JP2012224290A - 駆動力配分装置の油圧供給装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】部品数を少なく抑えた簡単な構成で、ピストン室の油圧の変動を効果的に抑制できる駆動力配分装置の油圧供給装置を提供する。
【解決手段】作動油が導入されるピストン室(32)に設置されて、クラッチ(20)に係合圧を付与するピストン部材(33)は、ピストン室(32)の一の壁面をなす板状の壁面部(33a)を有する略円形環状の部材からなる。そして、ピストン部材(33)の外径寸法(DA)に対する内径寸法(DB1)の割合は、ピストン室(32)内の作動油の油圧で壁面部(33a)に撓み変形が生じるような割合に設定されている。これによおり、ピストン室(32)に油圧の変動を抑制するアキュムレータとしての機能及び作用を持たせている。
【選択図】図4

Description

本発明は、原動機からの駆動力を主駆動輪および副駆動輪に配分する四輪駆動車両の駆動力配分装置において、駆動力配分装置が有するクラッチに係合圧を発生させるための油圧を供給する油圧供給装置に関する。
従来、エンジンなどの駆動源で発生した駆動力を主駆動輪と副駆動輪に分配するための駆動力配分装置を備えた四輪駆動車両がある。この種の四輪駆動車両では、例えば、前輪が主駆動輪で後輪が副駆動輪の場合、駆動源で発生した駆動力は、フロントドライブシャフトおよびフロントディファレンシャルを介して前輪に伝達されると共に、プロペラシャフトを介して多板クラッチを有する駆動力配分装置に伝達される。そして、駆動力配分装置に油圧供給装置から所定圧の作動油を供給することで、駆動力配分装置の係合圧を制御する。これにより、駆動源の駆動力が所定の配分比で後輪に伝達されるようになっている。
そして、駆動力配分装置の多板クラッチへ油圧を供給するための油圧供給装置として、従来、特許文献1、2に示す油圧供給装置がある。特許文献1、2に示す油圧供給装置は、多板クラッチを押圧するための油圧を発生するピストン室に作動油を供給する電動オイルポンプを備え、電動オイルポンプとピストン室を油圧供給路で接続した構成である。ところで、上記のような油圧供給装置では、早い油圧の応答性が求められるシステムの場合、油圧の応答ゲインを高めることにより応答性を確保することができる。しかしながら、その代償として目標とする油圧に対して実際の油圧がオーバーすることになるので、このことが車両の駆動制御におけるギクシャク感や異音の発生、部品の疲労破壊の発生につながるおそれがある。このような問題に対処するため、油圧回路には、オイルポンプによる作動油の圧送に伴うピストン室の油圧の急激な変動を抑制するためのアキュムレータが設けられている。このようなアキュムレータを設けた従来例として、例えば、特許文献3に記載の駆動力配分装置がある。
従来は、上記のアキュムレータをピストン室とは別体で設けており、アキュムレータの構成部品は、ピストン室の構成部品とは別の部品として設置されていた。ところが、アキュムレータをピストン室とは別の部品として設置していることで、その分、駆動力配分装置の部品数が多くなるため、駆動力配分装置を組み立てる際の工程の煩雑化や、装置の重量増、コスト増につながるおそれがある。また、アキュムレータを設けていることで、駆動力配分装置内における他の部品の設置スペースが減少するなどの問題もある。
特開2002−187446号公報 特開2007−168506号公報 特開2002−187446号公報
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品数を少なく抑えた簡単な構成で、ピストン室の油圧の変動を効果的に抑制することができる駆動力配分装置の油圧供給装置を提供することにある。
上記の課題を解決するための本発明は、駆動源(3)からの駆動力を主駆動輪(W1,W2)及び副駆動輪(W3,W4)に伝達する駆動力伝達経路(10)と、前記駆動力伝達経路(10)における前記駆動源(3)と前記副駆動輪(W3,W4)との間に配置された駆動力配分装置(20)と、を備えた四輪駆動車両(1)において、前記駆動力配分装置(20)は、積層された複数の摩擦材(23)と、該摩擦材(23)を積層方向に押圧して係合させるためのピストン部材(33)と、前記ピストン部材(33)を収容したピストンハウジング(31)と、前記ピストンハウジング(31)内で前記ピストン部材(33)との間に画成されて該ピストン部材(33)に対する油圧を発生するピストン室(32)と、を有する摩擦係合要素で構成されており、前記ピストン室(32)に作動油を供給するためのモータ(77)で駆動するオイルポンプ(75)と、前記オイルポンプ(75)から前記ピストン室(32)に通じる油路(80)に作動油を封入するための作動油封入弁(76)と、該作動油封入弁(76)と前記ピストン室(32)との間の前記油路(80)を開閉するための開閉弁(78)と、を有する油圧回路(30)を備えた駆動力配分装置の油圧供給装置(60)において、前記ピストン部材(33)は、前記ピストン室(32)の一の壁面をなす板状の壁面部(33a)を有する略円形環状の部材からなり、該ピストン部材(33)の外径寸法(DA)に対する内径寸法(DB1)の割合と前記壁面部(33a)の厚さ寸法との少なくともいずれかは、前記ピストン室(32)内の作動油の油圧で前記壁面部(33a)に撓み変形が生じるような割合又は厚さ寸法に設定されていることを特徴とする。
