JP2012177188A - 永久磁石モータ用ロータ鉄心 - Google Patents

永久磁石モータ用ロータ鉄心 Download PDF

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Abstract

【課題】電磁鋼板を用いたロータ鉄心を備えた永久磁石モータと同等以上のモータ特性を有する、ロータ鉄心、および上記ロータ鉄心を備えた永久磁石モータ用ロータを提供する。
【解決手段】C、Si、Mn、P、S、Cu、Ni、Cr、Al、およびNを含有し、残部が鉄および不可避不純物で、柱状または筒状の永久磁石モータ用ロータ鉄心であり、(a)端部の最表面側から中心部に向かってAl量が減少するAl拡散層が形成されており、且つ端面におけるAl濃度を複数箇所測定したときに、最大値(Almax)と最小値(Almin)の比(Almax/Almin)が1.0〜1.5であるか、または(b)端部の最表面側から中心部に向かってSn量が減少するSn拡散層が形成されており、且つ端面におけるSn濃度を複数箇所測定したときに、最大値(Snmax)と最小値(Snmin)の比(Snmax/Snmin)が1.0〜1.5である。
【選択図】なし

Description

本発明は、永久磁石モータに用いられるロータ鉄心、およびこのロータ鉄心を備えたロータに関するものである。
永久磁石モータとしては、SPM(Surface Permanent Magnet)モータが知られている。図1は、SPMモータの構造の一例を模式的に示した部分拡大図であり、SPMモータ1は、ロータ鉄心2(2aはロータ鉄心の端面、2bはロータ鉄心の側面)の表面に永久磁石3を固定したロータ4と、ステータ鉄心5にコイル6を巻きつけたステータ7で構成されている。ロータ鉄心2としては、図1に示すように、内部にシャフト8を挿入したものを用いる場合や、シャフト8を挿入せず、柱状(中実)のステータ鉄心を用いる場合がある(図示せず)。SPMモータは、構造がシンプルで、小型化(軽量化)やモータ特性(高トルク)に優れているため、産業用モータや自動車用モータとして広く普及している。
上記ステータ鉄心は、通常、電磁鋼板の積層体を打ち抜いて作製され、ステータ鉄心を打ち抜いた後の残材を切削加工してロータ鉄心が作製されていた。ステータ鉄心の素材としては、モータ特性を向上させるために、交流磁界中で鉄損が少ないことが要求され、電磁鋼板は、交流磁界での鉄損低減に主眼を置いて開発されている。例えば、電磁鋼板を高電気抵抗化するために、SiやAlを多く含有させると共に、鋼板表面に絶縁層を形成することが行われていた。
一方、ロータ鉄心の担う磁束は直流成分が大半であるため、直流磁界において高磁束密度であることが望まれる。しかし、SiやAlを積極添加すると、電磁鋼板に含まれるフェライト相率が低くなり、直流磁界中で高磁束密度を得ることが困難であった。従ってSiやAlを積極的に添加した電磁鋼板から切り出したロータ鉄心を用いると、SPMモータの性能を最大限に発揮させるのには限界があった。
近年では、ステータの巻線密度を高めるため、ステータ鉄心を分割成形することが検討されている。そのためステータ鉄心を打ち抜いた後の残材を利用してロータ鉄心を製造する必要はなく、ステータ鉄心とロータ鉄心の夫々について、適した素材を選定することが検討されている。
直流磁界における磁束密度を高めるには、純鉄系の軟磁性材料を用いればよいことが知られている。軟磁性材料を鍛造加工でロータ鉄心の形状に成形することによって、製造コストの低減とモータ特性の向上が期待できる。
磁性素材からなるロータコアの外側面に、永久磁石が複数個、接着剤により貼付固定された永久磁石型ロータが特許文献1に提案されている。この文献には、ロータコアや永久磁石の表面にAl被膜を形成することによって、ロータコアと永久磁石との接着強度を高める技術が開示されている。
特許文献2には、電気抵抗が高く、優れた高速応答性を有し、且つ量産可能にして製品コストの低減化を図り得る交流用の電磁弁用磁気回路部材が開示されている。この文献には、磁気回路部材の母材として電磁軟鉄あるいは低炭素鋼を用いることで切削加工性および冷間鍛造性を改善できること、磁気回路部材中にAlを含有させることにより電気抵抗が高くなり、渦電流損を低減できることが記載されている。磁気回路部材中にAlを含有させる方法としては、Al粉末とAl23粉末の混合粉にNH4Clを加えたものの中に電磁軟鉄製の磁気回路部材を埋め込み、水素気流中で900℃、3時間の加熱処理を施す方法を採用している。
特開2003−224944号公報 特開昭63−318380号公報
本発明者らが検討したところ、上記特許文献1に提案されているように、ロータ鉄心と永久磁石との間(即ち、ロータ鉄心の側面)にAl被膜を形成すると、ロータ鉄心の磁気抵抗を増加すること、およびこのロータ鉄心を備えた永久磁石モータは、モータ特性が低下することが判明した。
また、上記特許文献2に提案されているように、粉末塗布法により磁気回路部材中にAlを拡散させると、部材表面のAl濃度にバラツキが生じること、またAl濃度が著しく高い層(例えば、Alを20質量%以上含有する層)が形成されると、その部分が非磁性相となり、モータ特性が劣化することが判明した。
