JP2012200430A - 注入装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】どのような体格の被験者に対しても適切な造影剤注入量を算出することができる注入装置を提供する。
【解決手段】薬液注入装置100は、シリンジから造影剤を押し出すように構成されたピストン駆動機構130、造影剤の注入量等を決定する注入条件決定部170および注入条件決定部170で決定された条件に従ってピストン駆動機構130の動作を制御する制御部161とを有する。注入条件決定部170は、被験者の体重を予め設定された基準に従って、低体重、標準体重および高体重の3つの体重区分のいずれに属すかを判断し、体重区分が標準体重の場合は、体重に基づいて造影剤の注入量を算出し、体重区分が低体重または高体重の場合は、被験者の体表面積を算出し、算出された体表面積に基づいて造影剤の注入量を算出するように構成されている。
【選択図】図4

Description

本発明は、被験者の透視画像を撮像するために被験者に造影剤を注入するのに用いられる注入装置に関する。
医療用の画像診断装置としては、CT装置、MRI装置、PET装置およびアンギオ装置などがある。これらの装置を使用して被験者の透視画像を撮像する際は、被験者に造影剤や生理食塩水などの薬液を注入することが多い。
被験者への薬液の注入は、薬液注入装置を用いて行なうのが一般的である。薬液注入装置は、薬液を充填するシリンジが着脱自在に装着され、装着されたシリンジのピストンをシリンダに対して前進させることで、シリンジ内の薬液を被験者に注入する。薬液注入装置は、装着されたシリンジのピストンを前進および後退させるピストン駆動機構を有し、このピストン駆動機構の動作を、前もって設定された薬液の注入量や注入速度などの注入条件に従って制御することで、薬液が自動的に注入される。
透視画像の良好な撮像のためには、最適な注入条件で薬液が注入されることが好ましい。例えば、体格の異なる複数の被験者にそれぞれ同じ量の造影剤を注入すると、得られる画像の精度を左右する造影効果が異なるため、現在は、被験者の体格に応じて薬液の注入量など注入条件が設定されることが多い。好ましい注入条件を与えるために用いられる典型的な体格指標は、被験者の体重である。
近年は、より良好な画像を得るために、体重の他の体格指標を用いた様々な検討がなされており、例えば非特許文献1では、被験者の体表面積に基づいた造影剤の注入量の検討結果が開示されている。非特許文献1によれば、体表面積に基づいた造影剤の注入量の決定はあらゆる体重において有用である可能性が示されている。また、非特許文献1には、体重に基づいて注入量を決定した場合と体表面積に基づいて注入量を決定した場合とを比較すると、低体重の被験者においては、体表面に基づいて決定した場合のほうが注入量は多くなり、その逆に、高体重の被験者においては、体表面に基づいて決定した場合のほうが注入量は少なくなる傾向があることが示されている。さらに、非特許文献1によれば、肥満傾向にある被験者に対しては、体重に基づいて造影剤の注入量を決定した場合は、造影剤が過剰に投与されている可能性が示唆されている。
粟井、「CTにおける体格指標による造影剤量の決定:体重、それとも除脂肪体重、体表面積?」、Rad Fan、(株)メディカルアイ、2010年7月25日、第8巻、第8号、P.11−15
本発明は、どのような体格の被験者に対しても適切な造影剤量を算出することができる注入装置を提供することを目的とする。
本発明の注入装置は、
被験者に対して制御された方法で造影剤を注入する注入装置であって、
造影剤を充填しているシリンジから造影剤を押し出すように構成された駆動機構と、
造影剤の注入量を含む注入条件を決定する注入条件決定部と、
注入条件決定部で決定された注入条件に従って駆動機構の動作を制御する制御部と、を有し、
注入条件決定部には、複数の体重区分が所定の基準に従って設定されており、注入条件決定部は、被験者の体重を前記複数の体重区分のいずれに属するかを判断し、被験者の体重が所定の体重区分である場合は、前記体重に基づいて造影剤の注入量を算出し、被験者の体重が他の体重区分である場合は、被験者の体表面積を算出し、算出された体表面積に基づいて造影剤の注入量を算出するように構成されている。
