JP2012218953A - カーボンナノチューブ配向集合体の製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブ配向集合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 基材の変形を防止し、カーボンナノチューブ配向集合体の収量低下や品質低下、各製造工程の不具合を防止することができる製造方法を提供する。
【解決手段】 金属基板の表面に触媒を担持した基材上に、化学気相成長法を用いてカーボンナノチューブ配向集合体を製造するカーボンナノチューブ配向集合体の製造方法において、前記金属基板として、その表面の残留歪みをεa、裏面の残留歪みをεbとし、それぞれの値の信頼区間をそれぞれMa、Mbとしたとき、基板面に沿って水平で且つ直交する2方向それぞれの残留歪みが式|εa−εb|≦Ma+Mbを満たしている基板を用いる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、カーボンナノチューブ配向集合体の製造方法に関する。
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう)は、炭素原子が平面的に六角形状に配置されて構成された炭素シートが、円筒状に閉じた構造を有する炭素構造体である。このカーボンナノチューブには、多層のもの及び単層のものがあるが、いずれもその力学的強度、光学特性、電気特性、熱特性、分子吸着機能等の面から、電子デバイス材料、光学素子材料、導電性材料等の機能性材料としての展開が期待されている。カーボンナノチューブの中でも単層カーボンナノチューブは、電気的特性(極めて高い電流密度)、熱的特性(ダイヤモンドに匹敵する熱伝導度)、光学特性(光通信帯波長域での発光)、水素貯蔵能、及び金属触媒担持能などの各種特性に優れている上、半導体と金属との両特性を備えているため、ナノ電子デバイス、ナノ光学素子、エネルギー貯蔵体などの材料として注目されている。
一方、カーボンナノチューブの製造方法の一つに、化学気相成長法(以下、「CVD法」とも称する)が知られている。この方法は、約500℃〜1,000℃の高温雰囲気下で炭素化合物を触媒の金属微粒子と接触させることを特徴としており、触媒の種類及び配置、あるいは炭素化合物の種類及び反応条件といった態様を様々に変化させた中でのカーボンナノチューブの製造が可能であり、カーボンナノチューブの大量製造に適したものとして注目されている。またこのCVD法は、単層カーボンナノチューブ(SWカーボンナノチューブ)及び多層カーボンナノチューブ(MWカーボンナノチューブ)のいずれも製造可能である上、基材面に垂直に配向した多数のカーボンナノチューブを製造することができる、という利点を備えている。
特許文献1には、化学気相成長法によるカーボンナノチューブ配向集合体製造において、基板上の触媒担持層の下に浸炭防止層を設けている。これにより、高炭素環境下におけるカーボンナノチューブ配向集合体製造時に基板が浸炭されることを防いでおり、浸炭による基板の変形(反り)を防ぐことが可能とされている。
WO2010/092786号パンフレット
上記に示した、触媒を担持した基板を用いた化学気相法によるカーボンナノチューブ配向集合体の製造においては、金属基板の変形(反り等)を抑制することができるが、より面積の大きい基板を用いた場合、完全に浸炭を防止できずに反り量が大きくなってしまうという問題が判明していた。工業的にカーボンナノチューブを大量製造するには、基材面積のより大きな基材を用いることが製造効率の観点から有効であるが、基材が大きくなるほど基材の変形量(反り量)が増大してしまう。また、カーボンナノチューブ配向集合体製造の低コスト化のためには基材を繰り返し再利用する必要があるが、再利用を繰り返すごとに基材の変形が増大してしまうという問題がある。以上のような理由から金属基板の反り防止手段の改善が求められていた。
CVD中に基材が変形すると、基材表面付近のガスの流れが変化して、カーボンナノチューブの成長が基材上で不均一となってしまい、収量や品質の低下を招く恐れがある。また、基材からカーボンナノチューブ配向集合体を剥離する工程で、剥離装置と基材が接触、衝突するなどの不具合が生じる可能性がある。また、基材の再利用を繰り返すことにより変形が増大すると、カーボンナノチューブの成長自体が阻害されたり、基材の洗浄工程や基板表面への触媒成膜工程においても不具合が生じたりする可能性がある。
本発明者は、カーボンナノチューブ配向集合体製造において金属基板の大きな変形を生じさせる原因の1つが、基板が浸炭されることで基板自体がもつ残留歪みが緩和されることであると推測し、基板面に沿って水平で且つ直交する2方向それぞれの残留歪みの表面と裏面との差が実質的に無い基板をカーボンナノチューブ配向集合体製造用基材として用いることで、カーボンナノチューブ製造工程における金属基板の変形を防止できることを見出し、それによって、連続製造時におけるカーボンナノチューブ配向集合体の製造量低下や品質劣化、製造工程の歩留まりを防止することができることを見出した。
すなわち、本発明の例示的側面としてのカーボンナノチューブ配向集合体の製造方法は、金属基板の表面に触媒を担持した基材上に、化学気相成長法を用いてカーボンナノチューブ配向集合体を製造するカーボンナノチューブ配向集合体の製造方法であって、
前記金属基板が、その表面の残留歪みをεa、裏面の残留歪みをεbとし、それぞれの値の信頼区間をそれぞれMa、Mbとしたとき、基板面に沿って水平で且つ直交する2方向それぞれの残留歪みが下式(1)を満たしていることを特徴とする。
|εa−εb|≦Ma+Mb (1)
前記金属基板は、Fe−Cr合金、Fe−Ni合金およびFe−Cr−Ni合金からなる群より選ばれるいずれか1種の合金であることが好ましい。
また前記金属基板は、金属基板に残留歪みを低減する処理を施し、前記式(1)の条件を満たすものとしたものを用いてもよい。
前記金属基板の厚さは0.05mm以上かつ3mm以下であることが好ましい。
また前記触媒を担持した基材の表面および裏面の面粗さは、算術平均粗さRa≦3μmであることが好ましい。
前記基材は、前記金属基板の表面及び裏面に浸炭防止層が形成され、少なくともいずれか一方の面の浸炭防止層上に触媒が形成されているものであることが好ましく、前記浸炭防止層は、セラミック材料から主としてなるものであることがさらに好ましい。
本発明では、基板面に沿った水平で且つ直交する2方向それぞれの残留歪みが表面と裏面で差がほぼ無いカーボンナノチューブ配向集合体製造用基材を用いる。それにより、基材の変形を防止し、カーボンナノチューブ配向集合体の収量低下や品質低下、各製造工程の不具合を防止することができる。
本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブの製造方法に用いられる金属基板の残留歪みを模式的に表す概念図である。 本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブの製造方法に用いられるカーボンナノチューブ配向集合体製造用基材の構成を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブの製造方法のフローチャートである。 本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブの製造方法に用いる、カーボンナノチューブ製造装置の構成を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブの製造方法に用いる、カーボンナノチューブの連続製造装置の構成を模式的に示す図である。 基板の変形の測定を表す図である。
以下に本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
(カーボンナノチューブ配向集合体)
本発明のカーボンナノチューブ配向集合体の製造方法では、金属基板上n担持した触媒から、原料ガスを用いて高効率でカーボンナノチューブを成長させることができ、触媒から成長した多数のカーボンナノチューブは特定の方向に配向し、カーボンナノチューブ配向集合体を形成する。
