JP2012218432A - アクリル樹脂シートと織物状物を一体化した複合三次元成形物、並びにその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 現在、市場に於いてモバイル機器の筐体、自動車内装部材等の成形物に、プラスチックシートと織編み物等の織物状物を複合一体化して作成された複合シートを使用して作成された複合三次元成形物は商品化されていない。近年パソコン、携帯電話等のモバイル機器筐体、ドアートリム等の自動車内装部材に於いて外観デザインの多様化が顕著となり、当該企業間での同類製品の差別化ニーズが高まってきた。本発明はこのような市場ニーズに対応し、従来のプラスチック単体では表現出来なかった織編み物等の織物状物を使用した複合三次元成形物を提供する。
【解決手段】 メタクリル樹脂とアクリルゴムの混合ポリマーによる薄手の透明硬質アクリル樹脂シートを第一層にして、アクリルエマルジョン又は、ウレタン系エマルジョンをあらかじめ全体に含浸脱気加工した織物状物を第三層として、アクリル又はウレタン系又はEVA系の無溶剤タイプ熱可塑性接着剤を塗工し第二層として積層一体化した複合シートを作成し、インサート成形又はインモールド成形することにより、織物状物の質感を活かしながら従来のプラスチック製の製品と同様の取り扱い性、並びに品質、物性を有する複合三次元成形物の製品化を可能とする。さらには、ジャカード織物等の厚みのある複雑な織物状物を、エアーの混入を防ぎ、且つその質感を活かした複合三次元成形物を得るために、接着加工前に所定の樹脂含浸加工を施して複合シートを作成することを特徴とする。次いで、透明硬質アクリル樹脂シートの表面に成形可能なプレキュアーコートを施すことにより表面の耐アルコール性、耐擦傷性等の品質面の改良を行い、より実用性の高い複合三次元成形物を提供する。
【解決手段】 メタクリル樹脂とアクリルゴムの混合ポリマーによる薄手の透明硬質アクリル樹脂シートを第一層にして、アクリルエマルジョン又は、ウレタン系エマルジョンをあらかじめ全体に含浸脱気加工した織物状物を第三層として、アクリル又はウレタン系又はEVA系の無溶剤タイプ熱可塑性接着剤を塗工し第二層として積層一体化した複合シートを作成し、インサート成形又はインモールド成形することにより、織物状物の質感を活かしながら従来のプラスチック製の製品と同様の取り扱い性、並びに品質、物性を有する複合三次元成形物の製品化を可能とする。さらには、ジャカード織物等の厚みのある複雑な織物状物を、エアーの混入を防ぎ、且つその質感を活かした複合三次元成形物を得るために、接着加工前に所定の樹脂含浸加工を施して複合シートを作成することを特徴とする。次いで、透明硬質アクリル樹脂シートの表面に成形可能なプレキュアーコートを施すことにより表面の耐アルコール性、耐擦傷性等の品質面の改良を行い、より実用性の高い複合三次元成形物を提供する。
Description
本発明は、例えばモバイル機器の筐体、並びにドアートリム等自動車内装用の三次元成形物に関する。
近年携帯電話、パソコン等のモバイル機器の筐体、並びにドアートリム等自動車内装材のデザインは益々多様化し、メーカー間のデザイン競争も激しさを増している。このニーズに対応して表層の加飾成形技術も近年急速に進歩している。
最近のデザインコンセプトとしてジャパニーズモダンが新しい価値観としてグローバルに注目されており、自動車の内装材等に日本的な織物等を表層に使用したプラスチック複合成形物へのニーズが高まってきた。
プラスチックと織物状物との複合成形物としては、旧来から実用化されている織物状物を接着剤によりPVCフィルム等のプラスチックフィルムと張り合わせる処方で複合シートを作成し、当該複合シートを使用してインモールド成形法により三次元成形物を作成したものが知られている。
また、特殊な物では特許文献1に炭素繊維織物をプラスチックシートの間に積層した複合成形物が公表されている。
