JP2012198222A - 向上したフォトニック結晶構造センサ - Google Patents
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Abstract
【課題】音響センサおよび音響センサの製造方法を提供する。
【解決手段】音響センサは、少なくとも1つのフォトニック結晶構造と、この少なくとも1つのフォトニック結晶構造に光学的に結合された端部を有する光ファイバとを含む。音響センサはさらに、上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造および光ファイバに機械的に結合された構造部分を含む。上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造、光ファイバおよび構造部分は、音響センサの周波数応答が音響周波数の範囲内で全体的に平坦となるように、ある体積を有する領域と実質的に境をなす。
【選択図】図1
【解決手段】音響センサは、少なくとも1つのフォトニック結晶構造と、この少なくとも1つのフォトニック結晶構造に光学的に結合された端部を有する光ファイバとを含む。音響センサはさらに、上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造および光ファイバに機械的に結合された構造部分を含む。上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造、光ファイバおよび構造部分は、音響センサの周波数応答が音響周波数の範囲内で全体的に平坦となるように、ある体積を有する領域と実質的に境をなす。
【選択図】図1
Description
優先権主張
この出願は、2007年1月9日に出願された米国仮特許出願番号第60/879,465号の利益を主張し、引用によってその全体が本願明細書に援用され、また2007年10月23日に出願された米国仮特許出願番号第61/の利益を主張し、引用によってその全体が本願明細書に援用される。
この出願は、2007年1月9日に出願された米国仮特許出願番号第60/879,465号の利益を主張し、引用によってその全体が本願明細書に援用され、また2007年10月23日に出願された米国仮特許出願番号第61/の利益を主張し、引用によってその全体が本願明細書に援用される。
発明の背景
発明の分野
この出願は概してセンサシステムに関し、より特定的には光ファイバ互換のセンサシステムに関する。
発明の分野
この出願は概してセンサシステムに関し、より特定的には光ファイバ互換のセンサシステムに関する。
関連技術の説明
光ファイバ音響センサは、従来の音響センサよりも利点が多いことを大きな理由として、1970年代の最初の出現から大規模に研究されてきた(たとえばJ.Acoust.Soc.Am 第62巻、1136(1977年)のJ.H.コール(J.H.Cole)、R.L.ジョンソン(R.L.Johnson)、P.G.ブータ(P.G.Bhuta)による「音の光ファイバ検出(Fiber-Optic detection of sound)」;J.Acoust.Soc.Am 第62巻、1302(1977年)のJ.A.ブカーロ(J.A.Bucaro)、H.D.ダーディ(H.D.Dardy)およびE.F.カローム(E.F.Carome)の「光ファイバ水中聴音機(Fiber-Optic hydrophone)参照)。これらの利点には、小型かつ軽量であること、化学的かつ/または電気的に苛酷な環境で動作する能力、多数のセンサを一緒に多重化することの容易性、ならびにデータ伝送および処理のための光ファイバ網との互換性、が含まれる。
光ファイバ音響センサは、従来の音響センサよりも利点が多いことを大きな理由として、1970年代の最初の出現から大規模に研究されてきた(たとえばJ.Acoust.Soc.Am 第62巻、1136(1977年)のJ.H.コール(J.H.Cole)、R.L.ジョンソン(R.L.Johnson)、P.G.ブータ(P.G.Bhuta)による「音の光ファイバ検出(Fiber-Optic detection of sound)」;J.Acoust.Soc.Am 第62巻、1302(1977年)のJ.A.ブカーロ(J.A.Bucaro)、H.D.ダーディ(H.D.Dardy)およびE.F.カローム(E.F.Carome)の「光ファイバ水中聴音機(Fiber-Optic hydrophone)参照)。これらの利点には、小型かつ軽量であること、化学的かつ/または電気的に苛酷な環境で動作する能力、多数のセンサを一緒に多重化することの容易性、ならびにデータ伝送および処理のための光ファイバ網との互換性、が含まれる。
光ファイバの端部に光学的に対応することができる、さまざまな形の生物学的、化学的、および機械的なセンサ(音響センサまたは圧力センサなど)は、医療用途およびセキュリティ用途に役立つことができる。これらのセンサのサイズが小さいこと(たとえば直径125μm)自体によって、たとえば組織または血管を貫通し、または小さいサイズが重要になる場所に配置されるように用いることができる。さらに、ファイバ端部におけるフィルタ、ミラーおよび偏光子などの光学装置は、ファイバ通信用途に極めて有用であり得る。
海底の石油探索および高機能の井戸などのいくつかの重要な用途では、より高感度でより小型のファイバセンサに対する需要が、近年の研究努力の背後で強い駆動力となってきた。音響ファイバセンサの現在の限界は高感度とするために長いファイバを必要とすることであり、そのために嵩張り、数百Hzより高い周波数に反応しないほど弱くなっている。
ファブリペロー干渉キャビティの2つのミラーの相対変位に基いて音響圧力測定値を与えるさまざまな光ファイバセンサシステムが以前に開示されている。たとえば、J.Intelligent Mat'l Systems and Structures 第14巻、409−414ページ(2003年7月)のM.ユー(M.Yu)らの「光ファイバセンサシステムを用いた音響測定(Acoustic Measurements Using a Fiber Optic Sensor System)」;J.Micromech.Microeng. 第15巻、71−75ページ(2005年)のK.トツ(K.Totsu)らの「白色光干渉計を用いた超小型光ファイバ圧力センサ(Ultra-Miniature Fiber-Optic Pressure Sensor Using White Light Interferometry)」;Optics Lett.の第1巻1号、30−31ページ(1980年1月)のW.B.スピルマン ジュニア(W.B.Spillman Jr)らの「動く光ファイバ水中聴音機(Moving Fiber-Optic Hydrophone)」;2004年1月5−8日、ネバダ州リノ(Reno, Nevada)における第42回AIAA航空宇宙科学会議および展覧会(42ndAIAA Aerospace Sciences Meeting and Exhibit)のK.カーダーベル(K.Kardirvel)らの「航空音響測定用MEMS光学マイクロホンの設計および特性記述(Design and Characterization of MEMS Optical Microphone for Aeroacoustic Measurement)」;J. Acoust. Soc. Am. 第118巻第3号パート1、1406−1413ページ(2005年9月)のJ.A.ブカーロ(J.A.Bucaro)らの「小型で高機能かつ低コストな光ファイバマイクロホン(Miniature, High Performance, Low-Cost Fiber Optic Microphone)」;Appl. Optics 第44巻16号、312−3196ページ(2005年6月1日)のT.K.ガンゴパディ(T.K.Gangopadhyay)らの「外因性ファブリペロー干渉キャビティのモデリングおよび分析(Modeling and Analysis of an Extrinsic Fabry-Perot Interferometer Cavity)」、および、カリフォルニア州モントレー(Monterey, California)、1992年1月29−31日、第8回光ファイバセンサ会議議事録(Proceedings of 8th Optical Fiber Sensors Conference)354−357ページのP.J.カズメンコ(P.J.Kuzmenko)の「小型ファブリペロー光ファイバ水中聴音機の試験的性能(Experimental Performance of a Miniature Fabry-Perot Fiber Optic Hydrophone)」を参照されたい。
フォトニック結晶スラブ(PCS)は、空間的、周期的に変動する屈折率を有するフォトニック結晶構造である。PCSは導波共鳴光学モード(guided resonance optical modes)を示し、導波共鳴光学モードはPCS内にしっかりと閉じ込められる(confined)が、屈折率が周期的に変動するので、位相一致機構を通して入射放射光に結合される。これらの導波共鳴モードは、典型的には、円滑に変動する背景上に重なる急峻なファノ線形(Fano lineshapes)として、透過または反射スペクトルにおいて明らかである。たとえば、Appl. Phys. Lett. 第70巻、1438ページ(1997年)のM.カンスカー(M.Kanskar)らの「二次元フォトニック格子を備えたエアブリッジ半導体導波管における漏洩スラブモードの観察(Observation of leaky slab modes in an air-bridged semiconductor waveguide with a two-dimensional photonic lattice)」;J. Lightwave Technol. 2050ページ(1999年)のV.N.アストラトフ(V.N.Astratov)の「フォトニックバンド構造の導波管への近赤外線放射の共鳴結合(Resonant coupling of near-infrared radiation to photonic band structure waveguides);および、Phys. Rev. B、第65巻235112ページ(2002年)のS.ファン(S.Fan)およびJ.D.ジョアノプロス(J.D. Joannopoulos)の「フォトニック結晶スラブにおける導波共鳴の分析(Analysis of guided resonances in photonic crystal slabs)」を参照されたい。このような導波共鳴モードは、以前には発光ダイオードおよびレーザにおいて光学フィルタまたはミラーとして用いられてきた。
J.Acoust.Soc.Am 第62巻、1136(1977年)のJ.H.コール(J.H.Cole)、R.L.ジョンソン(R.L.Johnson)、P.G.ブータ(P.G.Bhuta)による「音の光ファイバ検出(Fiber-Optic detection of sound)」
J.Acoust.Soc.Am 第62巻、1302(1977年)のJ.A.ブカーロ(J.A.Bucaro)、H.D.ダーディ(H.D.Dardy)およびE.F.カローム(E.F.Carome)の「光ファイバ水中聴音機(Fiber-Optic hydrophone)
発明の概要
特定の実施例において、音響センサが提供される。音響センサは、少なくとも1つのフォトニック結晶構造を含む。音響センサはさらに、上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造に光学的に結合された端部を有する光ファイバを含む。音響センサはさらに、上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造および光ファイバに機械的に結合された構造部分を含む。上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造、光ファイバおよび構造部分は、音響センサの周波数応答が音響周波数の範囲において全体的に平坦となるように、ある体積を有する領域と実質的に境をなす。
特定の実施例において、音響センサが提供される。音響センサは、少なくとも1つのフォトニック結晶構造を含む。音響センサはさらに、上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造に光学的に結合された端部を有する光ファイバを含む。音響センサはさらに、上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造および光ファイバに機械的に結合された構造部分を含む。上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造、光ファイバおよび構造部分は、音響センサの周波数応答が音響周波数の範囲において全体的に平坦となるように、ある体積を有する領域と実質的に境をなす。
特定の実施例において、音響センサの製造方法が提供される。この方法は、少なくとも1つのフォトニック結晶構造を与えることを含む。この方法はさらに、光ファイバの端部を上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造に光学的に結合することを含む。この方法はさらに、構造部分を与えるとともにこの構造部分を上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造および光ファイバに機械的に結合することを含む。上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造、光ファイバおよび構造部分は、音響センサの周波数応答が音響周波数の範囲内で全体的に平坦となるように、ある体積を有する領域と実質的に境をなす。
特定の実施例において、音響センサが提供される。音響センサは、少なくとも1つのフォトニック結晶構造を含む。音響センサはさらに、上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造に光学的に結合された端部を有する光ファイバを含む。音響センサはさらに、上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造および光ファイバに機械的に結合された構造部分を含む。上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造、光ファイバおよび構造部分は、音響センサの感度が、20kHz未満の音響周波数の範囲において約100μPa/Hz1/2より良好となるように、ある体積を有する領域と実質的に境をなす。
特定の実施例において、音響センサの製造方法が提供される。この方法は、少なくとも1つのフォトニック結晶構造を与えることを含む。この方法はさらに、光ファイバの端部を上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造に光学的に結合することを含む。この方法はさらに、構造部分を与えるとともにこの構造部分を上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造および光ファイバに機械的に結合することを含む。上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造、光ファイバおよび構造部分は、音響センサの感度が20kHz未満の音響周波数の範囲において約100μPa/Hz1/2より良好となるように、ある体積を有する領域と実質的に境をなす。
特定の実施例において、音響センサの製造方法が提供される。この方法は、少なくとも1つのフォトニック結晶構造を与えることを含む。この方法はさらに、光ファイバの端部を上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造に光学的に結合することを含む。この方法はさらに、構造部分を与えるとともにこの構造部分を上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造および光ファイバに機械的に結合することを含む。上記少なくとも1つのフォトニック結晶構造と光ファイバの端部との間の距離は、音響センサの温度安定性を向上させるように選択される。
特定の実施例において、光学的構造を光ファイバの上に製造する方法が提供される。この方法は、光ファイバの端部を準備することを含む。この方法はさらに、層を上記光ファイバの端部の上に形成することを含む。この方法はさらに、上記層をパターニングして上記光学的構造を形成することを含む。
特定の実施例において、フォトニック結晶構造の製造方法が提供される。この方法は、第1の誘電体層を光ファイバの端部に形成することを含む。この方法はさらに、犠牲層を第1の誘電体層の少なくとも一部の上に形成することを含む。この方法はさらに、第2の誘電体層を犠牲層の上に形成することを含む。この方法はさらに、第1の誘電体層をパターニングして第1のフォトニック結晶スラブを形成することを含む。この方法はさらに、第2の誘電体層をパターニングして第2のフォトニック結晶スラブを形成することを含む。この方法はさらに、犠牲層を除去することを含む。
例としての実施例の詳細な説明
圧電変換器のQ因子(quality factors)に匹敵する感度を達成するのに十分なQ因子を有する現代の光学的共鳴器は、典型的には、製作、設置、整列、および動作するには大きくて、非実用的である。対照的に、本願明細書に記載された一定の実施例は、これらの従来の光学キャビティのアパーチャとは桁違いに小さいアパーチャを有するフォトニック結晶スラブ(PCS)構造で形成された光学的共鳴器ベースの音響センサを含む。このような一定の実施例の小型性により、約10kHzより大きな周波数については、圧電気変位センサおよび容量性変位センサの感度に匹敵する感度がもたらされる。1対のPCSを含むフォトニック結晶構造は、ノッチフィルタならびに帯域透過および反射フィルタをもたらすために用いることができ、このような構造は、さまざまな用途(たとえば石油探索、海中音波検出)に互換性を有する音響センサシステムにおいて利用することができる。
圧電変換器のQ因子(quality factors)に匹敵する感度を達成するのに十分なQ因子を有する現代の光学的共鳴器は、典型的には、製作、設置、整列、および動作するには大きくて、非実用的である。対照的に、本願明細書に記載された一定の実施例は、これらの従来の光学キャビティのアパーチャとは桁違いに小さいアパーチャを有するフォトニック結晶スラブ(PCS)構造で形成された光学的共鳴器ベースの音響センサを含む。このような一定の実施例の小型性により、約10kHzより大きな周波数については、圧電気変位センサおよび容量性変位センサの感度に匹敵する感度がもたらされる。1対のPCSを含むフォトニック結晶構造は、ノッチフィルタならびに帯域透過および反射フィルタをもたらすために用いることができ、このような構造は、さまざまな用途(たとえば石油探索、海中音波検出)に互換性を有する音響センサシステムにおいて利用することができる。
本願明細書に記載された一定の実施例は、単一モードのファイバの金属被膜または誘電体被膜された反射端部の近傍にフォトニック結晶スラブ(PCS)を配置することにより形成される、外部ファイバファブリペロー(FP)干渉計ベースの新規なファイバ音響センサを与える。このような一定の実施例は、非常に小さく(たとえば、約0.5ミリメートル×約0.5ミリメートル×約0.1ミリメートル)、高周波(たとえば100kHz以上)まで動作する、著しく高感度な音響センサを与える。ファイバFP音響センサは一定の単調レーザを有する実施例において問い合わせされている。音波がPCS上に入射すると音響周波数においてPCSが偏向し、それによりPCSとミラーリングされたファイバ端部との間の間隔が変調される。この間隔変調は、FP干渉計によって反射されたレーザパワーの変化として検出される。一定の実施例において外部ミラーとしてPCSを使用することにより、気体(たとえば空気)中でも液体(たとえば水)中でも入射音波に応答して容易に動く、軽量のメンブレンを与える。一定の実施例はまた、本願明細書に詳述されるように、高感度のために有利に用いられる高反射率を与える。このような一定のファイバFP音響センサは、他の報告されている低フィネスの小型ファイバFPセンサ(たとえば、J. Micromech. Microeng 第15巻、71−75ページ(2005年)の、K.トーツ(K.Totsu)、Y.ハガ(Y.Haga)、M.エサシ(M.Esashi)の「白色光干渉計を用いた超小型光ファイバ圧力センサ(Ultra-miniature fiber-optic pressure sensor using white light interferometry)」参照)よりも有利に高感度であり得る。他の反射媒体ベースのFPセンサと比較して、PCSを利用する一定の実施例は、非常に薄いことおよび大量生産可能であるという利点を併せ持ち、かつ高反射率(たとえば99%超)であり、そのために高感度でもある。
PCS構造は、以前には多層誘電性スタックと同じ方法でフィルタおよびミラーとして用いられてきた。しかしながら、PCS構造は多層ミラーに比べていくつかの利点を有する。その利点は、単一の誘電体層であり、マイクロ電子機械システム(MEMS)と互換性をもち、多層スタックでは達成困難または達成不可能な、幾何学的パラメータを介して制御され得る独自の特性を有することを含むが、これらに限定されない。たとえば、PCS構造は、広範囲の波長について高反射率(たとえば約30ナノメートル超の範囲の波長において99%超の透過率で消滅を観測)を有し得、テレコム波長(たとえば1540ナノメートル)において急峻な共鳴が観測されて約5000のQ因子を有する効率的なフィルタとして用いることができる。さらに、PCS構造は、平面偏光をスピン偏極した成分に分離する、円偏光ビームスプリッタとして用いることができる。さらに、小さな構造複屈折が導入されるにもかかわらず、PCS構造は、4分の1波長のリターダに基づくデュアル偏光ビームスプリッタ(dual quarter-wave retarder-based polarizing beam splitter)の役割をすることができ、それは反射および透過を通じて到来波を2つの直交する偏光に等しく分離する。
図1は、概略的に本願明細書に記載された一定の実施例と互換である音響センサ10の一例を示す。音響センサ10は、共鳴振動数および共鳴線形を備えた少なくとも1つの光学共鳴を有する少なくとも1つのフォトニック結晶構造20を含む。音響センサ10は、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20を実質的に囲み、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20に機械的に結合されたハウジング30をさらに含む。少なくとも1つのフォトニック結晶構造20の共鳴振動数および共鳴線形の少なくとも1つは、ハウジング30に入射する音波40に反応する。図1に示されるように、一定の実施例では、音響センサ10は、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20に光学的に結合された光ファイバ50をさらに含む。
単一PCS構造
一定の実施例では、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20はPCS70を含み、その例が図2Aに概略的に示される。PCS70はPCS70内に第1の材料72および領域74のアレイを含む。領域74は、第1の材料72の屈折率とは異なる屈折率を有する第2の材料76を含む。図2AのPCS70は、厚さTおよび実質的に平坦な構成を有する。