本発明に係るカーボンナノチューブ配向集合体の製造方法によって得られる単層カーボンナノチューブ配向集合体は、比表面積が高く、一本一本のカーボンナノチューブが規則的な方向に配向していて、かつ嵩密度が低いという従来のカーボンナノチューブ集合体にはない優れた特性を有するという特徴がある。単層カーボンナノチューブ配向集合体の比表面積は、例えば、600m/g以上、2600m/g以下と非常に大きい。このように大きな比表面積は、触媒の担持体やエネルギー貯蔵材及び物質貯蔵材として有効であり、スーパーキャパシタやアクチュエータなどの用途に好適である。また、カーボンナノチューブ配向集合体を構成する一本一本のカーボンナノチューブが規則的な方向に配向している。そのため、個々のカーボンナノチューブの機能の方向性を揃えることができ、結果として、高機能なカーボンナノチューブ集合体を得ることができる。
さらにこの単層カーボンナノチューブ配向集合体は、重量密度が、例えば、0.002g/cm以上、0.2g/cm以下と低密度である。このように基材上で低密度に成長した単層カーボンナノチューブ配向集合体は、集合体を構成する個々の単層カーボンナノチューブ同士の結びつきが弱く、基材から取り外した単層カーボンナノチューブ配向集合体を、溶媒などに均一に分散させることが容易である。これらに加えて、適度に配向していて低密度な本発明の単層カーボンナノチューブ配向集合体は、成長後の後処理行程による密度調節が容易であり、高密度化処理行程を経ることにより、あたかも藁を束ねて作られた俵のように、互いに隣接するカーボンナノチューブ同士を隙間なく高密度に充填させることが可能である。この際、高密度化処理行程を制御することによって様々な形状に成型することができる。
(比表面積)
これらのカーボンナノチューブ配向集合体の好ましい比表面積は、単層カーボンナノチューブが主として未開口のものにあっては、600m/g以上であり、単層カーボンナノチューブが主として開口したものにあっては、1300m/g以上である。
比表面積が600m/g以上の未開口のもの、1300m/g以上の開口したものは、金属などの不純物若しくはアモルファスカーボンなどの炭素不純物を重量の数十パーセント(40%程度)未満と少なく、カーボンナノチューブ本来の機能を発現することができ、触媒の担持体、エネルギー・物質貯蔵材、スーパーキャパシタ、並びにアクチュエータなどの用途において好適である。
単層カーボンナノチューブ配向集合体の比表面積は、一般的には大きければ大きいほど好ましいが、理論的上限があり、未開口のものは1300m/g程度であり、開口したものは2600m/g程度である。
単層カーボンナノチューブ配向集合体が配向性、及び高比表面積を示すためには、単層カーボンナノチューブ配向集合体の高さ(長さ)は10μm以上、10cm以下の範囲にあることが好ましい。この高さ範囲にある単層カーボンナノチューブ配向集合体は、良好な配向性及び大きい比表面積を備えている。高さが10μm以上であることで、配向性が向上する。また高さが10cm以下のものは、成長を短時間で行えるため炭素系不純物の付着を抑制でき、比表面積を向上させることができる。さらには、この高さ範囲のある単層カーボンナノチューブ配向集合体は高い一体性を備え、取扱いが容易であり、形状加工性も良好である。
カーボンナノチューブ配向集合体の配向は以下の1から3の少なくともいずれか1つの方法によって評価することができる。すなわち、1.カーボンナノチューブの長手方向に平行な第1方向と、第1方向に直交する第2方向とからX線を入射してX線回折強度を測定(θ−2θ法)した場合に、第2方向からの反射強度が、第1方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在し、かつ第1方向からの反射強度が、第2方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在すること。2.カーボンナノチューブの長手方向に直交する方向からX線を入射して得られた2次元回折パターン像でX線回折強度を測定(ラウエ法)した場合に、異方性の存在を示す回折ピークパターンが出現すること。3.ヘルマンの配向係数が、θ―2θ法又はラウエ法で得られたX線回折強度を用いると0より大きく1より小さいこと。より好ましくは0.25以上、1以下であること。
また、前述のX線回折法において、単層カーボンナノチューブ間のパッキングに起因する(CP)回折ピーク、(002)ピークの回折強度及び単層カーボンナノチューブを構成する炭素六員環構造に起因する(100)、(110)ピークの平行と垂直との入射方向の回折ピーク強度の度合いが互いに異なるという特徴も有している。
(重量密度)
本発明に係るカーボンナノチューブ配向集合体製造用基材によって得られる単層カーボンナノチューブ配向集合体の重量密度は、例えば、0.002g/cm以上、0.2g/cm以下である。この重量密度は、触媒微粒子の密度と種類を調整することによって制御可能である。
重量密度が0.002g/cm以上、0.2g/cm以下の範囲にあると、成長後に高密度化処理を施すことにより、あたかも藁を束ねて作られた俵のように、互いに隣接するカーボンナノチューブ同士を隙間なく高密度に充填させることが可能である。この際、Nature Material誌、第5巻(2006年)、第987〜994頁に述べられている手法などを利用して高密度化処理行程を制御することにより、例えば高密度なフィルム状などの様々な形態に単層カーボンナノチューブ配向集合体を成形することができる。
重量密度が0.2g/cm以下であれば、単層カーボンナノチューブ配向集合体を構成するカーボンナノチューブ同士の結びつきが弱くなるので、単層カーボンナノチューブ配向集合体を溶媒などに攪拌した際に、均質に分散させることが容易になる。また、単層カーボンナノチューブ配向集合体の剛直性及び一体性が適切な範囲となり、成長後に高密度化処理を施して様々な形状に成形することができる。また重量密度が0.002g/cm以上であれば、単層カーボンナノチューブ配向集合体の一体性が損なわれず、バラけることを抑制できるため、成形加工を好適に行える。
(カーボンナノチューブ配向集合体製造用基材)
本発明のカーボンナノチューブ配向集合体の製造方法は、基板の表面に触媒を担持した基材上に、化学気相成長法を用いてカーボンナノチューブ配向集合体を製造する。ここにおいて、基材(カーボンナノチューブ配向集合体製造用基材)は、例えば平板状の部材であり、500℃以上の高温でも形状を保持できる材質であることが望ましい。
具体的には、基板として金属基板を用いる。シリコンやセラミックを材料とする場合に比較して、基板のサイズを大きくすることが容易であり、低コストとすることができるからである。従来使用されていたシリコン基板、セラミック基板、ガラス基板等の材質では金属基板ほど浸炭されないので、基板の変形の問題は発生しなかった。金属基板の材質としては、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム、マンガン、コバルト、銅、銀、金、白金、ニオブ、タンタル、鉛、亜鉛、ガリウム、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、及びアンチモンなどの金属、並びにこれらの金属を含む合金などが挙げられる。また、特に、安価であること、及びカーボンナノチューブ配向集合体の成長が良好なことから、Fe−Cr(鉄−クロム)合金、Fe−Ni(鉄−ニッケル)合金、Fe−Cr−Ni(鉄−クロム−ニッケル)合金等の合金であることが望ましい。
金属基板の厚さに特に制限はなく、例えば数μm程度の薄膜から数cm程度までのものを用いることができる。好ましくは、0.05mm以上3mm以下である。基板の厚さが3mm以下であれば、CVD工程で基材を十分に加熱することができ、カーボンナノチューブの成長不良を抑えることができる。また基板のコストも低減する。基板の厚さが0.05mm以上であれば、浸炭による基板の変形を抑えることができ、また基板自体がたわみにくくなるので、基板の搬送を好適に行える。
(基板表面の残留歪み)
外部からの力が除かれた後や、温度分布が変化した後に物質中に残る歪み(伸び、縮み)を残留歪みという。金属板の製造工程においては、金属の圧延や切断などの加工や、熱処理などの工程で金属板に様々な応力が加わる。また、金属板のロールへの巻きつけ工程では、金属板の表面および裏面にそれぞれ異なる応力がかかる。このため、表面と裏面で残留歪みの差が生じる。
金属基板をカーボンナノチューブ配向集合体製造用基材に用いる場合、CVD工程における高炭素環境下で該基板は浸炭される。表面に残留歪みのある金属基板を用いる場合、この浸炭によって基板表面の残留歪みは解放されることになる。このとき、基板の表と裏の残留歪みの大きさにある程度の差がある場合、解放によって伸びる(または縮む)量が表と裏で異なるため、基板が反ってしまい、カーボンナノチューブ配向集合体の製造歩留りの低下を発生させていたと推測される。
