JP2012236142A - 大気汚染物質除去用のゼオライト膜、および同膜を用いる排ガスの浄化方法 - Google Patents

大気汚染物質除去用のゼオライト膜、および同膜を用いる排ガスの浄化方法 Download PDF

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【課題】吸着剤や吸収剤を用いずに排ガス中に含まれる大気汚染物質を効率的に除去できる排ガスの浄化方法を提供する。
【解決手段】排ガス中に含まれる窒素酸化物、硫黄酸化物、硫化水素および炭化水素類のうち少なくとも一つの大気汚染物質に対して優先的な吸着力を利用して分離する機能を有するゼオライト膜2を用いて大気汚染物質を排ガスから除去することを特徴とする排ガスの浄化方法である。好適な実施形態では、ゼオライト膜を用いた大気汚染物質の除去の後に、該大気汚染物質を触媒を用いた反応などの手段4で無害化する。ゼオライト膜を用いた大気汚染物質の除去の後かつ該大気汚染物質の無害化の前に該汚染物質を含むガスを加熱処理することが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、工場やゴミ焼却場などから排出される燃焼排ガスの無害化処理において、排ガス中に含まれる大気汚染物質をゼオライト膜によって除去し、排ガスを浄化する方法に関する。
ゼオライト(zeolite)は、微細で均一な径の細孔が形成された網目状の結晶構造を有する珪酸塩の一種であり、一般式:WmZnOn・sHO(W:ナトリウム、カリウム、カルシウム等、Z:珪素、アルミニウム等、sは種々の値をとる)で示される種々の化学組成が存在するとともに、結晶構造についても細孔形状の異なる多くの種類(型)が存在することが知られている。例えば、MFI型ゼオライトは、結晶中の酸素10員環によって0.5nm程度の細孔が形成されたゼオライトであり、一般には、自動車排ガス中の窒素酸化物(NO)、炭化水素(HC)等の有害物を吸着させるための吸着材、或いは分解する触媒等の用途において利用されている。特許文献1は少なくとも約10のシリカ対アルミナの比、及び少なくとも約7オングストロームの平均的動的細孔径を有する細孔が三次元構造で連結しているゼオライトに、触媒活性金属として鉄及び銅が少なくとも一種以上が担持された触媒を用いたアンモニアによる窒素酸化物の還元方法を開示されている。
また、ゼオライト結晶は、結晶中に分子サイズ程度の細孔を有し、ゼオライトの分子の大ささや形状、又は吸着により、任意の分子を選択的に通過させる分子ふるいの性質がある。ゼオライトはこの分子ふるいの性質を利用してガス分離膜や、逆透気化分離、逆浸透分離、ガスセンサー等の分野に応用されている。ガス分離用のゼオライト膜の製造方法としては、特許文献2がある。
ところで、各種化石燃料の燃焼、またはゴミ焼却により発生排出される大気汚染物質である二酸化硫黄、窒素酸化物及び、炭化水素類は大気汚染や酸性雨等の環境汚染の原因となるため、排煙中からの除去は必須とされている。
従来技術では、燃焼等で発生する例えば窒素酸化物は、脱硝触媒を利用した還元法による無害化、活性炭による吸着法、吸収酸化法があり、また硫黄酸化物では、石炭スラリー、水酸化マグネシウムスラリー、アルカリ溶液などによる吸収法、脱硫法、活性炭吸着法があり、さらにダイオキシン類では、ろ過(バグフィルター)、吸着、触媒分解がある。