本発明にかかる駆動力配分装置の油圧供給装置によれば、ピストン部材の外径寸法に対する内径寸法の割合と壁面部の厚さ寸法との少なくともいずれかを、ピストン室の作動油の油圧で壁面部に撓み変形が生じる割合又は厚さ寸法に設定したことで、ピストン室及びそれに通じる油路の油圧が上昇した場合に、ピストン部材の撓み変形によってピストン室の体積変動が許容されるようになる。すなわち、ピストン室に油圧の変動を抑制するアキュムレータとしての機能及び作用を持たせることができる。これにより、別途の部品としてアキュムレータを設置していなくても、ピストン室の油圧が受けるオイルポンプの駆動や開閉弁の開閉による動圧の影響を少なく抑えることが可能となる。したがって、目標油圧に対して実油圧がオーバーすることを抑制でき、車両の駆動制御におけるギクシャク感や異音の発生、部品の疲労破壊の発生を効果的に防止できる。
また、本発明では、アキュムレータを別途の部品として設置する必要がないので、アキュムレータの構成部材であるバネ、アキュームピストン等の部品が不要となる。したがって、油圧供給装置の部品点数を少なく抑えることができる。これにより、製品の低コスト化を図ることができる。また、従来必要であったアキュムレータを設置するための専用のスペースを確保する必要が無くなる。これにより、装置の小型化、省スペース化を図ることができる。また、駆動力配分装置のケーシング内での部品の配置構成の自由度を高めることができる。
また、本発明のように、ピストン部材の壁面部を撓ませることでピストン室にアキュムレータとしての機能を持たせる場合、ピストン部材の壁面部の剛性(壁面部の断面係数等)を設計パラメータとすることで、油圧回路の剛性の調整が行い易いという利点がある。したがって、油圧回路の油圧特性を所望の特性とすることが簡単に行えるようになる。
また、本発明のようにピストン室にアキュムレータとしての機能を持たせる場合、ピストン室の全体(一の壁面の全体)に対応するピストン部材の壁面部の全体に撓み変形が生じるように構成すれば、ピストン室の全体をアキュムレータとして機能させることができる。これにより、ピストン室内の作動油の圧力に偏りが発生し難くなる。したがって、オイルポンプの起動などに伴うサージ圧が発生する際に、ピストンの推力方向をクラッチの面に対して垂直な方向とすることが可能となるので、クラッチを軸方向に対して真っ直ぐに押圧することができる。
またこの場合、一例として、ピストン部材(33)の外径寸法(DA)に対する内径寸法(DB)の割合を1/3以上1/2以下の範囲内に設定するとよい。ピストン部材(33)の外径寸法(DA)に対する内径寸法(DB)の割合を上記の範囲内に設定すれば、ピストン部材の壁面部を該ピストン部材に必要な強度を確保可能な厚さ寸法としたうえで、ピストン部材の壁面部の面積を比較的大きな面積とすることができる。これにより、ピストン室の作動油の油圧で壁面部に撓み変形を生じさせ易くなる。したがって、ピストン室に油圧の変動を抑制するアキュムレータとしての機能及び作用を持たせ易くなる。
また、上記の油圧供給装置では、モータ(77)による前記オイルポンプ(75)の駆動及び前記開閉弁(78)の開閉を制御して前記ピストン室(32)に供給する油圧を制御する制御手段(50)を備え、前記制御手段(50)は、前記ピストン室(32)を加圧する際には、前記開閉弁(78)を閉じて前記モータ(77)で前記オイルポンプ(75)を駆動することで、該ピストン室(32)が目標油圧となるように制御し、前記ピストン室(32)を減圧する際には、前記モータ(77)による前記オイルポンプ(75)の駆動を禁止すると共に前記開閉弁(78)を開くことで、該ピストン室(32)が目標油圧となるよう制御するとよい。
本発明にかかる油圧供給装置では、上記のように、ピストン部材の寸法をピストン室の油圧でその壁面部に撓み変形が生じる寸法に設定したことで、ピストン室に油圧変動を抑制するアキュムレータとしての機能を持たせている。これにより、ピストン室の油圧がオイルポンプの駆動や開閉弁の開閉による動圧の影響を受け難くなる。そのため、上記のように油路に作動油を封入した状態でオイルポンプの駆動や開閉弁の開閉を行うことで油圧を制御する際にも、当該油圧の目標油圧に対する偏差や発生するサージ圧を小さく抑えることが可能となる。これにより、別途のアキュムレータを設置していなくても、迅速かつ正確な油圧制御を行うことが可能となる。したがって、油圧供給装置による油圧制御の精度を向上させることができる。
なお、上記で括弧内に記した参照符号は、後述する実施形態における対応する構成要素に付した符号を参考のために例示したものである。
本発明にかかる駆動力配分装置の油圧供給装置によれば、部品数を少なく抑えた簡単な構成で、ピストン室の油圧の変動を効果的に抑制することができる。