ところで、モータ特性は、ロータ鉄心の鉄損量に大きく影響を受けること、ロータ鉄心の鉄損は、ステータ鉄心からの漏れ磁束(交流磁界)によってロータ鉄心の端部に発生することが分かった。そのためロータ鉄心の鉄損を低減するには、ロータ鉄心をステータ鉄心よりも長くすることが考えられるが、モータを小型化できないという問題がある。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、電磁鋼板を用いて作製したロータ鉄心を備えた永久磁石モータと同等以上のモータ特性を有するモータを製造できる永久磁石モータ用ロータ鉄心を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記ロータ鉄心を備えた永久磁石モータ用ロータを提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る永久磁石モータ用ロータ鉄心とは、母相の化学成分組成が、C:0.002〜0.02%(質量%の意味。以下同じ。)、Si:3%以下(0%を含まない)、Mn:0.1〜0.5%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Cu:0.1%以下(0%を含まない)、Ni:0.1%以下(0%を含まない)、Cr:1.6%以下(0%を含まない)、Al:0.002〜0.04%、N:0.005%以下(0%を含まない)、残部:鉄および不可避不純物で、柱状または筒状の永久磁石モータ用ロータ鉄心である。
そして本発明の永久磁石用ロータ鉄心は、
(a)端部の最表面側から中心部に向かってAl量が減少するAl拡散層が形成されており、且つ端面におけるAl濃度を複数箇所測定したときに、最大値(Almax)と最小値(Almin)の比(Almax/Almin)が1.0〜1.5であるか、または、
(b)端部の最表面側から中心部に向かってSn量が減少するSn拡散層が形成されており、且つ端面におけるSn濃度を複数箇所測定したときに、最大値(Snmax)と最小値(Snmin)の比(Snmax/Snmin)が1.0〜1.5である点に要旨を有している。
前記Al拡散層のうち、Alを1質量%以上含有する最適Al拡散層の厚みは40μm以上であることが好ましい。前記端面におけるAl濃度は18質量%以下(0質量%を含まない)であることが好ましい。
前記Sn拡散層のうち、Snを1質量%以上含有する最適Sn拡散層の厚みは40μm以上であることが好ましい。前記端面におけるSn濃度は18質量%以下(0質量%を含まない)であることが好ましい。
前記母相の金属組織に占めるフェライト分率は99面積%以上であり、フェライト結晶粒の粒度番号が5.5以下であることが推奨される。
前記母相は、更に、他の元素として、B:0.006%以下(0%を含まない)を含有していてもよい。
本発明には、上記永久磁石モータ用ロータ鉄心の外側面に永久磁石が固定されている永久磁石モータ用ロータ、およびこのロータを備えた永久磁石モータも包含される。
本発明によれば、ロータ鉄心の端部にAl拡散層またはSn拡散層を形成しているため、このAl拡散層またはSn拡散層が端部の電気抵抗を高め、渦電流損を低減できる。その結果、ロータ鉄心の磁気特性が改善されるため、このロータ鉄心を備えた永久磁石モータはモータ特性が良好なものとなる。
図1は、SPMモータの構造の一例を模式的に示した部分拡大図である。 図2は、実施例で用いたロータ鉄心とシャフトを組合せた試験片の形状を示す模式図である。 図3は、評価用モータに付与したトルクとモータ効率の関係を示すグラフである。 図4は、評価用モータの回転数とモータ効率の関係を示すグラフである。
本発明者らは、永久磁石モータのモータ特性と、永久磁石モータに備えられているロータ鉄心との関係について検討を重ねてきた。その結果、
(1)ステータからの漏れ磁束によりロータ鉄心の端部に渦電流損が発生し、この渦電流損が、永久磁石モータのモータ特性に悪影響を及ぼしていること、
(2)この渦電流損を低減するには、ロータ鉄心の素材として高磁束密度を有する純鉄系の鋼材を用いると共に、ロータ鉄心の端部における電気抵抗を高めればよいこと、
(3)電気抵抗を高めるには、Al拡散層またはSn拡散層を形成すればよいことを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明のロータ鉄心は、その素材としてC量の少ない高磁束密度材を用い、端部を局所的に高電気抵抗化することによって、ロータ鉄心自体の鉄損を低減でき、しかもステータ鉄心からの漏れ磁束による端部の鉄損を低減できるため、モータ特性を向上させることができる。端部の鉄損低減を抑制するには、Al拡散層またはSn拡散層を形成することが有効であり、例えば、端面にAl皮膜またはSn皮膜を有し、且つロータ鉄心の形状に加工された鋼材に熱処理を施すことによって、端面の表面に形成したAlまたはSnが鋼材内へ均一に拡散して形成される。この方法によれば、AlまたはSnが鋼材の端面から一様に拡散浸透するため、端面の表面に局所的にAlやSnが濃化し過ぎた部分は発生しない。従って端面には非磁性相が形成されず、モータ特性の劣化を防止できることも明らかとなった。
以下、本発明のロータ鉄心について詳細に説明する。
本発明のロータ鉄心の形状は、柱状(例えば、円柱状)または筒状(例えば、円筒状)であり、端部にAl拡散層またはSn拡散層が形成されている。柱状には、軸方向に直径の異なるリングを重ねたような段差が設けられた略柱状(例えば、略円柱状)を含む意味であり、筒状とは、軸方向に直径の異なるリングを重ねたような段差が設けられた略筒状(例えば、略円筒状)を含む意味である。端面とは、ロータ鉄心のうち軸方向に対して垂直な面を意味している。端部とは、端面を含む近傍を意味し、例えば、端面から深さ500μm位置程度までの領域を指す。
《Al拡散層について》
上記Al拡散層とは、母相に含まれるAl量よりも多く、且つ端部の最表面側から中心部に向かってAl量が減少している領域を意味している。端部におけるAl濃度を傾斜させることによって端面に発生する渦電流損を重点的に低減できるため、モータ特性を効果的に向上させることができる。
