JP2012192420A - レーザ加工方法およびレーザ加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、繊維強化複合材料等の難加工材料のレーザ除去加工であって、工業的に満足できる加工速度を実現可能な効率のよいレーザ加工方法とそれに用いるレーザ加工装置とを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、繊維強化複合材料または機械切削が困難な無機材料よりなる被加工物表面にレーザを照射してレーザ照射部を除去するレーザ除去加工において、レーザ照射によって発生する分解生成物をレーザ照射と同時に除去する除去手段を用いることを特徴とする。除去手段は、流体をレーザ照射部へ0.3〜5.0MPaで噴射するノズルである。
【選択図】図2
【解決手段】 本発明は、繊維強化複合材料または機械切削が困難な無機材料よりなる被加工物表面にレーザを照射してレーザ照射部を除去するレーザ除去加工において、レーザ照射によって発生する分解生成物をレーザ照射と同時に除去する除去手段を用いることを特徴とする。除去手段は、流体をレーザ照射部へ0.3〜5.0MPaで噴射するノズルである。
【選択図】図2
Description
本発明は機械切削が困難な難加工材料をレーザ加工するレーザ加工方法とそれに用いるレーザ加工装置に関する。
自動車、航空機、船舶、鉄道車両などの産業が抱えている現在のエネルギー問題、環境問題、資源問題を解決するために、軽量化、高性能化、高効率化、省資源・リサイクル化あるいは炭酸ガス排出量の低減を実現しうる新材料とその加工技術の開発が望まれている。
近年、このような材料として、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を各種繊維(例えば、炭素繊維、ガラス繊維など)で強化した繊維強化複合材料が輸送機器の構造部材として採用されている。なかでも炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPと称する。)は、すでに航空機産業や自動車産業では軽量化を目的として機体や車体の多くの部材に適用されるようになった。
しかし、これら材料のトリミングなどの切断加工や穴あけ加工については通常の切削工具では容易に加工できないために、ダイヤモンドカッターやウオータジェット切断など高価な切断方法が適用されている。また、機械切削が困難なジルコニアやアルミナなどのセラミックス、建築資材(例えば、石材)あるいは宝石などの無機材料の切削除去加工も加工時間が長いうえに工具の損耗が激しく、加工コストが嵩むという問題を抱えている。
特に、CFRPやFRM(繊維強化金属)などの複合材料は、マトリックスと強化繊維とはそれぞれが異なる材質であるために、従来の切断加工、穴あけ加工、溝加工などの除去加工では、加工自体が困難であるばかりでなく、それらの除去加工時に、炭素繊維などの強化繊維が空中に飛散して作業環境を低下させるという問題も指摘されている。また、加工速度が遅く、加工費が嵩むというコストの問題もある。ウオータージェット切断も研磨剤の分離が困難であったり、穴明け加工においては事前にピアシング加工が必要であるなどと、その作業性やコストの面で課題が多い。同様にセラミックスや岩石などの無機材料も従来のダイヤモンドカッターによる切削加工は容易ではなかった。
上記のような問題を解決するために、本発明者は、CFRP材などの繊維強化複合材料を超短パルスレーザを用いて加工するレーザ除去加工方法を提案した(特許文献1参照)。
この提案は、例えば8〜80ナノ秒のパルス幅でレーザをGW/cm2オーダのエネルギ密度に集光して物体に照射すると、レーザ光が物体の原子構造中の電子と瞬時に作用し、物体の表面を約1万度に加熱してプラズマ化できることを確認してなされたものである。
