JP2012207118A - インクジェット用非水系インク組成物およびインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】記録物の凝集ムラを低減できると共に、記録物の耐擦性を向上できるインクジェット用非水系インク組成物、およびそれを用いたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る非水系インク組成物は、顔料と、下記一般式(1)で示される溶剤と、脂環構造を有する飽和炭化水素と、を含有する。
【化13】
Figure 2012207118

(式(1)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表し、RおよびRはメチル基またはエチル基を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット用非水系インク組成物、およびそれを用いたインクジェット記録方法に関する。
従来、インクジェット記録用ヘッドのノズルから吐出させた微小なインク滴によって画像や文字を記録するいわゆるインクジェット記録方法は、主に紙等の吸水性の被記録媒体表面への記録に利用されてきた。このようなインクジェット記録方法に用いられるインクジェット用インクとしては、水に水溶性染料等の色材を添加した水系インクが広く普及している。しかしながら、インクジェット記録方法は、近年様々な分野において多種多様な被記録媒体表面への記録に利用されるようになってきている。そこで、このような被記録媒体表面への記録に対応するために、水系インクに代えて、溶媒として実質的に水を含まない非水系インクが開発された。
かかる非水系インクの具体例としては、塩化ビニル系樹脂への密着性を向上させる観点から、ポリ塩化ビニルを溶解できる有機溶剤、顔料および樹脂から構成される非水系インクが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
一方、非水系インクでは、色材として顔料を添加することが一般的に行われている。そして、非水系インク中における顔料の分散安定性を確保する観点から、様々な検討が行われている。たとえば、顔料表面を化学処理して分散させる方法や、ポリマーにより顔料を被覆しそのポリマーの物理的な立体障害により分散させる方法等が挙げられる。より具体的には、従来公知の高分子分散剤に加えて、特定の二種類の分散助剤をさらに使用することで、非水系インク中における顔料の分散安定性を向上させる方法がある(たとえば、特許文献2参照)。
特開2005−15672号公報 特開2008−1851号公報
以上のように、従来の非水系インクの中には顔料の分散安定性に優れているものもあり、それらによればインクジェット記録装置による吐出安定性の点では問題がなかった。しかしながら、従来の非水系インクを塩化ビニル系樹脂等の被記録媒体上に吐出した場合、記録物に凝集ムラが発生することがあった。このような記録物の凝集ムラは、被記録媒体上に吐出された非水系インクの液滴中で顔料が凝集することにより発生するものと考えられており、重要な課題の一つとなっている。
また、前述したように、非水系インクでは塩化ビニル系樹脂等の被記録媒体に対する密着性を向上させることにより記録物の耐擦性を向上させることが重要な課題の一つとなっている。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、前記課題を解決することで、記録物の凝集ムラを低減できると共に、記録物の耐擦性を向上できるインクジェット用非水系インク組成物、およびそれを用いたインクジェット記録方法を提供するものである。
本発明は、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係るインクジェット用非水系インク組成物の一態様は、
顔料と、下記一般式(1)で示される溶剤と、脂環構造を有する飽和炭化水素と、を含有することを特徴とする。
Figure 2012207118
(式(1)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表し、RおよびRはメチル基またはエチル基を表す。)
適用例1のインクジェット用非水系インク組成物によれば、上記一般式(1)で示される溶剤と脂環構造を有する飽和炭化水素とを併用することにより、塩化ビニル系樹脂等の被記録媒体上に吐出して得られた記録物において、凝集ムラの低減と耐擦性の向上とを両立させることができる。
[適用例2]
適用例1のインクジェット用非水系インク組成物において、前記脂環構造を有する飽和炭化水素の炭素数が8以上14以下であることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2のインクジェット用非水系インク組成物において、前記脂環構造を有する飽和炭化水素が、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカンおよびシクロテトラデカンから選択される少なくとも1種であることができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例のインクジェット用非水系インク組成物において、前記脂環構造を有する飽和炭化水素の含有量が5質量%以上20質量%以下であることができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例のインクジェット用非水系インク組成物において、測定温度20℃における粘度が2mPa・s以上8mPa・s以下であることができる。
[適用例6]
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