上記Al拡散層は、Alを1質量%以上含有するAl拡散層(以下、最適Al拡散層という。)が形成されていることが好ましい。Alが1質量%未満では、端部の電気抵抗を充分に高めることができないため、渦電流損を低減できず、モータ特性を充分に改善できない。
上記最適Al拡散層の厚みは、40μm以上であることが好ましい。厚みを40μm以上とすることによって、端部の電気抵抗を充分に高めることができるため、渦電流損が小さくなり、モータ特性を一段と改善できる。最適Al拡散層の厚みは、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは70μm以上、特に好ましくは100μm以上である。なお、最適Al拡散層の厚みの上限は特に限定されず、例えば、250μmを超えて生成していてもよいが、熱処理によるコスト増加を抑制する観点から、500μm以下であればよい。
本発明のロータ鉄心は、端面におけるAl濃度を複数箇所測定したときに、最大値(Almax)と最小値(Almin)の比(Almax/Almin)が1.0〜1.5である。比が1.5を超えると、端面におけるAl濃度のバラツキが大きくなるため、局所的に非磁性相が発生し、モータ特性が劣化する。比は好ましくは1.0〜1.3である。
上記端面におけるAl濃度の最大値は、18質量%以下(0質量%を含まない)であることが好ましい。最大Al濃度が18質量%を超えると自発磁化の低下が生じることがあるため、モータ特性を劣化させることがある。従って最大Al濃度は18質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
《Sn拡散層について》
上記Sn拡散層とは、端部の最表面側から中心部に向かってSn量が減少している領域を意味している。端部におけるSn濃度を傾斜させることによって端面に発生する渦電流損を重点的に低減できるため、モータ特性を効果的に向上させることができる。
上記Sn拡散層は、上記Al拡散層と同じ作用効果を発揮するため、その規定理由も同じである。
即ち、上記Sn拡散層は、Snを1質量%以上含有するSn拡散層(以下、最適Sn拡散層という。)が形成されていることが好ましい。Snが1質量%未満では、端部の電気抵抗を充分に高めることができないため、渦電流損を低減できず、モータ特性を充分に改善できない。
上記最適Sn拡散層の厚みは、40μm以上であることが好ましい。厚みを40μm以上とすることによって、端部の電気抵抗を充分に高めることができるため、渦電流損が小さくなり、モータ特性を一段と改善できる。最適Sn拡散層の厚みは、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは70μm以上、特に好ましくは100μm以上である。なお、最適Sn拡散層の厚みの上限は特に限定されず、例えば、250μmを超えて生成していてもよいが、熱処理によるコスト増加を抑制する観点から、500μm以下であればよい。
本発明のロータ鉄心は、端面におけるSn濃度を複数箇所測定したときに、最大値(Snmax)と最小値(Snmin)の比(Snmax/Snmin)が1.0〜1.5である。比が1.5を超えると、端面におけるSn濃度のバラツキが大きくなるため、局所的に非磁性相が発生し、モータ特性が劣化する。比は好ましくは1.0〜1.3である。
上記端面におけるSn濃度の最大値は、18質量%以下(0質量%を含まない)であることが好ましい。最大Sn濃度が18質量%を超えると自発磁化の低下が生じることがあるため、モータ特性を劣化させることがある。従って最大Sn濃度は18質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
上記端部および端面におけるAl濃度またはSn濃度は、ロータ鉄心の軸方向に平行となるように切断して露出させた切断面において、端面から深さ500μm位置までの領域を、例えば、電子プローブX線マイクロアナライザー(Electron Probe X−ray Micro Analyzer;EPMA)で複数箇所(例えば、4箇所以上)測定すればよい。
次に、本発明に係るロータ鉄心の成分組成について説明する。
本発明のロータ鉄心は、母相の化学成分組成が、C:0.002〜0.02%、Si:3%以下(0%を含まない)、Mn:0.1〜0.5%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Cu:0.1%以下(0%を含まない)、Ni:0.1%以下(0%を含まない)、Cr:1.6%以下(0%を含まない)、Al:0.002〜0.04%、およびN:0.005%以下(0%を含まない)を含有し、残部:鉄および不可避不純物である。こうした範囲を規定した理由は次の通りである。
Cは、ロータ鉄心の強度を確保するために重要な元素である。しかしCを過剰に含有すると、鋼中に固溶したCがFe格子を歪ませて磁気モーメントを低下させ、磁束密度を小さくするため、モータ特性が劣化する。従ってC量は0.02%以下、好ましくは0.015%以下、より好ましくは0.01%以下とする。ロータ鉄心(特に、SPM用のロータ鉄心)には高磁束密度であることが要求されるため、C量はできるだけ少ない方が望ましい。しかしC量を低減して磁気モーメントを増加させる効果は、C量が0.002%程度で飽和する。また、C量を低減し過ぎるとロータ鉄心の強度が低下し過ぎる。従ってCは0.002%以上、好ましくは0.003%以上、より好ましくは0.004%以上とする。