本発明の実施形態にかかる駆動力配分装置の油圧供給装置を備えた四輪駆動車両の概略構成を示す図である。 油圧供給装置の油圧回路を示す図である。 クラッチを含む車両の駆動力伝達機構を示す側断面図である。 クラッチ及びその周辺の詳細構成を示す部分拡大断面図である。 ピストン室及びシリンダピストンの構成を示す図で、(a)は、ピストン室及びシリンダピストンを軸方向から見た図(図3のA矢視に対応する図)であり、(b)は、(a)のB−B矢視断面を示す図である。 シリンダピストンを示す斜視図であり、(a)は、本発明にかかるピストン室の油圧で撓み変形が生じるシリンダピストンを示す図で、(b)は、撓み変形量を比較するための従来構造のシリンダピストンを示す図である。 ピストンハウジング内に設置したシリンダピストンを示す側断面図であり、(a)は、本発明にかかる撓み変形が生じるシリンダピストンを示す図、(b)は、従来構造のシリンダピストンを示す図である。 ピストン室の加圧時の油圧変化を示すグラフであり、(a)は、本発明にかかる撓み変形が生じるシリンダピストンを設置したピストン室の油圧変化であり、(b)は、従来構造のシリンダピストンを設置したピストン室の油圧変化である。 シリンダピストンの内径寸法とピストン室の体積変化量との関係を油圧ごとに示したグラフである。 油圧回路の油圧と体積の状態を模式的に示す図で、(a)は、本発明にかかる撓み変形が生じるシリンダピストンを設置したピストン室を含む油圧回路についての図、(b)は、従来構造のシリンダピストンを設置したピストン室を含む油圧回路についての図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる駆動力配分装置の油圧供給装置を備えた四輪駆動車両の概略構成を示す図である。同図に示す四輪駆動車両1は、車両の前部に横置きに搭載したエンジン(駆動源)3と、エンジン3と一体に設置された自動変速機4と、エンジン3からの駆動力を前輪W1,W2及び後輪W3,W4に伝達するための駆動力伝達経路10とを備えている。
エンジン3の出力軸(図示せず)は、自動変速機4、フロントディファレンシャル(以下「フロントデフ」という)5、左右のフロントドライブシャフト6,6を介して、主駆動輪である左右の前輪W1,W2に連結されている。さらに、エンジン3の出力軸は、自動変速機4、フロントデフ5、プロペラシャフト7、リアデファレンシャルユニット(以下「リアデフユニット」という)8、左右のリアドライブシャフト9,9を介して副駆動輪である左右の後輪W3,W4に連結されている。
リアデフユニット8には、左右のリアドライブシャフト9,9に駆動力を配分するためのリアデファレンシャル(以下、「リアデフ」という。)19と、プロペラシャフト7からリアデフ19への駆動力伝達経路を接続・切断するための前後トルク配分用クラッチ20とが設けられている。前後トルク配分用クラッチ20は、油圧式のクラッチであり、駆動力伝達経路10において後輪W3,W4に配分する駆動力を制御するための駆動力配分装置である。また、前後トルク配分用クラッチ20に作動油を供給するための油圧回路30と、油圧回路30による供給油圧を制御するための制御手段である4WD・ECU50とを備えた油圧供給装置60が設置されている。4WD・ECU50は、マイクロコンピュータなどで構成されている。
4WD・ECU(以下、単に「ECU」と記す。)50は、油圧回路30による供給油圧を制御することで、前後トルク配分用クラッチ(以下、単に「クラッチ」と記す。)20で後輪W3,W4に配分する駆動力を制御する。これにより、前輪W1,W2を主駆動輪とし、後輪W3,W4を副駆動輪とする駆動制御を行うようになっている。
すなわち、ECU50は、車両の走行状態を検出するための各種検出手段(図示せず)の検出に基づいて、後輪W3,W4に配分する駆動力およびこれに対応するクラッチ20への油圧供給量を演算すると共に、当該演算結果に基づく駆動信号をクラッチ20に出力する。これにより、クラッチ20が解除(切断)されているときには、プロペラシャフト7の回転がリアデフ19側に伝達されず、エンジン3のトルクがすべて前輪W1,W2に伝達されることで、前輪駆動(2WD)状態となる。一方、クラッチ20が接続されているときには、プロペラシャフト7の回転がリアデフ19側に伝達されることで、エンジン3のトルクが前輪W1,W2と後輪W3,W4の両方に配分されて四輪駆動(4WD)状態となる。この際、クラッチ20の締結力を適宜に制御することで、後輪W3,W4に配分する駆動力を制御するようになっている。
図2は、油圧供給装置60が備える油圧回路30を示す油圧回路図である。同図に示す油圧回路30は、ストレーナ73を介してオイルタンク71に貯留されている作動油を吸い込み圧送するオイルポンプ75と、オイルポンプ75を駆動するモータ77と、オイルポンプ75からクラッチ20のピストン室32に連通する油路70とを備えている。
クラッチ20は、複数の摩擦材23a,23b(図4参照)を有する摩擦係合部23と、ピストンハウジング31と、ピストンハウジング31内で進退移動することで摩擦係合部23を押圧するシリンダピストン33とを備えている。ピストンハウジング31内には、シリンダピストン33との間に作動油が導入されるピストン室32が画成されている。シリンダピストン33は、摩擦係合部23の複数の摩擦材23a,23bにおける積層方向の一端に対向配置されている。したがって、ピストン室32に供給された作動油の油圧でシリンダピストン33が摩擦係合部23を摩擦材23a,23bの積層方向に押圧することで、クラッチ20を所定の係合圧で係合させるようになっている。
オイルポンプ75からピストン室32に連通する油路70には、逆止弁76、リリーフ弁74、ソレノイド弁(開閉弁)78、油圧センサ79がこの順に設置されている。逆止弁76は、オイルポンプ75側からピストン室32側に向かって作動油を流通させるが、その逆の向きには作動油の流通を阻止するように構成されている。これにより、オイルポンプ75の駆動で逆止弁76の下流側に送り込まれた作動油を、逆止弁76とピストン室32との間の油路(以下では、「封入油路」ということがある。)80に封じ込めることができる。このように、逆止弁76は、オイルポンプ75からピストン室32に通じる油路80に作動油を封入するための作動油封入弁である。上記の逆止弁76とオイルポンプ75を設けた油路80によって、封入型の油圧回路が構成されている。