特許文献3には、従来のごみ焼却施設の排ガス処理装置の代表的な例が図7で示すように記載されている。すなわち、図7において、大気汚染物質除去の一例を概略的に示す。ごみ焼却炉(11)で発生する排ガスは、排熱回収ボイラ(12)、及び低温熱回収器の一種であるエコノマイザ(13)で排熱を回収された後、減温塔(14)、集塵装置(15)の一種であるバグフィルタ、再加熱器(16)、触媒脱硝装置(17)、誘引通風機(18)を通じて煙突(19)から放出される。減温塔(14)は、集塵装置(15)の濾布材質等の耐熱温度(例えば250℃以下)まで排ガスの温度を下げる。また、触媒脱硝装置7内にアンモニアガスを送るため、アンモニア注入装置(20)が設置されている。アンモニア注入装置は、図示しないが、アンモニア水貯留槽、アンモニア気化装置等を備えている。なお、触媒脱硝装置(17)の触媒は、ダスト、硫黄酸化物(SOx)、アルカリ金属の堆積によって劣化するため、触媒脱硝装置(17)は、集塵装置(15)の下流側に設置される。再加熱器(16)は、触媒反応の生じやすい温度に燃焼排ガスの温度を高める。
:特開平2−293021号公報 :特開2009−11980号公報 :特開2010−99603号公報
しかしながら、前記の各種化石燃料の燃焼、またはゴミ焼却により発生し排出される大気汚染物質処理システムの従来技術では、吸着や吸収法においては、汚染物質が吸着・吸収された後の吸着・吸収剤は取替え、または再生の必要がある。取替えとなれば、その吸着・吸収剤のランニングコストが当然大きくかさむことになる。そのため、吸着や吸収法では吸着・吸収剤を再生させるのが通常であるが、吸着・吸収剤を再生させる場合には、吸着・吸収剤に吸着している物質を除去するために熱エネルギー等が必要となる。
また、吸着の場合は、吸着工程を担う塔と再生工程を担う塔が存在し、それらをバッチで操作して切り替えることで、マクロ的に連続処理する形となっている。この時の再生工程では、吸着剤からの脱離用ガスとして窒素や空気が利用される、そのガスを加熱(暖気)して塔へ投入し、吸着剤の再生を図る。また脱離ガスを投入するため、折角汚染物質を分離しても、その濃縮には自ずと限界があり、せいぜい5倍程度の濃縮が限界である。
さらに、例えば硫黄酸化物の処理において、石灰スラリーによる吸収法があるが、硫黄酸化物が吸収されたらその石灰スラリーは吸収剤として再利用はしないため、常にその石灰スラリーが必要となってくる。
また、例えば窒素酸化物などでは、触媒を利用して還元反応によりN2やH2Oに無害化されている。ただし、該処理では排ガス中の窒素酸化物濃度が例え低くても、排ガス全てを受け入れて処理することが必要となってくる。このため触媒及びその容器の容量は大きく、その処理装置はサイズ的に非効率なものであり、反応させるために加温が必要ということになれば、排ガス全てを対象に加温しなければならず、その加熱量は無駄に大きくなる。
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みて完成されたものであって、ゼオライト膜を利用した膜分離により、濃縮した汚染物質を得ることで、前記の再生工程がなくても、排ガス中に含まれる汚染物質を連続的に分離・除去でき、こうして濃縮した大気汚染物質を膜分離後段にある無害化処理装置で処理することで、同装置の容量・サイズを小さくし、排ガスを無害化させることを可能にするものである。
加えて、膜分離により濃縮された汚染物質が炭化水素類など、燃料として再利用できるようなものであれば、膜透過により濃縮させて、前段燃焼炉内に吹き込ませて燃焼に貢献できることも考えられる。
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、大気汚染物質除去用のゼオライト膜、および同膜を用いる排ガスの浄化方法を完成した。
すなわち、本発明は、多孔質支持体上に形成され、かつ、排ガス中に含まれる窒素酸化物、硫黄酸化物、硫化水素および炭化水素類のうち少なくとも一つの大気汚染物質に対して優先的な吸着力を利用して分離する機能を有するゼオライト膜に関するものである。
本発明はまた、上記ゼオライト膜を用いて大気汚染物質を排ガスから除去することを特徴とする排ガスの浄化方法にも関する。
好適な実施形態では、ゼオライト膜を用いた大気汚染物質の除去の後に、該大気汚染物質を無害化する。
