JP2012205460A - 電動機の回転子及び電動機 - Google Patents

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Abstract

【課題】転がり軸受けの電食を抑制する電動機の回転子を提供する。
【解決手段】電動機の回転子20は、転がり軸受け21に支持されて回転するシャフト23と、前記シャフト23に固定され、前記シャフト23の回転に伴い回転する回転体22,24,25と、前記転がり軸受けと前記回転体との間の前記シャフト23の周囲に設けられ、前記シャフト23の初透磁率よりも大きい初透磁率を有する合金環材80とを備え、前記合金環材80の初透磁率は、シャフトの初透磁率の100倍以上であり、また、前記合金環材80の初透磁率は、鉄心の初透磁率の8倍以上であることを特徴とする。合金環材80は、初透磁率が10000以上のパーマロイPCで製造される。
【選択図】図1

Description

この発明は、転がり軸受けを用いる電動機の回転子に係り、インバータにて駆動する電動機に好適な電動機の回転子に関する。
従来、電動機をインバータを用いて運転する場合、パワー回路内のトランジスタのスイッチングに伴って発生する電動機の騒音の低減を図る目的から、インバータのキャリア周波数を高く設定するようにしている。キャリア周波数を高く設定するに伴って、電動機のシャフトに高周波誘導に基づいて発生する軸電圧が増大し、シャフトを支持している転がり軸受けの内輪と外輪との間に存在する電位差が大きくなるので、転がり軸受けに電流が流れ易くなる。この転がり軸受けに流れる電流は、内輪、外輪両軌道並びに転動体(内外輪の間を転がる玉やころ)の転動面に電食と呼ばれる腐食を発生させて、転がり軸受けの耐久性を悪化させるという課題があった。
そこで、交流電源が可変電圧可変周波数インバータ装置を介して供給される電動機の電食防止構造において、モーター軸の出力側軸受の電動機外方側のこのモーター軸周りに、このモーター軸を囲むように比透磁率の高い強磁性の磁束発生部材を配置したことを特徴とする電動機の電食防止構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ハウジングと、ハウジングに保持される多相交流巻線が施された固定子と、シャフトに保持された回転子と、シャフトを保持するベアリングと、ベアリングを保持するエンドブラケットを有する誘導電動機において、回転子鉄心とベアリング間に位置するシャフトの外周部に固着されるヒステリシス損の大きい磁性体にて形成されるリング状の短絡回路部材を備えることを特徴とする誘導電動機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、ベアリングの内側であって、ベアリングの回転子側面のシャフト外周部に固着される磁性体にて形成されるリング状の短絡回路部材を備えることを特徴とする誘導電動機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、鉄心に固定子巻線を巻回した固定子と、回転軸に固定された回転子と、前記回転軸の両端部に設けた軸受とからなる電動機において、前記回転軸の表面に前記回転軸の透磁率より高い透磁率の磁性体からなる高透磁率部を設けたことを特徴とする電動機が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、モールドモータに生じる軸受(ベアリング)の異常磨耗を防止するため、軸受を保持する金属製ブラケットと固定子鉄心間を電気的に接続する電動機が提案されている。
特開平06−233492号公報 特開平9−9556号公報 特開2006−211862号公報 特開2004−242413号公報 特開2009−112065号公報 特開2010−158141号公報
従来の電動機は、異常磨耗の要因となる軸受を流れる電流を遮断できないなどの課題を有していた。
この発明は、転がり軸受けに流れる電流を減少させる電動機の回転子及び電動機を提供することを目的とする。
この発明に係る電動機の回転子は、転がり軸受けに支持されて回転するシャフトと、前記シャフトの周囲に設けられ、前記シャフトの初透磁率よりも大きい初透磁率を有する合金環材とを備え、前記合金環材の初透磁率は、シャフトの初透磁率の100倍以上であり、また、前記合金環材の初透磁率は、鉄心の初透磁率の8倍以上であることを特徴とする。合金環材はパーマロイPCである。
この発明に係る電動機の回転子は、合金環材によりインピーダンスが増加するので、シャフトに流れる電流を抑制するので、転がり軸受けを流れる軸電流を防止し、電食を抑止し異常音の発生を防止する効果がある。
実施の形態1を示す図で、電動機100の断面図。 実施の形態1を示す図で、シャフト23と合金環材80と絶縁環材81との軸断面図。 実施の形態1を示す図で、合金環材80の斜視図。 実施の形態1を示す図で、合金環材80の斜視図。 実施の形態1を示す図で、透磁率と初透磁率の説明図。 実施の形態1を示す図で、初透磁率の比較図。 実施の形態1を示す図で、直流磁気特性(JIS C2531)による初透磁率の比較図。 実施の形態1を示す図で、合金環材80の寸法図。 実施の形態1を示す図で、図7の長さLと厚さdによるインピーダンスの変化図。
実施の形態1.
