(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図19に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両は、複数(本実施形態では4つ)ある車輪(右前輪FR、左前輪FL、右後輪RR及び左後輪RL)のうち、前輪FR,FLが駆動輪として機能するいわゆる前輪駆動車である。こうした車両には、運転手によるアクセルペダル11の操作量に応じた駆動力を発生する動力源の一例としてのエンジン12を有する駆動力発生装置10と、駆動力発生装置10で発生した駆動力を前輪FR,FLに伝達する駆動力伝達装置20とを備えている。また、車両には、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作の態様に応じた制動力を各車輪FR,FL,RR,RLに付与するための制動装置30が設けられている。
駆動力発生装置10は、エンジン12の吸気ポート(図示略)近傍に配置され、且つ該エンジン12に燃料を噴射するインジェクタを有する燃料噴射装置(図示略)を備えている。こうした駆動力発生装置10は、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを有するエンジン用ECU13(「エンジン用電子制御装置」ともいう。)に制御される。このエンジン用ECU13には、アクセルペダル11の近傍に配置され、且つ運転手によるアクセルペダル11のアクセル開度を検出するためのアクセル開度センサSE1が電気的に接続されている。そして、エンジン用ECU13は、アクセル開度センサSE1からの検出信号に基づきアクセル開度を演算し、該演算したアクセル開度などに基づき駆動力発生装置10を制御する。
駆動力伝達装置20は、変速機の一例としての有段式の自動変速機21と、該自動変速機21の出力軸から伝達された駆動力を適宜配分して前輪FL,FRに伝達するディファレンシャルギヤ22とを備えている。こうした駆動力伝達装置20は、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを有するAT用ECU23(「AT用電子制御装置」ともいう。)に制御される。このAT用ECU23は、車両の車体速度、運転手によるアクセルペダル11、ブレーキペダル31及び図示しないシフト装置の操作状況などに応じて、自動変速機21の制御(アップシフト制御やダウンシフト制御)を行う。
制動装置30は、図1及び図2に示すように、ブースタ320、マスタシリンダ321及びリザーバ322を有する液圧発生装置32と、2つの液圧回路41,42を有するブレーキアクチュエータ40(図2では二点鎖線で示す。)とを備えている。液圧発生装置32には、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作の有無を検知するためのブレーキスイッチSW1が設けられている。このブレーキスイッチSW1からの検知信号は、ブレーキアクチュエータ40を制御するブレーキ用ECU60(「ブレーキ用電子制御装置」ともいう。)に出力される。
各液圧回路41,42は、液圧発生装置32のマスタシリンダ321に接続されている。そして、第1液圧回路41には、右前輪FR用のホイールシリンダ55a及び左後輪RL用のホイールシリンダ55dが接続されると共に、第2液圧回路42には、左前輪FL用のホイールシリンダ55b及び右後輪RR用のホイールシリンダ55cが接続されている。そして、ブレーキペダル31が車両の運転者によって踏込み操作された場合には、ブースタ320及びマスタシリンダ321が作動する。その結果、マスタシリンダ321からは、液圧回路41,42を介してホイールシリンダ55a〜55d内にブレーキ液が供給される。すると、各車輪FR,FL,RR,RLには、ホイールシリンダ55a〜55d内のホイールシリンダ圧(以下、「WC圧」ともいう。)に応じた制動力が付与される。
次に、ブレーキアクチュエータ40について、図2を参照して説明する。なお、各液圧回路41,42は略同一構成であるため、図2では、明細書の説明理解の便宜上、第1液圧回路41のみを図示し、第2液圧回路42の図示を省略するものとする。
図2に示すように、第1液圧回路41には、マスタシリンダ321に接続される連結経路43が設けられている。この連結経路43には、マスタシリンダ321内のマスタシリンダ圧(以下、「MC圧」ともいう。)とホイールシリンダ55a,55d内のWC圧との間で差圧を発生させるべく作動する常開型のリニア電磁弁44が設けられている。また、第1液圧回路41には、左前輪FR用のホイールシリンダ55aに接続される左前輪用経路44aと、右後輪RL用のホイールシリンダ55dに接続される右後輪用経路44dとが形成されている。そして、これら各経路44a,44dには、ホイールシリンダ55a,55d内のWC圧の増圧を規制する際に作動する常開型の電磁弁である増圧弁45a,45dと、ホイールシリンダ55a,55d内のWC圧を減圧させる際に作動する常閉型の電磁弁である減圧弁46a,46dとが設けられている。
また、第1液圧回路41には、各ホイールシリンダ55a,55dから減圧弁46a,46dを介して流出したブレーキ液を一時貯留するためのリザーバ47と、モータ48の回転に基づき作動するポンプ49とが接続されている。リザーバ47は、吸入用流路50を介してポンプ49に接続されると共に、マスタ側流路51を介して連結経路43においてリニア電磁弁44よりもマスタシリンダ321側に接続されている。また、ポンプ49は、供給用流路52を介して第1液圧回路41における増圧弁45a,45dとリニア電磁弁44との間の接続部位53に接続されている。そして、ポンプ49は、モータ48が回転した場合に、リザーバ47及びマスタシリンダ321側から吸入用流路50及びマスタ側流路51を介してブレーキ液を吸引し、該ブレーキ液を供給用流路52内に吐出する。
次に、制動制御装置及び踏力推定装置の一例としてのブレーキ用ECU60について、図1及び図2を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、ブレーキ用ECU60の入力側インターフェースには、ブレーキスイッチSW1、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE2,SE3,SE4,SE5、車両の前後方向における車体減速度であるGセンサ値を検出するための車体加速度センサSE6が電気的に接続されている。一方、ブレーキ用ECU60の出力側インターフェースには、ブレーキアクチュエータ40を構成する各弁44,45a,45d,46a,46d及びモータ48などが電気的に接続されている。
なお、車体加速度センサSE6からは、車両が加速する場合には車両の重心が後方に移動するためにGセンサ値が負の値となるような信号が出力される一方、車両が減速する場合には車両の重心が前方に移動するためにGセンサ値が正の値となるような信号が出力される。そのため、Gセンサ値は、車両が登坂路で停車中には負の値となる一方、車両が降坂路である場合には正の値となる。
また、ブレーキ用ECU60は、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを有している。ROMには、各種制御処理(例えば、図8に示す制動制御処理等)、各種マップ(図6及び図7に示すマップ等)及び各種閾値などが予め記憶されている。また、RAMには、車両の図示しないイグニッションスイッチがオンである間、適宜書き換えられる各種の情報(車輪速度、Gセンサ値等)などが記憶される。なお、ブレーキ用ECU60は、車載の他のECU13,23とバス61を介して通信可能となっている。
本実施形態の制動装置30は、運転手による今回のブレーキペダル31の踏込み操作が緊急制動操作である場合には、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の増大を補助(アシスト)する。しかし、本実施形態の制動装置30には、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作時の踏力を直接的に検出するためのセンサ(例えば、MC圧を検出するための圧力センサ)が設けられていない。そのため、本実施形態では、上記圧力センサの代わりに、車輪速度センサSE2〜SE5と車体加速度センサSE6とを用いて、運転手による今回のブレーキペダル31の踏込み操作が緊急制動操作であるか否かが判定される。
そこで次に、車輪速度センサSE2〜SE5及び車体加速度センサSE6を用いた制動制御方法について、図3に示すタイミングチャートを参照して説明する。
図3に示すように、第1のタイミングt1で運転手がブレーキペダル31の踏込み操作を開始すると、マスタシリンダ321内のMC圧が増圧され始める。こうしたMC圧の増圧に追随するように、各ホイールシリンダ55a〜55d内のWC圧が増圧し始める。すると、各車輪FR,FL,RR,RLにはWC圧に応じた大きさの制動力が付与され、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWが急激に減速される。このように車輪速度VWが減速されると、車両の車体速度VSの減速が開始される。
その結果、各車輪速度センサSE2〜SE5のうち少なくとも一つのセンサを用いて演算される車体減速度(第1の推定車体減速度)DVが上昇し始める。また、車体減速度DVの上昇に少し遅れて、車体加速度センサSE6を用いて演算されるGセンサ値(第2の推定車体減速度)Gが上昇し始める。車輪速度センサSE2〜SE5は、車輪FR,FL,RR,RLに近い位置に配置されるのに対し、車体加速度センサSE6は、車輪速度センサSE2〜SE5よりも車輪FR,FL,RR,RLから離間した位置に配置される。具体的には、車体加速度センサSE6は、車両の図示しないサスペンションで支持される図示しない車体に設置されている。そのため、車輪FR,FL,RR,RLに制動力が付与された場合、Gセンサ値Gは、車体減速度DVよりも遅れて変動し始める。
そして、車体減速度DVが制動判定値KDV_Brkを超えた第2のタイミングt2からの経過時間が第1の基準経過時間TDVstを経過する前に、車体減速度DVが、制動判定値KDV_Brkよりも大きな値に設定された第1の減速判定値DV_stを超えると、第1の開始判定条件が成立する(第3のタイミングt3)。続いて、第3のタイミングt3からの経過時間が第2の基準経過時間TGst(例えば、102ミリ秒)を経過する前に、Gセンサ値Gが第2の減速判定値G_stを超えた場合には、第2の開始判定条件が成立する(第4のタイミングt4)。このように第1及び第2の各開始判定条件が成立することで、運転手による今回のブレーキペダル31の踏込み操作は、緊急制動操作であると判定される。
その結果、補助制御条件成立フラグFLG4がオフからオンにセットされ、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の増大を補助するための補助制御(「ブレーキアシスト制御」や「BA制御」ともいう。)が開始される。なお、補助制御条件成立フラグFLG4は、補助制御の開始条件が成立してから補助制御の終了条件が成立するまでの間、オンにセットされるフラグである。
補助制御は、各ホイールシリンダ55a〜55d内のWC圧を増圧させて各車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力を増大させる増大制御と、WC圧を保圧させて各車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力を保持させる保持制御とを有している。増大制御では、リニア電磁弁44及びポンプ49(モータ48)が作動される(図2参照)。そして、予め設定された増大所要時間の間、増大制御が行われると、保持制御に移行する。この保持制御では、ポンプ49が停止され、リニア電磁弁44の作動によって各ホイールシリンダ55a〜55d内のWC圧が保圧される。ただし、各ホイールシリンダ55a〜55d内のWC圧は、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作量が変動した場合、その変動に応じて増減される。
その後、ブレーキペダル31の踏込み操作量が少なくなったり、ブレーキペダル31の踏込み操作が解消されたりし、補助制御の終了条件が成立すると、補助制御条件成立フラグFLG4がオフとなり、補助制御が終了される。すなわち、リニア電磁弁44への給電が停止され、各車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力が減少される。なお、上記終了条件としては、Gセンサ値Gが第2の減速判定値G_st未満になることが挙げられる。
ところで、上述した制動制御方法には、以下に示す複数の問題点がある。
第1の問題点は、車輪速度センサSE2〜SE5を用いて演算される車体減速度DV及び車体加速度センサSE6を用いて演算されるGセンサ値Gのうち、特に車体減速度DVには、外乱に基づく振動成分が含まれやすい。外乱としては、例えば、車両の走行する路面から車輪FR,FL,RR,RLが受ける反力、及び駆動輪である前輪FR,FLに伝達される駆動力と前輪FR,FLに付与される制動力との干渉などが挙げられる。
