JP2012180307A - Nk細胞活性化剤、nk細胞活性化方法及びスクリーニング方法 - Google Patents

Nk細胞活性化剤、nk細胞活性化方法及びスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】選択的にがん細胞及び感染細胞を阻害又は抑制する技術を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物を有効成分とすることを特徴とする。
【化1】
Figure 2012180307

(上記式(1)中、R〜R10は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R〜R10のうちの少なくとも4個が炭素数1〜4のアルコキシ基である)
【選択図】なし

Description

本発明は、ナチュラルキラー細胞活性化剤、活性化されたナチュラルキラー細胞の製造方法及びスクリーニング方法に関する。
ポリメトキシフラボンは、カンキツの果皮に多く含まれている成分である。癌又は感染症の予防又は治療のために、ポリメトキシフラボンを活性成分として用いる技術がいくつか知られている。
特許文献1には、柑橘類フラボノイドを含む、癌の予防または治療のための組成物が記載されている。
特許文献2には、動物内の腫瘍細胞の増殖を阻害するために、4’,5,6,7,8−ペンタメトキシフラボンおよび3’,4’,5,6,7,8−ヘキサメトキシフラボンを含むオレンジの皮の抽出物を動物に投与する方法が記載されている。
特許文献3には、ウイルスあるいは寄生虫感染症を治療するために、ポリメトキシフラボンなどのフラビン類を投与する方法が記載されている。
特表2003−510240号公報(2003年3月18日公表) 特表2003−509447号公報(2003年3月11日公表) 特表2003−504327号公報(2003年2月4日公表)
しかしながら、上述のような従来技術では、化合物を直接投与するため、がん細胞及び感染細胞だけでなく、正常細胞も影響を受けるおそれがある。そのため、選択的にがん細胞及び感染細胞を阻害又は抑制する方法の開発が望まれている。
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、選択的にがん細胞及び感染細胞を阻害又は抑制する技術を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、がん細胞及び感染細胞を選択的に傷害し、排除する機能を有する免疫細胞の一種であるナチュラルキラー細胞(以下、「NK細胞」ともいう。)に着目した。そして、鋭意検討を行い、所定の構造を有するポリメトキシフラボン類がNK細胞を直接活性化し、NK細胞のがん細胞に対する傷害活性を高めることを見出し、本発明を完成させた。
本発明に係るナチュラルキラー細胞活性化剤(以下、「NK細胞活性化剤」ともいう。)は、下記式(1)で表される化合物を有効成分とすることを特徴とする。
Figure 2012180307
(上記式(1)中、R〜R10は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R〜R10のうちの少なくとも4個が炭素数1〜4のアルコキシ基である)
また、本発明に係るナチュラルキラー細胞活性化剤では、上記式(1)中、R、R、R、R、R、R10はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R、R、R、R、R、R10のうちの少なくとも2個が炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R、Rは炭素数1〜4のアルコキシ基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
また、本発明に係るナチュラルキラー細胞活性化剤では、上記式(1)中、R、R、R、R、R、R10はそれぞれ独立して水素原子又はメトキシ基であり、R、R、R、R、R、R10のうちの少なくとも2個がメトキシ基であり、R、Rはメトキシ基であり、Rは水素原子、水酸基又はメトキシ基であり、Rは水素原子であることが好ましい。
また、本発明に係るナチュラルキラー細胞活性化剤では、上記化合物は、シネンセチン、タンゲレチン、ノビレチン、ガルデニン、3,7,3’,4’,5’−ペンタメトキシフラボン、5,7,3’,4’,5’−ペンタメトキシフラボン、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボンからなる群より選択されることが好ましい。
本発明に係るナチュラルキラー細胞活性化方法は、ナチュラルキラー細胞を、上述したいずれかのナチュラルキラー細胞活性化剤に接触させる活性化工程を含むことを特徴とする。
本発明に係るナチュラルキラー細胞の製造方法は、ナチュラルキラー細胞を、上述したいずれかのナチュラルキラー細胞活性化剤に接触させる活性化工程を含むことを特徴とする。
本発明に係るナチュラルキラー細胞活性化能を有する化合物のスクリーニング方法は、ナチュラルキラー細胞を試験化合物に接触させて処理する試験化合物処理工程と、上記試験化合物処理工程において処理されたナチュラルキラー細胞とがん細胞との混合液を得る混合工程と、上記混合液中の乳酸脱水素酵素活性を測定する測定工程とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、選択的にがん細胞及び感染細胞を阻害又は抑制する技術を提供することができる。