上記本発明の注入装置において、注入条件決定部には、低体重、標準体重および高体重の3つの体重区分が設定されており、注入条件決定部は、被験者の体重区分が標準体重に属する場合は被験者の体重に基づいて造影剤の注入量を算出し、低体重または高体重に属する場合は、被験者の体表面積を算出し、算出された体表面積に基づいて造影剤の注入量を算出するようにすることができる。
さらに、本発明の注入装置は、管電圧が調整可能なX線管から被験者にX線を照射するX線CT装置で被験者の断層画像を撮像する際に被験者に造影剤を注入するのに用いることができる。この場合、X線CT装置において標準で使用される管電圧よりも低い管電圧でX線管が作動される場合には、注入条件決定部は、造影剤の注入量を、その算出に用いる計算式に1未満の所定の補正係数を乗じることによって算出することが好ましい。補正係数を用いた造影剤の注入量の算出は、被験者の体重区分が低体重である場合に行なうことが好ましい。
本発明の注入装置によれば、造影剤の注入量を算出するのに用いる体格指標が被験者の体重区分に応じて変更されるので、被験者の体重によらずに適切な造影剤注入量を設定することができる。
本発明の一実施形態によるX線CTシステムの斜視図である。 図1に示す薬液注入装置の斜視図である。 図2に示す注入ヘッドを、それに装着されるシリンジとともに示す斜視図である。 図1に示すX線CTシステムの機能的構成を示すブロック図である。
図1を参照すると、透視撮像装置であるX線CT装置300と薬液注入システムとを有する、本発明の一実施形態によるX線CTシステム1000が示される。薬液注入システムは、薬液注入装置100と、薬液注入装置100に装着されるシリンジユニットとを有している。X線CT装置300は、撮像動作を実行する撮像ユニット301と、撮像ユニット301の動作を制御する撮像制御ユニット302とを有しており、これらは通信ネットワークを介して接続されている。
薬液注入装置100は、例えば図2に示すように、スタンド111の上部に旋回可能に取り付けられた注入ヘッド110と、ケーブル102で注入ヘッド110と電気的に接続された注入制御ユニット101とを有している。注入制御ユニット101は、メイン操作パネル103、表示手段と入力手段を兼ねたタッチパネル104を有している。注入制御ユニット101は、不図示のケーブルで注入制御ユニット101の本体に電気的に接続された、補助的な入力手段であるハンドユニット(不図示)等をさらに備えていてもよい。
注入ヘッド110は、図3に示すように、2つのシリンジ200C、200Pを並列に着脱自在に装着する。シリンジ200C、200Pは、末端にシリンダフランジ221aが形成されるとともに先端にノズル部221bが形成されたシリンダ221と、シリンダ221内に進退移動可能に挿入されたピストン222とを有している。
ピストン222がシリンダ221の先端へ向けて前進することで、充填されている薬液が、ノズル部221bを介してシリンジ220から押し出される。各シリンジ200C、200Pのノズル部221bには、先端に注入針またはカテーテルが接続されて中間で二股に分岐した延長チューブ230の2つの末端部が連結され、これらシリンジ200C、200Pおよび延長チューブ230などでシリンジユニットが構成される。注入針またはカテーテルを被験者の血管に穿刺または挿入して、シリンジ200C、200Pに充填されている薬液を被験者に注入することができる。シリンジ200C、200Pに充填される薬液としては、造影剤および生理食塩水などが挙げられ、例えば、一方のシリンジ200Cに造影剤を充填し、もう一方のシリンジ200Pに生理食塩水を充填することができる。
注入ヘッド110の上面先端部には、2つのシリンジ200C、200Pが載せられるシリンジ受け120が備えられている。シリンジ受け120は、シリンダ221の外周面を受け入れるように形成された2つの凹部120aを有する。また、シリンジ受け120には、シリンジ200C、200Pのシリンダフランジ221aを保持するシリンジアダプタ121、122が着脱自在に装着される。
シリンジ受け120に載せられたシリンジ200C、200Pは、ノズル部221bを先端側に向けた状態でシリンダ221を凹部121内に位置させ、シリンダフランジ221aが保持されることで、注入ヘッド110に固定された状態で装着される。ただし、シリンジ200C、200Pには種々のサイズおよび/形状のものが存在し、それら全ての種類のシリンジ200C、200Pのシリンダフランジ221aを共通の保持構造で保持するのは困難である。そこで、本形態では、装着されるシリンジ200C、200Pの形状ごとに、それぞれシリンダフランジ221aを保持するのに適した保持構造を有してシリンジ受け120に着脱自在に装着される複数種類のシリンジアダプタ121、122を用意し、使用するシリンジアダプタ121、122をシリンジ200C、200Pの種類に応じて交換することで、種々のサイズおよび/またはシリンジ200C、200Pを注入ヘッド110に装着できるようにしている。