リリーフ弁74は、逆止弁76とピストン室32との間の油路80の圧力が所定の閾値を超えて異常上昇したときに開くことで、作動油を排出して油路80の油圧を解放するように構成された弁である。リリーフ弁74から排出された作動油は、オイルタンク71に戻されるようになっている。ソレノイド弁78は、オンオフ型の開閉弁で、ECU50の指令に基づいてPWM制御(デューティ制御)されることで、油路80の開閉を制御することができる。これにより、ピストン室32の油圧を制御することができる。なお、ソレノイド弁78が開かれることで油路80から排出された作動油は、オイルタンク71に戻されるようになっている。また、油圧センサ79は、油路80及びピストン室32の油圧を検出するための油圧検出手段であり、その検出値は、ECU50に送られるようになっている。また、オイルタンク71内には、作動油の温度を検出するための油温センサ72が設けられている。油温センサ72の検出値は、ECU50に送られるようになっている。
本実施形態の油圧供給装置60は、ピストン室32に作動油を供給するためのモータ77で駆動するオイルポンプ75と、オイルポンプ75からピストン室32に通じる油路80に作動油を封入するための逆止弁(作動油封入弁)76と、逆止弁76とピストン室32との間の油路80を開閉するためのソレノイド弁78とで構成された油圧回路30と、モータ77によるオイルポンプ75の駆動及びソレノイド弁78の開閉を制御してピストン室32に所望の油圧を供給するECU50とを備えている。そして、クラッチ20を締結するためにピストン室32を加圧する際には、ソレノイド弁78を閉じてオイルポンプ75を駆動することで封止状態の油路80に作動油を送り込んで加圧する。これにより、ピストン室32が目標油圧となるように制御する。その一方で、クラッチ20の締結を解除するためにピストン室32を減圧する際には、オイルポンプ75の駆動を禁止(停止)すると共にソレノイド弁78を開くことで、油路80の作動油をオイルタンク71に排出する。これにより、ピストン室32が目標油圧となるよう制御する。
図3は、クラッチ20を含む車両1の駆動力伝達機構2を示す側断面図である。また、図4は、クラッチ20及びその周辺の詳細構成を示す部分拡大断面図である。なお、以下の説明では、図3に矢印で示したように、駆動力伝達機構2を搭載した車両1の前後方向である図3の左右方向をそれぞれ前、後という。また、軸方向というときは、後述する第1、第2回転軸41,42の軸方向を示すものとする。
図3に示す駆動力伝達機構2は、プロペラシャフト7(図1参照)に繋がる第1回転軸41と、第1回転軸41と同軸上に並べて配設された第2回転軸42と、第1回転軸41と第2回転軸42とを係脱自在に連結するためのクラッチ20とを備えている。また、第2回転軸42の後端部に一体形成された終減速ドライブピニオン44と、終減速ドライブピニオン44に噛合する終減速ドリブンギヤ45と、終減速ドリブンギヤ45内に配設された後輪用のディファレンシャル機構46とが設けられている。また、駆動力伝達機構2は、第1回転軸41を収容する前ケーシング51と、前ケーシング51の後端に接続されてクラッチ20を収容する中ケーシング52と、中ケーシング52の後端とピストンハウジング31の後端とに接続されて第2回転軸42を収容する後ケーシング53とを備えている。
図4に示すように、クラッチ20は、第1回転軸41の後端に結合された略円筒状のクラッチハウジング21と、クラッチハウジング21の内周側で第2回転軸42の前端にスプライン結合されたクラッチハブ22と、クラッチハウジング21内で軸方向に沿って複数を交互に積層した摩擦材である圧力プレート23a及び摩擦プレート23bを備えている。圧力プレート23aは、その外周端がクラッチハウジング21にスプライン係合しており、摩擦プレート23bは、内周端がクラッチハブ22にスプライン係合している。これら複数の圧力プレート23aおよび摩擦プレート23bによって摩擦係合部23が構成されている。圧力プレート23aと摩擦プレート23bの積層方向における後側の端部には、エンドプレート24が設置されている。
クラッチハウジング21は、軸方向における後側の端部に開口部21aを有しており、該開口部21aには、エンドキャップ25が取り付けられている。エンドキャップ25は、略円形板状の部材であり、このエンドキャップ25によって、摩擦係合部23を構成する複数の圧力プレート23a及び摩擦プレート23bがクラッチハウジング21内に係止されている。
エンドキャップ25の後側に設置されたプレッシャーピストン26は、中心部に略円形の貫通孔を有する略円形の板状部材である。このプレッシャーピストン26は、エンドキャップ25のフランジ部25cの外径側にインロー支持されている。これにより、プレッシャーピストン26は、エンドキャップ25に対して、該エンドキャップ25と一体に回転し、かつ、該エンドキャップ25に対して軸方向にのみ相対移動可能な状態で係合している。