NK細胞の細胞傷害活性を促進する化合物のスクリーニング結果を示す棒グラフである。 (A)〜(D)は、ノビレチン(A)、タンゲレチン(B)、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン(C)、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボン(D)の構造式を示す図である。 (A)〜(D)は、ノビレチン(A)、タンゲレチン(B)、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン(C)、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボン(D)により処理されたKHYG−1細胞の細胞傷害活性を示すグラフである。 ノビレチン(A)、タンゲレチン(B)、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン(C)、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボン(D)そのものの細胞傷害活性を示すグラフである。 ノビレチン(A)、タンゲレチン(B)、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン(C)、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボン(D)を処理したKHYG−1細胞の培養上清の細胞傷害活性を示すグラフである。 (a)〜(c)は、ノビレチン(A)、タンゲレチン(B)、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン(C)、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボン(D)を処理したKHYG−1細胞におけるIFN−γ遺伝子(a)、パーフォリン遺伝子(b)及びグランザイムB遺伝子(c)の発現量を示すグラフである。
〔NK細胞活性化剤〕
本発明に係るNK細胞活性化剤は、上記式(1)で表される化合物を有効成分とする。
上記式(1)中、R〜R10は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基である。R〜R10のうちの少なくとも4個がアルコキシ基である。また、R〜R10のうちの4個〜7個がアルコキシ基であることが好ましく、5個又は6個がアルコキシ基であることがより好ましい。
〜R10のうちのアルコキシ基は、炭素数1〜2であることが好ましく、メトキシ基であることがより好ましい。言い換えれば、R〜R10は、それぞれ独立して水素原子、水酸基又は炭素数1〜2のアルコキシ基であることが好ましく、それぞれ独立して水素原子、水酸基又はメトキシ基であることがより好ましい。
〜R10のうちのアルキル基は、炭素数1〜3であることが好ましく、炭素数1〜2であることがより好ましい。
、R、R、R、R、R10は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましく、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜2のアルコキシ基であることがより好ましく、それぞれ独立して水素原子又はメトキシ基であることがさらに好ましい。
、Rは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましく、それぞれ独立して炭素数1〜2のアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることがさらに好ましい。
は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
また、R、R、R、R、R、R10がそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R、R、R、R、R、R10のうちの少なくとも2個が炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R、Rが炭素数1〜4のアルコキシ基であり、Rが水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
また、R、R、R、R、R、R10がそれぞれ独立して水素原子又はメトキシ基であり、R、R、R、R、R、R10のうちの少なくとも2個がメトキシ基であり、R、Rがメトキシ基であり、Rが水素原子、水酸基又はメトキシ基であり、Rが水素原子であることがより好ましい。
さらに、R、R、R、R、Rがそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R、R、R、R、R10がそれぞれ独立して水素原子、水酸基又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
また、R、R、R、R、R、Rがそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R、R、R、R10がそれぞれ独立して水素原子、水酸基又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
また、R、R、R、R、Rがそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R、R、R、R、R10がそれぞれ独立して水素原子、水酸基又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
