JP2012219928A - クラッチフェーシング - Google Patents
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Abstract
【課題】カシューダストを配合することなく、珪藻土で配合ゴムを補強することにより摩擦係数の安定化と、耐摩耗性の向上の両立を可能としたこと。
【解決手段】ガラス繊維23vol%、金属線(銅)1vol%、ガラス繊維含浸用水性フェノール12vol%、配合ゴム64vol%、また、配合ゴム64vol%の内訳は、配合ゴム64vol%を100vol%としたとき、ゴム39vol%、カーボンブラック5vol%、硫黄6vol%、加硫促進剤3vol%とした。そして、配合ゴムの和が100vol%のとき、前記カシューダストを含まない配合ゴムは、ゴムと炭酸カルシウムの和が73〜83vol%と変化させ、珪藻土も3〜13vol%の範囲とした。
【選択図】図1
【解決手段】ガラス繊維23vol%、金属線(銅)1vol%、ガラス繊維含浸用水性フェノール12vol%、配合ゴム64vol%、また、配合ゴム64vol%の内訳は、配合ゴム64vol%を100vol%としたとき、ゴム39vol%、カーボンブラック5vol%、硫黄6vol%、加硫促進剤3vol%とした。そして、配合ゴムの和が100vol%のとき、前記カシューダストを含まない配合ゴムは、ゴムと炭酸カルシウムの和が73〜83vol%と変化させ、珪藻土も3〜13vol%の範囲とした。
【選択図】図1
Description
本発明は、乾式のクラッチフェーシング、例えば、自動車等の車両に用いられるクラッチのクラッチフェーシングに関し、特に、耐摩耗性、摩擦係数を安定化させたクラッチフェーシングに関するものである。
自動車等の車両に用いられるクラッチにおいては、半クラッチが多用される等の高負荷領域で使用されることによってクラッチフェーシングが非常に高温となるため、耐摩耗性等が問題となる場合が多い。特に、近年においては、クラッチフェーシングに対するニーズとして、エンジンの高出力化による耐磨耗性の向上、エンジンの高回転化による回転破壊強度の向上、ドライバビリティを向上させるための耐ジャダー性の向上が強く望まれている。
特許文献1では、繊維基材と、結合剤と、ゴム組成物と、摩擦調整剤とを含有する組成物を成形、硬化してなる摩擦材において、上記摩擦調整剤として、メラミン粉とメラミンダストとを併用し、メラミン粉の使用量が組成物全体に対して0.5〜8体積%であり、かつ、メラミン粉とメラミンダストとの合計使用量が組成物全体に対して5〜20体積%とし、常温から200℃領域のみならず、300℃以上の高温領域においても摩擦係数の安定性及び耐ジャダー性を向上させている。
耐ジャダー性の向上という観点からすると特許文献1は進歩性を有しているが、メラミン粉とメラミンダストを併用することにより、メラミンダストの添加量を抑制でき、300℃以上の高温域でメラミンダストの昇華ガスの発生量を抑制でき、高い摩擦係数を維持できる。
しかし、特許文献1の実施例では、カシューダストが必須要件となっており、実施例は全てカシューダストを添加している。このように、カシューダストを配合する場合には、タール化によって摩擦係数の低下は避けられない。特に、メラミンダストは比較的高価な材料であるので、コスト面で問題がある。
一般に、クラッチフェーシングは使用材料である配合ゴムにカシューダストを配合し、適度な潤滑性により耐摩耗性を確保している。しかし、カシューダストは高温になると熱分解してタール化し、摩擦界面に過剰の潤滑皮膜を形成するから摩擦係数が低下してしまう。
また、車両エンジンの高出力化と、車両の軽量化の流れの中で、従来のものに比較して相対的に小径のクラッチフェーシングで大トルクを伝達することになるため、使用上限温度は今後高くなる傾向にある。そのような使用環境においても、摩擦係数の低下を抑える必要がある。
