JP2012172986A - 超電導線材の検査方法 - Google Patents

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【課題】シースの除去を伴う超電導フィラメントの検査を迅速かつ精度よく行うことができる超電導線材の検査方法を提供する。
【解決手段】超電導線材50は、超電導フィラメント10と、銀または銀合金から作られ超電導フィラメント10を被覆するシース20とを有する。硝酸を含有する第1のエッチング液により、シース20が厚さ方向に途中まで除去される。アンモニアおよび過酸化水素を含有する第2のエッチング液により、厚さ方向に途中まで除去されたシース20を除去することで、超電導フィラメント10が露出させられる。露出させられた超電導フィラメント10が検査される。
【選択図】図1

Description

本発明は、超電導線材の検査方法に関し、より特定的には、超電導フィラメントおよびシースを有する超電導線材の検査方法に関する。
超電導フィラメントと、これを被覆するシースとを有する超伝導線材の開発が広く進められている。この超伝導線材は、典型的には、Bi系超電導体から作られたフィラメントと、Agを含有するシースとを有する。この超電導線材の臨界電流を大きくするためには、フィラメントの結晶配向性を高める必要がある。たとえば特許文献1がそのような技術を開示されている。
上記のようにフィラメントの結晶配向性が超電導線材の性能に大きな影響を及ぼすことから、結晶配向性の検査技術が必要となる。一般に結晶配向性はエックス線回折によって測定されることが多い。エックス線回折による超電導フィラメントの測定例は、たとえば非特許文献1に示されている。この文献によれば、銀シースに入ったフィラメントのエックス線回折測定が、高輝度放射光を用いて行われている。
特開2007−26773号公報
飯原順次、外9名、「SPring−8を利用したBi系超電導線材の焼成反応解析技術開発」、SEIテクニカルレビュー、住友電気工業株式会社、2008年1月、第172号、p.66−70
上記のように高輝度放射光を用いればシースに入ったフィラメントのエックス線回折測定を行うことができるものの、高輝度放射光の発生には極めて大規模な施設が必要である。またたとえ高輝度放射光を用いる場合であっても、エックス線の透過がシースによって妨げられることは好ましくない。この問題はエックス線を透過しにくい銀を含むシースが用いられる場合、特に深刻となる。
上記のようにフィラメントの検査においてシースが障害となる場合、フィラメントに対する測定の前にシースを除去することが望まれる。このシースの除去の際に、フィラメントの主要な部分が共に除去されてしまうと、本来のフィラメントの状態を検査することができなくなる。一方で、フィラメントの除去を抑制しようとしてシースの除去を緩慢に行うのでは、検査に長時間を要してしまう。
本発明はこの問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、シースの除去を伴う超電導フィラメントの検査を迅速かつ精度よく行うことができる超電導線材の検査方法を提供することである。
本発明の超電導線材の検査方法は、超電導フィラメントと、銀または銀合金から作られ超電導フィラメントを被覆するシースとを有する超電導線材の検査方法であって、以下の工程を有する。
硝酸を含有する第1のエッチング液により、シースが厚さ方向に途中まで除去される。アンモニアおよび過酸化水素を含有する第2のエッチング液により、厚さ方向に途中まで除去されたシースを除去することで、超電導フィラメントが露出させられる。露出させられた超電導フィラメントが検査される。
この検査方法によれば、シースに対するエッチング速度が比較的速い第1のエッチング液によってシースの大部分を迅速に除去した後に、超電導フィラメントに対するエッチング速度が比較的遅い第2のエッチング液によってシースの残部が除去される。これにより、シースの除去を迅速に行うことができ、かつ超電導フィラメントが除去される量を抑えることができる。よって、シースを除去した後に行うことが求められる超電導フィラメントの検査を、迅速かつ精度よく行うことができる。
上記検査は、超電導フィラメントにエックス線を照射することにより行われてもよい。この場合、エックス線の照射前に、エックス線を透過しにくい銀または銀合金から作られたシースが除去されている。よってエックス線の超電導フィラメントへの実効的な照射強度を高めることができる。