また、特許文献2では織物状物にアクリルシラップを注入含浸してアクリルフィルム、またはアクリル板と積層し、硬化一体化して作成した複合シートを成形加工した複合三次元成形物が公表されている。
旧来から実用化されている織物状物とプラスチックシートを接着剤で張り合わせた複合シートをインモールド成形法、並びにインサート成形法により三次元成形物を作成したところ、織物状物の伸張率が低いためプラスチックフィルムの成形時の伸張に織物状物が追随せず、絞り率の高い部位で織物状物が破断するという問題が確認され、30%以上の絞り形状の三次元成形物には適合しないことが判明した。
さらには、上記処方で一般的に使用されている接着剤には二液硬化タイプの溶剤系のものが多用されており、成形時に残留溶剤が揮発して表面形状に不具合が発生するという問題があり、またアクリルフィルムとの複合化では溶剤によりアクリルフィルムがアタックされて強度劣化し、成形物にクラックが発生する等の課題がある。
また、上記の接着剤法による複合シートで複合三次元成形物を作成すると、織物状物に含まれるエアーが成形加工時に完全に抜けきらず、成形物に部分的にエアー溜まりが発生するという問題がある。特にジャカード織物や意匠撚糸交織織物または厚手織物の場合は、この処方での複合三次元成形物の作成は不可能であることが判明した。
次に、特許文献1に示すプラスチックと炭素繊維織物の複合成形物の課題は、炭素繊維本体の伸張率が極めて低いことから成形物の形状が10%程度の絞り率の製品に限定されることと、炭素繊維織物が高価であることから成形物の価格も高価となること、さらには色柄が黒の格子柄か綾柄に限定されることから、マニア等の特殊製品の商品化に留まることである。
次いで、特許文献2に示す処方の問題点は、アクリルフィルム、又はアクリル板に織物状物を積層して400センチポイズ以下の低粘度の液状アクリルシラップを織物状物に抽入、含浸して所定の温度条件下で硬化一体化して複合シートを作成する為、加工法がバッチ式になることと、硬化時間の調整等に熟練した技術が必要となることから、1点物の製品加工となり量産品の生産には不適であることである。
本発明ではプラスチックシートと織物状物の複合シートの作成にあたって表層となる第一層に、塗装代替用シートとして実績のあるメタクリル樹脂とアクリルゴム含有重合体の混合ポリマーにより作成された透明硬質アクリル樹脂シートを使用することに着目した。
当該シートは表面硬度がH以上と高く、透明性、耐候性、耐汚染性等アクリル板と同等の諸物性を有すると共に柔軟性があり、0,2mm〜0,9mmの中肉シートの生産が可能で、且つ成形性にも優れており300%までの深絞りが出来るという特性があることから三次元加飾成形用の表層材として最適である。
次に織物状物と上記透明硬質アクリル樹脂シートを複合一体化して三次元成形可能な複合シートを作成するにあたって、本発明者は以下の技術的な要点に着目した。
第1の要点は、織物状物には微細なエアーが多数含有しておりこのエアーをいかに抜くかが重要課題であった。この課題を解決するために本発明者は織物状物にあらかじめ樹脂含侵する処方に着眼した。織物状物を構成する各繊維間に含まれる微小なエアーを完全に除去するためには、織物状物に浸透性の良い低粘度の水性樹脂を含浸する処方が望ましく、また含浸樹脂が硬化して透明になる必要がある。
この条件を満たす樹脂として本発明者は、アクリル系、又はウレタン系の水性エマルジョンを使用することに着眼した。水性エマルジョンは水で粘度調整が可能なためジャカード織物等の複雑な構造の織物状物に対する含浸加工がし易く、硬化後透明になる特性がある。
第2の要点は、織物状物とプラスチックシートを複合一体化して三次元成形物を作成するためには織物状物とプラスチックシートが加熱成形時に個別挙動をする処方をとる必要があることである。