路面から車輪FR,FL,RR,RLが受ける反力の大きさは、路面の凹凸度合が大きな悪路である場合と凹凸度合が小さい良路である場合とで異なる。しかも、一言で悪路と言っても、凹凸度合によって、車体減速度DVに含まれる振動成分の大きさが異なる。また、車両が路上に存在する段差を乗り越えた場合にも、段差を乗り越えたことに起因した振動成分が車体減速度DVに含まれる。こうした問題を解決するためには、路面の凹凸度合を推定したり、段差を車両が乗り越えたことを推定したりし、該推定結果に基づき上記第1の減速判定値DV_stを補正することが好ましい。
車輪FR,FL,RR,RLに付与される駆動力と制動力との干渉は、制動時において自動変速機21がダウンシフトされたときに生じ得る。自動変速機21がダウンシフトされると(例えば、変速段が4速から3速に変更されると)、前輪FR,FLに伝達される駆動力は、ダウンシフトされる直前と比較して大きくなる。その結果、前輪FR,FLに付与される駆動力と制動力との間で干渉が発生する。そして、こうした干渉に起因した振動成分が、車体減速度DVに含まれる。そのため、自動変速機21でダウンシフトが行われる場合、又はダウンシフトが行われる可能性が高い場合には、第1の減速判定値DV_stを大きな値に設定することが好ましい。
なお、Gセンサ値Gには、上記外乱による振動成分が、車体減速度DV程には含まれない。これは、車体を支持するサスペンション(図示略)がダンパとして機能するためである。
第2の問題点は、車輪速度センサSE2〜SE5からの検出信号が路面の勾配による影響を受けやすいことである。車両の走行する路面が坂路である場合、図4のタイミングチャートに示すように、車体減速度DVとGセンサ値Gとの間には、路面の勾配に相当する分の差分が生じる。すなわち、路面が登坂路である場合には、車両に加わる重力が車体に対して制動力として作用し、該制動力の成分が車体減速度DVに含まれる。一方、路面が降坂路である場合には、車両に加わる重力が車体に対して推進力として作用し、該推進力の成分が車体減速度DVに含まれる。そのため、路面の勾配に応じて第1の減速判定値DV_stを補正しないと、路面が登坂路である場合には車体減速度DVが第1の減速判定値DV_stを超えやすい一方で、路面が降坂路である場合には車体減速度DVが第1の減速判定値DV_stを超えにくい。
また、Gセンサ値Gは、路面の勾配に相当する分、車体減速度DVと乖離した値となる。すなわち、路面が登坂路である場合にはGセンサ値Gが車体減速度DVよりも小さな値となり、路面が降坂路である場合にはGセンサ値Gが車体減速度DVよりも大きな値となる。つまり、路面の勾配によって、補助制御の開始タイミングがばらついてしまう。こうした開始タイミングのばらつきを抑えるためには、路面の勾配に基づき、第1の減速判定値DV_st及び第2の減速判定値G_stを補正することが好ましい。
また、車両の走行する路面の勾配が登坂路側に変化した場合、図5のタイミングチャートに示すように、前輪FR,FLには、路面の勾配の変化に起因した制動力が付与される。すなわち、車輪FR,FL,RR,RLのうち前輪FR,FLのみが、勾配の変化点Aを通過した場合、前輪FR,FLには、車体に加わる重力が制動力として付与される(第1のタイミングt21)。そのため、前輪FR,FLの車輪速度VWは急激に遅くなり、車体減速度DVは急激に大きくなる。その一方で、Gセンサ値Gは、路面の勾配の変化をサスペンション(図示略)が吸収するために、車体減速度DVほどには変化しない。すなわち、車体減速度DVの変化勾配は、Gセンサ値Gの変化勾配とは大きく異なる。
その後、後輪RR,RLも上記勾配の変化点Aを通過すると、車体減速度DVとGセンサ値Gとの差は、路面の勾配に相当する差に近づく(第2のタイミングt22)。つまり、第1の減速判定値DV_stを補正しないと、第1のタイミングt21と第2のタイミングt22との間では、車体減速度DVが第1の減速判定値DV_stを超えやすくなり、ひいては補助制御の開始条件が不用意に成立してしまうおそれがある。そのため、路面の勾配が登坂路側に変化した場合には、第1の減速判定値DV_stを大きな値に補正することが好ましい。
また、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作態様によっては、補助制御の必要性がない又は低いことがある。例えば、車両の運転が上手な上級運転手は、必要に応じてブレーキペダル31を適切に踏込むことができる。つまり、上級運転手は、緊急制動が必要な場合には、ブレーキペダル31を迅速且つ強く踏み込むことができる。この場合、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作だけで、各車輪FR,FL,RR,RLには十分に大きな制動力が速やかに付与される。すなわち、補助制御を行わなくてもよい。そのため、車輪速度センサSE2〜SE5及び車体加速度センサSE6からの検出信号に基づき、運転手によるブレーキペダル31の踏力が高いと判断できた場合には、補助制御を行わないことが好ましい。
また、補助制御の開始条件が成立して、補助制御の増大制御が開始された直後に、車輪FR,FL,RR,RLのロックを抑制するためのアンチロックブレーキ制御(以下、「ABS制御」ともいう。)が開始されることがある。増大制御の開始直後では、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作によってABS制御が開始された可能性がある。また、補助制御の増大制御の開始直後に、車体減速度DVが路面限界に相当する減速度(例えば、1.2G)以上となることがある。この場合、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力がこれ以上増大されると、ABS制御が開始される可能性が高い。これらの場合には、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作だけで、車輪FR,FL,RR,RLに対して十分に大きな制動力を付与することができる。そのため、補助制御を終了させることが好ましい。
一方、補助制御の保持制御の実行中に、ABS制御が開始されることがある。こうした場合は、車両の走行する路面が高μ路から低μ路に切り替り、車輪FR,FL,RR,RLのスリップ率が高くなった際に起こり得る。保持制御の実行中にABS制御が開始されると、車輪FR,FL,RR,RLのスリップ率を低くすべく、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力が減少される。すると、車体減速度DV及びGセンサ値Gは、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の低下に伴って小さくなる。この場合、自身の制動操作によって車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力を低下させる意志を運転手が有していない可能性が高いため、補助制御を終了させないほうがよい。また、ABS制御が開始された後に、路面が低μ路から高μ路に再び移ることもある。こうした場合で運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作量が未だ多い場合には、補助制御を継続させておいたほうがよい。つまり、保持制御の実行中にABS制御が開始された場合には、保持制御を継続させておいたほうがよい。
また、補助制御の実行中において、運転手がブレーキペダル31の踏込み操作量を少なくしても、補助制御が終了されないことがある。これは、補助制御の実行に基づき車輪FR,FL,RR,RLに対して付与される制動力だけで、Gセンサ値Gが第2の減速判定値G_st以上となることがあるためである。そのため、補助制御の終了の判定時に用いる閾値を、補助制御の実行に基づき車輪FR,FL,RR,RLに対して付与される制動力を加味した値としたほうがよい。
本実施形態のブレーキ用ECU60は、上述したことを鑑みて補助制御の開始タイミング及び終了タイミングを図っている。そこで次に、ブレーキ用ECU60が補助制御の開始タイミングを図る上で必要なマップについて、図6及び図7を参照して説明する。
始めに、図6に示す第1のマップについて説明する。
第1のマップは、自動変速機21でダウンシフトが行なわれる可能性があると判断した際に、第1の減速判定値DV_stを補正するためのマップである。第1のマップの横軸は、Gセンサ値Gが、自動変速機21でダウンシフトが行なわれる可能性があるか否かを判断するために設定されたダウンシフト判定値を超えた状態の継続時間に相当する第3判定用タイマT3を示している。また、第1のマップの縦軸は、第1の減速判定値DV_stの補正量であるダウンシフト判定補正値DVflatを示している。図6に示すように、ダウンシフト判定補正値DVflatは、第3判定用タイマT3が第1の時間T3_1(例えば、14)以下である場合には「0(零)」に設定され、第3判定用タイマT3が第1の時間T3_1よりも長い第2の時間T3_2(例えば、50)以上である場合には最大補正値KDVflat1(例えば、0.5G)に設定される。そして、第3判定用タイマT3が第1の時間T3_1を超え且つ第2の時間T3_2未満である場合、ダウンシフト判定補正値DVflatは、第3判定用タイマT3の値が大きいほど大きな値に設定される。
次に、図7に示す第2のマップについて説明する。
第2のマップは、車両の走行する路面の勾配が登坂側に変化したか否かを判定する際に用いられる変化勾配基準値KDGlowを設定するためのマップである。ここでいう「路面の勾配が登坂路側に変化する」とは、車両の走行する路面の勾配が大きくなることを意味し、勾配が負の値である場合には勾配の絶対値が小さくなること、即ち降坂路の勾配が緩くなることも含んだ概念である。
図7に示すように、第2のマップの横軸は、車体減速度DVの変化勾配DDVからGセンサ値Gの変化勾配DGを減算した減算値(=DDV−DG)を示すと共に、第2のマップの縦軸は、変化勾配基準値KDGlowを示している。変化勾配基準値KDGlowは、上記減算値(=DDV−DG)が第1の減速値D1(例えば、0.3G)以下である場合には第1の基準値KDGlow1(例えば、2G/s)に設定される。また、変化勾配基準値KDGlowは、上記減算値が第1の減速値D1よりも大きい第2の減算値D2(例えば、0.5G)以上である場合には第1の基準値KDGlow1よりも大きい第2の基準値KDGlow2(例えば、4G/s)に設定される。そして、変化勾配基準値KDGlowは、上記減算値が第1の減速値D1よりも大きく且つ第2の減算値D2未満である場合には、上記減算値が大きいほど大きな値に設定される。
なお、車体減速度の変化勾配DDVは、車体減速度DVの単位時間あたりの変化量を示した値であって、例えば、車体減速度DVを時間微分することにより取得される。同様に、Gセンサ値の変化勾配DGは、Gセンサ値Gの単位時間あたりの変化量を示した値であって、例えば、Gセンサ値Gを時間微分することにより取得される。
そして次に、本実施形態のブレーキ用ECU60が実行する各種制御処理ルーチンについて、図8〜図14に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図8は、ブレーキ用ECU60が主に実行する制動制御処理ルーチンである。
さて、制動制御処理ルーチンは、予め設定された所定時間毎(例えば、6ミリ秒毎)に実行される。そして、制動制御処理ルーチンにおいて、ブレーキ用ECU60は、補助制御やアンチロックブレーキ制御などを行う際に必要な各種情報(車輪速度など)を取得する情報取得処理を行う(ステップS10)。続いて、ブレーキ用ECU60は、車両の走行する路面の凹凸度合を数値化した悪路指数を取得する悪路判定処理を行う(ステップS11)。
そして、ブレーキ用ECU60は、ABS制御の開始条件が成立したか否かを判定するABS判定処理を行う(ステップS12)。具体的には、ブレーキ用ECU60は、ブレーキスイッチSW1がオンである場合に、車輪のスリップ率が予め設定されたスリップ率判定値以上であるか否かを車輪FR,FL,RR,RL毎に判定し、ABS判定処理を終了する。なお、スリップ率は情報取得処理で演算される値であって、その演算方法については後述する(図9のステップS22参照)。
そして、ブレーキ用ECU60は、スリップ率がスリップ率判定値以上となった車輪(例えば、右前輪FR)のロックを抑制すべくABS処理を行う(ステップS13)。具体的には、ブレーキ用ECU60は、制御対象の車輪(例えば、右前輪FR)に対する制動力を減少させる減少制御、増大させる増大制御、(及び保持させる保持制御)を繰り返し順番に行う。このとき、ブレーキ用ECU60は、ポンプ49と、制御対象の車輪用の減圧弁及び増圧弁とを作動させる。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、ABS制御手段として機能する。
そして、ブレーキ用ECU60は、補助制御の開始条件が成立したか否かを判定するBA開始判定処理を行い(ステップS14)、補助制御の開始条件が成立した場合に補助制御を行うBA処理を行う(ステップS15)。続いて、ブレーキ用ECU60は、補助制御の終了条件が成立したか否かを判定し、終了条件が成立した場合には補助制御を終了させるBA終了判定処理を行い(ステップS16)、制動制御処理ルーチンを一旦終了する。