また、R、R、R、R、R、Rがそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R、R、R、R10がそれぞれ独立して水素原子、水酸基又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
また、R、R、R、R、R10がそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R、R、R、R、Rがそれぞれ独立して水素原子、水酸基又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
上記式(1)で表される化合物は、いわゆるポリメトキシフラボンであることが好ましい。ポリメトキシフラボンは、複数のメトキシ基を有するフラボンであればよく、天然化合物であってもよいし、非天然化合物であってもよい。
上記式(1)で表される化合物としては、例えばシネンセチン、タンゲレチン、ノビレチン、ガルデニン、3,7,3’,4’,5’−ペンタメトキシフラボン、5,7,3’,4’,5’−ペンタメトキシフラボン、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン、3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボン、ナツダイダイン、3,5,6,7,3’,4’−ヘキサメトキシフラボン、3,5,6,7,8,3’,4’−ヘプタメトキシフラボン、及びこれらの代謝産物などが挙げられる。なかでも、シネンセチン、タンゲレチン、ノビレチン、ガルデニン、3,7,3’,4’,5’−ペンタメトキシフラボン、5,7,3’,4’,5’−ペンタメトキシフラボン、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボンからなる群より選択されることが好ましい。
代謝産物としては、例えば脱メチル化された化合物等であってもよく、例えば4’−デメチルノビレチン、3’,4’−ジデメチルノビレチン等が挙げられる。
上記式(1)で表される化合物は、人工的に合成されたものであってもよい。合成方法としては、公知の方法を用いることができる。また、上記式(1)で表される化合物は、天然から取得したものであってもよい。例えばポリメトキシフラボンのうちのいくつかは、カンキツの果皮等から抽出することができる。抽出方法としては、公知の方法を利用することができる。NK細胞活性化剤は、上記式(1)で表される化合物を、カンキツからの抽出物として含んでいてもよい。
本発明に係るNK細胞活性化剤中、上記式(1)で表される化合物は、溶媒中に溶解していてもよい。溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール等を用いることができる。
本発明に係るNK細胞活性化剤は、生理活性物質(サイトカイン等)、血清、バッファー、培地、添加剤等をさらに含んでいてもよい。また、NK細胞活性化剤は、賦形剤、崩壊剤、乳化剤、可塑剤、緩衝剤(HEPES等)、糖類、ビタミン類(アスコルビン酸等)、pH調整剤、香料、アミノ酸、公知のNK細胞活性化剤等をさらに含んでいてもよい。
本発明に係るNK細胞活性化剤は、NK細胞の細胞傷害活性を高め、活性化することができる。この活性化されたNK細胞を用いれば、がん細胞及び感染細胞を選択的に傷害させることができる。したがって、本発明を利用することによって、選択的にがん細胞及び感染細胞を阻害又は抑制することができる。
本発明は、例えば免疫細胞療法(特に活性化NK細胞療法)に有用である。また、本発明に係るNK細胞活性化剤は、免疫機能強化のための医薬、食品、飲料、サプリメント等に好適に利用することができる。また、本発明に係るNK細胞活性化剤は、活性化剤、阻害剤などの実験用試薬に好適に利用することができる。
〔組成物〕
本発明はまた、新規な組成物を提供する。本発明に係る組成物は、少なくとも上記式(1)で表される化合物を含む。
上記式(1)中、R〜R10は、NK細胞活性化剤の項目で例示したものと同様であってよい。また、上記式(1)で表される化合物として、NK細胞活性化剤の項目で例示した化合物を好適に用いることができる。
また、組成物は、上記式(1)で表される化合物を溶解させるための溶媒をさらに含んでいてもよい。溶媒としては、NK細胞活性化剤の項目で例示したものを用いることができる。組成物は、生理活性物質(サイトカイン等)、血清、バッファー、培地、添加剤等をさらに含んでいてもよい。また、組成物は、賦形剤、崩壊剤、乳化剤、可塑剤、緩衝剤(HEPES等)、糖類、ビタミン類(アスコルビン酸等)、pH調整剤、香料、アミノ酸、公知のNK細胞活性化剤等をさらに含んでいてもよい。
以上の構成により、本発明に係る組成物は、上記式(1)で表される化合物を含んでいるため、NK細胞の活性化に好適に利用することができる。この活性化されたNK細胞を用いれば、がん細胞及び感染細胞を選択的に傷害させることができる。したがって、本発明を利用することによって、選択的にがん細胞及び感染細胞を阻害又は抑制することができる。
本発明は、免疫細胞療法、免疫機能強化のための医薬、食品、飲料、サプリメント等、及び実験用試薬等に好適に利用することができる。
〔NK細胞活性化方法〕
本発明はまた、NK細胞活性化方法を提供する。本発明に係るNK細胞活性化方法は、NK細胞を、本発明に係るNK細胞活性化剤に接触させる活性化工程を含む。すなわち、活性化工程では、NK細胞を上記式(1)で表される化合物に接触させる。