周知の如く織物状物の成形時の破断伸度は概ね30%以下であるのに対し、通常のプラスチックシートの成形時加熱伸張率は200%以上である。このように成形加工時に熱挙動が大きく異なる2物質を同時挙動させて低伸張の物質の破断伸度を大幅に超えた伸張率の三次元成形物を作成することは不可能である。
このように大巾に異なる伸張率の材料を一体化して三次元成形物を作成するには、加熱成形時に二つの材料が個別挙動することが重要である。この為には二材料を一体化する第二層の接着剤は熱可塑性のもので且つ、当該成形物の加熱成形温度範囲内で軟化溶融するものであることが必要である。
又、当該複合シートの第二層となる接着剤は、第一層の透明硬質アクリル樹脂シートとの密着性が良く、且つ織物状物に使用するアクリル、又はウレタン系エマルジョンとの相容性も良い接着剤を選定する必要がある。
これらの条件を満たす接着剤としては無溶剤タイプのアクリル、又はウレタン系接着剤、好ましくはアクリル系、又はウレタン系、又はEVA系エマルジョンタイプが適性である。また、薄手の織物状物の場合は無溶剤タイプのUV硬化型アクリル、ウレタン系接着剤も適性がある。
上記接着剤法とは異なる処方として、透明硬質アクリル樹脂シートを上層と下層にして、既述の樹脂含浸織物状物の上下に透明硬質アクリル樹脂シートよりも熱変形温度が10℃〜15℃低いアクリルフィルム、又はウレタン系、EVA系のホットメルトフィルムを積層してサンドイッチ構造とし、加熱圧着加工して複合シートを作成する処方も適性がある。
このようにして作成された複合シートをインモールド成形用のキャビテイ金型に挿入して真空成形し、トリミング後コアー金型を圧着してABSまたはPC/ABS樹脂を射出成形してバックアップフォーミングし、複合三次元成形物を作成した結果、エアーの混入もない目的の製品を得ることが可能となった。
さらに、以上の処方により作成された三次元成形物に於いて、ドアートリム等の自動車内装材に使用される場合には、表層の透明硬質アクリル樹脂シートの耐アルコール性の改良が必要となる。
この場合の対応として本発明者は、光硬化と熱硬化の二段階硬化性のプレキュアーコートを透明硬質アクリル樹脂シートの表面に施すことに着眼した。この処方で80%伸張までの三次元成形に対応する事が判明し、自動車内装材のスペックにも対応し得る事が確認された。
上述したように本発明により作成された複合三次元成形物は、織物の質感とデザイン性を有しながら高級塗装製品に劣らぬ深みのある高透明な質感をも有する織物複合三次元成形物を提供できる。
また、織物状物が熱可塑性の樹脂で含浸加工されていることと、熱可塑性の接着剤を使用していることから、成形加工時に織物状物が軟化溶融状態の樹脂内で個別挙動をすることにより伸張時に応力破断することなく所定の形状に成形され、且つ成形加工時に軟化溶融された樹脂が冷却して固定化することにより良質な織物複合三次元成形物を提供できる。
さらには、繊維内に含まれるエアーによる不具合もなく、且つ自動車の内装材にも使用し得る物性を有する効果を発揮するものである。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
ここで図1は本実施形態に係わる複合成形物(図2のIII)に使用する複合シート(I)の断面図である。図2は本実施形態に係わる複合成形物(III)の断面図である。
ここで図1は本実施形態に係わる複合成形物(図2のIII)に使用する複合シート(I)の断面図である。図2は本実施形態に係わる複合成形物(III)の断面図である。
本実施形態に係わる複合シート(I)の作成にあたり、第一層に使用する透明硬質アクリル樹脂シートAを以下の処方により作成した。
メタクリル樹脂70重量%とアクリルゴム含有重合体(三菱レイヨン製IR)30重量%をポリマーアロイ化して混合ポリマーを作成し、押し出し成形加工法によりシート化して厚さ0,3mm、巾1000mmの透明硬質アクリル樹脂シートAを得た。