次に、上記ステップS10の情報取得処理ルーチンについて、図9に示すフローチャートを参照して説明する。
さて、情報取得処理ルーチンにおいて、ブレーキ用ECU60は、各車輪速度センサSE2〜SE5からの検出信号に基づき、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWを演算する(ステップS20)。続いて、ブレーキ用ECU60は、演算した各車輪FR,RL,RR,RLの車輪速度VWのうち少なくとも一つの車輪速度に基づき、車両の車体速度VS(「推定車体速度」ともいう。)を演算する(ステップS21)。例えば、ブレーキ用ECU60は、非制動時には従動輪である後輪RR,RLの車輪速度VWに基づき車体速度VSを演算し、制動時には駆動輪である前輪FR,FLを含んだ車輪の車輪速度VWに基づき車体速度VSを演算する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、車体速度演算手段としても機能する。そして、ブレーキ用ECU60は、各車輪FR,FL,RR,RLのスリップ率SLP(=(VS−VW)/VW)を演算する(ステップS22)。続いて、ブレーキ用ECU60は、ステップS21で演算した車体速度VSに基づき車両の車体減速度DVを演算する(ステップS23)。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、車輪速度センサSE2〜SE5を用いて車両の車体減速度(第1の推定車体減速度)DVを演算する第1減速度演算手段としても機能する。また、ステップS23が、第1減速度演算ステップに相当する。なお、車体減速度DVは、車両の減速時に正の値となり、加速時に負の値となる。
そして、ブレーキ用ECU60は、ステップS23で演算した車体減速度DVの変化勾配DDVを取得する(ステップS24)。続いて、ブレーキ用ECU60は、ステップS23で演算した車体減速度DVから高周波の変動成分を除去するフィルタリング処理を行い、平準化車体減速度DVf1を取得する(ステップS25)。そして、ブレーキ用ECU60は、図15に示すように、ステップS23で演算した車体減速度DVから低周波の変動成分を除去するフィルタリング処理を行い、ノイズ成分DVf2を取得する(ステップS26)。なお、このノイズ成分DVf2は、悪路指数の取得時に用いられる。
その後、図9のフローチャートに戻り、ブレーキ用ECU60は、車体加速度センサSE6からの検出信号に基づきGセンサ値Gを演算する(ステップS27)。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、車体加速度センサSE6を用いて車両のGセンサ値(第2の推定車体減速度)Gを演算する第2減速度演算手段としても機能する。また、ステップS27が、第2減速度演算ステップに相当する。そして、ブレーキ用ECU60は、ステップS27で演算したGセンサ値Gの変化勾配DGを勾配情報として演算し(ステップS28)、情報取得処理ルーチンを終了する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、Gセンサ値(第2の推定車体減速度)の変化勾配DGを勾配情報として演算する勾配情報取得手段としても機能する。また、ブレーキ用ECU60が、車体減速度の変化勾配DDV及びGセンサ値の変化勾配DGを取得する変化勾配取得手段としても機能する。
次に、上記ステップS11の悪路判定処理ルーチンについて、図15に示すタイミングチャートを参照して説明する。
さて、悪路判定処理ルーチンにおいて、ブレーキ用ECU60は、上記ステップS26で演算した所定サンプル数のノイズ成分DVf2を取得し、ノイズ成分DVf2の分散値を演算する。ノイズ成分DVf2の分散値は、ノイズ成分DVf2を2乗した値を積算し、該積算値をサンプル数で除算した値である。そして、ブレーキ用ECU60は、分散値が予め設定された第1分散閾値未満であった場合には悪路指数を「0(零)」と設定し、分散値が第1分散閾値以上であって且つ該第1分散閾値よりも大きな値に予め設定された第2分散閾値未満であった場合には悪路指数を「1」に設定する。また、ブレーキ用ECU60は、分散値が第2分散閾値以上であって且つ該第2分散閾値よりも大きな値に予め設定された第3分散閾値未満である場合には悪路指数を「2」に設定し、分散値が第3分散閾値以上である場合には悪路指数を「3」に設定する。各分散閾値は、分散値の大きさによって悪路指数を「0(零)」〜「3」に設定するための値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。すなわち、悪路指数は、路面の凹凸度合が大きいほど大きな値に設定される。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、悪路指数取得手段としても機能する。なお、悪路指数が「0(零)」である場合、路面が良路である、即ち悪路ではないと判定される。
次に、上記ステップS14のBA開始判定処理ルーチンについて、図10、図11及び図12に示す各フローチャートと、図5、図16、図17、図18及び図19に示すタイミングチャートとを参照して説明する。
さて、BA開始判定処理ルーチンは、ブレーキスイッチSW1がオンである場合に実行される。そして、BA開始判定処理ルーチンにおいて、ブレーキ用ECU60は、ステップS11で取得した悪路指数Nrwが「0(零)」であるか否かを判定する(ステップS30)。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、悪路という外乱に基づく振動成分が車体減速度DVに含まれるか否かを判定する外乱判定手段としても機能する。また、ステップS30が、外乱判定ステップに相当する。悪路指数Nrwが「0(零)」である場合(ステップS30:YES)、ブレーキ用ECU60は、路面が良路であると判断し、第1の減速判定値DV_stを補正するための悪路判定補正値DVbadを「0(零)」に設定する(ステップS31)。続いて、ブレーキ用ECU60は、悪路補正フラグFLG1をオフにセットし(ステップS32)、その処理を後述するステップS39に移行する。
一方、悪路指数Nrwが「0(零)」ではない場合(ステップS30:NO)、ブレーキ用ECU60は、悪路指数Nrwが「1」であるか否かを判定する(ステップS33)。悪路指数Nrwが「1」である場合(ステップS33:YES)、ブレーキ用ECU60は、路面が軽悪路であると判断し、悪路判定補正値DVbadを第1の補正値KDVbad1(例えば、0.2G)に設定する(ステップS34)。続いて、ブレーキ用ECU60は、悪路補正フラグFLG1をオンにセットし(ステップS35)、その処理を後述するステップS39に移行する。
一方、悪路指数Nrwが「1」ではない場合(ステップS33:NO)、ブレーキ用ECU60は、悪路指数Nrwが「2」であるか否かを判定する(ステップS36)。悪路指数Nrwが「2」である場合(ステップS36:YES)、ブレーキ用ECU60は、路面が通常悪路であると判断し、悪路判定補正値DVbadを第1の補正値KDVbad1よりも大きい第2の補正値KDVbad2(例えば、0.4G)に設定する(ステップS37)。続いて、ブレーキ用ECU60は、その処理を前述したステップS35に移行する。一方、悪路指数Nrwが「2」ではない場合(ステップS36:NO)、ブレーキ用ECU60は、悪路指数Nrwが「3」であるために路面が極悪路であると判断し、悪路判定補正値DVbadを第2の補正値KDVbad2よりも大きい第3の補正値KDVbad3(例えば、0.6G)に設定する(ステップS38)。続いて、ブレーキ用ECU60は、その処理を前述したステップS35に移行する。本実施形態では、悪路判定補正値DVbadは、路面の凹凸度合が大きいほど、即ち悪路指数Nrwが大きいほど大きな値に設定される。
ステップS39において、ブレーキ用ECU60は、第1判定用タイマT1を「1」だけインクリメントする。そして、ブレーキ用ECU60は、第1判定用タイマT1が第1時間判定値T1th(例えば、67)を超えたか否かを判定する(ステップS40)。制動制御処理ルーチンは、所定時間毎(例えば、6ミリ秒毎)に実行される処理ルーチンである。そのため、ステップS40では、第1判定用タイマT1に対応する時間が、第1時間判定値T1thに所定時間を乗算した判定時間T400(例えば、402ミリ秒)を経過したか否かが判定される(図4参照)。第1判定用タイマT1が第1時間判定値T1th以下である場合(ステップS40:NO)、ブレーキ用ECU60は、ステップS23で演算した車体減速度DVとステップS25で演算した平準化車体減速度DVf1との差分の絶対値を、第1差分値DVsub1として取得する(ステップS41)。
続いて、ブレーキ用ECU60は、積算許可フラグFLGsがオフであること、及び前回差分値DVsub1bが現時点の第1差分値DVsub1よりも大きいことが共に成立しているか否かを判定する(ステップS421)。積算許可フラグFLGsは、ほぼ周期的に変動する第1差分値DVsub1のトップ値(又はそれに近い値)を積算させるためのフラグである。また、前回差分値DVsub1bは、前回のタイミングで演算された第1差分値DVsub1である。
そして、積算許可フラグFLGsがオフであると共に前回差分値DVsub1bが現時点の第1差分値DVsub1よりも大きい場合(ステップS421:YES)、ブレーキ用ECU60は、その処理をステップS422に移行する。このステップS422において、ブレーキ用ECU60は、車体減速度の振幅積算値σwDVに、ステップS41で演算した第1差分値DVsub1を積算すると共に、積算回数CT1を「1」だけインクリメントし、積算許可フラグFLGsをオンにセットする(ステップS422)。続いて、ブレーキ用ECU60は、平準化車体減速度DVf1からステップS27で演算したGセンサ値Gを減算して第2差分値DVsub2を取得し(ステップS43)、勾配積算値σsGに、ステップS43で演算した第2差分値DVsub2を積算する(ステップS441)。そして、ブレーキ用ECU60は、前回差分値DVsub1bを現時点の第1差分値DVsub1とし(ステップS442)、その処理を後述するステップS50に移行する。
一方、積算許可フラグFLGsがオフであること、及び前回差分値DVsub1bが現時点の第1差分値DVsub1よりも大きいことのうち少なくとも一方が非成立である場合(ステップS421:NO)、ブレーキ用ECU60は、前回差分値DVsub1bが現時点の第1差分値DVsub1以下であるか否かを判定する(ステップS423)。前回差分値DVsub1bが現時点の第1差分値DVsub1よりも大きい場合(ステップS423:NO)、ブレーキ用ECU60は、その処理を前述したステップS43に移行する。一方、前回差分値DVsub1bが現時点の第1差分値DVsub1以下である場合(ステップS423:YES)、ブレーキ用ECU60は、積算許可フラグFLGsをオフにセットし(ステップS424)、その処理を前述したステップS43に移行する。
その一方で、第1判定用タイマT1が第1時間判定値T1thを超えた場合(ステップS40:YES)、ブレーキ用ECU60は、取得した車体減速度の振幅積算値σwDVを、第1判定用タイマT1が第1時間判定値T1thを超えるまでに更新された積算回数CT1で除算して車体減速度の振幅W_DVを取得する(ステップS45)。この振幅W_DVは、第1の減速判定値DV_stを補正する際に用いられる。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、振幅演算手段としても機能する。
続いて、ブレーキ用ECU60は、演算した振幅W_DVが予め設定された振幅基準値KW未満であるか否かを判定する(ステップS46)。車体減速度DVの取得に用いられる車輪速度センサSE2〜SE5からの検出信号は、上述したような外乱がない場合であっても、多少の揺れ(即ち、僅かな周期的な変動)を含んでいる。こうした僅かな周期的な変動に基づいた第1の減速判定値DV_stの補正は行わなくてもよい。その一方で、車両の走行する路面が砂利を敷き詰めた所謂砂利道である場合、悪路指数Nrwは「0(零)」となることが多い。こうした場合、路面が良路であると判定されても、車体減速度DVには、路面の多少の凹凸に基づいた振動成分が含まれる。そのため、本実施形態では、外乱による影響が車体減速度DVに含まれないか否かの判断値として、振幅基準値KWが設定されている。
そして、振幅W_DVが振幅基準値KW未満である場合(ステップS46:YES)、ブレーキ用ECU60は、振幅W_DVが「0(零)」に設定され(ステップS47)、その処理を次のステップS48に移行する。一方、振幅W_DVが振幅基準値KW以上である場合(ステップS46:NO)、ブレーキ用ECU60は、ステップS47の処理を行うことなく、その処理を次のステップS48に移行する。