すなわち、物質の熱拡散時間よりもパルスの時間幅が短いので、物質(材料)の照射面近傍でのみ熱の蓄積が生じて材料の加熱、溶融、蒸発が起こり、イオン化・分解も起こる。この結果、材料内部への熱伝達はほとんどなく、物体の熱歪みもほとんど生じない。そこで、この特性をCFRPなどの繊維強化複合材料に適用したところ、作業環境を低下させることなく、図5に示すように炭素繊維Cがまるでダイコンを包丁で輪切りしたように見事に切断できることを確認した。すなわち、超短パルスレーザを用いることで、従来法では不可能であったCFRPなどの繊維強化複合材料の切断除去加工が可能となった。
しかし、上記の超短パルスレーザを用いるCFRPのレーザ除去加工では、優れた切断加工面品質を得ることはできるものの、その加工速度が2〜3cm/分程度と工業的には満足できるものではなかった。
また、CFRP材を連続発振固体レーザを用いて切断すると高速切断は可能であるもののその断面品質は極めて劣るものであった。図6にその一例を示す。除去部Eに隣接する熱影響部Dは、広範囲に樹脂が蒸発して消失し炭素繊維Cがむき出しになっており、その先端Tは炭化して丸くなっているのが分かる。
本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、繊維強化複合材料等の難加工材料のレーザ除去加工であって、工業的に満足できる加工速度を実現可能な効率のよいレーザ加工方法とそれに用いるレーザ加工装置とを提供することを課題とする。
本発明者は、CFRPのレーザ除去加工工程を詳細に観察することにより、レーザ照射によって発生する分解生成物が効率的なレーザ除去加工を阻害していることに着目した。なお、本発明においては、レーザ照射と同時に発生する大量のプラズマと発生ガス、粉塵などの除去生成物を一括して分解生成物と呼ぶ。
従来、このような分解生成物は、レーザビーム照射部近傍に配置された排気口から真空吸引されるようにされていた。しかし、実際には、真空吸引だけではレーザビーム照射部近傍から分解生成物を瞬時にかつ完全に除去することは困難であった。このため残留するプラズマによるレーザエネルギの吸収や粉塵など微細な切断生成物によるレーザ光の散乱などが生じてレーザの照射効率が減衰し、これら分解生成物がレーザ除去加工の阻害要因となっていた。また、加工箇所近傍は高温となるために、樹脂などが分解して除去部近傍の熱影響部の品質を低下させていた。
このような問題を解決するために、本発明のレーザ加工方法は、繊維強化複合材料または機械切削が困難な無機材料よりなる被加工物表面にレーザを照射して該レーザ照射部を除去するレーザ除去加工において、レーザ照射によって発生する分解生成物をレーザ照射と同時に除去する除去手段を用いることを特徴とする。
本発明のレーザ加工方法において、除去手段は、流体をレーザ照射部へ噴射するノズルであることが望ましい。ここで、流体は、気体又は液体のいずれかであり、気体は、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガス、酸素の群から選ばれる1種あるいは2種以上を混合した気体であることが望ましく、液体は、水または油のいずれかであることが好ましいこのような流体の噴射圧力は、ノズルの噴射口で0.3〜5.0MPaであることが適当である。
ここで、ノズルは、レーザビームを出射するレーザトーチと同軸であることが望ましく、レーザトーチの光学系から流体を遮断する保護レンズを隔てて同軸に配置されているとよい。また、ノズルは、レーザビームを出射するレーザトーチと別体とすることもできる。
本発明のレーザ加工方法の好適な態様として、レーザは、パルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒の超短パルスレーザであることが望ましく、超短パルスレーザは、ナノ秒パルスレーザであるQ−スイッチYAGレーザ、YVO4レーザ、あるいはピコ秒パルスレーザのうちのいずれか一の固体レーザとするとよい。
また、本発明のレーザ加工方法の他の好適な態様として、レーザはビーム照射部におけるエネルギ密度が1MW/mm2〜20MW/mm2である連続発振固体レーザであり、加工速度が10〜30m/分で、被加工物への入熱量が0.1〜1W/mmとするレーザ加工方法である。