Siは、溶製時に脱酸材として作用する元素である。また、Siは、磁気異方性を低減し、磁束密度を大きくしてモータ特性を向上させる作用も有している。こうした効果を有効に発揮させるには、Siは0.001%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.003%以上であり、更に好ましくは0.005%以上である。しかしこうした効果はSiを3%を超えて含有させても飽和する。また、過剰に含有させると、鋼材をロータ鉄心の形状に成形するときの冷間鍛造性が大幅に劣化する。従ってSi量は3%以下、好ましくは2.5%以下、より好ましくは2.00%以下である。
Mnは、溶製時に脱酸剤として用いる元素である。また、鋼中ではSと結合して硫化物(MnS)を形成し、Sによる脆化を抑制する作用を有している。更に、硫化物や、鋼中の酸化物の周囲に硫化物が析出して複合析出物を形成することで、ロータ鉄心の電気抵抗率を高めて渦電流損失を低減し、モータ特性を向上させる作用を有している。こうした効果を発揮させるために、Mnは0.1%以上、好ましくは0.15%以上、更に好ましくは0.2%以上、特に好ましくは0.25%以上とする。しかしMnが過剰になると、フェライト相が不安定となり、磁気モーメントが低下し、磁束密度が小さくなってモータ特性が劣化する。従ってMnは0.5%以下、好ましくは0.45%以下、より好ましくは0.4%以下とする。
Pは、粒界に偏析して熱間加工性や冷間加工性を劣化させる元素である。従ってPは0.03%以下、好ましくは0.02%以下、更に好ましくは0.01%以下とする。Pはできるだけ低減されていることが望ましい。
Sは、Mn等と結合して硫化物(例えば、MnS)を形成し、ロータ鉄心の電気抵抗率を高めて渦電流損失を低減し、モータ特性を向上させる作用を有している。しかしSを過剰に含有すると、多量に粒界に生成したFeSや鋼中に生成したMnSにより磁気特性と冷間鍛造性が低下する。従ってSは0.03%以下、好ましくは0.02%以下、より好ましくは0.015%以下である。
Cuは、フェライトに固溶して強度を向上させる元素である。また、電気抵抗率を高めて渦電流損失を低減し、モータ特性を向上させる作用を有している。こうした作用を有効に発揮させるには、Cuは0.005%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.01%以上である。しかし過剰に含有させると、磁束密度が低下してモータ特性が劣化し、また冷間鍛造性も悪くなる。従ってCuは0.1%以下、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.05%以下とする。
Niは、Cuと同様の作用を有する元素である。即ち、フェライトに固溶して強度を向上させる元素である。また、電気抵抗率を高めて渦電流損を低減し、モータ特性を向上させる作用を有している。こうした作用を有効に発揮させるには、Niは0.005%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.01%以上である。しかし過剰に含有させると、磁束密度が低下してモータ特性が劣化し、また冷間鍛造性も悪くなる。従ってNiは0.1%以下、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.05%以下とする。
Crは、ロータ鉄心の電気抵抗を大きくし、渦電流損を低減してモータ特性を向上させるのに作用する元素である。また、ロータ鉄心の金属組織をフェライト化し、モータ特性を向上させる作用も有している。こうした作用を有効に発揮させるには、Crは0.005%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.01%以上、更に好ましくは0.1%以上とする。しかしCrが1.6%を超えると磁気モーメントが低下し、高磁束密度が得られなくなる。従ってCrは1.6%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。
Alは、鋼中のNと結合してAlNを形成し、固溶Nによる磁気特性の低下を抑制してモータ特性を向上させる作用を有している元素である。従ってAlは0.002%以上、好ましくは0.003%以上とする。しかし過剰に含有すると、AlNを多量に形成し、このAlNにより結晶粒の成長が阻害され、結晶粒界が増加することにより磁気特性が劣化する。また、Nと結合しなかったAlはフェライトに固溶し、強度を高めるのに作用するため、変形抵抗が高くなり、冷間鍛造性が劣化する。従ってAlは0.04%以下、好ましくは0.02%以下、より好ましくは0.015%以下とする。
Nを過剰に含有すると多量のAlNを形成し、このAlNが結晶粒の成長を阻害して結晶粒界を増加させるため磁気特性が劣化し、モータ特性が悪くなる。また、Nを過剰に含有して固溶Nが増加すると磁気特性が低下し、モータ特性が劣化する。更に、過剰なNにより鋼材が時効硬化し、冷間鍛造時に割れが発生して冷間鍛造性が劣化する。従ってNは0.005%以下、好ましくは0.004%以下、より好ましくは0.003%以下とする。
上記鋼材の残部は、鉄および不可避不純物である。不可避不純物としては、原料、資材、製造設備等の状況によって混入する元素が許容される。
上記鋼材は、更に他の元素として、B:0.006%以下(0%を含まない)を含有してもよい。
Bは、鋼中の固溶NをBNとして析出させる元素であり、固溶Nを低減することによって動的ひずみ時効に起因する冷間鍛造性の劣化を抑制できると共に、フェライト組織の磁気モーメントを増加させて磁気特性を向上させることができる。また、結晶粒成長を阻害するAlNを減少させ、Ac3点を上昇させてフェライト安定化領域を拡大する作用を有するため、磁気特性に有害な結晶粒界が減少し、磁気特性に優れた組織を実現できる。こうした効果を有効に発揮させるには、0.001%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.0015%以上である。しかし過剰に含有すると、Fe2Bが粒界に沿って析出し、粒界強度が低下して磁気特性および冷間鍛造性が劣化する。従ってB量は0.006%以下、好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.004%以下とする。