一定の実施例では、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20はPCS70を含み、その例が図2Aに概略的に示される。PCS70はPCS70内に第1の材料72および領域74のアレイを含む。領域74は、第1の材料72の屈折率とは異なる屈折率を有する第2の材料76を含む。図2AのPCS70は、厚さTおよび実質的に平坦な構成を有する。
一定の実施例では、第1の材料72は固体誘電材料を含み、その例は、シリコン、シリカ、シリコン窒化物、セラミックスおよびプラスチックを含むがこれらに限定されない。一定の実施例では、第1の材料72は固体半導体材料を含み、その例は、シリコン、ゲルマニウム、リン化インジウム、砒化ガリウム、または他のIII−V半導体を含むがこれらに限定されない。一定の実施例では、第2の材料76は気体(たとえば空気)を含む。一定の実施例では、第2の材料76は流体を含み、その例は、水、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールおよび他のアルコールを含むが、これらに限定されない。
一定の実施例では、PCS70の厚さTは、約100ナノメートルから約1000ナノメートルの範囲にある。一定の実施例ではPCS70は実質的に正方形の形状を有する一方で、他の実施例では、PCS70は実質的に円形、長方形、六角形、楕円、または他の形状を有する。
一定の実施例では、領域74は、PCS70と実質的に平行な方向に沿った最大幅が約100ナノメートルから約1500ナノメートルの範囲である。一定の実施例では、領域74は実質的に円形の形状を有する一方で、一定の他の実施例では、領域74は実質的に楕円、長円形、正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、半円形、または他の形状である。
一定の実施例では、領域74のアレイは実質的に2次元的に周期的な分布を有する。一定の実施例ではPCS70にほぼ平行な2つの異なる方向における分布の周期性は実質的に同じである一方で、一定の他の実施例では周期性は異なっている。一定の実施例では、最も隣接した領域74間の中央から中央までの距離は約100ナノメートルから約1550ナノメートルの範囲にある。一定の実施例では、領域74のアレイの実質的に2次元的に周期的な分布は正方形である一方で、一定の他の実施例では、実質的に2次元的に周期的な分布は、長方形、三角形、正方形、菱形、傾斜型、または六角形である。他の実質的に2次元的に周期的な分布も、本願明細書に記載された一定の実施例と互換である。
一定の実施例では、領域74は、PCS70の厚さを少なくとも部分的に通して延在し、第2の材料76を包含し、PCS70内で実質的に2次元的に周期的な分布を有する、複数の孔を含む。たとえば、図2Aは、本願明細書に記載された一定の実施例に従って、PCS70の厚さ全体を通して延在し、実質的に正方形の分布を有する、実質的に円形の孔を含む領域74のアレイを有するPCS70の一例を概略的に示す。図2Bは、450ナノメートルの厚さのシリコン上に製作されたこのようなPCS70の一例の一部分の走査電子顕微鏡写真を示す。図2Cは、本願明細書に記載された一定の他の実施例に従って、PCS70の厚さTの一部のみを通して延在し、そのためPCS70の厚さTより小さい深さDを有する実質的に円形の孔を含む領域74の実質的に正方形のアレイを有するPCS70の別の例を概略的に示す。
図2Dは、本願明細書に記載された一定の他の実施例に従って、PCS70と実質的に平行な面で実質的に円形の断面を有する突起78(たとえばピラー)の実質的に正方形の分布を有するPCS70の別の例を概略的に示す。突起78は、PCS70の上に約100ナノメートルから約1000ナノメートルの範囲の高さHを有する。一定の実施例では高さHは厚さTより大きい一方で、一定の他の実施例では高さHは厚さT以下である。一定の実施例では突起78はPCS70の基礎をなす部分が含む材料と同じ材料を含む一方で、一定の他の実施例では突起78は異なる材料を含む(たとえばPCS70がシリコン酸化物を含む一方で突起78はシリコンを含む)。一定の実施例では、PCS70は誘電材料(たとえばシリコン、シリカ、シリコン窒化物、セラミックス、プラスチック)または半導体材料(たとえばシリコン、ゲルマニウム、リン化インジウム、砒化ガリウムまたは他のIII−V半導体)を含む。一定の実施例では、突起78は誘電材料(たとえばシリコン、シリカ、シリコン窒化物、セラミックス、プラスチック)または半導体(たとえばシリコン、ゲルマニウム、リン化インジウム、砒化ガリウムまたは他のIII−V半導体)を含む。突起78の他の形状、大きさおよび分布も、本願明細書に記載された一定の実施例と互換である。
図2Eおよび図2Fは、実質的に1次元的に周期的な分布(たとえば一次元のグレーティング)を備えた複数の細長い領域74を有するスラブ70の他の例の断面図を概略的に示す。図2Eおよび図2Fでは、領域74は、断面図に実質的に直交する方向に延在する。一定の実施例では、隣接する領域74間の間隔は、約100ナノメートルから約1550ナノメートルの範囲にある。一定の実施例では、領域74の幅は、約100ナノメートルから約1500ナノメートルの範囲にある。一定の実施例では、隣接する領域74間の中央から中央までの間隔は、約100ナノメートルから約1550ナノメートルの範囲にある。
図2Eに概略的に示されるように、一定の実施例では、PCS70は第1の材料(たとえばシリカ、シリコン酸化物またはシリコン窒化物などの誘電材料)を含み、領域74はPCS70内で第2の材料76(たとえば空気または水)を含む樋または溝80を含む。一定の実施例では、溝80はPCS70の厚さT全体を通して延在する一方で、一定の他の実施例では、溝80はPCS70の厚さTの一部のみを通して延在する。溝80の深さDは約10ナノメートルから約1000ナノメートルの範囲にある。一定の実施例では、溝80は、PCS70に実質的に直交する面で、ほぼ正方形、台形、湾曲型、「U」型、または三角形の断面を有する。溝80の他の形状および大きさも本願明細書に記載された一定の実施例と互換である。
一定の他の実施例では、図2Fに概略的に示されるように、領域74はPCS70上に約10ナノメートルから約1000ナノメートルの範囲の高さHを有する突起82を含む。一定の実施例の突起82はPCS70の基礎をなす部分が含む材料と同じ材料を含む一方で、一定の他の実施例では、突起82は第1の材料72とは異なる材料を含む(たとえばPCS70はシリコン酸化物を含む一方で突起82はシリコンを含む)。一定の実施例では、PCS70は誘電材料(たとえばシリコン、シリカ、シリコン窒化物、セラミックス、プラスチック)または半導体材料(たとえばシリコン、ゲルマニウム、リン化インジウム、砒化ガリウムまたは他のIII−V半導体)を含む。一定の実施例では、突起82は誘電材料(たとえばシリコン、シリカ、シリコン窒化物、セラミックス、プラスチック)または半導体材料(たとえばシリコン、ゲルマニウム、リン化インジウム、砒化ガリウムまたは他のIII−V半導体)を含む。一定の実施例では、突起82は、PCS70に実質的に直交する面で、ほぼ正方形、台形、湾曲型、「U」型、または三角形の断面を有する。突起82の他の形状および大きさも本願明細書に記載された一定の実施例と互換である。
一定の実施例では、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20は、共鳴振動数および共鳴線形を有する少なくとも1つの光学共鳴を示す単一のPCS70を含む。図3A−図3Cは、PCS70に実質的に直交する方向で入射する光についてシミュレートされた透過光パワースペクトル(右側に示される)における光学共鳴を示す例としてPCS70(左側に示される)を概略的に示す。図3A−図3Cでは、光学共鳴は透過された光パワースペクトルにおける落下点として示される。図3A−図3Cでシミュレートされている透過光パワースペクトルの水平軸の単位は(c/a)であり、ここでcは真空における光速度、aはPCS70の格子定数(たとえば孔の中央から中央までの間隔)である。図3Aは力が加えられていないPCS70を示し、図3Bは圧縮力が与えられたPCS70を示し、図3Cは拡張力または伸張力が与えられたPCS70を示す。図3Aおよび図3Bの比較によって示されるように、圧縮力は光学共鳴の周波数を高い周波数へとシフトする。図3Aおよび3Cの比較によって示されるように、拡張力は光学共鳴の周波数を低い周波数へとシフトする。
図4Aは、PCS70の一例の、1300ナノメートルから1600ナノメートルの波長範囲にわたる反射率を示す。反射率は約120ナノメートルの帯域幅において99%超である。このような測定値は、効率的な偏光独立したミラーとしてPCSを用いることができることを示す。図4Bは、PCS70の一例に実質的に直交して入射する光について測定された共鳴波長シフトを温度の関数として概略的に示す。約25°Cの温度T0については共鳴波長は約1431ナノメートルであり、約450°Cの温度T1については共鳴波長は約1434ナノメートルであり、約800°Cの温度T2については共鳴波長は約1436ナノメートルである。PCS70の温度を変えることによって、熱膨張によってジオメトリが変えられ、誘電率も変えられて、その両方が共鳴波長のシフトの一因となる。
図5は、PCS70の一例に実質的に直交した入射光についての共鳴波長シフトをPCS70に加えられた機械力の関数として示す。図5に示された測定値においては、PCS70の一例の一方端は静止位置に固定して取付けられ、PCS70の他方端は4ボルトのピークピーク電圧を用いて4.7kHzで振動する圧電発振器に取付けられていた。一定の音響パワーについての異なる光学波長に対する光パワーの変化の相対感度は、PCS70の光学透過スペクトルの勾配にほぼ従っている。
図6に概略的に示される実験的装置におけるPCS70についても同様の挙動が観察された。図6に示されるように、1センチメートルの長さのPCS70の一方端82は静止位置に(たとえばエポキシ樹脂によって)固定して取付けられ、他方端84は、PCS構造の周波数を減じるために用いられる移動可能な片持梁の一方端に(たとえばエポキシ樹脂によって)固定して取付けられていた。片持梁に面し、片持梁から約3センチメートルの間隔があるオーディオスピーカ86は、10ボルトのピークピーク電圧を用いて約500Hzで振動していた。
図7Aおよび図7Bは、本願明細書に記載された一定の実施例に従って、単一のPCS70を含むフォトニック結晶構造20を有する音響センサ10の一例を概略的に示す。PCS70は、第1の端部92が静止位置に固定して取付けられ、第2の端部94が可動メンブレン96に固定して取付けられている。一定の実施例では、メンブレン96はハウジング30の部分である。光ファイバ50は、PCS70に実質的に直交する方向の光でPCS70を照射するよう位置決めされる。一定の実施例では、PCS70によって反射された光が光ファイバ50に再び入って光学センサ(示されない)によって検出される一方で、一定の他の実施例では、PCS70を通して透過された光が光学センサ(示されない)によって検出される。一定の実施例では、メンブレン96に入射する音波40を(たとえばPCS70を伸張し圧縮することによって)PCS70面に力(たとえば歪み)を引起し、それによりPCS70の共鳴振動数および共鳴線形の少なくとも1つを、反射スペクトル、透過スペクトルのいずれかまたは両方によって検出されるように、シフトする。一定の他の実施例では、PCS70は、メンブレン96に入射する音波40がPCS70を曲げることによりPCS70に歪みを引起すように、メンブレン96に取付けられる。一定のこのような実施例において、共鳴についての測定されたQ因子は約2500から3000である。一定のこのような実施例において、音響センサ10の対応する感度は約1マイクロパスカル/Hz1/2であり、ダイナミックレンジは、PCS70の降伏強度によって約50デシベルに制限される。例としての実施例では、PCS70に加えられた約1×10-5の理論的な歪みは、約1550ナノメートルの波長で透過されたパワーの10-3の変化を引起す。
二重PCS構造
一定の実施例では、図8に概略的に示されるように、フォトニック結晶構造20は第1のPCS100、および第1のPCS100と実質的に平行な第2のPCS102を含む。これらのPCS100、102の各々は、単一のPCS構造について上述されたような物理的なパラメータ(たとえば厚さ、領域サイズ、材料、周期性、分布)を有し得る。
一定の実施例では、図8に概略的に示されるように、フォトニック結晶構造20は第1のPCS100、および第1のPCS100と実質的に平行な第2のPCS102を含む。これらのPCS100、102の各々は、単一のPCS構造について上述されたような物理的なパラメータ(たとえば厚さ、領域サイズ、材料、周期性、分布)を有し得る。
一定の実施例では、第1のPCS100と第2のPCS102との間には物理的接触はない。第1のPCS100および第2のPCS102は、入射音波40に応答して互いに対して変位を受けることができる。一定の実施例では、光は、PCS100、102に実質的に直交する方向で第1のPCS100および第2のPCS102に入射する。一定の実施例では、図8に概略的に示されるように、光ファイバ50によって光が与えられる一方で、一定の他の実施例では、光はPCS100、102の照射に先立って平行にされる。
図9は、(たとえば図8に示されたような)1対のPCSを含むフォトニック結晶構造20から測定したさまざまな正規化透過スペクトルのプロットであり、各透過スペクトルは2つのPCS間の異なる手動の変位に対応する。図9で測定される透過スペクトルは、互いに近接した2つのPCSおよび2つのスラブ間の変位を手動で変えるためのミクロンアクチュエータを用いることによって得られた。図9に見ることができるように、一対のPCSは、共鳴振動数および共鳴線形を各々有する光学共鳴を示し、かつその共鳴振動数および共鳴線形の両方が2つのPCS間の相対的位置の変化に応答する。図9に示されるように、一対のPCSの共鳴の一例は、約1377ナノメートルの中央波長で約50ナノメートルのチューニング帯域幅を有する。この共鳴は音響センサシステムで用いられるのに十分に急峻である(たとえば25dBのピークフロア比で約0.5THz)。さらに高感度の音響センサシステムで用いられるようなより急峻な共鳴のPCS構造を設計するために、理論計算を用いることができる。
一対のPCSの共鳴振動数および共鳴線形は両方とも、2つのPCS間の垂直距離の変化および2つのPCSの相対的な横向きの変化に依存する。2つのPCSは単一のPCSの光学的挙動と同様の光学的挙動を示し、フォトニック結晶構造のジオメトリ特性および光学的特性は、相対変位を通じて調整することができる。その全体が引用によって本願明細書に援用される米国特許出願公報番号第US2004/0080726A1では、入射光の周波数の関数としての、および2つのPCS間の変位の関数としての、1対のPCSについての透過スペクトルの計算(たとえば一時的な結合モードの理論計算および有限差分時間領域シミュレーション)を開示する。これらの計算は、図9に示される挙動を複製する。
一定の実施例では、2つのPCSは互いに十分に近づけられ、そのため互いに近接場で光学的に結合される(本願明細書で近接場構成と呼ばれる)。一定の実施例では、2つのPCSは互いに間隔を空けて配置され、その結果、PCSが互いに光学的に結合されずにキャビティを形成する(本願明細書でファブリペロー構成と呼ばれる)。ファブリペロー構成または近接場構成において、光学共鳴は、2つのPCS間の変位が変わると周波数(または波長)がシフトする。したがって、所定の周波数(または波長)で透過パワー(または反射パワー)を測定することによって、2つのPCS間の変位量を検出することができる。一般に、近接場構成はファブリペロー構成よりも大きな周波数(または波長)の変位を生じ、その結果、近接場構成はファブリペロー構成よりも変位に対する感度が高い。
2つのPCSが近接場構成で光学的に結合される一定の実施例では、光学共鳴は2つの共鳴に分割される。分割の量は、一定の実施例においては変位の基準を与える、2つのPCS間の変位に応じて異なる。図10A−図10Cは、第1のPCS100および第2のPCS102を含むフォトニック結晶構造20の共鳴振動数の依存性を概略的に示す。図10Aでは、透過スペクトルが単一の光学共鳴モードを有する単一のPCS70が概略的に示される。図10Bでは近接場構成で結合される1対のPCS100、102が概略的に示され、透過スペクトルは互いから分離された周波数を有する1対の光学共鳴モードを有する。図10Cでは、1つまたは両方のPCSがPCSに実質的に直交する方向に変位され、その結果、2つのPCS100、102間の距離が減少して、それにより2つのモードの周波数間の分離が増大するよう2つのモードの周波数をシフトする。
2つのPCSが近接場構成に結合される一定の実施例では、図11に概略的に示されるように、PCSに実質的に平行な方向にPCSどうしが互いに相対して横向きに変位されると、付加的な共鳴が透過スペクトルに現れる。より完全に下記に説明されるように、これらの共鳴は、非縮退共鳴に入射光が結合されることを可能にする、二重PCS構造の鏡面対称を破壊することにより生じる。これらの付加的な共鳴では、周波数(または波長)が2つのPCS間の垂直の変位の関数としてシフトする。これらの付加的な共鳴では周波数(または波長)がシフトし、その線形(たとえば線幅)もまた、2つのPCSに平行な横向きの変位の関数として変わる。一定の実施例では、2つのPCSを光学的に結合することによって、これらの付加的な共鳴の線幅および周波数を、PCSに直交する変位とPCSに平行な変位との2つのPCS間の変位によって有利に動的に調整することができる。一定の実施例では、2つのPCS間のサブオングストローム変位(PCSに直交または平行)により、感度のよい共鳴波長で透過パワーまたは反射パワーにおいて検知可能な変化が導かれる。一定の実施例では、PCSにほぼ平行な方向にPCSをシフトするのに電気発動を用いることができ、共鳴振動数を用いると、PCS間の音波に引起される変位によりPCSにほぼ直交する方向にシフトする。このような一定の実施例が音響センサシステムで有利に用いられる。
ファイバー適合性
典型的な光学共鳴器またはフィルタの急峻な共鳴は光の入射角に敏感である。典型的には、この入射角への感度を回避するために、入射光は平面波に接近するよう平行にされる。光源として光ファイバを用いると、光ファイバによって放射された光は一定の角度分布を有し、これは典型的には付加的な視準光学および付加的なファイバツーファイバ結合ハードウェアを用いて、現代の光学共鳴器のために平行にされる。
典型的な光学共鳴器またはフィルタの急峻な共鳴は光の入射角に敏感である。典型的には、この入射角への感度を回避するために、入射光は平面波に接近するよう平行にされる。光源として光ファイバを用いると、光ファイバによって放射された光は一定の角度分布を有し、これは典型的には付加的な視準光学および付加的なファイバツーファイバ結合ハードウェアを用いて、現代の光学共鳴器のために平行にされる。
対照的に、本願明細書に記載される一定の実施例は、ある範囲の入射角にわたる光学ビームの入射角に実質的に依存しない、1つ以上の共鳴を有する。このような一定の実施例において、光ファイバによって放射された光は、PCSへの入射光の実質的に一部分(たとえば50%以上)が、このような共鳴の共鳴振動数が変らないような入射角の範囲内にあるような、角度分布を有する。このような共鳴については、共鳴の線幅も本質的に入射角に依存しない。このような角度非感受性は、平行ビームによって(たとえば平面波に接近した光によって)共鳴が励起される必要がないことを示す。
共鳴が入射角に非感受性である一定の実施例では、光ファイバによって放射された光のさまざまな角度の成分はすべて同じようにPCS構造に影響を受ける。したがって、音響センサは光が平行にされたかのようにほぼ同じように挙動する。このような一定の実施例では、共鳴が入射角に対して非感受性なので、光ファイバからの光は、光ファイバとPCS構造との間に介在する視準光学系なしに、PCS構造に直接に衝突する。このような一定の実施例では、複雑な視準要素または結合要素を用いることを有利に回避し、それによって統合およびパッケージングを単純にし、コストを低減する。
PCS構造のファイバ適合性によって、本願明細書に記載される一定の実施例は、既存の広く使用されているファイバベースの音響センサシステムに組込みやすくなっており、有利である。さらに、PCS構造が角度に対して非感受性であることにより、ファイバベースの光通信ネットワークにいくつかの種類のフィルタを組込むのが容易になっており、有利である。
実施例の一例では、TE偏光によって照らされたシリコン窒化物PCSは、約695ナノメートルの波長を備えた共鳴モードを有する。図12は、さまざまな入射角でPCSに入射するTE偏光に対応する、測定された透過スペクトルを示す。図12に示されるように、透過スペクトルは入射角に依存するさまざまな特徴を有するが、約695ナノメートルにおける共鳴モードはTE偏光の入射角に対して実質的に非感受性である。別の実施例の一例では、シリコン窒化物PCSはTM偏光によって照らされ、約770ナノメートルの波長を備えた共鳴モードを示し、この共鳴はTM偏光の入射角に対して実質的に非感受性である。
音響センサ10が(たとえば図1によって概略的に示されるような)少なくとも1つのフォトニック結晶構造20に光学的に結合された光ファイバ50をさらに含む一定の実施例では、光ファイバ50から放射された光は、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20に直交する方向から約10度以内の範囲の入射角で少なくとも1つのフォトニック結晶構造20に入射する。一定のこのような実施例において、光は、光ファイバ50から放射されてから少なくとも1つのフォトニック結晶構造20に達するまでの間に平行にされない。
光学共鳴の調整
PCSにおける一定の固有モードは無限の寿命を有し、したがって法線入射では外部の放射と分離される。したがって、フォトニック結晶を利用する現代の光学共鳴器システムでは、共鳴モードと入射波との間の対称的な不整合のために、法線入射平面波を伴う一定の共鳴(本願明細書で非縮退共鳴と呼ばれる)を結合することは一般に可能ではない。この効果は、パクラドーニ(Pacradouni)らの、Phys. Rev. B 第62巻、4204ページ(2000年)の「二次元で周期的に織込んで作られた誘電メンブレンのフォトニックバンド構造(Photonic band structure of dielectric membranes periodically textured in two dimensions)」、パドン(Paddon)およびヤング(Young)によって理論的に説明された、Phys. Rev. B 第61巻、2090ページ(2000年)の「織込まれた平坦な導波管のための二次元のベクトル結合モード理論(Two-dimensional vector-coupled-mode theory for textured planar waveguides)」で実験的に観察された。オチアイ(Ochiai)およびサコダ(Sakoda)は、Phys. Rev. B 第63巻、125107ページ(2001年)の「六角形のフォトニック結晶スラブの分散関係および光学透過率(Dispersion relation and optical transmittance of a hexagonal photonic crystal slab)」において、これらの共鳴が外部の放射との対称的な不整合によって分離されることを群論的説明を用いて示した。
