しかしながら、上記特許文献1のMIMOアレーアンテナでは、アイソレーション素子(無給電素子)を設けることによってアンテナ素子間の相互結合を抑制可能である一方、アイソレーション素子を接地面に接地する必要があるので、配線パターン設計の自由度が低下するという問題点がある。また、従来では、マルチアンテナ装置が携帯機器に搭載されることから、マルチアンテナ装置のさらなる小型化の要求がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制しながら、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることが可能で、かつ、より小型化を図ることが可能なマルチアンテナ装置および通信機器を提供することである。
課題を解決するための手段および発明の効果
上記目的を達成するために、本願発明者が鋭意検討した結果、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間に配置される非接地の無給電素子を、第1の面に配置される第1部分と、第1部分に接続され、第1の面に対して交差する方向に延びる延伸部とを含むように構成することによって、マルチアンテナ装置の配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制しながら、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができ、かつ、マルチアンテナ装置のより小型化を図ることができることを見い出した。なお、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間に配置される非接地の無給電素子を、第1の面に配置される第1部分と、第1部分に接続され、第1の面に対して交差する方向に延びる延伸部とを含むように構成することにより、アンテナ素子間の相互結合が小さくなることは、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。
すなわち、この発明の第1の局面によるマルチアンテナ装置は、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子と、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間に配置される非接地の無給電素子とを備え、無給電素子は、第1の面に配置される第1部分と、第1部分に接続され、第1の面に対して交差する方向に延びる延伸部とを含む。
この発明の第1の局面によるマルチアンテナ装置では、上記のように、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間に非接地の無給電素子を設けることによって、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との相互結合を小さくすることができる。また、無給電素子を非接地にすることによって、無給電素子を所定の接地部に接地させる必要がないので、配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制することができる。したがって、このマルチアンテナ装置では、配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制しながら、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができる。さらに、第1部分が配置される第1の面に対して交差する方向に延びる延伸部を設けることによって、第1の面における無給電素子の配置領域が小さい場合にも、第1の面に対して交差する方向に延びる延伸部により、無給電素子に必要な長さを確保することができるので、第1の面の配置領域を広げる必要がない分、マルチアンテナ装置の平面積を小さくすることができる。その結果、マルチアンテナ装置をより小型化することができる。
上記第1の局面によるマルチアンテナ装置において、好ましくは、無給電素子は、第2部分をさらに含み、第1部分は、第1アンテナ素子に対向して配置される第1対向部を含み、第2部分は、第2アンテナ素子に対向して配置される第2対向部を含む。このように構成すれば、第1対向部を含む第1部分および第2対向部を含む第2部分により、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との相互結合を容易に小さくすることができる。
上記第1の局面によるマルチアンテナ装置において、好ましくは、無給電素子は、延伸部に接続され、第1部分が配置される第1の面に対して所定の間隔を隔てた第2の面に配置される第3部分をさらに含む。このように構成すれば、第1の面における無給電素子の配置領域が小さい場合にも、延伸部に加えて第2の面に配置される第3部分により、無給電素子に必要な長さを十分に確保することができるので、より効果的にマルチアンテナ装置の小型化を図ることができる。
この場合、好ましくは、第1アンテナ素子、第2アンテナ素子および無給電素子が配置され、少なくとも第1の面を有する基板をさらに備え、延伸部は、基板の第1の面に交差する方向に延びるように配置されている。このように構成すれば、無給電素子を基板上に配置する場合に、第1の面における無給電素子の配置領域が小さい場合にも、基板の第1の面に対して交差する方向に延びる延伸部により、無給電素子に必要な長さを確保することができるので、基板の第1の面の配置領域を広げる必要がない分、基板に配置されるマルチアンテナ装置の平面積を小さくすることができる。その結果、マルチアンテナ装置を小型化することができる。
上記マルチアンテナ装置が基板を備える構成において、好ましくは、基板は、第1の面からなる表面と、表面とは反対側の第2の面からなる背面とを有し、第1部分および第2部分は、基板の表面に配置されており、第3部分は、基板の背面に配置されている。このように構成すれば、基板の表面および背面の両面にまたがって無給電素子を配置することができるので、無給電素子に必要な長さを十分に確保することができる。その結果、より効果的に基板に配置されるマルチアンテナ装置の小型化を図ることができる。
上記無給電素子が第3部分を含む構成において、好ましくは、第1の面に配置された第1部分および第2部分は、第2の面に配置された第3部分と平面的に見て重なるように配置されている。このように構成すれば、第1の面に配置された第1部分および第2部分と、第2の面に配置された第3部分とが平面的に重なる分だけ、無給電素子の配置領域の平面積を小さくすることができるので、容易にマルチアンテナ装置を小型化することができる。
上記無給電素子が第3部分を含む構成において、好ましくは、延伸部は、第1部分に接続された第1延伸部と、第2部分に接続された第2延伸部とを含む。このように構成すれば、第1延伸部および第2延伸部により、第1部分側および第2部分側の両方で第3部分と接続することができるので、第2の面に第3部分を設ける構成でも、無給電素子をバランス良く接続することができる。
上記第1の局面によるマルチアンテナ装置において、好ましくは、無給電素子は、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子が出力する電波の波長の略1/2の電気長を有する。このように構成すれば、非接地の無給電素子を共振させることができる。