上記アクリルゴム混合比率のポリマーは押し出し加工性に優れており、柔軟で割れ難く、従来アクリル樹脂ではシート化が困難であった厚さ0,2mm〜0,9mmのシート生産が可能である。尚、押し出し成形加工性、取り扱い性等を考慮すると樹脂混合比率は、メタクリル樹脂60〜80重量%、アクリルゴム含有重合体40〜20重量%であることが好ましい。
上記シートAの光学特性を確認した結果、全光線透過率92,6%、ヘイズ(雲価)0,5であった。又表面硬度は鉛筆硬度H<で耐汚染性にもすぐれており、これらの特性値は通常のアクリル板とほぼ同レベルであることが確認された。
上記の透明硬質アクリル樹脂シートAは、上述の如く通常のアクリル板の特性を有しながら通常のアクリル板とアクリルフィルムの中間の厚さがあり、割れ難く加工性、取り扱い性に優れることから塗装代替シートとして極めて優れた特性があり、システムバスパネルの塗装代替シートとして商業実績のあるものである。例えば「特開平11−5278」(特許文献3)「特開2000−25168」(特許文献4)。
次に本実施形態に係わる複合シート(I)の作成にあたり、使用する織物状物には、経糸にポリエステルフィラメント糸、緯糸にポリエステル50%レイヨン50%の特殊撚糸を使用して製織した目付400g/m2の二重構造の先染めジャカード織物を選定した。当該織物は高級カーテンに使用される重厚でデザイン性に富んだものである。尚、本発明に使用する織物状物としては目付けが500g/m2以下の合成繊維製の織網物、または合成繊維と天然繊維の混合織網物が好ましい。
上記選定の織物は各構成糸、並びに織物内に多くのエアーを含んでいるため、完璧な三次元成形物を作成するためには、このエアーを完全に除去する必要がある。このためには当該織物内に樹脂を注入してエアーを抜くことが肝要である。使用する樹脂の条件としては▲1▼粘度が低く各繊維への浸透性が良いこと。▲2▼熱可塑性であること。▲3▼透明硬質アクリル樹脂シートAと相容性が良いこと。▲4▼無溶剤タイプであること。の4条件を満たすものを選定する必要がある。この条件を満たす樹脂として水性のアクリルエマルジョンに注目し、中央理化製のリカボンドFK−715を選定した。
上記アクリルエマルジョンを水で粘度500mPa・sに希釈し,リッピング後脱気ロールを通して脱気し、90℃x120秒で乾燥硬化させて樹脂含浸織物シートCを作成した。この樹脂含浸織物シートを水中に入れてエアーの残留状況を確認したところ残留エアーがないことが確認された。又硬化後のアクリルエマルジョンは透明性も良く織物の質感が活かされた樹脂含浸織物シートCが得られた。又、この処方に使用するエマルジョンとしては他に水性アクリルシェル、アクリル/酢酸ビニール共重合体、水性ポリウレタン、EVA、EVA/酢酸ビニールエマルジョン等も適性がある。
このようにして作成された樹脂含浸織物シートCは含浸樹脂が硬化して取り扱い性も向上した結果、ロール仕様でのロール・ツー・ロールの後加工が容易であり、さらには裁断加工性も良くピース仕様にも適性があることが確認された。
次いで本実施形態に係わる複合シート(I)の作成にあたり、[0033]項で既述した第一層の透明硬質アクリル樹脂シートAの裏面に、第二層としてEVA/アクリルエマルジョン系接着剤B(セメダイン製EM402)をロールコーターで110g/m2塗工し、樹脂含浸織物シートCを積層して圧着ロールで加圧後、巾1000mmx長さ2000mmのサイズに裁断して50枚を合紙を挟んで積層し5時間加圧プレスして複合シート(I)を得た。ここで使用する熱可塑性接着剤としては他にアクリルエマルジョン、アクリル変性エチレン/EVAエマルジョン、変性ウレタンエマルジョン、EVAエマルジョン、無溶剤タイプの反応性アクリル、イソシアネート反応性ウレタン、反応性ウレタンアクリレート、水性EVA、も適正がある。また、100g/m2以下の薄手の織物状物の場合は光硬化タイプのアクリル、またはウレタン系接着剤を使用しても良い。さらにはウレタン系、EVA系のホットメルトフィルムを第二層に積層し加熱圧着して複合シートを作成する処方も適性である。ここで使用可能なホットメルトフィルンムとしては積水化学製のEVA系(S−LEC ENFILM)、ダイセルファインケム製のウレタン系(ダイアミドフィルム)がある。
