太陽光コジェネレイションモジュールを実用化するための基本方式、構造に関し、設計、製造に必要な構造、材料其の他の基本的な技術を明確化し製品化を可能にした。
2、太陽光発電セルについて現在主流である二つの方式についてそれを実現した。
3、本発明に提示した技術により高性能で実用的な、高い信頼性で長寿命、生産性の高いコスト対応力のある太陽光コジェネレイションモジュールの実現ができる。
4、このモジュールを組み込んだ分散型エネルギー利用システムを実現する見通しを立てることが可能であり、このシステム実現のための検討を進める事ができ、このシステムを実現して普及させ、エネルギー価格に優れた、CO2発生の少ない地球環境保護に貢献させる事が可能になると期待される。
図1は太陽光コジェネレイションモジュールの結晶シリコンセルを用いた本発明事例の断面構造を示す。太陽光は上面から順次、上面透明カバー7、約30mmの空気層である上部断熱層、フッ素系ガスバリヤーフィルムを用いた発電セルカバーフィルム9、熱応答性の接合樹脂EVAである接合用樹脂16を透過して発電セル1に照射する。発電セルは結晶シリコンの薄板状のもので、その個々の発電セルで発電した電力は発電セルインターコネクタ線5を通じて発電セル組み立て全体を流れて電圧を高め、外部に出力される。
一方、発電セルに於いて発電した残りの太陽光エネルギーの大半は温熱に変わり、発電セルを加熱し、その熱は接合用樹脂16、モジュール基板3、接合用樹脂16を通して銅管製の冷却配管10と薄いアルミ板である冷却管路カバー14に伝わり、最終的には冷却媒体流路を通る冷却媒体11である水乃至は不凍液を加熱する。
モジュール基板はメッキ鉄板を用いてシリコン発電セルへの熱応力ストレスを減らしている。一方インターコネクターで連結される部分の発電セル間隙間寸法13は4mmに設定されており他の発電セル側面のセル間隙間寸法2.5mmより広く設定してある。この結果温度変化によるシリコン発電セルとモジュール基板の間の寸法歪をこのセル間隙間で吸収している。以上により発電セル回路全体に生じる熱応力ストレスを最小化しており、インタコネクタリボンに生じる歪とそれによる断線を防止している。
同時に、モジュール基板3は全ての箇所で発電セル1と近接しているから、発電セル回路の局部の温度上昇により生じるホットスポット現象(焼き切れ)の不良の発生を大幅に減少できるという効果を期待できる。
宛がわれて相互の柔軟な嵌めあい構造を形成しており、同時に電熱出力部の温熱がアルミ支持枠に伝わるのを妨げている。
最初に置かれるのがアルミスペーサー組み立て15であり、床面内から加熱されてその熱を順次上部に伝える。従ってアルミスペーサー組み立て15は冷却配管10を押し潰すことの無いように保護するスペーサーの役割と同時にホットメルト樹脂を加熱して溶融させて接合させるための熱を効率よく伝える役割を担っている。全ての積層された部材は下部の床面32と上部の真空炉カバーシートによる圧接力により押し圧されて相互に密着状態となり、溶融したホットメルト樹脂16が隙間無い様に充填され積層部材は相互に結合される。このとき、冷却配管10と冷却管路カバー14の間に挿入されたEVAホットメルト樹脂シートが溶融し、冷却配管10とモジュール基板3の間に隙間無く流れ込みそれらを相互に接合させる。
この管路カバーは0.2mmの板厚のアルミ板で、冷却管の軸方向のその長さ寸法Lは400mmである。管路カバーは図の分割ラインに示されている様に12個に分割されそれらをアルミ箔接着テープ24で仮接合してあたかも分割されていない一枚のカバーの様にまとめている。このカバーには冷却配管カバーの管路部分に冷却配管10がはめ込まれることができるように形成されている。アルミの線膨張係数が大きい(23.6×10のマイナス6乗/℃)ため平旦部長さLを400mmとしモジュール基板との間の熱膨張から来る寸法歪を小さくし、EVA接合の剥離や破断を生じない様にしている。
冷却配管は蛇行状に成型されており、そのパイプ間ピッチは60mmである。従って、熱伝導性の高いアルミの管路カバーはそのピッチ間の発電セルの冷却に大きく寄与している。
2 薄膜発電セル組み立て
3 モジュール基板
4 薄膜発電セル
5 発電セルインターコネクタ
6 端面カバー
7 上面透明カバー
8 透明電極
9 発電セルカバーフィルム
10 冷却配管
11 冷却媒体
12 発電部
13 発電セル間隙間寸法
14 冷却管路カバー
15 アルミスペーサー組み立て
16 ホットメルト樹脂
17 冷却機構
18 発電セルガラスベース
20 モジュール支持枠
21 下部断熱層
22 冷却媒体通路板
23 金属バンド
24 アルミ箔接着テープ
25 溶接接合部
31 真空炉カバーシート
32 装置炉中床面
Claims (8)