上記第1の局面によるマルチアンテナ装置において、好ましくは、第1アンテナ素子に対して高周波電力を供給する第1給電点および第2アンテナ素子に対して高周波電力を供給する第2給電点と、第1アンテナ素子と第1給電点との間に配置され、高周波電力の所定の周波数において、インピーダンス整合を図るための第1整合回路と、第2アンテナ素子と第2給電点との間に配置され、高周波電力の所定の周波数において、インピーダンス整合を図るための第2整合回路とをさらに備える。このように構成すれば、所定の周波数において、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができるとともにインピーダンス整合が図られるので、アンテナ素子を介して伝達されるエネルギーの伝達損失を軽減させることができる。
上記第1の局面によるマルチアンテナ装置において、好ましくは、無給電素子は、同一面内において、複数の位置で屈曲または湾曲した形状に形成されている。このように構成すれば、同一面内において無給電素子の配置領域が小さい場合にも、屈曲または湾曲した形状により、無給電素子に必要な長さを容易に確保することができるので、配置する領域を広げる必要がない分、マルチアンテナ装置をより小型化することができる。
上記第1の局面によるマルチアンテナ装置において、好ましくは、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子は、モノポールアンテナを含む。このように構成すれば、モノポールアンテナ間の相互結合を小さくしてモノポールアンテナを用いたマルチアンテナ装置を小型化することができる。
この発明の第2の局面による通信機器は、マルチアンテナ装置を備え、マルチアンテナ装置は、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子と、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間に配置される非接地の無給電素子とを備え、無給電素子は、第1の面に配置される第1部分と、第1部分に接続され、第1の面に対して交差する方向に延びる延伸部とを含む。
この発明の第2の局面による通信機器では、上記のように、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間に非接地の無給電素子を設けることによって、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との相互結合を小さくすることができる。また、無給電素子を非接地にすることによって、無給電素子を所定の接地部に接地させる必要がないので、配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制することができる。したがって、このマルチアンテナ装置では、配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制しながら、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができる。さらに、第1部分が配置される第1の面に対して交差する方向に延びる延伸部を設けることによって、第1の面における無給電素子の配置領域が小さい場合にも、第1の面に対して交差する方向に延びる延伸部により、無給電素子に必要な長さを確保することができるので、第1の面の配置領域を広げる必要がない分、マルチアンテナ装置の平面積を小さくすることができる。このような効果は、特に、小型化が望まれる携帯通信機器において有効である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図4を参照して、本発明の第1実施形態による携帯機器100の構成について説明する。なお、携帯機器100は、本発明の「通信機器」の一例である。
本発明の第1実施形態による携帯機器100は、図1に示すように、正面から見て、略長方形形状を有している。また、携帯機器100は、表示画面部1と、ボタンからなる操作部2とを備えている。また、携帯機器100の筐体内部には、マルチアンテナ装置10が設けられている。
マルチアンテナ装置10は、複数のアンテナ素子を用いて所定の周波数において多重の入出力が可能なMIMO(Multiple−Input Multiple−Output)通信用に構成されている。
マルチアンテナ装置10は、図2および図3に示すように、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12と、2つのアンテナ素子11および12の間に配置される無給電素子13と、第1アンテナ素子11、第2アンテナ素子12および無給電素子13が配置される基板14(図4参照)と、接地部15と、第1アンテナ素子11に高周波電力を供給するための第1給電点16および第2アンテナ素子12に高周波電力を供給するための第2給電点17とを含んでいる。
第1アンテナ素子11は、無給電素子13のX1方向側に配置されるとともに、第2アンテナ素子12は、無給電素子13のX2方向側に配置されている。また、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)は、薄板形状を有し、後述する基板14の表面14aに設けられている。また、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)は、マルチアンテナ装置10が対応する2.5GHzの波長(120mm)の略1/4の電気長を有する、モノポールアンテナである。具体的には、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)は、略逆U字形状を有している。第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)は、第1給電点接続部11a(第2給電点接続部12a)と、第1横部11b(第2横部12b)と、第3対向部11c(第4対向部12c)とを含む。第1給電点接続部11a(第2給電点接続部12a)は、Y2方向側の端部が後述する基板14の背面14bの接地部15に設けられた第1給電点16(第2給電点17)に接続されてY1方向に延びるように形成されている。第1横部11b(第2横部12b)は、第1給電点接続部11a(第2給電点接続部12a)のY1方向側の端部に接続されてX2方向(X1方向)に延びるように形成されている。第3対向部11c(第4対向部12c)は、第1横部11b(第2横部12b)のX2方向側(X1方向側)の端部に接続されてY2方向側に延びるように形成されている。なお、電気長とは、アンテナを構成する導体上を進む信号の1波長を基準とした長さである。