適用例1ないし適用例5のいずれか一例の非水系インク組成物の液滴を吐出し、被記録媒体の表面に該液滴を付着させて画像を記録することを特徴とする。
適用例6のインクジェット記録方法によれば、前記インクジェット用非水系インク組成物を用いるので、たとえば塩化ビニル系樹脂等を含有する被記録媒体において、凝集ムラの低減と耐擦性の向上とが両立された記録物を得ることができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
1.インクジェット用非水系インク組成物
本発明の一実施形態に係るインクジェット用非水系インク組成物(以下、単に「非水系インク組成物」ともいう)は、顔料と、後述する特定の溶剤と、脂環構造を有する飽和炭化水素と、を少なくとも含有する。本発明において、「非水系インク組成物」とは、インク組成物を製造する際に水を意図的に添加しないという程度の意味であり、インク組成物を製造中または保管中に不可避的に混入する微量の水分を含んでいても構わない。
以下、本実施の形態に用いられる各成分について詳細に説明する。
1.1.溶剤
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、下記一般式(1)で示される溶剤を少なくとも含有する。
Figure 2012207118
前記一般式(1)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、RおよびRはメチル基またはエチル基である。「炭素数1〜8のアルキル基」としては、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基等であることができる。前記一般式(1)で示される溶剤は、塩化ビニル系樹脂等の樹脂との相溶性に優れている。そのため、前記一般式(1)で示される溶剤を含む非水系インク組成物は、塩化ビニル系樹脂等の樹脂を含む被記録媒体と相互作用することにより被記録媒体上への定着性が増し、その結果耐擦性を向上させることができる。
前記一般式(1)で示される溶剤のHLB値は、好ましくは8.0以上20.0以下、より好ましくは8.5以上18.5以下、特に好ましくは12.0以上18.5以下である。前記一般式(1)で示される溶剤のHLB値が前記範囲内にあると、樹脂との相溶性の点でより好適となる。なお、本明細書におけるHLB値とは、有機概念図における無極性値(I)と有機性値(O)との比(以下、単に「I/O値」ともいう)から下記式(2)により算出された値である。
HLB値=(無極性値(I)/有機性値(O))×10 …(2)
具体的には、I/O値は、藤田穆著、「系統的有機定性分析混合物編」、風間書房、1974年;黒木宣彦著、「染色理論化学」、槙書店、1966年;井上博夫著、「有機化合物分離法」、裳華房、1990年、の各文献に基づいて算出することができる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物中における前記一般式(1)で示される溶媒の含有量は、好ましくは2質量%以上50質量%以下、より好ましくは5質量%以上50質量%以下である。前記一般式(1)で示される溶媒の含有量が前記範囲にあると、塩化ビニル系樹脂等の樹脂との十分な相互作用により被記録媒体への定着性が増すため、耐擦性を向上させることができる。また、後述する脂環構造を有する飽和炭化水素との相溶性も良好となり、非水系インク組成物の安定性も向上する。
1.2.脂環構造を有する飽和炭化水素
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、脂環構造を有する飽和炭化水素を少なくとも含有する。本実施の形態に係る非水系インク組成物によれば、脂環構造を有する飽和炭化水素を含有することにより被記録媒体上における顔料の凝集が抑制されるため、記録された画像において凝集ムラの発生を低減できる。なお、理由は定かではないが、この凝集ムラの発生を低減させる効果は、前記一般式(1)で示される溶媒と脂環構造を有する飽和炭化水素とを併用した場合に飛躍的に向上する傾向が認められる。また、脂環構造を有する飽和炭化水素は、前記一般式(1)で示される溶媒との相溶性が良好であるため、非水系インク組成物の安定性も向上する。
脂環構造を有する飽和炭化水素は、置換基としてアルキル基またはシクロアルキル基を有してもよい。したがって、脂環構造を有する飽和炭化水素は、一つの脂環構造を有するシクロアルカンに限定されるものではなく、二つの脂環構造を有するビシクロアルカンその他の複数の脂環構造を有する飽和炭化水素であっても構わない。
また、脂環構造を有する飽和炭化水素の炭素数は、8〜14であることが好ましく、8〜11であることがより好ましい。脂環構造を有する飽和炭化水素の炭素数が前記範囲にあれば、上述した被記録媒体上における顔料の凝集が抑制されやすい。一方、脂環構造を有する飽和炭化水素の炭素数が8未満であると、沸点が低すぎるために記録ヘッドにおける目詰まりが発生し、インクジェットプリンターにおける吐出安定性が損なわれることがある。また、脂環構造を有する飽和炭化水素の炭素数が14を超えると、分子量の増大に伴いインクの粘度が上昇するため、インクジェットプリンターにおける吐出安定性が損なわれることがある。