ステップS48において、ブレーキ用ECU60は、取得した勾配積算値σsGを第1判定用タイマT1で除算して勾配推定値(勾配情報)Gslopeを取得する。この勾配推定値Gslopeは、路面の勾配に相当する値であって、第1の減速判定値DV_st及び第2の減速判定値G_stを補正する際に用いられる。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、勾配推定値Gslopeを勾配情報として取得する勾配情報取得手段としても機能する。また、ステップS48が、勾配情報取得ステップに相当する。続いて、ブレーキ用ECU60は、第1判定用タイマT1、積算回数CT1、車体減速度の振幅積算値σwDV及び勾配積算値σsGに「0(零)」をセットし(ステップS49)、その処理を次のステップS50に移行する。
すなわち、図4のタイミングチャートに、差分値DVsub1,DVsub2は、それらの取得が開始される第1のタイミングt11から判定時間T400の経過後の第2のタイミングt12までの間、所定時間毎に取得される。そして、減速判定値DV_st,G_stを補正するための勾配推定値Gslopeは、判定時間T400の間に取得された第2差分値DVsub2の平均値に設定される。また、減速判定値DV_stを補正するための振幅W_DVは、判定時間T400の間に取得された第1差分値DVsub1に基づき設定される。つまり、振幅W_DV及び勾配推定値Gslopeは、判定時間T400毎に更新される。
図10のフローチャートに戻り、ステップS50において、ブレーキ用ECU60は、車両が路上の段差を乗り越えたか否かを判定する。ここで、車両が段差を乗り越える際の各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWが変動する様子について、図16に示すタイミングチャートを参照して説明する。車両が段差を踏み越える際には、まず始めに前輪FR,FLが段差を乗り越える。このとき、前輪FR,FLの車輪速度VWは、前輪FR,FLが段差に接触することで、急激に減速される(第1のタイミングt31)。その後、前輪FR,FLが段差に接触したことに起因して車両の重心が上下方向に変動する。すると、その変動に応じて、前輪FR,FLの車輪速度VWが変動する。すなわち、車両の重心が上方に移動する場合には、前輪FR,FLと路面との接地面積が狭くなる。そのため、前輪FR,FLと路面との間の摩擦力が小さくなり、前輪FR,FLの車輪速度VWが加速する。このように前輪FR,FLの車輪速度VWが加速し始めると、車体減速度DVは小さくなり始める(第2のタイミングt32)。
その後、車両の重心が下方に移動し始め、前輪FR,FLと路面との接地面積が広くなると、前輪FR,FLと路面との間の摩擦力が大きくなり、前輪FR,FLの車輪速度VWが減速し始める。そして、車体減速度DVの変化勾配が緩やかになる第3のタイミングt33では、車体減速度DVは、Gセンサ値Gよりも小さい値となっている。そのため、第3のタイミングt33以降では、車体減速度DVは、それまでの反動で、Gセンサ値Gに近づくべく大きくなる。そして、第4のタイミングt34に示すように、車体減速度DVがGセンサ値Gよりも大きくなることがある。この場合、第1の減速判定値DV_stを補正しなかったとすると、車体減速度DVが第1の減速判定値DV_st以上となり、補助制御が不用意に開始される可能性がある。そのため、第4のタイミングt34以前に、第1の減速判定値DV_stを補正することが好ましい。
運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作量が少ない場合には、図17のタイミングチャートに示すように、車体減速度DVが変化する。すなわち、車両が段差を踏み越える際には、まず始めに前輪FR,FLが段差に接触することで、前輪FR,FLの車輪速度VWが急激に減速される(第1のタイミングt31―1)。その後、前輪FR,FLが段差に接触したことに起因して車両の重心が上下方向に変動する。すると、その変動に応じて、前輪FR,FLの車輪速度VWが変動する。すなわち、車両の重心が上方に移動する場合には、前輪FR,FLと路面との接地面積が狭くなる。そのため、前輪FR,FLと路面との間の摩擦力が小さくなり、前輪FR,FLの車輪速度VWが加速する。このように前輪FR,FLの車輪速度VWが加速し始めると、車体減速度DVは小さくなり始める。
この際、前輪FR,FLの車輪速度VWが加速し始める前の車体減速度DVが小さいと、該車体減速度DVは直ぐに負の値となる(第3のタイミングt33−1)。そして、第3のタイミングt33―1以降では、車体減速度DVは、それまでの反動で、Gセンサ値Gに近づくべく大きくなる。この場合、第1の減速判定値DV_stを補正しなかったとすると、車体減速度DVが第1の減速判定値DV_st以上となり、補助制御が不用意に開始される可能性がある。そのため、第3のタイミングt33−1で、第1の減速判定値DV_stを補正することが好ましい。
そこで、図10のフローチャートに戻り、本実施形態では、ステップS50の判定処理が行われる。具体的には、ブレーキ用ECU60は、以下に示す2つの条件のうち何れか一方が成立したか否かを判定する。
(第1の条件)Gセンサ値Gから車体減速度DVを減算した値(=G−DV)が、予め設定された減速度規定値DVth1(例えば、0.2G)を超えること。
(第2の条件)車体減速度DVが「0(零)」未満であること。
つまり、Gセンサ値Gが車体減速度DVと減速度規定値DVth1との加算値よりも大きいことを経験した場合には、その後に車体減速度DVが急激に大きくなる可能性が高い。また、車体減速度DVが負の値になるということは、制動中にも関わらず、車体速度VSが加速していると誤判定されていることを示している。そこで、上記各条件のうち何れか一方が成立した段階で、車両が路上の段差を乗り越えたと判定される。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、段差という外乱に基づく振動成分が車体減速度(第1の推定車体減速度)DVに含まれるか否かを判定する外乱判定手段としても機能する。また、ステップS50が、外乱判定ステップに相当する。なお、第1の条件が非成立で第2の条件が成立する場合とは、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作量が少ない状態で、車両が段差を乗り越えた際に起こり得る。
上記各条件が共に非成立である場合(ステップS50:NO)、ブレーキ用ECU60は、車両が段差を乗り越えていないと判断し、第2判定用タイマT2及び段差判定補正値DVstepを「0(零)」に設定する(ステップS51)。そして、ブレーキ用ECU60は、段差補正フラグFLG2をオフにセットし(ステップS52)、その処理を後述するステップS57に移行する。
一方、第1の条件又は第2の条件が成立する場合(ステップS50:YES)、ブレーキ用ECU60は、車両が段差を乗り越えたと判断し、第2判定用タイマT2を「1」だけインクリメントする(ステップS53)。続いて、ブレーキ用ECU60は、第2判定用タイマT2が予め設定された第2時間判定値T2th(例えば、34)以下であるか否かを判定する(ステップS54)。制動制御処理ルーチンは、所定時間毎(例えば、6ミリ秒毎)に実行される処理ルーチンである。そのため、ステップS53では、第2判定用タイマT2に対応する時間が、第2時間判定値T2thに所定時間を乗算した判定時間T200(例えば、204ミリ秒)を経過したか否かが判定される(図16及び図17参照)。第2判定用タイマT2が第2時間判定値T2thを超えた場合(ステップS54:NO)、ブレーキ用ECU60は、その処理を前述したステップS51に移行する。すなわち、ブレーキ用ECU60は、第1の減速判定値DV_stを補正するための段差判定補正値DVstepを「0(零)」に設定する。したがって、本実施形態では、第2時間判定値T2thが、減速度規定時間に相当する。
一方、第2判定用タイマT2が第2時間判定値T2th以下である場合(ステップS54:YES)、ブレーキ用ECU60は、段差判定補正値DVstepを第3の補正値KDVbad3(例えば、0.6G)に設定する(ステップS55)。続いて、ブレーキ用ECU60は、段差補正フラグFLG2をオンにセットし(ステップS56)、その処理を次のステップS57に移行する。
ステップS57において、ブレーキ用ECU60は、自動変速機21を制御する他の制御装置としてのAT用ECU23と通信可能か否かを判定する。通信不能な場合(ステップS57:NO)、ブレーキ用ECU60は、その処理を後述するステップS66に移行する。一方、通信可能な場合(ステップS57:YES)、ブレーキ用ECU60は、AT用ECU23からダウンシフトを行う旨のダウンシフト信号を受信したか否かを判定する(ステップS58)。ダウンシフト信号を未受信である場合(ステップS58:NO)、ブレーキ用ECU60は、その処理を後述するステップS61に移行する。一方、ダウンシフト信号を受信した場合(ステップS58:YES)、ブレーキ用ECU60は、第1の減速判定値DV_stを補正するためのダウンシフト判定補正値DVflatを、上記最大補正値KDVflat1(例えば、0.5G)に設定する(ステップS59)。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、自動変速機21のダウンシフトに起因した外乱に基づく振動成分が車体減速度(第1の推定車体減速度)DVに含まれるか否かを判定する外乱判定手段としても機能する。また、ステップS58が、外乱判定ステップに相当する。そして、ブレーキ用ECU60は、ダウンシフトフラグFLGdをオンにセットし(ステップS60)、その処理を後述するステップS70に移行する。
ステップS61において、ブレーキ用ECU60は、ダウンシフトフラグFLGdがオンであるか否かを判定する。ダウンシフトフラグFLGdがオフである場合(ステップS61:NO)、ブレーキ用ECU60は、その処理を後述するステップS70に移行する。一方、ダウンシフトフラグFLGdがオンである場合(ステップS61:YES)、ブレーキ用ECU60は、ダウンシフト用タイマTdを「1」だけインクリメントする(ステップS62)。そして、ブレーキ用ECU60は、ダウンシフト用タイマTdが予め設定された変速終了判定値KTd(例えば、17)を超えたか否かを判定する(ステップS63)。制動制御処理ルーチンは、所定時間毎(例えば、6ミリ秒毎)に実行される処理ルーチンである。そのため、ステップS62では、ダウンシフト用タイマTdに対応する時間が、変速終了判定値KTdに所定時間を乗算した判定時間(例えば、102ミリ秒)を経過したか否かが判定される。したがって、本実施形態では、変速終了判定値KTdが、変速規定時間に相当する。
ダウンシフト用タイマTdが変速終了判定値KTd以下である場合(ステップS63:NO)、ブレーキ用ECU60は、その処理を後述するステップS70に移行する。一方、ダウンシフト用タイマTdが変速終了判定値KTdを超えた場合(ステップS63:YES)、ブレーキ用ECU60は、ダウンシフト判定補正値DVflatを「0(零)」に設定し(ステップS64)、ダウンシフトフラグFLGdをオフにセットする(ステップS65)。そして、ブレーキ用ECU60は、その処理を後述するステップS70に移行する。
ステップS66において、ブレーキ用ECU60は、ステップS27で演算したGセンサ値Gが、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作量が多いか否かを判断するために設定されたダウンシフト判定値(高踏力判断基準値)KGflat(例えば、0.3G)を超えたか否かを判定する。Gセンサ値Gがダウンシフト判定値KGflatを超えた場合(ステップS66:YES)、ブレーキ用ECU60は、第3判定用タイマT3を「1」だけインクリメントする(ステップS67)。この第3判定用タイマT3は、Gセンサ値Gがダウンシフト判定値KGflatを超えた状態の継続時間に相当する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、Gセンサ値(第2の推定車体減速度)Gがダウンシフト判定値(高踏力判断基準値)KGflatを超えた状態の継続時間として第3判定用タイマT3を取得する継続時間取得手段としても機能する。
そして、ブレーキ用ECU60は、第1のマップ(図6参照)を用い、ダウンシフト判定補正値DVflatを第3判定用タイマT3に応じた値に設定し(ステップS68)、その処理を後述するステップS70に移行する。すなわち、ダウンシフト判定補正値DVflatは、第3判定用タイマT3が第1の時間T3_1以下である場合には「0(零)」とされる一方、第3判定用タイマT3が第1の時間T3_1を超えた場合には「0(零)」よりも大きな値とされる。すなわち、第1の時間T3_1が、高踏力規定時間に相当する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、自動変速機21のダウンシフトに起因した外乱に基づく振動成分が車体減速度(第1の推定車体減速度)DVに含まれる可能性があるか否かを判定する外乱判定手段としても機能する。また、ステップS68が、外乱判定ステップに相当する。一方、Gセンサ値Gがダウンシフト判定値KGflat未満である場合(ステップS66:NO)、ブレーキ用ECU60は、第3判定用タイマT3及びダウンシフト判定補正値DVflatを「0(零)」に設定し(ステップS69)、その処理を次のステップS70に移行する。