また、ゼオライト膜を用いた大気汚染物質の除去の後かつ該大気汚染物質の無害化の前に該大気汚染物質を含むガスを加熱処理することも好ましい。
汚染物質に対して優先的な吸着力を利用して分離する機能を有するゼオライト膜としては、窒素酸化物、硫黄酸化物、硫化水素、炭化水素類に対してはY型ゼオライト膜が好ましく、MFI型、BEA型、MOR型のゼオライトでも好ましい。
ゼオライト膜を用いた汚染物質除去の操作条件は、好ましくは、温度:0〜200℃、圧力:0〜20MPaである。
窒素酸化物、硫黄酸化物、硫化水素および炭化水素類のような汚染物質は、極性分子であり、これらに対してゼオライトは優先的な吸着機能を有する。
本発明が適用できる排ガスは、窒素酸化物、硫黄酸化物、および硫化水素のうち少なくとも一つの汚染物質を含む天然ガスであってもよい。
本発明に用いられるゼオライト膜は、例えば、1)特開2009−11980号公報記載の方法、2)特開2010−58015号公報記載の方法、等によって形成することができる。ただしゼオライト膜の形成方法はこれらの方法に限定されない。
1)特開2009−11980号公報記載の方法、
多孔質支持体の表面にゼオライトの粉末(種結晶)の懸濁水溶液を塗布したのち、所望により乾燥する。原料として用いるゼオライトの種類は、特に限定されず、Y型ゼオライト(FAU)、DDR型ゼオライト(Deca−Dodecasil 3R)、A型ゼオライト(LTA)、L型ゼオライト(LTL)、モルデナイト(MOR)、ZSM−5(MFI)、シリカソーダライト(SOD)、β型ゼオライト(BEA)などが挙げられる。塗布方法は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、ラビング(擦り込み)法や浸漬法が好ましい。
例えば、Y型ゼオライト(FAU)は孔径が約0.74 nm×0.74 nm、モルデナイト(MOR)は孔径が約0.70 x 0.65 nm、ZSM−5(MFI)は孔径が約0.56 x 0.53 nm、β型ゼオライト(BEA)は孔径が約0.76 x 0.64 nmである
前記多孔質支持体としては、例えばアルミナ、シリカ、コージェライト、ジルコニア、チタニア、バイコールガラス、焼結金属などの多孔質体が挙げられるが、これらに限らず、種々の多孔質体を用いることができる。前記多孔質支持体の形状は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、通常は、板状もしくはチューブ状である。前記多孔質支持体の孔径は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、通常0.05〜2.0μmであり、好ましくは0.1〜1.5μmである。
2)特開2010−58015号公報記載の方法
多孔質支持体上にゼオライトの種結晶を担持する工程と、種結晶から水熱合成法により多孔質支持体上にゼオライト膜を形成する工程とからなる方法でゼオライト膜を形成する。多孔質支持体は、例えばアルミナセラミックなどの無機材料で構成され、蒸気ガス・溶液の高透過性能を得るために粒子径の大きなアルミナ粉末を用いて焼成したものである。多孔質支持体は、フィルター材であるゼオライト膜を支持することができる強度、好ましくは3.0〜13kg/mm、より好ましくは5.0〜13kg/mmを有し、同支持体の厚みは好ましくは1.0〜5.0mmである。多孔質支持体は、分離物質の透過性に優れた多孔質構造をなし、多孔質支持体の窒素ガスを用いた透過速度は、好ましくは100〜3000m/(m・h・atm)、より好ましくは200〜6000m/(m・h・atm)である。