NK細胞をNK細胞活性化剤に接触させる方法としては、特に限定されないが、例えば、NK細胞活性化剤を添加した培地中でNK細胞を培養する方法などを用いることができる。
活性化工程においてNK細胞をNK細胞活性化剤に接触させる際、上記式(1)で表される化合物の反応液中の濃度は、1μM〜30μMであることが好ましい。また、接触させる時間は4時間〜24時間が好ましい。なお、NK細胞活性化剤を添加した培地中でNK細胞を培養する場合、培養条件としては、公知の条件を好適に用いることができる。
なお、活性化工程は、体外において行なってもよい。
本発明に係るNK細胞活性化方法を用いれば、NK細胞を効率よく活性化することができる。したがって、がん細胞及び感染細胞を選択的に阻害又は抑制することができるNK細胞を効率よく提供することができる。
〔活性化されたNK細胞の製造方法〕
本発明はまた、上述した活性化工程を含む、活性化されたNK細胞の製造方法を提供する。なお、活性化工程は、体外において行なってもよい。
「活性化されたNK細胞」とは、未処理のNK細胞と比較して高い細胞傷害活性を有するNK細胞をさす。活性化されたNK細胞は、未処理のNK細胞の1.5倍以上の細胞傷害活性を有していることが好ましい。
本発明に係る活性化されたNK細胞の製造方法によれば、活性化されたNK細胞を効率よく製造することができる。したがって、本発明を利用することによって、がん細胞及び感染細胞を選択的に阻害又は抑制することができる。
〔スクリーニング方法〕
本発明はまた、NK細胞活性化能を有する化合物のスクリーニング方法を提供する。本発明に係るスクリーニング方法は、試験化合物処理工程と、混合工程と、測定工程とを含む。
試験化合物処理工程は、NK細胞を試験化合物に接触させて処理する工程である。接触させる方法としては、特に限定されないが、例えば、試験化合物を添加した培地中でNK細胞を培養する方法などを用いることができる。
試験化合物処理工程は、NK細胞以外の他の細胞を含まない系で行なうことが好ましい。例えば、株化したNK細胞を用いることが好ましい。これにより、NK細胞を直接活性化することができる化合物を選抜することが可能となる。
混合工程は、試験化合物処理工程において処理されたNK細胞とがん細胞との混合液を得る工程である。混合する方法は、特に限定されないが、例えばそれぞれの細胞の懸濁液を混合する方法を用いてもよい。混合工程におけるNK細胞とがん細胞との細胞数の比は、20:1〜5:1であることが好ましい。
測定工程は、混合液中のLDH活性を測定する工程である。これにより、傷害を受けたがん細胞から遊離するLDHの活性を測定することができる。このLDH活性から、試験化合物の細胞傷害活性を求めることができる。例えば、混合液中のほぼ全てのがん細胞が傷害を受けた場合のLDH活性に対する、測定工程において測定されたLDH活性の割合を求め、これを細胞傷害活性とすることができる。
混合液中のほぼ全てのがん細胞が傷害を受けた場合のLDH活性は、例えば、混合工程において用いるがん細胞と同数のがん細胞に、細胞傷害性の試薬(例えば界面活性剤等)を添加した後に測定されるLDH活性としてもよい。
本発明では、細胞傷害活性の指標として、傷害を受けた細胞から遊離するLDHの活性を用いる。したがって、アイソトープを使用する方法などを用いる場合と比較して、アイソトープ実験に必要とする各種手続きを行なったり、アイソトープ実験に必要な設備を整えたり、アイソトープの管理等を行なったりする必要がない。そのため、より容易に細胞傷害活性を測定することが可能である。
本発明に係るスクリーニング方法は、さらに選抜工程を含んでいてもよい。選抜工程は、測定工程において測定されたLDH活性から細胞傷害活性を算出し、その細胞傷害活性が、未処理のNK細胞が有する細胞傷害活性よりも大きい場合に、試験化合物処理工程にて用いた試験化合物を選抜する工程である。例えば、算出された細胞傷害活性が、未処理のNK細胞が有する細胞傷害活性の1.5倍以上である場合に、試験化合物処理工程にて用いた試験化合物を選抜してもよい。
選抜工程において選抜された試験化合物は、NK細胞活性化能を有する化合物である。したがって、本発明によれば、NK細胞活性化剤の有効成分となりうる有用な化合物をスクリーニングすることができる。この有用な化合物を利用することによって、選択的にがん細胞及び感染細胞を阻害又は抑制することができる。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
〔実施例1:スクリーニング〕
まず、ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害活性を促進する化合物のスクリーニングを行なった。試験成分としては、下記表1に示す71種類の化合物を用いた。なお、試験成分の入手先を表1の括弧内に示す。
Figure 2012180307
(表1続き)
Figure 2012180307
(材料)
NK細胞としてKHYG−1を用いた。また、がん細胞として前骨髄性白血病細胞株K562を用いた。KHYG−1及びK562は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより購入した。RPMI−1640培地、ペニシリン・ストレプトマイシン溶液、ヒトIL−2、及びRNA抽出試薬(ISOGEN)は、和光純薬株式会社から購入した。