また、プレッシャーピストン26のクラッチハウジング21側の面には、軸方向に突出する突起状の押圧部26dが形成されている。一方、エンドキャップ25における押圧部26dに対応する位置には、貫通孔25dが形成されている。なお、図示は省略するが、押圧部26d及び貫通孔25dは、プレッシャーピストン26とエンドキャップ25の円周方向に沿って等間隔で複数個が設けられている。そして、図4に示すように、プレッシャーピストン26の押圧部26dがエンドキャップ25の貫通孔25dを貫通してクラッチハウジング21内に突出しており、該押圧部26dの先端がエンドプレート24に当接するようになっている。
一方、エンドキャップ25及びプレッシャーピストン26の後側には、ピストンハウジング31が設置されている。ピストンハウジング31には、その中心部に略円形の開口部31dが設けられており、該開口部31dの前方の端部には、軸方向に沿って前側に突出する円筒状のフランジ部31cが形成されている。フランジ部31cの外径側には、シリンダピストン33が設置されている。シリンダピストン33とプレッシャーピストン26との間には、スラストニードルベアリング29が介在しており、シリンダピストン33とプレッシャーピストン26は、相対回転可能かつ軸方向に一体に移動可能になっている。
ピストンハウジング31内のシリンダピストン33との隙間には、作動油による油圧を発生させるためのピストン室(油室)32が画成されている。シリンダピストン33は、ピストンハウジング31に対して軸方向に沿って相対移動可能に設置されており、その外周とピストンハウジング31との間には、ピストン室32を密封するためのシール部材34が設置されている。また、ピストンハウジング31内のピストン室32には、オイルポンプ35(図1参照)からの作動油が導入される油路80が連通している。また、図3に示すように、油路80には、作動油の油圧を検出するための油圧センサ79が設置されている。
上記構成により、オイルポンプ75の運転でピストンハウジング31内のピストン室32に作動油が導入されると、ピストン室32から圧力を受けたシリンダピストン33が軸方向に沿って前側に移動することで、プレッシャーピストン26が同方向に移動する。これにより、プレッシャーピストン26の押圧部26dで摩擦係合部23の端部にあるエンドプレート24が押圧されて、圧力プレート23aおよび摩擦プレート23bが互いに圧接することでクラッチ20が締結されるようになっている。
図5は、ピストン室32及びシリンダピストン33の構成を示す図で、(a)は、ピストン室32及びシリンダピストン33を軸方向から見た図(図3のA矢視に対応する図)、(b)は、(a)のB矢視に対応する断面図である。なお、図5(a)では、説明の都合上、ピストン室32の断面に相当する部分に斜線の網掛けを施してある。ピストン室32は、第2回転軸42の外径側に配置されており、軸方向から見た断面の形状が、第2回転軸42の軸心Mを中心とする略円形の環状に形成された室である。そして、図3及び図4に示すように、ピストン室32の軸方向の後側(背面側)は、ピストンハウジング31の一部である板状の背面部31aで覆われている。一方、ピストン室32の軸方向の前側(正面側)は、シリンダピストン33で覆われている。シリンダピストン33は、ピストン室32の前側の壁面をなす板状の壁面部33aを有する略円形環状の部材である。
そして、本実施形態の油圧供給装置60では、図5(b)に示すように、ピストン室32内の作動油の油圧でシリンダピストン33の壁面部33aに撓み変形が生じることで、ピストン室32及び油路80に体積変化が生じるように設定されている。具体的には、クラッチ20が係合状態のとき、シリンダピストン33は、その外径側のスラストニードルベアリング29に当接する箇所で軸方向への移動が規制された状態になっている。したがって、スラストニードルベアリング29に当接する箇所を支点にその内径側が軸方向に沿って変位することで、壁面部33aに撓み変形が生じるようになっている。なおここでは、シリンダピストン33の壁面部33aにおける内径端の変位量(撓み量)をΔXとし、それに伴うピストン室32の体積変化量をΔVとしている。
このように、ピストン室32内の作動油の油圧でシリンダピストン33の壁面部33aに撓み変形が生じるようにしたことで、ピストン室32に油圧の変動を抑制するためのアキュムレータとしての機能及び作用を持たせている。これにより、アキュムレータを別途の部品として設置していなくても、ピストン室32の油圧が受けるオイルポンプ75の駆動やソレノイド弁78の開閉による動圧の影響を少なく抑えることが可能となる。したがって、ピストン室32内の実油圧が目標油圧に対してオーバーすることを抑制でき、車両の駆動制御におけるギクシャク感や異音の発生、部品の疲労破壊の発生を効果的に防止できる。以下では、ピストン室32内の作動油の油圧でシリンダピストン33に撓み変形が生じるためのシリンダピストン33の形状・寸法の設定について説明する。
図6は、シリンダピストン33を示す斜視図であり、(a)は、本発明にかかるピストン室32の油圧で撓み変形が生じるように設定したシリンダピストン33−1を示す図で、(b)は、撓み変形量を比較するための従来構造のシリンダピストン33−2を示す図である。図7は、ピストンハウジング31内に設置したシリンダピストン33を示す側断面図であり、(a)は、本発明にかかる撓み変形が生じるシリンダピストン33−1を示す図、(b)は、従来構造のシリンダピストン33−2を示す図である。