ここで、本実施形態では、無給電素子13は、第1部分131と、第2部分132と、延伸部133と、第3部分134とを含む。第1部分131(第2部分132)は、基板14の表面14aに配置されている。第1部分131(第2部分132)は、第1対向部131a(第2対向部132a)と、第3横部131b(第4横部132b)と、第5横部131c(第6横部132c)とを含む。第1対向部131a(第2対向部132a)は、第1アンテナ素子11の第3対向部11c(第2アンテナ素子12の第4対向部12c)に対向するように配置されている。第3横部131b(第4横部132b)は、第1対向部131a(第2対向部132a)のY1方向側の端部に接続されてX2方向(X1方向)に延びるように形成されている。第5横部131c(第6横部132c)は、第1対向部131a(第2対向部132a)のY2方向側の端部に接続されてX2方向(X1方向)に延びるように形成されている。第1部分131と第2部分132とは、第3横部131bと第4横部132bとによって互いに接続されている。
延伸部133は、第1延伸部133aおよび第2延伸部133bを含む。第1延伸部133a(第2延伸部133b)は、第1部分131の第5横部131c(第2部分132の第6横部132c)のX2方向側(X1方向側)の端部に接続され、基板14の表面14aに対して垂直方向(基板14の厚み方向(Z2方向))に延びるように配置されている。第3部分134は、基板14の背面14bに配置されている。第3部分134は、第1延伸部133a(第2延伸部133b)に接続されてX1方向(X2方向)に延びる第7横部134a(第8横部134b)と、第7横部134a(第8横部134b)のX1方向側(X2方向側)の端部に接続されてY1方向に延びる第1縦部134c(第2縦部134d)とを含む。また、無給電素子13は、接地部15に接地されない非接地状態になるように構成されている。また、無給電素子13は、マルチアンテナ装置10が対応する2.5GHzの波長の略1/2の電気長を有している。また、無給電素子13は、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12を流れる電流に起因して共振するように構成されている。
第1対向部131aおよび第2対向部132aは、Y方向に延びるように形成されており、互いに略平行に配置されている。また、第1対向部131aは、第1アンテナ素子11に対して電磁界結合可能な距離を隔てて配置されている。第2対向部132aは、第2アンテナ素子12に対して電磁界結合可能な距離を隔てて配置されている。
基板14は、図4に示すように、Z1側に配置された基板14の表面14aと、基板14の表面14aに対して所定の間隔を隔てたZ2側に配置された基板14の背面14bとを有し、基板14の表面14aには、第1部分131および第2部分132が配置されている。基板14の背面14bには、第3部分134が配置されている。また、基板14の背面14bには、接地部15が配置されている。また、基板14の表面14aに配置された第1部分131および第2部分132は、基板14の背面14bに配置された第3部分134と平面的に見て(Z方向から見て)重なるように配置されている。具体的には、第1部分131の第1対向部131a(第2部分132の第2対向部132a)の一部と、第3部分134の第1縦部134c(第2縦部134d)とは、平面的に見て重なるように配置されている。また、第1部分131の第5横部131c(第2部分132の第6横部132c)と、第3部分134の第7横部134a(第8横部134b)とは、平面的に見て(Z方向から見て)重なるように配置されている。また、基板14の表面14aに配置された第1部分131および第2部分132は、複数の位置で屈曲した形状に形成されている。基板14の背面14bに配置された第3部分は、複数の位置で屈曲した形状に形成されている。なお、表面14aおよび背面14bは、本発明の「第1の面」および「第2の面」の一例である。
第1給電点16(第2給電点17)は、基板14の背面14bの接地部15に配置されている。第1給電点16(第2給電点17)は、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)のY2方向側の端部に接続されている。また、第1給電点16(第2給電点17)は、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)と図示しない給電線とを接続している。
第1実施形態では、上記のように、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12との間に非接地の無給電素子13を設けることによって、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12との相互結合を小さくすることができる。また、無給電素子13を非接地にすることによって、無給電素子13を所定の接地部15に接地させる必要がないので、配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制することができる。したがって、このマルチアンテナ装置10では、配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制しながら、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができる。さらに、第1部分131および第2部分132が配置される基板14の表面14aに対して垂直方向に延びる延伸部133(第1延伸部133aおよび第2延伸部133b)を設けることによって、基板14の表面14aにおける無給電素子13の配置領域が小さい場合にも、基板14の表面14aに対して垂直方向に延びる延伸部133により、無給電素子13に必要な長さを確保することができるので、基板14の表面14aの配置領域を広げる必要がない分、マルチアンテナ装置10の平面積を小さくすることができる。このような効果は、特に、小型化が望まれる携帯機器100において有効である。
以上のように、本願発明者は、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12との間に配置される非接地の無給電素子13を、第1アンテナ素子11に対向して配置される第1対向部131aを含む第1部分131と、第2アンテナ素子12に対向して配置される第2対向部132aを含む第2部分132と、第1部分131および第2部分132に接続され、第1部分131および第2部分132が配置される基板14の表面14aに対して垂直方向に延びる延伸部133とを含むように構成することによって、マルチアンテナ装置10の配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制しながら、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができ、かつ、マルチアンテナ装置10のより小型化を図ることができることを見い出した。
また、第1実施形態では、無給電素子13を、延伸部133に接続され、第1部分131および第2部分132が配置される基板14の表面14aに対して所定の間隔を隔てた基板14の背面14bに配置される第3部分134を含むように構成することによって、基板14の表面14aにおける無給電素子13の配置領域が小さい場合にも、延伸部133に加えて基板14の背面14bに配置される第3部分134により、無給電素子13に必要な長さを十分に確保することができるので、より効果的にマルチアンテナ装置10の小型化を図ることができる。