Cytotoxicity Detection Kit(LDH)およびリアルタイムPCR用マスターミックス(FastStart Universal SYBR Green Master(Rox))は、ロシュ社から購入した。Advanced RPMI1640培地は、ライフテクノロジーズ社から購入した。ウシ胎児血清(FBS)は、Biological Industries社から購入した。cDNA合成試薬(PrimeScript(商品名)RT reagent Kit)は、タカラバイオ社から購入した。
(細胞培養)
KHYG−1細胞は、37℃,5%CO下、10%FBS、50ng/mlヒトIL−2、100units/mlペニシリンG、及び100μg/mlストレプトマイシンを含むRPMI−1640培地中において維持し、3日おきに継代した。
K562細胞は、37℃,5%CO下、10%FBS、100units/mlペニシリンG、及び100μg/mlストレプトマイシンを含むRPMI−1640培地中において維持し、3日おきに継代した。
KHYG−1細胞およびK562細胞は、60mm培養ディッシュを用いて培養した。
(細胞傷害活性試験)
次に、各試験化合物によってKHYG−1細胞を処理し、細胞傷害活性を評価した。本実施例では、細胞傷害の指標として、傷害を受けた細胞から遊離するLDHの活性を用いた。
各試験化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解してストック溶液とした。このストック溶液を、KHYG−1細胞の継代時にそれぞれ終濃度30μMとなるよう培地に添加した。なお、添加後の培地中に含まれるDMSOの濃度は、0.1%以下となるようにした。
各試験化合物を含む培地で3日間培養したKHYG−1細胞を、遠心分離により回収し、培地に含まれる試験化合物を除いた。回収した細胞を、1%FBSを含むAdvanced RPMI−1640培地に1×10cells/mlとなるよう懸濁し、KHYG−1細胞液を調製した。
一方、K562細胞を、KHYG−1と同様の方法により回収し、1%FBSを含むAdvanced RPMI−1640培地に5×10cells/mlとなるよう懸濁し、K562細胞液を調製した。
なお、本実験において細胞傷害の指標とする乳酸脱水素酵素(LDH)は、血清中にも含まれており、バックグラウンドを抑えるためには血清濃度を抑えた条件下で行うことが望ましい。本実施例では、Advanced RPMI−1640培地を使用することにより、低血清条件とすることができ、かつ安定した結果を得ることができた。
96ウェルプレート(U底)のウェルに、KHYG−1細胞とK562細胞とを含む液(ETCmix:effector−target cell mix)を入れた。ETCmixにおけるKHYG−1細胞とK562細胞との割合は、20:1とした。
また、この96ウェルプレートの他のウェルに、各コントロール溶液を入れた。コントロール溶液としては、培地のみ(BC:background control)、K562細胞液に界面活性剤を添加(HC:high control)、K562細胞液のみ(LC:low control)、KHYG−1細胞液のみ(ECC:effector cell control)を用いた。
なお、K562細胞液に界面活性剤を添加したコントロール(HC)は、K562細胞がほぼ全て傷害を受けたときの活性を測定するためのものである。
具体的には、調製したKHYG−1細胞液を、ETCmix用及びECC用のウェルに、100μl(1×10cells)ずつ分注した。また、K562細胞液を、ETCmix用、HC用、及びLC用のウェルに100μl(5×10cells)ずつ分注した。Triton X−100を2%含む培地を、HC用のウェルに100μl(Triton X−100の終濃度1%)添加した。また、培地のみを、LC用のウェルに100μl添加し、BC用のウェルに200μl添加した。
ETCmixおよび各コントロールについての実験は、3連(triplicate)で行なった。プレートをCOインキュベーター内(37℃,5%CO)で4時間静置し、遠心分離したのち上清80μlを96ウェルアッセイプレート(平底)に移した。Cytotoxicity Detection Kit(LDH)に添付の説明書にしたがって用事調製した反応液(ジアホラーゼ、NAD、ヨードテトラゾリウムクロライド、乳酸ナトリウムの各成分を含む)を各ウェルに80μlずつ添加し、暗所に15分から30分静置した。発色を確認後、可視光プレートリーダーを用いて490nmで吸光度を測定した。対照波長は600nmとした。
そして、各ウェルの吸光度からバックグラウンド(BC)を差し引いた値を求めた。この値を基に、細胞傷害活性(%)=((ETCmix−ECC)−LC)/(HC−LC)×100を求めた。この細胞傷害活性(%)は、K562細胞がほぼ全て傷害を受けたときの活性を100とした場合の百分率である。
本スクリーニングにおいては、1枚の96ウェルプレートあたり、10種類前後の試験化合物について試験した。また、各試験(各プレート)では、未処理のKHYG−1細胞の細胞傷害活性を同時に評価した。
図1は、NK細胞の細胞傷害活性を促進する化合物のスクリーニング結果を示す棒グラフである。図1において、縦軸は、未処理のKHYG−1細胞の細胞傷害活性を1とした場合における、各試験化合物についての細胞傷害活性の相対値を表す。また、白いバーは、ポリメトキシフラボンに属する試験化合物の結果であることを示す。
まず1〜60番の試験化合物について試験したところ、KHYG−1細胞の細胞傷害活性の相対値が1.5以上を示す試験化合物はシトラール(16)、シネンセチン(27)、タンゲレチン(35)、及びノビレチン(52)の4つであった。このうちシネンセチン、タンゲレチン及びノビレチンの3つは、KHYG−1細胞の細胞傷害活性を促進する活性について再現性が見られた。一方、シトラールについては、細胞傷害活性の促進についての再現性が見られなかった。
