JP2012188358A - 防虫剤、液状防虫剤、防虫洗剤、防虫繊維製品及び防虫繊維製品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【構成】本発明はミツバチの巣から抽出されるミツロウを防虫成分とした防虫剤で、前記ミツロウを溶媒に分散又は溶解して液体状態にした液状防虫剤である。前記溶媒として天然物から抽出されたユーカリやリモネン等の液体防虫成分を使用することもできる。また、前記溶媒としてミツロウを分散又は溶解させるアルコールなどの有機溶媒を用いる。前記防虫剤を洗剤に配合した防虫洗剤も提供でき、洗剤100重量部に対し前記防虫剤を0.003〜10重量部添加することができる。また、繊維製品の表面積1cm2当たりにミツロウを0.108ng以上担持させて防虫効果を発揮する防虫繊維製品を提供できる。
【選択図】図2
Description
下記質量のミツロウをエタノール中に溶解又は分散させ、このミツロウエタノール溶液を下記質量の非イオン系界面活性剤、イミダゾリン型アンモニウム塩、精製水と共に混合して、ミツロウ入り防虫洗剤100gを調製した。従って、ミツロウ濃度が0.03%のミツロウ入り液体防虫洗剤100gが調製された。
洗浄成分: 非イオン系界面活性剤 30g
柔軟成分: イミダゾリン型アンモニウム塩 15g
ミツロウ溶剤: エタノール 10g
防虫成分: ミツロウ 0.03g
精製水: 44.97g
実施例1で調製された0.03%のミツロウ入り液体防虫洗剤を下記成分割合で精製水により希釈して、洗剤濃度が0.05%の洗剤水溶液1000gを調製した。この洗剤水溶液を以下では1倍希釈水溶液と呼ぶ。
0.03%濃度のミツロウ入り液体防虫洗剤: 0.5g
精製水: 999.5g
この1倍希釈水溶液0.18gに含有されるミツロウ質量は次の計算式により27ngであることが分かる。即ち、0.03g×0.5/100×0.18/1000=27×10-9(g)=27(ng)。次に、前記1倍希釈水溶液を水で10倍に薄めた10倍希釈水溶液と水で100倍に薄めた100倍希釈水溶液を作製した。10倍希釈水溶液0.18gに含有されるミツロウ質量は2.7ngであり、100倍希釈水溶液0.18gに含有されるミツロウ質量は0.27ngであることは上記説明から分かる。
図1は、本発明において5cm×5cmのJISウール布にミツロウを担持させた処理布と全く担持しない未処理布の虫食い実験の概念図である。直径15cmのシャーレの中で、未処理布を左側に配置し、処理布を右側に配置する。ヒメカツオブシムシ50匹を下方に投入し、シャーレのフタを被せずに、暗所にて開放系の防虫効果確認試験を行う。後述するように、図2・図3は虫食い実験1、図4・図5は虫食い実験2、図6・図7は虫食い実験3を夫々示している。
まず、虫食い実験に入る前に、未処理布と処理布を下記の手順で作製した。JISで定められているJISウールを5cm×5cm角に裁断すると、質量が約0.27gで25cm2の未処理布が形成される。この未処理布に前記1倍希釈水溶液を0.18gだけ全面が湿潤するように滴下して全体に含浸させ、未処理布にミツロウを27ngだけ担持させた試験番号1の処理布1を得た。0.18gという値は、5cm角のウールが保持できる水の量を試験して決定した。また、前記未処理布に前記10倍希釈水溶液を0.18gだけ全面が湿潤するように滴下して全体に含浸させ、未処理布にミツロウを2.7ngだけ担持させた試験番号2の処理布2を得た。同様に、前記未処理布に前記100倍希釈水溶液を0.18gだけ全面が湿潤するように滴下して全体に含浸させ、未処理布にミツロウを0.27ngだけ担持させた試験番号3の処理布3を得た。処理布1〜処理布3は、20℃、65%に調節された恒温恒湿条件下で風乾させた。
図2は、本発明において5cm×5cmのJISウール布にミツロウ27ngを担持させた処理布1と全く担持しない未処理布の虫食い実験によりミツロウの防虫効果を検証する写真図である。20℃、65%に調節された恒温恒湿槽の中に配置された直径15cmのシャーレには、未処理布を左側に配置し、処理布1を右側に配置する。ヒメカツオブシムシ50匹を下方に投入し、シャーレのフタを被せずに、暗所にて開放系の防虫効果確認試験を行った。虫は布の上側だけでなく下側にも潜り込み、細長い黒い影は上側の虫であり、下側に潜り込んだ虫は見えない。虫の投入日を0日とし、虫が布を食べながら12日間観察した。図2の(2A)は2日目であり、未処理布上の黒い影は殆ど虫であり、処理布1の上にも1匹の虫が存在する。(2B)は5日目の状態を示し、未処理布は多少食べられている。(2C)は12日目の状態を示し、未処理布がかなり食べられているのに対し、処理布1は殆ど食べられていないことが明白である。