本実施形態の油圧供給装置60では、所定の厚さ寸法に設定したシリンダピストン33において、シリンダピストン33の外径寸法DAに対する内径寸法DBを所定の割合に設定することで、ピストン室32内の作動油の油圧でシリンダピストン33の壁面部33aに撓み変形が生じるようにしている。すなわち、図6(a)及び図7(a)に示すシリンダピストン33−1は、本発明にかかるシリンダピストンであって、ピストン室32の油圧で壁面部33−1aに撓み変形が生じることで、ピストン室32の油圧変動を抑制する作用を持つように設定されたものである。これに対して、図6(b)及び図7(b)に示すシリンダピストン33−2は、従来構成のシリンダピストンであって、ピストン室32の油圧で壁面部33−2aに撓み変形が生じないか、又は撓み変形が生じてもごく僅かであるために、それだけではピストン室32の油圧変動を抑制する作用を十分に奏することができないものである。
そして、図6(a)及び図7(a)に示すシリンダピストン33−1と、図6(b)及び図7(b)に示すシリンダピストン33−2は、外径寸法DA(DA1,DA2)が互いに同一寸法(DA1=DA2)であるが、内径寸法DB(DB1,DB2)が互いに異なっている。具体的には、シリンダピストン33−1の内径寸法DB1は、シリンダピストン33−2の内径寸法DB2よりも小さな寸法(DB1<DB2)になっている。これにより、シリンダピストン33−1の壁面部33−1aの方がシリンダピストン33−2の壁面部33−2aよりも大きな面積になっている。
図8は、ピストン室32のアキュムレータ作用による加圧時の油圧変化を示すグラフである。同図のグラフでは、横軸が経過時間であり、縦軸がピストン室32の油圧である。一点鎖線で示す変化は、ピストン室32の目標油圧であり、実線で示す変化は、ピストン室32の実油圧である。なお、この図8のグラフは、油路80に別途のアキュムレータを設けていない場合の油圧変化を示したものである。そして、図8(a)のグラフは、図6(a)及び図7(a)に示すシリンダピストン33−1を設置したことで、壁面部33aの撓み変形でピストン室32がアキュムレータとしての機能及び作用を有する場合の油圧変化であり、図8(b)のグラフは、図6(b)及び図7(b)に示すシリンダピストン33−2を設置したことで、壁面部33aの撓み変形が少なく、ピストン室32がアキュムレータとしての機能及び作用を殆ど有しない場合の油圧変化である。
本発明にかかるシリンダピストン33−1を備えたピストン室32では、従来構造のシリンダピストン33−2を備えたピストン室32に対して、壁面部33aの撓み変形量ΔX及びピストン室32の体積変化量ΔVが大きくなるため、ピストン室32の油圧変動を抑制するために必要なアキュムレータとしての機能及び作用を該ピストン室32に持たせることが可能となる。すなわち、本実施形態のような封入型(閉止型)の油路80を有する油圧回路30において、図8(a)に示すピストン室32にアキュムレータ作用が有る場合の油圧変化は、同図(b)に示すピストン室32にアキュムレータ作用が無い場合の油圧変化と比較して、オイルポンプ75の起動時のサージ圧ΔPを小さく抑えることが可能となる。また、ピストン室32内の目標油圧に対する実油圧の偏差も小さな値に抑えることが可能となる。
なお、図6及び図7に示すシリンダピストン33−1,33−2は、その形状及び寸法の具体例として、シリンダピストン33−1の外形寸法DA1と、シリンダピストン33−2の外径寸法DA2をいずれも同一寸法であるDA1=DA2=112.8(mm)とし、シリンダピストン33−1の内径寸法DB1をDB1=40.2(mm)とし、シリンダピストン33−2の内径寸法DB2をDB2=60.1(mm)とすることができる。実際に、上記の寸法設定でピストン室32の油圧によるシリンダピストン33−1,33−2の撓み量ΔXを測定したところ、シリンダピストン33−1の内径端の撓み量ΔX1は、ΔX1=13.2(μm)であり、シリンダピストン33−2の内径端の撓み量ΔX2は、ΔX2=2.2(μm)であった。すなわち、シリンダピストン33−1の撓み量は、シリンダピストン33−2の撓み量の約6倍であった。
なお、上記のシリンダピストン33−1,33−2の寸法設定は一例である。したがって、本発明にかかるシリンダピストン33−1の具体的な寸法は、ピストン室32の油圧で壁面部33−1aに撓み変形が生じる寸法であれば、上記以外に設定しても、ピストン室32のアキュムレータ作用を得ることが可能である。なおこの場合、シリンダピストン33の壁面部33aの強度確保に必要な厚さ寸法を確保しつつ、ピストン室32の効果的なアキュムレータ作用を得るためには、シリンダピストン33−1の寸法設定として、外径寸法DA1に対する内径寸法DB1の割合を1/3以上1/2以下の範囲内に設定することが望ましい。
図9は、シリンダピストン33の内径寸法DBとピストン室32の体積変化量ΔVとの関係を油圧ごとに示したグラフである。同図のグラフでは、ピストン室32の油圧PをP=1(MPa),0.5(MPa),0.1(MPa)の3段階それぞれに設定した場合において、シリンダピストン33の内径寸法DBを約52(mm)〜約60(mm)の範囲で変化させたときのピストン室32の体積変化量ΔVを示している。なおこの場合、シリンダピストン33の外径寸法DAは一定である。
図9のグラフに示すように、シリンダピストン33の外径寸法DAが一定の場合、シリンダピストン33の内径寸法DBが小さくなればなる程、ピストン室32の体積変化量ΔVが大きくなる。また、ピストン室32の油圧Pが高い程、シリンダピストン33の壁面部33aにかかる油圧による撓み量が増加することで、ピストン室32の体積変化量ΔVが大きくなる。そして、ピストン室32の体積変化量ΔVは、ピストン室32の油圧Pが低い領域よりも高い領域の方が、シリンダピストン33の内径寸法DBが小さい側でのピストン室32の体積変化量ΔVの増大が顕著になっている。