また、第1実施形態では、第1アンテナ素子11、第2アンテナ素子12および無給電素子13が配置される表面14aを有する基板14を設け、延伸部133を、基板14の表面14aに交差する方向に延びるように配置することによって、無給電素子13を基板14上に配置する場合に、基板14の表面14aにおける無給電素子13の配置領域が小さい場合にも、基板14の表面14aに対して交差する方向に延びる延伸部133により、無給電素子13に必要な長さを確保することができるので、基板14の表面14aの配置領域を広げる必要がない分、基板14に配置されるマルチアンテナ装置10の平面積を小さくすることができる。その結果、マルチアンテナ装置10を小型化することができる。
また、第1実施形態では、基板14は、表面と、表面とは反対側の背面とを有し、第1部分131および第2部分132を、基板14の表面14aに配置するとともに、第3部分を、基板14の背面14bに配置することによって、基板14の表面14aおよび基板14の背面14bの両面にまたがって無給電素子13を配置することができるので、無給電素子13に必要な長さを十分に確保することができる。その結果、より効果的に基板14に配置されるマルチアンテナ装置10の小型化を図ることができる。
また、第1実施形態では、基板14の表面14aに配置された第1部分131および第2部分132を、基板14の背面14bに配置された第3部分134と平面的に見て重なるように配置することによって、基板14の表面14aに配置された第1部分131および第2部分132と、基板14の背面14bに配置された第3部分134とが平面的に重なる分だけ、無給電素子13の配置領域の平面積を小さくすることができるので、容易にマルチアンテナ装置10を小型化することができる。
また、第1実施形態では、延伸部133を、第1部分131に接続された第1延伸部133aと、第2部分132に接続された第2延伸部133bとを含むように構成することによって、第1延伸部133aおよび第2延伸部133bにより、第1部分131側および第2部分132側の両方で第3部分134と接続することができるので、無給電素子13をバランス良く接続することができる。
また、第1実施形態では、無給電素子13は、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12が出力する電波の波長の略1/2の電気長を有する。このように構成すれば、非接地の無給電素子13を共振させることができる。
また、第1実施形態では、無給電素子13は、同一面内において、複数の位置で屈曲した形状に形成されている。この結果、無給電素子13の配置領域を小さくすることができるので、マルチアンテナ装置10をより小型化することができる。
次に、上記した第1実施形態の効果を確認するために行ったシミュレーションの結果について説明する。このシミュレーションでは、図2および図3に示した第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10と、図6および図7に示した第1比較例によるマルチアンテナ装置20および図9および図10に示した第2比較例によるマルチアンテナ装置30とを比較した。
図2および図3に示すように、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10では、第3対向部11cおよび第4対向部12cの離間距離D11が15mmになるように第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12を配置した。また、第3対向部11c(第4対向部12c)と第1対向部131a(第2対向部132a)との離間距離D12が3mmになるように無給電素子13を配置した。延伸部133(第1延伸部133aおよび第2延伸部133b)は、基板14の厚みと略等しい1mmの長さを有する。また、マルチアンテナ装置10の第1アンテナ素子11、第2アンテナ素子12および無給電素子13は、X方向が31mm、Y方向が12mmの矩形領域内に配置されている。
図6および図7に示すように、第1比較例によるマルチアンテナ装置20では、無給電素子13を設ける第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10とは異なり、2つのアンテナ素子21および22の間に無給電素子を設けない構成にした。アンテナ素子21(22)は、基板14の表面14aに配置されている。アンテナ素子21(22)は、Y2方向側の端部が基板14の背面14bの接地部15に設けられた給電点16(17)に接続されてY1方向に延びる給電点接続部21a(22a)と、給電点接続部21a(22a)のY1方向側の端部に接続されてX2方向(X1方向)に延びる横部21b(22b)とを含む。また、第1比較例によるマルチアンテナ装置20では、横部21bおよび横部22bの離間距離D21が17mmになるようにアンテナ素子21および22を配置した。また、マルチアンテナ装置20のアンテナ素子21およびアンテナ素子22は、X方向が29mm、Y方向が12mmの矩形領域内に配置されている。第1比較例によるマルチアンテナ装置20の他の構成は、上記第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10と同様である。
図9および図10に示すように、第2比較例によるマルチアンテナ装置30では、無給電素子13を、基板14の表面14a、基板14の厚み方向に延びる部分および基板14の背面14bに配置する第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10とは異なり、無給電素子33を、基板14の表面14aのみに配置する構成にした。アンテナ素子31(32)は、基板14の表面14aに配置されている。アンテナ素子31(32)は、給電点接続部31a(32a)と、横部31b(32b)と、対向部31c(32c)とを含む。給電点接続部31a(32a)は、Y2方向側の端部が基板14の背面14bの接地部15に設けられた給電点16(17)に接続されてY1方向に延びるように形成されている。横部31b(32b)は、給電点接続部31a(32a)のY1方向側の端部に接続されてX2方向(X1方向)に延びるように形成されている。対向部31c(32c)は、横部31b(32b)のX2方向側(X1方向側)の端部に接続されてY2方向に延びるように形成されている。無給電素子33は、基板14の表面14aに配置されている。無給電素子33は、対向部31c(32c)に対向するように配置される対向部33a(33b)と、対向部33aおよび33bのY1方向側の端部を互いに接続する横部33cと、対向部33a(33b)のY2方向側の端部に接続されてX2方向(X1方向)に延びる横部33d(33e)とを含む。
