JP2012239526A - 人造皮革靴 - Google Patents

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Abstract

【課題】人造皮革靴について、履き心地が良好であることに加え使用時の快適さに優れたものとする。
【解決手段】厚さ方向に貫通する通気孔111,131が所定密度で設けられた人造皮革を用いてアッパー10aを形成してなる人造皮革靴1であって、アッパー10aが、人造皮革によるアウター部材11と人造皮革によるインナー部材13との間に所定の通気性及び厚さ方向の所定の弾性変形能を備えた布による中間部材12を介装した3層構造からなり、アウター部材11及びインナー部材13が中間部材12に対し少なくとも靴の補強箇所を除く部分で接着剤50による点接着にて接着・固定されて一体化していることを特徴とするものとした。
【選択図】図2

Description

本発明は、人造皮革靴に関し、殊に、通気孔のある人造皮革を積層してアッパーを形成した人造皮革靴に関する。
人造皮革には、布地に合成樹脂を塗布してなる合成皮革とマイクロファイバーの布地に合成樹脂を含浸してなる人工皮革とがあるが、いずれも所定の加工を表面に施すことによりスエード調としたり滑らかな銀面としたりして、天然皮革のような外観・風合いを備えたものが広く普及している。
このような人造皮革では、実開平5−93210号公報、特開平11−107174号公報、特開2010―248644号公報に記載されているように、種々の手段を用いて厚さ方向に貫通した通気孔を設けることにより、内部の蒸れが問題となりやすい人造皮革靴のアッパーに透湿性・通気性を付与して、使用時の快適さを確保しようとするのが一般的である。
また、前述の実開平5−93210号公報にも記載されているように、人造皮革靴において天然皮革靴に近い履き心地と高級感を実現する目的で、アッパーの人造皮革の内側に人造皮革のインナー部材を重ねて設けたものが普及している。この場合、人造皮革の通気孔を接着剤で塞がないように両部材を点接着にて固定することも近年行われている。
しかし、いかに通気孔を有する人造皮革を用いた場合であっても、その透湿性・通気性による使用時の快適さは天然皮革靴に及ばないのが通常である。また、履き心地と見た目の高級感を考慮してアッパーの人造皮革の内側に人造皮革のインナー部材を重ねて設ける場合には、それが通気孔を有したものであっても靴の透湿性・通気性がさらに低下するため、使用時の快適さを確保することが一層困難となってしまう。
実開平5−93210号公報 特開平11−107174号公報 特開2010―248644号公報
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、人造皮革靴について、履き心地が良好であることに加え使用時の快適さに優れたものとすることを課題とする。
そこで、本発明は、厚さ方向に貫通する通気孔が所定密度で設けられた人造皮革を用いてアッパーを形成してなる人造皮革靴において、そのアッパーが、人造皮革によるアウター部材と人造皮革によるインナー部材との間に所定の通気性及び厚さ方向の所定の弾性変形能を備えた布による中間部材を介装した3層構造からなり、そのアウター部材及びインナー部材が中間部材に対し少なくとも靴の補強箇所を除く部分で接着剤による点接着にて接着・固定されて一体化している、ことを特徴とするものとした。
このように、通気孔のある2枚の人造皮革の間に布材を介装した3層構造のアッパーとしたことで、適度な硬さと触感を実現して天然皮革靴に近い履き心地を実現しやすいものとなる。これに加え、つま先や踵等の靴の補強箇所を除く部分で2枚の人造皮革と布材の間の接着を点接着としたことで、接着剤で通気孔の多くが塞がるのを回避できるとともに、歩行に伴うアッパーの変形動作により非接着部分で2枚の人造皮革の間隔が変動するため、通気孔を介し空気を出し入れするポンプ機能が顕著に発揮されて靴内部が蒸れにくくなり、極めて快適性に優れた人造皮革靴となる。
また、この場合、そのアッパーは、略同サイズの点状に塗布した前記接着剤同士が互いに少なくとも1.5cm以上の間隔で配置されて前記部材同士を接着してなる領域にてアッパー全面積の50%以上が占められていることを特徴としたものとすれば、非接着部分で積層した人造皮革における間隔の変動量が大きく確保され、優れたポンプ機能を発揮しやすいものとなる。