ここで、ピストン室32のアキュムレータ作用と油圧回路30(油路80)の油圧及び体積の変化との関係について説明する。図10は、油圧回路30(油路80)の油圧Pと体積Vの状態を模式的に示す図で、(a)は、本発明にかかる撓み変形が生じるシリンダピストン33−1を設置したピストン室32を含む油圧回路30についての図、(b)は、従来構造のシリンダピストン33−2を設置したピストン室32を含む油圧回路30についての図である。そして、各図の符号(i)は、油圧回路30における油圧セット時の状態(初期状態)、(ii)は、油圧セット後の遷移状態、(iii)は、油圧セット後の定常状態を示す図である。
まず、本発明にかかるシリンダピストン33−1を設置した油路80では、油路80全体の剛性(体積変化の係数)Kは、シリンダピストン33の剛性K1とその他の部分の剛性K2とを合わせた値(K=K1+K2)となる。しかしながら、油圧回路30では、シリンダピストン33−1以外の部分の剛性は非常に高いため、実質的に体積変化を起こすための撓み変形が生じるのはシリンダピストン33−1の壁面部33−1aのみである。そして、油圧回路30の油圧セット時、すなわちモータ77及びオイルポンプ75の駆動で油路80内の油圧が目標油圧に達した時点では、同図(a)の(i)に示すように、油路80の油圧Pと体積Vは、所定の油圧PA0及び体積VA0となる。ここでの油路80の圧力PA0及び体積VA0は、シリンダピストン33の剛性K1に基づく撓み量ΔX、及びそれによるピストン室32の体積変化量ΔVに応じた値となる。
一方、従来構造のシリンダピストン33−2を設置した油路80では、油路80全体の剛性KはK2のみ(K=K2)となる。またこの場合、油圧回路30の油圧セット時における油路80の圧力及び体積は、同図(b)の(i)に示すように、圧力PB0及び体積VB0とする。
その後、(ii)に示すように、モータ77及びオイルポンプ75が停止してソレノイド弁78が閉じるまでの僅かな時間に、油路80からの作動油の漏れが生じる。このとき、本発明にかかるシリンダピストン33−1を設置した油路80では、(a)の(ii)に示すように、油圧が僅かではあるが低下することで、シリンダピストン33−1の撓み変形量ΔXが小さくなり、ピストン室32の体積変化量ΔVが減少する。これにより、油路80の体積Vは、V=VA1となる。そして、最終的には、(iii)に示すように、油路80の油圧Pが目標油圧に対して僅かに低い値であるP=PA1となる。
一方、従来構造のシリンダピストン33−2を設置した油路80では、シリンダピストン33−2に撓み変形が生じないため、ピストン室32及び油路80の体積変化量ΔVが非常に小さなものとなる。そのため、油路80からの作動油の漏れが生じる際に、その漏れ量が僅かな量であっても、油路80の油圧Pが急激に減少するおそれがある。これにより、(b)の(iii)に示す最終的な油路80の油圧PB1は、目標油圧に対して大幅に低い値となってしまう可能性がある。
すなわち、本実施形態の油圧供給装置60では、図6(a)及び図7(a)に示すシリンダピストン33−1を備えることで、シリンダピストン33−1の剛性を低く抑えているため、ピストン室32の油圧でシリンダピストン33−1に撓み変形を生じさせることができる。これにより、油路80及びピストン室32の油圧が上昇した際にピストン室32の体積を増加させることで、ピストン室32にアキュムレータ作用を持たせることができる。このアキュレータ作用によって、閉回路である油路80(油圧回路30)の油圧の目標油圧に対する下がり幅を小さく抑えることが可能となる。またこの場合、シリンダピストン33−1の形状・寸法の最適化を図ることで、ピストン室32で所望のアキュレータ作用を得ることができるので、目標油圧に対する実油圧の下がり幅を最小限に抑えるようにすることが可能となる。
以上説明したように、本実施形態の油圧供給装置60では、シリンダピストン33をピストン室32内の作動油の油圧でその壁面部33aに撓み変形が生じる形状・寸法に設定したことで、ピストン室32に油圧の変動を抑制するためのアキュムレータとしての機能及び作用を持たせている。具体的には、壁面部33aを所定の厚さ寸法に設定したシリンダピストン33において、外径寸法DAに対する内径寸法DBの割合をピストン室32の油圧で壁面部33aに撓み変形が生じるような割合に設定している。これにより、ピストン室32の油圧でシリンダピストン33に撓み変形が生じるようになるので、ピストン室32の油圧が上昇した場合に体積変動が許容されるようになる。これにより、アキュムレータを別途の部品として設置していなくても、ピストン室32の油圧が受けるオイルポンプ75の駆動やソレノイド弁78の開閉による動圧の影響を少なく抑えることが可能となる。したがって、目標油圧に対して実油圧がオーバーすることを抑制でき、車両の駆動制御におけるギクシャク感や異音の発生、部品の疲労破壊の発生を効果的に防止できる。
また、本実施形態の油圧供給装置60では、アキュムレータを別途の部品として設置する必要がないので、アキュムレータの構成部材であるバネ、アキュームピストン等の部品が不要となる。したがって、油圧供給装置60の部品点数を少なく抑えることができる。これにより、製品の低コスト化を図ることができる。また、従来必要であったアキュムレータを設置するための専用のスペースを確保する必要が無くなる。これにより、装置の小型化、省スペース化を図ることができる。また、駆動力伝達機構2のケーシング51〜53内での部品の配置構成の自由度を高めることができる。