次に、本発明のロータ鉄心を製造するにあたり、好適に採用できる製造方法について説明する。
上記ロータ鉄心は、上記化学成分組成を満足する柱状または筒状の鋼材の端面に、Al皮膜またはSn皮膜を有している鋼材を熱処理することによって製造できる。即ち、鋼材の端面にAl皮膜またはSn皮膜を形成し、これを熱処理することによって端面から内部へAlまたはSnを均一に拡散浸透させることができる。この拡散浸透によって端部に上記Al拡散層またはSn拡散層を形成でき、これらの拡散層が高電気抵抗層となり、渦電流損が低減される結果、モータ特性を向上できる。このように本発明ではAlまたはSnを表面から内部へ均一に拡散浸透させているため、Al濃度またはSn濃度が局所的に高くなることを防止できる。
熱処理前の上記鋼材は、端面の表面にAl皮膜またはSn皮膜を有し、柱状または筒状の部品形状に加工されていればよく、鋼材の端面にAl皮膜またはSn皮膜を形成する工程と、鋼材を部品形状に加工する工程の順番は特に限定されない。即ち、上記鋼材を部品形状に加工してからAl皮膜またはSn皮膜を形成してもよいし、上記鋼材にAl皮膜またはSn皮膜を形成してから部品形状に加工してもよい。部品形状は、柱状または筒状であり、例えば、円柱状または円筒状であればよい。部品形状への加工は、例えば、冷間鍛造によって行えばよい。
上記Al皮膜の厚みは、例えば、5〜20μmとすればよい。好ましくは8〜18μmである。
上記Al皮膜を形成する方法は特に限定されず、例えば、化学気相蒸着(CVD)法、物理気相蒸着(PVD)法、めっき法等が挙げられる。めっき法としては、溶融Alめっき法や電気Alめっき法が挙げられる。これらの中でも溶融Alめっき法によって製造することが好ましい。
溶融Alめっき法でAl皮膜を形成する場合は、例えば、めっき浴として、純Alめっき浴や、Siを15質量%以下(0%を含まない)含有するAlめっき浴を用い、めっき浴の温度を800℃以下(例えば、650〜700℃)、浸漬時間を1〜10分間とすればよい。
一方、上記Sn皮膜の厚みは、例えば、5〜20μmとすればよい。好ましくは8〜18μmである。
上記Sn皮膜を形成する方法は特に限定されず、例えば、化学気相蒸着(CVD)法、物理気相蒸着(PVD)法、めっき法等が挙げられる。めっき法としては、溶融Snめっき法や電気Snめっき法が挙げられる。これらの中でも電気Snめっき法によって製造することが好ましい。
上記熱処理は、加熱温度を850℃以上で、加熱時間を1時間以上とすることが好ましい。上記加熱温度が850℃を下回るか、上記加熱時間が1時間より短いと、AlまたはSnが表面側から内部に向かって充分に拡散浸透しないため、所望のAl拡散層またはSn拡散層を形成できないことがある。
上記加熱温度は、より好ましくは900℃以上、更に好ましくは950℃以上、特に好ましくは1000℃以上である。上記加熱温度は、AlまたはSnを表面側から内部に向かって拡散浸透させるために、できるだけ高く設定することが望ましい。また、高温で熱処理することによって端部にFeAlなどの非磁性相が形成されるのを防止できるため、磁気特性を向上でき、モータ特性が良好となる。
上記加熱時間は、より好ましくは3時間以上、更に好ましくは5時間以上である。上記加熱時間は、AlまたはSnを表面側から内部に向かって拡散浸透させるために、できるだけ長く設定することが望ましい。但し、加熱時間を長くし過ぎると生産性が悪くなるため、上限は例えば15時間とするのがよい。
上記熱処理は、表層部の酸化を抑制するため、不活性ガス雰囲気(例えば、N2ガス雰
囲気やArガス雰囲気など)や還元性雰囲気で行うのが推奨される。還元性ガスとしては、例えば、水素を含有すればよい。
上記加熱温度に加熱するときの昇温速度は、例えば、100〜400℃/時間とすればよい。また、熱処理後、室温まで冷却するときの降温速度は、例えば、100〜400℃/時間とすればよい。
得られたロータ鉄心は、外側面に永久磁石を固定することによって永久磁石モータ用ロータを製造できる。永久磁石は公知の方法で固定すればよく、例えば、接着剤を用いることができる。永久磁石は、ロータ鉄心の外周に沿って多極着磁した一体型のものを固定してもよいし、磁極毎に分割したものを固定してもよい。
上記ロータ鉄心が筒状の場合には、軸位置に金属製(例えば、鋼製)のシャフトを挿入すればよい。
一方、電磁鋼板等を用いて製造したステータにコイルを巻きつけたものを準備し、上記永久磁石モータ用ロータと組み合わせれば、永久磁石モータを製造できる。
本発明のロータ鉄心は、端部の磁気特性が向上させているため、このロータ鉄心を備えた永久磁石モータは、モータ特性が良好となる。永久磁石モータは、例えば、自動車や産業機械に実装されている部品のうち、磁力を介して駆動する電装部品(例えば、SPMモータ)として用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[No.1〜15、17〜21]
下記表1に示す化学成分組成の鋼(残部は鉄および不可避不純物。鋼種a〜c、鋼種e)を、240ton転炉、80ton転炉、または50kg真空炉で溶製した。240ton転炉または80ton転炉で溶製した溶製材は、熱間圧延して直径50mmの圧延材を作製した。50kg真空炉で溶製した溶製材から得られた鋼塊は、鍛伸加工し、直径50mmの鍛伸材を作製した後、熱間圧延を模擬して30分間加熱→空冷の熱処理を行った。
