JP2012207118A - インクジェット用非水系インク組成物およびインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明に係るインクジェット用非水系インク組成物の一態様は、
顔料と、下記一般式(1)で示される溶剤と、脂環構造を有する飽和炭化水素と、を含有することを特徴とする。
適用例1のインクジェット用非水系インク組成物において、前記脂環構造を有する飽和炭化水素の炭素数が8以上14以下であることができる。
適用例1または適用例2のインクジェット用非水系インク組成物において、前記脂環構造を有する飽和炭化水素が、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカンおよびシクロテトラデカンから選択される少なくとも1種であることができる。
適用例1ないし適用例3のいずれか一例のインクジェット用非水系インク組成物において、前記脂環構造を有する飽和炭化水素の含有量が5質量%以上20質量%以下であることができる。
適用例1ないし適用例4のいずれか一例のインクジェット用非水系インク組成物において、測定温度20℃における粘度が2mPa・s以上8mPa・s以下であることができる。
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
適用例1ないし適用例5のいずれか一例の非水系インク組成物の液滴を吐出し、被記録媒体の表面に該液滴を付着させて画像を記録することを特徴とする。
本発明の一実施形態に係るインクジェット用非水系インク組成物(以下、単に「非水系インク組成物」ともいう)は、顔料と、後述する特定の溶剤と、脂環構造を有する飽和炭化水素と、を少なくとも含有する。本発明において、「非水系インク組成物」とは、インク組成物を製造する際に水を意図的に添加しないという程度の意味であり、インク組成物を製造中または保管中に不可避的に混入する微量の水分を含んでいても構わない。
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、下記一般式(1)で示される溶剤を少なくとも含有する。
HLB値=(無極性値(I)/有機性値(O))×10 …(2)
具体的には、I/O値は、藤田穆著、「系統的有機定性分析混合物編」、風間書房、1974年;黒木宣彦著、「染色理論化学」、槙書店、1966年;井上博夫著、「有機化合物分離法」、裳華房、1990年、の各文献に基づいて算出することができる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、脂環構造を有する飽和炭化水素を少なくとも含有する。本実施の形態に係る非水系インク組成物によれば、脂環構造を有する飽和炭化水素を含有することにより被記録媒体上における顔料の凝集が抑制されるため、記録された画像において凝集ムラの発生を低減できる。なお、理由は定かではないが、この凝集ムラの発生を低減させる効果は、前記一般式(1)で示される溶媒と脂環構造を有する飽和炭化水素とを併用した場合に飛躍的に向上する傾向が認められる。また、脂環構造を有する飽和炭化水素は、前記一般式(1)で示される溶媒との相溶性が良好であるため、非水系インク組成物の安定性も向上する。
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、色材として顔料を少なくとも含有する。前記顔料としては、従来の非水系インク組成物に通常用いられている有色無機顔料または有色有機顔料等の顔料を用いることができる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物には、必要に応じて、前記一般式(1)で示される溶剤以外の有機溶剤、界面活性剤、分散剤等を添加してもよい。
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、塩化ビニル系樹脂等の被記録媒体に対してインクを強固に固着させる観点から、常温常圧下で液体のアルキレングリコール化合物およびラクトンから選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、アルキレングリコール化合物を含有することがより好ましい。
本実施の形態に係る非水系インク組成物には、前記有機溶媒の他に、表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる観点から、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、または非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。