電動機100の構成を説明する。
図1に示すように、電動機100は、モールド固定子10と、回転子20(電動機の回転子と定義する)と、モールド固定子10の軸方向一端部に取り付けられる金属製のブラケット30とを備える。電動機100は、例えば、回転子20に永久磁石を有し、インバータで駆動されるブラシレスDCモータである。
モールド固定子10は、軸方向一端部(図1の右側)が開口している。回転子20がこの開口部から挿入される。モールド固定子10の軸方向他端部(図1の左側)には、回転子20のシャフト23の径より若干大きい孔(図示せず)が開けられている。モールド固定子10の軸方向一端部から挿入された回転子20は、負荷側のシャフト23がモールド固定子10の軸方向他端部の孔から外部(図1の左側)に出る。そして、回転子20の負荷側転がり軸受け21a(転がり軸受けの一例)が、モールド固定子10の反開口部側の軸方向端部の転がり軸受け支持部11に当接するまで押し込まれる。このとき、負荷側転がり軸受け21aは、モールド固定子10の反開口部側の軸方向端部に形成された転がり軸受け支持部11で支持される。
回転子20は、反負荷側のシャフト23(図1の右側)に反負荷側転がり軸受け21b(転がり軸受けの一例)が取り付けられる(一般的には、圧入による)。
以下、負荷側転がり軸受け21aと反負荷側転がり軸受け21bとを区別しない場合は、単に、転がり軸受け21という。
反負荷側転がり軸受け21b(の内輪214)と反負荷側のシャフト23との間に、絶縁スリーブ26が設けられる。絶縁スリーブ26は、筒状をしており、反負荷側のシャフト23の端部から反負荷側のシャフト23の外周に圧入され、さらに、反負荷側転がり軸受け21bの内輪214が、絶縁スリーブ26の外周に圧入される。金属製(導電性を有する)のブラケット30で支持される反負荷側転がり軸受け21bとシャフト23との間に、絶縁スリーブ26を介在させ、絶縁スリーブ26が絶縁となり軸電流を抑制することにより反負荷側転がり軸受け21bの電食の発生を抑制する。
また、シャフト23の両側には、転がり軸受け21の内側に、1対の合金環材80が設けられる。合金環材80は、シャフト23に固定され、シャフト23とともに回転する。
モールド固定子10の開口部を閉塞するとともに、反負荷側転がり軸受け21bを支持するブラケット30をモールド固定子10に圧入する。ブラケット30は、転がり軸受け支持部30aで反負荷側転がり軸受け21bを支持する。ブラケット30のモールド固定子10への圧入は、ブラケット30の略リング状で、断面がコの字状の圧入部30bを、モールド固定子10の内周部10a(モールド樹脂部)の開口部側に圧入することでなされる。ブラケット30の圧入部30bの外径は、モールド固定子10の内周部10aの内径よりも、圧入代の分だけ大きくなっている。ブラケット30の材質は、金属製で、例えば、亜鉛メッキ鋼板である。但し、亜鉛メッキ鋼板には限定されない。
モールド固定子10は、固定子40と、モールド成形用のモールド樹脂50とからなる。モールド樹脂50には、例えば、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を使用する。固定子40は、後述する基板等が取り付けられ、強度的に弱い構造であるため低圧成形が望ましい。そのため、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。
図1に示す固定子40は、以下に示す構成である。
(1)厚さが0.1〜0.7mm程度の電磁鋼板が帯状に打ち抜かれ、かしめ、溶接、接着等で積層された帯状の固定子鉄心41を製作する。帯状の固定子鉄心41は、複数個のティース(図示せず)を備える。後述する集中巻のコイル42が施されている内側がティースである。
(2)ティースには、絶縁部43が施される。絶縁部43は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂を用いて、固定子鉄心41と一体に又は別体で成形される。