まず、多孔質支持体上にゼオライトの種結晶を担持する工程では、A型やY型などのゼオライト種結晶を水溶液中に分散させた懸濁液に多孔質支持体を浸漬する、該懸濁液を多孔質支持体の表面に刷毛塗りする、などの方法を採用することができ、浸漬法は生産性に優れており望ましい。種結晶を多孔質支持体表面に均一で適度な量で付着させるには、ゼオライト種結晶を水溶液中に分散させた懸濁液中の種結晶の濃度は、好ましくは0.01〜l.0重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%である。多孔質支持体の表面にゼオライト種結晶を付着させた後、必要であればこれを乾燥する。
つぎに、水熱合成法により多孔質支持体上にゼオライト膜を形成する工程では、種付着多孔質支持体をゼオライト合成反応用の溶液に接触させ、加熱処理し、水熱合成法によりセラミック焼結材の表面にゼオライト膜を形成する。その後、ゼオライト膜の洗浄、乾燥を行う。
水熱合成法は、密閉容器または圧力容器内で昇温速度を制御して行うことが好ましい。
好ましくは、水熱合成法における合成温度を、反応液が沸騰しない程度の比較的低い温度で一定時間保持し、その後、通常の水熱合成温度に昇温して水熱合成法を行う。反応液が沸騰しない程度の比較的低い温度は、40〜80℃の範囲が好ましく、より好ましくは50〜70℃である。反応液の温度が所定温度になってから少なくとも20分以上は保持することが望ましい。上限は特に設定しないが、長すぎると膜厚が大きくなり、透過速度に効いてくるので好ましくない。望ましい上限は3〜5時間程度である。
さらに、特開2009−11980号公報記載のように、該ゼオライト膜の表面にアルカリ水溶液を塗布または浸漬する工程、加圧下に加熱処理することによりゼオライト膜を該多孔質支持体の内部に形成させる工程を含むこと場合もある。
こうして形成されたゼオライト膜は、ゼオライトの組成によって、或る範囲に限定された結晶構造的な微細孔を有しており、加えて極性分子を選択的に吸着することが可能であるので、排ガス中に含まれる窒素酸化物、硫黄酸化物、硫化水素および炭化水素類のうち少なくとも一つの汚染物質に対して優先的な吸着機能を有し、その該大気汚染物質がゼオライトの微細孔を通って膜二次側に向かって拡散移動することで透過し、一方で膜の微細孔が該大気汚染物質の分子で埋まることにより、他のガス分子が微細孔に入りにくくなることで、該大気汚染物質の分離精製機能を発揮する。
大気汚染物質の少なくとも一つを含む排ガスを温度0〜200℃において、真空ポンプにより0〜20kPa(abs)でゼオライト膜2次側に排気することにより、汚染物質と大気中の清浄な気体を分離/濃縮行うことが可能である。
ゼオライト膜を用いた大気汚染物質の除去の後に行う大気汚染物質の無害化は、窒素酸化物に対してはアンモニアまたは尿素を還元剤とする選択的接触還元脱硝法が好ましく、硫黄酸化物に対しては水洗法が好ましい。また吸着法を適用することもできる。選択的接触還元脱硝法では、ハニカム状その他の各種形状に形成した触媒を収容した脱硝装置を用い、被処理ガスを200〜400℃程度の温度で脱硝装置を通し、尿素水を噴霧すれば尿素水の熱分解によりアンモニアを生成させ、そのアンモニアを含む排ガスを脱硝触媒に供給する。
排煙中には、主に大気中の清浄な気体である水、窒素、酸素と、大気汚染物質である窒素化合物、硫黄化合物、硫化水素等、と温暖化ガスである二酸化炭素等が含まれる。以下に排ガス組成の一例を示す。
水分:20%wet、
酸素:20%dry、
二酸化炭素:20%dry
硫黄酸化物:10ppmdry、
窒素酸化物:50ppmdry、
窒素ベース

該大気汚染物質及び大気中の清浄な気体は、以下の極性及び分子径のものである。
極性μ(D) 分子径(10−9m)
大気汚染物質
S 0.97 0.368
SO 1.61 0.390
NO 0.15 0.309
O 0.18 0.366
クロロベンゼン 1.69 5.319
大気中の清浄な気体
O 1.82 0.300
0.0 0.364
0.0 0.346