上記検査は、超電導フィラメントの結晶配向性を検査するためのものであってもよい。これにより、結晶配向性、すなわち超電導フィラメントの臨界電流に大きな影響を及ぼす物性を、精度よく検査することができる。
好ましくは第1のエッチング液の硝酸の濃度は20質量パーセント以上40質量パーセント以下である。濃度が20質量パーセント以上であることによって、シースに対するエッチング速度を実用上十分な程度に確保することができる。濃度が40質量パーセント以下であることによって、シースに対するエッチング速度が過度に速くなることが避けられるので、超電導フィラメントが露出してしまう前に第1のエッチング液によるエッチングを容易に停止させることができる。
好ましくは第2のエッチング液のアンモニアの質量に対する過酸化水素の質量は30パーセント以上70パーセント以下である。第2のエッチング液のアンモニアの質量に対する過酸化水素の質量が30パーセント以上であることによって、シースに対するエッチング速度を実用上十分な程度に確保することができる。第2のエッチング液のアンモニアの質量に対する過酸化水素の質量が70パーセント以下であることによって、超電導フィラメントに対するエッチング速度が過度に速くなることが避けられるので、超電導フィラメントがオーバーエッチングされる量を抑制することができる。
本発明によれば、上述したように、シースの除去を伴う超電導フィラメントの検査を迅速かつ精度よく行うことができる。
本発明の実施の形態1における超電導線材の構成を模式的に示す断面斜視図である。 図1の線II−IIに沿う部分断面図である。 本発明の実施の形態1における超電導線材の検査工程の第1工程を概略的に示す部分断面図である。 本発明の実施の形態1における超電導線材の検査工程の第2工程を概略的に示す部分断面図である。 本発明の実施の形態1における超電導線材の検査工程の第3工程を概略的に示す部分断面図である。 比較例の超電導線材の検査工程の一工程を示す部分断面図である。 本発明の実施の形態2における超電導線材の構成を模式的に示す断面斜視図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1および図2を参照して、本実施の形態の超電導線材50は、テープ面(図1の上面および下面)を有するテープ状の形状を有し、その延在方向に沿って超電導電流DRを流すものである。超電導線材50は、超電導フィラメント10と、シース20とを有する。超電導フィラメント10は多数の板状結晶で構成されている。シース20は、銀または銀合金から作られており、超電導フィラメント10を被覆している。
超電導フィラメント10を構成する板状結晶は、Bi(ビスマス)系超電導体から作られている。Bi系超電導体は、いわゆるBi2223、すなわち(Bi,Pb)2Sr2Ca2Cu3xである。Bi2223は、結晶学的にa〜c軸を有し、よってa軸およびb軸が張るab面を有する。
超電導フィラメント10の板状結晶は、ab面がおおよそテープ面と平行となるような結晶配向性を有する。
また通常、シース20の内部にはボイドVDが存在する。
超電導線材50の臨界電流は、上述した結晶配向性が高いほど、またボイドVDが少ないほど高くなる。
なおシース20は最外周に位置する特に厚い部分(図2に示されている部分)と、超電導フィラメント10の外周部分PAおよび中心部分PBの内部に入り込んだ部分(図1において超電導フィラメント10の板状結晶間に挟まれている部分)とを有する。シース20の上述した特に厚い部分の厚さは、たとえば40μm程度である。一方、シース20の、上述した、内部に入り込んだ部分の厚さは、たとえば数μm程度である。
次に、超電導フィラメント10の結晶配向性を検査する方法について、以下に説明する。
第1および第2のエッチング液が準備される。第1のエッチング液は硝酸を含有し、第2のエッチング液はアンモニアおよび過酸化水素を含有する。好ましくは第1のエッチング液の硝酸の濃度は20質量パーセント以上40質量パーセント以下である。また好ましくは第2のエッチング液のアンモニアの質量に対する過酸化水素の質量は30パーセント以上70パーセント以下である。