PCSにおける一定の固有モードは無限の寿命を有し、したがって法線入射では外部の放射と分離される。したがって、フォトニック結晶を利用する現代の光学共鳴器システムでは、共鳴モードと入射波との間の対称的な不整合のために、法線入射平面波を伴う一定の共鳴(本願明細書で非縮退共鳴と呼ばれる)を結合することは一般に可能ではない。この効果は、パクラドーニ(Pacradouni)らの、Phys. Rev. B 第62巻、4204ページ(2000年)の「二次元で周期的に織込んで作られた誘電メンブレンのフォトニックバンド構造(Photonic band structure of dielectric membranes periodically textured in two dimensions)」、パドン(Paddon)およびヤング(Young)によって理論的に説明された、Phys. Rev. B 第61巻、2090ページ(2000年)の「織込まれた平坦な導波管のための二次元のベクトル結合モード理論(Two-dimensional vector-coupled-mode theory for textured planar waveguides)」で実験的に観察された。オチアイ(Ochiai)およびサコダ(Sakoda)は、Phys. Rev. B 第63巻、125107ページ(2001年)の「六角形のフォトニック結晶スラブの分散関係および光学透過率(Dispersion relation and optical transmittance of a hexagonal photonic crystal slab)」において、これらの共鳴が外部の放射との対称的な不整合によって分離されることを群論的説明を用いて示した。
しかしながら、測定値および群論計算は、鏡面対称を欠くPCSにおけるこれらの非縮退共鳴に結合することが可能なことを示す。より完全に下記に記載されるように、シミュレーションおよび実験結果により、このような非縮退共鳴が、実は、格子アレイの周期性を破壊することによって、または(たとえば正方格子アレイにおいて)単位セルの鏡面対称を破壊することによってPCS構造の鏡面対称を破壊することにより、確かに励起され得ることが示された。さらに、非対称性の程度(たとえばPCS構造の孔の非対称な領域サイズ)の調整により、このような共鳴の急峻性(たとえば線幅、Q因子)を制御することが可能である。一定の実施例では、これらの共鳴のQ因子は、有限最小から無限まで調整することができる。源のスペクトル線幅より急峻な共鳴は概して実際には役立たないので、一定の実施例では、(入射光の線幅によって決定されるように)有限最小から有限最大まで調整が行なわれる。
このようなPCS構造はレーザのモード選択および線幅制御に適用性を有することが期待され、音響センサシステムの感度を有利に向上させ、制御することにより、音響センサ用途での使用もできる。本願明細書に記載された一定の実施例は、他の要因によって課される限界にまで音響センサシステムの感度を有利に向上させ、その結果、PCS構造は制限的要素にならない。(たとえばダイナミックレンジを向上させるために)より低い感度が望まれるような一定の実施例では音響センサシステムの感度が低下し、その結果、PCS構造が限定要素となる。一定の実施例では、三角形の格子アレイもしくは他のいかなる格子アレイジオメトリを有するPCS構造にも、または一般にいかなる種類の光学共鳴器システムにも、鏡面対称がないように実現される。
一定の実施例では、法線入射平面波と分離される、対称構造を有するPCSの非縮退共鳴は、鏡面対称を欠くPCS構造において励起される。一定の実施例では、PCS構造の1つ以上の鏡面対称が、非縮退共鳴への結合を可能にするために破壊され、または取除かれるのが有利である。一定の実施例では、非対称の程度を選択することによってこれらの非縮退共鳴への結合が制御されるのが有利である。一定の実施例では、少なくとも1つのフォトニック結晶構造は対称軸を有し、少なくとも1つのフォトニック結晶構造に法線な入射光は対称軸に実質的に直交する方向において偏光される。一定の他の実施例では、法線入射光は対称軸と実質的に平行な方向に偏光される。
一定の実施例では、PCS構造の非対称性は、実質的に周期的な孔の分布における非対称性によって生じる。図13A−図13Dは、実質的に周期的な分布に少なくとも1つのフォトニック結晶欠陥を有するPCS構造の一例を概略的に示す。図13AのPCS構造は、孔の欠落というフォトニック結晶の欠陥を有し、このようなフォトニック結晶欠陥は水平軸および垂直軸に対して鏡面対称を有する。一定の実施例では、PCS構造は、PCS構造の他の孔と比較してサイズが減じられた、またはサイズが増大した、少なくとも1つの孔を含む。一定の実施例では、このサイズが減じられた、またはサイズが増大した孔が実質的に周期的な分布の予期された格子位置にある一方、他の実施例では予期された格子位置から変位されている。一定の他の実施例では、このサイズが減じられた、またはサイズが増大した孔は、不足している孔の位置の近傍にある。たとえば、図13Bは、欠落している孔の位置に隣接する減じられたサイズの孔を有するPCS構造を概略的に示す。図13Cは、欠落している孔位置に隣接する孔が実質的に周期的な分布の予期された格子位置からわずかにずれていることを示す。図13Dは、それ自体が鏡面対称を欠き、欠陥の役割をする孔を示す。一定の他の実施例では、PCS構造の一部の誘電率が、鏡面対称を破壊するために減じられ、または増大される。たとえば、PCS構造の孔の少なくとも1つは、第1の材料または第2の材料の屈折率とは異なる屈折率を有する第3の材料を含み得る。図13B、図13Cおよび図13Dのフォトニック結晶欠陥は、水平軸に対する鏡面対称を欠く。図13A−図13Dに概略的に示されたものに限定されず、鏡面対称を破壊するさまざまな可能性が本願明細書に記載された実施例と互換である。図13A−図13Dは複数の孔を含むPCS構造によって記載されたが、当業者は、複数の突起を含むPCS構造が同様の挙動を示すことを認識する。
図14Aおよび図14Bは、本願明細書に記載された一定の実施例と互換であるPCS構造の鏡面対称破壊(mirror-symmetry breaking)ための実現例の一例を概略的に示す。図14Aに示されるPCS構造は、水平軸および垂直軸の両方に対する鏡面対称を有する。図14Bに示されるPCS構造は水平軸に対する鏡面対称を欠く。
図15は、PCS単位セルの鏡面対称の1つ以上を破壊するかまたは取除く、いくつかの孔構造の例を概略的に示す。図15に概略的に示された構造の各々は水平軸に対する鏡面対称を欠く一方、垂直軸に対する鏡面対称を有する。図15に概略的に示される構造に加えて、本願明細書に記載された実施例と互換である孔形状が無限にある。
図16Aは、周期的正方格子分布において円形対称孔152を有するPCSの単位セル150を概略的に示す。図16Aの1点鎖線は、PCSのさまざまな鏡面対称軸154を示す。図16B−図16Eは、水平方向に偏光される平面波(x偏光)を備えたPCSおよび垂直方向に偏光される平面波(y偏光)を備えたPCSのさまざまな共鳴モードのドット積を概略的に示す。図16Bおよび図16Cに概略的に示されたドット積は0に等しくないので、これらの2つの共鳴モードは入射平面波に結合する。しかしながら、図16Dおよび図16Eに概略的に示されたドット積は0に等しいので、この共鳴モードは入射平面波に結合されず、非縮退共鳴である。
一定の実施例では、PCS構造の鏡面対称の1つ以上が破壊されるか取除かれている。このような一定の実施例では、PCSの孔の周期的なアレイの単位セルの鏡面対称の1つ以上が取除かれている。図17Aは、周期的正方格子分布において孔162を有するPCSの一例である単位セル160を概略的に示し、そこで孔162は孔162の一方側に小さな領域163を含む。図17Aの領域163はほぼ正方形である一方で、一定の他の実施例では、領域163は別の形状(たとえば三角形、長方形、不規則形状)を有している。図17Aに示されるように、「X」の印がついた水平の1点鎖線によって表示されるように、孔162は水平軸164に対する鏡面対称を有していないが、孔162は垂直軸165に対する鏡面対称を維持する。図16Aの円形対称孔150と比べると、領域163は単位セル160の鏡面対称のうちの1つを取除き、それによって非縮退共鳴の対称性を変える。図17Bおよび図17Cに概略的に示されるように、領域163は図16Dおよび図16Eに概略的に示された共鳴モードを非対称の共鳴モードに修正し、それは偶数対称共鳴モードと奇数対称共鳴モードとの合計と等しくなり得る。図17Dに概略的に示されるように、この入射平面波がy偏光である奇数対称共鳴モードのドット積は0でなく、この奇数対称共鳴モードが入射平面波に結合できることを示す。このように、非対称の孔162による共鳴モードの対称性の変化により、法線入射平面波を用いた非縮退共鳴への結合が可能になる。
一定の実施例では、非縮退共鳴への結合は、孔の非対称の程度を有利に選択することにより制御することができる。図18Dは、一方側に領域163を備えた非対称孔162を備えたPCS単位セル160を概略的に示す。非対称孔162は、PCS70に沿った1つの軸に対して鏡面対称を欠く、実質的に非対称の形状を有する。たとえば、図18Dに示されるように、孔162は、水平軸について鏡面対称が破壊され、回転対称が破壊され、PCS70に沿った垂直軸165に対して鏡面対称を有しており、垂直軸165は水平軸に実質的に直交する。図18Eは、2つの鏡面対称軸174を維持するよう位置決めされる2つの類似の領域173を有する孔172を備えたPCS単位セル170を概略的に示すが、回転対称は破壊されたままである。図18Eに対応するPCS構造は、急峻な非縮退共鳴の励起の原因が鏡面対称破壊であることを実証するために用いることができる。より完全に下記に記載されるように、(たとえば楕円孔について)回転対称だけが破壊されているPCS構造については、非縮退共鳴は法線入射平面波と分離されたままである。
図19Aおよび図19Bは、孔が延びる方向に対してそれぞれ垂直および平行な偏光について、これらの3つの異なる孔形状の透過スペクトルの有限差分時間領域シミュレーション(FDTD)を示す。図19Aおよび図19Bの透過スペクトルは、円形孔、鏡面非対称孔および回転非対称孔を有するPCS構造を通る法線入射透過に対応する。
シミュレーションは、光周波数におけるSiまたはGaAsの誘電率にほぼ対応する、誘電率12について行われた。PCS厚さは0.75aとされ、ここでαは周期構造の格子定数である。孔の円形部分の半径は0.4aとされ、方形領域の幅は0.025aとされた。図19Aおよび図19Bに見ることができるように、非縮退共鳴による付加的な急峻な特徴(矢印で示される)は、鏡面対称を欠くPCS構造にのみ存在する。これらの付加的な共鳴の各々は一方の偏光についてのみ現れて他方にはなく、それによって、これらの共鳴の非縮退の本質を実証する。
一定の実施例では、孔の非対称の大きさは所望の量の法線入射平面波への結合を与えるよう選択される。図20Aおよび図20Bは、孔が伸びる方向に対してそれぞれ垂直および平行な偏光について、これらの3つの異なる孔形状の透過スペクトルの有限差分時間領域シミュレーション(FDTD)を示す。これらの共鳴のQ因子を制御することができることを示すために、延びのサイズは0.05aにまで100%増大した。図19Aおよび図19Bと図20Aおよび図20Bとの比較によって示されるように、非縮退共鳴の強さおよび線幅は非対称の増加につれて増加する。この挙動は非対称性の増加を伴うPCS構造からも測定されている。
分析およびシミュレーションの結果が実際の構造で観察できることを実証するために、図18A、図18Dおよび図18Eにほぼ対応する3つのPCS構造が、独立のシリコンメンブレン上に製作された。図21A−図21Cは、円形対称孔、鏡面非対称孔および回転非対称孔をそれぞれ有するPCS構造の走査電子顕微鏡像である。図21D−図21Fは、それぞれ円形対称孔、鏡面非対称の孔および回転非対称の孔の走査電子顕微鏡像である。これらのSEM像の上に重ねられた円形の線により、非対称性を作り出すPCS構造の小さな孔の延びを容易に見ることができる。PCSの材料はシリコンであり、PCS厚さは約450ナノメートルであり、格子アレイの周期は約1000ナノメートルであり、孔の直径は約450ナノメートルであった。
図22Aおよび図22Bは、孔の伸張に対してそれぞれ垂直および平行な偏光のこれらの3つの異なるPCS構造について、透過スペクトルの実験的測定値を示す。3つのPCS構造のすべてにおいて矢印(DDとラベル付けされる)で示されるように、両方の偏光について急峻な二重縮退モードが観察される。矢印によっては示されない、より広い二重縮退共鳴も存在する。図22Aに示されるように、鏡面非対称のPCS構造(図21Bおよび図21Eに対応)について付加的かつ比較的急峻な共鳴があり、この共鳴は(孔の延びる方向に直交する)一方の偏光についてのみ存在し、その非縮退性を示す(NDとラベル付けされる)。対称なPCS構造(図21Aおよび図21Dに対応)の場合についてさえ、2つの偏光について透過スペクトルに小さな差異がある。この小さな差異は、PCS構造を形成するために用いる電子ビーム露光およびその後の製造工程により、格子アレイが一方向に小さく延びることによる。しかしながらこの状況は、非縮退共鳴を観察するのに不可欠ではない。
図22Aおよび図22Bに示される、測定された急峻な共鳴は、製造関連の障害によって共鳴が劣化するため、(1つの線幅の範囲において0から100%透過まで変動する)理想的な計算が変動するほどには、大きな透過範囲にわたって変動しない。本願明細書に記載された測定値は、100ミクロン×100ミクロンのサイズの比較的大きな格子アレイについてであるが、ここでは急峻な共鳴について障害の影響が重要な役割を果たし得る。有限のスポットサイズを備えた入射光の角度内容が、急峻な共鳴を劣化し得る別の影響となる。たとえばレーザ用キャビティなどの単一の欠陥キャビティについては、非縮退共鳴がはるかに支配的になり得る(たとえば0〜100%まで変動し得る)。
非縮退共鳴が鏡面非対称PCS構造(図21Bおよび図21Eに対応)にのみ現れることを示すために、図23は、より大きな波長範囲における図22Aの垂直偏光の場合の透過スペクトルを示す。これらの共鳴の性質が非縮退性であることが、その本質的に高いQ因子がリソグラフィー制御可能な簡単な幾何学的パラメータによって調整できることと合わさって、音響感知システムならびにレーザのモード選択および線幅制御のための装置を含むさまざまな用途が可能となる。このような構造は、センサ用途において極めて鋭敏なフィルタとしても用いられるであろう。
音響センサシステム
図24は、本願明細書に記載された一定の実施例と互換である音響センサシステム200の一例を概略的に示す。一定の実施例では、音響センサシステム200は、共鳴振動数および共鳴線形を備えた少なくとも1つの光学共鳴を有する少なくとも1つのフォトニック結晶構造20を含む。音響センサシステム200はさらに、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20を実質的に囲み、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20に機械的に結合されるハウジング30を含む。少なくとも1つのフォトニック結晶構造20の共鳴振動数および共鳴線形の少なくとも1つは、ハウジング30に入射する音波40に反応する。図24に示されるように、一定の実施例では、音響センサシステム200は、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20に光学的に結合される光ファイバ50をさらに含む。
図24は、本願明細書に記載された一定の実施例と互換である音響センサシステム200の一例を概略的に示す。一定の実施例では、音響センサシステム200は、共鳴振動数および共鳴線形を備えた少なくとも1つの光学共鳴を有する少なくとも1つのフォトニック結晶構造20を含む。音響センサシステム200はさらに、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20を実質的に囲み、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20に機械的に結合されるハウジング30を含む。少なくとも1つのフォトニック結晶構造20の共鳴振動数および共鳴線形の少なくとも1つは、ハウジング30に入射する音波40に反応する。図24に示されるように、一定の実施例では、音響センサシステム200は、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20に光学的に結合される光ファイバ50をさらに含む。
一定の実施例では、音響センサシステム200は、液体(たとえば海水)または他の媒体における動作と互換である。図24に概略的に示されるように、音波40は音響センサシステム200に衝突し、音響センサシステム200で検知される。
図24に概略的に示された実施例では、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20は、互いに光学的に結合されて互いの近傍にある(本願明細書で二重PCS構造と呼ばれる)2つのPCS70a、70bを含む。一定の実施例では、2つのPCS70a、70bは実質的に互いに平行である。一定の実施例では、2つのPCS70a、70bは近接場構成で互いに光学的に結合される。一定の他の実施例では、2つのPCS70a、70bはさらに離れて配置され、そのため近接場構成で光学的に結合されずに簡単なファブリペローキャビティ(すなわちファブリペロー構成)を形成する。一定の実施例では、2つのPCS70a、70bの間の垂直距離が変更されると、フォトニック結晶構造20の共鳴は周波数(および対応する波長)においてシフトする。本願明細書に記載された一定の実施例と互換であるフォトニック結晶構造20の一例は、Appl. Phys. Lett. 第82巻、第13号、1999−2001ページ(1999年)のW.スー(W.Suh)らによる「フォトニック結晶スラブにおける導波共鳴に基く変位感度のよいフォトニック結晶構造(Displacement-sensitive photonic crystal structures based on guided resonance in photonic crystal slabs)」および米国特許公報第2004/0080726号に記載され、引用によってその全体が本願明細書に援用される。
一定の実施例では、PCS70a、70bは、少なくとも1つのフォトニック結晶構造20に加えられる力に応じて、互いに対する動きを行なう(たとえば、一方の可動PCS70bが不動PCS70aに相対して動く)。図24に概略的に示された実施例では、フォトニック結晶構造20のPCS70a、70bは光ファイバ50のファイバ核52から放射された光によって照らされる。PCS70a、70bが互いに対して垂直に動くと、フォトニック結晶構造20にサポートされる急峻な光学共鳴の周波数(および対応する波長)は、個々のPCS70a、70bの導波共鳴間の光学的結合の変化によりシフトする。このシフトは結果として、フォトニック結晶構造20から反射され、またはこれを透過した光の強度または位相の変化を生じ、かつ測定するのに顕著な量の2つのPCS70a、70b間の相対変位をもたらす。
一定の実施例では、ハウジング30は、1つ以上の支持部212および可動部分220を含む構造210を含む。ハウジング30は、光ファイバ50に結合されるよう構成されたカプラ230をさらに含む。可動部分220は、1つ以上の支持部212によってカプラ230に機械的に結合される。一定の実施例の光ファイバ50はカプラ230の開口部を通過し、ファイバ核52はフォトニック結晶構造20の近傍にあってフォトニック結晶構造20に光学的に結合される。
構造210、可動部分220および支持部212の材料例は、結晶シリコン、ポリシリコン、シリカ、シリコン窒化物、セラミックス、プラスチック、非晶質ダイヤモンド、ゲルマニウム、リン化インジウム、砒化ガリウム、および金属ならびに合金を含むがこれらに限定されない。カプラ230の材料例は、結晶シリコン、パイレックス(登録商標)ガラス、クオーツ、ポリシリコン、シリカ、シリコン窒化物、セラミックス、プラスチック、非晶質ダイヤモンド、ゲルマニウム、リン化インジウム、砒化ガリウム、および金属ならびに合金を含むがこれらに限定されない。
一定の実施例では、カプラ230は光学的透過部分232(たとえば孔、窓、光学的な透過メンブレン)を含み、光ファイバ50がこれを通ってフォトニック結晶構造20を照射する光を放射する。光学的透過部分232はファイバ核52によって放射された光がフォトニック結晶構造20を照射することを可能にし、フォトニック結晶構造20によって反射された光がファイバ核52によって受取られることを可能にする。
可動部分220は、可動部分220に入射する音波40の圧力変調に応じて(たとえば、図24の両矢印によって示されるように)動くよう構成される。図24に概略的に示された実施例では、一方のPCS70a(たとえば光ファイバ50に近い方のPCS)はほぼ静止している一方で、他方のPCS70b(たとえば光ファイバ50から遠い方のPCS)は構造210の可動部分220に取付けられている。一定の他の実施例では、PCS70bがほぼ静止している一方でPCS70aは可動部分220に取付けられている。
一定の実施例では、PCS70bの動きは、PCS70aに実質的に直交する方向に成分を有し、その動きがPCS70a、70b間の距離を変える。図24に概略的に示された実施例では、構造210に取付けられたPCS70bは入射音波40に応答して同時に動き、その結果、入射音波40が2つのPCS70a、70b間の距離を変調する。このように、フォトニック結晶構造20の反射率(たとえば反射光のパワー)および/または透過率(たとえば透過光線のパワー)が入射音波40によって変調される。フォトニック結晶構造20から反射された光学信号は光ファイバ50に戻るよう送信され、検出器(示されない)に向けられて、検出器が反射された信号パワーを測定する。一定の実施例では、反射光のパワーの代りに反射光の位相が測定される。一定の実施例では、PCS70bの動きは、PCS70aと実質的に平行な方向に構成要素を有する。
一定の実施例では、フォトニック結晶構造20の感度(たとえば入射音響圧力の単位当たりの検出される反射パワーの変化)は、二重PCSフォトニック結晶構造20の共鳴振動数(または波長)のうち1つからわずかにずれた周波数(または波長)を有する信号を利用することにより、有利に増大される。非常に高い感度を利用する一定の実施例では、PCS70a、70bは、たとえば本願明細書に記載されるように、PCS70a、70bの少なくとも1つの鏡面対称を破壊することによって、非常に急峻な共鳴を有するように設計される。
一定の実施例では、音響センサ構造200の機械的特性(たとえば機械的共鳴振動数、ばね定数)は、構造210の可動部分220および1つ以上の支持部212の両方に依存する。一定の実施例では、可動部分220は、音波40による可動部分220の変位に応じて復元力を与えることにより、機械ばねとして機能する。一定の他の実施例では、支持部212は、音波40による可動部分220の変位に応じて復元力を与えることにより、機械ばねとして機能する。さらに、構造210または支持部212の他のばね設計を利用する他の実施例も、本願明細書に記載された実施例と互換である。