本発明で使用される基板表面の残留歪みは、X線応力測定装置によって測定される。X線による残留歪みの測定原理は以下のようになっている。通常、基板表面の結晶格子の格子面間隔は一定であるが、基板表面に残留歪みが存在する場合、格子面間隔に変化が生じている。圧縮歪みが存在する場合は通常よりも格子面間隔が狭くなり、引張歪みが存在する場合は通常よりも格子面間隔が広くなる。こういった格子面間隔の差をX線回折によって検出することで、基板表面に存在する残留歪みを求めることができる。
残留歪みの測定方法は、基板のX方向、Y方向についてそれぞれ並傾法、側傾法を用いて8点(Ψ角度は0°〜45°)測定される。ピーク検出方法は半価幅中点法で行われ、2θ−sinΨプロットから最小二乗法によって、下式で求められる。残留応力をσ(MPa)、回折角をθ(deg)、試料面法線と格子面法線のなす角をΨ(deg)、応力定数をK(MPa/deg)、とすると、σは次式で与えられる。
Figure 2012218953
ここで、応力定数K(MPa)は、ヤング率をE(MPa)、ポアソン比をν、無歪状態でのブラッグ角をθ0(deg)とすると、次式で表される。
Figure 2012218953
残留歪みεは、次式で表される。
Figure 2012218953
基板の表面の残留歪みをεa、裏面の残留歪みをεbとし、それぞれの値の信頼区間をそれぞれMa、Mbとする。ここで、信頼区間とは、上記2θ−sinΨプロットで得られた直線における、sinΨに対する2θの値の統計的に信頼できる幅(誤差)のことである。信頼区間の信頼率はMa、Mbとも95%である。すなわち、95%の確率でεa、εbについて、それぞれεa±Ma、εb±Mbの値は誤差の範囲内ということになる。
本発明で使用される基板は、基板面に沿って水平で且つ直交する2方向それぞれの残留歪みが、表面と裏面で実質的に差が無いものである。すなわち、本発明で使用される基板は、例えば図1に模式図で示される基板のX方向において、下式(1)を満たしている。
|εa−εb|≦Ma+Mb (1)
また、本発明で使用される基板は、図1に示されるにおけるY方向における残留歪みについても同様に上式を満たしている。また、基板上の複数点において残留歪みを測定し、それぞれの測定点におけるεa、εb、Ma、Mbそれぞれの平均値をεaave、εbave、Maave、Mbaveとしたとき、|εaave−εbave|、Maave、Mbaveについても同様に上式を満たしている。
以上の条件を満たしている場合、該基板には表面と裏面で残留歪みの差が無いものといえる。
残留歪みがある金属基板は、残留歪みを低減する処理を施し、前記式(1)の条件を満たすものとして本発明の製造方法に用いることができる。金属基板の残留歪みを取り除く手段として、レベラーを用いる方法や外部磁場を用いる方法、焼鈍し処理など種々の手段を用いることができる。レベラー加工とは、ロール巻き付けにより基板表面に発生した残留応力を、複数のローラーを用いて機械的に取り除く方法である。焼鈍しとは、鋼などの金属材料を適当な温度に加熱し、その温度に一定時間保持することで金属組織を軟化させ、その後ゆっくりと冷却する処理のことであり、金属材料の結晶組織の調整、残留応力の除去や、硬さの低下、加工性の向上などの効果を持つ。焼鈍しにおける処理条件は、用いる基板の材質等により異なるため適宜の条件で行う。残留応力の除去効果および熱による基板へのダメージ等を考慮すると、温度は200℃〜1200℃が好ましい。焼鈍しの雰囲気は、特に限定は無いが、基板表面の酸化を防ぐために、還元性または中性のガス、例えば水素ガス、アンモニア、窒素ガスおよびそれらの混合ガスを適用することが好ましい。また、水素ガスをヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスと混合した混合ガスまたは真空中でもよい。処理時間は、用いられる好ましい範囲としては、1分〜20時間である。これら処理条件は、用いる基板の材質や残留応力の大きさはもとより、処理温度や処理雰囲気等の組み合わせにより大きく異なるため、使用する基板等により適切な条件を選択する。
基板の変形による不具合において、問題となる基板の変形量はプロセスに依存するが、以下の例を挙げることができる。例えば、基板を繰り返し使用する場合、スパッタリング法にて基板表面に触媒を形成する際、基板が大きく変形していると、基板とターゲット間の距離によって形成される触媒層の膜厚が変化するので、触媒層の膜厚を均一にするために、基板の変形量は、10mm未満とすることが好ましい。
触媒層の膜厚が不均一となると、カーボンナノチューブの成長が不均一となったり、比表面積が低下したりする恐れがある。また、例えばCVD工程において、カーボンナノチューブの成長中に基材が変形すると、基材表面付近のガスの流れが変化して、カーボンナノチューブの成長が不均一となったり、比表面積やG/D比が低下したりする恐れがある。
また、シャワーヘッドと基材の間隔が変化すると、カーボンナノチューブの成長が不均一となったり、比表面積やG/D比が低下したりする恐れがある。所望の比表面積及びG/D比のカーボンナノチューブを基材上に均一に成長させるためには、基材の変形量は、10mm未満とすることが好ましい。
基板の形状は特に制限はないが、長方形もしくは正方形のものを用いることができる。基板の一辺の大きさに特に制限はないが、従来使用されている一辺が1cm程度の基板の場合、基板の変形量は大きくとも数mm程度であり、不具合の発生する可能性は小さい。しかし、基材の一辺の長さは、カーボンナノチューブの量産性の観点から、大きいほど望ましく、具体的には10cm以上50cm以下であることが望ましい。一辺が9cm程度の場合、基材の変形量は10mm未満に抑えられていたが、それよりも大きくなると、基材の変形量は10mmを越えることがあるため、基材の変形による問題が顕著に発生して、本発明による効果を顕著に得ることができる。
(浸炭防止層)
本発明の製造方法では、前記金属基板の表面及び裏面の両面に浸炭防止層を形成することが好ましい。浸炭防止層は、カーボンナノチューブの成長工程において、基材が浸炭されて変形してしまうのを防止するための保護層である。
浸炭防止層は、金属又はセラミック材料によって構成されることが好ましく、特に浸炭防止効果の高いセラミック材料であることが好ましい。単金属としては、銅やアルミニウム等が挙げられる。
セラミック材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカアルミナ、酸化クロム、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化亜鉛などの酸化物や、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物が挙げられ、なかでも浸炭防止効果が高いことから、酸化アルミニウム、酸化ケイ素が好ましい。なお、本発明において「セラミック材料から主としてなる」とは全材料のうちセラミック材料を最も多く含むことを意味する。
浸炭防止層上には、後述するカーボンナノチューブ配向集合体成長のための触媒を形成するが、浸炭防止層の材質と触媒の材質が共通する場合、浸炭防止層が触媒としての機能を兼ねていてもよい。
浸炭防止層の厚さは、0.01μm以上、1.0μm以下が望ましい。層さが0.01μm以上、であれば、浸炭防止効果を充分に得ることができる。層厚さが1.0μm以下であれば、基材の熱伝導性の変化を抑制して、CVD工程で基材を十分に加熱することができ、カーボンナノチューブの成長不良の発生を抑制できる。層形成(コーティング)の方法としては、例えば、蒸着、スパッタリング等の物理的方法、CVD、塗布法等の方法を適用することができる。
(触媒)
金属基板の表面上には、カーボンナノチューブ配向集合体成長のための触媒を形成する。ここで「表面に形成する」とは、金属基板と触媒層との間に浸炭防止層などの他の層を有する場合も含むものとする。触媒としては、カーボンナノチューブ配向集合体の製造が可能なものであれば、適宜のものを用いることができ、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、及びこれらの塩化物、及び合金、またこれらが、さらにアルミニウム、アルミナ、チタニア、窒化チタン、酸化シリコンと複合化、また層状になっていてもよい。例えば、鉄−モリブデン薄膜、アルミナ−鉄薄膜、アルミナ−コバルト薄膜、及びアルミナ−鉄−モリブデン薄膜、アルミニウム−鉄薄膜、アルミニウム−鉄−モリブデン薄膜などを例示することができる。