脂環構造を有する飽和炭化水素としては、記録物における凝集ムラの低減、インクの吐出安定性、および前記一般式(1)で示される溶媒との相溶性の観点から、シクロオクタン、モノメチルシクロオクタン、エチルシクロオクタン、プロピルシクロオクタン、ジメチルシクロオクタン、エチルメチルシクロオクタン、シクロノナン、メチルシクロノナン、エチルシクロノナン、ジメチルシクロノナン、シクロデカン、メチルシクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカン、シクロテトラデカン等が好適である。これらの中でも、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカンシクロドデカン、シクロトリデカン、シクロテトラデカンがより好ましく、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカンが特に好ましい。
なお、本実施の形態に係る非水系インク組成物において用いることができる脂環構造を有する飽和炭化水素は、常圧下における沸点が、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上である。
本実施の形態に係る非水系インク組成物中における脂環構造を有する飽和炭化水素の含有量は、好ましくは5質量%以上20質量%以下、より好ましくは8質量%以上15質量%以下である。脂環構造を有する飽和炭化水素の含有量が前記範囲にあると、被記録媒体上における顔料の凝集が十分に抑制されるため、記録された画像の凝集ムラの発生を低減する効果がより高い。また、前述した一般式(1)で示される溶媒との相溶性も良好となり、非水系インク組成物の安定性も向上する。一方、脂環構造を有する飽和炭化水素の含有量が5質量%未満では、被記録媒体上における顔料の凝集が十分に抑制されない場合があり、20質量%を超えると、インクの粘度が高くなりすぎてインクジェットプリンターにおける吐出安定性が損なわれることがある。
1.3.顔料
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、色材として顔料を少なくとも含有する。前記顔料としては、従来の非水系インク組成物に通常用いられている有色無機顔料または有色有機顔料等の顔料を用いることができる。
顔料としては、たとえば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ;ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料;カーボンブラック等の無機顔料等が挙げられる。顔料粒子の平均一次粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは50nm以上500nm以下である。
本実施の形態に係る非水系インク組成物をマゼンタまたはレッドインクとする場合の顔料としては、たとえば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントレッド224等が挙げられる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物をオレンジまたはイエローインクとする場合の顔料としては、たとえば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180等が挙げられる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物をグリーンまたはシアンインクとする場合の顔料としては、たとえば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36等が挙げられる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物をブラックインクとする場合の顔料としては、たとえば、カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)等が挙げられる。
前記例示した顔料は、一種単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
本実施の形態に係る非水系インク組成物中における顔料の含有量は、用途や記録特性によって適宜選択することができるが、好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、特に好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
1.4.その他の添加剤
本実施の形態に係る非水系インク組成物には、必要に応じて、前記一般式(1)で示される溶剤以外の有機溶剤、界面活性剤、分散剤等を添加してもよい。
1.4.1.その他の有機溶剤
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、塩化ビニル系樹脂等の被記録媒体に対してインクを強固に固着させる観点から、常温常圧下で液体のアルキレングリコール化合物およびラクトンから選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、アルキレングリコール化合物を含有することがより好ましい。
アルキレングリコール化合物としては、国際公開第2002/055619パンフレットに記載されているような、エチレングリコール化合物またはプロピレングリコール化合物であることが好ましい。
好ましいエチレングリコール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、またはポリエチレングリコールのモノエーテルないしはジエーテルが挙げられ、好ましくはジエチレングリコール化合物である。また、好ましいプロピレングリコール化合物としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、またはポリプロピレングリコールのモノエーテルないしはジエーテルが挙げられ、好ましくはジプロピレングリコール化合物である。