(3)絶縁部43が施されたティースに集中巻のコイル42が巻回される。複数個の集中巻のコイル42を接続して、三相のシングルY結線の巻線を形成する。但し、分布巻でもよい。
(4)三相のシングルY結線であるので、絶縁部43の結線側には、各相(U相、V相、W相)のコイル42が接続される端子44(電源が供給される電源端子及び中性点端子)が組付けられる。電源端子は3個、中性点端子は3個である。
(5)基板45が結線側の絶縁部43(端子44を組付けられる側)に取り付けられる。リード線47を口出しするリード線口出し部品46が組付けられた基板45を絶縁部43に組付け、固定子40となる。固定子鉄心41に形成された絶縁部43の面取りされた角柱(図示せず)が、基板45が備える角柱挿入穴(図示せず)に挿入されることにより、回転方向の位置決めがされ、かつ、絶縁部43の基板設置面(図示せず)に基板45が設置されることにより軸方向の位置が決められる。また、基板45より突出する角柱を熱溶着することで基板45と絶縁部43が固定され、かつ、固定子40が備える端子44の基板45より突出した部分を半田付けすることにより電気的にも接合される。基板45には、電動機100(例えば、ブラシレスDCモータ)を駆動するIC49a(駆動素子)、回転子20の位置を検出するホールIC49b(位置検出素子)等が実装されている。IC49aやホールIC49b等を電子部品と定義する。
次に、回転子20の構成を説明する。図1に示すように、回転子20は、ローレット23aが施されたシャフト23、リング状の回転子の樹脂マグネット22(回転子のマグネットの一例)、リング状の位置検出用樹脂マグネット25(位置検出用マグネットの一例)、そしてこれらを一体成形する樹脂部24で構成される。樹脂マグネット22、位置検出用樹脂マグネット25、樹脂部24等は、シャフト23の回転に伴って回転する回転体である。
リング状の回転子の樹脂マグネット22と、シャフト23と、位置検出用樹脂マグネット25とを樹脂部24で一体化する。樹脂部24は、シャフト23の外周に形成されシャフト23に固定される中央筒部(回転子の樹脂マグネット22に対応する部分)と、回転子の樹脂マグネット22を中央筒部に連結する複数のリブ(図示せず)を有する。樹脂部24の複数のリブは、シャフト23を中心として半径方向に放射状に形成された軸方向の複数のリブである。リブ間には、軸方向に貫通した空洞が形成される。
樹脂部24に使用される樹脂には、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の熱可塑性樹脂が用いられる。これらの樹脂に、ガラス充填剤を配合したものも好適である。樹脂部24は、その他の絶縁材料を用いてもよい。
反負荷側のシャフト23(図1で右側)には、反負荷側転がり軸受け21bが取り付けられる(一般的には、圧入による)。また、ファン等が取り付けられる負荷側のシャフト23(図1で左側)には、負荷側転がり軸受け21aが取り付けられる。
負荷側転がり軸受け21a及び反負荷側転がり軸受け21bは、公知の転がり軸受けである。
負荷側転がり軸受け21aは、シャフト23に圧入される内輪211と、モールド固定子10の転がり軸受け支持部11で支持される外輪212と、内輪211と外輪212との間で転動する転動体213とを備える。転動体213には、球又はころが用いられる。
反負荷側転がり軸受け21bは、シャフト23に絶縁スリーブ26を介して圧入される内輪214と、ブラケット30の転がり軸受け支持部30aで支持される外輪215と、内輪214と外輪215との間で転動する転動体216とを備える。転動体216には、球又はころが用いられる。
反負荷側転がり軸受け21bとシャフト23との間に設ける絶縁スリーブ26は、シャフト23の反負荷側端部付近に挿入される。
尚、本実施の形態は、リング状の位置検出用樹脂マグネット25を持たない回転子20も含む。
負荷側転がり軸受け21aは、外輪212がモールド固定子10の転がり軸受け支持部11(モールド樹脂50からなる)で支持されるので、転がり軸受け支持部11が絶縁材のため浮遊容量が極めて小さいため、シャフト23を絶縁しなくても転がり軸受けを流れる軸電流は極めて小さい。