上記圧延材または熱処理後の鍛伸材をロータ鉄心の形状に切削加工し、得られた供試用ロータ鉄心を評価用モータに取り付け、モータ特性を評価した。評価用モータとしては、市販されているSPMモータ[ミネベア製DCブラシレスモータ(24DCM−371)、定格回転数:3000rpm、定格トルク:0.159Nm]を準備した。評価用モータに備えられているロータ鉄心を取出し、同じ形状となるように上記圧延材または熱処理後の鍛伸材を切削加工した。供試用ロータ鉄心とシャフトを組合せた試験片の形状を図2(b)に示す。図2(b)において2は供試用ロータ鉄心、2aは供試用ロータ鉄心の端面、8はシャフトを示している。供試用ロータ鉄心2は、図2に示すように、最大直径27mm×最大高さ34mmの略円筒状であり、両端近傍には、直径の異なるリングを重ねたような段差が設けられている。なお、図2(a)は図2(b)に示した部材を紙面左方向から見た図、図2(c)は図2(b)に示した部材を紙面右方向から見た図を夫々示している。また、下記表2に示すロータ構造の「一体品」とは、一塊の条鋼を鍛造、切削加工してロータ鉄心2とシャフト8とを一体成形したことを意味している。
得られた供試用ロータ鉄心の端面または全面に、下記の手順でAl皮膜またはSn皮膜を形成し、これを熱処理してAl拡散層またはSn拡散層を形成した(下記表2、表3のNo.7、12、15、16、21を除く)。上記供試用ロータ鉄心の端面2aとは、上底面および下底面の両端面であり、上記供試用ロータ鉄心の全面とは、上底面、下底面、および側面の全てを意味する(図1、図2を参照)。下記表2に皮膜を形成した位置を示す。なお、表中、「−」は、皮膜を形成していないことを意味している。
《Al皮膜について》
上記Al皮膜は、溶融Alめっき法または粉末塗布法で形成した。
上記溶融Alめっき法では、上記供試用ロータ鉄心を、Siを約10質量%含有する溶融Alめっき浴(浴温は670℃)に2分間浸漬してAl皮膜を形成した。Al皮膜の付着量は41g/m2とした。次いで、水素還元雰囲気中で下記表2に示す温度まで昇温速度300℃/時間で加熱した後、この温度で3時間保持して熱処理した。熱処理後は、降温速度300℃/時間で室温まで冷却した。
上記粉末塗布法では、Al粉末(500g)およびAl23粉末(500g)を等量混合した混合粉に、NH4Clを10g加えたものをステンレスケースに入れ、この中に上記供試用ロータ鉄心を埋め込み、水素還元雰囲気中で、900℃で、3時間保持して熱処理した。
《Sn皮膜について》
上記Sn皮膜は、電気Snめっき法で形成した。
上記電気Snめっき法では、上記供試用ロータ鉄心の端面または全面に、付着量約95g/m2(厚み約13μm)のSn皮膜を形成した。次いで、水素還元雰囲気中で下記表2に示す温度まで昇温速度300℃/時間で加熱した後、この温度で3時間保持して熱処理した。熱処理後は、降温速度300℃/時間で室温まで冷却した。
次に、熱処理して得られた供試用ロータ鉄心の端部におけるAl濃度またはSn濃度をEPMA(日本電子株式会社製「JXA−8900RL(装置名)」)を用いて測定した。測定は、上記供試用ロータ鉄心の軸方向に平行となるように切断して露出させた切断面において、Al皮膜形成面またはSn皮膜形成面から深さが500μm位置までの領域を、EPMAのビーム直径を1μmとし、1μm間隔で行った。その結果、上記供試用ロータ鉄心の表面に形成したAl皮膜またはSn皮膜は、熱処理により供試用ロータ鉄心内へ拡散していた。また、熱処理して得られた供試用ロータ鉄心の端部では、最表面のAl量またはSn量が最も多く、中心部に向かうほどAl量またはSn量が減少する傾斜組成であり、Al拡散層またはSn拡散層が形成されていることが分かった。
なお、上記供試用ロータ鉄心の全面に上記Al皮膜またはSn皮膜を形成し、これを熱処理した場合には、供試用ロータ鉄心の側面についても上記手順でAl濃度またはSn濃度を測定し、Al拡散層またはSn拡散層が形成されていることを確認した。
次に、熱処理して得られた供試用ロータ鉄心の端部において、Alを1質量%以上含有する最適Al拡散層の厚み、またはSnを1質量%以上含有する最適Sn拡散層の厚みを測定した。測定結果を下記表2に示す。
次に、熱処理して得られた供試用ロータ鉄心について、最表面におけるAl濃度またはSn濃度(拡散元素濃度)を、上記EPMAを用いてライン分析を行い、最大値(Max)と最小値(Min)を求めた。ライン分析は、2つのラインでおこない、ラインが直角に交差するように90°ずらして行った。測定結果のうち最大値(質量%)と最小値(質量%)を下記表2に示す。また、最大値と最小値の比(Max/Min)を算出し、下記表2に示す。
なお、Al拡散層を設けたときの最大値(Max)はAlmax、最小値(Min)はAlmin、Sn拡散層を設けたときの最大値(Max)はSnmax、最小値(Min)はSnminに相当している。
下記表2から明らかなように、溶融Alめっき法でAl皮膜を形成した場合には、熱処理後の最表面におけるAl濃度の測定結果にバラツキは殆ど無かった。また、電気Snめっき法でSn皮膜を形成した場合には、熱処理後の最表面におけるSn濃度の測定結果にバラツキは殆ど無かった。従って熱処理後の最表面における電気抵抗率は、ほぼ均一となり、電気抵抗率の局所的な偏りが少ないため、モータ回転時の変動磁界に伴う渦電流の影響を効率的に抑制できることが期待できる。
一方、粉末塗布法でAl皮膜を形成した場合には、Al濃度の測定結果にバラツキがあり、最大値と最小値の比は1.5を超えていた。従って熱処理後の最表面における電気抵抗率には、局所的な偏りが生じ、モータ回転時の変動磁界に伴う渦電流の影響を効率的には抑制できないと考えられる。