本発明のレーザ加工方法において、無機材料は、セラミックス、石材、宝石の群から選ばれる一の難加工材料であることが好ましい。
また、本発明のレーザ加工方法において、除去加工は、切断加工、穴明け加工、溝加工、彫刻加工のうちのいずれか一の加工とすることができる。
また、本発明のレーザ加工方法では、被加工物の被加工表面に対してノズルを3〜177°傾斜して流体を噴射することが望ましい。
本発明のレーザ加工装置は、繊維強化複合材料または機械切削が困難な無機材料よりなる被加工物表面にレーザを照射して該レーザ照射部を除去するレーザ加工装置において、レーザ照射によって発生する分解生成物をレーザ照射と同時に除去する除去手段を備えることを特徴とする。
本発明によれば、レーザ照射によって発生する分解生成物を照射箇所から発生と同時にそのほとんどを加工部近傍から除去することができる。これ故、ビームの光路上での分解生成物による散乱や吸収を生じることがなく、照射エネルギを照射部深部へ有効に浸透させることができる。このため、加工速度を従来よりも大幅に向上することができる。また、ビーム照射部を急冷することができるので、熱影響部における樹脂などの分解を抑制して優れた加工品質を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明のレーザ加工方法は、高圧の流体をレーザ照射と同時にレーザ照射部へ噴射してレーザ照射によって発生するプラズマなどの分解生成物を除去することを特徴とする。
(1)まず、分解生成物を除去する除去手段について説明する。
(第1実施形態)
図1は、除去手段の第1の実施形態を示す側面概要図である。本実施形態において、除去手段は噴射ノズル10である。噴射ノズル10は、円錐状のノズル本体12とこのノズル本体12の先端に設けられたチップ14とよりなる。噴射ノズル10の底部16には、図示しない加圧手段から送給される高圧流体Fの流路18が設けられている。噴射ノズル10は、流体Fがノズル本体12内に充満した後、チップ14の先端に開口した噴射口18から被加工物Mの加工個所へ照射されたレーザビームLのビームスポットPに向かって噴射されるように配置されている。そして、レーザビームLの走査線上をレーザビームLと同期して移動するようにされている。
図1は、除去手段の第1の実施形態を示す側面概要図である。本実施形態において、除去手段は噴射ノズル10である。噴射ノズル10は、円錐状のノズル本体12とこのノズル本体12の先端に設けられたチップ14とよりなる。噴射ノズル10の底部16には、図示しない加圧手段から送給される高圧流体Fの流路18が設けられている。噴射ノズル10は、流体Fがノズル本体12内に充満した後、チップ14の先端に開口した噴射口18から被加工物Mの加工個所へ照射されたレーザビームLのビームスポットPに向かって噴射されるように配置されている。そして、レーザビームLの走査線上をレーザビームLと同期して移動するようにされている。
ここで、流体は、気体又は液体のいずれかであることが望ましい。気体としては、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガス、酸素の群から選ばれる1種あるいは2種以上を混合した混合気体のいずれか一を選択することができる。また、液体としては、水またはレーザ光の透過を阻害しない油のいずれかを選択することができる。これらの流体は、レーザ照射により発生する分解生成物を迅速かつ完全に除去することを目的に噴射されるので、その噴射圧力は、ノズルの噴射口18で0.3〜5.0MPaとするとよい。流体の噴射圧力が0.3MPaでは、十分な除去効果が得られない。また、5.0MPaを超えて高いと設備的な限界が生じることがある。
また、噴射ノズル10の被加工物Mの表面に対する傾斜角度θは、3〜177°とするとよい。噴射角度θが3°未満または177°を超えると、加工部の深部において十分な除去効果が得られない。