触媒の存在量としては、カーボンナノチューブ配向集合体の製造が可能な量であればよく、例えば鉄を用いる場合、その厚さは、0.1nm以上100nm以下が好ましく、0.5nm以上5nm以下がさらに好ましく、0.8nm以上2nm以下が特に好ましい。
基板表面への触媒層の形成は、ウェットプロセスあるいはドライプロセスのいずれを適用してもよい。例えば、スパッタリング蒸着法や、金属微粒子を適宜な溶媒に分散させた液体の塗布法及び焼成法などを適用することができる。また周知のフォトリソグラフィー、ナノインプリンティング等を適用したパターニングを併用して触媒層を任意の形状とすることもできる。本発明の製造方法においては、基板上に成膜する触媒のパターニング及びカーボンナノチューブ配向集合体の成長時間により、薄膜状、円柱状、角柱状、及びその他の複雑な形状をしたものなど、単層カーボンナノチューブ配向集合体の形状を任意に制御することができる。
特に薄膜状の単層カーボンナノチューブ配向集合体は、その長さ及び幅寸法に比較して厚さ(高さ)寸法が極端に小さいが、長さ及び幅寸法は、触媒のパターニングによって任意に制御可能であり、厚さ寸法は、単層カーボンナノチューブ配向集合体を構成する各単層カーボンナノチューブの成長時間によって任意に制御可能である。
なお、基板の表面及び裏面の両面に触媒が形成されていれば、カーボンナノチューブ配向集合体を基材の両面において成長させることができるので、製造効率の点からより望ましい。もちろん、製造コスト及び製造工程上の都合等に応じて、触媒を片面としたりすることは可能である。
図2に本発明におけるカーボンナノチューブ配向集合体製造用基材の概略図を示す。基材1−1を構成する主材としての金属基板1−1aは、好ましくは厚さ0.05mm〜3mmの金属基板により構成されている。その金属基板1−1aの表面及び裏面に浸炭防止層1−1bが形成されている。この浸炭防止層1−1bは、好ましくはセラミック材料で構成され、層厚さは0.01μm〜1.0μmである。浸炭防止層1−1bの更に外側には、触媒(触媒層)1−1cが形成されている。触媒には、鉄−コバルト、鉄−モリブデン等の触媒が用いられ、その層厚さは、0.1nm〜100nm程度である。
なお、基板及び基板表面の浸炭防止層、触媒をも含めた基材においては、その表面の算術平均粗さRaが3μm以下であることが望ましい。これにより、基材表面への炭素汚れの付着が防止又は低減され、さらに浸炭されにくくなり、高品質のカーボンナノチューブを高効率で製造することが可能となる。算術平均粗さRaは、「JIS B0601−2001」に記載の通り、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さLだけ抜き取って、この抜取り部分の平均線方向にX軸、直交する縦倍率の方向にY軸をとったときの表面プロファイルをy=f(x)で表したときに、次式によって求められる。
Figure 2012218953
(CNT配向集合体の製造方法)
本発明に係る単層CNT配向集合体の別の製造方法を以下に説明する。本実施例に係る製造工程のフローチャートを図3に示す。
まず、基板表面へウェットプロセスもしくはドライプロセスを用いて触媒層を形成する。この基材を用いてカーボンナノチューブ配向集合体を製造するが、製造工程には、成長工程とその準備段階といえるフォーメーション工程がある。
(フォーメーション工程)
フォーメーション工程とは、基材に担持された触媒の周囲環境を還元ガス環境とすると共に、触媒及び還元ガスのうち少なくとも一方を加熱する工程のことを意味する。この工程により、触媒の還元、触媒のCNTの成長に適合した状態である微粒子化の促進、触媒の活性向上の少なくとも一つの効果が現れる。例えば、触媒がアルミナ−鉄薄膜である場合、鉄触媒層は還元されて微粒子化し、アルミナ層上にナノメートルサイズの鉄微粒子が多数形成される。これにより触媒はCNT配向集合体の生産に好適な触媒に調製される。なお、このときの鉄微粒子の密度は、好ましくは1×1012個/cm2以上、1×1014個/cm以下に調整される。
(還元ガス)
還元ガスは、一般的には、触媒の還元、触媒のCNTの成長に適合した状態である微粒子化の促進、触媒の活性向上の少なくとも一つの効果を持つ、成長温度において気体状のガスである。典型的には還元性を有したガスであり、例えば水素ガス、アンモニア、水蒸気およびそれらの混合ガスを適用することができる。また、水素ガスをヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスと混合した混合ガスでもよい。還元ガスは、一般的には、フォーメーション工程で用いるが、適宜成長工程で用いてもよい。
(成長工程)
成長工程とは、フォーメーション工程によってCNTの生産に好適な状態となった触媒の周囲環境を原料ガス環境とすると共に、触媒又は原料ガスの少なくとも一方を加熱することにより、CNT配向集合体を成長させる工程のことを意味する。
(原料ガス)
本発明においてCNTの生成に用いる原料ガスとしては、例えば、成長温度において原料炭素源を有するガスである。なかでもメタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、プロピレン、及びアセチレンなどの炭化水素が好適である。この他にも、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、アセトン、一酸化炭素などの低炭素数の含酸素化合物でもよい。これらの混合物も使用可能である。またこの原料ガスは、不活性ガスで希釈されていてもよい。
(触媒賦活物質)
CNTの成長工程において、触媒賦活物質を添加してもよい。触媒賦活物質の添加によって、カーボンナノチューブの生産効率や純度をより一層改善することができる。ここで用いる触媒賦活物質としては、一般には酸素を含む物質であり、成長温度でCNTに多大なダメージを与えない物質であることが好ましい。例えば、水、酸素、オゾン、酸性ガス、酸化窒素、一酸化炭素、及び二酸化炭素などの低炭素数の含酸素化合物;エタノール、メタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトンなどのケトン類;アルデヒド類;エステル類;並びにこれらの混合物が有効である。この中でも、水、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、およびエーテル類が好ましく、特に水が好適である。
触媒賦活物質の添加量に格別な制限はないが、微量が好ましく、触媒の周囲環境中の濃度で、例えば水の場合には、10ppm以上10000ppm以下、好ましくは50ppm以上1000ppm以下、さらに好ましくは200ppm以上700ppm以下の範囲とするとよい。
触媒賦活物質の機能のメカニズムは、現時点では以下のように推測される。CNTの成長過程において、副次的に発生したアモルファスカーボン及びグラファイトなどが触媒に付着すると触媒は失活してしまいCNTの成長が阻害される。しかし、触媒賦活物質が存在すると、アモルファスカーボン及びグラファイトなどを一酸化炭素及び二酸化炭素などに酸化させることでガス化するため、触媒層が清浄化され、触媒の活性を高め且つ活性寿命を延長させる作用(触媒賦活作用)が発現すると考えられている。
なお、例えばアルコール類や一酸化炭素などのような炭素と酸素を含有する化合物は、原料ガスとしても触媒賦活物質としても作用し得る。例えば、これらをエチレンなどの分解して炭素源となりやすい原料ガスと併用する場合は触媒賦活物質として作用し、また水などの活性が高い触媒賦活物質と併用する場合は原料ガスとして作用するものと推測される。さらに、一酸化炭素などは、分解して生じる炭素原子がCNTの成長反応の炭素源となる一方で、酸素原子がアモルファスカーボン及びグラファイトなどを酸化してガス化する触媒賦活物質としても作用するものと推測される。
(不活性ガス)
不活性ガスとしては、CNTが成長する温度で不活性であり、成長するCNTと反応しないガスであればよく、ヘリウム、アルゴン、窒素、ネオン、クリプトン、水素、及び塩素など、並びにこれらの混合ガスが例示でき、特に窒素、ヘリウム、アルゴン及びこれらの混合ガスが好適である。原料ガスの種類によっては水素と化学反応を生じる場合がある。その場合にはCNTの成長が阻害されない程度に水素量を低減する必要が生じる。例えば、原料ガスとしてエチレンを用いる場合、水素濃度は1%以下が好ましい。
(雰囲気圧力)
成長工程における触媒の周囲環境の圧力は、10Pa以上、10Pa(100気圧)以下が好ましく、10Pa以上、3×10Pa(3大気圧)以下が好ましい。
(反応温度)
