JP2012223825A - 単結晶ダイヤモンド切削刃具及びその製造方法、並びにx線タルボ干渉計用回折格子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】被削物の切削くずをすくい取るすくい面201と、すくい面にそれぞれ隣接する側面となる2つの第1逃げ面203、204と、すくい面に隣接し、被削物の切削面に対向する前逃げ面205と、すくい面と前逃げ面との境界部に形成される前切れ刃210と、すくい面と第一逃げ面との境界部に形成される2つの第1切れ刃213、214とを備え、第1逃げ面同士の間隔W2が前切れ刃の幅W1以下であり、被削物500の切削面Sに垂直な方向に沿い、前切れ刃からの第1逃げ面の長さLが前切れ刃の幅の3倍以上である、X線タルボ干渉計用回折格子の製造に用いられる単結晶ダイヤモンド切削刃具200である。
【選択図】図6
Description
このようなX線タルボ干渉計100として、図1に示すように、第1の回折格子10および第2の回折格子20と、X線画像検出器30とを備えた構成が知られている(特許文献1参照)。第1の回折格子10および第2の回折格子20は、図2に示すように、金属板の一方向に所定間隔で溝部10aおよび20aを形成し、溝部10aおよび20aからX線を透過させる。又、隣接する溝部10aの間の畝部10bでX線の位相をπ/2だけシフトして透過させ、溝部20aの間の畝部20bではX線を遮蔽(吸収)するようになっている。回折格子の材料としては、通常、X線吸収能の高い金(Au)を用いている。
一方、振幅型回折格子として機能するためには、回折格子の溝部20aのX線透過率が高く、畝部20bのX線透過率が低いとよい。このため、金を用いたとしても溝部の深さを10〜100μm程度に深掘りすることが要求される。従って、回折格子の(溝部の深さ)/(溝部の幅)で表されるアスペクト比が非常に大きくなり、回折格子の製造が困難となる。
又、シリコン基板表面の感光性樹脂をリソグラフィー法でパターニングして除去し、次にICPプラズマエッチング法で感光性樹脂が除去されたシリコン基板をエッチングしてスリット溝を形成した後、スリット溝に絶縁物を堆積し、さらに残った感光性樹脂及びシリコン基板をICPプラズマエッチング法でエッチングして第2のスリット溝を形成し、第2のスリット溝に電鋳法によってX線吸収金属部を形成する技術が開示されている(特許文献3参照)。
又、集束イオンビーム(FIB)を用いると、単結晶ダイヤモンドを精度よくエッチングすることができるが、切れ刃の高さを高くするとそれだけ逃げ面の加工量が増え、エッチング時間が長くなって切削工具の生産コストが上昇するという問題がある。
従って、本発明の目的は、X線の回折格子に要求される深さが幅の3倍以上の深い溝の切削が可能であり、生産性に優れた単結晶ダイヤモンド切削刃具及びその製造方法、並びにX線タルボ干渉計用回折格子の製造方法を提供することにある。
この単結晶ダイヤモンド切削刃具によれば、硬度が高く精密な溝加工が可能な単結晶ダイヤモンドを用い、深さが幅の3倍以上の深い溝の切削が可能となり、特性の優れたX線タルボ干渉計用回折格子を製造することができる。又、FIBのエッチングは、複雑な形状の加工ができると共に、結晶面を選ばずに加工ができ、ダイヤモンドの一番固い結晶面である(111)面をも容易に加工ができる。
又、第1逃げ面同士の間隔が前切れ刃の幅以下であるので、切削加工時に単結晶ダイヤモンド切削刃具と被切削物との接触面積が減り、工具のビビリが起こり難くなるので精密な切削加工が行える。特に、深さが幅の3倍以上の深い溝を切削する際、被切削物との接触面積(摩擦)を低減する効果が大きい。
集束イオンビーム(FIB)のエッチングは、複雑な形状の加工ができると共に、結晶面を選ばずに加工ができ、ダイヤモンドの一番固い結晶面である(111)面をも容易に加工ができる。
この単結晶ダイヤモンド切削刃具の製造方法によれば、最初は比較的高いビーム電流で第一逃げ面及び/又は前逃げ面を粗加工するので、加工量(エッチング量)を大きくし、エッチング時間を短縮できる。次に、粗加工工程より低いビーム電流でガリウムイオンを用いたFIBで仕上げ加工することで、加工精度を高くして最終形状を作り込むことができる。
誘導結合プラズマ型のイオン源を用いたFIBは、大電流で使用した場合、ガリウムイオンのFIBを大電流で使用した場合よりもビーム径を細く絞ることができるので、粗加工に適する。