また、車両エンジンの高出力化と、車両の軽量化の流れの中で、従来のものに比較して相対的に小径のクラッチフェーシングで大トルクを伝達することになるため、使用上限温度は今後高くなる傾向にある。そのような使用環境においても、摩擦係数の低下を抑える必要がある。
そこで、本発明は、カシューダストを配することなく、摩擦係数の安定化と、耐摩耗性の向上の両立を可能としたクラッチフェーシングを提供することを課題とするものである。
請求項1の発明にかかるクラッチフェーシングは、ガラス繊維と、金属線と、ガラス繊維含浸用フェノール樹脂と、配合ゴムとを含有するクラッチフェーシングにおいて、前記配合ゴムはカシューダストを含まずに、配合材料としてゴム、カーボンブラック、硫黄、加硫促進剤、珪藻土及び炭酸カルシウムを含有するものである。
ここで、前記ガラス繊維含浸用フェノール樹脂は、変性フェノール樹脂を含むものである。また、ゴムとしては、NBR(アクリロ二トリルーブタジエンーラテックス)ゴム、SBR(スチレンーブタジエンーラテックス)ゴム、天然ゴム、またはこれらの混合物等を用いることができる。カーボンブラックは粒子径(メディアン径(中位径))3乃至500nm程度のカーボンの微粒子であり、工業的に生産されたものである。
上記金属線は、銅、ステンレス等の直径0.1〜0.5mmのもので、所定長で切断したものでもよい。
そして、珪藻土とは、太古の海、水中に生息していた単細胞の植物性プランクトンであるケイソウの死骸が水底に堆積して化石化して形成された土をいう。ケイソウの体は、ガラスと同じ二酸化ケイ素(SiO2,シリカ)の殻で覆われており、この殻には無数の孔が規則正しく開いていて、その孔の大きさは近年壁材として使用されている木炭の数千分の一と極めて微小であることから吸湿性・有害化学物質等の吸着性に優れており、最近は優れた建材、特に、壁材として多用されるようになっている。
即ち、珪藻土の配合量は、配合ゴム全体に対して少ないと、珪藻土によって配合ゴムを所望の物性まで改良する効果が得ることができず、逆に、珪藻土の配合量が配合ゴム全体に対して多いと、配合ゴムの粘度が著しく増加して配合ゴムを混練することができなくなるので、所定の最適量が必要である。
また、炭酸カルシウムは、炭酸カルシウムはゴムの充填剤の添加剤としても使われるものであり、加工性を上げ、容積を確保し、廉価とするのに使用している。ゴムと炭酸カルシウムの和のうち、炭酸カルシウムの量が増加すると、それだけ脆いものになり、逆に炭酸カルシウムの量が減少すると粘性が大きくなる。
ここで、前記ガラス繊維含浸用フェノール樹脂は、変性フェノール樹脂を含むものである。また、ゴムとしては、NBR(アクリロ二トリルーブタジエンーラテックス)ゴム、SBR(スチレンーブタジエンーラテックス)ゴム、天然ゴム、またはこれらの混合物等を用いることができる。カーボンブラックは粒子径(メディアン径(中位径))3乃至500nm程度のカーボンの微粒子であり、工業的に生産されたものである。
上記金属線は、銅、ステンレス等の直径0.1〜0.5mmのもので、所定長で切断したものでもよい。
そして、珪藻土とは、太古の海、水中に生息していた単細胞の植物性プランクトンであるケイソウの死骸が水底に堆積して化石化して形成された土をいう。ケイソウの体は、ガラスと同じ二酸化ケイ素(SiO2,シリカ)の殻で覆われており、この殻には無数の孔が規則正しく開いていて、その孔の大きさは近年壁材として使用されている木炭の数千分の一と極めて微小であることから吸湿性・有害化学物質等の吸着性に優れており、最近は優れた建材、特に、壁材として多用されるようになっている。