次に、熱処理して得られた供試用ロータ鉄心を、軸に対して縦断面(軸と平行な切断面)が露出するように切断し、供試用ロータ鉄心の長手方向の中心位置における最表面部(外周側)とD/4位置(Dは供試用ロータ鉄心の直径)を光学顕微鏡にて金属組織を観察した。上記観察は、上記縦断面を研磨後、5%ピクリン酸アルコール液に15〜30秒間浸漬して腐食させてから行った。観察倍率は、100倍および400倍とし、金属組織の同定を行った。いずれの供試用ロータ鉄心においても最表面部とD/4位置の金属組織は同じであった。観察された金属組織の結果を下記表3に示す。なお、下記表3の「フェライト」は、金属組織に占めるフェライト分率が99面積%以上であることを意味し、「フェライト+パーライト」は、5面積%以上のパーライトを含み、残部がフェライトであることを意味している。
また、D/4位置におけるフェライトの粒度番号を、JIS G0552に規定される方法で求めた。フェライト粒度番号の測定箇所は4箇所とし、平均値を算出した。算出結果を下記表3に示す。
次に、供試用ロータ鉄心の電気抵抗率は次の手順で評価した。電気抵抗率は、一般的に用いられる通電法(四端子法)により通電電流との比から算出した。試験は、上記圧延材または熱処理後の鍛伸材から採取した2mm角×200mm長さの試験片を用い、電圧端子間距離を60mmとして行った。なお、上記試験片には、Al拡散層やSn拡散層は形成せず、母材の電気抵抗を測定した。また、通電方向を正逆2通り実施して接触抵抗、偏電流、熱起電力などの影響を除いている。測定結果を下記表3に示す。
次に、得られた供試用ロータ鉄心を上記評価用モータに取り付けてモータ特性を評価した。
モータ特性は、上記評価用モータに、ACサーボモータ(3kW)を負荷源として直結させた状態で、評価用モータへの投入電力を調整して評価用モータに付与するトルクを制御し、付与した各トルクにおけるモータ効率を測定した。また、モータ効率の最大値、定格トルク(0.159Nm)におけるモータ効率、78%以上のモータ効率を確保しているときの許容回転数の上限および下限を夫々測定した。トルク検出器としては「ss200ss020」(小野測器製)を用い、回転速度検出器としては「MP981」(小野測器製)を用いた。また、許容回転数の上限から下限を引いた値を算出した。結果を下記表3に示す。
本発明では、モータ効率の最大値が82.0%以上、定格トルクにおけるモータ効率が82.0%以上、78%以上のモータ効率を確保したときの許容回転数の上限から下限を引いた値が670以上の全てを満足している場合を本発明例、これらのうち一つでも基準を満足していない場合を比較例とする。
一方、下記表2、表3のNo.7、12、15、および21は、ロータ鉄心にAl拡散層もSn拡散層も形成しなかった例である。これらのうち下記表2、表3のNo.7、12、および21は、上記圧延材または熱処理後の鍛伸材を上記評価用モータに備えられているロータ鉄心の形状に切削加工し、得られた供試用ロータ鉄心に、850℃、3時間の磁気焼鈍を行ったものを用いた例である。即ち、これらは、Al皮膜およびSn皮膜を形成せず、また皮膜形成後の熱処理も行っていない例である。
磁気焼鈍して得られた供試用ロータ鉄心の金属組織、フェライト結晶粒度、および電気抵抗率を上記と同じ手順で測定し、測定結果を下記表3に示す。
次に、磁気焼鈍して得られた供試用ロータ鉄心を上記評価用モータに取り付け、上記と同じ手順で測定した。測定結果を下記表3に示す。
下記表2、表3のNo.15は、上記圧延材を上記評価用モータに備えられているロータ鉄心の形状に切削加工したものを用いた例である。即ち、No.15は、磁気焼鈍も、Al皮膜およびSn皮膜の形成も行わず、また皮膜形成後の熱処理も行っていない例である。
切削加工して得られた供試用ロータ鉄心の金属組織、フェライト結晶粒度、および電気抵抗率を上記と同じ手順で測定し、測定結果を下記表3に示す。
次に、切削加工して得られた供試用ロータ鉄心を上記評価用モータに取り付け、上記と同じ手順で測定した。測定結果を下記表3に示す。
[No.16]
下記表2、表3のNo.16は、下記表1に示した鋼種d(残部は鉄および不可避不純物)を用いた例である。鋼種dは、一般に市販されている無方向性電磁鋼板(JIS C2552で規定される50A600相当鋼である新日本製鉄製「50H600」、厚み0.5mm)である。No.16では、上記電磁鋼板を上記評価用モータに備えられているロータ鉄心の形状(図2参照)に積層したものを用いている。即ち、No.16は、磁気焼鈍も、Al皮膜およびSn皮膜の形成も行わず、また皮膜形成後の熱処理も行っていない例である。下記表2に示す「積層鋼板」とは、上記無方向性電磁鋼板を打ち抜き加工して積層したものについて、かしめ加工と一部溶接接合を行ってロータ鉄心を作製し、得られたロータ鉄心とシャフトを組み合わせたこと意味している。シャフトの成分組成は、上記無方向性電磁鋼板と同じである。
得られた供試用ロータ鉄心の金属組織、フェライト結晶粒度、および電気抵抗率を上記と同じ手順で測定し、測定結果を下記表3に示す。
次に、得られた供試用ロータ鉄心を上記評価用モータに取り付け、上記と同じ手順で測定した。測定結果を下記表3に示す。
次に、図3に、評価用モータに付与したトルクとモータ効率の関係を示す。また、図4に、評価用モータの回転数とモータ効率の関係を示す。なお、図3、図4には、代表値として下記表3に示したNo.1、3、4、7、16の結果を示す。図3、図4において、◇はNo.1の結果、□はNo.3の結果、△はNo.4の結果、◆はNo.7の結果、■はNo.16の結果を夫々示している。
図3、図4から明らかなように、いずれの試験片も、評価用モータに付与するトルクに対するモータ効率はほぼ等しい傾向を示しているが、電磁鋼板を積層して得られたロータ鉄心を用いたNo.16は、モータ回転数が大きくなるに従ってモータ効率の低下が著しく大きくなることが分かる。