第1の回折格子10および第2の回折格子20は、その平面に平行な一方向(図1ではy方向)に沿って延びつつ、互いに所定周期で離間する複数の溝部10a、20aが形成され(図2の溝部の断面図参照)、溝部10a、20aからX線を透過させる一方、隣接する溝部10aの間の短冊状の畝部10bでX線の位相をπ/2だけシフトして透過させ、畝部20bでX線を遮蔽(吸収)するようになっている。各溝部10a、20a及び畝部10b、20bは、図1のY方向に延びている。回折格子の材料としては、X線吸収能の高い金を用いると好ましい。なお、この実施形態では、畝部10bの幅(間隔)と溝部10aの幅(間隔)が等しく、畝部20bの幅(間隔)と溝部20aの幅(間隔)が等しい。
又、第1の回折格子10の後方(自己像の位置)に配置された第2の回折格子20は、第1の回折格子10により回折されたX線を回折して画像コントラストを形成し、第2の回折格子20の後方のX線画像検出器30で回折X線を検出する。画像コントラストを向上させるには、第2の回折格子20の溝部20aのX線透過率が高く、畝部20bのX線透過率が低いと良い。そのため、第2の回折格子20は第1の回折格子10より厚い振幅型回折格子であることが好ましい。
なお、モアレ縞の解析法の一つである縞走査法では、第1の回折格子10および第2の回折格子20をX方向に相対的にずらすことで、モアレ縞の位相が変化することに着目している。すなわちモアレ縞の位相を変化させて複数のタルボ干渉像を得た後、これを積分処理等して合成することにより、位相像(試料4とその内部構造)を得ることができる。 又、試料4を回転させて多数の投影方向から微分位相像を取得し、これを積分処理等して合成して試料4の断層像(CT像)を得ることも可能である。
一方、振幅型回折格子として機能するためには、回折格子の溝部のX線透過率を高くし、畝部のX線透過率を低くする必要がある。このため、金を用いても畝部の厚さ(溝の深さ)を10〜100μm程度に深くすることが要求される。従って、回折格子の(溝の深さ)/(溝の幅)で表されるアスペクト比が3以上(場合によっては10以上)と非常に大きくなる。
図3は、本発明の実施形態に係る単結晶ダイヤモンド切削刃具200を取り付けた工具本体(バイト)400を示す。単結晶ダイヤモンド切削刃具200は、略台形の台金300の先端に取り付けられて工具本体400を構成し、台金300の先端から単結晶ダイヤモンド切削刃具200の切れ刃(図4参照)が突出している。工具本体400は、図示しない切削加工機のホルダに固定され、後述するように、単結晶ダイヤモンド切削刃具200により被切削物に溝を彫ることができるようになっている。
第一逃げ面203、204及び/又は前逃げ面205は、集束イオンビーム(FIB)のエッチングにより形成されている。FIBのエッチングは、複雑な形状の加工ができると共に、結晶面を選ばずに加工ができるという利点がある。従って、ダイヤモンドの一番固い結晶面である(111)面をも容易に加工ができる。これに対し、例えば砥石による研磨では、ダイヤモンドの(111)面の研磨ができない。
なお、第一逃げ面203、204及び前逃げ面205をFIBでエッチングする際、単結晶ダイヤモンド素材に対して浅い角度(<3°)でFIBを照射すると、照射面が平滑になり、鋭い切れ刃を形成できる。
なお切削を複数回くり返して行うことにより、所定の深さの溝を形成する。1回の切削で削る溝の深さは0.3μmから1μm程度なので、第一切れ刃213,214の長さは1μmから2μm程度が良い。そして図6に示すように、本発明では、前切れ刃210からの第1逃げ面203、204の長さL(図6参照)を前切れ刃の幅W1の3倍以上とし、深い溝の切削を行うため、W2≦W1とすると被切削物との接触面積(摩擦)を低減する効果が大きい。
0°からわずかに正に傾いていて、切削くず501をすくい取るようになっている。なおすくい面201が平滑であると、切削くず501は素直に外部に排出される。又、切削面Sに対し、前逃げ面205は逃げ角φだけ傾いていて、被削物500との接触を防止している。
又、方向Pに沿い、前切れ刃210からの第1逃げ面203、204の長さLを前切れ刃の幅W1の3倍以上とする。これにより、深さが幅の3倍以上の深い溝部の切削が可能となる。
なお、通常、逃げ角φを3〜8°程度とする。前逃げ面205と逃げ角φからLを算出することができる。なお、前逃げ面205が曲面の場合は、前切れ刃210の近傍での前逃げ面205の接線と切削面Sとのなす角を逃げ角φとする。
又、FIBによるダイヤモンドのエッチングレートは約0.07μm3/ナノクーロンでありビーム電流に比例するが、加工精度が要求される部分にはビーム電流を下げてビーム径を微小に絞る必要がある。一方、全ての部分でビーム電流を下げてエッチングすると、エッチング時間が長くなり過ぎる。