CNTを成長させる反応温度は、金属触媒、原料炭素源、及び反応圧力などを考慮して適宜に定められるが、触媒失活の原因となる副次生成物を排除するために触媒賦活物質を添加する工程を含む場合は、その効果が十分に発現する温度範囲に設定することが望ましい。つまり、最も望ましい温度範囲としては、アモルファスカーボン及びグラファイトなどの副次生成物を触媒賦活物質が除去し得る温度を下限値とし、主生成物であるCNTが触媒賦活物質によって酸化されない温度を上限値とすることである。
例えば、触媒賦活物質として水を用いる場合は、好ましくは400℃以上、1000℃以下とすることである。400℃以上で触媒賦活物質の効果を十分に発現させることができ、1000℃以下で、触媒賦活物質がCNTと反応することを抑制できる。また触媒賦活物質として二酸化炭素を用いる場合は、400℃以上、1100℃以下とすることがより好ましい。400℃以上で触媒賦活物質の効果を十分に発現させることができ、1100℃以下で、触媒賦活物質がCNTと反応することを抑制できる。
成長工程終了後、反応炉内にヘリウムなどの不活性ガスを供給し、残余の原料ガスや触媒賦活物質を排除する(フラッシュ工程)。これにより、配向した単層CNTの集合体が得られる。
(生産装置)
本発明の実施に用いる生産装置は、触媒を担持した基材を受容する合成炉(反応チュンバ)と加熱手段とを備えることが必須であるが、その他は各部の構造・構成については特に限定されることはなく、熱CVD炉、熱加熱炉、電気炉、乾燥炉、恒温槽、雰囲気炉、ガス置換炉、マッフル炉、オーブン、真空加熱炉、プラズマ反応炉、マイクロプラズマ反応炉、RFプラズマ反応炉、電磁波加熱反応炉、マイクロ波照射反応炉、赤外線照射加熱炉、紫外線加熱反応炉、MBE反応炉、MOCVD反応炉、レーザ加熱装置、等の装置などの生産装置をいずれも使用できる。
本発明に適用されるCVD装置(CVD装置2−1)の一例を、図4に示す。触媒を担持した基材2−2を受容する例えば石英ガラス等からなる管状の合成炉2−3と、合成炉2−3を外囲するように設けられた例えば抵抗発熱コイルなどからなる加熱手段2−4とを備えている。
合成炉2−1の一端壁には、合成炉2−1内に開口する2つのガス供給管2−5、2−6が接続され、合成炉2−3の他端壁には、合成炉2−3内に開口するガス排出管2−7が接続されている。そして2つのガス供給管2−5、2−6には、集合・分岐管路部2−8を介して原料ガス供給部2−9、触媒賦活物質供給部2−10、雰囲気ガス供給部2−11、並びに還元ガス供給部2−12が接続されている。
合成炉2−3内の下方位置には、触媒被膜形成面2−2aを備える基材2−2を保持した基板ホルダ2−13が設けられ、その上方には、複数の噴出孔を分散配置してなるシャワーヘッド2−14が設けられている。このシャワーヘッド2−14には、一方のガス供給管2−5の下流端が接続されており、その噴出孔は、基板ホルダ2−13に載置された基板2−2の触媒被膜形成面2−2aを臨む位置に設けられている。
また各噴出孔は、その噴射軸線が基材2−2の触媒被膜形成面2−2aに臨む位置に設けられている。つまりシャワーヘッド2−14に設けられた噴出孔から噴出するガス流の方向が、基材2−2の触媒被膜形成面2−2aに概ね直交するようにされている。ここで本実施形態においては、噴出孔の噴射軸線(ガスの噴出方向)を基材2−2の触媒被膜形成面2−2aに直交する向きとしたが、これは一般的に基材2−2の触媒被膜形成面2−2aから垂直方向に成長するCNTの配向方向に噴出孔から噴出するガス流の向きを適合させるための最適設計として採った形態である。
つまるところ、噴出孔の分布並びに噴射軸線の角度を含むシャワーヘッド2−14の形式は、基材2−2の触媒被膜形成面2−2aに到達するガス流を実用上許容できる範囲で均一化でき、成長するCNTにガス流が阻害されないものでありさえすればよく、本実施形態に限定されない。また、基材2−2、基板ホルダ2−13、及びシャワーヘッド2−14の配置は、上記関係が充足されればよく、本実施形態に限定されない。両ガス供給管2−5、2−6、ガス排出管2−7、並びに各供給部2−9〜2−12の適所には、逆止弁、流量制御弁、及び流量センサが設けられており、図示されていない制御装置からの制御信号によって各流量制御弁を適宜に開閉制御することにより、所定流量の原料ガス、触媒賦活物質、雰囲気ガス、並びに還元ガスが、2つのガス供給管2−5、2−6の両方、あるいはいずれか一方から、反応プロセスに応じて連続的にあるいは間欠的に合成炉2−3内に供給されるようになっている。
なお、触媒賦活物質供給部2−10には、別の雰囲気ガス供給部(図示省略)が付設されており、触媒賦活物質は、例えばヘリウム等の雰囲気ガスと共に供給される。このように構成されたCVD装置2−1によれば、集合・分岐管路部2−8を介して供給される各ガスを、一方のガス供給管5を経てシャワーヘッド2−14の噴出孔から基材2−2の触媒被膜形成面2−2aにシャワーのように吹きかけて、あるいは他方のガス供給管3−6の開口から合成炉2−3内に送り込んで、あるいは2つのガス供給菅2−5、2−6の両方から送り込んで、基材2−2の触媒被膜形成面2−2aに複数のCNTを実質的に同一の方向へ成長させることができる。
(合成炉)
合成炉の材質は、CNTの成長を阻害せず、成長温度で触媒を担持した基板を受容することができ、炉内の均熱性を保ち得るものとすると良い。例えば、石英、各種金属材料が好ましい。さらには、大量のCNTを合成するために、合成炉は、基板を複数、若しくは連続的に供給・取り出しを行うシステムを装備していてもよい。
(炉材)
生産装置の一部、特に合成炉の材質は耐熱合金とすると良い。耐熱合金としては、耐熱鋼、ステンレス鋼、ニッケル基合金等が挙げられる。Feを主成分として他の合金濃度が50%以下のものが耐熱鋼と一般に呼ばれる。また、Feを主成分として他の合金濃度が50%以下であり、Crを約12%以上含有する鋼は一般にステンレス鋼と呼ばれる。また、ニッケル基合金としては、NiにMo、Cr及びFe等を添加した合金が挙げられる。具体的には、SUS310、インコネル600、インコネル601、インコネル625、インコロイ800、MCアロイ、Haynes230アロイなどが耐熱性、機械的強度、化学的安定性、コストなどの点から好ましい。
高炭素濃度環境下で、CNTを成長させると、合成炉、壁面にアモルファスカーボン及びグラファイト等のCNT以外の炭素系副生物(以下、炭素汚れ)が付着する。炉内にある程度の量の炭素汚れが蓄積すると、CNTの生産量低下及び品質劣化が生じるという問題がある。しかし、生産装置において、炉内壁及び炉内使用部品のうち少なくとも一方を金属で構成する際に、材質をニッケル及びクロムを含む耐熱合金とし、かつその表面がアルミニウムめっき処理されたもの、若しくはその表面が算術平均粗さRa≦2μmとすると、CNT配向集合体の生産量の低下及び品質の劣化を防ぐことができ好適である。
(溶融アルミニウムめっき処理)
ここで溶融アルミニウムめっき処理とは、溶融アルミニウム浴中に被めっき材料を浸漬することによって被めっき材の表面にアルミニウム又はアルミニウム合金層を形成する処理をいう。具体的にその処理方法は、被めっき材(母材)の表面を洗浄した(前処理)後、約700°C溶融アルミニウム浴中に浸漬させることによって、母材表面中へ溶融アルミニウムの拡散を起こさせ、母材とアルミの合金を生成し、浴より引上げ時にその合金層にアルミニウムを付着させる処理のことである。さらに、その後に、表層のアルミナ層並びにアルミ層を低温熱拡散処理し、その下のFe−Al合金層を露出させる処理を行う場合も含んでいる。
(加熱手段)
反応チャンバを外囲するように設けられたチャンバを加熱するための装置。電熱線を用いるもの、赤外線を用いるものなど既存の加熱手段を用いることができる。
(触媒賦活物質の供給手段)
触媒賦活物質の供給手段の構成については、特に限定されることはなく、例えば、バブラを介した雰囲気ガスを用いての供給、触媒賦活物質を含有した溶液を気化しての供給、気体そのままでの供給、及び固体触媒賦活物質を液化・気化しての供給、などが挙げられ、気化器、混合器、攪拌器、希釈器、噴霧器、ポンプ、及びコンプレッサなどの各種の機器を用いた供給システムを構築することができる。
また微量の触媒賦活物質を高精度に安定供給するために、上述の通り、原料ガス及び雰囲気ガスから触媒賦活物質の成分を除去する純化装置を生産装置に付設するとよい。その場合は、合成炉への供給路の上流側で原料ガス及び雰囲気ガスから触媒賦活物質の成分を除去し、合成炉への供給路の下流側で原料ガス及び雰囲気ガスに制御された量の触媒賦活物質を添加するようにするとよい。この手法は、原料ガスあるいは雰囲気ガスに触媒賦活物質の成分が微量含まれている場合に有効である。