一定の実施例では、音響センサシステム200は、それが動作する媒体(たとえば海水)における静圧変動に対して非感受性である。例として、一定の実施例の音響センサシステム200は、海水の表面近く、または海水の表面よりも数フィート下で動作可能である。一定の実施例では、ハウジング30は、ハウジング30内の内部領域250とハウジング30外の外部領域260との間に少なくとも1つの圧力導管240を含む。一定の実施例では、少なくとも1つの圧力導管240は、ハウジング30の可動部分220を含む。このような一定の実施例では、可動部分220は、圧力差分を取除くよう動くことにより内部領域250と外部領域260との間の圧力差分に反応する、弾性メンブレンを含む。一定の実施例では、支持部210は可動部分220に復元力を与え、圧力差分を減じるために可動部分220を動かすことにより、可動部分にわたって圧力差分に反応する。一定の実施例の少なくとも1つの圧力導管240は、内部領域250と外部領域260との間の静圧を等しくするローパスフィルタとして機能する。
一定の実施例では、少なくとも1つの圧力導管240はハウジング30を通る孔を含み、孔は外部領域260と内部の領域250とを流体結合する。このような一定の実施例では、内部領域250は、外部領域260と同じく、音波40の同じ媒体(たとえば海水)で満たされ、媒体は内部領域250と外部領域260との間で自由に流れることができる。一定の実施例では、少なくとも1つの圧力導管240は、ハウジング30を通る孔、および、外部領域260から内部領域250を流体分離するために少なくとも1つの圧力導管240を封止する弾性メンブレンを含む。一定の実施例のメンブレンは、圧力差分を減じるために動くことにより、内部領域250と外部領域260との間の圧力差分に反応し、それによって、媒体(たとえば海水)が音響センサシステム200に入らないように保ちつつ、依然として音響センサシステム200の内部と外部との圧力を等しくするローパスフィルタの役割をする。フォトニック結晶構造20または音響センサシステム200の他の内部構成要素が、腐食したり汚れていたりしかねない媒体(たとえば海水)に露出されないことが望ましい、このような一定の実施例では、メンブレンは音波40の媒体がハウジング30内の内部領域250に入らないように保つことが有利である。メンブレンの材料例はシリコン窒化物またはゴムを含むがこれらに限定されない。
一定の実施例では、音響センサシステム200は、よりよい性能および信頼性のために他の構造要素を含む。これらの他の構造要素は、音響センサシステム200の動作のためには重要ではない。一定の実施例では、音響センサシステム200は、音響センサシステム200に入射する大規模な圧力波に応答して2つのPCS70a、70b間の接触を回避するよう位置決めされる1つ以上のスペーサ270を含み、それによって2つのPCS70a、70b間の静摩擦を有利に回避する。一定の実施例のスペーサ270は、2つのPCS70a、70b間の最低限の分離を規定する安全構造として機能し、それによって、2つのPCS70a、70bが互いに接触し、密着することを防ぐ。スペーサ270の材料例は、結晶シリコン、ポリシリコン、シリコン窒化物、シリコン酸化物、非晶質ダイヤモンド、セラミックス、プラスチック、ゲルマニウム、リン化インジウム、砒化ガリウム、および金属ならびに合金を含むがこれらに限定されない。一定の実施例では非晶質ダイヤモンドが用いられる。2つのPCS70a、70bの密着の予防を容易にする疎水性だからである。
PCS70a、70bを囲む媒体に対するフォトニック結晶構造20の光学的特性の感度により、一定の実施例では、音響センサシステム200が配置される媒体(たとえば水)は、音響センサシステム200内で領域280から閉め出されるのが有利である。このような一定の実施例では、フォトニック結晶構造20のPCS70a、70bは気体(たとえば空気)内で動作する。一定の実施例では、ハウジング30は、液体を含んで少なくとも1つのフォトニック結晶構造20の外部にある領域(たとえば内部領域250)を規定し、かつ少なくとも1つのフォトニック結晶構造20を含んで実質的に液体がない領域280を規定する。一定の実施例では、液体はスペーサ270の下の開口部を通して領域280に侵入し得るが、領域280内部の気体の圧力とスペーサ270の下の開口部の小さいサイズとの両方が有利に選択されて、さもなければ音響センサシステム200の動作を劣化しかねない液体の領域280への侵入を防ぐ。一定の実施例は、領域280から液体を閉め出すよう構成される疎水性の表面を有するフォトニック結晶構造20の少なくとも一部分を与えることにより、領域280からの液体の放出をさらに有利に向上させる。
図25は、第2のハウジング310を含む音響センサシステム200の一例を概略的に示す。一定の実施例の第2のハウジング310はハウジング30に機械的に結合され、純水、イソプロピルアルコールまたは空気を含むがこれらに限定されない非腐食液または気体を含む。このような一定の実施例は、音響センサシステム200のさまざまな構成要素を、腐食または音波40が測定されている媒体(たとえば海水)からの他の損傷から有利に保護する。
一定の実施例では、第2のハウジング310は第2のハウジング310の内外で圧力を等しくするのに十分に弾性であり、その結果、入射音波40により圧力変調が第2のハウジング310内の媒体(たとえば気体または流体)に平行移動される。このような一定の実施例では、第2のハウジング310はバルーンを含む。一定の他の実施例では、第2のハウジング310は固定部分および弾性メンブレンを含む。
図26は、第2のハウジング310内でフォトニック結晶構造20を保護する、第2のハウジング310を有する音響センサシステム200の別の例を概略的に示す。一定の実施例では、フォトニック結晶構造20は、第2のハウジング310内で、清潔かつ非腐食で害を与えない液体または気体によって、内部領域250および外部領域260において封止される。このような一定の実施例では、フォトニック結晶構造20の可動なPCS70bはハウジング30の可動部分220のすぐ上にある。
図27は、単一のPCS70を含むフォトニック結晶構造20を含む音響センサシステム200の一例を概略的に示す。音響センサシステム200は、少なくとも部分的に透過的な、かつ光ファイバ50によって放射された光に少なくとも部分的に反射する、金属層320をさらに含む。一定の実施例では、金属層320は、光ファイバ50の端部の金属コーティングである。一定の実施例では、PCS70および金属層320は、金属層320に対するPCS70の変位に敏感なファブリペロー干渉計キャビティを形成する。一定の実施例では、金属層320は、光ファイバ50上に薄い接着層(たとえば約4ナノメートルの厚さのクロム層またはチタン層)を含み、接着層上に約5ナノメートルから約50ナノメートルの範囲の厚さの金層または銀層を含む。一定の他の実施例では、金属層320は光ファイバ50上に約5ナノメートルから約50ナノメートルの範囲の厚さのアルミニウム層を含む。一定の他の実施例では、他の金属および合金を用いることができる。一定の実施例では、金属層320の利用により装置の製造プロセスが単純化される。
図28は、単一のPCS70を含むフォトニック結晶構造20を含む音響センサシステム200の一例を概略的に示す。音響センサシステム200は、光ファイバ50の端部または端部の近くにブラッググレーティング(Bragg grating)をさらに含む。一定の実施例では、ブラッググレーティングは光ファイバ50の端部または端部の近くに堆積されたグレーティングを含み、その厚さは数マイクロメータである。一定の他の実施例では、図28に概略的に示されるように、ブラッググレーティングは光ファイバ50の一部であるファイバブラッググレーティング330を含む。ファイバブラッググレーティング330は、光ファイバ50によって放射された光に少なくとも部分的に透過的であり、少なくとも部分的に反射する。一定の実施例では、PCS70およびファイバブラッググレーティング330は、ファイバブラッググレーティング330に対するPCS70の変位に敏感なファブリペロー干渉計キャビティを形成する。典型的には、ファイバブラッググレーティングのピッチは数百ナノメートルであり、数百マイクロメータから数ミリメートルの範囲の全長を有する。一定の実施例のファイバブラッググレーティングは、ピコメータから数ナノメートルの範囲の波長帯域幅において、数パーセントからほぼ100%までの反射率をもたらす。単一のPCS70およびファイバブラッググレーティング330のこのような組合せの光学的特性は、より完全に下記に記載される。本願明細書に記載された一定の実施例と互換であるファイバブラッググレーティング330は商業上利用可能である。また、このようなファイバブラッググレーティングの使用により、音響センサシステム200の製造を単純化することができる。
図29は、光ファイバ50の一方端に結合された音響センサシステム200の構成の一例の斜視図を概略的に示す。音響センサシステム200は、可動部分220および圧力導管240(たとえば孔)を備えた構造210およびカプラ230を有するハウジング30を含む。音響センサシステムおよび光ファイバの他の構成も、本願明細書に記載された実施例と互換である。
本願明細書に記載された音響センサシステム200の一定の実施例は、標準的なファイバベースのセンサシステムと比べてさまざまな利点を備える。一定の実施例では、音響センサシステム200は、MEMS製造技術によって与えられる柔軟性によりより高い周波数動作を有利に達成する。このような一定の実施例では、音響センサシステム200は、今日の音響のファイバセンサシステムにはアクセスできない範囲である10kHzより大きな周波数で動作するよう設計され、かつ一定の実施例では最大約50kHzの周波数で動作することができる。一定の実施例では、本願明細書に記載されたPCSベースの音響センサシステムは、今日の音響のファイバセンサシステムよりも高い周波数で感度が良く、有利である。一定の実施例では、音響センサシステム200は高感度をもたらし、有利である(たとえば、30マイクロパスカル/Hz1/2未満に敏感である)。一定の実施例では、音響センサシステム200は、(より完全に下記に記載されたように)リソグラフィ技術を用いて基板(たとえばチップ)上に製作することができるフォトニック結晶構造20を含み、それによって大量生産と低コストとを容易にし、ファイバ互換でもある。一定の実施例では、音響センサシステム200を製作するのにMEMS製造技術を利用することにより、結果としてサイズの小さい、軽量かつ小型の音響センサシステムが得られる。一定の実施例では、本願明細書に記載されたPCSベースの音響センサシステムの小型性により、その配備が容易になって有利である。一定の実施例では、本願明細書に記載されたPCSベースの音響センサシステムは入射光の偏光に非感受性であるよう有利に設計されることができ、それにより、偏光に引起される信号フェージングのための補正の必要をなくす。
音響センサの製造
一定の実施例では、音響センサシステム200のさまざまな構成要素を形成するために、表面マイクロ機械加工技術およびバルクマイクロ機械加工技術が製造プロセス流れの中で用いられる。本願明細書に記載された実施例と互換であるリソグラフィ技術は、光学リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、ナノ刷込み技術、およびマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)製造法と一般に互換である他の技術を含むがこれらに限定されない。本願明細書に記載された実施例と互換である表面マイクロ機械加工技術は、フィルム堆積、ドライエッチング、ウェットエッチング、エピタキシャル成長、ウェーハボンディング、および犠牲解放を含むがこれらに限定されない。本願明細書に記載された実施例と互換であるバルクマイクロ機械加工技術は、異方性または等方性の反応性ディープイオンエッチング、KOH(水酸化カリウム)またはTMAH(テトラメチルアンモニウム水酸化物)を用いる異方性ウェットエッチング、および等方性ウェットエッチングを含むがこれらに限定されない。
一定の実施例では、音響センサシステム200のさまざまな構成要素を形成するために、表面マイクロ機械加工技術およびバルクマイクロ機械加工技術が製造プロセス流れの中で用いられる。本願明細書に記載された実施例と互換であるリソグラフィ技術は、光学リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、ナノ刷込み技術、およびマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)製造法と一般に互換である他の技術を含むがこれらに限定されない。本願明細書に記載された実施例と互換である表面マイクロ機械加工技術は、フィルム堆積、ドライエッチング、ウェットエッチング、エピタキシャル成長、ウェーハボンディング、および犠牲解放を含むがこれらに限定されない。本願明細書に記載された実施例と互換であるバルクマイクロ機械加工技術は、異方性または等方性の反応性ディープイオンエッチング、KOH(水酸化カリウム)またはTMAH(テトラメチルアンモニウム水酸化物)を用いる異方性ウェットエッチング、および等方性ウェットエッチングを含むがこれらに限定されない。
図30A−図30Qは、音響センサシステム200の構成要素について本願明細書に記載された一定の実施例と互換である製造プロセスフローの一例を概略的に示す。異なるプロセス工程、プロセス工程数、および/またはプロセス工程順序を備えた他の多くの製造プロセスフローも本願明細書に記載した一定の実施例と互換であり、いずれのプロセスフローを用いるべきかの選択は、典型的には使用のために利用可能な装置の種類に依存する。図30Aに概略的に示されるように、製造用の出発原料は、(100)結晶配向を有し約500ミクロンの厚さの基板510を有するシリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハ500、基板510上の約1ミクロンの厚さの酸化物層520、および酸化物層510上の約10ミクロンの厚さのシリコン層530である。さらに、ウェーハ500の他の材料も本願明細書に記載された一定の実施例と互換である。
図30Bに概略的に示されるように、SOIウェーハ500は酸化されてシリコン層530の上に酸化物層540を形成し、約1ミクロンの厚さを有する。図30Cに概略的に示されるように、酸化物層540は、酸化物層540のさまざまな部分を互いから分離するためにシリコン層530まで(たとえば第1のマスクを用いることにより)酸化物層540をエッチングすることによりパターニングされる。図30Dに概略的に示されるように、酸化物層540の部分はさらに約500ナノメートルだけ(たとえば第2のマスクを用いることによって)エッチングされる。
図30Eに概略的に示されるように、シリコン層520は酸化物層510までエッチングされる。図30Fに概略的に示されるように、酸化物層530は約500ナノメートルだけ下へエッチングされ、それによって酸化物層540の部分を取除く。図30Gに概略的に示されるように、シリコン層530の部分は約5ミクロンだけ下へエッチングされる。図30Hに概略的に示されるように酸化物層540が取除かれる。
図30Iに概略的に示されるように、少なくとも一方側に酸化物層610を有するシリコンウェハ600は、酸化物層610がシリコン層530に接するようにSOIウェーハ500に接合される。一定の実施例では、酸化物層610は約10ミクロンの厚さを有する。一定の実施例では、シリコンウェハ600のシリコン層530に接していない側は、酸化物層610の上に約10ミクロンの厚さを有するシリコン層620を生成するために研磨されるかまたは磨かれる。
図30Jに概略的に示されるように、シリコン層620がパターニングされて、位置合わせマークが目に見えるようにし、かつMEMS構造を形成する。一定の実施例では、このパターニングは、第3のマスクを用いてシリコン層620を酸化物層610までエッチングすることを含む。
図30Kに概略的に示されるように、酸化物層630は、(たとえば第4のマスクを用いて堆積、パターニングされ、フッ化水素でエッチングされて)シリコン層620の上に形成され、シリコン層510の上に酸化物層632が形成される。一定の実施例では、酸化物層630および酸化物層632の各々は、約2ミクロンの厚さを有する。図30Lに概略的に示されるように、別の酸化物層640が酸化物層630およびシリコン層620の露出した部分上に形成され、別の酸化物層642が酸化物層632上に形成される。一定の実施例では、酸化物層640および酸化物層642の各々は、約2ミクロンの厚さを有する。
図30Mに概略的に示されるように、SOIウェーハ500は、(たとえば第5のマスクを用いて)酸化物層642、酸化物層632およびシリコン層510を通って酸化物層520で止るまで、アパーチャ650をエッチングすることによりパターニングされる。図30Nに概略的に示されるように、アパーチャは、シリコン層530で止るまで酸化物層520の一部をエッチングで取除くことにより拡張され、酸化物層640がエッチングで取除かれる。一定の実施例では、酸化物層642、酸化物層632、シリコン層532、酸化物層520および酸化物層640のエッチングが、同じエッチング工程中に実行される。一定の実施例では、結果的な構造は個々のチップに分離され、続くプロセス工程がチップスケールで実行される。
図30Oに概略的に示されるように、アパーチャ650を通るシリコン層530の部分の制御されたエッチングが実行され(たとえばアパーチャ650はシリコン層530と自己整列し、シリコン層530をマスクする)、酸化物層630の部分を通るシリコン層620の部分の制御されたエッチングが実行される。一定の実施例では、シリコン層530の残りの部分660は約450ナノメートルの厚さを有し、シリコン層620の残りの部分670は約450ナノメートルの厚さを有する。残りの部分660、670は、音響センサシステム200のフォトニック結晶スラブ70a、70bのためのシリコン基板として機能する。一定の実施例では、酸化物層632は取除かれる。
図30Pに概略的に示されるように、フォトニック結晶構造20の格子は、2つのフォトニック結晶スラブ70a、70bを形成するよう(たとえばPMMAコーティング、電子ビーム露光、エッチングおよび色抜きレジストによって)パターニングされることによって形成され、図30Qに概略的に示されるように、酸化物層610が取除かれる。一定の実施例では、2つのPCS70a、70bは同じ幾何学的パラメータで自己整列される。一定の実施例では、シリコン層530に起因する部分670の真下の酸化物層610による不利益な応力効果を回避するために、格子がパターニングされる前に、フッ化水素酸を用いてメンブレンの部分から酸化物層610を取除くことができる。格子を規定するために、電子ビームリソグラフィ工具であるRaith150を用いることができる。一定の実施例では、メンブレンの上にフォトニック結晶格子を転送するための主要なマスキング材料は、496,000相対分子量ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、高解像度高電流の正のレジストの単分子層である。露出したパターンは、1:2のメチルイソブチルケトン対イソプロピルアルコール溶液において発生し、次いで、SF6およびCHClF6のプラズマを用いて、プラズマエッチャーで異方性エッチングされて結果として90°近い側壁を生じる。単一のマスキング材料により、複製可能でよく分解した構造となる。一定の実施例では、個々のフォトニック結晶スラブ70a、70bのサイズは、約100ミクロン×100ミクロンである。同様の製造方法は、シリコン窒化物またはシリコン酸化物などの他の材料に適合され得る。
一定の実施例では、100ミクロン×100ミクロンの独立したシリコンPCS70a、70bを形成するため、500ミクロンの厚さの基板510を通してエッチングする異方性エッチングを用いて、808ミクロン幅の方形アパーチャ650がSOIウェーハ500の裏に形成される。表面張力を減じるために1%のイソプロピルアルコールを有する30%のKOH水溶液の異方性エッチャントを用いると、滑らかなエッチング表面を有する明らかに定義された構造を達成することができる。
ダイヤフラム機構の分析
音響センサシステム200の可動部分220および弾性部分(たとえば第2のハウジング310)の機構は、本願明細書に記載されたさまざまな実施例の性能に影響する。これらの機構は、音響センサシステム200のさまざまな構成について下記に分析される。下記の計算は本願明細書に記載されたさまざまな実施例の動作についていくらかの洞察を与えるが、限定するようには意図されない。
音響センサシステム200の可動部分220および弾性部分(たとえば第2のハウジング310)の機構は、本願明細書に記載されたさまざまな実施例の性能に影響する。これらの機構は、音響センサシステム200のさまざまな構成について下記に分析される。下記の計算は本願明細書に記載されたさまざまな実施例の動作についていくらかの洞察を与えるが、限定するようには意図されない。
A. ダイヤフラムの自由振動
厚さhおよび密度ρである伸張されたダイヤフラムの横方向変位uについての運動の方程式は、以下のように表わすことができる:
厚さhおよび密度ρである伸張されたダイヤフラムの横方向変位uについての運動の方程式は、以下のように表わすことができる:
(たとえば、I・ラダバウム(I. Ladabaum)他「表面マイクロマシン加工された容量性超音波変換器」"Surface micromachined capacitive ultrasonic transducers," Ultrasonics, Ferroelectrics and Frequency Control, IEEE Transactions, vol. 45, 第3号、第678−690頁 (1998年5月); およびM・ユウ(M. Yu)「音響測定のための光ファイバセンサシステム」“Fiber-Optic Sensor Systems for Acoustic Measurements”博士論文、メリーランド州カレッジパーク、メリーランド大学、を参照)。式中、σは残留応力であり、Dは以下のように定義される曲げ剛性である:
式中、Eはヤング率であり、vはポアッソン比である。方程式(1)は、小さな横方向変位にしか当てはまらないことに留意されたい。撓みが大きい場合、方程式は非線形になる。
クランプ留めされた半径aの円形ダイヤフラムについて、以下の解を想定すると:
方程式(1)は以下のようになる:
これは次の形式の解を有する:
式中、Jm()はm次の第1種ベッセル関数であり、Im()はm次の第1種変形ベッセル関数であり、かつ以下のとおりである:
境界条件は以下を規定する:
これらの条件は、特性方程式に約される;
これは方程式(5)と合わせて解くことができ、以下のようにまとめられる:
式中、κは以下のように定義される有用な「張力パラメータ」である。
m=0、1、2、…の各々についての方程式(6)および(7)の解は、αmnおよびβmnと示すことができる。ここでn=0、1、2、3…はn乗根を示す。境界条件は、以下の固有モードを与える:
ここで、モードの固有振動数は方程式(5)によって以下のように見出される:
B. ダイヤフラムの強制振動
強制され、かつ減衰されたダイヤフラムについて、運動の方程式は以下のようになる:
強制され、かつ減衰されたダイヤフラムについて、運動の方程式は以下のようになる:
ここで、bは減衰係数であり、Pはダイヤフラム表面に付与される圧力である。λacoustic>>aである小型マイクロフォンの場合、圧縮波は平面波となり、よって:
自由振動の問題との類似性により、次の形式の解が予想される:
式中、umnは自由振動問題からのモードであり、Amnはモード関与因子(modal participation factors)である。方程式(11)を方程式(10)に代入すると、以下が得られる:
左辺第2項は方程式(3)によって与えられる。よって、式(12)は以下のようになる:
この方程式を解くには、以下の固有モードの直交性を利用できる:
直交性を用いて、方程式(13)の左辺は以下のようになり:
右辺は以下のようになる:
なぜならば
であって、入射圧縮波は、径ノード(radial node)だけを有する(極ノード(polar node)を有しない)m=0のモードにしか結合しないからである。従って、指数mを除いて指数nだけを用いてもよい。
この場合、特性方程式(6)は以下のように約される:
そして、方程式(8)の固有モードは以下のようになる:
すると、モード関与因子Anは以下のようになる:
以下の形式の解を仮定すると、
方程式(17)は以下を与える:
よって、変位が以下のように求められる:
これは、任意の周波数についての一般解である。ω<<ωnである低周波数については:
これは、共振周波数よりも低い周波数で圧力表面波によって振動される伸張されたダイヤフラムの横方向変位に対する一般解である。
C. メンブレンおよびプレートの特別な場合についての解
2つの異なった種類の構造、すなわち、窒化シリコンからなるダイヤフラムおよび結晶シリコンからなるダイヤフラムは興味深い。これら2つの材料の機械的特性により、ダイヤフラム解は以下に論じるように閉形式を有する。
2つの異なった種類の構造、すなわち、窒化シリコンからなるダイヤフラムおよび結晶シリコンからなるダイヤフラムは興味深い。これら2つの材料の機械的特性により、ダイヤフラム解は以下に論じるように閉形式を有する。
C.1 メンブレン解
メンブレンは、残留応力が支配的な、たとえばκ→∞である、ダイヤフラムである。メンブレン構造はκ>20に非常に近いが、これは通常高い残留応力を有する窒化シリコンダイヤフラムについての場合である。この場合、βn→κ/a→∞なので、特性方程式(15)は簡単にJ0(αna)=0となる。表記の簡略化のために、(αna)=znであって、znはJ0(x)のn次ゼロを示す。
メンブレンは、残留応力が支配的な、たとえばκ→∞である、ダイヤフラムである。メンブレン構造はκ>20に非常に近いが、これは通常高い残留応力を有する窒化シリコンダイヤフラムについての場合である。この場合、βn→κ/a→∞なので、特性方程式(15)は簡単にJ0(αna)=0となる。表記の簡略化のために、(αna)=znであって、znはJ0(x)のn次ゼロを示す。
また、方程式(16)の固有モードはun(r)=CJ0(znr/a)となるので、以下のようになる:
一方、方程式(9)の固有振動数は以下のようになる:
これらを方程式(20)の一般解に用いると:
この式の閉形式を見出すために、2つの異なった減衰条件、すなわちb=0およびb→∞を考慮する。
C.1.a メンブレン解−無視できる減衰の場合
b=0について、方程式(21)における変位は以下のようになる:
b=0について、方程式(21)における変位は以下のようになる:
これはフーリエ−ベッセル級数として認識できる。区間x=(0,1)における関数はフーリエ−ベッセル級数において以下のように展開できる:
ここで係数Cnは以下として与えられる:
以下の積分を考慮すると
閉形式における無視できる減衰についての変位は以下のように表わすことができる:
この解は、他のレポートとも一致する。たとえば、W・P・イートン(W.P. Eaton)他「ダイヤフラム撓みについての新規な解析解および表面マイクロマシン加工された圧力センサに対するその応用」"A new analytical solution for diaphragm deflection and its application to a surface micromachined pressure sensor" Int’l Conf. on Modeling and Simulation of Microsystems、1999年、を参照。方程式(22)はr=(0,a)の範囲全体に当てはまる厳密解であることに留意されたい。
C.1.b メンブレン解−強い減衰の場合
b→∞について、方程式(21)の変位は以下のようになる:
b→∞について、方程式(21)の変位は以下のようになる:
以下の積分を考慮すると
閉形式における強い減衰についての変位は以下のように表わすことができる:
したがって、減衰が非常に強い場合、メンブレンは目立った曲げなしに全体的に移動する傾向がある。
C.2 プレート解
プレートは、曲げ剛性が支配的な、たとえばκ=0である、ダイヤフラムである。プレート構造はκ<2に非常に近いが、これは通常非常に低い残留応力を有する結晶シリコンダイヤフラムについての場合である。
プレートは、曲げ剛性が支配的な、たとえばκ=0である、ダイヤフラムである。プレート構造はκ<2に非常に近いが、これは通常非常に低い残留応力を有する結晶シリコンダイヤフラムについての場合である。
この場合、βn=αnなので、特性方程式(15)は以下のようになる:
これらを方程式(20)の一般解において用いると:
この式の閉形式を見出すために、2つの異なった減衰条件、すなわちb=0およびb→∞を考慮する。
C.2.a プレート解−無視できる減衰の場合
b=0について、方程式(21)における変位は以下のようになる:
b=0について、方程式(21)における変位は以下のようになる:
これはr=(0,a)の範囲全体に当てはまる厳密解であることに留意されたい。この解は、他のレポートとも一致する。たとえば、W・P・イートン(W.P. Eaton)他「ダイヤフラム撓みについての新規な解析解および表面マイクロマシン加工された圧力センサに対するその応用」"A new analytical solution for diaphragm deflection and its application to a surface micromachined pressure sensor" Int’l Conf. on Modeling andSimulation of Microsystems、1999年、を参照。また、r=0およびr=aからの崩壊は、メンブレンの場合と比較してより急速であることにも留意されたい。
C.2.b プレート解−強い減衰の場合
b→∞について、式(21)の変位は以下のようになる:
b→∞について、式(21)の変位は以下のようになる:
計算すると、以下のとおりである。
よって、閉形式における強い減衰についての変位は以下のように表わすことができる:
したがって、メンブレンの場合のように、減衰が非常に強い場合、プレートは目立った曲げなしに全体的に移動する傾向がある。
D. 周囲の媒体の機械的インピーダンス影響
機械的インピーダンスの計算は、周囲の媒体(空気または水など)および減衰が、どのような影響をダイヤフラムの変位に与えるかの理解を容易にし得る。機械的インピーダンスZは圧力の速度に対する比、すなわちZ=P/υとして定義される。ここで論じられる場合においては、υ(r)=jωu(r)である。ダイヤフラムのインピーダンスを計算するには、以下の集中速度(lumped speed)が用いられる:
機械的インピーダンスの計算は、周囲の媒体(空気または水など)および減衰が、どのような影響をダイヤフラムの変位に与えるかの理解を容易にし得る。機械的インピーダンスZは圧力の速度に対する比、すなわちZ=P/υとして定義される。ここで論じられる場合においては、υ(r)=jωu(r)である。ダイヤフラムのインピーダンスを計算するには、以下の集中速度(lumped speed)が用いられる:
したがって、以下のようになる:
方程式(22)を用いて、メンブレンによって近似可能なダイヤフラムのインピーダンスは以下のようになる:
同様に、方程式(25)を用いて、プレートによって近似可能なダイヤフラムのインピーダンスは以下のようになる:
減衰によるインピーダンスは、方程式(23)または(26)を用いて証明できるように、ちょうどZb=bになる。減衰インピーダンスが実数であるという事実は、それが系における散逸損失の原因であることを意味する。
周囲の媒体のインピーダンスを計算するために、音波における粒子の変位についての式を用いることができる:
ここでρaは媒体の密度であり、υaは音波の速度である(媒体内で変位する粒子の速度と混同してはならない)。方程式(29)を用いて、周囲の媒体のインピーダンスは以下のように表わすことができる:
すると系の全インピーダンスは、ダイヤフラムのインピーダンスと、減衰インピーダンスと、周囲の媒体のインピーダンスとの和となる:
Ztotal=Zd+Zb+Zs
ダイヤフラムの全変位は、この全インピーダンスの値に依存する。もしインピーダンスのうちの1つが他のものよりもずっと大きければ、ダイヤフラム変位はそれによって支配されるであろう。たとえば、もしメンブレンインピーダンスが支配的であれば、すなわちZd>>Zb、Zsであれば、変位はちょうど方程式(22)または方程式(25)におけるものと同様になり、無視できる減衰でのダイヤフラム変位となる。もし減衰インピーダンスが支配的であれば、すなわちZb>>Zd、Zsであれば、変位はちょうど方程式(23)または方程式(26)におけるものと同様になり、大きな減衰条件下でのダイヤフラム変位となる。そして、もし周囲の媒体のインピーダンスが支配的であれば、すなわちZs>>Zd、Zbであれば、変位はちょうど方程式(29)におけるものと同様になるが、
これは音波における粒子の変位である。
Ztotal=Zd+Zb+Zs
ダイヤフラムの全変位は、この全インピーダンスの値に依存する。もしインピーダンスのうちの1つが他のものよりもずっと大きければ、ダイヤフラム変位はそれによって支配されるであろう。たとえば、もしメンブレンインピーダンスが支配的であれば、すなわちZd>>Zb、Zsであれば、変位はちょうど方程式(22)または方程式(25)におけるものと同様になり、無視できる減衰でのダイヤフラム変位となる。もし減衰インピーダンスが支配的であれば、すなわちZb>>Zd、Zsであれば、変位はちょうど方程式(23)または方程式(26)におけるものと同様になり、大きな減衰条件下でのダイヤフラム変位となる。そして、もし周囲の媒体のインピーダンスが支配的であれば、すなわちZs>>Zd、Zbであれば、変位はちょうど方程式(29)におけるものと同様になるが、
これは音波における粒子の変位である。
E. インピーダンスについての数値
系の一例として、窒化シリコンまたは結晶シリコンのいずれかからなる円形ダイヤフラムは、典型的なSMF−28シングルモードファイバ(たとえば、62.5ミクロン)の半径を有し、ファイバの端部から距離dだけ離隔されている。表1は、計算に用いるべき様々なパラメータおよび定数の値を示す。
系の一例として、窒化シリコンまたは結晶シリコンのいずれかからなる円形ダイヤフラムは、典型的なSMF−28シングルモードファイバ(たとえば、62.5ミクロン)の半径を有し、ファイバの端部から距離dだけ離隔されている。表1は、計算に用いるべき様々なパラメータおよび定数の値を示す。
上記各セクションにおいて与えられた公式以外の式を用いて減衰を計算することができる。減衰の計算は通常複雑で、かつ全体のジオメトリに対する強い依存性を有する。しかしながら、それでも減衰の推定は可能である。ダイヤフラムとファイバ端部との近接により、支配的な減衰は、以下のように推定されるスクイーズ膜減衰となる:
式中、μは媒体の動的粘度であって、A=πa2はプレートの面積であって、dは間隙長さである(たとえば、M・アンドリュース(M. Andrews)他「スクイーズ膜理論とマイクロ構造における測定値との比較」"A comparison of squeeze-film theory with measurements on a microstructure", Sensors and Actuators A, vol. 36, 第79−87頁、(1993年)を参照)。
表1の値を用いると:
bair=9.38×104kg/m2/s 空気における減衰
bwater=5.04×106kg/m2/s 水における減衰
同様に、表1の値をインピーダンス公式方程式(27)、(28)、および(30)において用いると:
|ZSiN|=1.62×106kg/m2/s 窒化シリコンメンブレンのインピーダンス
|ZSi|=1.09×105kg/m2/s シリコンプレートのインピーダンス
|Zair|=415kg/m2/s 空気のインピーダンス
|Zwater|=1.48×106kg/m2/s 水のインピーダンス
|Zsea-water|=1.56×106kg/m2/s 海水のインピーダンス
これらの結果は、所与のダイメンションについて、メンブレンのインピーダンスは減衰および水インピーダンスに匹敵することを示す。図33は、ダイヤフラム直径が125ミクロンであって周波数が30kHzでの、一例としての音響センサのインピーダンスを示す。減衰は、総じてダイヤフラム−ファイバ間隙の立方に反比例する。減衰は距離が小さくなるほど大きく、約3ミクロン未満の距離について顕著である。さらに、より大きなダイヤフラム直径は、より有利な結果をもたらすであろう。50%を超えて大きなダイヤフラム半径は、窒化シリコン計算をより正確にする。なぜならば、この場合、κ≒13の張力パラメータ値は、メンブレンとして窒化物ダイヤフラムをモデル化するには不十分だからである。また、減衰インピーダンスは、圧力等化孔の寸法および位置などの、注意深い設計によって減じることができる。
bair=9.38×104kg/m2/s 空気における減衰
bwater=5.04×106kg/m2/s 水における減衰
同様に、表1の値をインピーダンス公式方程式(27)、(28)、および(30)において用いると:
|ZSiN|=1.62×106kg/m2/s 窒化シリコンメンブレンのインピーダンス
|ZSi|=1.09×105kg/m2/s シリコンプレートのインピーダンス
|Zair|=415kg/m2/s 空気のインピーダンス
|Zwater|=1.48×106kg/m2/s 水のインピーダンス
|Zsea-water|=1.56×106kg/m2/s 海水のインピーダンス
これらの結果は、所与のダイメンションについて、メンブレンのインピーダンスは減衰および水インピーダンスに匹敵することを示す。図33は、ダイヤフラム直径が125ミクロンであって周波数が30kHzでの、一例としての音響センサのインピーダンスを示す。減衰は、総じてダイヤフラム−ファイバ間隙の立方に反比例する。減衰は距離が小さくなるほど大きく、約3ミクロン未満の距離について顕著である。さらに、より大きなダイヤフラム直径は、より有利な結果をもたらすであろう。50%を超えて大きなダイヤフラム半径は、窒化シリコン計算をより正確にする。なぜならば、この場合、κ≒13の張力パラメータ値は、メンブレンとして窒化物ダイヤフラムをモデル化するには不十分だからである。また、減衰インピーダンスは、圧力等化孔の寸法および位置などの、注意深い設計によって減じることができる。
これらの結果は、空気および水におけるダイヤフラムの変位についての当初の仮定が不正確であったことを示す。これらの計算を用いて、空気での動作または水での動作のいずれについても、より最適であるセンサ設計を行なうことができる。
ファイバのファブリペローに基づく音響センサ設計
上で導出された式は、音響センサシステムについての最適なパラメータを見出すのに用いることができる。図31は可動反射素子(たとえばメンブレン)と光ファイバとの構成の一例を概略的に示す。図31に概略的に示される、最適化されるべきパラメータとは、キャビティ長さ(L)、メンブレンの半径(a)、およびファイバ端部の反射率(Rf)およびメンブレンミラーの反射率(Rm)である。
上で導出された式は、音響センサシステムについての最適なパラメータを見出すのに用いることができる。図31は可動反射素子(たとえばメンブレン)と光ファイバとの構成の一例を概略的に示す。図31に概略的に示される、最適化されるべきパラメータとは、キャビティ長さ(L)、メンブレンの半径(a)、およびファイバ端部の反射率(Rf)およびメンブレンミラーの反射率(Rm)である。
第1のステップとして、これらのパラメータの限界または範囲を計算することができる。メンブレンのインピーダンスが大きくなりすぎてセンサの圧力感度を制限しないように、メンブレン半径aは好ましくは少なくともファイバの半径に等しく、それは約62.5ミクロンである。メンブレンの寸法は好ましくは、小型で頑健なセンサを提供するのに十分に小さい。したがって、メンブレン直径は有利には約300ミクロンを超えない。これを超えると、それは大きくなり壊れやすくなる。
以下に示す理由から、メンブレンミラーの反射率Rmはできるだけ大きいことが好ましい(たとえばRm〜1)が、これはフォトニック結晶ミラーによる特定の実施例において達成される。ファイバ端部の反射率(Rf)は、好ましくはできるだけ小さい。その理由は、以下にさらに十分に論じる。また、好ましくはファイバ端部における小さな反射率が用いられるが、なぜならば金属または絶縁体のいずれであっても、ファイバ端部上に反射率が高いミラーを蒸着することが通常は困難であるからである。また、ファイバブラッグミラーが用いられる場合、上で説明したように、小さな反射率を要求することにより、その長さが好ましくは減じられる。
キャビティ長さLに対する制限を計算するために、いくつかの要因を考慮する。機械的な観点からは、大きな長さを有することが有利である。それが小さな減衰をもたらすからである。しかしながら、光学特性を考慮すると、以下に計算するように、キャビティ長さに対するある制限が存在する。
共振のコントラストはミラー反射率が増大するほど減少する傾向があるので、非常に高い反射率に対しては、視認可能な共振はほとんどないようである。この影響は、ファブリペローのミラーの釣り合いをとることによって回避できる。実際、計算すると、完全なコントラストは以下を有することにより復元可能である:
また、変位に対する最高感度は、非対称的共振の急峻な側で、全体の反射がRP=Pr/Pi=1/2である点で生じる。この点においては、感度は以下の有効反射率を有する正規の(regular)ファブリペローの感度に等しい:
RP=1/2の点での正規ファブリペローの変位σ=∂RP/∂Lに対する感度は、以下のように計算される:
上記関係を用いて、最大Lを計算することができる。この計算された値は、要求される感度を達成するために用いられる最小反射率Reffに依存する。ベストケースのシナリオについての最小要求反射率は、ショット雑音制限における雑音レベルと、支配的である水のインピーダンスとに対応するので、メンブレンは水の粒子とともに変位する。
圧力と水の変位との間の関係は以下のように表わされる:
ΔLminに上記数を代入して、値Pi=1mW、λ=1550nm、η=0.9を用い、Reffについて解く:
Reff=0.954
これは、最良の条件下で所望の感度を達成するための最小有効反射率である。この値を用いて、最大キャビティ長さを計算することができる。
Reff=0.954
これは、最良の条件下で所望の感度を達成するための最小有効反射率である。この値を用いて、最大キャビティ長さを計算することができる。
これは水における最大キャビティ長さであり、ファイバファブリペローの光学特性によって課される制限である。この数値は、正規SMF−28ファイバについて計算されるレイリー範囲における差のために、空気においてはより小さい(7.21ミクロン)。
キャビティ長さに対する別の制約とは、これが動作波長の半分の倍数であることであるが、それは特定の実施例においてはλ=1550nmである。
主なパラメータ、すなわちキャビティ長さ(L)、メンブレンの半径(a)およびファイバ端部の反射率(Rf)についての制限がわかっていると、値を最適化できる。
これらのパラメータを最適化するために、装置の機械的特性を考慮する。力学計算において、以下のインピーダンス値がパラメータa=62.5μm(=SMF−28ファイバの半径)およびL=1μmについて見出された:
Zwater=1.48×106kg/m2/s 水のインピーダンス
bwater=5.04×106kg/m2/s 水における減衰
ZSi=1.09×105kg/m2/s シリコンプレートのインピーダンス
3つのインピーダンスは同じオーダである。これは、メンブレンの変位が、水粒子の変位に対して係数fだけ減じられることを意味する。ここで、
Zwater=1.48×106kg/m2/s 水のインピーダンス
bwater=5.04×106kg/m2/s 水における減衰
ZSi=1.09×105kg/m2/s シリコンプレートのインピーダンス
3つのインピーダンスは同じオーダである。これは、メンブレンの変位が、水粒子の変位に対して係数fだけ減じられることを意味する。ここで、
これらのインピーダンス値では、メンブレンは水粒子の変位の約22%しか変位しない。この数は、有利に、高感度の装置(sensitive device)については約90%に近い。この結果を達成するために、有利には、水における減衰および可能であればシリコンプレートのインピーダンスは以下になるように減じられる:
bwater+ZSi≒1.64×105kg/m2/s
ここで考慮しなければならない式は:
bwater+ZSi≒1.64×105kg/m2/s
ここで考慮しなければならない式は:
全体のインピーダンスを減じるために、aを変化させることなくLを増加させることができる。なぜならば、bwaterはより大きな寄与を有するからである。この場合、ZSiは変化なしのままであるので、有利に:
bwater ≒5.50×104kg/m2/s
よって、長さは有利に:
bwater ≒5.50×104kg/m2/s
よって、長さは有利に:
キャビティ長さが動作波長の半分の倍数であるので、これに最も近い数値は6×1.55μm/2=4.65μmとなる。これはまだLmax=9.48μmの範囲内にある。このキャビティ長さ4.65μmを用いて、減少係数はf=0.9=90%となる。この計算においてa=62.5μmが変化なしのままであるので、他の2つの設計パラメータRfおよびRmは最適化されたままとなる。
メンブレンの変位は以下のようになる:
したがって、30kHzで
の感度をもたらす設計の一例についてのパラメータの組は、a=62.5ミクロン、L=4.65ミクロン、Rm=0.980、およびRf=0.936である。他の値もまた、ここに記載する特定の実施例において適合可能である。
ファイバブラッググレーティングと比較したファブリペローに基づく音響センサ
音響センサとして採用すべき簡単なファブリペロー構造は、フォトニック結晶ミラーとファイバブラッググレーティングとで構成する(たとえば、図28に示すもの)か、またはここで説明するように2つのフォトニック結晶ミラーだけで構成することができる。そのようなセンサの感度は、基礎ファブリペロー方程式から計算することができる。(たとえば、トムソン(Thomson)他「ファブリペロー表面弾性波振動検出器−音響ホログラフィへの応用」"A Fabry-Perot acoustic surface vibration detector-application to acoustic holography" J. Phys. D: Appl. Phys., Vol. 6, 第677頁(1973年)、を参照)。特定の実施例においては、ファブリペローキャビティを形成する両方のミラーが高い反射率Rを有する。そして、K=4R/(1−R)2およびφ=2πL/λについて、Lがミラー間隔である場合、反射パワーPrおよび入射パワーPiは以下のように計算することができる:
音響センサとして採用すべき簡単なファブリペロー構造は、フォトニック結晶ミラーとファイバブラッググレーティングとで構成する(たとえば、図28に示すもの)か、またはここで説明するように2つのフォトニック結晶ミラーだけで構成することができる。そのようなセンサの感度は、基礎ファブリペロー方程式から計算することができる。(たとえば、トムソン(Thomson)他「ファブリペロー表面弾性波振動検出器−音響ホログラフィへの応用」"A Fabry-Perot acoustic surface vibration detector-application to acoustic holography" J. Phys. D: Appl. Phys., Vol. 6, 第677頁(1973年)、を参照)。特定の実施例においては、ファブリペローキャビティを形成する両方のミラーが高い反射率Rを有する。そして、K=4R/(1−R)2およびφ=2πL/λについて、Lがミラー間隔である場合、反射パワーPrおよび入射パワーPiは以下のように計算することができる:
すると、変位Lに対する感度σは以下のようになる:
最高感度を見出すために、方程式(32)をdσ/dL=0について解く。これはφ=(3K)-1/2+mπについて満足する。K>>1であることに留意されたい。この、最高感度が共振の側にあるという結果は予想される。この値を用いて、最高感度は以下のように表わすことができる:
したがって、レーザの線幅がファブリペロー共振の線幅よりもずっと小さいと仮定すると、最高感度はミラーの反射率のみに依存する。この条件は以下の場合に満足される。
ここで、Δvlaserはシングルモードレーザの線幅(またはマルチモードレーザの周波数拡散)である。こうして、高感度の(sensitive)測定について、レーザの線幅Δvlaserは、キャビティ長さLに依存するファブリペロー共振の線幅
よりも、ずっと小さくなるように有利に選択される。こうして、最高感度についての方程式(33)は、レーザ線幅に依存するファブリペローキャビティに対し、最大キャビティ長さについて制限を課す。
1ミリワットのような十分に大きいレーザパワーについて、支配的な雑音はフォトダイオードショット電流(shot current)となる。反射パワーを測定するフォトダイオードにおける平均電流(mean current)はI0=Preη/hvとなり、ここでηはフォトダイオードの量子効率である。
最高感度点において、方程式(31)から計算すると、Pr=Pi/4である。この電流は、以下のショット雑音電流を生じさせる。
式中、Δfは電子系帯域幅である。
ピーク振幅ΔLの小さなミラー変位について、フォトダイオードにおける信号電流は以下のようになる:
ピーク振幅ΔLの小さなミラー変位について、フォトダイオードにおける信号電流は以下のようになる:
ΔPrは、方程式(2)を用いて以下のように計算できる:
よって、ΔPr=σPiΔLである。
方程式(33)で与えられる最高感度で動作して、方程式(35)の信号電流式内の方程式(36)のパワー信号は:
方程式(33)で与えられる最高感度で動作して、方程式(35)の信号電流式内の方程式(36)のパワー信号は:
これにより、信号対雑音比は以下のように表わすことができる:
すると、単位信号対雑音比について、系の検出感度は以下のようになる:
Pi=1mW、λ=1500nm、η=0.9の値および適度な反射率R=0.99を用いて、以下の値が得られる:
感度は、ミラーの反射率によって増大することができる。たとえば、R=0.999の反射率は約10倍良好な感度をもたらす。以下の計算全体を通して、値
が用いられる。なぜならば、実験の値は理論限界よりも1オーダの大きさで不良であることが以前に報告されているからである。
方程式(33)で与えられる感度は、ミラー反射率にしか依存しない。キャビティの長さは感度において重要な役割を果たすので、キャビティが長ければずっと小さな感度がもたらされることが予想される。もし方程式(33)がキャビティ長さLの意味で書かれ、共振線幅がΔν1/2であれば:
これは予想された結果である。長さが長いほど、感度は落ちる。また、予想されたように、線幅が増大するほど感度は落ちる。なぜならば、共振の急峻度が小さくなるからである。しかしながら、高い反射率のミラーを備えたファブリペローキャビティにおいて、共振線幅はLに依存するので、キャビティ長さが長くなるほど共振は急峻になる:
(たとえば、P・イエー(P. Yeh)「積層媒体における光波」"Optical Waves in Layered Media" (Wiley, New York, 1988年)を参照)。したがって、感度の方程式(40)におけるLへの依存性は打ち消されるので、支配的な寄与をもたらすのはミラー反射率である(ミラー反射率が高い限り)。そのような特定の実施例において、重要な基準とはしたがって、レーザ線幅がファブリペロー共振線幅よりもずっと小さいべきことである。
ダイナミックレンジを計算するためには、最小検出可能長さがわかっているので、最大長さシフトを計算すべきである。ファブリペローキャビティについて、L=定数・λであるので:
したがって、最大シフトはΔLmax=(L/λ)Δλmaxである。検出できる最大波長シフトは、ファブリペロー共振の線幅の四分の一である。したがって、最大検出可能キャビティ長さ変化は、方程式(41)を用いて:
よって、ダイナミックレンジは:
これは、ダイナミックレンジが反射率またはキャビティ長さのようなファブリペローパラメータから独立していることを示す。上で用いられた値について、約130dB(20log)のダイナミックレンジが生じる。再び、予測されたよりも1オーダ低い感度
を仮定すると、ダイナミックレンジは110dB前後となる。このダイナミックレンジは変位測定についてのものであるが、圧力にも当てはまる。なぜならば、変位は圧力に比例するからである。
これらの結果をシングルファイバブラッググレーティングと比較するために、そのようなファイバの一片を伸張することにより同じ値を得ることができるかどうかを知ることが望ましい。図32は、波長の関数としての光学共振のグラフである。第1のステップとして、一般的な急峻な共振についての感度が計算される。これを図32に示す。簡単な幾何学的特徴から、以下の関係が得られる:
もし、ファブリペローキャビティのように、共振波長と距離とが互いに比例して、方程式(42)が有効であれば、感度は以下のように表現できる:
この式を証明するために、ファブリペローキャビティについての式を用いて、以下が得られる:
これは方程式(33)に非常に近いので、方程式(45)および(46)を証明する。
感度についての一般式を得ると、ファイバブラッググレーティングについての感度が計算できる。そのような構造の共振波長は:
感度についての一般式を得ると、ファイバブラッググレーティングについての感度が計算できる。そのような構造の共振波長は:
ここで、neffは有効屈折率であり、Lはグレーティングの全体長さであり、Nは層の数である(たとえばカージー(Kersey)他「ファイバグレーティングセンサ」"Fiber grating sensors" J. Lightwave Technol., vol. 15, no. 8,第1442頁(1997年)を参照)。そのような構造がΔLだけ伸張されると、波長は以下だけシフトする:
ここで、係数0.78は光弾性効果によるファイバ指数における変化から生じる。したがって、
これは、方程式(42)がそのオーダに対して有効であることを示し、方程式(46)もそのオーダに対して有効であることを意味する。こうして、ファブリペローキャビティおよびファイバブラッググレーティングの感度は、方程式(46)のL・Δλ1/2が同じであれば、所与の波長について同じオーダにある。
たとえば、1500ナノメートル前後で動作し、約5センチメートル長さのグレーティングについて線幅が0.02ピコメートルである、商業的に入手可能なファイバブラッググレーティングは、L・Δλ1/2=103nm2をもたらす。一方、ファブリペローキャビティについては、方程式(11)を用いて:
ファブリペローキャビティについて同様の数値(たとえばL・Δλ1/2=103nm2)
を得るためには、R≒0.998の反射率が用いられるであろう。よって、そのような商業的に入手可能なファイバブラッググレーティングは、高反射率ミラーを備えたファブリペローキャビティと同じ感度を有するようである。
を得るためには、R≒0.998の反射率が用いられるであろう。よって、そのような商業的に入手可能なファイバブラッググレーティングは、高反射率ミラーを備えたファブリペローキャビティと同じ感度を有するようである。
このファブリペローキャビティの解析において、レーザの線幅はファブリペロー共振の線幅よりもずっと小さいと仮定された。レーザの線幅は、より低感度の領域においてレーザが平均化しないように、共振線幅よりも1から2オーダ小さいべきである。小さいキャビティ長さが用いられる場合、ファブリペロー共振線幅は大きいので、レーザは非常に狭くなくてもよい。しかしながらキャビティ長さが大きい場合は、ファブリペロー共振は急峻になるので、短いファブリペローキャビティで達成されるものと同じ感度を達成するために、より狭いレーザが用いられる。主な問題は、レーザが非常に狭くなくてはならない時に生じる。
たとえば、上記の0.02ピコメートル線幅の場合を考察する。計算された感度を達成するために、10-3から10-4ピコメートルの狭さのレーザが用いられるであろう。レーザがそれほど狭いと、ショット雑音に対して他の雑音源が支配的となる。そのような狭いレーザに対する最も重要な雑音のうちの1つは、自走周波数雑音である。事実、予め安定化されたレーザを用いてこの雑音を減じることにより、2つのファイバブラッググレーティングによって形成された25ミリメートル長さを超えるファブリペローについて、以下の感度
が得られることが、以前に実験により示されている。(チョウ(Chow)他「予め安定化されたダイオードレーザを用いた超分解能ファイバセンサ」"Ultra resolution fiber sensor using a pre-stabilized diode laser" 第CPDA9頁 Post-deadline CLEO 2005 (2005年)を参照)。この報告された値は、同じ構造についての基礎ショット雑音制限感度よりも、ちょうど1オーダの大きさだけ不良である。したがって、長いキャビティ長さで高い感度を得ることはより困難である。なぜならば、その場合非常に優良なレーザが用いられるからである。しかしながら、これらの結果は、図28に示すファイバブラッググレーティング構造についても、ミラーとして2つの薄いフォトニック結晶スラブを用いるファブリペローセンサについても、有望なものである。
図34Aおよび34Bはそれぞれ、2つの異なったキャビティ長さに対する共振波長変化を概略的に示す。図34Aは、約0.75ミクロンのキャビティ長さLshortに対応し、図34Bは、キャビティ長さLlong=20Lshort(たとえば約15ミクロン)に対応する。ファブリペロー共振器の2つの反射器の間の同じ変位について、図34Aのキャビティのパワーの変化は図34Bのキャビティのものに等しい。長さLを有するファブリペローキャビティの温度感度はΔL=(α・ΔT)・Lによって与えられる。ここで、ΔLは長さの変化であり、αは熱膨張係数であり、ΔTは温度の変化である。こうして、変位に対する感度はキャビティ長さから独立しているが、長いキャビティほど温度に対する感度が高い。したがって、特定の実施例においては、より高い温度安定性のためにより短いキャビティを用いることが有利である。さらに、共振がより広いのでより短いキャビティが有利に用いられ、それにより、特定の実施例においては狭帯域レーザの使用を回避する。さまざまな特定の実施例において、キャビティ長さは約15ミクロン未満、約10ミクロン未満、約5ミクロン未満、約1ミクロン未満、または約0.5ミクロン未満である。
標準ファブリペロー干渉計と比較したファイバファブリペロー干渉計
図35Aは、電界の反射係数(field reflection coefficient)rfおよびrmでの無限大のミラーを含む標準ファブリペロー(FP)干渉計を概略的に示す。
図35Aは、電界の反射係数(field reflection coefficient)rfおよびrmでの無限大のミラーを含む標準ファブリペロー(FP)干渉計を概略的に示す。
ファイバFP干渉計の反射率は、ファイバのモード選択特性のために、極めて異なっている。一例として、図35Bは薄いPCS(反射率rm)に対向するファイバの端部(反射率rf)に蒸着される金属被覆を含むファイバFP干渉計を概略的に示す。ファイバFP干渉計は、ファイバコアによってファイバFP干渉計内に結合された単一周波数レーザダイオード光でプローブされる。簡単にするために、コアからFPに入る電界は、シングルモードファイバに非常に近いものであるガウス型プロファイルE(z)を有するものとして扱ってもよい。すると、キャビティ内の逆方向に移動する電界は、PCSミラーによって反射されるp電界の和である:
検出される電界は、ファイバの基本モードに結合されたファイバFP干渉計によって反射される全電界の一部である、すなわちEr=rfEi+ai・tfEi。式中、aiはファイバモードに対する自由空間電界の結合係数である。よって、標準FP干渉計との唯一の違いは係数aiであるが、これはファイバに再結合されるべき適切な振幅プロファイルと位相面とを有しない全反射電界の分数をなくす(この分数は、クラッディングモードに結合される、および/または、反射される)。結合係数は、以下のように計算することができる:
式中、z0はファイバFP干渉計内のガウスビームのレイリー範囲である。この結果を用いて、ファブリペロー干渉計についての電界反射係数は、以下のように表わすことができる:
この結果を、標準FP干渉計についての公式と比較すると、シングルモードファイバによって行なわれる空間フィルタリングは、級数の各項に係数1/(1+jpL/z0)を加えることが示される。標準FP干渉計とは対照的に、ファイバFP干渉計についての合計式は、単純な解析的閉形式を有しない。しかしながら、レルヒ(Lerch)の超越関数を用いて、それを積分形式に変換することができる:
式中、
標準FP干渉計の反射率も、同様の形式で表わせることに留意されたい:
式中、θ=2kLである。上記rSFPについての積分形式は、反射率が高い場合に非常に多数の項の計算を必要とする級数形式よりも、数値計算がより効率的である。
図36に、ファイバFP干渉計と標準FP干渉計との両方の反射スペクトルを、典型的な反射率(Rm=1/2rm1/22=0.99、Rf=1/2rf1/22=0.99)およびミラー間隔L=15.5ミクロンについて示す。ファイバFP干渉計においては、基本モード1/e2パワー半径が5.1ミクロンとして扱われた。ファイバFP干渉計内のレーザビームの回折は、ファイバの空間フィルタリングと組み合わされて、図36に示すように、共振における強い非対称性とコントラストの損失とをもたらす。特定的には、短波長側では(低減したコントラスト以外は)共振線形は変わらないが、長波長側ではかなり広がっている。この非対称性が、ファイバセンサにおいて非常に有用な用途を見出し得ることは明らかである。特にこれは、一方がより急峻な短波勾配に中心を有し他方がより急峻ではない長波長勾配にある2つの波長で、同じファイバFP干渉計をプローブするという独自の可能性を提供して、センサのダイナミックレンジを向上させる。
外部ミラーファイバFP反射振幅は以下のように表わすことができる:
式中、rFP=rFP(θ)はθ=2kLおよびθu=θ+(L/z0)uでの標準FP反射振幅である。すると、ファイバFP反射振幅は標準FP反射振幅とより大きな有効長の反射振幅との加重平均である。こうして、共振線形は、非対称的であり、波長が長くなるに従って延長される。コントラストは減じられるが、以下の場合に最大化され得る:
式中、Rfはファイバミラーの反射率であり、Rmは外部ミラーの反射率である。したがって、外部ミラーの高い反射率について、コントラストは1に非常に近くなる(close tounity)ことができ、ファイバFP干渉計は、強くはないがやはり非対称的であって、高いコントラストおよび高い感度を提供する。Z0は一般的にLよりも大きいので(たとえば、53ミクロン対15.5ミクロン)、この条件はRmが1に近い(close to unity)場合に一般的には達成される。しかしながら、高コントラストおよび高感度は、大きいキャビティ長さを用いては一般的には達成できない。さらに、ミラー厚さがキャビティ長さに寄与するので、特定の実施例においては薄い外部ミラーを有利に用いる。特定の実施例におけるPCSの使用は、高感度のためにFP干渉計において用いられる高反射率だけではなく、ファイバFP干渉計においてコントラストを最大化するのに必要な高反射率をも有利に提供する。
一例としてのファイバFP干渉計からの透過スペクトルが、予測された非対称性を確認するために測定された。FPミラーの1つは、SMF−28ファイバの劈開端によって形成されて、4ナノメートルのクロム接着層上に12ナノメートルの金で被覆された。ファイバ端部に形成されたミラーの計算された反射率は80%であって、このミラーの測定された反射率は65%であった。他方のミラーは、850ナノメートル間隔の644ナノメートル直径の円形孔の正方格子を備えた450ナノメートル厚さのシリコンメンブレン上に標準の技術で作製されたPCSであった。1.55ミクロンでのPCSミラーの計算された反射率は99%を超えたが、理想的ではない作製条件のために、その実際の反射率は65%だけであって、実際のところファイバミラー反射率のほうに一致する値であった。図37に、このファイバFP干渉計の測定された透過スペクトルを示す。予想されたように、共振は強く非対称的で、長波長側では急峻度がより低かった。
図38Aは、ファイバFP音響センサの特徴を説明するための実験的構成を概略的に示し、図38Bは、PCSに基づくFP音響センサの一例を概略的に示す。FP音響センサに問合せるために、単一周波数可同調レーザダイオード(たとえば1520ナノメートルから1570ナノメートルの範囲で同調可能)を、FP音響センサの共鳴のうち1つの最も急峻な傾斜に同調させる。音声スピーカが発生する、10−50kHzの範囲の周波数fの音響音を、PCS上に出射する。FP音響センサが反射した変調後のパワーを、3dB結合器が分岐し、高速検出器が検出し、スペクトル分析器が分析し、スペクトル分析器は、fの検出されたパワーの大きさを与える。ファイバFP音響センサに入射する音圧も、較正したマイク(たとえばブリューエルケアー(Bruel & Kjaer)モデルNo.4191)で測定する。
図39Aは、空気中におけるファイバFP音響センサの検出された光パワーの、1kHzのスペクトル分析器帯域幅において30kHzの場合の、音圧に対する依存性を示す。図39Bは、より広い範囲の圧力について検出された光パワーを示す。図39Aの2つの雑音レベルは、スペクトル分析器の1kHzの帯域幅、および1Hzの帯域幅の検出システム(たとえばロックイン増幅器)の雑音レベルに相当し、一例が図39Cに概略的に示される。予想通り、ファイバFP音響センサ応答は、最大試験圧力250mPaまで線形である。低圧力において線形性は、機器のノイズフロア(−85dBm、1kHz帯域幅、図39Aにおける上側のノイズフロア曲線)の近傍から失われ始まると考えられる。ファイバFP音響センサは、10kHz−50kHzの範囲において比較的平坦な応答(10dBよりも良好)を示すこともわかった。1kHzの帯域幅においては、空気中で30kHzの高周波で動作するセンサの、最小検出可能圧力はしたがって、560μPaである。測定された応答は、図39Aおよび図39Bに示されるように、PBSおよびFPパラメータの機械的応答から理論的に予測された応答によく合致している(数dB内)。理論上の結果と実験結果の間の不一致は、PCSの孔の存在がシリコンメンブレン応答に影響しないと想定する、センサ応答の機械的計算が原因と思われる。
帯域幅を、センサの標準値である1Hz(−115dBm、図39Aの低い方のノイズフロア曲線)に減じることにより、最小検出可能圧力は、1Hz帯域幅で約18μPaまで減少し、これは、約18μPa/Hz1/2の感度に相当する(1×10−14メートルの最小検出可能変位に相当する)。この値は、非常に弱い音響信号レベルでファイバFP音響センサをテストし、ロックイン増幅器検出を用いることにより、実験的に確認された。すべてのこれら測定値における雑音は、検出器の熱雑音に支配され、これは、測定値における2.5−mWの検出されたパワーでさえショットノイズより高い。ショットノイズ制限検出器を用いると、最小検出可能圧力は1μPa/Hz1/2に減じるはずである。特定の実施例では、感度は、20kHzを下回る周波数では約100μPa/Hz1/2より良好である。特定の実施例では、感度は、比較的平坦な周波数応答で約50kHzより高周波数で約10μPa/Hz1/2より良好である。他の特定の実施例では、感度は、約10nPa/Hz1/2未満に改善可能である。
図39Dは、図39Aおよび図39BのファイバFP音響センサの例の周波数応答を示す。この周波数応答は、約10kHzと約40kHzの間の周波数範囲において約10dBまで全体的に平坦であり、約100kHzまでまたはそれよりも先まで延びると予測される。図39Cに示される波の多くは、センサと源との間の定在音波のためである。
このファイバFP音響センサについて、ファイバおよびPCS双方の反射率はおよそ65%である。他の特定の実施例では、容易にこの数値を約90%まで高めて感度を10dB以上改善できる。また、PCSシリコンメンブレンの直径または幅はおよそ150ミクロンであり、他の特定の実施例では、この直径または幅をこれよりも大きくすることができる。特定のさまざまな実施例において、PCSは、直径が、約50ミクロンより大きい、約100ミクロンより大きい、約125ミクロンより大きい、約150ミクロンより大きい、または、約200ミクロンより大きい。与えられた所与の圧力について、メンブレンの変位は、この直径または幅の4乗に比例して増大する。したがって、メンブレンの面積が少し増大しただけで、感度は大幅に改善するであろう(たとえば半径が2倍になると25dB)。これら2つの改良点のうち少なくとも1つについて、これらはいずれも簡単な製造ステップによって実現できるものであるが、他の特定の実施例の感度は、約1μPa/Hz1/2より良好であり、他の特定の実施例では、ショットノイズ限定検出において10nPa/Hz1/2より良好である。
熱機械雑音の分析
ファイバFPセンサに関する熱機械雑音を算出できるようにするには、熱雑音の源の簡単な見直しが役立つ。熱雑音は、ダイヤフラムのランダムな運動に関連し、これは、以下に示す、入射圧力がない場合の横方向変位uについての運動方程式を有する。
ファイバFPセンサに関する熱機械雑音を算出できるようにするには、熱雑音の源の簡単な見直しが役立つ。熱雑音は、ダイヤフラムのランダムな運動に関連し、これは、以下に示す、入射圧力がない場合の横方向変位uについての運動方程式を有する。
第1項は質量項、第2項は減衰項、第3項は屈曲項、第4項は応力項である。減衰項は、ダイヤフラムにおける振動が限りなく減少し続けることを意味している。ダイヤフラムの小さな熱的振動でさえ減少し、結果としてダイヤフラムの温度は周囲温度より低くなり、そのために、上記方程式は熱力学的に欠陥のあるものとなる。ダイヤフラムを熱平衡状態にするために、減衰による損失を補償する、ダイヤフラムを動かす圧力項を含める。したがって、入射する圧力がない場合の熱力学的に適切な方程式は以下のとおりである。