次に、合金環材80の構成を説明する。
図2に示すように、シャフト23の周囲には、リング状の絶縁環材81があり、その周囲にリング状の合金環材80が設けられている。合金環材80と絶縁環材81とは、シャフト23と同心円状に配設される。シャフト23が回転すると、絶縁環材81と合金環材80はシャフト23とともに回転する。
合金環材80は、樹脂部24の両サイドにあり、樹脂部24と転がり軸受け21との間に設けられている。合金環材80は、樹脂部24に接触していてもかまわない。また、合金環材80は、転がり軸受け21の内輪には接触してもかまわないが、転がり軸受け21の外輪には接触していない。合金環材80が樹脂部24に接触し転がり軸受け21の内輪に接触している場合は、シャフト23の露出部分がなくなり、合金環材80がシャフト23の広い面積を覆うことになり好ましい。
絶縁環材81は、樹脂性のリングでもよいし、絶縁接着剤でもよい。絶縁環材81により、シャフト23と合金環材80とは電気的接触ができなくなり、合金環材80によるインピーダンス増加が向上する。
なお、図示しないが、絶縁環材81を設けず、シャフト23の周囲に直接の合金環材80を圧入してもよい。
シャフト23、リング状の回転子の樹脂マグネット22、リング状の位置検出用樹脂マグネット25を樹脂部24で一体化する際に、樹脂部24の中央筒部を軸方向に延長して、中央筒部により絶縁スリーブ26と合金環材80と絶縁環材81もシャフト23に一体化するようにしてもよい。
シャフト23に挿入された絶縁スリーブ26と合金環材80と絶縁環材81とが樹脂部24の中央筒部で一体化される場合は、絶縁スリーブ26と合金環材80と絶縁環材81との固定が極めて簡便になり且つ確実にシャフト23に固定され、シャフト23から外れる恐れが少なくなる。
また、図示していないが、樹脂部24の中央筒部を絶縁環材81に代りとして、樹脂部24の中央筒部の周囲に絶縁環材81を固定してもよい。この場合は絶縁環材81という部品を不要にすることができる。
合金環材80は、パーマロイ(permalloy)で製造される。パーマロイは、Fe−Ni系高透磁率合金であり、JIS C2531に規定されたPB材(40〜50mass%Ni)、PC材(70〜85mass%Ni−Mo−Cu)、PD材(35〜40mass%Ni−Fe)等がある。パーマロイPBは飽和磁束密度が大きい特徴を生かした用途に使用される。パーマロイPCはすぐれた透磁率を生かした高周波域での高感度トランスや磁気シールド材として用いられている。
合金環材80は、高周波インピーダンス増倍手段である。合金環材80は、パーマロイ合金の中でも、パーマロイPCを用いるのが好ましい。
図3に示すように、合金環材80は、円筒状又はリング状又は筒状をしている。図3の場合は、円柱状のパーマロイ材の中心を矢印方向に打ち抜いて軸方向に貫通した空洞を形成することにより、中空の合金環材80を製造する。
図4に示すように、合金環材80は、ドーナツ板を積層して円筒状又はリング状又は筒状を形成してもよい。
図4の場合は、円板のパーマロイ材の中心を打ち抜いてドーナツ板を複数製造し、複数のドーナツ板を積層して、合金環材80を製造する。
合金環材80がシャフト23の周囲にあることにより、シャフト23のインピーダンスが増加し、シャフト23流れる電流が抑制される。その結果、転がり軸受け21に流れる電流が抑制され、転がり軸受けの電食を抑制することができる。樹脂部24の両サイドにある合金環材80は、形状が同じでもよいし、形状が異なっていてもよい。シャフト23の左右において転がり軸受けに流れる電流が異なる場合は、インピーダンスを増加させたい方の合金環材80の形状を大きくすればよい。
ここで、図5を用いて、透磁率と初透磁率とについて説明する。
図5は磁性体に磁界Hを与えたときの磁束密度Bおよび透磁率μの関係を示す図である。透磁率μは、
B=μH
で定義される。図5では、磁束密度曲線BLの勾配が透磁率μである。
図5の磁束密度曲線BLは磁性体の磁束密度を示す磁化曲線である。図5の透磁率曲線μLは原点から磁束密度曲線に対して直線を引いた場合の直線の傾きを示しており、磁束密度曲線BLの勾配が透磁率μである。