即ち、珪藻土の配合量は、配合ゴム全体に対して少ないと、珪藻土によって配合ゴムを所望の物性まで改良する効果が得ることができず、逆に、珪藻土の配合量が配合ゴム全体に対して多いと、配合ゴムの粘度が著しく増加して配合ゴムを混練することができなくなるので、所定の最適量が必要である。
また、炭酸カルシウムは、炭酸カルシウムはゴムの充填剤の添加剤としても使われるものであり、加工性を上げ、容積を確保し、廉価とするのに使用している。ゴムと炭酸カルシウムの和のうち、炭酸カルシウムの量が増加すると、それだけ脆いものになり、逆に炭酸カルシウムの量が減少すると粘性が大きくなる。
請求項2の発明にかかるクラッチフェーシングは、その係合回数と摩擦係数との関係において、係合回数2000回の摩擦係数μが係合回数200回の摩擦係数μの0.15以内の差である。
ここで、前記ガラス繊維、前記金属線、前記ガラス繊維含浸用フェノール樹脂、前記配合ゴムの和が100vol%のとき、前記カシューダストを含まない配合ゴムは、ゴム及び炭酸カルシウムの和が73〜83vol%、珪藻土3〜13vol%とし、そこにカーボンブラック、硫黄、加硫促進剤を含有せしめたとき、所定の温度及び圧力で固めたときの特性が、係合回数200回と2000回での摩擦係数μの差が0.15以内に抑えることを特定するものである。なお、本発明では摩擦係数μは動摩擦係数を指すものである。
ここで、前記ガラス繊維、前記金属線、前記ガラス繊維含浸用フェノール樹脂、前記配合ゴムの和が100vol%のとき、前記カシューダストを含まない配合ゴムは、ゴム及び炭酸カルシウムの和が73〜83vol%、珪藻土3〜13vol%とし、そこにカーボンブラック、硫黄、加硫促進剤を含有せしめたとき、所定の温度及び圧力で固めたときの特性が、係合回数200回と2000回での摩擦係数μの差が0.15以内に抑えることを特定するものである。なお、本発明では摩擦係数μは動摩擦係数を指すものである。
請求項1の発明にかかるクラッチフェーシングは、ガラス繊維、金属線、ガラス繊維含浸用フェノール樹脂、配合ゴムによってクラッチフェーシングを形成し、前記配合ゴムは配合材料としてゴム、カーボンブラック、硫黄、加硫促進剤、珪藻土及び炭酸カルシウムを含有するものであり、配合材料にカシューダストを含まないものである。
本発明者等は、配合ゴムの成分として適切な材料について鋭意実験研究の結果、NBRゴム、SBRゴム、天然ゴムを始めとするゴム成分を中心として、これに加硫剤としての硫黄、加硫促進剤、及び所定体積範囲内の珪藻土を含有する場合、カシューダストを配さなくてもクラッチフェーシングとして最も優れた特性が発揮されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
特に、珪藻土の配合量は、配合ゴム全体に対して少ないと、珪藻土によって配合ゴムの物性が向上する効果を得ることができず、珪藻土の配合量が配合ゴム全体に対して多いと、配合ゴムの粘度が著しく増加して配合ゴムを混練することができなくなるので、所定の最適量が必要である。
また、発明者等の実験によれば、前記配合ゴムの配合材料の和が100vol%のとき、ゴム及び炭酸カルシウムの和が73〜83vol%、珪藻土が3〜13vol%とし、そこにカーボンブラック、硫黄、加硫促進剤を含有せしめたものであれば、配合ゴムの高温強度が大幅に向上して摩擦面の表面状態の維持が高まり、摩擦・摩耗性に優れたクラッチフェーシングとなる。
本発明者等は、配合ゴムの成分として適切な材料について鋭意実験研究の結果、NBRゴム、SBRゴム、天然ゴムを始めとするゴム成分を中心として、これに加硫剤としての硫黄、加硫促進剤、及び所定体積範囲内の珪藻土を含有する場合、カシューダストを配さなくてもクラッチフェーシングとして最も優れた特性が発揮されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