シネンセチン、タンゲレチン及びノビレチンの3つは、ポリメトキシフラボンに属する化合物である。そこで次に、他のポリメトキシフラボン(61〜71)について、同様に試験した。その結果、多くのポリメトキシフラボンが、KHYG−1細胞の細胞傷害活性を促進する活性を有していることが示された。特に高い活性を示したポリメトキシフラボンは、ガルデニン(63)、3,7,3’,4’,5’−ペンタメトキシフラボン(64)、5,7,3’,4’,5’−ペンタメトキシフラボン(65)、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン(66)、3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボン(69)であった。
以上の結果より、多くのポリメトキシフラボンがNK細胞の細胞傷害活性を促進する活性、すなわちNK細胞活性化能を有していることが示された。
〔実施例2:ポリメトキシフラボンによるNK細胞活性化に対する濃度依存性の検討〕
実施例1におけるスクリーニングで、NK細胞の細胞傷害活性を促進する活性を有することが明らかとなったポリメトキシフラボンのうちのいくつかの化合物について、以下、実施例2〜5を行なった。
実施例2では、これらのポリメトキシフラボンについて、NK細胞活性化に対する濃度依存性を検討した。実施例1では、試験化合物の終濃度を30μMとしたが、これより低い濃度でもNK細胞を活性化するかどうかを検討した。
本実施例では、ノビレチン(52)、タンゲレチン(35)、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン(66)、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボン(69)について検討した。図2(A)〜(D)は、ノビレチン(A)、タンゲレチン(B)、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン(C)、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボン(D)の構造式を示す図である。
これらの化合物の終濃度を30μM又は10μMとし、実施例1と同様の方法及び条件によって細胞の培養及び調製、NK細胞の処理、ならびに細胞傷害活性試験を行なった。
この結果を図3(A)〜(D)に示す。図3(A)〜(D)は、ノビレチン(A)、タンゲレチン(B)、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン(C)、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボン(D)により処理されたKHYG−1細胞の細胞傷害活性を示すグラフである。図3(A)〜(D)の縦軸は、K562細胞がほぼ全て傷害された場合の活性を100としたときの百分率を示す。
図3(A)〜(D)に示すように、これらの化合物は、濃度依存的にNK細胞の細胞傷害活性を亢進した。
〔実施例3:ポリメトキシフラボン自体によるK562細胞に対する細胞傷害活性の検討〕
本実施例では、ポリメトキシフラボンそのものがK562細胞に対する細胞傷害活性を有するか否かを検討することとした。
ポリメトキシフラボンを含まない条件下で3日間培養したKHYG−1細胞を遠心分離により回収した。回収した細胞を、1%FBSを含むAdvanced RPMI−1640培地に1×10cells/mlとなるよう懸濁し、KHYG−1細胞液を調製した。また、3日間培養したK562細胞を、同様に遠心分離により回収し、1%FBSを含むAdvanced RPMI−1640培地に5×10cells/mlとなるよう懸濁し、K562細胞液を調製した。また、30μMのポリメトキシフラボンを含むAdvanced RPMI−1640培地を準備した。
細胞傷害活性試験は、実施例1と同様に、ETCmixと、実施例1と同じコントロールとを揃えた条件で行なった。さらに、K562細胞に直接ポリメトキシフラボンを添加するためのウェルを設けた。このウェルには、100μlのK562細胞液(5×10cells)、及び100μlのポリメトキシフラボン(終濃度15μM)を含む培地を添加した。
96ウェルプレートをCOインキュベーター内(37℃,5%CO)で4時間静置し、遠心分離したのち上清80μlを96ウェルアッセイプレート(平底)に移した。各ウェルに用事調製した反応液を80μlずつ添加し、暗所で15分から30分静置して反応させた。発色を確認後、可視光プレートリーダーを用いて490nmで吸光度を測定した。対照波長は600nmとした。
そして、各ウェルの吸光度からバックグラウンド(BC)を差し引いた値を求めた。この値を基に、細胞傷害活性(%)=((ETCmix−ECC)−LC)/(HC−LC)×100を求めた。K562細胞に直接ポリメトキシフラボンを添加したウェルの評価については、細胞傷害活性(%)=(対象ウェルの吸光度−LC)/(HC−LC)×100を求めた。
図4は、ノビレチン(A)、タンゲレチン(B)、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン(C)、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボン(D)そのものの細胞傷害活性を示すグラフである。図4の縦軸は、K562細胞がほぼ全て傷害された場合の活性を100としたときの百分率を示す。図4におけるコントロール(con)は、LCの結果を示す。なお、図示していないがETCmixの細胞傷害活性は約40%であった。