さらに、上述した人造皮革靴において、その点接着の密度は、アッパーの各部分で必要とされる接着強度又は/及び硬さに応じて設定され、高い接着強度又は/及び硬さが求められる部分はそうでない部分よりも密とされている、ことを特徴としたものとすれば、高い透湿性・通気性を確保しつつアッパーの各部分に応じた適度な強度・硬さを確保可能なものとなる。
さらにまた、上述した人造皮革靴において、その2枚の人造皮革間に介装された布は、含気性及び厚さ方向20%以上の弾性変形能を備えた綿布であって2枚の人造皮革に挟まれて3層構造を構成することにより、通常時に厚さ0.4〜1.2mmの中間層を形成し、この中間層が歩行に伴うアッパーの変形動作により弾性的に厚さを変動させることを特徴としたものとすれば、素材として接着性に優れながら適度な通気性・変形能により優れたポンプ機能を発揮しやすいものとなる。
加えて、上述した人造皮革靴において、そのアウター部材及びインナー部材は、アッパーにした場合にその通気孔が靴の内側から外側に向かう方が外側から内側に向かうよりも空気が流れやすい構造とされており、空気を含む中間部材を挟んだ入口側と出口側で通気孔が逆止弁的に作用することによりポンプ機能を発揮する、ことを特徴としたものとすれば、例えば内側開口部から外側開口部に向かって内径が縮小するテーパ状の通気孔とすること等により、内部の湿った空気を外側に効率的に排出しやすいものとなる。
通気孔を有する2枚の人造皮革の間に布を介装して3層構造のアッパーとし、その布と人造皮革との固定を点接着にした本発明によると、履き心地が良好であることに加え使用時の快適さに優れた人造皮革靴とすることができる。
本発明における実施の形態である紳士用の人造皮革靴の一部分を切断して示した斜視図。 図1の円形で示す部分を拡大して示した縦断面図。 (A)は図1の人造皮革靴においてアッパーのアウター部材の通気孔の配置状態を示す拡大した平面図、(B)はアッパーの中間部材上面における接着剤の配置状態を示す拡大した平面図。 図1の人造皮革靴のアッパーの機能を説明するための拡大した縦断面図であって、(A)は通常の状態、(B)は歩行により変形した状態、(C)は(B)から(A)に戻った状態。 図1の人造皮革靴のアッパーの応用例を示す拡大した縦断面図。 本発明を婦人用に適用した場合を示す斜視図。
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、本実施の形態である人造皮革靴1の甲側の一部分を切断して示している。この人造皮革靴1は、紳士用であってソールを除く部分(アッパー)が人造皮革製であり、図1の円形部分を拡大した図2に示すように、アッパー10は、人造皮革のアウター部材11と人造皮革のインナー部材13の間に布による中間部材12を介装して3層構造とした点を特徴としている。
靴の外側部分となるアウター部材11を構成する人造皮革は、不織布層11a、その上にポリウレタン等の合成樹脂を塗布した合成樹脂層11b、その上面を銀面処理した銀面層11cからなる一般に合成皮革と呼ばれる素材であり、その厚さは不織布層11aを0.6〜1.6mm、合成樹脂層11bと銀面層11cを合わせた部分を0.2〜0.5mmとすることが好ましい。
靴の内側部分となるインナー部材13も人造皮革で構成されており、足に触れる内側の感触も天然皮革靴に近いものとされて履き心地に優れるとともに、見た目の高級感を与えるようになっている。また、インナー部材13はアウター部材11と同様の構造を有しているが、その厚さはアウター部材11ほど厚くする必要はなく、不織布層13aを0.6〜0.8mm、合成樹脂層13bと銀面層13cとを合わせた部分を0.1〜0.3mmとすることが好ましい。尚、このインナー部材13はアウター部材11とは逆向きに配置され、その銀面層13cは靴の内側を向いている。
そして、アウター部材11、インナー部材13ともに厚さ方向に貫通する通気孔111,131が各々所定密度で設けられており、その孔径(最も小さい部分:通常は銀面層の開口部)は、外観及び透湿性・通気性の確保と外部からの水の侵入防止のバランスの観点から0.1〜0.3mmとすることが好ましい。また、通気孔111,131の配置密度は、少なくとも図3(A)に示す靴の補強箇所であるアッパー10b,10c(波線部分)を除いた部分のアッパー10aで100〜300個/cmとし、この密度でアッパー10の面積の50%以上を占めたものとすることが、使用時の快適性確保の観点から好ましい。