(M.EvanLeewen/FluidPhaseEquilibria99より)
本発明によれば、上記無機分離体を利用することで、吸収・吸着剤といった媒体は不要であり、排煙気体中の該大気汚染物質を連続的に分離が可能である。また分離に対する投入エネルギーとしても、膜透過させるための駆動力となる圧力差を生じさせるポンプ用のエネルギー等が必要となるが、膜透過前に設けると排ガスを全て昇圧させる必要があり消費電力も大きくなるが、膜透過後のガスを真空にするためのポンプであれば、その流量も少ない故、消費電力は小さく済む。
また、本発明では膜分離により該大気汚染物質を濃縮して取り出すので、排煙中に含まれる該大気汚染物質そのものの流量が少なく、触媒設備又は処理設備の容量は小さくすることが可能である。また加温に対する必要熱量も、ガス流量が少なくなることでそれに応じて少なくなる。すなわち、他の排ガス成分まで無駄に加熱する必要がないということである。
加えて、吸収剤や吸着剤といった第3媒体が不要であり、プロセスがシンプルとなる。さらに、汚染物質の濃縮が可能(数十倍以上)であり、それに伴う無害化処理設備の縮小化ができる。場合によっては、炭化水素系の汚染物質濃縮により燃料としての再利用することができるという効果を奏する。
実施例1による排ガスの浄化方法のフローである。 実施例2による排ガスの浄化方法のフローである。 比較例1の、吸収法による排ガスの浄化方法の一般的なフローである。 比較例2の、吸着法による排ガスの浄化方法の一般的なフローである。 比較例3の、従来の排ガス無害化方法の一般的なフローである。 比較例4の、吸着法と無害化処理とを組み合わせたフローである。 従来のごみ焼却施設の排ガス処理装置の代表的な例を示すフローである。
本発明を実施例によってより具体的に説明する。
a)ゼオライト膜の形成
アルミナセラミックからなる多孔質支持体(強度:10kg/mm、厚み3.0mm)、窒素ガスを用いた透過速度:4000m/(m・h・atm)を、Y型ゼオライト種結晶を水溶液中に分散させた懸濁液(濃度:0.3重量%)に浸漬し、種結晶を多孔質支持体表面に付着させ、ついで乾燥を行った。
つぎに、種付着多孔質支持体をY型ゼオライト合成反応用の溶液に接触させ、加熱処理し、水熱合成法によりセラミック焼結材の表面にゼオライト膜を形成し、その後、ゼオライト膜の洗浄、乾燥を行った。水熱合成法は、密閉容器内で、まず60℃で4時間保持し、その後、通常の水熱合成温度に昇温して行った。
b)吸着法および吸収法との比較
比較例1
吸収法による排ガスの浄化方法の一般的なフローを図3に示す。
硫黄酸化物の処理においては、石灰スラリーによる吸収法があるが、硫黄酸化物が吸収されたらその石灰スラリーは吸収剤として再利用できないため、常にその石灰スラリーが必要である。
比較例2
吸着法による排ガスの浄化方法の一般的なフローを図4に示す。
吸着の場合は、吸着工程を担う塔と再生工程を担う塔が存在し、それらをバッチで操作して切り替えることで、マクロ的に連続処理する。この時の再生工程では、吸着剤からの脱離用ガスとして窒素や空気が利用されるが、そのガスを加熱(暖気)して塔へ投入し、吸着剤の再生を図る。また脱離ガスを投入するため、折角汚染物質を分離しても、その濃縮には自ずと限界があり、精々5倍程度の濃縮が限界である。
比較例3
従来の排ガス無害化方法の一般的なフローを図5に示す。従来の方法では加熱装置(5)で全量分の排ガスを加熱した後、流路径が大きい無害化処理装置(4)を用いる。
比較例4
吸着法と無害化処理とを組み合わせたフローを図6に示す。正確に描けば、吸着設備(6)には吸着工程を担う塔と再生工程を担う塔の最低2塔が存在するが、この図ではそれを省略して、マクロ的に描画している。