図3を参照して、超電導線材50が第1のエッチング液に浸漬される。好ましくは適当な時間間隔で超電導線材50は裏返される。超電導フィラメント10の凹凸が観察され始めたら、速やかにエッチングが停止される。これにより、シース20が厚さ方向に途中まで除去される。すなわちシース20の外周側21が除去され、内周側22が残される。この後、線材の洗浄が行われる。
さらに図4を参照して、この線材が第2のエッチング液に浸漬される。好ましくは適当な時間間隔で線材は裏返される。超電導フィラメント10の黒色の外観が観察され始めたら、速やかにエッチングが停止される。これによりシース20の内周側22が除去されることで、超電導フィラメント10、特に外周部分PAが露出させられる。この後、超電導フィラメント10の洗浄が行われる。
なお必ずしも外周部分PAの全体が露出させられている必要はなく、後述する検査が行われる領域が露出されていればよい。またシース20のうち超電導フィラメント10の板状結晶間に挟まれている部分は残存していてよい。
図5を参照して、露出させられた超電導フィラメント10の結晶配向性が検査される。この検査は、超電導フィラメント10にエックス線を照射することにより行われ得る。エックス線を透過しにくい銀または銀合金から作られたシース20が上述したエッチングによって予め除去されているので、エックス線の超電導フィラメント10への実効的な照射強度が高くなる。
結晶配向性の検査は、いわゆるオメガスキャンを用いたエックス線回折によって行われ得る。すなわち、入射エックス線XIに対する回折エックス線XDの強度が、超電導フィラメント10を軸周りに回転させながら測定される。この軸は超電導線材50の延在方向、すなわち超電導電流DR(図1)に沿っている。これにより(Bi,Pb)2223結晶などの平均配向ずれ角を求める。この平均配向ずれ角は各々の(Bi,Pb)2223結晶のa−b面と線材のテープ面(幅×長さ方向の面)とのなす角の平均をいう。(Bi,Pb)2223結晶の平均ずれ角が小さいほど、(Bi,Pb)2223結晶の配向性が高いことを示す。
エックス線回折による結晶配向性評価は、透過法を用いると超電導フィラメントの厚さ方向の平均配向ずれ角を評価することができる。また、反射法で評価するとCu管球エックス線源を用いた場合では超電導フィラメントの表層部8μm程度しかエックス線が進入せず、表層のみの平均配向ずれ角を評価することになる。それ故、シースはぎ取りなど物理的な処理を行うと超電導フィラメントの表層部を損傷させるため、正確な結晶配向性評価を行うことは困難である。従って、本発明の手法を用いる必要がある。
次に第1および第2のエッチング液について詳しく説明する。
第1のエッチング液は第2のエッチング液に比して、シース20に対して、より大きなエッチング速度を有し、第2のエッチング液は第1のエッチング液に比して、超電導フィラメント10に対して、より小さなエッチング速度を有する。
好ましくは第1のエッチング液の硝酸の濃度は20質量パーセント以上40質量パーセント以下である。濃度が20質量パーセント以上であることによって、シース20に対するエッチング速度を実用上十分な程度に確保することができる。濃度が40質量パーセント以下であることによって、シース20に対するエッチング速度が過度に速くなることが避けられるので、超電導フィラメント10が露出してしまう前に第1のエッチング液によるエッチングを容易に停止させることができる。
好ましくは第2のエッチング液のアンモニアの質量に対する過酸化水素の質量は30パーセント以上70パーセント以下である。第2のエッチング液のアンモニアの質量に対する過酸化水素の質量が30パーセント以上であることによって、シース20に対するエッチング速度を実用上十分な程度に確保することができる。第2のエッチング液のアンモニアの質量に対する過酸化水素の質量が70パーセント以下であることによって、超電導フィラメント10に対するエッチング速度が過度に速くなることが避けられるので、超電導フィラメント10がオーバーエッチングされる量を抑制することができる。
図6を参照して、仮に上述したシース20の除去を第1のエッチング液のみによって行うとすると、第1のエッチング液が大きなエッチング速度を有することに起因したオーバーエッチングによって、シース20の外周部分PAが除去されてしまいやすい。この場合、超電導線材50の検査を精度よく行うことができなくなる。