図4は、本発明において5cm×5cmのJISウール布にミツロウ2.7ngを担持させた処理布2と全く担持しない未処理布の虫食い実験によりミツロウの防虫効果を検証する写真図である。20℃、65%に調節された恒温恒湿槽の中に配置された直径15cmのシャーレには、未処理布を左側に配置し、処理布2を右側に配置する。ヒメカツオブシムシ50匹を下方に投入し、シャーレのフタを被せずに、暗所にて開放系の防虫効果確認試験を行った。虫は布の上側だけでなく下側にも潜り込み、細長い黒い影は上側の虫であり、下側に潜り込んだ虫は見えない。虫の投入日を0日とし、虫が布を食べながら12日間観察した。図4の(4A)は2日目であり、未処理布上の黒い影は殆ど虫であり、処理布1の上にも2匹の虫が存在する。(4B)は5日目の状態を示し、未処理布は多少食べられている。(4C)は12日目の状態を示し、未処理布がかなり食べられているのに対し、処理布2は殆ど食べられていないことが分かった。
図6は、本発明において5cm×5cmのJISウール布にミツロウ0.27ngを担持させた処理布3と全く担持しない未処理布の虫食い実験によりミツロウの防虫効果を検証する写真図である。20℃、65%に調節された恒温恒湿槽の中に配置された直径15cmのシャーレには、未処理布を左側に配置し、処理布3を右側に配置する。ヒメカツオブシムシ50匹を下方に投入し、シャーレのフタを被せずに、暗所にて開放系の防虫効果確認試験を行った。虫は布の上側だけでなく下側にも潜り込み、細長い黒い影は上側の虫であり、下側に潜り込んだ虫は見えない。虫の投入日を0日とし、虫が布を食べながら12日間観察した。図6の(6A)は2日目であり、未処理布上の黒い影は殆ど虫であり、処理布3の上にも2匹の虫が存在する。(6B)は5日目の状態を示し、未処理布も処理布3も多少食べられている。(6C)は12日目の状態を示し、未処理布も処理布3もかなり食べられていることが分かる。つまり、0.27ngの担持では、防虫効果は殆ど無いことが分かった。
表2は、布1枚当たりのミツロウ担持量と防虫効果の最終結果の表である。これらの結果は、前述した図2〜図7による防虫試験から得られた。防虫効果があったのは、防虫試験1と防虫試験2であり、防虫試験3は防虫効果を示さなかった。従って、防虫効果があるのは、布25cm2当たりミツロウ2.7ng以上、換言すれば布1cm2当たりミツロウ0.108ng以上、即ち質量でいえば布1g当たりミツロウ10ng以上である。本発明者等はミツロウが防虫効果を有することを発見したばかりでなく、ミツロウが防虫効果を発現する下限値をも決定したのである。
上述したように、ミツロウはロウ状の固形防虫剤であることが明らかになった。繊維製品にミツロウを担持させる場合に液状化させると扱い易くなり、ミツロウを溶解させる天然油剤としてユーカリ油(以後、ユーカリと称する)に着目した。樹木としてのユーカリから抽出されるユーカリは、それ自体で防虫性能を有し、更に固形防虫剤であるミツロウを溶解する性質を有する。ミツロウをユーカリに溶解させた液状防虫剤は、繊維製品に担持させ易い。しかもミツロウとユーカリの両者が防虫効果を有するから、防虫剤として相乗効果を発揮することができる。ユーカリは蒸発するが、ミツロウは蒸発性を有さない。従って、ミツロウとユーカリの混合液を繊維製品に担持してタンス内に吊るしておくと、蒸発したユーカリはタンス内に吊るした他の繊維製品に付着して防虫効果を発揮し、しかも元の繊維製品にはミツロウが残留して防虫性能を持続するという効果がある。しかも、ミツロウはユーカリの蒸発抑制作用を有するから、ユーカリの蒸発作用の長寿命化を図ることができ、全体として防虫効果の長寿命化を促進することができる。
図9は、本発明においてミツロウとユーカリを混合した液状防虫剤の蒸発量を経過日数に対して描いた100日間蒸発曲線図である。図8が30日間蒸発曲線図であるのに対し、経過日数を100日まで延長試験して図9を完成した。ミツロウ含有率が50%になると、ユーカリは50日間ほど蒸発を継続する。ミツロウ含有率が75%になると、ユーカリは70日間ほど蒸発を継続し、ミツロウ含有率が100%になると、ユーカリは90日間ほど蒸発を持続できる。以上のように、ミツロウ含有率を増加させると、蒸発日数は更に延長できることが分かった。