さらには、原料ガス及び雰囲気ガスの供給路や排気管に、触媒賦活物質濃度の計測装置を設け、この出力値を用いて触媒賦活物質の流量調整手段をフィードバック制御することにより、経時変化の少ない安定な触媒賦活物質の供給を行うことができる。
計測装置としては、触媒賦活物質濃度のみならず、例えばCNTの合成量を計測する装置であってもよく、また、触媒賦活物質により発生するアモルファスカーボン及びグラファイト等のCNT以外の副次生成物を計測する装置であってもよい。
(シャワー)
還元ガス及び原料ガス及び触媒賦活物質の供給手段として、基材の触媒被膜形成面を臨む位置に設けられた複数の噴出孔を備えるシャワーヘッドを用いてもよい。臨む位置とは、各噴出孔の、噴射軸線が基板に概ね直交する向き(噴射軸線が基板の法線と成す角が0以上90°未満)となるように設ける配置を示す。つまりシャワーヘッドに設けられた噴出孔から噴出するガス流の方向が、基板に概ね直交するようにされていることを指す。また触媒被膜形成面とは、基材上での触媒を包含する面もしくは空間のことであり、一般的には基材が平板状の場合には、基板面となる。
このようなシャワーヘッドを用いて還元ガスを噴射すると、還元ガスを基材上に均一に散布することができ、効率良く触媒を還元することができる。結果、基材上に成長するCNT配向集合体の均一性を高めることができ、且つ還元ガスの消費量を削減することもできる。このようなシャワーヘッドを用いて原料ガスを噴射すると、原料ガスを基板上に均一に散布することができ、効率良く原料ガスを消費することができる。結果、基材上に成長するCNT配向集合体の均一性を高めることができ、且つ原料ガスの消費量を削減することもできる。このようなシャワーヘッドを用いて触媒賦活物質を噴射すると、触媒賦活物質を基板上に均一に散布することができ、触媒の活性が高まると共に寿命が延長するので、配向CNTの成長を長時間継続させることが可能となる。
(連続製造装置)
本発明の実施に用いる製造装置はさらに模式図5にある構成をとってもよい。この製造装置は、大略、入口パージ部3−1、フォーメーションユニット3−2、ガス混入防止手段3−3、成長ユニット3−4、冷却ユニット3−5、出口パージ部3−6、搬送ユニット3−7、接続部3−8〜3−10から構成されている。フォーメーションユニット3−2、成長ユニット3−4、及び冷却ユニット3−5は、それぞれフォーメーション炉3−2a、成長炉3−4a、冷却炉3−5aを有しており、各炉は接続部によって空間的に連結された状態になっている。基材(触媒基板)111は搬送ユニット3−7によって各炉内空間をフォーメーション、成長、冷却の順に搬送されるようになっている。
(入口パージ部)
入口パージ部とは基材入口から装置炉内へ外部空気が混入することを防止するための装置一式のことである。装置内に搬送された基材の周囲環境をパージガスで置換する機能を有する。具体的には、パージガスを保持するための炉又はチャンバ、パージガスを噴射するための噴射部等が挙げられる。パージガスは不活性ガスが好ましく、特に安全性、コスト、パージ性等の点から窒素であることが好ましい。ベルトコンベア式など基材入口が常時開口している場合は、パージガス噴射部としてパージガスを上下からシャワー状に噴射するガスカーテン装置とし、装置入口から外部空気が混入することを防止することが好ましい。
(フォーメーションユニット)
フォーメーションユニットとは、フォーメーション工程を実現するための装置一式のことであり、基材の表面に形成された触媒の周囲環境を還元ガス環境とすると共に、触媒と還元ガスとの少なくとも一方を加熱する機能を有する。具体的には、還元ガスを保持するためのフォーメーション炉、還元ガスを噴射するための還元ガス噴射部、触媒と還元ガスの少なくとも一方を加熱するためのヒーター等が挙げられる。ヒーターとしては400℃以上、1100℃以下の範囲で加熱することができるものが好ましく、例えば、抵抗加熱ヒーター、赤外線加熱ヒーター、電磁誘導式ヒーターなどが挙げられる。フォーメーションユニットの少なくとも一部は上記した炉材を材質とすると良い。また、上記したシャワーヘッドを装備していても良い。
(成長ユニット)
成長ユニットとは、成長工程を実現するための装置一式のことであり、フォーメーション工程によってCNT配向集合体の生産に好適な状態となった触媒の周囲環境を原料ガス環境とすると共に、触媒及び原料ガスのうち少なくとも一方を加熱することでCNT配向集合体を成長させる機能を有する。具体的には、原料ガス環境を保持するための成長炉、原料ガスを噴射するための原料ガス噴射部、触媒と原料ガスの少なくとも一方を加熱するためのヒーター等が挙げられる。ヒーターとしては400℃以上、1100℃以下の範囲で加熱することができるものが好ましく、例えば、抵抗加熱ヒーター、赤外線加熱ヒーター、電磁誘導式ヒーターなどが挙げられる。更に触媒賦活物質添加部を備えていると良い。成長ユニットの少なくとも一部は上記した炉材を材質とすると良い。また、上記したシャワーヘッドを装備していても良い。
(搬送ユニット)
搬送ユニットとは、少なくともフォーメーションユニットから成長ユニットまで基板を搬送するために必要な装置一式のことである。具体的には、マルチチャンバ方式におけるロボットアーム、ロボットアーム駆動装置等、ベルトコンベア方式におけるメッシュベルト、減速機付き電動モータを用いた駆動装置等などが挙げられる。
(ガス混入防止手段)
ガス混入防止手段とは各ユニットの内部が互いに空間的に接続される接続部に設置され、各ユニットの炉内空間内へガスが相互に混入することを防ぐ機能を実現するための装置一式のことである。例えば、基板のユニットからユニットへの移動中以外の時間は各ユニットの空間的接続を機械的に遮断するゲートバルブ装置、不活性ガス噴射によって遮断するガスカーテン装置、接続部及び各ユニットの接続部近傍のガスを系外に排出する排気装置、などが挙げられる。ガス混入防止を確実に行うためには、シャッター及びガスカーテンなどを排気装置と併用することが好ましい。また連続成長を効率的に行う観点から、基板のユニット−ユニット間搬送を途切れなく行うため、また機構の簡素化の観点からは、排気装置を単独で用いることがより好ましい。
原料ガスがフォーメーション炉内空間に混入すると、触媒の還元を阻害しCNTの成長に悪影響を及ぼす。フォーメーション炉内空間中の炭素原子個数濃度を好ましくは5×1022個/m以下、より好ましくは1×1022個/m以下に保つように、ガス混入防止手段が機能することが好ましい。
排気装置によってガス混入防止を行う場合、複数ある排気部の各排気量Qは互いに独立に決定することはできない。装置全体のガス供給量(還元ガス流量、原料ガス流量、冷却ガス流量など)に応じて調整する必要がある。だたし、ガス混入防止を満たすための必要条件は以下の式のように示すことができる。
Q≧4DS/L
ここでDは混入を防止したいガスの拡散係数、Sはガス混入を防止する境界の断面積、Lは排気部の長さ(炉長方向)である。この条件式を満たし、且つ装置全体の給排気バランスを保つように各排気部の排気量は設定される。
(接続部)
各ユニットの炉内空間を空間的に接続し、基材がユニットからユニットへ搬送されるときに、基材が外気に曝されることを防ぐための装置一式のことである。例えば、基材の周囲環境と外気とを遮断し、基材をユニットからユニットへ通過させることができる炉及びチャンバなどが挙げられる。
(冷却ユニット)
冷却ユニットとは、CNT配向集合体が成長した基材を冷却するために必要な装置一式のことである。成長工程後のCNT配向集合体、触媒、基材の酸化防止と冷却を実現する機能を有している。例えば、不活性ガスを保持するための冷却炉、水冷式の場合は冷却炉内空間を囲むように配置した水冷冷却管、空冷式の場合は冷却炉内空間に不活性ガスを噴射する噴射部等を備えている。また、水冷方式と空冷方式を組み合わせてもよい。
(出口パージ部)
出口パージ部とは基材出口から装置炉内へ外部空気が混入することを防止するための装置一式のことである。基材の周囲環境をパージガス環境に保持する機能を有する。具体的には、パージガスを保持するための炉又はチャンバ、パージガスを噴射するための噴射部等が挙げられる。パージガスは不活性ガスが好ましく、特に安全性、コスト、パージ性等の点から窒素であることが好ましい。ベルトコンベア式など基材出口が常時開口している場合は、パージガス噴射部としてパージガスを上下からシャワー状に噴射するガスカーテン装置とし、装置出口から外部空気が混入することを防止することが好ましい。