次に図2は本実施形態に係わる複合三次元成形物(III)の断面図である。本実施形態に係わる複合三次元成形物(III)の作成にあたり、始に上記複合シート(I)を所定のキャビテイ金型に挿入し、シート温度130℃、金型温度60℃で真空成形して図2に示す三次元成形物(II)を作成した。
次いで上記に作成した三次元成形物(II)の端面を所定の形状にトリミング後、再びキャビテイ金型に挿入してキャビテイを移動しコアー金型を圧着して、樹脂温度230℃でグレイ色に着色したABS樹脂を射出成形し、バックアップフオーミングして図2に示す複合成形物(III)を得た。この時のキャビテイ金型温度は50℃に設定した。射出成形時のキャビテイ金型温度は真空成形時の金型温度より若干低めが望ましい。金型温度が高いと透明硬質アクリル樹脂シートが成形時に部分白化し易くなり好ましくない。また、薄い形状の複合三次元成形物の場合はバックアップフォーミングに使用する射出成形用樹脂にはポリカーボネイトとABSのアロイ樹脂が好ましい。
以上に記述した本実施形態により作成された複合三次元成形物は高級で重厚な織物の質感が活かされていると共に表層に厚さ300μの透明硬質アクリルクリアー層があることから高級塗装品をも上回る深みのある複合成形物となった。さらには残留エアー、並びに織物の深絞り部位での破断現象もない製品を提供するものとなった。
次いで、本発明の好適な実施の形態について、第2の処方を説明する。ここで、図3は本実施形態の第2の処方に係わる改良複合シート(I−1)の断面図である。又図4は本実施形態の第2の処方に係わる改良複合三次元成形物(IV)の断面図である。
本発明の複合三次元成形物を自動車の内装部材に使用する場合、最近の自動車内装用物性スペックに於いてドアートリム等の表層に於ける耐アルコール性の向上が求められており、同スペックに対応し得ないという問題点があった。
上記問題点を改善するためには、本発明に係わる複合成形物(III)に於いて成形物(II)の表層に使用される透明硬質アクリル樹脂シートAの耐アルコール性を改良する必要がある。
上記問題点を解決するため本発明者は第一層の透明硬質アクリル樹脂シートAの表面に、紫外線硬化と熱硬化の二段階硬化タイプのウレタン系塗料によるプレキュアーコートEを施すこととした。この具体的な処方としてはダイセルバリュウコーテイング製の高伸張ハードコート液を透明硬質アクリル樹脂シートの表面にマイクログラビアコート法により固形分で4g/m2塗工しUV硬化してプレキュアーコート透明硬質アクリル樹脂シートA−1を作成した。
上記プレキュアーコート透明硬質アクリル樹脂シートA=1を表層にして記述の樹脂含浸織物シートCを[0047]項の処方により第二層の接着剤Bを介して積層一体化し、改良複合シート(I−1)を作成した。
上記改良複合シート(I−1)を使用して記述の[0048]項の処方で改良三次元成形物II−1を作成し、次いで[0049]項の処方により改良複合三次元成形物(IV)を作成した。この改良複合シートの成形加工時の最大伸張率は80%であることが判明したが、絞り率の高いコンソールボックス等の特殊部材を除く大部分の自動車内装部材に使用し得ることが確認された。又、パソコン等のモバイル機器の筐体には問題のない製品を提供し得るものとなった。
このようにして作成された改良複合三次元成形物(IV)は表面の耐アルコール性が改善されると共に耐擦傷性も向上するという効果も得られ、ドアートリム等の自動車内装部材として充分な物性を有する製品を提供するものとなった。
始に、複合シート(I)の作成に当り第一層に使用する透明硬質アクリル樹脂シートAを三菱レイヨン社製のメタクリル樹脂70%、アクリルゴム含有重合体30%混合ポリマーを使用して押し出し成形法により作成し、厚さ0,3mm、巾1000mmのシートを得た。