第2比較例によるマルチアンテナ装置30では、対向部31cおよび対向部32cの離間距離D31が21mmになるようにアンテナ素子31および32を配置した。対向部31c(32c)と対向部33a(33b)との離間距離D32が4mmになるように無給電素子33を配置した。また、マルチアンテナ装置30のアンテナ素子31、アンテナ素子32および無給電素子33は、X方向が39mm、Y方向が12mmの矩形領域内に配置されている。第2比較例によるマルチアンテナ装置30では、基板14の表面14aのみに無給電素子33を配置しているため、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置に比べてアンテナ素子31、アンテナ素子32および無給電素子33の配置領域の平面積が大きくなっている。第2比較例によるマルチアンテナ装置30の他の構成は、上記第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10と同様である。
次に、図5、図8および図11を参照して、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10、第1比較例によるマルチアンテナ装置20および第2比較例によるマルチアンテナ装置30のSパラメータの特性について説明する。ここで、図5、図8および図11に示すSパラメータのうちのS11は、アンテナ素子の反射係数を意味し、SパラメータのうちのS21は、2つのアンテナ素子間の相互結合の大きさを意味する。また、図5、図8および図11では、横軸に周波数をとり、縦軸にS11およびS21の大きさ(単位:dB)をとっている。
まず、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10では、図5に示すように、マルチアンテナ装置10が対応する2.5GHzにおいて、S11が約−25dBであり、S21が約−24dBであった。これに対して、第1比較例によるマルチアンテナ装置20では、図8に示すように、2.5GHzにおいて、S11が約−13dBであり、S21が約−9.6dBであった。第2比較例によるマルチアンテナ装置30では、図11に示すように、2.5GHzにおいて、S11が約−16dBであり、S21が約−23dBであった。
この結果、第1比較例によるマルチアンテナ装置20よりも第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10の方が、S21の値が小さいので、非接地の無給電素子13を設けることによってアンテナ素子間の相互結合を小さくすることができることが判明した。なお、S21の値が−10dB以下であれば 、アンテナ素子間の相互結合は微小であると考えられる。
これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10では、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12において、他方のアンテナ素子を流れる電流に起因する直接的な結合と無給電素子13を流れる電流に起因する間接的な結合とが生じることによって、アンテナ素子間の相互結合が小さくなると考えられる。
また、第2比較例によるマルチアンテナ装置30と第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10とは、2つのアンテナ素子間の相互結合の大きさを意味するS21の値が略同じになった。よって、無給電素子13を、基板14の表面14a、基板14の厚み方向の部分および基板14の背面14bに配置して、マルチアンテナ装置10の配置領域を小さくした場合でもアンテナ素子間の相互結合を小さくすることができることが判明した。
(第2実施形態)
次に、図12および図13を参照して、本発明の第2実施形態による携帯機器100のマルチアンテナ装置40について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、第1アンテナ素子41の第1給電点接続部41aおよび第2アンテナ素子42の第2給電点接続部42aが複数の位置で屈曲した形状に形成されているマルチアンテナ装置40について説明する。
第2実施形態による携帯機器100のマルチアンテナ装置40は、図12および図13に示すように、第1アンテナ素子41および第2アンテナ素子42と、2つのアンテナ素子41および42の間に配置される無給電素子43と、基板14(図4参照)と、接地部15と、第1アンテナ素子41に高周波電力を供給するための第1給電点16および第2アンテナ素子42に高周波電力を供給するための第2給電点17とを含んでいる。
第1アンテナ素子41は、無給電素子43のX1方向側に配置されるとともに、第2アンテナ素子42は、無給電素子43のX2方向側に配置されている。また、第1アンテナ素子41(第2アンテナ素子42)は、薄板形状を有し、基板14の表面14aに設けられている。また、第1アンテナ素子41(第2アンテナ素子42)は、マルチアンテナ装置40が対応する2.5GHzの波長(120mm)の略1/4の電気長を有する、モノポールアンテナである。具体的には、第1アンテナ素子41(第2アンテナ素子42)は、Y2方向側の端部が基板14の背面14bの接地部15に設けられた第1給電点16(第2給電点17)に接続されてY1方向に延びる第1給電点接続部41a(第2給電点接続部42a)を含む。
ここで、第2実施形態では、第1アンテナ素子41の第1給電点接続部41aおよび第2アンテナ素子42の第2給電点接続部42aは、複数の位置で屈曲した形状に形成されている。
無給電素子43は、第1部分431と、第2部分432と、延伸部433と、第3部分434とを含む。第1部分431(第2部分432)は、基板14の表面14aに配置されている。第1部分431(第2部分432)は、第1対向部431a(第2対向部432a)と、第3横部431b(第4横部432b)と、第5横部431c(第6横部432c)とを含む。第1対向部431a(第2対向部432a)は、第1アンテナ素子41(第2アンテナ素子42)に対向するように配置されている。第3横部431b(第4横部432b)は、第1対向部431a(第2対向部432a)のY1方向側の端部に接続されてX2方向(X1方向)に延びるように形成されている。第5横部431c(第6横部432c)は、第1対向部431a(第2対向部432a)のY2方向側の端部に接続されてX2方向(X1方向)に延びるように形成されている。
延伸部433は、第1延伸部433aおよび第2延伸部433bを含む。第1延伸部433a(第2延伸部433b)は、第1部分431の第5横部431c(第2部分432の第6横部432c)のX2方向側(X1方向側)の端部に接続され、基板14の表面14aに対して垂直方向(基板14の厚み方向(Z2方向))に延びるように配置されている。第3部分434は、基板14の背面14bに配置されている。第3部分434は、第1延伸部433a(第2延伸部433b)に接続されてX1方向(X2方向)に延びる第7横部434a(第8横部434b)と、第7横部434a(第8横部434b)のX1方向側(X2方向側)の端部に接続されてY1方向に延びる第1縦部434c(第2縦部434d)と、第1縦部434cおよび第2縦部434dのY1方向側の端部を互いに接続する第9横部434eとを含む。また、無給電素子43は、接地部15に接地されない非接地状態になるように構成されている。また、無給電素子43は、マルチアンテナ装置40が対応する2.5GHzの波長の略1/2の電気長を有している。
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