注入ヘッド110には、装着されたシリンジ200C、200Pのピストン222を別々にまたは同時に前進/後退させるために互いに独立して駆動される2つのピストン駆動機構130が、各シリンジ200C、200Pが装着される位置に対応して設けられている。
ピストン駆動機構130は、駆動モータ(不図示)、駆動モータの回転出力を直線運動に変換する運動変換機構(不図示)、およびピストン222を前進および後退させるために、運動変換機構に連結されてピストン222の末端部を係脱自在に保持するピストン保持機構(不図示)とを有する。このようなピストン駆動機構130としては、薬液注入装置で一般に用いられる公知の機構を用いることができるので、ここではその詳細な説明は省略する。
図4に、本形態のX線CTシステムの主要な電気的構成のブロック図を示す。なお、図5に示す各ブロックは、図1〜3で説明した構成の少なくとも一部、または少なくとも一部の組み合わせとして存在しており、ハードウェアとして構成されていてもよいし、論理回路として構成されていてもよい。
図4に示すように、注入制御ユニット101は、制御部161、入力デバイス162、表示デバイス163、インターフェース(I/F)164および注入条件決定部170を有している。
入力デバイス162は、図2に示したメイン操作パネル103およびタッチパネル104に相当し、操作者による薬液注入装置100の様々な設定および薬液の注入条件の決定に必要なデータなどの入力を受け付ける。表示部163は、図2に示したタッチパネル104に相当し、薬液注入装置100の動作状態を表す画面およびデータ入力用の画面などを表示する。以上のように本形態では、タッチパネル104は、入力部162の一部としての機能および表示部163の機能を併せ持っている。
注入条件決定部170は、入力部162から入力されたデータなどに基づいて薬液の注入量および注入速度といった、薬液の注入条件を決定する。制御部161は、入力部162からの入力に基づいて、必要な情報を表示部163に表示させたり、注入条件決定部170で決定された薬液の注入条件や予め定められた所定の手順に従ってピストン駆動機構130の動作を制御したりするなど、薬液注入装置100の動作全般を制御する。制御部161および注入条件決定部170は、CPU、RAMおよびROMを含む1つのコンピュータユニットで構成することができる。
制御部161から発せられるピストン駆動機構130の動作開始信号や、薬液の注入条件の一部などは、インターフェース164を介してX線CT装置300へ送られ、これによって、薬液注入装置100とX線CT装置300とを連動させることができる。
注入条件決定部170は、入力デバイス162から入力されたデータの少なくとも一部を利用して、シリンジ200C、200Pに充填された薬液、具体的には造影剤および生理食塩水の注入条件を決定する。
本実施形態では特に、注入条件決定部170には複数の体重区分が所定の基準に従って設定されており、注入条件決定部170は、被験者の体重を所定の基準に従って分けられた複数の体重区分のいずれに属するかを判断し、被験者の体重が所定の体重区分の場合は、被験者の体重に基づいて造影剤の注入量を算出するが、他の体重区分の場合は、被験者の体表面積を算出し、算出された体表面積に基づいて造影剤の注入量を算出するように構成されている。
注入条件決定部170において設定される体重区分の数は任意であってよく、例えば、「低体重」、「標準体重」および「高体重」の3つの区分とすることができる。各区分の境界値は注入条件決定部170に設定されており、注入条件決定部170は、各区分の境界値に基づいて、入力された被験者の体重データから被験者の体重を所定の体重区分に分ける。被験者の体重は、任意の体重計を用いて予め測定される。
被験者の体表面積は、実測するのではなく計算式によって推定する。そのため、注入条件決定部170は、入力されたデータから、予め与えられた体表面積計算式によって被験者の体表面積を算出する体表面積算出部171を有する。体表面積計算式としては、例えば以下の計算式が知られている。