図4に示すように、本実施例の条件下(インキュベート時間:4時間)においては、ノビレチン、タンゲレチン、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボンそのものには、細胞傷害活性が認められなかった。したがって、ポリメトキシフラボン自体は細胞傷害活性を有さないことが示唆された。
〔実施例4:KHYG−1細胞のconditioned mediumによるK562細胞に対する細胞傷害活性の検討〕
実施例1及び2における細胞傷害活性試験では、試験化合物処理後のKHYG−1細胞を、培地交換により洗浄してから使用した。しかし、KHYG−1細胞の培養上清(すなわちconditioned medium(CM))が残存していた可能性も考えられる。そこで、K562細胞をKHYG−1細胞のCMで処理することにより、そこに含まれる何らかの液性因子がK562細胞に対する傷害性を持つかどうか検討することとした。
ポリメトキシフラボンを30μM含む条件下、またはポリメトキシフラボンを含まない条件下で、3日間培養したKHYG−1細胞の培養上清を遠心分離により回収した。回収した培養上清には、KHYG−1細胞から放出された液性因子が含まれる。また、ポリメトキシフラボンを含む条件下の培養上清にはポリメトキシフラボンも含まれる。
また、細胞傷害活性のコントロールとして、ポリメトキシフラボンを含まない条件下で3日間培養したKHYG−1細胞を、遠心分離により回収した。回収した細胞は1%FBSを含むAdvanced RPMI−1640培地に1×10 cells/mlとなるよう懸濁し、KHYG−1細胞液を調製した。
一方、3日間培養したK562細胞を、KHYG−1細胞と同様に遠心分離により回収し、1%FBSを含むAdvanced RPMI−1640培地に5×10 cells/mlとなるよう懸濁し、KHYG−1細胞液を調製した。
細胞傷害活性試験は、ETCmixと、実施例1と同じコントロールとを揃えた条件で行った。さらに、K562細胞にKHYG−1細胞のCMを添加するためのウェルを設けた。このウェルには、100μlのK562細胞液(5×10cells)、及び100μlのCMを添加した。
96ウェルプレートをCOインキュベーター内(37℃,5%CO)で4時間静置して反応させ、遠心分離したのち上清80μlを96ウェルアッセイプレート(平底)に移した。各ウェルに用事調製した反応液を80μlずつ添加し、暗所で15分から30分反応させた。発色を確認後、可視光プレートリーダーを用いて490nmで吸光度を測定した。対照波長は600nmとした。
そして、各ウェルの吸光度からバックグラウンド(BC)を差し引いた値を求めた。この値を基に、細胞傷害活性(%)=((ETCmix−ECC)−LC)/(HC−LC)×100を求めた。K562細胞にKHYG−1細胞のCMを添加したウェルの評価については、細胞傷害活性(%)=(対象ウェルの吸光度−LC)/(HC−LC)×100を求めた。
図5は、ノビレチン(A)、タンゲレチン(B)、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン(C)、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボン(D)を処理したKHYG−1細胞の培養上清の細胞傷害活性を示すグラフである。図5の縦軸は、K562細胞がほぼ全て傷害された場合の活性を100としたときの百分率を示す。図5におけるコントロール(con)は、ポリメトキシフラボンを含まない条件下での培養上清の細胞傷害活性を示す。なお、図示していないが、ETCmixの細胞傷害活性は約40%であった。
図5に示すように、KHYG−1細胞の培養上清は、細胞傷害活性を示さなかった。なお、実施例3の結果より、ポリメトキシフラボン自体が細胞傷害活性を有さないことは明らかである。これに加え、本実施例では、培養上清に含まれるKHYG−1細胞から放出された液性因子もまた細胞傷害活性を有さないことが示された。したがって、ポリメトキシフラボンによる細胞傷害活性の発揮には、活性化されたKHYG−1が必要であることが示された。
〔実施例5:KHYG−1細胞における細胞傷害活性関連遺伝子の発現解析〕
KHYG−1細胞を、30μMのポリメトキシフラボンを含む培地で2日間培養した。培養には24ウェルプレートを用い、各化合物について4ウェルずつ使用した。遠心分離で回収した細胞にRNA抽出試薬を添加し、試薬の取扱説明書に従い全RNAを抽出した。これを基に合成したcDNAを鋳型として、リアルタイムPCRを行ない、細胞傷害活性関連遺伝子の発現を解析した。
細胞傷害活性関連遺伝子として、IFN−γ遺伝子、パーフォリン(perforin)遺伝子、及びグランザイムB(granzyme B)遺伝子について解析した。また、内部標準として、GAPDH遺伝子を用いた。それぞれの遺伝子のPCRに使用したプライマー配列は以下の通りである。
GAPDH forward:配列番号1
GAPDH reverse:配列番号2
IFN−γ forward:配列番号3
IFN−γ reverse:配列番号4
perforin forward:配列番号5
perforin reverse:配列番号6
granzyme B forward:配列番号7
granzyme B reverse:配列番号8。