ステップS70において、ブレーキ用ECU60は、第2のマップ(図7参照)を用い、車両の走行する路面が登坂路側に変化したか否かの判定に用いる変化勾配基準値KDGlowを設定する。具体的には、ブレーキ用ECU60は、ステップS24で演算した車体減速度の変化勾配DDVから、ステップS28で演算したGセンサ値の変化勾配DGを減算し、該減算結果に基づいた値を変化勾配基準値KDGlowとする。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、変化勾配基準値KDGlowを設定する基準値設定手段としても機能する。そして、ブレーキ用ECU60は、ステップS28で演算したGセンサ値の変化勾配DGが、ステップS70で設定した変化勾配基準値KDGlow未満であるか否かを判定する(ステップS71)。変化勾配DGが変化勾配基準値KDGlow未満である場合(ステップS71:YES)、ブレーキ用ECU60は、路面が登坂路側に変化したと判断し、第1の減速判定値DV_stを補正するための勾配変化補正値DVDGlowを、予め設定した最大勾配相当値KDVDGlow(例えば、0.45G)に設定する(ステップS72)。この最大勾配相当値KDVDGlowは、車両が走行可能な路面勾配の最大値(例えば、50%)に対応する減速成分である。その後、ブレーキ用ECU60は、その処理を後述するステップS74に移行する。一方、変化勾配DGが変化勾配基準値KDGlow以上である場合(ステップS71:NO)、ブレーキ用ECU60は、路面が登坂路側に変化していないと判断し、勾配変化補正値DVDGlowを「0(零)」に設定し(ステップS73)、その処理を次のステップS74に移行する。
ステップS74において、ブレーキ用ECU60は、段差補正フラグFLG2がオンであるか否かを判定する。段差補正フラグFLG2がオンである場合(ステップS74:YES)、ブレーキ用ECU60は、減速度補正値DVtpを、ステップS55で設定した段差判定補正値DVstepに設定し(ステップS75)、その処理を後述するステップS79に移行する。一方、段差補正フラグFLG2がオフである場合(ステップS74:NO)、ブレーキ用ECU60は、悪路補正フラグFLG1がオンであるか否かを判定する(ステップS76)。悪路補正フラグFLG1がオンである場合(ステップS76:YES)、ブレーキ用ECU60は、減速度補正値DVtpを、ステップS34,S37,S38の何れか一つのステップで設定した悪路判定補正値DVbadに設定し、その処理を後述するステップS79に移行する。一方、悪路補正フラグFLG1がオフである場合(ステップS76:NO)、ブレーキ用ECU60は、減速度補正値DVtpを、ステップS45又はステップS47で設定した振幅W_DVに設定し、その処理を次のステップS79に移行する。
ステップS79において、ブレーキ用ECU60は、第1の減速判定値DV_stを設定する。具体的には、ブレーキ用ECU60は、予め設定された基本値KDV(例えば、0.5G)に、減速度補正値DVtp、勾配推定値Gslope、ダウンシフト判定補正値DVflat及び勾配変化補正値DVDGlowを加算し、加算結果を第1の減速判定値DV_stとする。つまり、車両が路上の段差を乗り越えたと判定された場合、第1の減速判定値DV_stは、基本値KDVから段差判定補正値DVstepだけ大きな値に設定される(図16及び図17参照)。また、路面が悪路であると判定された場合、第1の減速判定値DV_stは、基本値KDVから悪路判定補正値DVbadだけ大きな値に設定される。また、路面が良路であると判定された場合、第1の減速判定値DV_stは、基本値KDVから振幅W_DVだけ大きな値に設定される。また、第1の減速判定値DV_stは、路面の勾配に基づき補正される(図4参照)。また、第1の減速判定値DV_stは、路面が登坂路側に変化したと判定された場合には、基本値KDVよりも勾配変化補正値DVDGlowだけ大きな値に補正される(図5参照)。そして、第1の減速判定値DV_stは、自動変速機21がダウンシフトする又はダウンシフトされる可能性があると判定された場合には、基本値KDVよりもダウンシフト判定補正値DVflatだけ大きな値に補正される。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、基準値補正手段としても機能する。また、ステップS79が、基準値補正ステップに相当する。
そして、ブレーキ用ECU60は、第2の減速判定値G_stを設定する(ステップS80)。具体的には、ブレーキ用ECU60は、予め設定された基本値KGst(例えば、0.3G)から勾配推定値Gslopeを減算し、減算結果を第2の減速判定値G_stとする(図4参照)。なお、基本値KGstは、補助制御が実行されていない間での運転手によるブレーキペダル31の操作量が少なくなったかの判断基準として予め設定された値である。続いて、ブレーキ用ECU60は、ステップS23で演算した車体減速度DVが上記制動判定値KDV_Brk(図3参照)を超えたか否かを判定する(ステップS81)。車体減速度DVが制動判定値KDV_Brk以下である場合(ステップS81:NO)、ブレーキ用ECU60は、第4判定用タイマT4及び第5判定用タイマT5を「0(零)」に設定すると共に、第1条件成立フラグFLG3をオフにセットする(ステップS82)。その後、ブレーキ用ECU60は、その処理を後述するステップS92に移行する。
一方、車体減速度DVが制動判定値KDV_Brkを超えた場合(ステップS81:YES)、ブレーキ用ECU60は、第4判定用タイマT4を「1」だけインクリメントする(ステップS83)。この第4判定用タイマT4は、車体減速度DVが制動判定値KDV_Brkを超えてからの経過時間に相当する。続いて、ブレーキ用ECU60は、以下に示す2つの条件が全て成立したか否かを判定する(ステップS84)。
(第3の条件)車体減速度DVが第1の減速判定値DV_stを超えること。
(第4の条件)第4判定用タイマT4が経過時間判定値KT1(例えば、10)以下であること。
なお、第4の条件は、車体減速度DVが制動判定値KDV_Brkを超えてからの経過時間が上記第1の基準経過時間TDVst(図3参照)以下であることと言い換えてもよい。つまり、第1の基準経過時間TDVstは、経過時間判定値KT1に所定時間(例えば、6ミリ秒)を乗算した値である。
第3及び第4の各条件が全て成立である場合(ステップS84:YES)、ブレーキ用ECU60は、第1条件成立フラグFLG3がオフであるか否かを判定する(ステップS85)。第1条件成立フラグFLG3がオンである場合(ステップS85:NO)、ブレーキ用ECU60は、その処理を後述するステップS88に移行する。一方、第1条件成立フラグFLG3がオフである場合(ステップS85:YES)、ブレーキ用ECU60は、現時点の車体減速度の変化勾配DDVを、第1変化勾配DDV1とすると共に、第1条件成立フラグFLG3をオンにセットする(ステップS86)。そして、ブレーキ用ECU60は、その処理を後述するステップS88に移行する。したがって、本実施形態のステップS86では、第1条件成立フラグFLG3がオフからオンになる際に取得された車体減速度の変化勾配DDVが第1変化勾配DDV1として取得される。この点で、ステップS86が、第1の勾配取得ステップに相当する。
一方、第3及び第4の各条件のうち少なくとも1つが非成立である場合(ステップS84:NO)、ブレーキ用ECU60は、第1条件成立フラグFLG3がオンであるか否かを判定する(ステップS87)。第1条件成立フラグFLG3がオフである場合(ステップS87:NO)、ブレーキ用ECU60は、その処理を後述するステップS92に移行する。一方、第1条件成立フラグFLG3がオンである場合(ステップS87:YES)、ブレーキ用ECU60は、その処理を次のステップS88に移行する。
ステップS88において、ブレーキ用ECU60は、第5判定用タイマT5を「1」だけインクリメントする。この第5判定用タイマT5は、第1条件成立フラグFLG3がオンになってからの経過時間に相当する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、第1変化勾配DDV1が取得されてからの経過時間として第5判定用タイマT5を取得する経過時間取得手段としても機能する。続いて、ブレーキ用ECU60は、以下に示す2つの条件が全て成立したか否かを判定する(ステップS89)。
(第5の条件)Gセンサ値Gが第2の減速判定値G_stを超えること。
(第6の条件)第5判定用タイマT5が、規定待ち時間KT_w(例えば、8)よりも大きく且つ開始時間判断基準値KT2(例えば、17)以下であること。
なお、開始時間判断基準値KT2は、上記第2の基準経過時間TGst(図3参照)に相当する値である。すなわち、第2の基準経過時間TGstは、開始時間判断基準値KT2に所定時間(例えば、6ミリ秒)を乗算した値である。本実施形態では、開始時間判断基準値KT2は、車両の特性に基づき設定された規定値である。また、規定待ち時間KT_wが、踏力判断時間基準値に相当する。
そして、第5及び第6の各条件のうち少なくとも一つが非成立である場合(ステップS89:NO)、ブレーキ用ECU60は、後述するステップS92に移行する。一方、第5及び第6の各条件が全て成立する場合(ステップS89:YES)、ブレーキ用ECU60は、現時点の車体減速度の変化勾配DDVを第2変化勾配DDV2とし、該第2変化勾配DDV2が第1変化勾配DDV1以上であるか否かを判定する(ステップS90)。したがって、本実施形態では、ステップS90が、第2の勾配取得ステップに相当する。
ここで、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作時の踏力が通常(低い)である場合と高い場合との比較を、図18及び図19に示す各タイミングチャートを参照して説明する。なお、図19では、ABS制御が実行された状態が示されている。
踏力が通常である場合、図18のタイミングチャートに示すように、ブレーキペダル31からの反力により、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の変化に基づき変動する車体減速度DVは、第2のタイミングt42までは大きくなる一方、第2のタイミングt42以降では小さくなる。なお、第2のタイミングt42は、上記第5及び第6の各条件が共に成立するタイミングである。そして、踏力が通常である場合には、こうした第2のタイミングt42で取得される第2変化勾配DDV2が車体減速度DVが第1の減速判定値DV_stを超える第1のタイミングt41で取得された第1変化勾配DDV1よりも小さくなる可能性が高い。
その一方で、踏力が高く維持される場合、図19のタイミングチャートに示すように、当該踏力がブレーキペダル31からの反力よりも十分に大きいために、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の変化に基づき変動する車体減速度DVは、なかなか小さくならない。そのため、踏力が高く維持される場合には、上記第5及び第6の各条件が共に成立する第2のタイミングt52で取得される第2変化勾配DDV2が、第1のタイミングt51での変化勾配DDV(第1変化勾配DDV1)以上となる可能性が高い。そこで、本実施形態では、第2変化勾配DDV2が第1変化勾配DDV1以上である場合には、補助制御の必要性がないほど、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作時の踏力が高いと判定される。
図12のフローチャートに戻り、第2変化勾配DDV2が第1変化勾配DDV1以上である場合(ステップS90:YES)、ブレーキ用ECU60は、補助制御を実行する必要性がない又は低いと判断し、その処理を後述するステップS92に移行する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作時の踏力が高いか否かを判定する踏力判定手段としても機能する。また、ステップS90が、踏力判定ステップに相当する。一方、第2変化勾配DDV2が第1変化勾配DDV1未満である場合(ステップS90:NO)、ブレーキ用ECU60は、補助制御を実行する必要性があると判断し、補助制御の開始条件が成立したことを示す補助制御条件成立フラグFLG4をオンにセットする(ステップS91)。その後、ブレーキ用ECU60は、BA開始判定処理ルーチンを終了する。
ステップS92において、ブレーキ用ECU60は、補助制御条件成立フラグFLG4をオフにセットし、その後、BA開始判定処理ルーチンを終了する。
次に、上記ステップS15のBA処理ルーチンについて、図13に示すフローチャートを参照して説明する。
さて、BA処理ルーチンにおいて、ブレーキ用ECU60は、補助制御条件成立フラグFLG4がオンであるか否かを判定する(ステップS100)。補助制御条件成立フラグFLG4がオフである場合(ステップS100:NO)、ブレーキ用ECU60は、補助制御を行なわずにBA処理ルーチンを終了する。一方、補助制御条件成立フラグFLG4がオンである場合(ステップS100:YES)、ブレーキ用ECU60は、増大完了フラグFLG5がオフであるか否かを判定する(ステップS101)。増大完了フラグFLG5がオンである場合(ステップS101:NO)、ブレーキ用ECU60は、増大制御が完了したと判断し、その処理を後述するステップS107に移行する。