(1)Mostellerの式
BSA(m2)=([BW(kg)×Ht(m)]0.500)/60
(2)Kurazumiの式
BSA(m2)=100.315×BW(kg)0.425/Ht(m)0.693
(3)Livingstone & Leeの式
BSA(m2)=0.1173×BW(kg)0.6466
ここで、BSA(Body Surface Area)は被験者の体表面積、BWは被験者の体重、Htは被験者の身長である。本発明においては、上記の体表面積計算式だけでなく任意のいずれの計算式も使用できる。中でもLivingstone & Leeの式は、体重のみをパラメータとしており、造影剤の注入量を決定するために入力デバイス162から入力されるデータの数を少なくすることができることから、本発明において好ましく用いることができる。
注入条件決定部170は、被験者の体重区分が所定の体重区分の場合、体表面積算出部171によって算出された被験者の体表面積を用い、注入条件決定部170に予め与えられた計算式によって造影剤の注入量を算出する。体表面積から造影剤の注入量を算出するための計算式は、実験などによって得ることができる。
体表面積計算式の中には、低体重において最も適合する計算式、高体重において最も適合する計算式、あるいは低体重および高体重において適合する計算式などがある。よって、注入条件決定部170がどの体重区分の場合に被験者の体表面積に基づいて造影剤の注入量を算出するかは、体重の区分の仕方および/または用いる体表面積計算式に応じて、予め設定されている。また、注入条件決定部170に複数の体表面積計算式が与えられ、ある体重区分においてはある体表面積計算式を用いて被験者の体表面積を算出し、別の体重区分においては別の体表面積計算式を用いて被験者の体表面積を算出するようにしてもよい。
造影剤の注入速度は、算出された注入量を注入時間で除すことで計算することができる。造影剤の注入時間は、操作者が入力デバイス162から入力するようにしてもよいが、他の注入条件による大きな変動はなく、CT装置300による撮像時間と同等もしくはそれよりも若干長い時間で設定されることが多いので、例えば、撮像時間が10秒である場合は造影剤の注入時間を12秒とするなど、CT装置300から送られる撮像時間データから、注入条件決定部170で求めることもできる。あるいは、所定の値をデフォルト値として設定しておき、必要に応じて操作者が変更できるようにしてもよい。
一方、生理食塩水は、注入された造影剤を後押しするために、造影剤の注入後、直ちに注入される。そのため、生理食塩水の注入条件は、それほど厳密に決定しなくてもよい。生理食塩水の注入速度は、造影剤の注入速度と同じでよい。生理食塩水の注入時間は、例えば7秒など、所定の時間を予め設定しておくことができる。注入速度および注入時間が決まれば、生理食塩水の注入量は、注入速度に注入時間を乗ずることによって算出することができる。
以上のように、造影剤および生理食塩水の注入時間が予め設定され、かつ、被験者の体表面積を上記のLivingstone & Leeの式によって算出する場合は、注入条件を決定するために操作者が入力するデータは被験者の体重だけでよい。
制御部161は、前述したように、薬液注入装置100の動作全般を制御する。薬液注入装置100の動作は、従来の薬液注入装置で行なわれる一般的な動作も含むが、本発明に特に関連する動作は、注入条件決定部170で決定した注入条件に従ってピストン駆動機構130の動作を制御し、必要な情報を表示デバイス163に表示させることである。注入条件決定部170は、制御部161の機能の一つとして構成されてもよい。
X線CT装置300は、前述したように、撮像ユニット301と、撮像制御ユニット302とを有している。撮像ユニット301は、寝台320(図1参照)と、寝台320に仰臥している被験者にX線を照射するX線管311と、被験者を透過したX線を検出するようにX線管311に対向配置されたX線検出器312とを備えている。