前記ジエチレングリコール化合物としては、たとえば下記一般式(3)で示されるジエチレングリコール化合物を用いることができる。
Figure 2012207118
式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはRCO基である。Rは、炭素数1〜4のアルキル基である。「炭素数1〜4のアルキル基」は、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基であることができる。式(3)で示されるジエチレングリコール化合物の具体例としては、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
前記ジプロピレングリコール化合物としては、たとえば下記一般式(4)で示されるジプロピレングリコール化合物を用いることができる。
Figure 2012207118
式(4)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはRCO基である。Rは、炭素数1〜4のアルキル基である。「炭素数1〜4のアルキル基」は、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基であることができる。式(4)で示されるジプロピレングリコール化合物としては、例えば、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
ラクトンとしては、炭素原子数6以下のラクトンが好ましく、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンであることがより好ましい。
本実施の形態に係る非水系インク組成物において用いることができる前記ジエチレングリコール化合物、前記ジプロピレングリコール化合物、およびラクトンは、それらの沸点が常圧下で、それぞれ好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上である。
また、本実施の形態に係る非水系インク組成物において用いることができる前記ジエチレングリコール化合物およびジプロピレングリコール化合物は、それらの20℃での蒸気圧が、好ましくは1hPa以下、より好ましくは0.7hPa以下である。
前述したような高沸点および低蒸気圧の条件を満たすジエチレングリコール化合物およびジプロピレングリコール化合物を用いることにより、局所的排気設備または排ガス処理設備を設ける負担が軽減され、作業環境の向上が可能となり、また周辺環境への環境負荷も軽減することが可能となる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物においては、前記ジエチレングリコール化合物を含有することが好ましく、その含有量は、印刷特性によって適宜選択することができるが、非水系インク組成物全体の質量に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、前述したジエチレングリコール化合物、ジプロピレングリコール化合物、ラクトンないしはそれらの混合物に加えて、さらに、常温常圧下で液体であり、下記一般式(5)で示されるポリエチレングリコールモノエーテル化合物を含有してもよい。
Figure 2012207118
式(5)中、R10およびR11は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)である。nは、3〜6の整数である。「炭素数1〜6のアルキル基」は、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、たとえば前記「炭素数1〜4のアルキル基」に加えて、直鎖状もしくは分岐状のペンチル基またはヘキシル基であることができる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物において用いることができる前記ポリエチレングリコールモノエーテル化合物は、その沸点が常圧下で、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上である。また、その引火点は、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上である。このようなポリエチレングリコールモノエーテル化合物を用いることにより、非水系インク組成物に揮発抑制性を付与することができる。たとえば、インクカートリッジからインクジェット記録用ヘッドへ非水系インク組成物を輸送するチューブ内での非水系インク組成物の揮発を抑制することにより、チューブ内での固形分の堆積を防止ないし軽減することができる。
好ましいポリエチレングリコールモノエーテル化合物としては、たとえばトリエチレングリコールモノエーテル化合物(たとえばトリエチレングリコールモノメチルエーテル、又はトリエチレングリコールモノブチルエーテル)、または前記一般式(5)においてnが4〜6であるポリエチレングリコールモノエーテル化合物(特にポリエチレングリコールモノメチルエーテル)の混合物、たとえば、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルと、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテルと、ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテルと、の混合物が挙げられる。
また、本実施の形態に係る非水系インク組成物は、前記例示した有機溶媒の他に、以下に例示する有機溶媒をさらに含有してもよい。