次いで、ポリエステル80%、レイヨン20%で構成された目付400g/m2のジャカード織物を用意して、中央理化社製のアクリル/EVA混合エマルジョンを水で希釈して当該織物を浸漬し、脱気ロールを通して脱気後90℃x120秒の条件で乾燥硬化させて第三層の樹脂含浸織物状物Cを作成した。
次に、第一層の透明硬質アクリル樹脂シートAの裏面にセメダイン社製のEVA/アクリルエマルジョン系接着剤をロールコーターで110g/m2塗工して第二層の熱可塑性接着剤層Bを形成し、第三層に上述の樹脂含浸織物状物Cを積層して圧着加工し複合シート(I)を作成した。
次に、上記複合シート(I)を所定のキャビテイ金型に挿入してシート温度130℃で真空成形し、不要部分をトリミングして三次元成形物(II)を作成した。当該三次元成形物(II)を再びキャビテイ金型に挿入してコアー金型を圧着し、ABS樹脂Dを射出成形してバックアップフォーミングを行い複合三次元成形物(III)を作成した。
自動車内装材に適用する改良複合三次元成形物図4(IV)の作成に当り、第一層の透明硬質アクリル樹脂シートAの表面にダイセルバリュウコーテイング社製のプレキュアーコートEを塗工して[0054]項の処方で改良複合シートII−1を作成した。
上記改良複合シートII−1を使用して[0055]項の処方で改良複合三次元成形物(IV)を作成した。
本発明により作成された製品は実物の西陣織物等を使用したアクリル樹脂シート複合の三次元成形物を得るものとなり、高級感とデザイン性に富んだ質感を有した新感覚のモバイル機器筐体、並びにドアートリム等の自動車内装材を提供することを可能とした。
A 透明硬質アクリル樹脂シート
B 熱可塑性接着剤
C 樹脂含浸織物状物
D ABS又はPC/ABS樹脂
E プレキュアーコート
(I) 複合シート
II 三次元成形物
(III) 複合三次元成形物
A−1 プレキュアーコート透明硬質アクリル樹脂シート
(I−1) 改良複合シート
II−1 改良三次元成形物
(IV) 改良複合三次元成形物
B 熱可塑性接着剤
C 樹脂含浸織物状物
D ABS又はPC/ABS樹脂
E プレキュアーコート
(I) 複合シート
II 三次元成形物
(III) 複合三次元成形物
A−1 プレキュアーコート透明硬質アクリル樹脂シート
(I−1) 改良複合シート
II−1 改良三次元成形物
(IV) 改良複合三次元成形物
Claims (5)
- メタクリル樹脂60〜80重量%とアクリリゴム含有重合体40〜20重量%の混合ポリマーよりなる厚さ0,2mm〜0,9mmの透明硬質アクリル樹脂シートを第一層とし、裏面にアクリル又はウレタン系又はEVA系の熱可塑性接着剤による第二層を介して、第三層にアクリリ又はウレタン系エマルジョンを含浸した織物状物を積層し一体化して作成されたことを特徴とする複合シート。
- 第一層の表面に三次元成形可能なプレキュアーコートが成されて作成されたことを特徴とする請求項1記載の複合シート。
- 第一層の裏面に、アクリル又はウレタン系又はEVA系の熱可塑性接着剤を塗工して第二層を形成し、アクリル又はウレタン系エマルジョンを全体に含浸して脱気加工した織物状物を第三層として積層し一体化して作成したことを特徴とする請求項1、並びに請求項2記載の複合シートの製造方法。
- 請求項1、並びに請求項2記載の複合シートによる三次元成形物の裏面にABSまたはPC/ABS樹脂をバックアップフォーミングしたことを特徴とする三次元複合成形物。
- 請求項1、並びに請求項2記載の複合シートに於いて第一層を金型面にして所定のキャビテイ金型に挿入し、真空又は圧空成形して三次元成形物を作成し、不要部分をトリミング除去後、三次元成形物の裏面にABS又はPC/ABS樹脂をコアー金型により射出成形し一体化して作成したことを特徴とする請求項4記載の三次元複合成形物の製造方法。
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