圧力項PNは、減衰損失を補うために含まれる、減衰Bの関数である自然発生的熱揺動から発生したものである。したがって、減衰によってシステムはエネルギを周囲に伝えることができるが、これによってシステムは周囲からエネルギを集めることもできる。この挙動が、揺動散逸定理の基礎である(例としてH.B.カレン(H.B. Callen)および T.A.ウェルトン(T.A. Welton)による「不可逆性および一般化雑音(Irreversibilityand generalized noise)」、Phys. Rev. Vol. 83, 34-40(1951)参照)。これは、散逸のすべてのメカニズムについて、システムには常に揺動力があると述べている。この方程式は解き難いものになる可能性があるが、特定の実施例では単純化することができ、その場合、音圧波の波長はダイヤフラムの半径よりはるかに大きく、音圧波の周波数はセンサの共鳴振動数よりはるかに低い。このような条件下において、変位、共鳴およびインピーダンスを分析的に算出することが可能である。
ナイキストの関係の一般化された形(例としてC.キッテル(C.Kittel)による「統計物理学の初歩(Elementary Statistical Physics)」、New York, Wiley(1958)参照)を用いて、変動圧力のスペクトル密度を計算することができ、これは、音響センサの熱雑音レベルである。
式中、Rtotal=B/Sはシステム内の減衰Bに関連する音響抵抗であり、S=πa2はダイヤフラムの面積である(例としてT.B.ガブリエルソン(T.B. Gabrielson)による「微小加工された音響および振動センサにおける機械的熱雑音(Mechanical thermal noise in micromachined acoustic and vibration sensors)」、IEEE Trans. Electron Devices, Vol. 40, 903-909(1993)参照)。粘性抵抗(Rvsc)および放射抵抗(Rrad)の、総音響抵抗Rtotal=Rvsc+Rradに対する個々の寄与については以下で述べる。加えて、ダイヤフラムに影響する有効な散逸についてのより正確な表現とともにセンサのより完璧なモデルについて述べる。
粘性抵抗Rvscは、熱運動を原因とするブラウン運動から生じる。ダイヤフラムは、流体の中で動くと、抗力を受ける。この抗力は、流体分子のランダムな衝突によって生じる。このため、粘性抵抗と呼ばれる、この散逸に伴う減衰項が存在する。したがって、ダイヤフラムは、静止しているとき、依然として熱雑音に寄与するランダムな力を受ける。
放射抵抗Rradは、熱運動を原因とする流体中のランダムな圧力変動から生じる。振動するダイヤフラムは、圧力波の発生を通して徐々にエネルギを失う。このため、放射抵抗と呼ばれる、この散逸に伴う減衰項が存在する。したがって、ダイヤフラムは、熱雑音に寄与する周囲環境の変動圧力を収集できる。
A.1 均一なダイヤフラムの近似
図40は、熱雑音の分析のためのファイバファブリペロー音響センサの構成の一例を概略的に示す。図40の構成は、半径a、厚みhの円形のダイヤフラムを有し、rhはダイヤフラムを貫通する孔の半径であり、Λは孔のアレイのピッチである。ダイヤフラムの間隙はdであり、媒体の動的粘度はμである。これらの寸法の値の例は、a=62.5μm、h=0.45μm、rh=0.32μm、Λ=0.88μm、d=5μmであり、動作周波数はω=2π×30kHz、周囲温度はT=20℃=293Kである。以下の計算において、孔はダイヤフラム全体にあるものとする。
図40は、熱雑音の分析のためのファイバファブリペロー音響センサの構成の一例を概略的に示す。図40の構成は、半径a、厚みhの円形のダイヤフラムを有し、rhはダイヤフラムを貫通する孔の半径であり、Λは孔のアレイのピッチである。ダイヤフラムの間隙はdであり、媒体の動的粘度はμである。これらの寸法の値の例は、a=62.5μm、h=0.45μm、rh=0.32μm、Λ=0.88μm、d=5μmであり、動作周波数はω=2π×30kHz、周囲温度はT=20℃=293Kである。以下の計算において、孔はダイヤフラム全体にあるものとする。
単純化のため、まず孔の効果を無視することにより、図40のダイヤフラムは均一であると想定する。特定のこのような実施例における粘性抵抗の主な寄与は、スクイーズ膜減衰と呼ばれる、間隙内に押し込まれた流体の水平方向の流れである。
このダイヤフラムの放射抵抗は、ω/υa<<1について次のように計算できる。
式中、ρaは流体の密度であり、υaは流体内の音の速度である(例としてL.E.キンダー(L.E. Kinder)、A.R.コペンズ(A.R. Coppens)およびJ.V.サンダース(J.V. Sanders)による「音響学の基礎(Fundamentals of Acoustics)」、Third Edition,New York, Wiley(1982)参照)。この場合の放射抵抗の熱雑音に対する寄与は小さい。しかしながら、この寄与は、より低い熱雑音レベルのために全体的な減衰を減じるのが望ましい場合には重要であろう。
孔がない場合の熱雑音レベルは、上記の式で算出され、空気についてはPair=33.5μPa/Hz1/2、水についてはPwater=246μPa/Hz1/2である。これらの雑音レベルは、一般に所望されるものよりほぼ1桁高い。したがって、孔の効果を含むより完璧なモデルが、孔の存在が熱雑音レベルを低減できるか否かについての分析には望ましい。
A.2 穿孔のあるダイヤフラム
ダイヤフラムに孔が存在することにより、エッジからの損失と平行した粘性損失についてのさらなる経路が生まれる。N個の孔の効果を含めることにより、流体が間隙の外に出るためのさらにN個の並列する経路が生まれる。したがって、この場合の粘性抵抗は次のようになる。
ダイヤフラムに孔が存在することにより、エッジからの損失と平行した粘性損失についてのさらなる経路が生まれる。N個の孔の効果を含めることにより、流体が間隙の外に出るためのさらにN個の並列する経路が生まれる。したがって、この場合の粘性抵抗は次のようになる。
孔の抵抗には2つの寄与があり、これらは、孔の周囲からの流体の水平方向の流れ(スクイーズ膜流れ)によるもの、および、孔を通る流体の垂直方向の流れ(ポアズイユ流れ)によるものである。各孔からの水平方向の流れの寄与は以下のとおりである(例としてZ.スコバル(Z. Skvor)による「静電変換器のエアギャップにおける粘性損失を原因とする音響抵抗について(On acoustical resistance due to viscous losses in the air gap of electrostatic transducers)」、Acustica, Vol. 19, 295-297(1967−1968)参照)。
一方、各孔からの垂直方向の流れの寄与は以下のとおりである(例としてD.ホメントコフスキ(D. Homentcovschi)およびR.N.マイルス(R.N. Miles)による「穿孔のある平坦微細構造の粘性減衰のモデリング−音響学における応用(Modeling of Viscous Damping of Perforated Planar Microstructures, Applications in Acoustics)」、Journal of the Acoustical Society of America, Vol. 116, 2939-2947(2004)参照)。
したがって、スクイーズ膜減衰に対する孔の寄与を含めるなら、熱雑音レベルは、空気についてはPair=29.4μPa/Hz1/2、水についてはPwater=216μPa/Hz1/2となる。このように、孔は雑音レベルの低減にはあまり役立たない。それは主として、小さな孔を通る垂直方向の流れの粘性抵抗が高いためである。エッジからの流出のない閉じられたキャビティについては、減衰はさらに高いため、熱雑音は、空気についてはPair=61.1μPa/Hz1/2、水についてはPwater=448μPa/Hz1/2となる。
これらの比較的簡単な計算は、ファイバFP音響センサの自己雑音を低くするには、設計を詳細に検討しなければならないことを示している。センサのさまざまな側面のより正確なモデルを用いて、周囲媒体の効果を含む、入射圧力に対するセンサの周波数依存応答を算出できる。周囲の熱雑音は本質的に白色雑音であるが、上記の計算の単純な想定では、ダイヤフラムには伝わらない。ダイヤフラムの音響インピーダンスおよび散逸要素は完全に合致しないため、ダイヤフラムに伝わる雑音はより複雑である。さらに、インピーダンスは一般的に周波数に依存するため、ダイヤフラムに伝わる雑音は周波数とともに変化する。これらの効果は以下の説明で扱う。
B.センサの集中定数等価回路モデリング
センサの応答および雑音特性を計算するには、センサの動作を簡単に説明するモデルがあると有利である。このようなモデルを構成する1つの方法は、センサのさまざまな要素の音響インピーダンスを含むセンサの等価回路を描くことである。この回路の中において、電気抵抗およびキャパシタンスの代わりに、散逸に対応する音響抵抗Rおよび位置エネルギの蓄積に相当するコンプライアンスCを用いる。同様に、電気抵抗の代わりに、運動エネルギの蓄積に対応する音響質量Mを用いる。
センサの応答および雑音特性を計算するには、センサの動作を簡単に説明するモデルがあると有利である。このようなモデルを構成する1つの方法は、センサのさまざまな要素の音響インピーダンスを含むセンサの等価回路を描くことである。この回路の中において、電気抵抗およびキャパシタンスの代わりに、散逸に対応する音響抵抗Rおよび位置エネルギの蓄積に相当するコンプライアンスCを用いる。同様に、電気抵抗の代わりに、運動エネルギの蓄積に対応する音響質量Mを用いる。
ファイバFP音響センサの一例の等価回路が、図41Aに概略的に示される。このモデリングのよりよい理解のために、図41Bは、同じ回路をファイバFP音響センサの概略図の上にもう一度示している。入射圧力Pinおよびダイヤフラムに作用する圧力Pdの関係は、伝達関数Hsensor=Pd/Pinによって示される。簡単な回路分析を通して、ダイヤフラムに対する圧力を計算できるため、センサの伝達関数は、次の3つの伝達関数Hd、Hcav、およびHleakで示され、これらは帯域フィルタ関数の逆数である。これら関数の指数の選択は、これらと、振動するダイヤフラムに送られるエネルギ(Hd)、孔を通して振動するキャビティに送られるエネルギ(Hcav)および孔を通した漏れのために起こるダイヤフラム応答の減少(Hleak)との関係による。上記伝達関数は次のように表現できる。
雑音を計算するために、雑音等価回路を使用することができ、これは図42に概略的に示され、入射する圧力はなく、雑音源が散逸要素と直列の関係にあり、粘性抵抗Rvscおよび放射抵抗Rradが示される。インピーダンス不整合のため、ダイヤフラムに伝達される雑音は、前のセクションで想定したものよりも複雑である。図40の構成について、30kHzでのインピーダンス(1012Pa−s/m3の単位)は次のようになる。
音響抵抗:Rvsc=12、Rrad=0.0038
音響質量:ωMd=0.029、ωMrad=0.81、ωMhole=0.031
音響コンプライアンス:(1/ωCd)=6.5、(1/ωCcav)=190,000
特定の実施例では、Ccav項の高インピーダンスがシステムを支配するであろう。
音響質量:ωMd=0.029、ωMrad=0.81、ωMhole=0.031
音響コンプライアンス:(1/ωCd)=6.5、(1/ωCcav)=190,000
特定の実施例では、Ccav項の高インピーダンスがシステムを支配するであろう。
これらの雑音源のダイヤフラムに対する効果を計算するために、これらの雑音源についての伝達関数をHsensorとまさに同じやり方で計算することができ、次のようになる。
許容可能な低雑音レベルを得るには、設計パラメータを選択して低いRvscおよびRradとなるようにするのが有利である。また、フィルタ関数Hcavの周波数応答を急峻なものにし、雑音が非常に低い周波数でしか増幅されないようにし、センサが動作する帯域幅の中では増幅されないようにするのが有利である。この式はまた、センサの自己雑音はダイヤフラムの剛性を変えても改善できないという興味深い結果をもたらす。
C.センサのスペクトル挙動
等価回路モデルに基づき計算を行なうには、個々の音響インピーダンスを計算できると有利である。このモデルは、2つの散逸要素、粘性抵抗Rvscおよび放射抵抗Rradを含む。N個の孔の有効粘性抵抗は次のように表わすことができる。
等価回路モデルに基づき計算を行なうには、個々の音響インピーダンスを計算できると有利である。このモデルは、2つの散逸要素、粘性抵抗Rvscおよび放射抵抗Rradを含む。N個の孔の有効粘性抵抗は次のように表わすことができる。
(例として先に引用したL.E.キンダー他、W.クーネル(W. Kuhnel)およびG.ヘス(G. Hess)による「構成されたバックプレートおよび窒化シリコンメンブレンを有するシリコンコンデンサマイク(A silicon condenser microphone with structured back plate and silicon nitride membrane)」、Sensors and Actuators A, Vol. 30, 251-258(1992)参照。)
2つの音響コンプライアンス、すなわちダイヤフラムコンプライアンスCdおよびキャビティコンプライアンスCcavが、このモデルにおいて考慮される。プレートについてのダイヤフラムコンプライアンスは、次のように表わすことができる。
2つの音響コンプライアンス、すなわちダイヤフラムコンプライアンスCdおよびキャビティコンプライアンスCcavが、このモデルにおいて考慮される。プレートについてのダイヤフラムコンプライアンスは、次のように表わすことができる。
(例としてM.ロッシ(M. Rossi)による「音響学および電気音響学(Acoustics and Electroacoustics)」、Artech House, Inc., 1st ed.,(1988)参照)。体積Vcavのキャビティのコンプライアンスは次のように表わすことができる。
(例として先に引用したW.クーネル他参照。)
このモデルにおいて3つの音響質量、すなわちダイヤフラム質量Md、放射質量Mradおよび孔質量Mholeが考慮される。
このモデルにおいて3つの音響質量、すなわちダイヤフラム質量Md、放射質量Mradおよび孔質量Mholeが考慮される。
(例としてM.ツェルナー(M. Zollner)およびE.ツウイッカー(E. Zwicker)による「Elektroakustic」、Berlin, Spinger Verlag(1987)参照。)
以下でより十分に説明されるが、このモデルを用いて計算を行い、空気中および水中におけるセンサの性能を予測できる。特定の実施例では、最適センサ性能が、(1)広範囲において1(unity)の応答に近いことおよび(2)周囲雑音レベルに近い雑音レベルによって得られる。
以下でより十分に説明されるが、このモデルを用いて計算を行い、空気中および水中におけるセンサの性能を予測できる。特定の実施例では、最適センサ性能が、(1)広範囲において1(unity)の応答に近いことおよび(2)周囲雑音レベルに近い雑音レベルによって得られる。
C.1 空気媒体におけるセンサ
図43Aは空気媒体についてのセンサ応答を示し、図43Bは空気媒体についてのセンサの雑音を示す。図43Aに示されるように、センサ応答には傾斜があり、これは孔を通した大きな漏れのためである。DC圧力変動をフィルタ処理して除去するのが有利であるが、高周波数をフィルタ処理で除去することは望ましくない。特定の実施例は、孔の数を減じることによってより平坦な応答を得ることができる。
図43Aは空気媒体についてのセンサ応答を示し、図43Bは空気媒体についてのセンサの雑音を示す。図43Aに示されるように、センサ応答には傾斜があり、これは孔を通した大きな漏れのためである。DC圧力変動をフィルタ処理して除去するのが有利であるが、高周波数をフィルタ処理で除去することは望ましくない。特定の実施例は、孔の数を減じることによってより平坦な応答を得ることができる。
図43Bにおいて、上の実線はこのモデルを用いて計算した雑音に相当し、点線は上記のより簡単なモデルを用いて計算した雑音レベルであり、下の実線は放射抵抗のみによる雑音である周囲雑音レベルである。放射抵抗は媒体の本質的な性質であるため、常に存在する。センサ雑音レベルは、約100kHz未満の周波数について、約65μPa/Hz1/2未満であり、周囲雑音レベルよりもかなり高い。
図43Aおよび図43Bでは、孔が実質的にダイヤフラム全体に分布している。他の特定の実施例では、孔の数を減じて孔がダイヤフラムの中央部分の中で分布するようにしダイヤフラム全体に存在しないようにする。たとえば、図44Aおよび図44Bはそれぞれ、空気媒体についてのセンサ応答および雑音を示し、アレイはN=20×20の孔からなる。図44Aは、孔を通した漏れを減じることにより、応答がより高い周波数で飽和することを示している。しかしながら、応答が平坦にはなるものの、1に近くはない。この理由は、図41Aの等価回路モデルを見ることによって理解できる。圧力の一部はキャビティの上に加えられるため、キャビティはダイヤフラムの応答を減じるばねとして作用する。この効果を取除くには、特定の実施例においてキャビティの剛性を減じることができる。言い換えれば、キャビティの音響コンプライアンスを高めることができるため、キャビティのインピーダンスは重要でなくなり、圧力のほとんどはダイヤフラムの上に加わる。キャビティコンプライアンスCcavを増大させるために、このモデルは、より大きなキャビティ体積を使用できることを示している。図44Bは、センサ雑音が孔の数を減じることによって改善していることを示す。
図45Aおよび図45Bはそれぞれ、空気媒体についてのセンサ応答および雑音を示し、孔はダイヤフラム全体にあるが、キャビティサイズは増大している(たとえばVcav=(0.3mm)3)。図45Aは、キャビティの体積を増大させるだけで(たとえば約(0.1mm)3より大きくする)、非常に平坦な1(unity)応答が得られることを示している。急速な収束も、孔の数を減じる効果より良好である(図44Aと比較)。図45Bは、雑音も大幅に改善していることを示し、このため、センサの雑音レベルは、空気媒体中の周囲の雑音レベルに非常に近い。センサの雑音レベルは、約25kHzと約100kHzの間の周波数について、約10μPa/Hz1/2未満である。したがって、特定の実施例では、キャビティの体積を有利に増してファイバFP音響センサの応答および雑音双方を改善する。特定のさまざまな実施例において、キャビティの体積は、(0.1mm)3より大きい、(0.3mm)3より大きい、(0.5mm)3より大きい、(1mm)3より大きい、または(2mm)3より大きい。特定のさまざまな実施例において、キャビティの体積は、(0.1mm)3と(3mm)3の間、(0.2mm)3と(3mm)3の間、または(0.3mm)3と(3mm)3の間の範囲である。
C.2.水媒体におけるセンサ
図46Aおよび図46Bはそれぞれ、水媒体についてのセンサのセンサ応答および雑音を示す。センサ応答は、周囲媒体が水の場合大幅に減少し、応答は3.5×10-5(−90dB)まで減少する。図46Bに示される雑音レベルは、非常に応答が低いことを考えるとかなり悪く、このため雑音のそれほど多くはピックアップされない。周波数が低い場合、15kHzのハイパスカットオフで、応答は、孔を通した漏れのためにゼロに低下する。より高い周波数ではPd<<Pinであり、これは小さなキャビティにおいて水が押し戻されるからである。このように、図40の構成に対応する特定の実施例は空気中で用いることができるが、このような構成は水中ではうまく機能しない。なぜなら、キャビティの中で捉えられる水の追加された剛性が、応答を約90dB低下させるからである。
図46Aおよび図46Bはそれぞれ、水媒体についてのセンサのセンサ応答および雑音を示す。センサ応答は、周囲媒体が水の場合大幅に減少し、応答は3.5×10-5(−90dB)まで減少する。図46Bに示される雑音レベルは、非常に応答が低いことを考えるとかなり悪く、このため雑音のそれほど多くはピックアップされない。周波数が低い場合、15kHzのハイパスカットオフで、応答は、孔を通した漏れのためにゼロに低下する。より高い周波数ではPd<<Pinであり、これは小さなキャビティにおいて水が押し戻されるからである。このように、図40の構成に対応する特定の実施例は空気中で用いることができるが、このような構成は水中ではうまく機能しない。なぜなら、キャビティの中で捉えられる水の追加された剛性が、応答を約90dB低下させるからである。
図47Aおよび図47Bはそれぞれ、水媒体についてのセンサ応答および雑音を示し、アレイはN=20×20の孔からなる。図47Aは、平坦な帯域への収束は改善しているものの、最大応答が依然として非常に低い値であることを示している。孔がより少ないことは、漏れが少ないことに相当し、したがってカットオフ周波数はより低い(たとえば25Hz)。図47Bに示す雑音レベルは改善しているように見えるが、応答が非常に低いときにはそれほどでもない。
図48Aおよび図48Bはそれぞれ、水媒体についてのセンサ応答および雑音を示し、孔はダイヤフラム全体にあるが、キャビティの大きさが増大している(たとえば約(0.1mm)3より大きい)。図48Aは、キャビティ体積がVcav=(0.3mm)3の音響センサの応答が、広い帯域にわたって1(unity)であり(たとえば約70kHzまで)、かつ全体的に平坦である(たとえば約10dBまで)ことを示し、Pd≒Pinである。より高い周波数では、共鳴が観察され、これは対象とする周波数からかなり離れている。キャビティの体積がより小さな構成では、この共鳴はより高い周波数で起こるが、より大きなキャビティ体積の構成では、全体の剛性が低下するため、低い周波数になる。図48Bは、この雑音レベルが周囲雑音レベルに匹敵することを示す(たとえば10kHz−70kHzについて)。したがって、空気媒体については、キャビティの体積を有利に増大させることができる。特定のさまざまな実施例において、キャビティ体積は、(0.1mm)3より大きい、(0.3mm)3より大きい、(0.5mm)3より大きい、(1mm)3より大きい、または(2mm)3より大きい。特定のさまざまな実施例において、キャビティ体積は、(0.1mm)3と(3mm)3の間の範囲、(0.2mm)3と(3mm)3の間の範囲、または(0.3mm)3と(3mm)3の間の範囲である。
図48Cは、より低い周波数範囲における図48Aのセンサ応答を示し、約1kHzのハイパスカットオフのため、音響センサの周波数応答は、約1kHzと約70kHzの間の範囲において全体的に平坦である。図48Dは、より低い周波数範囲における図48の雑音レベルを示し、雑音レベルは、約10kHzを上回る周波数については周囲雑音レベルに近い。センサ雑音レベルは、約15kHzと約50kHzの間の周波数について約30μPa/Hz1/2よりも低い。したがって、特定の実施例では、より大きなキャビティ体積を、水中における音響センサに対して有利に用いる。
図49Aおよび図49Bは、キャビティ体積が増した音響センサの2つの実施例を示す。図49Aでは、より大きなキャビティには複数のセンサがあり(たとえば2対のファイバPCS)、センサ間の領域はキャビティにさらなる体積を与える。特定のこのような実施例は、ファイバの製造および整列に利点をもたらす。図49Bでは、1つのセンサに対して大きなキャビティが使用され(たとえば1対のファイバPCS)、キャビティの壁はセンサおよび光ファイバから全体的に離れるように延在する。特定の実施例では、キャビティ体積は、約1000のファクタ増大する。特定の実施例では、図49Bに概略的に示されるように、このキャビティを、光ファイバおよび周囲の構造に結合された高粘度エポキシで封止することができる。
D.ダイヤフラムのメカニクスに対する孔の効果
特定の実施例において、穿孔の、ダイヤフラムの剛性に対する効果を有利に調整できる。均一的なダイヤフラムについての上記運動方程式は以下のとおりであった。