(第2実施形態)
本実施形態は、前記第1実施形態における噴射ノズル10をレーザトーチの光学系に接続してレーザビームLと同軸に高圧流体Fを噴射するように構成したものである。
本実施形態は、前記第1実施形態における噴射ノズル10をレーザトーチの光学系に接続してレーザビームLと同軸に高圧流体Fを噴射するように構成したものである。
図2は、噴射ノズル10をレーザビームLと同軸に設けた加工ヘッドHを示す断面概要図である。第1実施形態と同様の個所は同一の符番を付して説明を省略する。
加工ヘッドHは、レーザトーチの光学系20と、このレーザトーチの光学系20と同軸に配置された噴射ノズル10と、レーザトーチの光学系(図2では集光レンズ24で代表する。)20と噴射ノズル10とを接続する接続部30とよりなる。
光学系20は、円筒状の筒体22と集光レンズ24とを備え、集光レンズ24は筒体22の下端でレンズ保持体26に保持されている。
接続部30には、光学系20と噴射ノズル10の中空部11とを区画する保護ガラス32が設けられており、保護ガラス32はガラス保持体34に保持されている。ガラス保持体34は、光学系20と噴射ノズル10の中空部11とのシール性を保持している。
噴射ノズル10の大径底部13は開口されており、集光レンズ24と保護ガラス32とを透過したレーザビームLは、噴射ノズル10の中空部11を通過して噴射口18から出射される。出射されたレーザビームLは、被加工物Mの所定の加工部位にビームスポットPを形成する。
ノズル本体12には、流体Fの流路18が設けられており、流体Fは、図示しない加圧手段から流路16を介してノズル本体12へ送給され、中空部11に充満された後、噴射口18から噴出される。つまり、流体Fは、噴射口18から被加工物Mの表面へレーザビームLを囲繞するようにして噴出されるわけである。すなわち、本実施形態においては、噴射ノズル10は、その軸線がレーザビームLの軸線Aと一致するように構成されている。
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態における噴射ノズル10と第2実施形態における加工ヘッドHとを同時に用いて除去加工を行う除去手段である。図3は、本実施形態の概要を図3に示す。ここで、各々の傾斜角度θ(θ1、θ2)は3〜177°の範囲でお互いに干渉しない範囲で適宜選択すればよい。また、流体F(F1,F2)は、必ずしも同種の流体である必要はなく、それぞれ別の流体としてもよく、各流体F1,F2の噴射圧力も0.3〜5.0MPaの範囲でそれぞれ選択することができる。噴射ノズル10を2軸で用いる本実施形態の除去手段によれば、レーザ照射によって発生するプラズマなどの分解生成物をさらに一層効率よく除去するとともに、優れた加工品質を得ることが期待できる。
本実施形態では、第1実施形態における噴射ノズル10と第2実施形態における加工ヘッドHとを同時に用いて除去加工を行う除去手段である。図3は、本実施形態の概要を図3に示す。ここで、各々の傾斜角度θ(θ1、θ2)は3〜177°の範囲でお互いに干渉しない範囲で適宜選択すればよい。また、流体F(F1,F2)は、必ずしも同種の流体である必要はなく、それぞれ別の流体としてもよく、各流体F1,F2の噴射圧力も0.3〜5.0MPaの範囲でそれぞれ選択することができる。噴射ノズル10を2軸で用いる本実施形態の除去手段によれば、レーザ照射によって発生するプラズマなどの分解生成物をさらに一層効率よく除去するとともに、優れた加工品質を得ることが期待できる。
(2)次に、上記の除去手段を用いて実施するレーザ加工方法の実施の形態について説明する。
(第4実施形態)
本実施形態は、超短パルスレーザによるレーザ加工において上記の除去手段により分解生成物を除去しながら除去加工するレーザ加工法である。本実施形態において、超短パルスレーザのパルス幅は100ピコ秒〜100ナノ秒のピコ秒パルスレーザあるいはナノ秒パルスレーザを用いる。ナノ秒パルスレーザとしては、Q−スイッチYAGレーザあるいはYVO4レーザなどの固体レーザを例示することができる。これらの基本波長は、800nm〜1080nmであり、その2倍波および3倍波としてもよい。特に、YAGレーザの2倍波は水を透過することができるので、流体に水を用いる場合には好適である。