撮像制御ユニット302は、制御部330入力デバイス340、表示デバイス250、および薬液注入装置100との間のインターフェース(I/F)360を有している。制御部330は、入力デバイス340から、またはインターフェース360を介して薬液注入装置100から送られた、撮像条件に関するデータに基づいて撮像ユニット301の動作を制御して被験者の透過X線データを取得する。制御部330はさらに、取得された透過X線データに基づいて、画像を再構成して透視画像を表示デバイス250に表示させる。X線管311に印加される電圧(管電圧)は、通常は120kVとされるが、操作者による調整、あるいはインターフェース360を介しての薬液注入装置100からの入力に基づく制御部330からの指令によって変更可能である。
次に、上述したX線CTシステムの動作について説明する。
まず、操作者は、薬液注入装置100の電源をONし、シリンジ200Cおよびシリンジ200Pを注入ヘッド110に装着する。装着されるシリンジ200C、200Pは、プレフィルドタイプであってもよいし、後充填タイプであってもよい。シリンジ200C、200Pが後充填タイプである場合は、操作者は薬液注入装置110に、シリンジ200C、200Pに薬液を充填させる動作を実行させる。また、被験者の血管内に穿刺または挿入される注入針またはカテーテルが接続される延長チューブ(不図示)がシリンジ200C、200Pの先端に連結されていない場合は、操作者はシリンジ200C、200Pに延長チューブを連結する。次いで操作者は、シリンジ200C、200Pおよび延長チューブのエア抜き動作を薬液注入装置100に実行させる。エア抜きが終了したら、注入針またはカテーテルを被験者の血管に穿刺または挿入し、以上で注入条件設定までの準備が完了する。また、この段階で、一方のシリンジ200Cには造影剤が充填され、もう一方のシリンジ200Pには生理食塩水が充填された状態とされる。
ここまでの一連の操作および動作は従来と同様でよいので、詳しい説明は省略する。また、上述した操作および動作の順番は可能な範囲で前後して構わない。制御部161は、上述の操作および動作のうち操作者の操作が必要なものについて、操作者の操作を促すための表示およびその操作終了を操作者に入力させるための表示を表示デバイス163に表示させてもよい。表示デバイス163がタッチパネルである場合、タッチパネルは表示デバイス163および入力デバイス162の双方の機能を有しており、表示デバイス163および入力デバイス162はタッチパネルを意味する。
エア抜きの完了後、制御部161は、注入条件設定用の画面を表示デバイス163に表示させる。注入条件の設定では、操作者は、撮像部位および被験者の体格指標を注入条件設定用のデータとして入力デバイス162から入力する。入力されたデータは注入条件決定部170に送られ、注入条件決定部170で注入条件が決定される。
撮像部位の入力は、予め設定された幾つかの区分から操作者が選択するようにすれば、撮像部位の入力が簡便である。また、またこの場合、人体および臓器等を模した画像を表示デバイス163に表示し、これらの画像から操作者が選択するようにすれば、撮像部位の入力ミスを大幅に低減することができる。
体格指標の入力では、被験者の体表面積を算出するのに必要なデータが入力される。例えば、Livingstone & Leeの式によって体表面積を算出する場合は、必要なデータは被験者の体重であり、Mostellerの式またはKurazumiの式の式によって体表面積を算出する場合は、必要なデータは被験者の体重および身長である。本形態では、必要なデータの数が少なくて済むことから、Livingstone & Leeの式によって被験者の体表面積を算出する場合を例に説明し、よって、入力デバイス162には被験者の体重データが操作者によって入力される。
本実施形態では、注入条件決定部170には「低体重」、「標準体重」および「高体重」の3つの体重区分が設定されており、入力デバイス162から制御部161を経由して注入条件決定部170に被験者の体重データが入力されると、注入条件決定部170は、入力された体重データが、予め定められた基準値に従って、3つの体重区分のいずれに属するかを判断する。低体重と標準体重との境界を示す基準値、および標準体重と高体重との境界を示す基準値は任意に定めることができ、本実施形態では45kg未満を低体重、45kg以上70kg未満を標準体重、70kg以上を高体重としている。これらの体重区分は、操作者が必要に応じて変更できるようにされていてもよい。
被験者の体重区分が標準体重に属すると判断された場合、注入条件決定部170は、入力された体重データに基づいて造影剤の注入量を算出し、さらに、前述したように、算出された注入量に基づき、あるいは予め与えられた値として、造影剤の注入速度、注入時間、および生理食塩水の注入量、注入速度、注入時間を決定する。体重データに基づいて造影剤の注入量を算出するための計算式は、従来用いられている計算式と同様でよく、注入条件決定部170に予め設定されている。