その他の有機溶媒としては、好ましくは極性有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)等が挙げられる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物が、前記ジエチレングリコール化合物、前記ジプロピレングリコール化合物、および前記ラクトンの少なくともいずれか1種を含み、前記ポリエチレングリコールモノエーテル化合物を含まない場合には、前記ジエチレングリコール化合物、前記ジプロピレングリコール化合物、および前記ラクトンの総量が、全有機溶媒成分の75質量%以上を占めることが好ましい。
また、本実施の形態に係る非水系インク組成物が、前記ジエチレングリコール化合物、前記ジプロピレングリコール化合物、および前記ラクトンに加えて、前記ポリエチレングリコールモノエーテル化合物を含む場合には、前記ジエチレングリコール化合物、前記ジプロピレングリコール化合物、前記ラクトン、および前記のポリエチレングリコールモノエーテル化合物の総量は、全有機溶媒成分の80質量%以上を占めることが好ましい。
1.4.2.界面活性剤
本実施の形態に係る非水系インク組成物には、前記有機溶媒の他に、表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる観点から、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、または非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。
シリコン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましい。具体例としては、BYK−347、348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
また、ポリオキシエチレン誘導体としては、アセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。具体例としては、サーフィノール82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィンSTG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)、ニッサンノニオンA−10R、A−13R(いずれも日油株式会社製)、フローレンTG−740W、D−90(共栄社化学株式会社製)、ノイゲンCX−100(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物中における界面活性剤の含有量は、好ましくは0.05質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
1.4.3.分散剤
本実施の形態に係る非水系インク組成物には、顔料の分散安定性を向上させる観点から、通常の非水系インク組成物において用いられる任意の分散剤を用いることができる。分散剤としては、有機溶媒の溶解パラメーターが8〜11であるときに有効に作用する分散剤を用いることが好ましい。このような分散剤の具体例としては、ヒノアクトKF1−M、T−6000、T−7000、T−8000、T−8350P、T−8000E(いずれも武生ファインケミカル株式会社製)等のポリエステル系高分子化合物、Solsperse20000、24000、32000、32500、33500、34000、35200、37500(いずれもLUBRIZOL社製)、Disperbyk−161、162、163、164、166、180、190、191、192(いずれもビックケミー・ジャパン社製)、フローレンDOPA−17、22、33、G−700(いずれも共栄社化学株式会社製)、アジスパーPB821、PB711(いずれも味の素株式会社製)、LP4010、LP4050、LP4055、POLYMER400、401、402、403、450、451、453(いずれもEFKAケミカルズ社製)等が挙げられる。
本実施の形態に係る非水系インク組成物において、前記分散剤の含有量は、分散すべき顔料によって適宜選択することができるが、非水系インク組成物中の顔料の含有量100質量部に対して、好ましくは5質量部以上200質量部以下、より好ましくは30質量部以上120質量部以下である。
1.4.4.その他の添加剤
本実施の形態に係る非水系インク組成物には、さらに通常の非水系インク組成物に含まれるその他の添加剤を添加してもよい。その他の添加剤としては、たとえば酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、バインダー樹脂等が挙げられる。
酸化防止剤としては、たとえばBHA(2,3−ブチル−4−オキシアニソール)、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)等が挙げられる。本実施の形態に係る非水系インク組成物中における酸化防止剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上3質量%以下である。
紫外線吸収剤としては、たとえばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。本実施の形態に係る非水系インク組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下である。