本実施形態のようにシリンダピストン33の撓み変形によってピストン室32にアキュムレータとしての機能を持たせる場合、シリンダピストン33の壁面部33aの剛性(壁面部33aの断面係数等)を設計パラメータとすることで、バネ強度に相当する油圧回路30の剛性の調整が行い易いという利点がある。したがって、油圧回路30の油圧特性を所望の特性とすることが簡単に行えるようになる。
また、本実施形態のようにピストン室32にアキュムレータとしての機能を持たせる場合、ピストン室32に対応するシリンダピストン33の壁面部33aの全体に撓み変形が生じるように構成すれば、ピストン室32の全体をアキュムレータとして機能させることができる。これにより、ピストン室32内の作動油の圧力に偏りが発生し難くなる。したがって、オイルポンプ75の起動などに伴うサージ圧が発生する際に、シリンダピストン33及びプレッシャーピストン26の推力方向をクラッチ20の摩擦材23a,23bの面に対して垂直な方向とすることが可能となるので、クラッチ20を軸方向に対して真っ直ぐに押圧することができる。
また、本実施形態の油圧供給装置60では、ピストン室32にその油圧変動を抑制するためのアキュムレータとしての機能を持たせていることで、上記のように、油路80に作動油を封入した状態でオイルポンプ75の駆動やソレノイド弁78の開閉を行うことで油圧を制御する際に、当該油圧の目標油圧に対する偏差や発生するサージ圧を小さく抑えることが可能となる。これにより、別途のアキュムレータを設置していなくても、迅速かつ正確な油圧制御を行うことが可能となる。したがって、油圧供給装置60による油圧制御の精度を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、本発明にかかるピストン部材の外径寸法に対する内径寸法の割合は、ピストン室の油圧でピストン部材に撓み変形が生じるように構成されていれば、上記実施形態に示す以外の割合とすることも可能である。また、ピストン室の油圧でピストン部材に撓み変形が生じるようにするためには、ピストン部材の外径寸法に対する内径寸法を調整することだけでなく、ピストン部材の壁面部の厚さ寸法を調整することで、壁面部の断面係数を所望の撓み変形が生じるような数値に設定することが可能である。
1 四輪駆動車両
2 駆動力伝達機構
10 駆動力伝達経路
20 前後トルク配分用クラッチ(クラッチ)
23 摩擦係合部
23a 圧力プレート
23b 摩擦プレート
30 油圧回路
31 ピストンハウジング
32 ピストン室
33 シリンダピストン(ピストン部材)
33a 壁面部
35 オイルポンプ
50 4WD・ECU(制御手段)
60 油圧供給装置
75 オイルポンプ
76 逆止弁
77 モータ
78 ソレノイド弁(開閉弁)
80 油路

Claims (3)

  1. 駆動源からの駆動力を主駆動輪及び副駆動輪に伝達する駆動力伝達経路と、
    前記駆動力伝達経路における前記駆動源と前記副駆動輪との間に配置された駆動力配分装置と、を備えた四輪駆動車両において、
    前記駆動力配分装置は、積層された複数の摩擦材と、該摩擦材を積層方向に押圧して係合させるためのピストン部材と、前記ピストン部材を収容したピストンハウジングと、前記ピストンハウジング内で前記ピストン部材との間に画成されて該ピストン部材に対する油圧を発生するピストン室と、を有する摩擦係合要素で構成されており、
    前記ピストン室に作動油を供給するためのモータで駆動するオイルポンプと、前記オイルポンプから前記ピストン室に通じる油路に作動油を封入するための作動油封入弁と、該作動油封入弁と前記ピストン室との間の前記油路を開閉するための開閉弁と、を有する油圧回路を備えた駆動力配分装置の油圧供給装置において、
    前記ピストン部材は、前記ピストン室の一の壁面をなす板状の壁面部を有する略円形環状の部材からなり、
    該ピストン部材の外径寸法に対する内径寸法の割合と前記壁面部の厚さ寸法との少なくともいずれかは、前記ピストン室内の作動油の油圧で前記壁面部に撓み変形が生じるような割合又は厚さ寸法に設定されている
    ことを特徴とする駆動力配分装置の油圧供給装置。
  2. 前記ピストン部材は、その外径寸法に対する内径寸法の割合が1/3以上1/2以下の範囲内に設定されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の駆動力配分装置の油圧供給装置。
  3. 前記モータによる前記オイルポンプの駆動及び前記開閉弁の開閉を制御して前記ピストン室に供給する油圧を制御する制御手段を備え、
    前記制御手段は、前記ピストン室を加圧する際には、前記開閉弁を閉じて前記モータで前記オイルポンプを駆動することで、該ピストン室が目標油圧となるように制御し、前記ピストン室を減圧する際には、前記モータによる前記オイルポンプの駆動を禁止すると共に前記開閉弁を開くことで、該ピストン室が目標油圧となるよう制御する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動力配分装置の油圧供給装置。
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