上記のように、第2実施形態の構成においても、上記第1実施形態と同様に、配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制しながら、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができる。また、マルチアンテナ装置40をより小型化することができる。
さらに、第2実施形態では、上記のように、第1アンテナ素子41の第1給電点接続部41aおよび第2アンテナ素子42の第2給電点接続部42aを、複数の位置で屈曲した形状に形成することによって、第1アンテナ素子41および第2アンテナ素子42の配置領域が小さい場合にも、複数の位置で屈曲した形状により、第1アンテナ素子41および第2アンテナ素子42に必要な長さを確保することができるので、配置する領域を広げる必要がない分、マルチアンテナ装置40をより小型化することができる。
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
次に、上記した第2実施形態の効果を確認するために行ったシミュレーションの結果について説明する。このシミュレーションでは、図12および図13に示した第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置40と、図6および図7に示した第1比較例によるマルチアンテナ装置20および図9および図10に示した第2比較例によるマルチアンテナ装置30とを比較した。
図12および図13に示すように、第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置40では、離間距離D41が21mmになるように第1アンテナ素子41および第2アンテナ素子42を配置した。また、第1アンテナ素子41(第2アンテナ素子42)と第1対向部431a(第2対向部432a)との離間距離D42が4mmになるように無給電素子43を配置した。延伸部433(第1延伸部433aおよび第2延伸部433b)は、基板14の厚みと略等しい1mmの長さを有する。また、マルチアンテナ装置40の第1アンテナ素子41、第2アンテナ素子42および無給電素子43は、X方向が31mm、Y方向が14mmの矩形領域内に配置されている。
次に、図14、図8および図11を参照して、第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置40、第1比較例によるマルチアンテナ装置20および第2比較例によるマルチアンテナ装置30のSパラメータの特性について説明する。なお、図14、図8および図11では、横軸に周波数をとり、縦軸にS11およびS21の大きさ(単位:dB)をとっている。
まず、第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置40では、図14に示すように、マルチアンテナ装置40が対応する2.5GHzにおいて、S11が約−17dBであり、S21が約−15dBであった。これに対して、上記のように、第1比較例によるマルチアンテナ装置20では、図8に示すように、2.5GHzにおいて、S11が約−13dBであり、S21が約−9.6dBであった。第2比較例によるマルチアンテナ装置30では、図11に示すように、2.5GHzにおいて、S11が約−16dBであり、S21が約−23dBであった。
この結果、第1比較例によるマルチアンテナ装置20よりも第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置40の方が、2つのアンテナ素子間の相互結合の大きさを意味するS21の値が小さいので、非接地の無給電素子43を設けることによってアンテナ素子間の相互結合を小さくすることができることが判明した。
これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置40では、第1アンテナ素子41および第2アンテナ素子42において、他方のアンテナ素子を流れる電流に起因する直接的な結合と無給電素子43を流れる電流に起因する間接的な結合とが生じることによって、アンテナ素子間の相互結合が小さくなると考えられる。
また、第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置40でも、第2比較例によるマルチアンテナ装置30と同様に、2つのアンテナ素子間の相互結合の大きさを意味するS21の値が−10dB以下になった。よって、無給電素子43を、基板14の表面14a、基板14の厚み方向の部分および基板14の背面14bに配置して、マルチアンテナ装置40の配置領域を小さくした場合でもアンテナ素子間の相互結合を小さくすることができることが判明した。
(第3実施形態)
次に、図15および図16を参照して、本発明の第3実施形態による携帯機器100のマルチアンテナ装置50について説明する。この第3実施形態では、上記第1および第2実施形態と異なり、無給電素子53の第1延伸部533aおよび第2延伸部533bが、第1部分531および第2部分532の接地部15に遠い側(Y1方向側)の端部にそれぞれ接続されているマルチアンテナ装置50について説明する。
第3実施形態による携帯機器100のマルチアンテナ装置50は、図15および図16に示すように、第1アンテナ素子51および第2アンテナ素子52と、2つのアンテナ素子51および52の間に配置される無給電素子53と、基板14(図4参照)と、接地部15と、第1アンテナ素子51に高周波電力を供給するための第1給電点16および第2アンテナ素子52に高周波電力を供給するための第2給電点17とを含んでいる。
第1アンテナ素子51は、無給電素子53のX1方向側に配置されるとともに、第2アンテナ素子52は、無給電素子53のX2方向側に配置されている。また、第1アンテナ素子51(第2アンテナ素子52)は、薄板形状を有し、基板14の表面14aに設けられている。また、第1アンテナ素子51(第2アンテナ素子52)は、マルチアンテナ装置50が対応する2.6GHzの波長(115mm)の略1/4の電気長を有する、モノポールアンテナである。具体的には、第1アンテナ素子51(第2アンテナ素子52)は、略逆U字形状を有している。第1アンテナ素子51(第2アンテナ素子52)は、第1給電点接続部51a(第2給電点接続部52a)と、第1横部51b(第2横部52b)と、第3縦部51c(第4縦部52c)とを含む。第1給電点接続部51a(第2給電点接続部52a)は、Y2方向側の端部が基板14の背面14bの接地部15に設けられた第1給電点16(第2給電点17)に接続されてY1方向に延びるように形成されている。第1横部51b(第2横部52b)は、第1給電点接続部51a(第2給電点接続部52a)のY1方向側の端部に接続されてX1方向(X2方向)に延びるように形成されている。第3縦部51c(第4縦部52c)は、第1横部51b(第2横部52b)のX1方向側(X2方向側)の端部に接続されてY2方向側に延びるように形成されている。