各遺伝子の発現レベルは、内部標準として用いたGAPDH遺伝子に対する相対値として表し、各試験化合物の4つの独立したウェルにおける相対値の平均値及び標準偏差を算出した。
図6(a)〜(c)は、ノビレチン(A)、タンゲレチン(B)、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン(C)、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボン(D)を処理したKHYG−1細胞におけるIFN−γ遺伝子(a)、パーフォリン遺伝子(b)及びグランザイムB遺伝子(c)の発現量を示すグラフである。図6(a)〜(c)に示す各発現量は、ポリメトキシフラボンを処理していないKHYG−1細胞における発現量を1としたときの相対値として表される。また、図6(a)〜(c)におけるコントロール(con)は、ポリメトキシフラボンを処理していないKHYG−1細胞における発現量を示す。
以上の結果より、ノビレチン、タンゲレチン、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボンは、それぞれ差はあるものの、KHYG−1細胞において、IFN−γ遺伝子、パーフォリン遺伝子及びグランザイムB遺伝子の発現を上昇させることがわかった。特に、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボンは、各遺伝子の発現を顕著に上昇させた。
IFN−γ遺伝子、パーフォリン遺伝子及びグランザイムB遺伝子は、細胞傷害を誘導する、NK細胞に特徴的なエフェクター因子をコードする遺伝子である。本実施例から、ノビレチン、タンゲレチン、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボンがNK細胞を活性化しうることがさらに証明された。
また、ノビレチン、タンゲレチン、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボンは、NK細胞のIFN−γ遺伝子の発現を亢進することから、Th2細胞を抑制する可能性がある。つまり、これらの化合物は、アレルギー症状を緩和させる効果をも有する可能性がある。
また、これらの化合物、特に3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボンは、IFN−γ遺伝子の発現を顕著に亢進することから、より高い効果を有する医薬の開発のリード化合物として利用しうる。
本発明は、免疫細胞療法(特に活性化NK細胞療法)、免疫機能強化のための医薬、食品、飲料、サプリメント等、及び試薬等に好適に利用することができる。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表される化合物を有効成分とすることを特徴とするナチュラルキラー細胞活性化剤。
    Figure 2012180307
    (上記式(1)中、R〜R10は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R〜R10のうちの少なくとも4個が炭素数1〜4のアルコキシ基である)
  2. 上記式(1)中、
    、R、R、R、R、R10はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R、R、R、R、R、R10のうちの少なくとも2個が炭素数1〜4のアルコキシ基であり、
    、Rは炭素数1〜4のアルコキシ基であり、
    は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
  3. 上記式(1)中、
    、R、R、R、R、R10はそれぞれ独立して水素原子又はメトキシ基であり、R、R、R、R、R、R10のうちの少なくとも2個がメトキシ基であり、
    、Rはメトキシ基であり、
    は水素原子、水酸基又はメトキシ基であり、
    は水素原子であることを特徴とする請求項1に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
  4. 上記化合物は、シネンセチン、タンゲレチン、ノビレチン、ガルデニン、3,7,3’,4’,5’−ペンタメトキシフラボン、5,7,3’,4’,5’−ペンタメトキシフラボン、3’,4’,5’,5,6,7−ヘキサメトキシフラボン、及び3,7,8,2’,4’−ペンタメトキシフラボンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤。
  5. ナチュラルキラー細胞を、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤に接触させる活性化工程を含むことを特徴とするナチュラルキラー細胞活性化方法。
  6. ナチュラルキラー細胞を、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナチュラルキラー細胞活性化剤に接触させる活性化工程を含むことを特徴とする活性化されたナチュラルキラー細胞の製造方法。
  7. ナチュラルキラー細胞を試験化合物に接触させて処理する試験化合物処理工程と、
    上記試験化合物処理工程において処理されたナチュラルキラー細胞とがん細胞との混合液を得る混合工程と、
    上記混合液中の乳酸脱水素酵素活性を測定する測定工程とを含むことを特徴とするナチュラルキラー細胞活性化能を有する化合物のスクリーニング方法。
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