磁性材料に弱い磁場をかけた場合、磁化の増加は比較的わずかであり、このときの透磁率μが初透磁率である。図5では、磁束密度曲線BLの初期の勾配が初透磁率μiである。さらに、磁場が増加すると、磁化の増加は急激になり、磁束密度曲線BLの勾配が徐々に増加し、ある時点から磁束密度曲線BLの勾配が徐々に減少する。磁束密度曲線BLの勾配が最大値が最大透磁率μmである。最大透磁率が大きくても初透磁率が大きいとは限らず、最大透磁率と初透磁率とは、異なるものである。
図6に、代表的軟磁性材料の初透磁率の例を示す。
シャフト23は、たとえば、電磁軟鉄で製造され、初透磁率は150H/mである。
固定子鉄心41等の鉄心は、たとえば、方向性珪素で製造され、初透磁率は2250H/mである。
一方、合金環材80は、高周波インピーダンス増倍手段用の磁性材料で製造され、たとえば、パーマロイPCで製造される。
合金環材80の初透磁率は20000H/mである。パーマロイPCの初透磁率は、パーマロイPBの初透磁率の8倍である。
このように、合金環材80は、シャフトや鉄心の初透磁率よりも高い初透磁率を持つ磁性材料を用いている。図6に示す場合、合金環材80の初透磁率は、シャフトの初透磁率の130倍以上である。合金環材80の初透磁率は、シャフトの初透磁率の100倍以上が好ましい。また、合金環材80の初透磁率は、鉄心の初透磁率の8.8倍以上である。合金環材80の初透磁率は、鉄心の初透磁率の8倍以上が好ましい。
図7に、JISC2531のパーマロイの直流磁気特性(抜粋)を示す。
初透磁率は、磁気等級と厚さとによって変化するが、パーマロイPCはパーマロイPBに比べて初透磁率が高い。たとえば、パーマロイPBの初透磁率は高々10000以上程度であるが、パーマロイPCの初透磁率は、すべて10000以上であり、100000以上にも達する。パーマロイPCの初透磁率はパーマロイPBの初透磁率に比べて高い。合金環材80は、初透磁率が10000以上であることが望ましいが、30000以上が良く、50000以上がなおよく、100000以上であるほうがさらに良い。
実際に、シャフト23を流れる電流は小さく、これにより発生する磁界も小さい。パーマロイPCは、この低磁界領域でインピーダンスを高くするために用いられる。初透磁率が大きいパーマロイPCを用いた合金環材80によりシャフト23を流れる電流路のインピーダンスを高くすることができ、その結果、転がり軸受けを流れる電流を抑制・防止することができる。
本実施の形態の特徴は、初透磁率が大きい磁性体を用いて電流路のインピーダンスを高くすることである。本実施の形態は、初透磁率が大きい磁性体を用いているので、透磁率や比透磁率が大きい磁性体を用いる場合に比べて、低磁界領域でインピーダンスを高くすることが可能である。
パーマロイに類似する材料として、現在、Ni、Feの他にMoを加えたスーパーマロイ(supermalloy)やCu、Crを加えたミューメタルなど別の名称をつけた合金もある。パーマロイPCと同等以上の初透磁率を有する材料であればパーマロイPCの代りにこれらの合金を用いてもよい。あるいは、今後、開発される材料の中で、パーマロイPCと同等以上の初透磁率を有する材料をパーマロイPCの代りに用いてもよい。
図8は合金環材80の寸法図であり、図9は、合金環材80のシャフト23の軸方向の長さをLとし、半径方向の厚さをdとした場合の長さLと厚さdとインピーダンスの関係図である。図9に示すように、d1<d2<d3の関係がある時、厚さdが厚いほどインピーダンスが大きくなる。また、長さLが長いほど、インピーダンスが大きくなる。したがって、合金環材80は、電動機100の他の部品とぶつからない最大の長さと最大の厚さを有していることが望ましい。しかし、合金環材80が大型化することにより合金環材80の材料費や合金環材80の慣性が増大するので、電動機100の製造コストと性能に基づいて合金環材80の形状を決定するのが良い。