本実施の形態に係る非水系インク組成物には、顔料の分散安定性を向上させる観点から、通常の非水系インク組成物において用いられる任意の分散剤を用いることができる。分散剤としては、有機溶媒の溶解パラメーターが8〜11であるときに有効に作用する分散剤を用いることが好ましい。このような分散剤の具体例としては、ヒノアクトKF1−M、T−6000、T−7000、T−8000、T−8350P、T−8000E(いずれも武生ファインケミカル株式会社製)等のポリエステル系高分子化合物、Solsperse20000、24000、32000、32500、33500、34000、35200、37500(いずれもLUBRIZOL社製)、Disperbyk−161、162、163、164、166、180、190、191、192(いずれもビックケミー・ジャパン社製)、フローレンDOPA−17、22、33、G−700(いずれも共栄社化学株式会社製)、アジスパーPB821、PB711(いずれも味の素株式会社製)、LP4010、LP4050、LP4055、POLYMER400、401、402、403、450、451、453(いずれもEFKAケミカルズ社製)等が挙げられる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物には、さらに通常の非水系インク組成物に含まれるその他の添加剤を添加してもよい。その他の添加剤としては、たとえば酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、バインダー樹脂等が挙げられる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、公知の方法によって製造することができるが、具体的には以下のような手法を採り得る。まず、式(1)で示される溶剤、脂環構造を有する飽和炭化水素、その他の有機溶剤を秤取り、撹拌・混合することにより混合溶剤を得る。次いで、得られた混合溶剤の一部を取り分けて、そこに分散剤、顔料の順に添加し、ホモジナイザーを用いて粉砕処理する。その後、ボールミル、ビーズミル、超音波またはジェットミル等で顔料分散液を調製し、所望のインク特性を有するように調整する。続いて、得られた顔料分散液に、混合溶媒の残部およびその他の添加剤(たとえば界面活性剤やバインダー樹脂)を撹拌下に加えることで非水系インク組成物を得ることができる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、印字品質とインクジェット用インク組成物としての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上50mN/mであることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、前述した非水系インク組成物の液滴を吐出し、被記録媒体の表面に該液滴を付着させて画像を記録することを特徴とする。本実施の形態に係るインクジェット記録方法によれば、前述した非水系インク組成物を用いるので、たとえば塩化ビニル系樹脂等を含有する被記録媒体において、凝集ムラの低減と耐擦性の向上とが両立された高品質な記録物を得ることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」は、特に断らない限り質量基準である。
3.1.1.溶剤A
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよびメタノール6.408gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(6)で示される溶剤Aを得た。
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよび1−ブタノール14.824gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(7)で示される溶剤Bを得た。
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド25.441gおよびメタノール6.408gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(8)で示される溶剤Cを得た。
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよび1−ヘキサノール20.434gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(9)で示される溶剤Dを得た。
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよび2−エチルヘキサノール26.046gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(10)で示される溶剤Eを得た。
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよび1−オクタノール26.046gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(11)で示される溶剤Fを得た。
容器に、表1〜表3に記載の濃度に相当する量の各溶剤をそれぞれのインク毎に投入し、マグネティックスターラーを用いて30分間混合撹拌して混合溶剤を得た。
得られた混合溶剤の一部を取り分けて、そこにSolsperse37500(LUBRIZOL社製、製品名)およびC.I.ピグメントブルー15:3(クラリアントジャパン製、商品名「Hosterperm Blue B2G」)を所定量添加して、ホモジナイザーを用いて粉砕処理した。その後、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルで分散処理を行うことにより、顔料分散液を得た。
得られた顔料分散液に、混合溶剤の残部および界面活性剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK−340」)を添加してさらに1時間混合撹拌してから、5μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することにより、表1〜表3に記載のシアンインク組成物を得た。なお、表中の数値は、質量%を表す。