特に、珪藻土の配合量は、配合ゴム全体に対して少ないと、珪藻土によって配合ゴムの物性が向上する効果を得ることができず、珪藻土の配合量が配合ゴム全体に対して多いと、配合ゴムの粘度が著しく増加して配合ゴムを混練することができなくなるので、所定の最適量が必要である。
また、発明者等の実験によれば、前記配合ゴムの配合材料の和が100vol%のとき、ゴム及び炭酸カルシウムの和が73〜83vol%、珪藻土が3〜13vol%とし、そこにカーボンブラック、硫黄、加硫促進剤を含有せしめたものであれば、配合ゴムの高温強度が大幅に向上して摩擦面の表面状態の維持が高まり、摩擦・摩耗性に優れたクラッチフェーシングとなる。
請求項2の発明にかかるクラッチフェーシングは、その係合回数と摩擦係数との関係において、係合回数200回の初期状態の摩擦係数μと2000回の安定領域での摩擦係数μとの差が0.15以内にしたことである。その初期と安定領域での摩擦係数の差が0.15以内であるから摩擦係数μの安定した維持が得られ、また珪藻土による配合ゴムの補強も相俟って耐摩耗性の向上の両立を可能としたものである。
本発明の実施の形態にかかるクラッチフェーシングについて説明する。
まず、クラッチフェーシングを形成するカシューダストを含まない配合ゴムにおける珪藻土の配合量(vol%)と摩擦・磨耗の効果の関係について測定実験を行った。
カシューダストを含まない配合ゴムは、ゴム(NBRゴム、SBRゴム及び天然ゴムの混合物)、カーボンブラック、硫黄、加硫促進剤、珪藻土及び炭酸カルシウムを含有するものである。それらによって実施例1乃至実施例3の3種類の配合ゴムを作製し、炭酸カルシウムと珪藻土の配合量を変化させた。
まず、クラッチフェーシングを形成するカシューダストを含まない配合ゴムにおける珪藻土の配合量(vol%)と摩擦・磨耗の効果の関係について測定実験を行った。
カシューダストを含まない配合ゴムは、ゴム(NBRゴム、SBRゴム及び天然ゴムの混合物)、カーボンブラック、硫黄、加硫促進剤、珪藻土及び炭酸カルシウムを含有するものである。それらによって実施例1乃至実施例3の3種類の配合ゴムを作製し、炭酸カルシウムと珪藻土の配合量を変化させた。
表1は本発明の実施の形態のクラッチフェーシングの実施例と比較例の組成を示すものである。
具体的には、表1に示すように、実施例1乃至実施例3において、ガラス繊維23vol%、金属線(銅)1vol%、ガラス繊維含浸用フェノール樹脂(本発明の実施の形態では水性のものを使用している)、12vol%、配合ゴム64vol%を一定量として、また、配合ゴム64vol%の配合材料の内訳は、配合ゴム64vol%を100vol%としたとき、ゴム39vol%、カーボンブラック5vol%、硫黄6vol%、加硫促進剤3vol%も一定量とした。そして、配合ゴムの配合材料の和が100vol%のとき、前記カシューダストを含まない配合ゴムは、ゴムと炭酸カルシウムの和が73〜83vol%と変化させ、珪藻土も3〜13vol%と変化させた。
具体的には、表1に示すように、実施例1乃至実施例3において、ガラス繊維23vol%、金属線(銅)1vol%、ガラス繊維含浸用フェノール樹脂(本発明の実施の形態では水性のものを使用している)、12vol%、配合ゴム64vol%を一定量として、また、配合ゴム64vol%の配合材料の内訳は、配合ゴム64vol%を100vol%としたとき、ゴム39vol%、カーボンブラック5vol%、硫黄6vol%、加硫促進剤3vol%も一定量とした。そして、配合ゴムの配合材料の和が100vol%のとき、前記カシューダストを含まない配合ゴムは、ゴムと炭酸カルシウムの和が73〜83vol%と変化させ、珪藻土も3〜13vol%と変化させた。
また、比較例は、実施例1乃至実施例3と同様に、ガラス繊維23vol%、金属線(銅)2vol%、ガラス繊維含浸用水性フェノール樹脂12vol%、配合ゴム64vol%を一定量として、また、配合ゴム64vol%の内訳は、ゴム39vol%、カーボンブラック5vol%、硫黄6vol%、加硫促進剤3vol%も実施例1乃至実施例3に同じく、一定量とした。