一方、増大完了フラグFLG5がオフである場合(ステップS101:YES)、ブレーキ用ECU60は、第6判定用タイマT6を「1」だけインクリメントする(ステップS102)。続いて、ブレーキ用ECU60は、減速度補正値DVtp、ダウンシフト判定補正値DVflat及び勾配変化補正値DVDGlowが全て「0(零)」であるか否かを判定する(ステップS103)。各補正値DVtp,DVflat,DVDGlowが全て「0(零)」である場合(ステップS103:YES)、ブレーキ用ECU60は、第1増大制御を行う(ステップS104)。この第1増大制御は、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力を第1の増大速度で増大させる制御である。そして、ブレーキ用ECU60は、第6判定用タイマT6が第1判定時間TBA1th以上であるか否かを判定する(ステップS105)。第1判定時間TBA1thは、補助制御によって制動力を増大させる増大所要時間に相当する。
第6判定用タイマT6が第1判定時間TBA1th未満である場合(ステップS105:NO)、ブレーキ用ECU60は、第1増大制御を継続させるためにBA処理ルーチンを終了する。一方、第6判定用タイマT6が第1判定時間TBA1th以上である場合(ステップS105:YES)、ブレーキ用ECU60は、増大制御が完了したことを示す増大完了フラグFLG5をオンにセットする(ステップS106)。すなわち、本実施形態では、第6判定用タイマT6が、増大制御が開始されてからの経過時間に相当する。続いて、ブレーキ用ECU60は、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力を保持させる保持制御を行い(ステップS107)、BA処理ルーチンを終了する。
その一方で、各補正値DVtp,DVflat,DVDGlowのうち少なくとも一つが「0(零)」ではない場合(ステップS103:YES)、ブレーキ用ECU60は、上記外乱や干渉などによって、第1の減速判定値DV_stが補正されているため、今回の補助制御が不用意に実行される補正制御の可能性有りと判断する。そして、ブレーキ用ECU60は、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の増大速度が上記第1の増大速度よりも遅い第2の増大速度に設定された第2増大制御を行う(ステップS108)。例えば、第2の増大速度は、第1の増大速度の半分程度である。なお、第2の増大制御では、第1の増大制御時と比較して、ポンプ49の作動速度を遅くさせてもよいし、リニア電磁弁44の弁体の移動速度を遅くさせてもよい。
そして、ブレーキ用ECU60は、第6判定用タイマT6が第2判定時間TBA2th以上であるか否かを判定する(ステップS109)。例えば、第2判定時間TBA2thは、上記第1判定時間TBA1thの2倍程度である。こうした第2判定時間TBA2thは、第2の増大制御の実行時における増大所要時間に相当する。第6判定用タイマT6が第2判定時間TBA2th未満である場合(ステップS109:NO)、ブレーキ用ECU60は、第2増大制御を継続させるためにBA処理ルーチンを終了する。一方、第6判定用タイマT6が第2判定時間TBA2th以上である場合(ステップS109:YES)、ブレーキ用ECU60は、その処理を前述したステップS106に移行する。すなわち、ブレーキ用ECU60は、第2の増大制御を終了して保持制御を開始する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、補助制御を行う補助制御手段としても機能する。また、ステップS101〜S107により、補助ステップが構成される。
次に、上記ステップS16のBA終了判定処理ルーチンについて、図14に示すフローチャートを参照して説明する。
さて、BA終了判定処理ルーチンにおいて、ブレーキ用ECU60は、上記補助制御条件成立フラグFLG4がオンであるか否かを判定する(ステップS120)。補助制御条件成立フラグFLG4がオンである場合(ステップS120:YES)、ブレーキ用ECU60は、補助制御が実行中であるため、補助制御の実行が開始されてからの経過時間に相当する第7判定用タイマT7を「1」だけインクリメントする(ステップS121)。続いて、ブレーキ用ECU60は、ステップS27で演算したGセンサ値Gが、ステップS80で設定した第2の減速判定値G_st未満であるか否かを判定する(ステップS122)。Gセンサ値Gが第2の減速判定値G_st未満である場合(ステップS122:YES)、ブレーキ用ECU60は、補助制御の終了条件が成立したと判断する。そして、ブレーキ用ECU60は、補助制御条件成立フラグFLG4及び増大完了フラグFLG5をオフにセットし(ステップS123)、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力を減少させる減少制御を行う(ステップS124)。その後、ブレーキ用ECU60は、BA終了判定処理ルーチンを終了する。
一方、Gセンサ値Gが第2の減速判定値G_st以上である場合(ステップS122:NO)、ブレーキ用ECU60は、上記増大完了フラグFLG5がオンであるか否かを判定する(ステップS125)。増大完了フラグFLG5がオフである場合(ステップS125:NO)、ブレーキ用ECU60は、上記増大制御の実行中であるため、以下に示す2つの条件が成立したか否かを判定する(ステップS126)。
(第7の条件)第7判定用タイマT7が終了判定時間基準値T7th以下であること。
(第8の条件)ABSフラグFLG6がオンであること。
終了判定時間基準値T7thは、増大制御の実行時間である増大所要時間よりも短い時間に設定されている。より具体的には、終了判定時間基準値T7thは、上記増大制御の実行時間である増大所要時間の半分以下に設定されている。なお、第1の増大制御の実行時において終了判定時間基準値T7thは、第1の増大所要時間(例えば、500ミリ秒)の半分程度の時間(例えば、204ミリ秒)に相当する値(例えば、34)に設定される。また、第2の増大制御の実行時において終了判定時間基準値T7thは、第2の増大所要時間(例えば、1000ミリ秒)の半分程度の時間(例えば、408ミリ秒)に相当する値(例えば、68)に設定される。
また、ABSフラグFLG6は、ABS制御の実行中又はABSの開始条件が成立した場合にオンにセットされるフラグである。すなわち、ステップS126では、ABS制御の実行中又はABS制御の開始条件の成立時において、第7判定用タイマT7が終了判定時間基準値T7th以下であるか否かが判定される。
第7及び第8の各条件のうち少なくとも一方が非成立である場合(ステップS126:NO)、ブレーキ用ECU60は、補助制御の終了条件が非成立であると判断し、BA終了判定処理ルーチンを終了する。一方、第7及び第8の各条件が全て成立した場合(ステップS126:YES)、ブレーキ用ECU60は、補助制御の開始直後にABS制御が開始されたと判断する。この場合、ブレーキ用ECU60は、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作量だけで、車輪FR,FL,RR,RLに対して十分に大きな制動力を付与できていると判断する。そのため、ブレーキ用ECU60は、補助制御の終了条件が成立したと判定し、その処理を前述したステップS123に移行する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、補助制御の実行中において、車体減速度(第1の推定車体減速度)DV及びGセンサ値(第2の推定車体減速度)Gのうち少なくとも一方に基づき補助制御の終了条件が成立したか否かを判定する終了判定手段としても機能する。また、ステップS126が、終了判定ステップに相当する。
その一方で、増大完了フラグFLG5がオンである場合(ステップS125:YES)、ブレーキ用ECU60は、上記保持制御の実行中であるため、上記増大制御の実行に基づき増大された車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力量(以下、「補助制動力量」ともいう。)を取得する。このとき、ブレーキ用ECU60は、上記リニア電磁弁44及びポンプ49の作動時間や作動速度などに基づき、補助制動力量を推定する。そして、ブレーキ用ECU60は、ステップS80で設定した第2の減速判定値(制動力基準値)G_stに対して、補助制動力量に相当する増大成分値KGbaを加算し、加算結果を終了判定値(判定値)KGendとする(ステップS127)。そして、ブレーキ用ECU60は、以下に示す2つの条件が成立したか否かを判定する(ステップS128)。
(第9の条件)Gセンサ値Gが終了判定値KGend未満であること。
(第10の条件)ABSフラグFLG6がオフであること。
第9及び第10の各条件のうち少なくとも1つが非成立である場合(ステップS128:NO)、ブレーキ用ECU60は、補助制御の終了条件が成立していないと判定し、BA終了判定処理ルーチンを終了する。一方、第9及び第10の各条件が全て成立した場合(ステップS128:YES)、ブレーキ用ECU60は、補助制御の終了条件が成立したと判定し、その処理を前述したステップS123に移行する。したがって、本実施形態では、ステップS127,S128により、終了判定ステップが構成される。
その一方で、補助制御条件成立フラグFLG4がオフである場合(ステップS120:NO)、ブレーキ用ECU60は、補助制御が実行されていない又は補助制御を終了させたと判定する。そして、ブレーキ用ECU60は、第7判定用タイマT7を「0(零)」にリセットする(ステップS129)。その後、ブレーキ用ECU60は、BA終了判定処理ルーチンを終了する。
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)車輪速度センサSE2〜SE5からの検出信号は、車体加速度センサSE6からの検出信号と比較して、車輪FR,FL,RR,RLに伝達される駆動力と制動力との干渉(即ち、外乱)による影響を受けやすい。また、車輪速度センサSE2〜SE5からの検出信号は、車両の走行する路面から車輪FR,FL,RR,RLが受ける反力(即ち、外乱)に起因した影響を受けやすい。もし仮に第1の減速判定値DV_stを補正しないとすると、外乱に基づく振動成分が含まれる車体減速度DVは、外乱に基づく振動成分が含まれない車体減速度DVよりも第1の減速判定値DV_stを超えやすい。すなわち、補助制御が不用意に開始される可能性が高くなる。
そこで、本実施形態では、第1の減速判定値DV_stは、車体減速度DVに外乱に基づく振動成分が含まれると判定された場合には、車体減速度DVに外乱に基づく振動成分が含まれないと判定された場合よりも大きな値に設定される。そのため、車体減速度DVに外乱に基づく振動成分が含まれる場合であっても、車体減速度DVが容易に第1の減速判定値DV_stを超えることはない。したがって、緊急制動操作されていない場合に、補助制御が不用意に開始されることを抑制することができる。
(2)取得された悪路指数Nrwが「1」以上である場合には、車両の走行する路面が悪路であると判定される。こうした場合、第1の減速判定値DV_stは、路面が悪路ではないと判定された場合よりも大きな値に設定される。そのため、車両の悪路走行時に、補助制御が不用意に開始されることを抑制することができる。
(3)本実施形態では、路面が悪路である場合の第1の減速判定値DV_stの補正に用いられる悪路判定補正値DVbadは、悪路指数Nrwが大きいほど大きな値に設定される。そのため、運転手による今回のブレーキペダル31の踏込み操作が緊急制動操作であるか否かの判定精度を向上させることができる。
(4)悪路指数Nrwが「0(零)」であっても、車体減速度DVには、路面から車輪FR,FL,RR,RLが受ける反力に基づいた振動成分が含まれることがある。そこで、本実施形態では、悪路指数Nrwが「0(零)」である場合、第1の減速判定値DV_stは、取得された車体減速度の振幅W_DVだけ基本値KDVよりも大きな値に設定される。そのため、車両の走行する路面が悪路とは判定されない程度の凹凸を有する路面である場合であっても、補助制御が不用意に開始されることを抑制することができる。
(5)車輪速度センサSE2〜SE5からの検出信号は、外乱とは関係なく、微少な周期的な変動(「揺れ」ともいう。)を含んでいる。そのため、車輪速度センサSE2〜SE5を用いて演算される車体減速度DVもまた、微少な周期的な変動を有している。こうした微少な周期的な変動は、外乱による影響とは無関係であるため、該微少な周期的な変動に基づいた第1の減速判定値DV_stの補正は行わなくてもよい。そこで、本実施形態では、振幅基準値KWが、外乱による影響があるか否かを判断するための判定値として設定されている。そして、取得された車体減速度の振幅W_DVが振幅基準値KW未満である場合には、振幅W_DVに基づいた第1の減速判定値DV_stの補正を行わない。したがって、路面に凹凸がほとんどないと判定された場合には、補助制御を適切なタイミングで開始させることができる。