一方、被験者の体重区分が低体重または高体重であると判断された場合、注入条件決定部170は、入力された体重データに基づいて、体表面積算出部171において被験者の体表面積を算出させる。そして注入条件決定部170は、体表面積算出部171で算出された被験者の体表面積に基づいて造影剤の注入量を算出し、さらに、前述したように、算出された注入量に基づき、あるいは予め与えられた値として、造影剤の注入速度、注入時間、および生理食塩水の注入量、注入速度、注入時間を決定する。
造影剤および生理食塩水の注入条件が決定されると、制御部161は、決定した注入条件を表示デバイス163に表示させる。操作者は、表示された注入条件を確認し、その注入条件に変更がなければ、入力デバイス162により注入開始のための操作をする。この操作を受けて制御部161は、注入条件決定部171で決定した注入条件に従って造影剤および生理食塩水を被験者に注入する。
造影剤の注入が開始されると、制御部161は、注入開始信号を、インターフェース164を介してX線CT装置300へ送る。X線CT装置300は、送られた注入開始信号に基づき、注入が開始されてから所定時間経過後に、X線CT装置300に予め設定された撮像条件に従って被験者の断層画像を撮像する。
以上説明したように、本形態のシステムによれば、被験者の体重区分に応じて、「低体重」または「高体重」の場合は被験者の体表面積に基づいて得られた注入条件で薬液を注入し、「標準体重」の場合は被験者の体重に基づいて得られた注入条件で薬液を注入する。前述した体格指標による造影剤量の決定に関する検討において粟井が報告しているように、被験者の体重区分が低体重である場合、少なめの造影剤量が得られる体重基準による注入量計算と比較して、より適切な注入量で造影剤を注入できる。また、被験者の体重区分が高体重である場合は、過剰投与ぎみとなる体重基準による注入量計算と比較して、より適切な注入量で造影剤を注入できる。Livingstone & Leeの式によって被験者の体表面積を算出した場合、体表面積を算出するのに必要なデータは被験者の体重のみであるので、従来のように被験者の体重に基づいて造影剤の注入量を算出する場合と比較して、必要なデータの種類が増えることはない。
一方、被験者の体重区分が標準体重である場合は、被験者の体重に基づいて造影剤の注入量を算出した場合と被験者の体表面積に基づいて造影剤の注入量を算出した場合との間で大きな違いはないため、被験者の体表面積を求めるまでもなく、被験者の体重に基づいて造影剤の注入量を算出すれば十分である。
以上説明したように、被験者の体重区分に応じて、造影剤の注入量を決定するのに用いる被験者の体格指標を変更することで、低体重から高体重まで幅広い体重範囲においてより適切な注入量で造影剤を注入することができる。よって、その結果得られる被験者の断層画像は良好なものとなる。
上述した形態では、説明の便宜上、被験者の体重から造影剤の注入条件を求めているが、実際には、造影剤中のヨード量(ヨード濃度)も、造影剤の注入量に大きく影響するので、造影剤の注入量を決定する計算式には造影剤のヨード量もパラメータの一つとして含まれる。
近年は、ICタグを備えたシリンジが広く用いられてきている。ICタグにはシリンジの使用履歴や充填される薬液に関する種々の情報が記録されている。このようなICタグ付きのシリンジに対応する薬液注入装置は、装着されたシリンジのICタグからデータを読み出すことができるリーダ装置を備えている。そこで、造影剤のヨード量データをICタグに記録しておき、そこからヨード量データが入力されるようにすれば、操作者が造影剤のヨード量を入力する必要はない。さらに、被験者の体重についてもICタグに予め記録しておけば、注入条件決定のために被験者が行なう入力操作は不要となる。
ところで、X線管311は、管電圧が低いほど発生するX線の波長が長くなり透過力が弱くなるため、得られるCT画像のコントラストが高くなる。つまり、管電圧とCT値との間には相関関係があり、管電圧を下げると最大CT値は高くなる。よって、管電圧を下げることによって、より少ない造影剤量であっても目的のCT値を得ることができる。ただし、管電圧を下げると、得られる断層画像の品位が低下する傾向が見られる。X線CT装置300は、目的とする画像品位やCT値などに応じて管電圧を調整できるように構成されている。X線管311の管電圧は、通常は120kVであるが、低管電圧での撮像においては例えば100kV以下(例えば70〜100kV)とされる。