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、インクの粘度を調整する目的でバインダー樹脂を添加してもよい。バインダー樹脂としては、たとえばアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロースアセテートブチレート等の繊維系樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。なお、バインダー樹脂は、その添加量により塩化ビニル系樹脂に対するインクの定着性をさらに良好とすることもできる。
1.4.5.非水系インク組成物の製造方法
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、公知の方法によって製造することができるが、具体的には以下のような手法を採り得る。まず、式(1)で示される溶剤、脂環構造を有する飽和炭化水素、その他の有機溶剤を秤取り、撹拌・混合することにより混合溶剤を得る。次いで、得られた混合溶剤の一部を取り分けて、そこに分散剤、顔料の順に添加し、ホモジナイザーを用いて粉砕処理する。その後、ボールミル、ビーズミル、超音波またはジェットミル等で顔料分散液を調製し、所望のインク特性を有するように調整する。続いて、得られた顔料分散液に、混合溶媒の残部およびその他の添加剤(たとえば界面活性剤やバインダー樹脂)を撹拌下に加えることで非水系インク組成物を得ることができる。
1.4.6.物性
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、印字品質とインクジェット用インク組成物としての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上50mN/mであることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、本実施の形態に係る非水系インク組成物の20℃における粘度は、2mPa・s以上8mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上5.5mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、粘弾性試験機MCR−300(Physica社製)を用いて、20℃の環境下で、Shear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
2.インクジェット記録方法
本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、前述した非水系インク組成物の液滴を吐出し、被記録媒体の表面に該液滴を付着させて画像を記録することを特徴とする。本実施の形態に係るインクジェット記録方法によれば、前述した非水系インク組成物を用いるので、たとえば塩化ビニル系樹脂等を含有する被記録媒体において、凝集ムラの低減と耐擦性の向上とが両立された高品質な記録物を得ることができる。
また、前述した非水系インク組成物には前記一般式(1)で示される溶剤が含まれており、かかる溶剤は塩化ビニル系樹脂と相互作用する傾向がある。そのため、本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、塩化ビニル系樹脂を含有する被記録媒体の表面に前述した非水系インク組成物の液滴を付着させて画像を記録することで、被記録媒体上に強固に定着される点で優れている。
本実施の形態に係るインクジェット記録方法における被記録媒体としては、上記のような観点から、たとえば塩化ビニル系樹脂等の樹脂を含有するものが好ましい。塩化ビニル系樹脂を含有する被記録媒体としては、硬質もしくは軟質の塩化ビニル系フィルムまたはシート等が挙げられる。前述した非水系インク組成物は、塩化ビニル系樹脂基材における無処理表面への画像の記録を可能ならしめるものであり、従来の受容層を有する被記録媒体のごとく、高価な被記録媒体の使用を不要とする優れた効果を有するが、インク受容層により表面処理された基材であっても適用できることは言うまでもない。
本実施の形態に係るインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置は、特に限定されないが、ドロップオンデマンド型のインクジェット記録装置が好ましい。ドロップオンデマンド型のインクジェット記録装置には、記録ヘッドに配設された圧電素子を用いて記録を行う圧電素子記録方法を採用したもの、記録ヘッドに配設された発熱抵抗素子のヒーター等による熱エネルギーを用いて記録を行う熱ジェット記録方法を採用したもの等があるが、いずれの記録方法も採用することができる。また、本実施の形態に係る非水系インク組成物は、撥インク処理された吐出ノズル表面に対して不活性であるという利点を有するので、たとえば撥インク処理された吐出ノズル表面を有するインクジェット記録用ヘッドから吐出させるインクジェット記録方法に有利に用いることができる。
3.実施例
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」は、特に断らない限り質量基準である。
3.1.溶剤の合成
3.1.1.溶剤A
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよびメタノール6.408gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(6)で示される溶剤Aを得た。
Figure 2012207118
なお、得られた溶剤Aの、有機概念図におけるI/O値から上記式(2)により算出されたHLB値は、18.3であった。
3.1.2.溶剤B
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよび1−ブタノール14.824gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(7)で示される溶剤Bを得た。