次に、粗加工工程より低いビーム電流で、ガリウム液体金属イオン源で発生したガリウムイオンの集束イオンビームのエッチングにより、第一逃げ面203、204及び前逃げ面205を仕上げ加工する。仕上げ加工では加工精度を高くし、第一逃げ面203、204及び/又は前逃げ面205の最終形状を作り込む。特に、前切れ刃210や第一切れ刃213、214の近傍の面について、粗加工と仕上げ加工とを行うと、これら切れ刃が高精度でエッチングされて鋭利になると共に、生産性も向上する。
そこで粗加工では、誘導結合プラズマ型のイオン源で発生した希ガスイオン又は酸素イオンの集束イオンビームを用いてエッチングし、仕上げ加工では、ガリウムイオンの集束イオンビームを用いてエッチングすると、加工精度の更に高い単結晶ダイヤモンド切削刃具を短時間で製造できる。
誘導結合プラズマ型イオン源のFIBで行う粗加工のビーム電流は1nA以上(例えば、2nA)、ビーム径1μm(加速電圧30kV)とすることができる。
一方、ガリウム液体金属イオン源のFIBで行う、仕上げ加工のビーム電流は1nA未満(例えば、30pA)、ビーム径60nm (加速電圧30kV)とすることができる。
ここで、微小な溝の超精密加工を行えるよう、切削加工機として分解能がnmレベルの超精密ナノ加工機を用いることが好ましい。超精密ナノ加工機としては、例えばファナック株式会社製の製品名「FANUC ROBONANO α-0iB 」が市販されている。この超精密ナノ加工機は、リニアモータと同期ビルトインサーボモータを制御することにより、同時5軸を高精度にダイレクト駆動し、直線軸で1nmの分解能を有する。
そして、金属膜20xの材質である金はレジスト樹脂よりヤング率が1桁高い導体であるため、強度不足や静電気による畝部の接触(スティッキング)が起こらない。また溝の側面の凹凸や、側壁と底との切削隅部の曲率半径は、刃具の形状に依存しており、それぞれ0.1μm以下の良好な溝の加工が可能になる。
又、図7では、X線タルボ干渉計用回折格子として、振幅型回折格子である第2の回折格子20を製造する場合を例示したが、位相型回折格子である第1の回折格子10も同様にして製造することができる。
10a、20a 溝部
10b、20b 畝部
100 X線タルボ干渉計
200 単結晶ダイヤモンド切削刃具
201 すくい面
203、204 第一逃げ面
205 前逃げ面
210 前切れ刃
213、214 第1切れ刃
500 被削物
W1 前切れ刃の幅
W2 第1逃げ面同士の間隔
S 被削物の切削面
L 被削物の切削面に垂直な方向に沿い、前切れ刃からの第1逃げ面の長さ
Claims (6)
- 被削物の切削くずをすくい取るすくい面と、
前記すくい面にそれぞれ隣接する側面となる2つの第1逃げ面と、
前記すくい面に隣接し、前記被削物の切削面に対向する前逃げ面と、
前記すくい面と前記前逃げ面との境界部に形成される前切れ刃と、
前記すくい面と前記第一逃げ面との境界部に形成される2つの第1切れ刃とを備え、
前記第1逃げ面同士の間隔が前記前切れ刃の幅以下であり、
前記被削物の切削面に垂直な方向に沿い、前記前切れ刃からの前記第1逃げ面の長さが前記前切れ刃の幅の3倍以上である、X線タルボ干渉計用回折格子の製造に用いられる単結晶ダイヤモンド切削刃具。 - 前記第一逃げ面及び/又は前記前逃げ面が集束イオンビームのエッチングにより形成されている請求項1記載の単結晶ダイヤモンド切削刃具。
- 少なくとも一部の前記第1逃げ面同士の間隔が前記前切れ刃の幅より狭い請求項1又は2記載の単結晶ダイヤモンド切削刃具。
- 請求項1〜3のいずれか記載の単結晶ダイヤモンド切削刃具の製造方法であって、
前記第一逃げ面及び/又は前記前逃げ面を、集束イオンビームのエッチングにより粗加工する粗加工工程と、
前記粗加工工程におけるビーム電流より低いビーム電流で、ガリウム液体金属イオン源で発生したガリウムイオンの集束イオンビームのエッチングにより、前記第一逃げ面及び/又は前記前逃げ面を仕上げ加工する仕上げ加工工程と、を有する単結晶ダイヤモンド切削刃具の製造方法。 - 前記粗加工工程を、誘導結合プラズマ型のイオン源で発生した希ガスイオン又は酸素イオンの集束イオンビームを用いて行う請求項4記載の単結晶ダイヤモンド切削刃具の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか記載の単結晶ダイヤモンド切削刃具を切削加工機に取り付け、前記前切れ刃の幅を4μm以下とし、
金属膜の一方向に沿い、かつ該一方向に垂直な方向に所定の周期で、前記単結晶ダイヤモンド切削刃具により切削加工を行って溝部を彫り、
前記溝部の幅が4μm以下、深さが前記溝部の幅の3倍以上で、かつ隣接する前記溝部の間に幅が4μm以下の畝状のX線吸収部を備えたX線タルボ干渉計用回折格子を製造する、X線タルボ干渉計用回折格子の製造方法。
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