無給電素子53は、第1部分531と、第2部分532と、延伸部533と、第3部分534とを含む。第1部分531(第2部分532)は、基板14の表面14aに配置されている。第1部分531(第2部分532)は、第1対向部531a(第2対向部532a)と、第3横部531b(第4横部532b)と、第5横部531c(第6横部532c)とを含む。第1対向部531a(第2対向部532a)は、第1アンテナ素子51の第1給電点接続部51a(第2アンテナ素子52の第2給電点接続部52a)に対向するように配置されている。第3横部531b(第4横部532b)は、第1対向部531a(第2対向部532a)のY2方向側の端部に接続されてX2方向(X1方向)に延びるように形成されている。第5横部531c(第6横部532c)は、第1対向部531a(第2対向部532a)のY1方向側の端部に接続されてX2方向(X1方向)に延びるように形成されている。第1部分531と第2部分532とは、第3横部531bと第4横部532bとにより互いに接続されている。
延伸部533は、第1延伸部533aおよび第2延伸部533bを含む。第1延伸部533a(第2延伸部533b)は、第1部分531の第5横部531c(第2部分532の第6横部532c)のX2方向側(X1方向側)の端部に接続され、基板14の表面14aに対して垂直方向(基板14の厚み方向(Z2方向))に延びるように配置されている。第3部分534は、基板14の背面14bに配置されている。第3部分534は、第1延伸部533a(第2延伸部533b)に接続されてX1方向(X2方向)に延びる第7横部534a(第8横部534b)と、第7横部534a(第8横部534b)のX1方向側(X2方向側)の端部に接続されてY2方向に延びる第1縦部534c(第2縦部534d)と、第1縦部534c(第2縦部534d)のY2方向側の端部に接続されてX2方向(X1方向)に延びる第9横部534e(第10横部534f)とを含む。また、無給電素子53は、マルチアンテナ装置50が対応する2.6GHzの波長の略1/2の電気長を有している。
また、第3実施形態では、無給電素子53の第1部分531の第1対向部531aおよび第3横部531bと、第3部分534の第1縦部534cおよび第9横部534eとは、平面的に見て重ならないように配置されている。また、第2部分532の第2対向部532aおよび第4横部532bと、第3部分534の第2縦部534dおよび第10横部534fとは、平面的に見て重ならないように配置されている。
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
上記のように、第3実施形態の構成においても、上記第1実施形態と同様に、配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制しながら、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができる。また、マルチアンテナ装置50をより小型化することができる。
さらに、第3実施形態では、上記のように、無給電素子53の第1延伸部533aおよび第2延伸部533bを、第1部分531および第2部分532の接地部15に遠い側(Y1方向側)の端部にそれぞれ接続されるように配置しても、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができる。
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
次に、上記した第3実施形態の効果を確認するために行ったシミュレーションの結果について説明する。このシミュレーションでは、図15および図16に示した第3実施形態に対応するマルチアンテナ装置50と、図6および図7に示した第1比較例によるマルチアンテナ装置20および図9および図10に示した第2比較例によるマルチアンテナ装置30とを比較した。
図15および図16に示すように、第3実施形態に対応するマルチアンテナ装置50では、第1給電点接続部51aおよび第2給電点接続部52aの離間距離D51が12mmになるように第1アンテナ素子51および第2アンテナ素子52を配置した。また、第1給電点接続部51a(第2給電点接続部52a)と第1対向部531a(第2対向部532a)との離間距離D52が2mmになるように無給電素子53を配置した。延伸部533(第1延伸部533aおよび第2延伸部533b)は、基板14の厚みと略等しい1mmの長さを有する。また、マルチアンテナ装置50の第1アンテナ素子51、第2アンテナ素子52および無給電素子53は、X方向が28mm、Y方向が10mmの矩形領域内に配置されている。
次に、図17、図8および図11を参照して、第3実施形態に対応するマルチアンテナ装置50、第1比較例によるマルチアンテナ装置20および第2比較例によるマルチアンテナ装置30のSパラメータの特性について説明する。なお、図17、図8および図11では、横軸に周波数をとり、縦軸にS11およびS21の大きさ(単位:dB)をとっている。
まず、第3実施形態に対応するマルチアンテナ装置50では、図17に示すように、マルチアンテナ装置50が対応する2.6GHzにおいて、S11が約−16dBであり、S21が約−22dBであった。これに対して、上記のように、第1比較例によるマルチアンテナ装置20では、図8に示すように、2.5GHzにおいて、S11が約−13dBであり、S21が約−9.6dBであった。第2比較例によるマルチアンテナ装置30では、図11に示すように、2.5GHzにおいて、S11が約−16dBであり、S21が約−23dBであった。
この結果、第1比較例によるマルチアンテナ装置20よりも第3実施形態に対応するマルチアンテナ装置50の方が、2つのアンテナ素子間の相互結合の大きさを意味するS21の値が小さいので、非接地の無給電素子53を設けることによってアンテナ素子間の相互結合を小さくすることができることが判明した。
これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、第3実施形態に対応するマルチアンテナ装置50では、第1アンテナ素子51および第2アンテナ素子52において、他方のアンテナ素子を流れる電流に起因する直接的な結合と無給電素子53を流れる電流に起因する間接的な結合とが生じることによって、アンテナ素子間の相互結合が小さくなると考えられる。
また、第3実施形態に対応するマルチアンテナ装置50でも、第2比較例によるマルチアンテナ装置30と同様に、2つのアンテナ素子間の相互結合の大きさを意味するS21の値が−10dB以下になった。よって、無給電素子53を、基板14の表面14a、基板14の厚み方向の部分および基板14の背面14bに配置して、マルチアンテナ装置50の配置領域を小さくした場合でもアンテナ素子間の相互結合を小さくすることができることが判明した。