そして、配合ゴムの配合材料の和が100vol%のとき、ゴムと炭酸カルシウムの和が75vol%とし、珪藻土は0vol%と、カシューダストの量を11vol%とした。
そして、配合ゴムの配合材料の和が100vol%のとき、ゴムと炭酸カルシウムの和が75vol%とし、珪藻土は0vol%と、カシューダストの量を11vol%とした。
実施例1乃至実施例3及び比較例の各配合は、表1に示す「クラッチフェーシングの組成」に記載のとおりである。
そこで、図1に示される実施例1乃至実施例3及び比較例の組成成分を金型に入れて、面圧15MPa、温度165℃で数回のガス抜きを行い、2分30秒の成形を行って得られた成形体を200℃で5時間熱処理を行い、その後、表裏を研磨した。そして、クラッチフェーシングのサイズを、外径Φ236mm×内径Φ150mm×厚さ3.5mmとした。
そこで、図1に示される実施例1乃至実施例3及び比較例の組成成分を金型に入れて、面圧15MPa、温度165℃で数回のガス抜きを行い、2分30秒の成形を行って得られた成形体を200℃で5時間熱処理を行い、その後、表裏を研磨した。そして、クラッチフェーシングのサイズを、外径Φ236mm×内径Φ150mm×厚さ3.5mmとした。
摩耗摩擦試験の試験条件は、慣性3.9kgm2 、回転数1500rpm、温度(プレッシャープレート温度)320℃、係合回数0〜2000回とした。
実施例1及び比較例のクラッチフェーシングについての試験結果を、図1の特性図に示し、実施例1及び比較例のクラッチフェーシングの摩擦摩耗試験の摩擦係数(μ)、摩耗量(mm)についての試験結果を表2に示すものである。
実施例1及び比較例のクラッチフェーシングについての試験結果を、図1の特性図に示し、実施例1及び比較例のクラッチフェーシングの摩擦摩耗試験の摩擦係数(μ)、摩耗量(mm)についての試験結果を表2に示すものである。
なお、表2は本発明の実施の形態に示したクラッチフェーシングの実施例と比較例の摩擦摩耗試験の摩耗係数と摩擦量との関係を示す表である。
また、実施例1乃至実施例3のクラッチフェーシングについての試験結果は、図2に示し、実施例1乃至実施例3のクラッチフェーシングの摩擦摩耗試験の摩擦係数(μ)、摩耗量(mm)についての試験結果を表3に示すものである。
また、実施例1乃至実施例3のクラッチフェーシングについての試験結果は、図2に示し、実施例1乃至実施例3のクラッチフェーシングの摩擦摩耗試験の摩擦係数(μ)、摩耗量(mm)についての試験結果を表3に示すものである。
なお、表3は本発明の実施の形態に示したクラッチフェーシングの実施例の摩擦摩耗試験の摩耗係数と摩擦量との関係を示す表である。
表2に示されるように、実施例1の配合ゴム組成の摩擦係数は、比較例の配合例と比較して飛躍的に向上しており、配合ゴムにカシューダストに換えて珪藻土を混入することによって摩擦係数を向上させることができる。したがって珪藻土は摩擦調整剤としての機能を有する。但し、表1には示されていないが、珪藻土の混入量を実施例1の3vol%よりも少なくすると殆ど摩擦係数は向上せず、また珪藻土の混入量を実施例3の13vol%よりも多くしても、摩擦係数効果は増大しないばかりか、配合ゴムの粘度が著しく上昇して混練が困難になるという問題が生じた。したがって、珪藻土の混入量は配合ゴム全体に対して3vol%〜13vol%の範囲内とすべきであることが分かった。