本実施形態は、超短パルスレーザによるレーザ加工において上記の除去手段により分解生成物を除去しながら除去加工するレーザ加工法である。本実施形態において、超短パルスレーザのパルス幅は100ピコ秒〜100ナノ秒のピコ秒パルスレーザあるいはナノ秒パルスレーザを用いる。ナノ秒パルスレーザとしては、Q−スイッチYAGレーザあるいはYVO4レーザなどの固体レーザを例示することができる。これらの基本波長は、800nm〜1080nmであり、その2倍波および3倍波としてもよい。特に、YAGレーザの2倍波は水を透過することができるので、流体に水を用いる場合には好適である。
このような超短パルスレーザを用いることにより、曲率半径の小さな曲線切断加工や微小な穴明け加工、あるいは微細な溝加工や彫刻加工などの除去加工を高精度に実施して優れた加工品質を得ることができる。
ここで、レーザビームの横断面形状を除去加工部の態様に合わせて、円形、楕円形あるいは矩形などとすることにより、精度の高い溝形状を得ることができる。例えば、矩形ビーム断面を持つQ−スイッチYAGレーザを用いる場合には、図4に示すように、レーザから出射された断面形状が正方形(一辺の長さがa)であるレーザビームLをシリンドリカルレンズ40を軸方向に移動させることにより、ビームスポットPを一辺の長さが加工溝Qの溝幅bに近似するようにa×bの矩形に変形することができる。シリンドリカルレンズ40によってビームスポットPの形状を最適化することにより、レーザビームの照射エネルギの利用効率を高めるとともに、加工効率を向上させることができる。このとき、噴射ノズル10のチップ14の端部15を、その横断面(図2のB−B断面)がビームスポットPに相似する矩形としかつ軸線Aに平行な筒状に形成することにより、分解生成物をさらに効率よく除去することができ、加工速度と切断品質とを一層向上させることができる。なお、チップ14の端部断面は、ビームスポットPの形状に合わせて、円、楕円、半楕円、半円などを適宜選択することができる。
(第5実施形態)
本実施形態は、1MW/mm2〜20MW/mm2のエネルギ密度を有する連続発振固体レーザによるレーザ加工において上記の除去手段を用いて分解生成物を除去しながら除去加工するレーザ加工法である。このレーザ加工方法は、被加工部位が長い直線や曲率半径が大きく単調な曲線(例えば、直径が30cm以上の円)である場合に特に有効である。ここで、エネルギ密度が1MW/mm2未満では工業的に満足できる加工速度が得られない。一方、20MW/mm2を超えると設備的に限界がある。
本実施形態は、1MW/mm2〜20MW/mm2のエネルギ密度を有する連続発振固体レーザによるレーザ加工において上記の除去手段を用いて分解生成物を除去しながら除去加工するレーザ加工法である。このレーザ加工方法は、被加工部位が長い直線や曲率半径が大きく単調な曲線(例えば、直径が30cm以上の円)である場合に特に有効である。ここで、エネルギ密度が1MW/mm2未満では工業的に満足できる加工速度が得られない。一方、20MW/mm2を超えると設備的に限界がある。
上記の各実施形態において、被加工物は、繊維強化複合材料あるいは機械切削が困難なセラミックス、石材、宝石などの無機材料である。繊維強化複合材料としては、CFRPやCFRMを、セラミックスとしては、ジルコニアやアルミナを、石材としては、建築資材である大谷石や墓石を、宝石としてはサファイアや瑪瑙などを例示することができる。
(実施例1)