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、携帯機器に本発明のマルチアンテナ装置を適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、無線LANや広帯域通信等、MIMOシステムを搭載する携帯機器以外の通信機器に本発明のマルチアンテナ装置を適用してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、延伸部は、第1部分および第2部分にそれぞれ接続される構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、延伸部は、第1部分または第2部分の少なくとも一方に接続されている構成であれば、第1部分および第2部分の両方に接続されていなくてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、第1の面の一例として基板の表面、第2の面の一例として基板の背面を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、基板を多層に構成し、第1の面または第2の面のうち一方を多層の基板の内部の面としてもよいし、第1の面および第2の面の両方を多層の基板の内部の面としてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、第1アンテナ素子と第1対向部とが同一面内に配置されており、第2アンテナ素子と第2対向部とが同一面内に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1アンテナ素子と第1対向部とが対向して配置されており、第2アンテナ素子と第2対向部とが対向して配置されていれば、それぞれ、同一面内に配置されていなくてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とが同一面内に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とが異なる面に配置されていてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子と、第1給電点および第2給電点とが異なる面に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子と、第1給電点および第2給電点とが同一面内に配置されていてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、給電点とアンテナ素子の間にインピーダンス整合を図るための整合回路を設けない構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、給電点とアンテナ素子の間に高周波電力の所定の周波数においてインピーダンス整合を図りながらアンテナ素子間の相互結合を抑制するための整合回路を設けてもよい。たとえば、図18および図19に示すように、マルチアンテナ装置60の第1給電点16(第2給電点17)と第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)との間に第1整合回路18(第2整合回路19)を設ける構成にしてもよい。これにより、所定の周波数において、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができるとともにインピーダンス整合が図られるので、アンテナ素子を介して伝達されるエネルギーの伝達損失をより軽減させることができる。なお、第1整合回路18(第2整合回路19)は、たとえば、図20に示すようなインダクタ(コイル)およびキャパシタ(コンデンサ)により構成されたπ型回路(πマッチ)や、図21に示すようなインダクタおよびキャパシタにより構成されたT型回路(Tマッチ)、図22に示すようなインダクタおよびキャパシタにより構成されたL型回路(Lマッチ)などにより構成してもよい。また、π型回路やT型回路、L型回路などは、インダクタまたはキャパシタの一方のみにより構成してもよいし、インダクタおよびキャパシタの両方により構成してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、マルチアンテナ装置の一例として、MIMO通信用のマルチアンテナ装置を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、ダイバシティなどMIMO以外の形式に対応するマルチアンテナ装置であってもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)の一例として、モノポールアンテナからなる第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ダイポールアンテナなどモノポールアンテナ以外の第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)であってもよい。たとえば、図23に示すように、ダイポールアンテナからなる第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)の場合には、第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)の給電点よりもY1方向側の部分に対応するように、延伸部を含む非接地の無給電素子を設けてもよい。また、図24に示すように、ダイポールアンテナからなる第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)の給電点よりもY1方向側の部分およびY2方向側の部分の両方に対応するように、延伸部を含む非接地の無給電素子を設けてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、無給電素子を同一平面内において複数の位置で屈曲した形状に形成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、無給電素子を同一平面内において複数の位置で湾曲した形状に形成する構成であってもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、延伸部は、第1の面としての基板の表面に対して垂直方向に延びるように形成される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、延伸部は、第1の面に対して交差する方向に延びるように形成されていれば、第1の面に対して垂直方向に延びるように形成されていなくてもよい。たとえば、図25に示すように、延伸部は、第1の面に対して直角以外の所定の角度の方向に延びるように形成されていてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、第1の面としての基板の表面に、第1部分および第2部分の両方が配置されている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1の面に第1部分が配置されている構成であればよい。たとえば、図26に示すように、第1の面に第2部分が配置されていなくてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、基板は、第1部分および第2部分が配置される第1の面としての基板の表面と、第3部分が配置される第2の面としての基板の背面との両方を有する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、基板は、第1部分が配置される第1の面を有していれば、第3部分が配置される第2の面を有していなくてもよい。たとえば、図27に示すように、第1の面を有する基板とは異なる基板に第3部分が配置される第2の面を設けてもよい。