合金環材80の形状は、製造の容易さから考えて中空の筒型が望ましいが、電動機100のシャフト23の周囲の空間の形状によっては、中空の回転凸体型、中空の円錐体型、中空の回転楕円体型、中空の球体型等の、形状でもよい。
電動機100をインバータを用いて運転を行なう場合、電動機の騒音の低減を図る目的から、インバータのキャリア周波数を高く設定するようにしているが、キャリア周波数を高く設定するに伴って、電動機のシャフトに高周波誘導に基づいて発生する軸電圧が増大し、シャフトを支持している転がり軸受けの内輪と外輪との間に存在する電位差が大きくなるので、転がり軸受けに流れる電流も増加する。従って、本実施の形態の回転子20は、インバータを用いて電動機100を運転する場合の軸電流の低減に特に有効である。
なお、絶縁スリーブ26は、合金環材80とともに、軸電流を抑制するものであるが、絶縁スリーブ26はなくてもよい。
上記電動機100は、空気調和機に用いることができる。
空気調和機の室外機用送風機及び室内機用送風機は、駆動源として上記電動機100を備える。
上記電動機100を、空気調和機の主用部品である室外機用送風機及び室内機用送風機に搭載することにより、空気調和機の耐久性が向上する。
また、さらに、上記電動機100を、換気扇、家電機器、工作機などに搭載して利用することができる。
10 モールド固定子、10a 内周部、11 転がり軸受け支持部、20 回転子、21a 負荷側転がり軸受け、211 内輪、212 外輪、213 転動体、21b 反負荷側転がり軸受け、214 内輪、215 外輪、216 転動体、22 回転子の樹脂マグネット、23 シャフト、23a ローレット、24 樹脂部、25 位置検出用樹脂マグネット、26 絶縁スリーブ、30 ブラケット、30a 転がり軸受け支持部、30b 圧入部、40 固定子、41 固定子鉄心、42 コイル、43 絶縁部、44 端子、45 基板、46 リード線口出し部品、47 リード線、49a IC、49b ホールIC、50 モールド樹脂、80 合金環材、81 絶縁環材、100 電動機。

Claims (8)

  1. 転がり軸受けに支持されて回転するシャフトと、
    前記シャフトの周囲に設けられ、前記シャフトの初透磁率よりも大きい初透磁率を有する合金環材と
    を備えたことを特徴とする電動機の回転子。
  2. 前記合金環材の初透磁率は、シャフトの初透磁率の100倍以上であることを特徴とする請求項1記載の電動機の回転子。
  3. 前記合金環材の初透磁率は、電動機の鉄心の初透磁率の8倍以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の電動機の回転子。
  4. 前記合金環材の初透磁率は、10000以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の電動機の回転子。
  5. 前記合金環材は、パーマロイPCであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の電動機の回転子。
  6. 前記電動機の回転子は、前記シャフトと前記合金環材の間に、絶縁環材を備えたことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の電動機の回転子。
  7. 前記電動機の回転子は、前記合金環材を覆う樹脂部を備えたことを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の電動機の回転子。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の電動機の回転子と、
    固定子と
    を備えたことを特徴とする電動機。
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JP2004282995A (ja) * 2003-03-13 2004-10-07 Minebea Co Ltd 電気モータ

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