特定の実施例において、穿孔の、ダイヤフラムの剛性に対する効果を有利に調整できる。均一的なダイヤフラムについての上記運動方程式は以下のとおりであった。
この孔は、ダイヤフラムの弾力性を非常に異方性のあるものにする(例としてM.ペデルセン(M. Pedersen)、W.オルトウィス(W. Olthuis)およびP.ベルグベルド(P. Bergveld)による「穿孔のある薄いプレートの機械的挙動およびシリコンコンデンサマイクにおけるその応用について(On the mechanical behaviour of thin perforated plates and their applications in silicon condenser microphones)」、Sens. Actuators A, Vol. 54, 499-504(1996)参照)。しかしながら、この構造を、以下の有効弾性パラメータを用いて均一−等質となるように近似することができる。
ファイバ端部上のフォトニック結晶構造
本明細書において説明する特定の実施例は、ファイバの先端部または端部上に形成されたフォトニック結晶構造を提供する。特定の実施例では、このような構造をファイバFP音響センサのミラーの1つとして使用できるが、それ以外の実施例では、このような構造をたとえば血液中の生物学的因子を検出するための使い捨てインデックスセンサとして使用できる。特定の実施例は、フィルタ、ミラーまたはファイバのインターフェイスに自由空間を用いる応用例におけるファイバの端部の偏光子として使用できる。特定の実施例では、この構造を劈開または研磨された別のファイバに(たとえば融着接続によって)接合し、フォトニック結晶が2本のファイバの間に残るようにすることができる。このように、フォトニック結晶をインライン反射器、フィルタまたは偏光子として用いることができる。たとえばファイバブラッググレーティングに基づくフィルタに対し、特定の実施例が提供する1つの利点は、その非常に小さな厚み(たとえば<500ナノメートル)によるこのようなフィルタの温度安定性であろう。
本明細書において説明する特定の実施例は、ファイバの先端部または端部上に形成されたフォトニック結晶構造を提供する。特定の実施例では、このような構造をファイバFP音響センサのミラーの1つとして使用できるが、それ以外の実施例では、このような構造をたとえば血液中の生物学的因子を検出するための使い捨てインデックスセンサとして使用できる。特定の実施例は、フィルタ、ミラーまたはファイバのインターフェイスに自由空間を用いる応用例におけるファイバの端部の偏光子として使用できる。特定の実施例では、この構造を劈開または研磨された別のファイバに(たとえば融着接続によって)接合し、フォトニック結晶が2本のファイバの間に残るようにすることができる。このように、フォトニック結晶をインライン反射器、フィルタまたは偏光子として用いることができる。たとえばファイバブラッググレーティングに基づくフィルタに対し、特定の実施例が提供する1つの利点は、その非常に小さな厚み(たとえば<500ナノメートル)によるこのようなフィルタの温度安定性であろう。
このような装置の製造、たとえばシリコンといった材料をファイバの端部に堆積させ、リソグラフィ技術を用いてその上の小さな構造体をパターニングすることは、困難となる可能性がある。シリコンなどの材料の堆積に関係する高温(たとえば数百℃)および特にホットプラズマを用いてその中にパターンをエッチングすることにより、光ファイバのポリマーコーティングに損傷が生じるおそれがある。また、1本のファイバの非常に大きなアスペクト比のため、パターニングが難しい。これは、多くの微細加工機器においてはその中にこのような構造を入れるための空間に制限があるからである。
本明細書で説明する特定の実施例は、ファイバの端部に形成された光学構造(たとえばフォトニック結晶構造)を利用する。特定のこのような実施例では、温度の問題およびそれ以外の物理的制約を克服する製造方法を用い、特定のこのような実施例を用いてフォトニック結晶構造を単一モードファイバの端部のシリコンの上に形成できる。図50は、本明細書で説明する特定の実施例に従う、ファイバ730の端部の誘電体層720の中に形成されたフォトニック結晶構造710を含む装置の一例700を示す。図51は、本明細書で説明する特定の実施例に従う、単一モードシリカファイバ730のファイバ端部の厚さ350nmの非晶質シリコン層720の中に形成されたフォトニック結晶構造の一例710の、一対の走査電子顕微鏡写真を示す。
図52は、本明細書で説明する特定の実施例に従う、ファイバの端部に光学構造を製造する方法の一例800のフロー図である。特定の実施例において、この方法800は、動作ブロック810においてファイバ端部を準備することを含む。ファイバ端部の準備の例は、ファイバを劈開し、またはファイバの端部を研磨し、ファイバの端部の表面を滑らかにすることを含むが、これに限定されるわけではない。特定の実施例では、湾曲したファイバ面を用いてもよい。特定の実施例では、ファイバは単一モードまたは多モードとすることができる。
特定の実施例において、この方法800はさらに、動作ブロック820において、誘電体層720を準備したファイバの端部に堆積させることを含む。特定の実施例では、誘電体層720を電子ビーム蒸着によってファイバの端部に蒸着させる。たとえば、非晶質シリコン(またはゲルマニウムなどの他の高屈折率誘電体)を、電子ビーム蒸着器を用いてファイバの端部に蒸着させることができる。特定の実施例では、誘電体層720を、スパッタリングまたは化学蒸着といった他の方法によって堆積させることができるが、これらに限定されるわけではない。他の特定の実施例では、二酸化シリコン、シリコン窒化物、フッ化マグネシウムまたは一酸化シリコンを誘電体層720として用いることができる。
特定の実施例では、この方法はさらに、動作ブロック830において誘電体層720をパターニングすることを含む。たとえば、特定の実施例において、誘電体層720のパターニングを、フォトニック結晶格子710をファイバ730の端部の誘電体層720の上に直接パターニングする集束イオンビームを用いたイオンミリングにより行う。特定の実施例のフォトニック結晶は、誘電体層720の一部または全体いずれかに延在する孔の周期的なアレイを含む。特定の実施例において、この方法800はさらに、パターニングプロセスの前に、パターニングプロセス中の帯電効果を減じるために、誘電体層720を金の薄い層(たとえば厚さ約10ナノメートル)で覆うことを含む。他の特定の実施例では、誘電体層720をリソグラフィ技術を用いてパターニングすることができる(たとえばファイバの端部をフォトレジスト材料で覆い、これを光学または電子ビームリソグラフィ工具を用いて露光し、フォトレジストを現像し、誘電体層720を通したエッチングを行ない、フォトレジストを剥がす)。特定の実施例では、フォトニック構造710の孔の周期的アレイは、ファイバ730のコア領域の面積の少なくとも一部を覆っており、このような特定の実施例では、孔の周期的アレイは、ファイバ730のコア領域全体を覆う。電子ビーム蒸着およびイオンミリングの性質から、ファイバ構造の長さに関する温度の問題または課題が生じることはない。
特定の実施例においてフォトニック結晶パターンの孔を、円形、正方形、矩形および鍵穴を含むさまざまな形状にすることができるが、これらに限定されるわけではない。これらの孔を正方格子、三角格子および六方格子を含む異なる種類の二次元格子に配置できるが、これらに限定されるわけではない。これらのパターンは不均一でもよく、たとえば孔の大きさがパターンの中央部分とパターンの外側部分とで異なっていてもよい。同様に、パターンが、孔の欠損または個々の孔の大きさがパターンの残りの部分と比較して異なるといった欠陥を含んでいてもよい。
図53Aは、光ファイバ730と自由空間との間のインターフェイスとしての装置の一例700を概略的に示す。フォトニック結晶710は、光ファイバ730のコア領域732を覆う。このような特定の実施例では、装置700を、フォトニック結晶710が反射器またはフィルタとして作用するいくつかの応用例で使用できる。上記のように、このような装置700を、ダイヤフラムセンサにおいて、ファブリペロー干渉計のミラーとして用い、たとえば音響信号を検出することができる。また、装置700は、ファイバ730から出射する、または、ファイバ730に結合される光のためのフィルタまたは偏光子の役割を果たすことができる。同様に、たとえばレーザとして使用されるアクティブフォトニック結晶を、この構成においてファイバによってポンピングすることができる。
特定の実施例では、装置700を、別の劈開または研磨されたファイバ740に(たとえば融着接続によって)接合し、図53Bに示されるようにフォトニック結晶710が2本のファイバ730、740の間に残るようにする。特定のこのような実施例では、光のほとんどはファイバ730、740の内側で直線状のままである。このように、フォトニック結晶710をインラインリフレクタ、フィルタまたは偏光子として使用できる。同様に、特定の実施例は、光ファイバジャイロスコープといったファイバに基づく応用例において非常に有用であるインライン偏光ミラーとして使用できる。特定の実施例は、活性材料からパターニングされたフォトニック結晶710を用いた、上記のものと同様のファイバレーザとして使用できる。
特定の実施例では、フォトニック結晶710におけるモードを光学的近接場に直接結合することができ、装置700を小型の近接場センサとして使用できる。フォトニック結晶710の光学的特性は、周囲の媒体750の屈折率が変化すると、大きく変化し得る。このような特定の実施例では、装置700をインデックスセンサとして使用できる。たとえば、図53Cに概略的に示されるように、単一モードファイバ(たとえば直径125ミクロン)には医学的応用例がある。なぜなら、その大きさは、静脈および組織の中を通すのに適しているからである。潜在的に低コストであるため、このような特定の実施例は使い捨てセンサとして使用可能である。特定の実施例では、このようなセンサの感度を、小さな突起が片側にあるため鍵穴のように見える円形の孔といった鏡面対称性のない孔を用いて、改善することができる。
図54は、本明細書で説明する特定の実施例に従う、フォトニック結晶構造(たとえば近接場結合フォトニック結晶装置)を製造する方法の一例900のフロー図である。図55A−図55Fは、本明細書で説明する特定の実施例に従い、光ファイバ1010の端部に近接場結合フォトニック結晶装置1000を形成するための一連の製造ステップの一例を概略的に示す。
この方法900は、動作ブロック910において、第1の誘電体層1020を、光ファイバ1010の端部に形成することを含む。図55Aでは、450ナノメートルの非晶質シリコン層を含む第1の誘電体層1020を、光ファイバ1010の劈開または研磨された端部の上に蒸着させている。
この方法900はさらに、動作ブロック920において、犠牲層1030を、第1の誘電体層1020の少なくとも一部の上に形成することを含む。特定の実施例では、犠牲層1030を形成することは、100ナノメートルのクロム層1032を、第1の誘電体層1020の上に(たとえば電子ビーム蒸着によって)形成し、500ナノメートルの金の層1034を(たとえば電子ビーム蒸着によって)クロム層1032の上に形成することを含む。特定の実施例では、第1の誘電体層1020、クロム層1032および金の層1034は、同一の電子ビーム蒸着システム内において次々に形成される。図55Bに示されるように、クロム層1032の一部が、たとえばこの構造を室温のウエットクロムエッチャントの中に浸漬させることによって、除去される。図55Cに示されるように、金の層は、たとえばこの構造を室温のウエット金エッチャントの中に浸漬させることによって、除去される。
この方法900はさらに、動作ブロック930において、第2の誘電体層1040を犠牲層1030の上に形成することを含む。たとえば、図55Dに示されるように、この構造を、電子ビーム蒸着システムに戻し、第2の450ナノメートルのシリコン層を含む第2の誘電体層1040を、この構造の上に蒸着させる。
この方法900はさらに、動作ブロック940において、第1の誘電体層1020をパターニングして第1のフォトニック結晶スラブ1050を形成し、動作ブロック950において、第2の誘電体層1040をパターニングして第2のフォトニック結晶スラブ1060を形成することを含む。たとえば、図55Eに示されるように、第1のフォトニック結晶スラブ1050および第2のフォトニック結晶スラブ1060は、一回のイオンミリングステップにおいてパターニングされて第1および第2のシリコン層になる。
この方法900はさらに、動作ブロック960において犠牲層1030を除去することを含む。たとえば、図55Fに示されるように、クロム層1032の残りの部分を、この構造をウエットクロムエッチャントの中に浸漬させることによって除去する。特定の他の実施例では、フォトニック結晶格子以外の、他のさまざまなパターンを構造に含めることができる。たとえば、インデックス検知応用例では、より大きな孔をミリングによって第2の誘電体層1040に形成し、2つの誘電体層間の隙間に至る溝を形成することにより、液体が容易に2つのフォトニック結晶スラブ間の隙間を通るようにすることができる。
特定の実施例では、上記製造方法を用いて、光ファイバの端部に、フォトニック結晶以外の他の光学素子を作ることができる。たとえば、ジャイロスコープといった電気通信およびファイバベースの物理的装置を含むいくつかの応用例では、位相分布、電界振幅分布および光学モードにおける偏光分布を操作できる、1つ以上のサブ波長グレーティングを備えることが望ましい。
ホログラフィック波長板(またはコンピュータ生成ホログラム)といった構造を、ファイバ先端の非晶質シリコン層の上にパターニングすることにより、本明細書で説明する特定の実施例を用いて、単一モードファイバの基本ガウスモードを、より高次のラゲールガウスモードに変換できる。このようなモードは、微小粒子の光学的トラップおよび操作といった応用例において使用できる、ドーナツ形状モードおよびさらに複雑なモードを含むが、これらに限定されるわけではない。共焦点顕微鏡法といったいくつかの応用例については、開口数の大きな物体の正面の焦点面にドーナツ形状の焦点があることが望ましい。ホログラフィック波長板によって、通常は放射および方位角偏光である、従来と異なる空間可変偏光(ここで従来とは直線偏光、円偏光または楕円偏光を指す)のモードを作り出すこともできる。このような空間可変偏光状態を用いることにより、特定の実施例では、光を、回折限界より小さなスポットに集光することさえ可能である(例としてR.ドーン(R. Dorn)他による「放射偏光光ビームのより鮮明な焦点(Sharper focus for a radially polarized light beam)」、Phys. Rev. Lett., Vol. 91, 233901(2003)参照)。図55Aは、本明細書で説明する特定の実施例に従う、ホログラフィック波長板の3つの例を示す(U.レビー(U. Levy)他による「偏光制御のための空間可変不均質媒体の設計(Engineering space-variant inhomogeneous media for polarization control)」、Opt. Lett., Vol. 29, 1718(2004)より)。図55Bは、本明細書で説明する特定の実施例に従い、GaAsに形成されたサブ波長の波長板の一例の断面の2つの走査電子顕微鏡写真を示す(レビー他より)。
本明細書で説明する特定の実施例では、ファイバを、出力モードが、ドーナツモードといった有用な強度分布かまたは放射偏光といった偏光分布かいずれかである、ホログラフィック波長板をその端部に置いて、形成できる。さまざまな実施例において、このようなモードを用いて、微小粒子をトラップしトルクをこれら粒子に与えることができる。ドーナツ形状モードは、周囲の流体よりも屈折率の低い粒子をトラップするトラップ力を増すこともできる。本明細書で説明する特定の実施例が、標準的な光学トラップおよび操作方法に対して有する利点は、光学素子がすべて1本のファイバ中に一体化されるため、これを溶液内に浸漬させ、特定領域または粒子群をターゲットとし、ファイバおよびトラップされた粒子双方の周りで動くことが容易である点である。
特定の実施例では、1つ以上の偏光子を、サブ波長グレーティングをファイバの端部に形成することによって作ることができる。本明細書で説明する特定の実施例に従う1つの方法を用いて、通常の一次元グレーティングパターンをファイバ端部の非晶質シリコン層の上に作ることにより、従来の直線偏光子を得ることができる。特定の応用例および波長範囲において、金属層をシリコン層に加える、またはシリコン層を完全に金属層に置き換えることができる。こういった種類の偏光子は通常、図56に概略的に示されるワイヤグリッド偏光子と呼ばれる。より複雑な偏光フィルタを、これと同じプロセスで、より複雑な形状の金属ワイヤのパターンを堆積させることにより、作ることもできる。たとえば、コアを中心とする同心円のパターンは、TEモードおよびTMモードを区別するフィルタとして作用する。これらモードのうち一方のモードは減衰するが他方のモードは減衰しない。コアの中心から広がる放射金属線のパターンは、性質が逆の偏光子を作る。偏光子を作る他の方法として、たとえば楕円金属粒子をガラス層の中に埋込んで偏光子をファイバの端部に形成するという方法もある(例として馬場一隆による「傾斜した金属島を用いる光学偏光フィルムの理論的特性(Theoretical characteristics of optical polarizing films using oblique metal island films)」、Proceedings of SPIE, Vol. 6116, 611605-1(2006)参照)。
これらのファイバは、端部においてサブ波長構造でパターニングされたものであり、特定の実施例では、接合または低温接着方法を用いて第2のファイバと組合せることもできる。このため、サブ波長構造は、ファイバの間で直線状に残る。特定の実施例は、たとえば、ホログラフィック波長板を有する種類の異なる2つのファイバのインターフェイスとなり、ファイバ間の結合を容易にすることができる。特定の実施例は、サブ波長偏光子を2本のファイバの間に埋込むことによって、ファイバ偏光子を作ることもできる。
さまざまな実施例について説明してきた。本発明について、これら具体的な実施例を参照しながら説明してきたが、この説明は、発明の例示を意図しており、限定と解釈されるべきではない。さまざまな変形および応用例は、特許請求の範囲で規定される発明の精神および範囲から逸脱することなく、生まれるであろう。
Claims (26)
- 光学的構造を光ファイバの上に製造する方法であって、
光ファイバの端部を準備するステップと、
層を前記光ファイバの端部の上に形成するステップと、
前記形成するステップに続いて前記層をパターニングして前記光学的構造を形成するステップとを含む、光学的構造を製造する方法。 - 前記端部を準備するステップは、前記光ファイバを劈開して前記端部を形成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記層を形成するステップは、前記層を前記光ファイバの端部の上に、電子ビーム蒸着、スパッタリングまたは化学蒸着によって堆積させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記層をパターニングするステップは、焦点を合わせたイオンビームを用いて前記層をイオンミリングするステップを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記光学的構造は、前記層の一部または全体を通して延在する孔の周期的アレイを備えるフォトニック結晶構造を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記層は誘電体材料を含み、前記方法はさらに、前記誘電体材料を前記層をパターニングするステップの前に1つ以上の金属層で覆うステップを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記光学的構造は、前記光ファイバのコア領域の面積の少なくとも一部を覆う、請求項1に記載の方法。
- 前記光学的構造はサブ波長グレーティングを含む、請求項1に記載の方法。
- フォトニック結晶構造の製造方法であって、
第1の誘電体層を光ファイバの端部に形成するステップと、
犠牲層を前記第1の誘電体層の少なくとも一部の上に形成するステップと、
第2の誘電体層を前記犠牲層の上に形成するステップと、
前記第1の誘電体層を形成するステップに続いて、前記第1の誘電体層をパターニングして第1のフォトニック結晶スラブを形成するステップと、
前記第2の誘電体層をパターニングして第2のフォトニック結晶スラブを形成するステップと、
前記犠牲層を除去するステップとを含む、フォトニック結晶構造の製造方法。 - 前記犠牲層はクロムを含み、前記犠牲層を形成するステップは、
クロム層を前記第1の誘電体層の少なくとも一部の上に形成するステップと、
金の層を前記クロム層の上に形成するステップと、
前記クロム層の一部を除去するステップと、
前記金の層を除去するステップとを含む、請求項9に記載の方法。 - 前記第1の誘電体層をパターニングするステップおよび前記第2の誘電体層をパターニングするステップは同時に行なわれる、請求項9に記載の方法。
- 前記第2の誘電体層をパターニングするステップは前記第2の誘電体層を前記犠牲層の上に形成するステップに続いて行なわれる、請求項9に記載の方法。
- 光学装置であって、
光ファイバの端部と、
前記光ファイバの端部上に堆積させた材料を含む層とを含み、前記層は、前記層に垂直な方向の第1の光路長を有する1つ以上の第1の部分と、前記層に垂直な方向の第2の光路長を有する1つ以上の第2の部分とを含み、前記第2の光路長は前記第1の光路長と異なる、光学装置。 - 前記1つ以上の第1の部分は第1の屈折率を有し、前記1つ以上の第2の部分は前記第1の屈折率と異なる第2の屈折率を有する、請求項13に記載の光学装置。
- 前記1つ以上の第1の部分は前記層に垂直な方向の第1の厚みを有し、前記1つ以上の第2の部分は前記層に垂直な方向の第2の厚みを有し、前記第2の厚みは前記第1の厚みと異なる、請求項13に記載の光学装置。
- 前記光ファイバの端部は劈開される、請求項13に記載の光学装置。
- 前記層は、非晶質シリコン、二酸化シリコン、窒化シリコン、フッ化マグネシウムまたは一酸化シリコンを含む、請求項13に記載の光学装置。
- 前記層は金属を含む、請求項13に記載の光学装置。
- 前記層はフォトニック結晶構造を含む、請求項13に記載の光学装置。
- 前記1つ以上の第1の部分は誘電体材料を含み、前記1つ以上の第2の部分は前記層の少なくとも一部を通して延在する孔の周期的アレイを含む、請求項19に記載の光学装置。
- 前記孔の周期的アレイは前記光ファイバのコア領域の面積の少なくとも一部を覆う、請求項20に記載の光学装置。
- 前記フォトニック結晶構造はファイバのファブリペローキャビティの一端を形成する、請求項19に記載の光学装置。
- 前記光ファイバは、別の光ファイバに、前記層が前記光ファイバと前記別の光ファイバとの間に位置するように結合される、請求項13に記載の光学装置。
- 前記層はサブ波長グレーティングを含む、請求項13に記載の光学装置。
- 前記層はホログラフィック波長板を含む、請求項13に記載の光学装置。
- 前記層はワイヤグリッド偏光子を含む、請求項13に記載の光学装置。
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