そこで本形態では、薬液注入装置100は、通常撮像用の注入モードに加え、低管電圧対応注入モードでも造影剤を注入できるように構成されている。通常撮像用の注入モードとは、X線CT装置300が、そのX線CT装置300における標準的な管電圧で撮像する場合に適応する注入モードであり、低管電圧対応注入モードとは、標準的な管電圧よりも低い管電圧で撮像する場合に適応する注入モードである。造影剤をどちらの注入モードで注入するかは操作者が入力デバイス162を用いて任意に選択できるようにされる。また、その選択は、造影剤の注入条件が決定される前であればどのタイミングでもよい。
低管電圧対応注入モードが選択された場合の造影剤の注入量は、通常撮像用の注入モードでの造影剤の注入量の算出に用いる計算式に1未満の所定の補正係数を乗じることによって算出できる。この計算は、注入条件決定部170において実行される。低管電圧対応注入モードでの造影剤の注入量を算出するのに用いられる補正係数は、X線CT装置300の実効エネルギーに依存する。よって、薬液注入装置100が、実効エネルギーが特定の値のX線CT装置300との組み合わせでのみ使用される場合は、補正係数を特定の値に定めることができるが、種々のX線CT装置300と組み合わせて使用される場合は、実効エネルギーに応じて、補正係数を調整するようにするか、複数の補正係数から選択できるようにするか、あるいは注入条件の入力とは別に予め設定できるようにすることが好ましい。
低管電圧対応注入モードでは、通常撮像用の注入モードと比べて造影剤の注入量は少なくて済む。よって、低管電圧対応注入モードによる造影剤の注入は、被験者に対する身体的負荷を軽減させるという効果もある。また、本発明においては低体重の被験者に対しては体表面積に基づいて造影剤の注入量を決定するが、低体重の被験者においては、体表面積に基づいて決定された注入量は、体格指標による造影剤量の決定に関する粟井の報告でも示され散るように、体重に基づいて決定された注入量よりも多くなる傾向がある。よって、低体重の被験者に対しては、低管電圧対応注入モードで薬液を注入することは、被験者の身体的負担を軽減するために好ましい。もちろん、標準体重および高体重の被験者に対して低管電圧対応注入モードで薬液を注入することも、被験者の身体的負担をより軽減することになるため好ましい。
上記のように、低管電圧での撮像は、画像品位の低下を招くため、特定の撮像目的のみに利用され、通常は利用されない。そこで、低管電圧対応注入モードでの注入の場合は、制御部161は、表示デバイス163において例えば注入条件設定用の画面に他の情報とは異なる色で、低管電圧対応注入モードである旨を表示させ、操作者が容易に認識できるようにすることが好ましい。また、ある被験者に対して低管電圧で画像を取得し、引き続き次の被験者に対しては通常の管電圧で画像を取得する場合、次の被験者に対する薬液の注入の際に通常撮像用の注入モードから低管電圧対応注入モードへの切り換えを忘れると、所望の画像が得られない。そこで、このようなミスを防止するために、制御部161は、低管電圧対応注入モードでの薬液注入の終了後、薬液の注入モードを通常撮像用の注入モードに戻すようにすることが好ましい。
X線CT装置300による低管電圧での撮像モードと、薬液注入装置100による低管電圧対応注入モードとは、互いに対応させる必要がある。X線CT装置300と薬液注入装置100との連携は、操作者がX線CT装置300および薬液注入装置100を個別に設定することによって行なうこともできるが、操作者による設定ミスを防止するためには、インターフェース164、360を介した薬液注入装置100とX線CT装置300との間の情報伝送により、一方の装置のモードを他方の装置のモードに反映させるようにすることが好ましい。例えば、X線CT装置300において低管電圧での撮像モードが設定された場合は、その情報がインターフェース360を介して薬液注入装置100に伝送され、その制御部161は、その情報に従って薬液注入装置100の注入モードを低管電圧対応注入モードに切り換えてもよいし、その逆に、薬液注入装置100において低管電圧対応注入モードが設定された場合は、その情報gインターフェース164を介してX線CT装置300に伝送され、その制御部330は、その情報に従ってX線管311の管電圧を下げて低管電圧で撮像するようにしてもよい。