下記表1〜表3から次のように考察できる。No.1、5、8、10、17、19は、本発明で規定する要件を満足する例であり、得られたロータ鉄心を備えた評価用モータは、目標としているモータ効率を満足しており、しかも78%以上のモータ効率を広い回転数領域で実現できている。また、Al拡散層を設けたNo.1とNo.17、Sn拡散層を設けたNo.5とNo.19を比較すると、B(ホウ素)を添加していない鋼種aを用いた例(No.1とNo.5)よりも、Bを添加した鋼種eを用いた例(No.17とNo.19)の方が、磁気特性が一層向上していることが分かる。
一方、No.2〜4、6、7、9、11〜16、18、20、21は、本発明で規定するいずれかの要件を満足しない例であり、得られたロータ鉄心を備えた評価用モータは、目標としているモータ効率を満足しておらず、更に、78%以上のモータ効率を実現できる回転数領域が狭くなっている例もあった。具体的には、No.16は、電磁鋼板を積層して得られたロータ鉄心を用いた従来例であり、モータ効率は目標としている基準に到達していない。
No.7、12、15、21は、いずれもロータ鉄心の端部にAl拡散層もSn拡散層も形成していない例であり、このロータ鉄心を備えた評価用モータは、モータ効率が目標としている基準に到達しておらず、また78%以上のモータ効率を達成するための回転数領域は狭くなっている。
No.2は、ロータ鉄心の端部にAl拡散層が形成されているため、78%以上のモータ効率を達成するための回転数領域は930と広くなっている。しかし、Al拡散層を粉末塗布法で形成しているため、最大値(Almax)と最小値(Almin)の比が1.5を超えており、最表面におけるAl濃度にバラツキが生じている。また、最表面におけるAl濃度が18質量%を超えているため、非磁性相部も生成している。従って渦電流損が局所的に発生し、モータ効率自体が目標としている基準に到達していなかった。
No.13は、ロータ鉄心の端部にAl拡散層を形成した例であるが、母相の化学成分組成が本発明で規定する要件を満足していないため、ロータ鉄心として必要な磁気特性が不足し、モータ効率が目標としている基準に到達しておらず、また78%以上のモータ効率を達成するための回転数領域は狭くなっている。
No.3、4、9、14、18は、いずれもロータ鉄心の全面にAl拡散層を形成した例であり、モータ効率が目標としている基準に到達しておらず、また78%以上のモータ効率を達成するための回転数領域は狭くなっている。
No.6、11、20は、いずれもロータ鉄心の全面にSn拡散層を形成した例であり、モータ効率が目標としている基準に到達しておらず、また78%以上のモータ効率を達成するための回転数領域は狭くなっている。
Figure 2012177188
Figure 2012177188
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Claims (9)

  1. 母相の化学成分組成が、
    C :0.002〜0.02%(質量%の意味。以下同じ。)、
    Si:3%以下(0%を含まない)、
    Mn:0.1〜0.5%、
    P :0.03%以下(0%を含まない)、
    S :0.03%以下(0%を含まない)、
    Cu:0.1%以下(0%を含まない)、
    Ni:0.1%以下(0%を含まない)、
    Cr:1.6%以下(0%を含まない)、
    Al:0.002〜0.04%、
    N :0.005%以下(0%を含まない)、
    残部:鉄および不可避不純物で、
    柱状または筒状の永久磁石モータ用ロータ鉄心であり、
    (a)端部の最表面側から中心部に向かってAl量が減少するAl拡散層が形成されており、且つ端面におけるAl濃度を複数箇所測定したときに、最大値(Almax)と最小値(Almin)の比(Almax/Almin)が1.0〜1.5であるか、または、
    (b)端部の最表面側から中心部に向かってSn量が減少するSn拡散層が形成されており、且つ端面におけるSn濃度を複数箇所測定したときに、最大値(Snmax)と最小値(Snmin)の比(Snmax/Snmin)が1.0〜1.5であることを特徴とする永久磁
    石モータ用ロータ鉄心。
  2. 前記Al拡散層のうち、Alを1質量%以上含有する最適Al拡散層の厚みが40μm以上である請求項1に記載のロータ鉄心。
  3. 前記端面におけるAl濃度が18質量%以下(0質量%を含まない)である請求項1または2に記載のロータ鉄心。
  4. 前記Sn拡散層のうち、Snを1質量%以上含有する最適Sn拡散層の厚みが40μm以上である請求項1に記載のロータ鉄心。
  5. 前記端面におけるSn濃度が18質量%以下(0質量%を含まない)である請求項1または4に記載のロータ鉄心。
  6. 前記母相の金属組織に占めるフェライト分率が99面積%以上であり、
    フェライト結晶粒の粒度番号が5.5以下である請求項1〜5のいずれかに記載のロータ鉄心。
  7. 前記母相は、更に、他の元素として、
    B:0.006%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載のロータ鉄心。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の永久磁石モータ用ロータ鉄心の外側面に永久磁石が固定されている永久磁石モータ用ロータ。
  9. 請求項8に記載の永久磁石モータ用ロータを備えた永久磁石モータ。
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