まず、触媒を形成された基材は搬送ユニット3−7によって装置内に搬送される。搬送ユニット3−7は、ベルトコンベア式であり、例えば減速機付き電動モータなどを用いたベルト駆動部3−7bで駆動されるメッシュベルト3−7aによって基材3−11を搬送する。基材3−11は装置内に搬送され、入口パージ部3−1によって、基材3−11の周囲環境はパージガスに置換され、外部空気が装置炉内へ混入することが防止される。
入口パージ部3−1とフォーメーションユニット3−2とは接続部3−8によって空間的に接続されており、基材3−11は接続部3−8内を通ってフォーメーションユニット3−2内に搬送される。接続部3−8にはガス混入防止手段3−3の排気部3−3aが配置されており、入口パージ部3−1から噴射されたパージガスと還元ガス噴射部3−2bから噴射された還元ガスとの混合ガスが排気されている。これにより、フォーメーション炉内空間へのパージガスの混入及び入口パージ部側への還元ガスの混入が防止される。
フォーメーションユニット3−2内において基材3−11は搬送されながら、フォーメーション工程処理が行われる。
フォーメーションユニット3−2と成長ユニット3−4とは接続部109によって空間的に接続されており、基材3−11は接続部3−9内を通って成長ユニット3−4内に搬送される。接続部3−09にはガス混入防止手段3−3の排気部3−3bが配置されており、フォーメーション炉内空間の還元ガスと成長炉内空間の原料ガスとの混合ガスを排気している。これにより、フォーメーション炉内空間への原料ガスの混入及び成長炉内空間への還元ガスの混入が防止される。
成長ユニット3−4内において基材3−11は搬送されながら、成長工程処理が行われる。
成長ユニット3−4と冷却ユニット3−5とは接続部3−10によって空間的に接続されており、基材3−11は接続部3−10内を通って冷却ユニット3−5内に搬送される。接続部3−10にはガス混入防止手段3−3の排気部3−3cが配置されており、成長炉内空間の原料ガスと冷却炉内空間の不活性ガスとの混合ガスを排気している。これにより、冷却炉内空間への原料ガスの混入及び成長炉内空間への不活性ガスの混入が防止される。
冷却ユニット3−5内において基材3−11は搬送されながら、冷却工程処理が行われる。冷却工程とは、成長工程後にCNT配向集合体、触媒、基材を不活性ガス下に冷却する工程のことを意味する。
装置出口には出口パージ部3−6が設けられている。この出口パージ部3−6によって、装置出口から装置内へ外部空気が混入することが防止される。
以上のようにして、本発明によるCNT生産装置によれば、表面に触媒を有する基材が搬送ユニット3−7によって連続的に搬送されつつ、入口パージ部3−1、フォーメーションユニット3−2、成長ユニット3−4、冷却ユニット3−5、及び出口パージ部3−6を順次通過していく。その間に、フォーメーションユニット3−2における還元ガス環境下で触媒が還元され、成長ユニット3−4における原料ガス環境下で基材の表面にCNTが成長し、冷却ユニット3−5において冷却される。
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明における評価は以下の方法に従って行った。
(X線残留歪み測定)
基材表面の残留歪みは、Rigaku製 AutoMate を用いて、下記の測定条件で行った。
<測定条件>
X線:CrKα 40KV 40mA
無歪み2θ角度:128.69 (NiFe(220))
コリメータ径:φ4.0mm
測定方法:試料長手方向 並傾法
試料短手方向 側傾法
Ψ角度:0°〜45° 8点
<処理条件>
ピークサーチ方法:半価幅中点法
ヤング率:162000.00MPa
ポアソン比:0.290
応力定数:−526.36MPa/°
(表面粗さ測定)
本願でいう表面粗さは、算術平均粗さRaである。そのRaの値は、レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製VK−9710)を用いて、下記測定条件で測定した。
<測定条件>
・測定モード:表面形状
・測定品質:高精細
・対物レンズ:CF IC EPI Plan 10×
・測定エリア面積:1.42mm(1.42mm×1.0mm)
・Z方向測定ピッチ:0.1μm
・解析ソフトウェア((株)キーエンス社製VK形状解析アプリケーションVK−H1A1の「表面粗さ」計測機能により、測定で得られた高さデータのRaを求めた。
(比表面積測定)
比表面積は、BET比表面積測定装置((株)マウンテック製 HM model−1210)を用いて測定した。
(G/D比測定)
G/D比とは、ラマン分光で観測されるCNT固有のラマンバンドであるGバンドと、欠陥由来のDバンドとの強度比をいう。本実施例においては、顕微レーザラマンシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製NicoletAlmega XR)を用い、基材中心部付近のCNTを測定した。
(基材の反り量の測定)
基材を、カーボンナノチューブ配向集合体製造用の製造装置(CVD装置)へ設置し、CVD後、すなわち、カーボンナノチューブ成長後の基材の変形量を測定した。図6に示すように、成長後の基材を下に凸の状態で基準面上に載置し、最も反りの大きい箇所の基準面からの高さをノギスを用いて測定を行った。
[実施例1]
図5に本実施例で使用した製造装置を示す。製造装置は入口パージ部3−1、フォーメーションユニット3−2、ガス混入防止ユニット3−3、成長ユニット3−4、冷却ユニット3−5、出口パージ部3−6、搬送ユニット3−7、接続部3−8〜3−10から構成した。フォーメーションユニット3−2はフォーメーション炉3−2a内空間、還元ガスを噴射する還元ガス噴射部3−2b、基板又は/及び還元ガスを加熱するためのヒーター3−2cから構成した。ガス混入防止ユニット3−3は排気部3−3a〜3−3cから構成した。成長ユニット3−4は成長炉3−4a内空間、原料ガスを噴射する原料ガス噴射部3−4b、基板又は/及び原料ガスを加熱するためのヒーター3−4cから構成した。冷却ユニット3−5は冷却炉3−5a内空間、不活性ガスを噴射する冷却ガス噴射部3−5b、水冷冷却管3−5cから構成した。フォーメーション、成長の各ユニットにおける炉内壁及び噴射部、ガス混入防止手段、メッシュベルト、接続部の材質はSUS310をアルミニウムメッキ処理したものを使用した。
触媒基材の製作条件を以下に説明する。基板として、大きさ10cm角、厚さ0.3mmのFe−Ni−Cr合金YEF426(日立金属株式会社製 Ni42%,Cr6%)を使用した。残留歪みの除去手段として、水素雰囲気下で1000℃で2分間、加熱処理した後、窒素雰囲気中で空冷処理を行った。X線測定によって基材表面の残留歪みの測定を行った。測定条件として、表面および裏面それぞれについて、異なる場所で3箇所、同じ場所で3回の合計9回の測定を行った。以下の値はそれらの平均値である。
基板の縦方向について、
|εa−εb|:|−8.1×10−5 − −1.9×10−4|=6.9×10−5
Ma+Mb:5.4×10−5 + 5.9×10−5=1.1×10−4
であり、横方向について、
|εa−εb|:|6.9×10−5− 1.0×10−4|=3.1×10−5
Ma+Mb: 7.3×10−5 + 1.9×10−4=2.6×10−4
であり、いずれも|εa−εb|≦Ma+Mbの関係を満たしていた。
この基板の一方の表面にスパッタリング装置を用いて厚さ20nmのアルミナ膜(浸炭防止層)を製膜し、次いで該浸炭防止層上にスパッタリング装置を用いて厚さ1.0nmの鉄膜(触媒)を製膜した。基材の表面粗さをレーザ顕微鏡にて測定したところ、Ra≒2.1μmであった
このようにして作製した基材を装置(図5)のメッシュベルトに載置し、メッシュベルトの搬送速度を変更しながら、フォーメーション工程、成長工程、冷却工程の順に処理を行い、CNT配向集合体を製造した。装置の各条件は以下のように設定した。
入口パージ部3−1
・パージガス:窒素60000sccm
フォーメーションユニット3−2
・炉内温度:830℃
・還元ガス:窒素11200sccm、水素16800sccm
・メッシュベルト搬送速度:20mm/min
ガス混入防止ユニット3−3
・排気部103a排気量:20sLm
・排気部103b排気量:25sLm
・排気部103c排気量:20sLm
成長ユニット3−4
・炉内温度:830℃
・原料ガス:窒素16040sccm、エチレン1800sccm、
水蒸気含有窒素160sccm(相対湿度22.3%)
・メッシュベルト搬送速度:30mm/min
冷却ユニット3−5
・冷却水温度:30℃
・不活性ガス:窒素10000sccm