また仮に上述したシース20の除去を第2のエッチング液のみによって行うとすると、シース20に対して第2のエッチング液が小さなエッチング速度を有することに起因して、エッチングに長い時間を要してしまう。また外周部分PAが変質してしまうことがある。この原因は、超電導フィラメント10が長時間エッチング液に浸漬されることと推測される。この場合、超電導線材50の検査を精度よく行うことができなくなる。
これに対して本実施の形態によれば、シース20に対するエッチング速度が比較的速い第1のエッチング液によってシース20の大部分を迅速に除去した後に、超電導フィラメント10に対するエッチング速度が比較的遅い第2のエッチング液によってシース20の残部が除去される。これにより、シース20の除去を迅速に行うことができ、かつ超電導フィラメント10の外周部分PAが除去される量を抑えることができる。よって、シース20を除去した後に行うことが求められる超電導フィラメント10の検査を、迅速かつ精度よく行うことができる。
(実施の形態2)
図7を参照して、本実施の形態の超電導線材51は、上述した超電導線材50と、接合部30と、1対の補強部40とを有する。1対の補強部40は、超電導線材50を厚み方向に挟んでいる。各補強部40は、超電導線材50のテープ状の形状と同様の厚さ方向および延在方向を有するテープ状の形状を有する。補強部40は、たとえばステンレススチールなどの金属合金から作られている。各補強部40は超電導線材50に接合部30によって接合されている。接合部30は、たとえばはんだによって形成されている。
超電導線材51に対して実施の形態1と同様の検査を行うためには、まず補強部40および接合部30を除去する必要がある。この方法について、以下に説明する。
まず超電導線材51が第3のエッチング液に浸漬される。第3のエッチング液は塩酸を含む。塩酸の濃度は、たとえば15〜20質量パーセントである。
次に超電導線材51を適当な時間間隔で裏返しながら過酸化水素水を滴下する。過酸化水素水の濃度は、たとえば30〜40質量パーセントである。これにより、超電導線材51から気泡が放出され始め、また第3のエッチング液が黄色に変色し始める。線材の外観が均一な黒色となった時点で第3のエッチング液から線材が取り出される。これにより補強部40および接合部30がエッチングされる。このエッチングに要する時間は、たとえば3〜5分である。
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
上記各実施の形態においてはテープ状の形状を有する超電導線材50または51が検査されるが、テープ状以外の形状を有する超電導線材が検査されてもよく、たとえば断面が円形状の超電導線材が検査されてもよい。また上記各実施の形態においては完成した超電導線材50または51が検査されるが、製造途中の超電導線材が検査されてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 超電導フィラメント、20 シース、30 接合部、40 補強部、50,51 超電導線材。

Claims (5)

  1. 超電導フィラメントと、銀または銀合金から作られ前記超電導フィラメントを被覆するシースとを有する超電導線材の検査方法であって、
    硝酸を含有する第1のエッチング液により、前記シースを厚さ方向に途中まで除去する工程と、
    アンモニアおよび過酸化水素を含有する第2のエッチング液により、厚さ方向に途中まで除去された前記シースを除去することで、前記超電導フィラメントを露出させる工程と、
    露出された前記超電導フィラメントを検査する工程とを備える、超電導線材の検査方法。
  2. 前記検査する工程は、前記超電導フィラメントにエックス線を照射することにより行われる、請求項1に記載の超電導線材の検査方法。
  3. 前記検査する工程は、前記超電導フィラメントの結晶配向性を検査するためのものである、請求項1または2に記載の超電導線材の検査方法。
  4. 前記第1のエッチング液の硝酸の濃度は20質量パーセント以上40質量パーセント以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の超電導線材の検査方法。
  5. 前記第2のエッチング液のアンモニアの質量に対する過酸化水素の質量は30パーセント以上70パーセント以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の超電導線材の検査方法。
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