表2に示されるように、実施例1の配合ゴム組成の摩擦係数は、比較例の配合例と比較して飛躍的に向上しており、配合ゴムにカシューダストに換えて珪藻土を混入することによって摩擦係数を向上させることができる。したがって珪藻土は摩擦調整剤としての機能を有する。但し、表1には示されていないが、珪藻土の混入量を実施例1の3vol%よりも少なくすると殆ど摩擦係数は向上せず、また珪藻土の混入量を実施例3の13vol%よりも多くしても、摩擦係数効果は増大しないばかりか、配合ゴムの粘度が著しく上昇して混練が困難になるという問題が生じた。したがって、珪藻土の混入量は配合ゴム全体に対して3vol%〜13vol%の範囲内とすべきであることが分かった。
このように、配合ゴムに珪藻土を混入することによって摩擦係数が向上するのは、珪藻土は非常に複雑な形状を有しているとともに、前述の如く、微細な孔が無数に開いているためにゴムに対する接触面積が大きく、従って補強効果も高いことによるものと考えられる。
また、珪藻土はカシューダストのように摩擦時に皮膜を生ずることで潤滑性を上げて摩耗の発生を抑制するのではなく、炭酸カルシュウムをともなって配合ゴム自体を補強することで摩擦時の摩擦面の維持強化が成されるものと考えられる。つまり配合ゴム中のゴム、珪藻土、炭酸カルシュウムのバランスをとることで配合ゴムの表面の物性が係合時の摩擦によって変化し難いものとなり、その結果摩擦係数の低下が抑えられて摩耗し難いクラッチフェーシングとなる。したがって、珪藻土は摩擦係数の安定維持機能と摩耗抑制機能を有する。
更に、珪藻土は前述したように摩擦係数を所望の摩擦係数に調整する調整機能をも併せ持つ。このように珪藻土は、摩擦調整剤の機能を有するが、その機能には、摩擦係数を所望の摩擦係数に調整する調整機能と、摩擦係数を安定維持する機能と、耐摩耗性を向上させる摩耗抑制機能の3つの機能を持った摩擦調整剤といえる。本発明はこのような機能を持つ珪藻土を、その効果を効率よく発現させるための配合に関する発明である。
ここで、炭酸カルシウムは、ゴムの充填剤の添加剤としても使われるものであるから、ゴムとの相性は良いが、加工性を上げ、容積を確保し、廉価とするのに使用されるものであるから、ゴム及び炭酸カルシウムの和が73〜83vol%、珪藻土3〜13vol%とする必要がある。
ここで、炭酸カルシウムは、ゴムの充填剤の添加剤としても使われるものであるから、ゴムとの相性は良いが、加工性を上げ、容積を確保し、廉価とするのに使用されるものであるから、ゴム及び炭酸カルシウムの和が73〜83vol%、珪藻土3〜13vol%とする必要がある。
次に、これらの実施例1乃至実施例3及び比較例の配合を用いて実際にクラッチフェーシングを作製して、その性能を評価した。
具体的には、ガラス繊維及び金属線(銅)にガラス繊維含浸用水性フェノール樹脂を含浸させ、更に実施例1乃至実施例3及び比較例の配合ゴムをそれぞれ付着させて所定の大きさに巻き取り、金型に押し込み、面圧15MPa、温度165℃で数回のガス抜きを行い、2分30秒の成形を行って得られた成形体を200℃で5時間熱処理を行い、その後表裏を研磨した。ガラス繊維及び金属線(銅):ガラス繊維含浸用水性フェノール樹脂:配合ゴムの体積比の概要は、全て24:12:64とした。
具体的には、ガラス繊維及び金属線(銅)にガラス繊維含浸用水性フェノール樹脂を含浸させ、更に実施例1乃至実施例3及び比較例の配合ゴムをそれぞれ付着させて所定の大きさに巻き取り、金型に押し込み、面圧15MPa、温度165℃で数回のガス抜きを行い、2分30秒の成形を行って得られた成形体を200℃で5時間熱処理を行い、その後表裏を研磨した。ガラス繊維及び金属線(銅):ガラス繊維含浸用水性フェノール樹脂:配合ゴムの体積比の概要は、全て24:12:64とした。