Figure 2012207118
なお、得られた溶剤Bの、有機概念図におけるI/O値から上記式(2)により算出されたHLB値は、12.2であった。
3.1.3.溶剤C
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド25.441gおよびメタノール6.408gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(8)で示される溶剤Cを得た。
Figure 2012207118
なお、得られた溶剤Cの、有機概念図におけるI/O値から上記式(2)により算出されたHLB値は、13.8であった。
3.1.4.溶剤D
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよび1−ヘキサノール20.434gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(9)で示される溶剤Dを得た。
Figure 2012207118
なお、得られた溶剤Dの、有機概念図におけるI/O値から上記式(2)により算出されたHLB値は、10.0であった。
3.1.5.溶剤E
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよび2−エチルヘキサノール26.046gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(10)で示される溶剤Eを得た。
Figure 2012207118
なお、得られた溶剤Eの、有機概念図におけるI/O値から上記式(2)により算出されたHLB値は、8.5であった。
3.1.6.溶剤F
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよび1−オクタノール26.046gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(11)で示される溶剤Fを得た。
Figure 2012207118
なお、得られた溶剤Fの、有機概念図におけるI/O値から上記式(2)により算出されたHLB値は、8.5であった。
3.2.非水系インク組成物の調製
容器に、表1〜表3に記載の濃度に相当する量の各溶剤をそれぞれのインク毎に投入し、マグネティックスターラーを用いて30分間混合撹拌して混合溶剤を得た。
得られた混合溶剤の一部を取り分けて、そこにSolsperse37500(LUBRIZOL社製、製品名)およびC.I.ピグメントブルー15:3(クラリアントジャパン製、商品名「Hosterperm Blue B2G」)を所定量添加して、ホモジナイザーを用いて粉砕処理した。その後、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルで分散処理を行うことにより、顔料分散液を得た。
得られた顔料分散液に、混合溶剤の残部および界面活性剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK−340」)を添加してさらに1時間混合撹拌してから、5μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することにより、表1〜表3に記載のシアンインク組成物を得た。なお、表中の数値は、質量%を表す。
なお、表中で使用した材料は、下記の通りである。
・C.I.ピグメントブルー15:3(クラリアントジャパン製、商品名「Hosterperm Blue B2G」、シアン顔料)
・Solsperse37500(製品名、LUBRIZOL社製、分散剤)
・ジエチレングリコールジエチルエーテル(製品名、日本乳化剤株式会社製、溶剤)
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル(製品名、日本乳化剤株式会社製、溶剤)
・γ−ブチロラクトン(製品名、関東化学株式会社製、溶剤)
・シクロオクタン(製品名、和光純薬工業株式会社製、溶剤)
・シクロノナン(製品名、HONEST JOY HOLDINGS LIMITED製、溶剤)
・シクロデカン(製品名、東京化成工業株式会社製、溶剤)
・シクロドデカン(製品名、東京化成工業株式会社製、溶剤)
・界面活性剤:BYK−340(製品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、フッ素系界面活性剤)
3.3.非水系インク組成物の評価試験
3.3.1.インクの粘度測定
表1〜表3に示した各非水系インク組成物の20℃における粘度を、モジュラーコンパクトレオメーター(アントンパール社製、形式「PHYSICA MCR 300」)を用いて測定した。なお、測定された粘度の値は、20℃でせん断速度を200S−1としたときの値である。その測定結果を表1〜表3に併せて示す。
3.3.2.記録物の耐擦性
紙案内部に温度が可変できるヒーターを取り付けたインクジェットプリンター(JローランドDG社製、型式「SP−300V」)を使用して、濃度100%にて塩化ビニル系樹脂(スリーエム社製、製品名「IJ−40」)上にベタ印刷して記録物を得た。なお、記録条件は、プリンターのヒーター設定を「記録面の温度が40℃となる設定」とした。その後、得られた記録物を室温(25℃)環境下の実験室にて5時間放置した。
次いで、その記録物の記録面を学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業株式会社製、製品名「AB−301」)を用いて、荷重200g下、綿布にて10回擦ったときの記録面の剥がれ状態や綿布へのインク移り状態を確認することにより耐擦性を評価した。その評価基準を以下に示すと共に、その評価結果を表1〜表3に併せて示す。なお、下記の評価基準のうち「○」および「△」が実用上許容される範囲である。