(6)本実施形態では、Gセンサ値Gが車体減速度DVと減速度規定値DVth1との加算値よりも大きいこと、又は車体減速度DVが負の値になることを経験した場合には、車両が段差を踏み越えたと判定される。そして、第1の減速判定値DV_stは、段差判定補正値DVstep(=KDVbad)だけ基本値KDVよりも大きな値に設定される。したがって、車両が段差を踏む超えた場合に、補助制御が不用意に開始されることを抑制することができる。
(7)しかも、車両が段差を踏み越えたと判定された場合の段差判定補正値DVstepは、悪路指数Nrwが「3」と判定された場合の悪路判定補正値DVbadと同一値である。そのため、悪路補正フラグFLG1及び段差補正フラグFLG2が共にオンにセットされる場合、第1の減速判定値DV_stは、段差判定補正値DVstepに基づき補正される。すなわち、第1の減速判定値DV_stはより大きな値に補正される。したがって、補助制御が不用意に開始されることを抑制することができる。
(8)AT用ECU23から自動変速機21がダウンシフトされる旨が受信された場合、変速終了判定値KTdに相当する時間(変速規定時間)の間、第1の減速判定値DV_stは、ダウンシフトされる旨が受信されない場合よりも大きな値に補正される。そのため、自動変速機21でのダウンシフトによって、補助制御が不用意に開始されることを抑制することができる。
(9)車両の特性として、車両走行時に運転手がブレーキペダル31を踏込み操作すると、車両が減速し始めるため、自動変速機21がダウンシフトされることがある。そこで、本実施形態では、AT用ECU23と通信できない場合には、Gセンサ値Gを用いて運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作量が多いか否かが判定される。そして、Gセンサ値Gがダウンシフト判定値KGflatであり続けることの継続時間に相当する第3判定用タイマT3が第1の時間T3_1を超えた場合には、自動変速機21でダウンシフトが行われる可能性があると判定される。その結果、第1の減速判定値DV_stは、ダウンシフトが行われる可能性があると判定されていない場合よりも大きな値に補正される。そのため、自動変速機21でのダウンシフトによって、補助制御が不用意に開始されることを抑制することができる。
(10)第3判定用タイマT3が第1の時間T3_1を超えた直後では、自動変速機21で実際にダウンシフトが行われる可能性が低いだけではなく、実際に補助制御が必要となることもある。ここで、もし仮に、第3判定用タイマT3が第1の時間T3_1を超えたタイミングで、ダウンシフト判定値KGflatが最大補正値KDVflat1に設定されたとすると、実際に必要な補助制御が実行されないという事態になる可能性がある。そこで、本実施形態では、第1の減速判定値DV_stは、第3判定用タイマT3の値が大きい場合には小さい場合よりも大きな値に設定される。そのため、第3判定用タイマT3が第1の時間T3_1を超えた直後では、補助制御を適切に開始させることができる。
(11)本実施形態では、AT用ECU23とブレーキ用ECU60との間での通信ができなくなったとしても、ブレーキ用ECU60では、自動変速機21でダウンシフトが行われる可能性があるか否かが判定される。そして、ダウンシフトの可能性有りと判定された場合には、第1の減速判定値DV_stが補正される。そのため、AT用ECU23とブレーキ用ECU60との間で通信障害が発生したとしても、自動変速機21でのダウンシフトによって、補助制御が不用意に開始されることを抑制することができる。
(12)本実施形態では、車両の走行する路面の勾配推定値Gslopeが取得される。そして、この勾配推定値Gslopeに基づき第1の減速判定値DV_stが補正される。そのため、路面の勾配に基づく補正制御の開始タイミングのばらつきを抑制することができる。
(13)路面の勾配が正の値である場合とは路面が登坂路であり、勾配が負の値である場合とは路面が降坂路である。路面が登坂路である場合、車両に加わる重力は車両に制動力として作用する。また、車両が坂路を走行する場合、車体減速度DVとGセンサ値Gとの間には、路面の勾配に応じた減速度差が存在する。そこで、本実施形態では、路面が登坂路であると判断される場合、第1の減速判定値DV_stは基本値KDVよりも大きな値に設定されると共に、第2の減速判定値G_stは基本値KGstよりも小さな値に設定される。一方、路面が降坂路であると判断される場合、第1の減速判定値DV_stは基本値KDVよりも小さな値に設定されると共に、第2の減速判定値G_stは基本値KGstよりも大きな値に設定される。そのため、路面の勾配に起因した補助制御の開始タイミングのばらつきを抑制することができる。
(14)路面の勾配が登坂路側に変化した場合、前輪FR,FLには、路面の勾配の変化に起因した制動力が付与され、前輪FR,FLの車輪速度VWは急激に遅くなる。これに対し、車両の車体速度VSは、前輪FR,FLの車輪速度VWほどには減速されない。そのため、車輪速度センサSE2〜SE5を用いて演算される車体減速度DVの変化勾配DDVと、車体加速度センサSE6を用いて演算されるGセンサ値Gの変化勾配DGとの間には乖離が生じる。そこで、本実施形態では、Gセンサ値の変化勾配DGが変化勾配基準値KDGlow未満である場合には、路面の勾配が登坂側に変化したと判定される。その結果、勾配変化補正値DVDGlowは、「0(零)」よりも大きな値に設定される。つまり、第1の減速判定値DV_stは、Gセンサ値の変化勾配DGが変化勾配基準値KDGlow以上である場合、即ち路面の勾配が登坂側に変化していないと判定された場合よりも大きな値に補正される。そのため、路面の勾配が登坂側に変化したタイミングで、補助制御が不用意に開始されることを抑制することができる。
(15)変化勾配基準値KDGlowは、車体減速度の変化勾配DDVとGセンサ値の変化勾配DGとの差に基づいた値に設定される。そのため、路面の勾配が登坂側に変化したか否かの判定精度を向上させることができる。
(16)減速度補正値DVtp、ダウンシフト判定補正値DVflat及び勾配変化補正値DVDGlowの少なくとも一つに基づき第1の減速判定値DV_stが補正された場合に実行される補助制御とは、不用意に実行される補助制御の可能性がある。そこで、本実施形態では、減速度補正値DVtp、ダウンシフト判定補正値DVflat及び勾配変化補正値DVDGlowの少なくとも一つに基づき第1の減速判定値DV_stが補正された場合に実行される補助制御では、減速度補正値DVtp、ダウンシフト判定補正値DVflat及び勾配変化補正値DVDGlowが「0(零)」である場合の補助制御よりも、車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力の増大速度が遅くなる。そのため、補助制御を行う必要性がないと判断されるタイミングで補助制御が実行されたとしても、該補助制御の実行に基づく違和感を、車両の運転手に感じさせにくくすることができる。
(17)補助制御の実行中においては、車輪速度センサSE2〜SE5及び車体加速度センサSE6を用いて、補助制御の終了条件が成立したか否かが判定される。そして、終了条件が成立した場合には、補助制御が終了される。したがって、マスタシリンダ321内のMC圧を検出するための圧力センサを搭載しない車両であっても、補助制御を適切なタイミングで終了させることができる。
(18)本実施形態では、補助制御の終了判定に用いる第2の減速判定値G_stに増大制御の実行に基づく制動力の増大成分値KGbaを加算した終了判定値KGendが取得される。そして、保持制御の実行中において、一度は第2の減速判定値G_stを超えていたGセンサ値Gが終了判定値KGend未満になったときには、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作量が少なくなったと判断し、補助制御を終了させる。したがって、車両の減速度を小さくしようとする意志を運転手が持っていると判断できたタイミングで、補助制御を終了させることができる。
(19)また、本実施形態では、補助制御の保持制御の実行中にABS制御が開始された場合には、保持制御を継続させる。すなわち、補助制御を終了させない。そのため、運転手の意図に反して、不用意に補助制御が終了されることを抑制することができる。
(20)また、本実施形態では、増大制御の実行中において第7判定用タイマT7が終了判定時間基準値T7th以下である間にABS制御が開始された場合には、運転手によるブレーキペダル31を踏込み操作によって車輪FR,FL,RR,RLに対して十分に大きな制動力が付与されていると判定される。そのため、補助制御が終了される。したがって、補助制御を、適切なタイミングで終了させることができる。
(21)本実施形態では、車体減速度DVが第1の減速判定値DV_st以上となった時点の車体減速度の変化勾配DDVが、第1変化勾配DDV1として取得される。また、その後にGセンサ値Gが第2の減速基準値G_st以上となった場合には、それ以降に演算された車体減速度の変化勾配DDVが第2変化勾配DDV2として取得される。そして、第2変化勾配DDV2が第1変化勾配DDV1以上である場合には、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作時の踏力が高いと判定される。したがって、マスタシリンダ321内のMC圧を検出するための圧力センサを搭載しない車両であっても、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作時の踏力が高いか否かを判定することができる。
(22)車両の中には、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作に基づくGセンサ値Gの変化開始が車体減速度DVの変化開始とほぼ同時となる車両もある。そこで、本実施形態では、第1変化勾配DDV1が取得されて更新される第5判定用タイマT5が規定待ち時間KT_wを超えてから、第2変化勾配DDV2が取得される。そして、この第2変化勾配DDV2が第1変化勾配DDV1以上である場合に、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作時の踏力が高いと判定される。そのため、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作時の踏力が高いか否かの判定精度を向上させることができる。
(23)本実施形態では、補助制御の開始条件が成立しても、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作時の踏力が高いと判定された場合には、補助制御が必要ないと判断され、当該補助制御が開始されない。したがって、補助制御が不用意に実行されることを回避できる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図20及び図21に従って説明する。なお、第2の実施形態は、開始時間判断基準値KT2を車両の荷重によって変更する点が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
車両の荷重は、搭乗する乗員の人数や積載する荷物によって変化する。そして、車両の荷重が変化すると、車両の特性も変化する。具体的には、運転手がブレーキペダル31を踏込み操作した場合、車体加速度センサSE6を用いて演算されるGセンサ値Gは、車輪速度センサSE2〜SE5を用いて演算される車体減速度DVに少し遅れてから追随するように変化する。しかし、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作に起因したGセンサ値Gの変化開始タイミングは、車両の荷重が重い場合には荷重が軽い場合よりも遅れる。
そのため、補助制御の開始タイミングを図る際に用いられる上記開始時間判断基準値KT2(図12のステップS89参照)が一定値である場合には、第5判定用タイマT5が開始時間判断基準値KT2を超えた後に、Gセンサ値Gが第2の減速判定値G_stを超えるおそれがある。この場合、補助制御の開始条件が成立しないため、補助制御が開始されない。
本実施形態の制動制御処理ルーチンには、開始時間判断基準値KT2を車両の荷重に応じた値に設定するための開始時間判断基準値設定処理が含まれる。そこで次に、開始時間判断基準値設定処理ルーチンについて、図20に示すフローチャートと図21に示すマップとを参照して説明する。
さて、開始時間判断基準値設定処理ルーチンにおいて、ブレーキ用ECU60は、ブレーキスイッチSW1がオフであるか否かを判定する(ステップS140)。ブレーキスイッチSW1がオンである場合(ステップS140:NO)、ブレーキ用ECU60は、運転手がブレーキペダル31を踏込み操作しているため、開始時間判断基準値設定処理ルーチンを終了する。
一方、ブレーキスイッチSW1がオフである場合(ステップS140:YES)、ブレーキ用ECU60は、運転手がブレーキペダル31を踏込み操作していないため、駆動輪である前輪FR,FLに伝達される駆動力ETを取得する(ステップS141)。例えば、ブレーキ用ECU60は、エンジン用ECU13からエンジン12で発生する駆動力を取得すると共に、AT用ECU23から自動変速機21の変速段を取得する。そして、ブレーキ用ECU60は、取得したエンジン12で発生する駆動力と、自動変速機21の変速段とに基づき、前輪FR,FLに伝達される駆動力ETを演算する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、エンジン12の駆動に基づき前輪FR,FLに付与される駆動力ETを取得する駆動力取得手段としても機能する。