図1と図2に示されるように、実施例1乃至実施例3のクラッチフェーシングと比較例に係るクラッチフェーシングとを比較すると、摩擦摩耗試験においては、摩擦係数において顕著に差が出ている。また、摩耗量が比較例に比べて実施例1乃至実施例3は明らかに変化が少ない。これによって、配合ゴム全体に対してゴム及び炭酸カルシウムの和を73〜83vol%とし、更に、珪藻土を3vol%〜13vol%の範囲内で配合した配合ゴムを使用したクラッチフェーシングは、摩擦係数の変化が少なく、耐摩耗性が向上することが分かる。また、表1、表2から、係合初期の係合回数200回と係合を重ねた係合回数2000回とで摩擦係数の差が0.15以内に収まっており、カシューダストを使用した比較例より変化が小さくなっている。このように安定的な摩擦係数を確保することができるため適切なトルク伝達が行える。更に、摩擦係数の差は、好ましくは0.05以内であると、トルク変動の少ないより効率的なトルク伝達が可能となる。また、摩耗量も比較例に比べて少なくなっていることから、耐久性が向上し使用期間の延長も期待できる。
このようにして、本実施の形態に係るクラッチフェーシングにおいては、ガラス繊維23vol%、金属線(銅)1vol%、ガラス繊維含浸用水性フェノール樹脂12vol%、配合ゴム64vol%、また、配合ゴム64vol%の内訳は、配合ゴム64vol%を100vol%としたとき、ゴム39vol%、カーボンブラック5vol%、硫黄6vol%、加硫促進剤3vol%とした。そして、配合ゴムの和が100vol%のとき、前記カシューダストを含まない配合ゴムは、ゴムと炭酸カルシウムの和が73〜83vol%と変化させ、珪藻土も3〜13vol%と変化させた。
配合ゴムの和が100vol%のとき、前記カシューダストを含まない配合ゴムは、ゴムと炭酸カルシウムの和が73〜83vol%と変化させ、珪藻土も3〜13vol%と変化させた範囲内で珪藻土を混入することによって、配合ゴムの安定的な摩擦特性及び耐摩耗性が向上することが明らかになった。ゴムと炭酸カルシウムの和が73〜83vol%のうち、炭酸カルシウムの量が増加すると、それだけ脆いものになり、逆に炭酸カルシウムの量が減少すると粘性が大きくなる。
本実施の形態においては、ガラス繊維含浸用水性フェノール樹脂を用いた例について説明したが、変性フェノール樹脂を用いることもできる。特に、これらのフェノール樹脂、変性フェノール樹脂は容易に入手できるとともに耐熱性に優れているため、クラッチフェーシングの材料としてのガラス繊維含浸用合成樹脂として好ましい。
本発明を実施するに際しては、クラッチフェーシングのその他の部分の組成、成分、配合量、材質、大きさ、作製方法等についても、本実施の形態に限定されるものではなく、任意に設定可能である。
Claims (2)
- ガラス繊維と、金属線と、ガラス繊維含浸用フェノール樹脂と、配合ゴムとを含有するクラッチフェーシングにおいて、
前記配合ゴムは、配合材料としてカシューダストを含まず、ゴム、カーボンブラック、硫黄、加硫促進剤、珪藻土及び炭酸カルシウムを含有し、
前記配合ゴムの前記配合材料の和が100vol%のとき、前記配合ゴムは、ゴム及び炭酸カルシウムの和が73〜83vol%、珪藻土が3〜13vol%とし、そこにカーボンブラック、硫黄、加硫促進剤を含有せしめたことを特徴とするクラッチフェーシング。 - 前記ガラス繊維と、前記金属線と、前記ガラス繊維含浸用フェノール樹脂と、前記カシューダストを含まない配合ゴムとを含有するクラッチフェーシングは、その係合回数と摩擦係数との関係において、係合回数2000回の摩擦係数μが係合回数200回の摩擦係数μの0.15以内の差であることを特徴とする請求項1に記載のクラッチフェーシング。
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2011
- 2011-04-11 JP JP2011086937A patent/JP2012219928A/ja not_active Withdrawn
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