尚、アッパー10aを構成する人造皮革が甲側と側面側とで別部材からなる場合は、高い透湿性・通気性を確保する観点でその甲側を300個/cmとし、防水性を確保する観点でその側面側を100個/cmとするなど、アッパー10において部分毎に求められる機能に応じて通気孔111,131の配置密度に差を設けても良い。
一方、アウター部材11とインナー部材13の間に介装される布による中間部材12は、優れた通気性・含気性・接着性の観点から綿布が好ましく、厚さ方向の弾性変形能が20%以上であるものが好適である。また、その厚さは介装された状態で0.6〜0.9mmとなるものがポンプ機能の確保の観点から好ましい。そして、この中間部材12とアウター部材11、インナー部材13との接着が、隣接する接着剤同士の間隔を比較的大きく取った点接着としている点も本発明の特徴部分となっている。
この場合、例えばポリウレタン等の合成樹脂系接着剤を直径(長径)0.5〜3.0mmの点状、好ましくは1.0〜2.0mmのサイズにて、少なくとも靴の補強箇所であるアッパー10b,10cを除いた部分で、図3(B)に示すように接着剤50同士が少なくとも互いに1.5cm以上の間隔となるように、好ましくは10〜16点/100cmにて中間部材12の表裏にプリント手段等を用いて配置し、アウター部材11とインナー部材13の間に介装した状態で接着・固定することが推奨される。
また、この接着剤50の配置密度は、アッパー10において部分毎に求められる強度・硬さに応じて変動させるようにしても良い。即ち、靴の補強箇所であるつま先側のアッパー10b、踵側のアッパー10cは接着剤50におけるドットの隙間を完全に詰めた全塗りとすれば、その部分の変形能が減少して強度・硬さが適度なものとなり、これ以外の部分であるアッパー10aにおいて接着剤50の間隔を少なくとも1.5cm以上とすることで、優れたポンプ機能を発揮しやすいものとなる。尚、このアッパー10aにおいても、部分的に接着剤50の濃度を甲側よりも側面側を密にすることで、アッパー10における部分毎の強度・硬さのバランスを最適にすることができる。
図4を用いて、図1の人造皮革靴1におけるアッパー10の補強箇所のアッパー10b,10cを除く部分であるアッパー10aの機能を説明すると、歩行していない静的な状態では、図4(A)に示すように、アウター部材11、インナー部材13の通気孔111,131及び通気性のある中間部材12を介して、靴内外で穏やかな空気の出入りがあるものの、靴内の湿った空気の排出は充分ではない。
歩行を開始すると、図4(B)に示すように歩行動作に伴ってアッパー10aは大きく変形・湾曲する。この湾曲の際に、3層構造のアウター部材11、インナー部材13と中間部材12とが、接着剤50による接着箇所を比較的大きな間隔の点接着で固定されている関係で、接着されていない部分が容易に弾性変形しながら中間部材12の布を厚さ方向に圧縮し、アッパー10aの湾曲により靴の内側が陽圧になることも相俟って、この中間層に溜められていた空気の大部分はアウター部材11の通気孔111を通って一気に外部に排出される。
そして、歩行動作に伴いアッパー10aの湾曲が元に戻ると、図4(C)に示すように中間部材12の厚さも弾性的に復元するため、今度は主としてアウター部材11の通気孔111を介し外気が吸い込まれて中間層に導入される。これにより、中間層に含まれていた空気の多くが入れ替わったことになるが、そのアッパー10aの湾曲が戻る動作に伴い靴の内側が陰圧になることも相俟って、中間層に入った外気の一部はインナー部材13の通気孔131を介して靴内部に流入する。
このように、歩行動作に伴うアッパー10aの変形エネルギーにより、アッパー10a自身がポンプとして機能するため靴内外で能動的に空気を入れ換える結果となり、従来の人造皮革靴には見られない優れた透湿性・通気性を発揮する。これは、アッパー10a自身が呼吸を行っているのと同等であり、その快適性は天然皮革靴に近いものである。
図5は、図2のアッパー10aの応用例であって、靴内部から外部への空気流の割合を特に大きくして靴内部の湿った空気を積極的に外部に排出する手段を示している。このアッパー20aは、通気孔212,233を有した人造皮革によるアウター部材21、インナー部材23の間に、布による中間部材22を点接着で固定して3層構造とした点においては、アッパー10aと共通している。