・C.I.ピグメントブルー15:3(クラリアントジャパン製、商品名「Hosterperm Blue B2G」、シアン顔料)
・Solsperse37500(製品名、LUBRIZOL社製、分散剤)
・ジエチレングリコールジエチルエーテル(製品名、日本乳化剤株式会社製、溶剤)
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル(製品名、日本乳化剤株式会社製、溶剤)
・γ−ブチロラクトン(製品名、関東化学株式会社製、溶剤)
・シクロオクタン(製品名、和光純薬工業株式会社製、溶剤)
・シクロノナン(製品名、HONEST JOY HOLDINGS LIMITED製、溶剤)
・シクロデカン(製品名、東京化成工業株式会社製、溶剤)
・シクロドデカン(製品名、東京化成工業株式会社製、溶剤)
・界面活性剤:BYK−340(製品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、フッ素系界面活性剤)
3.3.1.インクの粘度測定
表1〜表3に示した各非水系インク組成物の20℃における粘度を、モジュラーコンパクトレオメーター(アントンパール社製、形式「PHYSICA MCR 300」)を用いて測定した。なお、測定された粘度の値は、20℃でせん断速度を200S−1としたときの値である。その測定結果を表1〜表3に併せて示す。
紙案内部に温度が可変できるヒーターを取り付けたインクジェットプリンター(JローランドDG社製、型式「SP−300V」)を使用して、濃度100%にて塩化ビニル系樹脂(スリーエム社製、製品名「IJ−40」)上にベタ印刷して記録物を得た。なお、記録条件は、プリンターのヒーター設定を「記録面の温度が40℃となる設定」とした。その後、得られた記録物を室温(25℃)環境下の実験室にて5時間放置した。
次いで、その記録物の記録面を学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製、製品名「AB−301」)を用いて、荷重200g下、綿布にて10回擦ったときの記録面の剥がれ状態や綿布へのインク移り状態を確認することにより耐擦性を評価した。その評価基準を以下に示すと共に、その評価結果を表1〜表3に併せて示す。なお、下記の評価基準のうち「○」および「△」が実用上許容される範囲である。
○:10回擦ってもインク剥がれ及び綿布へのインク移りが認められなかった。
△:10回擦った後インク剥がれ又は綿布へのインク移りがわずかに認められた。
×:10回擦った後インク剥がれ又は綿布へのインク移りが認められた。
上記「3.3.2.記録物の耐擦性」で得られた各記録物について、凝集ムラの有無を目視観察し、下記の評価基準に従って評価した。その評価結果を表1〜表3に併せて示す。なお、下記の評価基準のうち「○」および「△」が実用上許容される範囲である。
○:凝集ムラが全く認められなかった。
△:凝集ムラがわずかに認められた。
×:凝集ムラがはっきりと認められた。
上記「3.3.2.記録物の耐擦性」で得られた各記録物について、吐出欠陥の有無を目視観察し、下記の評価基準に従って吐出安定性を評価した。なお、「ノズル抜け」とは、通常プリントヘッドについているノズルから吐出されるはずのインクがノズルの詰まりによって吐出されず、印刷結果に影響を与えることをいう。その評価結果を表1〜表3に併せて示す。なお、下記の評価基準のうち「○」および「△」が実用上許容される範囲である。
○:吐出欠陥(ノズル抜け)の発生が認められない。
△:ベタ画像の一部が埋まっていない個所がある。
×:ベタ画像の複数箇所が埋まっていない。
実施例1〜実施例15によれば、一般式(1)で示される溶剤と脂環構造を有する飽和炭化水素とを含有することで、塩化ビニル系樹脂からなる被記録媒体上に吐出して得られた記録物において凝集ムラの低減と耐擦性の向上とを両立できることが判った。
Claims (6)
- 請求項1において、
前記脂環構造を有する飽和炭化水素の炭素数が8以上14以下である、インクジェット用非水系インク組成物。 - 請求項1または請求項2において、
前記脂環構造を有する飽和炭化水素が、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカンおよびシクロテトラデカンから選択される少なくとも1種である、インクジェット用非水系インク組成物。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記脂環構造を有する飽和炭化水素の含有量が5質量%以上20質量%以下である、インクジェット用非水系インク組成物。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
測定温度20℃における粘度が2mPa・s以上8mPa・s以下である、インクジェット用非水系インク組成物。 - 請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の非水系インク組成物の液滴を吐出し、被記録媒体の表面に該液滴を付着させて画像を記録する、インクジェット記録方法。
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