続いて、ブレーキ用ECU60は、車両の荷重WWを推定する(ステップS142)。車両の加速度は、車両の荷重WWが一定である場合、前輪FR,FLに伝達される駆動力ETと対応関係にある。換言すると、前輪FR,FLに伝達される駆動力ETが一定である場合、車両の加速度、即ちGセンサ値Gは、車両の荷重WWが重いほど小さな値となる。
そのため、ブレーキ用ECU60は、ステップS141で取得した駆動力ETに相当するGセンサ値の基準値Gbaseを取得する。この基準値Gbaseは、車両に乗員や荷物が乗っていないと仮定した場合のGセンサ値の理論値である。そして、ブレーキ用ECU60は、上記ステップS28で演算したGセンサ値Gと基準値Gbaseとの差分(=|G−Gbase|)を加速度差分として取得する。続いて、ブレーキ用ECU60は、取得した加速度差分に対応する車両の荷重WWを、図21に示す第3のマップを用いて取得する。
この第3のマップは、加速度差分に応じた車両の荷重WWを取得するためのマップである。図21に示すように、第3のマップの縦軸は加速度差分(=|G−Gbase|)であり、横軸は車両の荷重WWである。車両の荷重WWは、加速度差分が第1の差分ΔG1以下である場合には「0(零)」とされる。そして、車両の荷重WWは、加速度差分が第1の差分ΔG1を超える場合には、加速度差分が大きいほど大きな値とされる。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、荷重取得手段としても機能する。また、ステップS142が、荷重取得ステップに相当する。
図20のフローチャートに戻り、ブレーキ用ECU60は、ステップS142で推定した車両の荷重WWに基づき荷重補正値HWを設定する(ステップS143)。上述したGセンサ値Gの変化開始の遅れは、車両の荷重WWが重いほど遅くなる。そのため、ステップS143では、荷重補正値HWは、所定の演算式を用い、車両の荷重WWが重い場合には軽い場合よりも大きな値に設定される。このとき、車両の荷重WWが「0(零)」である場合、荷重補正値HWは「0(零)」に設定される。
続いて、ブレーキ用ECU60は、予め設定されたベース値KTbaseに対してステップS143で設定した荷重補正値HWを加算し、該加算結果を開始時間判断基準値KT2とする(ステップS144)。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU60が、開始時間判断基準値KT2を、車両の荷重WWが重い場合には荷重WWが軽い場合よりも大きな値に設定する開始時間設定手段としても機能する。また、ステップS144が、開始時間設定ステップに相当する。その後、ブレーキ用ECU60は、開始時間判断基準値設定処理ルーチンを終了する。
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)〜(23)と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(24)開始時間判断基準値KT2が車両の荷重WWに応じた値に設定されるため、上記ステップS89の判定精度を向上させることができる。したがって、補助制御が必要な際には、補助制御を適切に開始させることができる。
(25)また、車両の荷重WWを推定する場合には、非制動時において駆動輪である前輪FR,FLに伝達される駆動力ETと、Gセンサ値Gとが用いられる。そのため、車両の荷重WWを検出するためのセンサを別途設ける必要なく、車両の重量を推定することができる。
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・各実施形態において、上記ステップS103の判定処理を省略してもよい。この場合、第1の減速判定値DV_stの補正に関係なく、補助制御の増大制御は、第1増大制御とされる。
・自動変速機21でダウンシフトされる場合に車体減速度DVに含まれる振動成分は、車両の車体速度VSが速いほど大きくなる。そこで、ダウンシフト判定補正値DVflatを、車両の車体速度VSが速いほど大きな値とするようにしてもよい。このように構成すると、高速走行時における自動変速機21のダウンシフト時に、補助制御が不用意に実行される可能性を低くすることができる。
・各実施形態において、自動変速機21でダウンシフトされる可能性があると判定された場合には、第3判定用タイマT3の値に関係なく、ダウンシフト判定補正値DVflatを、予め設定した所定値に設定してもよい。
・各実施形態において、上記ステップS66〜S69の各処理を省略してもよい。このように構成しても、AT用ECU23からのダウンシフト信号を受信することにより、第1の減速判定値DV_stを補正することができる。
・各実施形態において、車載の変速機がマニュアルトランスミッションである場合などのように変速機のダウンシフトに関する情報を受信できない車両構成である場合には、上記ステップS57〜S65の各処理を省略してもよい。この場合、ステップS52やステップS56の処理の後には、ステップS66の判定処理が実行されることになる。
・各実施形態において、車載の変速機が無段階の自動変速機である場合、自動変速機でのダウンシフトによる外乱に基づく振動成分は、車体減速度DVにほとんど含まれない。そのため、上記ステップS57〜S69の各処理を省略してもよい。
・各実施形態において、第1の減速判定値DV_stを、段差判定補正値DVstepに基づき補正しなくてもよい。
・各実施形態において、上記ステップS51で、段差判定補正値DVstepを「0(零)」にしなくてもよい。このように構成しても、ステップS52で段差補正フラグFLG2がオフにセットされるため、段差判定補正値DVstepに基づいた第1の減速判定値DV_stの補正は行われない。
・各実施形態において、上記ステップS55では、段差判定補正値DVstepを、第3の補正値KDVbad3よりも大きな値に設定してもよい。
・また、段差判定補正値DVstepを、第3の補正値KDVbad3よりも小さい値に設定してもよい。ただし、この場合、悪路補正フラグFLG1がオンであるときには、第1の減速判定値DV_stを、悪路判定補正値DVbadに基づき補正するようにしてもよい。
・各実施形態において、第2時間判定値T2thを、車両の車体速度VSが速いほど小さな値としてもよい。これは、車体速度VSが速いほど、車両が段差を通過するのに要する時間が短くなるためである。そして、車体速度VSと車両のホイールベース長とに基づき、車両の前輪FR,FLが段差に乗りかかってから、後輪RR,RLが段差を通過するまでの推定時間を演算し、該推定時間を第2時間判定値T2thとしてもよい。
・各実施形態において、上記ステップS46の判定処理を省略してもよい。そして、振幅W_DVに基づき第1の減速判定値DV_stが補正されると共に、ダウンシフト判定補正値DVflat及び勾配変化補正値DVDGlowが「0(零)」である場合において、補助制御の開始条件が成立したときには、第1増大制御を行ってもよい。
・各実施形態において、悪路指数Nrwが「0(零)」である場合における車体減速度DVの振幅W_DVの演算を行わなくてもよい。すなわち、振幅W_DVに基づいた第1の減速判定値DV_stの補正を行わなくてもよい。
・各実施形態において、上記ステップS31を省略してもよい。このように構成しても、ステップS32で悪路補正フラグFLG1がオフにセットされるため、悪路判定補正値DVbadに基づき第1の減速判定値DV_stが補正されることはない。
・各実施形態において、第1の減速判定値DV_stを、悪路指数Nrwに基づき補正しなくてもよい。このように構成しても、第1の減速判定値DV_stを、車体減速度DVの振幅W_DVによって補正することができる。
・各実施形態において、車両の上下方向における加速度を検出するための上下方向加速度センサを車両に設け、該上下方向加速度センサからの検出信号に基づく上下方向加速度の変化に基づき路面の悪路指数Nrwを演算してもよい。
・各実施形態において、変化勾配基準値KDGlowは、実験やシミュレーションなどによって予め設定された所定値であってもよい。この場合、図7に示す第2のマップを設けなくてもよい。
・各実施形態において、第1の減速判定値DV_stを、勾配変化補正値DVDGlowに基づき補正しなくてもよい。
・各実施形態において、運転手によるブレーキペダル31を踏込み操作の開始タイミングでの車体減速度DV及びGセンサ値Gとの差に基づき、勾配推定値Gslopeを設定してもよい。このように構成すると、路面の勾配に応じた第1の減速判定値DV_st及び第2の減速判定値G_stの補正を、速やかに行うことができる。
しかし、この補正方法では、上記各実施形態の場合と比較して補正精度が悪い。そこで、上記各実施形態の方法で勾配推定値Gslopeが取得される前は、ブレーキペダル31を踏込み操作の開始タイミングでの車体減速度DV及びGセンサ値Gとの差に基づき第1の減速判定値DV_st及び第2の減速判定値G_stを補正する。そして、上記各実施形態の方法で勾配推定値Gslopeが取得された後は、該勾配推定値Gslopeに基づき第1の減速判定値DV_st及び第2の減速判定値G_stを補正するようにしてもよい。
・各実施形態において、車載の図示しないナビゲーション装置に、車両の走行する路面の勾配が記憶されている場合、ナビゲーション装置から路面の勾配を取得し、該勾配に基づき1の減速判定値DV_st及び第2の減速判定値G_stの補正を補正してもよい。
・各実施形態において、第2の減速判定値G_stを、勾配推定値Gslopeに基づき補正しなくてもよい。
・各実施形態において、上記ステップS126では、ABSフラグFLG6がオンであるか否かの判定の代わりに、車体減速度DVが路面限界に相当する減速度(例えば、1.2G)以上であるか否かを判定してもよい。
・各実施形態において、上記ステップS126では、増大制御の実行中に、ABS制御が開始されたか否かを判定するようにしてもよい。この場合、終了判定時間基準値T7thは、第1の増大所要時間(又は第2の増大所要時間)に相当する値となる。
・各実施形態において、ステップS126の判定処理を省略してもよい。
・各実施形態において、上記ステップS128では、Gセンサ値Gが終了判定値KGend未満であるか否かを判定するだけでもよい。この場合、Gセンサ値Gが終了判定値KGend未満であるときには、ABS制御の実行の有無に関係なく、補助制御が終了される。
・各実施形態では、終了判定値KGendは、第2の減速判定値G_stに増大成分値KGbaを加算した値となっている。すなわち、第2の減速判定値G_stが、制動力基準値に相当する。しかし、制動力基準値を、第2の減速判定値G_stとは異なる値としてもよい。
・各実施形態において、上記ステップS122の判定処理を省略してもよい。この場合、ステップS121の処理が実行された後には、ステップS125の判定処理が行われる。
・各実施形態において、上記ステップS127,S128の各処理を省略してもよい。この場合、ブレーキスイッチSW1がオフになった場合に、補助制御を終了させてもよい。
・各実施形態において、上記ステップS89における2つ条件のうち、第6の条件は、「第5判定用タイマT5が開始時間判断基準値KT2以下であること」であってもよい。すなわち、規定待ち時間KT_wを設けなくてもよい。
・各実施形態において、補助制御の開始条件が成立した場合には、運転手によるブレーキペダル31の踏込み操作時の踏力の高さに関係なく、補助制御を行うようにしてもよい。この場合、ステップS86,S90の各処理を省略してもよい。
・車両の中には、車内に搭乗した乗員の人数を検出するための検出センサを設けた車両がある。こうした車両では、検出センサからの検出信号に基づき乗員の人数を取得し、該人数に基づき荷重WWを推定するようにしてもよい。
・第2の実施形態では、車両の荷重WWの取得方法として、走行中の状況を読み取って推定する方法をとっているが、これに限らず、車両製造時に、またはその後のユーザにより入力された荷重データを読み取ることで荷重WWを取得するようにしてもよい。
・各実施形態において、車両は、後輪RR,RLが駆動輪となる後輪駆動車であってもよいし、全ての車輪FR,FL,RR,RLが駆動輪となる四輪駆動車であってもよい。
・各実施形態において、車両の動力源は、電動機であってもよい。
・本発明を、マスタシリンダ321内のMC圧を検出するための圧力センサを設けた車両の制動制御装置に具体化してもよい。そして、図8に示す制動制御処理を、上記圧力センサが故障した際に実行するようにしてもよい。
次に、上記各実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記勾配情報取得手段(60、S48)は、前記各減速度演算手段(60、S23,S27)によって演算された第1の推定車体減速度(DV)と第2の推定車体減速度(G)との差分に基づき路面の勾配(Gslope)を取得することを特徴とする車両の制動制御装置。
上記構成によれば、路面の勾配を取得するためのセンサは、車輪速度センサ及び車体加速度センサとは別に設ける必要がない。