排ガスを吸着設備(6)で処理して、浄化ガスを取り出すと共に、加熱した脱着ガスを用いて汚染物質を吸着設備(6)から脱着させる。汚染物質が選択に吸着されているものの、再生のために脱着ガスを流すため、含有された脱着ガスは排ガス中の汚染物質含有率に対して約5倍に濃縮され、排ガス全量の1/5程度の流量となる。この汚染物質が含有された脱着ガスを加熱装置(5)に導き、加熱した後、流路径が中程度の無害化処理装置(4)に通して無害化する。
実施例1
本発明による排ガスの浄化方法のフローを示す図1において、燃焼炉(1)から出る窒素酸化物、二酸化炭素、窒素および酸素を含む排ガスをゼオライト膜分離装置(2)で処理して、水蒸気、二酸化炭素、窒素および酸素を含む浄化ガスを取り出すと共に、汚染物質に対して優先的な吸着力を利用して分離する機能を有するゼオライト膜で窒素酸化物を排ガスから分離し、この汚染物質含有ガスを真空ポンプ(3)を経て無害化処理装置(4)に通して無害化する。
この無害化は、汚染物質含有ガスをアンモニアまたは尿素を還元剤とする選択的接触還元脱硝法で処理することにより行う。
図7に示すごみ焼却施設の排ガス処理装置において、バグフィルタ(15)の後段であって、再加熱器(16)の前段にゼオライト膜分離装置(2)を設置する。
実施例2
本発明による排ガスの浄化方法のフローを示す図1において、燃焼炉(1)から出る硫黄酸化物、二酸化炭素、窒素および酸素を含む排ガスをゼオライト膜分離装置(2)で処理して、水蒸気、二酸化炭素、窒素および酸素を含む浄化ガスを取り出すと共に、汚染物質に対して優先的な吸着力を利用して分離する機能を有するゼオライト膜で硫黄酸化物を排ガスから分離し、この汚染物質含有ガスを真空ポンプ(3)を経て無害化処理装置(4)に通して無害化する。この無害化は汚染物質含有ガスの水洗等で行う。その他の構成は実施例1と同じである。
実施例3
本発明による排ガスの浄化方法のフローを示す図1において、燃焼炉(1)から出る炭化水素類、水蒸気、二酸化炭素、窒素および酸素を含む排ガスをゼオライト膜分離装置(2)で処理して、窒素および酸素を含む浄化ガスを取り出すと共に、汚染物質に対して優先的な吸着力を利用して分離する機能を有するゼオライト膜で炭化水素類を排ガスから分離し、この汚染物質含有ガスを真空ポンプ(3)を経て無害化処理装置(4)に通して無害化する。場合によって汚染物質含有ガスは燃焼炉(1)へ戻して消却処理する。その他の構成は実施例1と同じである。
実施例4
本発明による排ガスの浄化方法の変形のフローを図2に示す。
窒素酸化物、硫黄酸化物、硫化水素および/または炭化水素類を含む排ガスをゼオライト膜分離装置(2)で処理して、浄化ガスを取り出すと共に、汚染物質に対して優先的な吸着力を利用して分離する機能を有するゼオライト膜で汚染物質を排ガスから除去する。汚染物質含有ガスを数十倍に濃縮し、この濃縮ガスを真空ポンプ(3)を経て加熱装置(5)に導き、排ガスの数十分の1程度の流量になった濃縮ガスを加熱した後、流路径が小さい無害化処理装置(4)に通して無害化する。
2:ゼオライト膜分離装置
3:真空ポンプ
4:無害化処理装置
5:加熱装置

Claims (4)

  1. 多孔質支持体上に形成され、かつ、排ガス中に含まれる窒素酸化物、硫黄酸化物、硫化水素および炭化水素類のうち少なくとも一つの大気汚染物質に対して優先的な吸着力を利用して分離する機能を有するゼオライト膜。
  2. 請求項1記載のゼオライト膜を用いて大気汚染物質を排ガスから除去することを特徴とする排ガスの浄化方法。
  3. ゼオライト膜を用いた大気汚染物質の除去の後に、該大気汚染物質を無害化することを特徴とする、請求項2記載の排ガスの浄化方法。
  4. ゼオライト膜を用いた大気汚染物質の除去の後かつ該大気汚染物質の無害化の前に該大気汚染物質を含むガスを加熱処理することを特徴とする、請求項3記載の排ガスの浄化方法。
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