○:10回擦ってもインク剥がれ及び綿布へのインク移りが認められなかった。
△:10回擦った後インク剥がれ又は綿布へのインク移りがわずかに認められた。
×:10回擦った後インク剥がれ又は綿布へのインク移りが認められた。
3.3.3.記録物の凝集ムラ
上記「3.3.2.記録物の耐擦性」で得られた各記録物について、凝集ムラの有無を目視観察し、下記の評価基準に従って評価した。その評価結果を表1〜表3に併せて示す。なお、下記の評価基準のうち「○」および「△」が実用上許容される範囲である。
○:凝集ムラが全く認められなかった。
△:凝集ムラがわずかに認められた。
×:凝集ムラがはっきりと認められた。
3.3.4.プリンター吐出
上記「3.3.2.記録物の耐擦性」で得られた各記録物について、吐出欠陥の有無を目視観察し、下記の評価基準に従って吐出安定性を評価した。なお、「ノズル抜け」とは、通常プリントヘッドについているノズルから吐出されるはずのインクがノズルの詰まりによって吐出されず、印刷結果に影響を与えることをいう。その評価結果を表1〜表3に併せて示す。なお、下記の評価基準のうち「○」および「△」が実用上許容される範囲である。
○:吐出欠陥(ノズル抜け)の発生が認められない。
△:ベタ画像の一部が埋まっていない個所がある。
×:ベタ画像の複数箇所が埋まっていない。
Figure 2012207118
Figure 2012207118
Figure 2012207118
3.3.5.評価結果
実施例1〜実施例15によれば、一般式(1)で示される溶剤と脂環構造を有する飽和炭化水素とを含有することで、塩化ビニル系樹脂からなる被記録媒体上に吐出して得られた記録物において凝集ムラの低減と耐擦性の向上とを両立できることが判った。
実施例1〜実施例6によれば、一般式(1)で示される溶剤のRがメチル基ないしブチル基であっても同等の印刷特性が得られることが判った。
実施例7〜実施例8によれば、脂環構造を有する飽和炭化水素の炭素数が12ないし14と大きくなるとインクの粘度が上昇するため、プリンター吐出特性が損なわれることが判った。
実施例9〜実施例12によれば、一般式(1)で示される溶剤であればいずれの種類であっても、実施例1〜実施例6とほぼ同等の良好な印刷特性が得られることが判った。
実施例13〜実施例15によれば、脂環構造を有する飽和炭化水素の含有量が5〜20質量%の範囲内において良好な印刷特性が得られることが判った。また、実施例15によれば、一般式(1)で示される溶剤の含有量が5質量%の場合でも良好な印刷特性が得られることが判った。
比較例1によれば、一般的な溶剤のみで構成された非水系インク組成物を用いているため、塩化ビニル系樹脂からなる被記録媒体上に吐出して得られた記録物において凝集ムラが発生し、また耐擦性にも優れないことが判った。
比較例2〜比較例3によれば、一般式(1)で示される溶剤を含有することで、塩化ビニル系樹脂からなる被記録媒体への定着性が増すため、耐擦性が向上することが判った。一方、脂環構造を有する飽和炭化水素を含有していないため、記録物の凝集ムラが認められた。
比較例4によれば、脂環構造を有する飽和炭化水素の一種であるシクロオクタンを含有することで、記録物における凝集ムラが改善されることが判った。一方、一般式(1)で示される溶剤を含有していないため、記録物の耐擦性には優れなかった。
比較例5〜比較例8によれば、一般式(1)で示される溶剤の代替としてγ−ブチロラクトンを用いた場合、記録物の耐擦性は優れないことが判った。一方、脂環構造を有する飽和炭化水素を含有することで、記録物における凝集ムラは改善された。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (6)

  1. 顔料と、下記一般式(1)で示される溶剤と、脂環構造を有する飽和炭化水素と、を含有する、インクジェット用非水系インク組成物。
    Figure 2012207118
    (式(1)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表し、RおよびRはメチル基またはエチル基を表す。)
  2. 請求項1において、
    前記脂環構造を有する飽和炭化水素の炭素数が8以上14以下である、インクジェット用非水系インク組成物。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記脂環構造を有する飽和炭化水素が、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカンおよびシクロテトラデカンから選択される少なくとも1種である、インクジェット用非水系インク組成物。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
    前記脂環構造を有する飽和炭化水素の含有量が5質量%以上20質量%以下である、インクジェット用非水系インク組成物。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
    測定温度20℃における粘度が2mPa・s以上8mPa・s以下である、インクジェット用非水系インク組成物。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の非水系インク組成物の液滴を吐出し、被記録媒体の表面に該液滴を付着させて画像を記録する、インクジェット記録方法。
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