・メッシュベルト搬送速度:30mm/min
出口パージ部3−6
・パージガス:窒素50000sccm
本実施例によって製造される、CNT配向集合体の特性は、生産量1.8mg/cm、G/D比8.0、密度:0.03g/cm、BET−比表面積:1100m/g、平均外径:2.9nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%であった。カーボンナノチューブ製造後の基材の変形量を測定したところ、1mmであった。結果を表1に示す。
Figure 2012218953
[実施例2]
基板として大きさ10cm角、厚さ0.3mmのFe−Cr合金(SUS430)を使用した。実施例1と同様にして熱処理を行った。X線測定によって基材表面の残留歪みの測定を行った。測定条件は実施例1と同様である。
基板の縦方向について、
|εa−εb|:|2.9×10−5 − −3.5×10−5|=6.4×10−5
Ma+Mb:4.3×10−5 + 2.7×10−5=7.0×10−5
であり、横方向について、
|εa−εb|:|3.3×10−5 − 1.7×10−5|=1.6×10−5
Ma+Mb:2.7×10−5 + 3.7×10−5=6.4×10−5
であり、いずれも|εa−εb|≦Ma+Mbの関係を満たしていた。
この基板の一方の表面にスパッタリング装置を用いてアルミナ層(浸炭防止層)を製膜し、次いで該浸炭防止層上にスパッタリング装置を用いて鉄膜(触媒)を製膜した。基材の表面粗さをレーザ顕微鏡にて測定したところ、Ra≒2.1μmであった。
このようにして作製された基材を用いて実施例1と同様にCVD装置によってカーボンナノチューブ配向集合体を製造した。得られたカーボンナノチューブ配向集合体の特性は、生産量1.7mg/cm、G/D比7.9、密度:0.03g/cm、BET−比表面積:1000m/g、平均外径:2.9nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%であった。カーボンナノチューブ配向集合体製造後の基材の変形量を測定したところ、1mmであった。結果を表1に示す。
[実施例3]
基板として実施例1と同種の基板を用いた。実施例1と同様に熱処理を行った。X線測定によって基材表面の残留歪みの測定を行った。
基板の縦方向について、
|εa−εb|:|−3.2×10−4 − 1.3×10−4|=4.5×10−4
Ma+Mb:3.5×10−4 + 3.4×10−4=6.9×10−4
であり、横方向について、
|εa−εb|:|−3.1×10−4 − 9.2×10−5|=4.0×10−4
Ma+Mb:2.3×10−4 + 3.8×10−4=6.1×10−4
であり、いずれも|εa−εb|≦Ma+Mbの関係を満たしていた。この基板の表面および裏面の両面にスパッタリング装置を用いてアルミナ層(浸炭防止層)を製膜し、次いで一方の表面のみにスパッタリング装置を用いて鉄膜(触媒)を製膜した。基材の表面粗さをレーザ顕微鏡にて測定したところ、Ra≒2.1μmであった。
このようにして作製された基材を用いてCVD装置によってカーボンナノチューブ配向集合体を製造した。得られたカーボンナノチューブ配向集合体の特性は、生産量1.7mg/cm、G/D比7.7、密度:0.28g/cm、BET−比表面積:1100m/g、平均外径:2.9nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%であった。カーボンナノチューブ配向集合体製造後の基材の変形量を測定したところ、0mmであった。結果を表1に示す。
[比較例1]
基板として、実施例1と同種のYEF426基板を使用した。熱処理は行っていない。X線測定によって基板表面の残留歪みの測定を行った。測定条件は実施例1と同様である。
基板の縦方向について、
|εa−εb|:|−5.1×10−3 − −1.9×10−3|=3.2×10−3
Ma+Mb:5.4×10−5 + 5.9×10−5=1.1×10−4
であり、横方向について、
|εa−εb|:|6.9×10−5 − 1.0×10−4|=3.1×10−5
Ma+Mb:7.3×10−5 + 1.9×10−4=2.6×10−4
であり、縦方向について|εa−εb|>Ma+Mbの関係となっていた。
この基板の表面にスパッタリング装置を用いてアルミナ層(浸炭防止層)を製膜し、次いで表面のみにスパッタリング装置を用いて鉄膜(触媒)を製膜した。基材の表面粗さをレーザ顕微鏡にて測定したところ、Ra≒2.1μmであった。
このようにして作製された基材を用いてCVD装置によってカーボンナノチューブ配向集合体を製造した。得られたカーボンナノチューブ配向集合体の特性は、生産量0.5mg/cm、G/D比5.0、密度:0.03g/cm、BET−比表面積:900m/g、平均外径:2.9nm、半値幅2nm、炭素純度99.9%であった。基板上にカーボンカーボンナノチューブ配向集合体製造後の基材の変形量を測定したところ、12mmであった。結果を表1に示す。
1−1:基材(カーボンナノチューブ配向集合体生産用基材)
1−1a:金属基板
1−1b:浸炭防止層
1−1c:触媒(触媒層)
2−1:CVD装置
2−2:基材
2−2a:触媒皮膜形成面
2−3:合成炉
2−4:加熱手段
2−5:ガス供給管
2−6:ガス供給管
2−7:ガス排出管
2−8:集合・分岐管路部
2−9:原料ガス供給部
2−10:触媒賦活物質供給部
2−11:雰囲気ガス供給部
2−12:還元ガス供給部
2−13:基板ホルダ
2−14:シャワーヘッド
3−1:入口パージ部
3−2:フォーメーションユニット
3−2a:フォーメーション炉
3−2b:還元ガス噴射部
3−2c:ヒーター
3−3:ガス混合防止手段
3−3a:排気部
3−3b:排気部
3−3c:排気部
3−4:成長ユニット
3−4a:成長炉
3−4b:原料ガス噴射部
3−4c:ヒーター
3−5:冷却ユニット
3−5a:冷却炉
3−5b:冷却ガス噴射部
3−5c:水冷冷却管
3−6:出口パージ部
3−7:搬送ユニット
3−7a:メッシュベルト
3−7b:ベルト駆動部
3−8:接続部
3−9:接続部
3−10:接続部
3−11:基材

Claims (7)

  1. 金属基板の表面に触媒を担持した基材上に、化学気相成長法を用いてカーボンナノチューブ配向集合体を製造するカーボンナノチューブ配向集合体の製造方法であって、
    前記金属基板が、その表面の残留歪みをεa、裏面の残留歪みをεbとし、それぞれの値の信頼区間をそれぞれMa、Mbとしたとき、基板面に沿って水平で且つ直交する2方向それぞれの残留歪みが下式(1)を満たしていることを特徴とするカーボンナノチューブ配向集合体の製造方法。
    |εa−εb|≦Ma+Mb (1)
  2. 前記金属基板が、Fe−Cr合金、Fe−Ni合金およびFe−Cr−Ni合金からなる群より選ばれるいずれか1種の合金であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 金属基板に残留歪みを低減する処理を施し、前記式(1)の条件を満たすものとした金属基板を用いることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の製造方法。
  4. 前記金属基板の厚さが0.05mm以上かつ3mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記触媒を担持した基材の表面および裏面の面粗さが、算術平均粗さRa≦3μmであることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ配向集合体の製造方法。
  6. 前記基材が、前記金属基板の表面及び裏面に浸炭防止層が形成され、少なくともいずれか一方の面の浸炭防止層上に触媒が形成されているものである請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記浸炭防止層が、セラミック材料から主としてなるものであることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015123410A (ja) * 2013-12-26 2015-07-06 東洋インキScホールディングス株式会社 カーボンナノチューブ合成用触媒
JP2016185892A (ja) * 2015-03-27 2016-10-27 日本ゼオン株式会社 カーボンナノチューブを含む炭素ナノ構造体の製造方法

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