本実施例は、超短パルスレーザによる穴明け加工において、図1の噴射ノズル10を除去手段としたレーザ加工方法である。レーザは、パルス幅が10ナノ秒の超短パルスYAGレーザであり、厚さが1.2mmのCFRP板に穴を貫通させる穴明け加工である。すなわち、穴の円周に沿ってレーザビームを走査して円周の内部を刳り抜く穴明け加工である。レーザビームLをCFRP板Mの表面に垂直に照射して、噴射ノズル10を85°に傾斜して噴射圧が0.3MPaのアルゴンガスをビームスポットPへ噴射して分解生成物を除去ながらレーザ除去加工した。1回の走査で幅50μm、深さ約1〜2μmの溝を形成することができた。この走査を100〜150回繰り返すことによりに所望の穴を貫通させることができた。加工に要した時間は約1分であり、これは噴射ノズル10を用いない従来のパルスレーザによる加工時間の約1/5であった。また、断面は、図5に示す断面と同様に良好であった。
本実施例は、超短パルスレーザによる穴明け加工において、図1の噴射ノズル10を除去手段としたレーザ加工方法である。レーザは、パルス幅が10ナノ秒の超短パルスYAGレーザであり、厚さが1.2mmのCFRP板に穴を貫通させる穴明け加工である。すなわち、穴の円周に沿ってレーザビームを走査して円周の内部を刳り抜く穴明け加工である。レーザビームLをCFRP板Mの表面に垂直に照射して、噴射ノズル10を85°に傾斜して噴射圧が0.3MPaのアルゴンガスをビームスポットPへ噴射して分解生成物を除去ながらレーザ除去加工した。1回の走査で幅50μm、深さ約1〜2μmの溝を形成することができた。この走査を100〜150回繰り返すことによりに所望の穴を貫通させることができた。加工に要した時間は約1分であり、これは噴射ノズル10を用いない従来のパルスレーザによる加工時間の約1/5であった。また、断面は、図5に示す断面と同様に良好であった。
(実施例2)
本実施例は、超短パルスレーザを用い、ジルコニア製の回転体(直径:10mm)の外周面に幅が200μmで、深さが5μmの複数の円環状の溝を形成する溝加工において、図2の加工ヘッドHを除去手段としたレーザ加工方法である。レーザはパルスエネルギが6.5mJの超短パルスYAGレーザを用いた。また、本実施例では、図4に示すシリンドリカルレンズ40を集光レンズ24と保護ガラス32との間に設け、シリンドリカルレンズ40を軸線Aに沿って上下に調整して、一辺が加工溝の溝幅に近似する200μmの矩形のレーザスポットPとした。
本実施例は、超短パルスレーザを用い、ジルコニア製の回転体(直径:10mm)の外周面に幅が200μmで、深さが5μmの複数の円環状の溝を形成する溝加工において、図2の加工ヘッドHを除去手段としたレーザ加工方法である。レーザはパルスエネルギが6.5mJの超短パルスYAGレーザを用いた。また、本実施例では、図4に示すシリンドリカルレンズ40を集光レンズ24と保護ガラス32との間に設け、シリンドリカルレンズ40を軸線Aに沿って上下に調整して、一辺が加工溝の溝幅に近似する200μmの矩形のレーザスポットPとした。
加工ヘッドHを85°に傾斜して噴射圧が0.3MPaのアルゴンガスをビームスポットPへ噴射して分解生成物を除去ながらレーザ除去加工した。外周を1周走査することにより、円環状の溝1本を刻設することができた。刻設に要した時間は約10秒であり、これは従来の加工時間の約1/10であった。
(実施例3)
本実施例は、高エネルギ密度CW固体レーザを用い、厚さが1mmのCFRP板を直線状に切断する切断加工において、図2の加工ヘッドHを除去手段としたレーザ加工方法である。高エネルギ密度CW固体レーザとしては3kWのシングルモードのファイバーレーザを用いた。レーザ出力を300Wとし、切断速度は20m/分とした。このレーザのレーザスポットPにおけるエネルギ密度は、約2MW/mm2であった。
本実施例は、高エネルギ密度CW固体レーザを用い、厚さが1mmのCFRP板を直線状に切断する切断加工において、図2の加工ヘッドHを除去手段としたレーザ加工方法である。高エネルギ密度CW固体レーザとしては3kWのシングルモードのファイバーレーザを用いた。レーザ出力を300Wとし、切断速度は20m/分とした。このレーザのレーザスポットPにおけるエネルギ密度は、約2MW/mm2であった。