以上、本発明を好ましい実施形態によって説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態では、注入条件決定部170は、体重区分の数を3つとし、Livingstone & Leeの式を用いて被験者の体表面積を算出した例を示したが、体重区分の数を2つあるいは4つ以上としたり、他の1つまたは2つ以上の式を用いて被験者の体表面積を算出したりすることもできる。
例えば、Livingstone & Leeは、前述した(3)式の他に、特に体重が10kg以下の被験者に対してのより正確な体表面積計算式として以下の式
(4) BSA(m2)=0.1037×BW(kg)0.6724
を提唱している("Body surface area prediction in
normal-weight and obese patients", American Journal of Physiology - Endocrinology
and Metabolism 281: 586-591, 2001)。なお、上記(4)式において、BSAおよびBWは、前述の(1)〜(3)式と同様、それぞれ体表面積および体重である。
そこで、「低体重」をさらに、10kg以下と10kg超の2つの区分に分けて合計4つの体重区分とし、10kg以下の被験者に対しては上記(4)式を用いて算出した体表面積に基づいて造影剤の注入量を算出し、10kgを超える低体重の被験者および高体重の被験者に対しては、前述の(3)式を用いて算出した体表面積に基づいて造影剤の注入量を算出するようにしてもよい。
100 薬液注入装置
101 注入制御ユニット
110 注入ヘッド
130 ピストン駆動機構
161 (薬液注入装置の)制御部
162 (薬液注入装置の)入力デバイス
163 (薬液注入装置の)表示デバイス
164 (薬液注入装置の)インターフェース
170 注入条件決定部
171 体表面積算出部
200C、200P シリンジ
300 X線CT装置
301 撮像ユニット
302 撮像制御ユニット
311 X線管
312 X線検出器
320 寝台
330 (X線CT装置の)制御部
340 (X線CT装置の)入力デバイス
350 (X線CT装置の)表示デバイス
360 (X線CT装置の)インターフェース

Claims (4)

  1. 被験者に対して制御された方法で造影剤を注入する注入装置であって、
    造影剤を充填しているシリンジから造影剤を押し出すように構成された駆動機構と、
    前記造影剤の注入量を含む注入条件を決定する注入条件決定部と、
    前記注入条件決定部で決定された注入条件に従って前記駆動機構の動作を制御する制御部と、を有し、
    注入条件決定部には、複数の体重区分が所定の基準に従って設定されており、前記注入条件決定部は、被験者の体重を前記複数の体重区分のいずれに属するかを判断し、被験者の体重が所定の体重区分である場合は、前記体重に基づいて造影剤の注入量を算出し、被験者の体重が他の体重区分である場合は、被験者の体表面積を算出し、算出された体表面積に基づいて造影剤の注入量を算出するように構成されている注入装置。
  2. 前記注入条件決定部には、低体重、標準体重および高体重の3つの前記体重区分が設定されており、前記注入条件決定部は、被験者の体重区分が標準体重に属する場合は被験者の体重に基づいて造影剤の注入量を算出し、低体重または高体重に属する場合は、被験者の体表面積を算出し、算出された体表面積に基づいて造影剤の注入量を算出する請求項1に記載の注入装置。
  3. 前記注入装置は、管電圧が調整可能なX線管から被験者にX線を照射するX線CT装置で被験者の断層画像を撮像するのに用いられ、
    前記X線CT装置において標準で使用される管電圧よりも低い管電圧で前記X線管が作動される場合には、前記注入条件決定部は、造影剤の注入量を、その算出に用いる計算式に1未満の所定の補正係数を乗じることによって算出する請求項1または2に記載の注入装置。
  4. 前記注入条件決定部は、前記体重区分が低体重である場合に、前記計算式に前記補正係数を乗じて造影剤の注入量を算出する請求項3に記載の注入装置。
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