図10は、本発明においてミツロウとリモネンを混合した液状防虫剤の蒸発量を経過日数に対して描いた30日間蒸発曲線図である。本発明者等の研究によれば、ユーカリと同様にリモネンも防虫性能を有しており、しかも植物から抽出した天然油である。従って、ミツロウをリモネンに溶解させて天然物だけからなる液状防虫剤とすることができる。ミツロウをリモネンに溶解させた液状防虫剤は、繊維製品に担持させ易い。しかもミツロウとリモネンの両者が防虫効果を有するから、防虫剤として相乗効果を発揮することができる。リモネンは蒸発するが、ミツロウは蒸発性を有さない。従って、ミツロウとリモネンの混合液を繊維製品に担持してタンス内に吊るしておくと、蒸発したリモネンはタンス内に吊るした他の繊維製品に付着して防虫効果を発揮し、しかも元の繊維製品にはミツロウが残留して防虫性能を持続するという効果がある。しかも、ミツロウはリモネンの蒸発抑制作用を有するから、リモネンの蒸発作用の長寿命化を図ることができ、全体として防虫効果の長寿命化を促進することができる。
表3は、ミツロウをエーテル、クロロホルム、四塩化炭素、アルコールの4種の有機溶媒に溶解させて、スプレー法又は浸漬法で、JISウールに担持させたときの防虫試験結果を示す。溶媒をエーテル及び四塩化炭素の場合には、スプレー法で前述したJISウール(5cm×5cm)にミツロウを担持させた。ミツロウの担持密度は、27ng/25cm2であり、1cm2当たりには1.08ng/cm2である。溶媒をクロロホルム及びエチルアルコールの場合には、浸漬法で前述したJISウール(5cm×5cm)にミツロウを担持させた。ミツロウの担持密度は、2.7ng/25cm2であり、1cm2当たりには0.108ng/cm2である。防虫効果の試験を行ったが、防虫効果ありの結果が得られた。従って、ミツロウを繊維製品1cm2当たり0.108ng以上担持させれば防虫効果があることが、担持法や溶媒種を変えても存在することが実証された。
本件発明は、防腐効果を有することが知られていたミツロウが新たに防虫効果を有することを発見して為されたものである。防腐効果(滅菌効果に基づく)と防虫効果とが全く別のメカニズムにより発現されているからである。例えば、アルコールは滅菌効果を有するが、アルコールに虫が集まることを例示して、アルコールは防虫効果を有さないことを主張した。このことを更に証明するために、比較例として、塩化ベンザルコニウムとジデシルジメチルアンモニウムクロライドによる防虫試験を行った。これら2種の薬剤はカチオン界面活性剤であり、殺菌剤として常用される物質である。塩化ベンザルコニウムの水溶液は、日本薬局方収載医薬品で逆性石鹸として殺菌消毒用に用いられる四級アンモニウム塩の混合物である。また、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドも殺菌消毒用に用いられる四級アンモニウム塩の典型的な化合物である。
1. 毛糸を手の平に10回巻き、両端を結ぶ(1巻17cm×10回で約
170cm、約1.1g)
2. それぞれのカチオン界面活性剤10%重量部配合した洗剤を用意。
3. 上記の洗剤の0.05%重量部希釈液を作製(カチオン量は0.005%)
4. 洗剤希釈液に1.で用意した毛糸を浸漬する(約5分)
5. 風乾
6. シャーレ(直径8.5cm)内に、毛糸とヒメカツオブシムシ50匹を入れ、
シャーレの蓋を被せて暗所にて閉鎖系害虫実験を行った。このとき、未処理の試験布も同様のシャーレに収め、害虫50匹を入れて蓋を被せて、20℃、65%の恒温恒湿条件下で放置した。
7. 虫を除いた毛糸の重量を測定し、減少量を食害量として算出した。そして、重量としてグラフ表示で表わした。
Claims (8)
- ミツロウを防虫成分として含有することを特徴とする防虫剤。
- 前記ミツロウを溶媒に分散又は溶解して液体状態にした請求項1に記載の液状防虫剤。
- 前記溶媒が天然物から抽出された液体防虫成分である請求項2に記載の液状防虫剤。
- 前記溶媒が、ミツロウを分散又は溶解させる有機溶媒である請求項2に記載の液状防虫剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の防虫剤又は液状防虫剤を洗剤に配合したことを特徴とする防虫洗剤。
- 前記洗剤100重量部に対し前記防虫剤であるミツロウを0.003〜10重量部添加した請求項5に記載の防虫洗剤。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の防虫剤、液状防虫剤又は防虫洗剤を用いて繊維製品にミツロウを担持させ、繊維製品の表面積1cm2当たりに前記ミツロウを0.108ng以上担持させることを特徴とする防虫繊維製品の製造方法。
- 繊維製品の表面積1cm2当たりにミツロウを0.108ng以上担持させたことを特徴とする防虫繊維製品。
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