- 上面透明板、その下に電熱出力部、それらの外周にモジュール支持枠を配置して全体を構成し、平板状の金属板のモジュール基板と、その上面に接合した平板状の発電部と、前記モジュール基板の下面に接合した冷却機構により前記電熱出力部を構成し、太陽光を前記上面透明板の上方向から受けて電力と温熱を出力する太陽光コジェネレイションモジュールに於いて、
前記モジュール基板として鉄板乃至はメッキ鉄板乃至はフェライト系乃至はマルテンサイト系ステンレス鋼板を用い、前記発電部としてインタコネクタ連結方向の長さが200mm以下の寸法の複数の平板状の結晶シリコン発電セルのセル間をインタコネクタで連結して構成した発電回路組み立て、乃至は平板状のガラス板ベースの発電セルを用い、尚且つ前記冷却機構として銅管を平面上で曲げ成型した冷却配管を用い、それらと前記モジュール基板との間に夫々ホットメルト樹脂シートを挟んで真空炉中に設置して同時に加熱してホットメルト樹脂を介して相互に密着させて全体を平板状に一体化した電熱出力部を用いたことを特徴とする太陽光コジェネレイションモジュール。 - 上面透明板、その下に電熱出力部、それらの外周にモジュール支持枠を配置して全体を構成し、平板状の金属板のモジュール基板と、その上面に接合した平板状の発電部と、前記モジュール基板の下面に接合した冷却機構により前記電熱出力部を構成し、太陽光を前記上面透明板の上方向から受けて電力と温熱を出力する太陽光コジェネレイションモジュールに於いて、
前記モジュール基板として鉄板乃至はメッキ鉄板乃至はフェライト系乃至はマルテンサイト系ステンレス鋼板を用い、前記発電部としてインタコネクタ連結方向の長さが200mm以下の寸法の複数の平板状の結晶シリコン発電セルのセル間をインタコネクタで連結して構成した発電回路組み立て乃至は平板状のガラス板ベースの発電セルを用い、尚且つ前記冷却機構として銅管を平面上で曲げ成型した冷却配管、更にその下に前記冷却配管と前記モジュール基板で構成する形状に合わせて成型された0.5mm以下の板厚で長辺が500mmより小さな複数のアルミ薄板からなる冷却配管カバーを設置し、前記モジュール基板と前記発電部及び前記冷却配管カバーとの間に夫々ホットメルト樹脂シートを挟んで真空炉中に設置して同時に加熱してホットメルト樹脂を介して相互に密着させて全体を平板状に一体化した電熱出力部を用いたことを特徴とする太陽光コジェネレイションモジュール。 - 複数の結晶シリコン発電セルの発電セル間乃至は薄膜セルのベースとなる複数のガラス板間の隙間寸法をインターコネクト接続されるところをそうでないところより長くしたことを特徴とする請求項1、2の何れか一項に記載の太陽光コジェネレイションモジュール。
- 長方形のガラス板ベースの発電セルにおけるガラス板の長辺を前記冷却配管の軸長方向に合わせたことを特徴とする請求項1、2、3の何れか一項に記載の太陽光コジェネレイションモジュール。
- 前記銅管に代えて、前記冷却配管は予め前記モジュール基板に固定金具で機械的に固定した後に前記電熱出力部を真空炉中でホットメルト樹脂接合させて全体を平板状に一体化したことを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の太陽光コジェネレイションモジュール。
- 前記モジュール基板の50%以下の板厚のフェライト系乃至はマルテンサイト系のステンレス平板を冷却媒体流路を構成するために成型し、フェライト系乃至はマルテンサイト系のステンレス製の前記モジュール基板の下面に溶接接合して冷却機構を構成させたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5の何れか一項に記載の太陽光コジェネレイションモジュール
- 前記ホットメルト樹脂接合を行うときに、真空ラミネーション装置の内側の床面に、冷却配管カバーの凹凸の凹部形状にあわせた形状でその凸凹の深さに合わせて板圧を定めたアルミ板製の複数のスペーサーを薄いアルミ平板上に適宜位置に固定したアルミスペーサー組たてを設置し、その上に最初に順次冷却配管カバーをそして最後に発電回路組み立てを順次積層し、夫々の間にホットメルト樹脂シート乃至はフィルムを挟み、炉中を真空で高温度状態にしつつ炉の床面と上部膜により前記電熱出力部の全体を圧接させホットメルト樹脂により同時に相互に接合させたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5に記載の太陽光コジェネレイションモジュールの製造方法。
- 上面透明カバーと冷却配管カバーにサンドイッチされた前記電熱出力部の外周部において、前記上部透明カバーと冷却配管カバーの端面を覆いながら端面近傍をカバーする端面カバーにより端部を封止したことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6に記載の太陽光コジェネレイションモジュール。
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