しかし、その通気孔212,233は、靴の内側から外側に向かって内径を縮小するようにテーパ状に形成されており、靴の内側から外側に向かう方が外側から内側に向かうよりも空気の流れやすい構造とされているため、中間部材22を挟んだ入口側と出口側とでこれらが逆止弁的に作用し、内外方向の流れを特に大きくしたポンプ機能を発揮する点を特徴としている。
一方、前述した実施の形態のアッパー10aであっても、図4(B)に示したように歩行動作で人造皮革の外側を縮小するように湾曲することで、アウター部材11とインナー部材13は図中上側が縮小し下側を拡大するように変形することから、その通気孔111,131も図中上側に行くにしたがって内径が僅かに縮小したテーパ状に変形するため、中間層の空気が靴の内側から外側に向かいやすい状態となっている。
これに対し、この応用例では通気孔212,233を予めテーパ状に形成しておき、その作用をさらに顕著に発揮できるようにしたものである。尚、このようなテーパ状の通気孔212,233は、大径の開口部を設ける面からニードルを穿設すること等により設けることができる。
図4は、本発明を婦人用に適用した場合の人造皮革靴3を示している。この場合も、上述した人造皮革靴1と同様であり、アッパー30における靴の補強箇所であるつま先側のアッパー30bとかかと側の補強箇所であるアッパー30cを除く部分であるアッパー30aは、アウター部材及びインナー部材と中間部材との接着が点接着となっており、上述のものと同様の機能を発揮する。
尚、上述の説明においては、人造皮革靴に用いる人造皮革が合成皮革である場合を説明しており、本発明により比較的安価な合成皮革を用いた場合であっても、天然皮革靴に劣らない履き心地と使用時の快適性を実現できることを説明したが、その人造皮革が人工皮革であっても、同様の機能を発揮するとともに同等の効果が期待できるものである。
以上述べたように、人造皮革靴について、本発明により、履き心地が良好であることに加え使用時の快適さに優れたものとなった。
1,3 人造皮革靴、10,10a,10b,10c,20a,30,30a,30b,30c アッパー、11,21 アウター部材、12,22 中間部材、13,23 インナー部材、50 接着剤、111,131,212,233 通気孔

Claims (5)

  1. 厚さ方向に貫通する通気孔が所定密度で設けられた人造皮革を用いてアッパーを形成してなる人造皮革靴において、前記アッパーは、前記人造皮革によるアウター部材と前記人造皮革によるインナー部材との間に所定の通気性及び厚さ方向の所定の弾性変形能を備えた布による中間部材を介装した3層構造からなり、前記アウター部材及び前記インナー部材が前記中間部材に対し少なくとも靴の補強箇所を除く部分で接着剤による点接着にて接着・固定されて一体化している、ことを特徴とする人造皮革靴。
  2. 前記アッパーは、略同サイズの点状に塗布した前記接着剤同士が互いに少なくとも1.5cm以上の間隔で配置されて前記部材同士を接着してなる領域にて全面積の50%以上が占められている、ことを特徴とする請求項1に記載した人造皮革靴。
  3. 前記点接着の密度は、前記アッパーの各部分で必要とされる接着強度又は/及び硬さに応じて設定され、高い接着強度又は/及び硬さが求められる部分はそうでない部分よりも密とされている、ことを特徴とする請求項1または2に記載した人造皮革靴。
  4. 前記布は、含気性及び厚さ方向20%以上の弾性変形能を備えた綿布であって前記2枚の人造皮革に挟まれて3層構造を構成することにより、通常時に厚さ0.4〜1.2mmの中間層を形成し、該中間層が歩行に伴う前記アッパーの変形動作により弾性的に厚さを変動させる、ことを特徴とする請求項1,2または3に記載した人造皮革靴。
  5. 前記アウター部材及び前記インナー部材は、前記アッパーにした場合に前記通気孔が靴の内側から外側に向かう方が外側から内側に向かうよりも空気が流れやすい構造とされており、空気を含む前記中間部材を挟んだ入口側と出口側で前記通気孔が逆止弁的に作用することによりポンプ機能を発揮する、ことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載した人造皮革靴。
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