また、加工ヘッドHを85°に傾斜して噴射圧が0.3MPaのアルゴンガスをビームスポットPへ噴射して分解生成物を除去ながらレーザ除去加工した。このときの被加工部への入熱量は0.9W/cmであり、1回の走査で深さが100〜120μmの除去加工ができた。この走査を10回繰り返すことによりCFRP板を切断することができた。切断箇所には熱影響部にわずかな樹脂の蒸発が認められるだけであり、良好な切断品質を得ることができた。
本発明は、繊維強化複合材料、セラミックス、石材、宝石などの難加工材料の切断加工、穴明け加工、溝加工、彫刻加工などのレーザ除去加工に好適に用いることができる。
10:噴射ノズル(除去手段) 12:ノズル本体 14:チップ 16:流体流路 20:レーザトーチの光学系 24:集光レンズ 30:接続部 32:保護レンズ 40:シリンドリカルレンズ F:流体 H:加工ヘッド(同軸) L:レーザビーム M:被加工物 P:レーザスポット
Claims (17)
- 繊維強化複合材料または機械切削が困難な無機材料よりなる被加工物表面にレーザを照射して該レーザ照射部を除去するレーザ除去加工において、
該レーザ照射によって発生する分解生成物を該レーザ照射と同時に除去する除去手段を用いることを特徴とするレーザ加工方法。 - 前記除去手段は、流体を前記レーザ照射部へ噴射するノズルである請求項1に記載のレーザ加工方法。
- 前記流体は、気体又は液体のいずれかである請求項2に記載のレーザ加工方法。
- 前記気体は、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、炭酸ガス、酸素の群から選ばれる1種の気体あるいは2種以上を混合した気体である請求項3に記載のレーザ加工方法。
- 前記液体は、水または油のいずれかである請求項3に記載のレーザ加工方法。
- 前記レーザは、パルス幅が100ピコ秒〜100ナノ秒の超短パルスレーザである請求項1〜5のいずれかに記載のレーザ加工方法。
- 前記超短パルスレーザは、ナノ秒パルスレーザであるQ−スイッチYAGレーザ、YVO4レーザ、あるいはピコ秒パルスレーザのうちのいずれか一の固体レーザである請求項6に記載のレーザ加工方法。
- 前記レーザはビーム照射部におけるエネルギ密度が1MW/mm2〜20MW/mm2の連続発振固体レーザである請求項1〜5のいずれかに記載のレーザ加工方法。
- 加工速度が10〜30m/分で、前記被加工物への入熱量が0.1〜1W/mmである請求項8に記載のレーザ加工方法。
- 前記流体の噴射圧力は、前記ノズルの噴射口で0.3〜5.0MPaである請求項2〜9のいずれかに記載のレーザ加工方法。
- 前記ノズルは、レーザビームを出射するレーザトーチと同軸である請求項2〜10のいずれかに記載のレーザ加工方法。
- 前記ノズルは、レーザトーチの光学系と前記流体とを遮断する保護ガラスを隔てて同軸に配置されている請求項11に記載のレーザ加工方法。
- 前記ノズルは、レーザビームを出射するレーザトーチと別体である請求項2〜10のいずれかに記載のレーザ加工方法。
- 前記無機材料は、セラミックス、石材、宝石の群から選ばれる一の難加工材料である請求項1に記載のレーザ加工方法。
- 前記除去加工は、切断加工、穴明け加工、溝加工、彫刻加工のうちのいずれか一の加工である請求項1に記載のレーザ加工方法。
- 前記被加工物の被加工表面に対して前記ノズルを3〜177°傾斜して前記流体を噴射する請求項15に記載のレーザ加工方法。
- 繊維強化複合材料または機械切削が困難な無機材料よりなる被加工物表面にレーザを照射して該レーザ照射部を除去するレーザ加工装置において、
該レーザ照射によって発生する分解生成物を該レーザ照射と同時に除去する除去手段を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
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