次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明の巻線装置100を示す。この巻線装置100は、発電機や電動機を構成する多極電機子1の複数の磁極2を巻芯とし、その巻芯である磁極2の周囲に線材3を多層に巻線する装置である。即ち、線材3を繰り出しながら磁極2の周囲を回動するフライヤ4を用いて巻線を行うフライヤ式の巻線装置100である。この実施の形態における多極電機子1は、環状部1aと、この環状部1aから径方向外側に向かって放射状に突出した18個の磁極2とを備えるものとする(図6に7個の磁極を示す)。図6に示すように、この多極電機子1における各磁極2の間にはスロット1bが開口してなる。巻芯である磁極2の断面は4角形であり、磁極2の外周面は平滑状の4平面からなる。そして、各磁極2の先端には鍔部2aが形成される。
図1に戻って、この巻線装置100は、各部材が配置される基台5上に、多極電機子1の磁極2に対して線材3を自動で巻線する巻線機構6と、多極電機子1を回転させることによって磁極2を順次に巻線位置に送るインデックス機構7とを備える。図1におけるインデックス機構7は多極電機子1をその軸方向を鉛直にして支持するものであり、巻線機構6に対向する磁極2に巻線が行われるものとする。各図にあっては、互いに直交するX、Y及びZの3軸を設定し、X軸が多極電機子1の径方向であって巻線する磁極2と巻線機構6とを連通する略水平前後方向、Y軸がその巻線する磁極2における多極電機子1の周方向である略水平横方向、Z軸が多極電機子1の軸方向である鉛直方向に延びるものとし、この巻線装置100の構成について説明する。
インデックス機構7は、インデックスモータ9と、インデックスモータ9の出力軸9aに連結され多極電機子1の回転軸と同軸上に延在する支持軸10と、支持軸10に連結され多極電機子1を水平に載置するインデックス台11とを備える。多極電機子1は、環状部1aの貫通孔1cにインデックス台11の軸11aが挿通した状態にてインデックス台11上に載置されると共に、後述する電機子押え部材96にてインデックス台11とは反対方向(図1では上方)からインデックス台11に対して押圧されることによって、インデックス台11上に支持可能に構成される。
このインデックス機構7では、インデックスモータ9が駆動することによって、インデックス台11に支持された多極電機子1はインデックス台11の軸11aを回転軸として回転するように構成される。多極電機子1は、インデックス台11に支持された状態にて巻芯となる磁極2への巻線が行われ、その磁極2への巻線作業終了後には、インデックスモータ9の駆動によって回転し、次に巻線される磁極2が巻線位置に送られるようになっている。このように、インデックス機構7は、多極電機子1の磁極2を巻線機構6に対向する巻線位置に順次に送り、巻線機構6は巻線位置に送られた磁極2に対して巻線を行うように構成される。
巻線機構6は、フライヤ4に送られる線材3を通す主貫通孔24bが設けられてそのフライヤ4が回転する回転軸Tを回転中心として設けられた主スピンドル24と、その回転軸Tを回転中心として主スピンドル24をフライヤ4とともに回転させるフライヤ回転モータ29と、フライヤ4の回転により主貫通孔24bを通過してフライヤ4から繰り出される線材3を巻芯である磁極2に案内する案内部材15,16,39とを備える。
基台5上には移動台21がX軸方向に移動可能に設けられ、この移動台21に取付壁22が立設される。主スピンドル24は円筒形状を成し、その軸心をX軸方向に延ばして回転軸Tに一致させ、取付壁22は軸受23を介してこの主スピンドル24を回転自在に支持する。主スピンドル24の多極電機子1に臨む先端には環状のフランジ部24aが一体に設けられ、このフランジ部24aに多極電機子1に向けて延在するフライヤ4が取付けられる。フライヤ4は、主スピンドル24の回転軸Tから偏心した位置に取付けられ、このフライヤ4には、線材3の案内用のローラ4aが設けられ、その先端には線材3を繰り出すノズル27が設けられる。
フライヤ回転モータ29は移動台21に設けられ、主スピンドル24の先端近傍には、プーリ28が取付けられる。フライヤ回転モータ29の出力軸にはプーリ30が取付けられ、プーリ28とプーリ30とはベルト31を介して連結される。これにより、フライヤ回転モータ29が駆動すると、主スピンドル24が回転し、フライヤ4が主スピンドル24の回転軸Tを中心に回動するように構成される。フライヤ4に送られる線材3を通す主貫通孔24bは、その主スピンドル24にフライヤ4の近傍であって回転軸Tに平行に形成される。そして、主スピンドル24の内周には、軸受25を介して回転不能の主中心体26が支持される(主中心体26を回転不能とする構造については後述する)。
この実施の形態における案内部材は、磁極2をZ軸方向から挟んでフライヤ4から繰り出された線材3をその磁極2に案内する一対のセンタフォーマ15,16と、磁極2をY軸方向から挟む一対のサイドプレート39,39とを有する。回転不能な主中心体26の先端面には、センタフォーマ15,16を支持するセンタフォーマ支持板33が取付けられる。そして、このセンタフォーマ支持板33及びその近傍には、一対のセンタフォーマ15,16を多極電機子1の回転軸方向であるZ軸方向に互いに離接するように移動させるフォーマ離接機構41と、一対のサイドプレート39,39を多極電機子1の周方向であるY軸方向に互いに離接するように移動させるプレート離接機構42が設けられる。
図2〜図5に示すように、センタフォーマ支持板33の多極電機子1に臨む前面には、多極電機子1の回転軸方向(Z軸方向)に延在したガイドレール34が設けられ、ガイドレール34にはガイドレール34に沿って移動可能な一対の鉛直移動板35a,35bが係合している。一対の鉛直移動板35a,35bは、双方に連結された弾性部材としてのスプリング36にて互いに近づく方向に付勢されている。そして、一対の鉛直移動板35a,35bのそれぞれには、磁極2をZ軸方向から挟持するセンタフォーマ15,16が、フライヤ4の回転軸を中心として互いに対称な位置に取付けられる。
図2に示すように、上方における一方のセンタフォーマ15は、鉛直移動板35aから多極電機子1に向かうように前方に伸びた後に下方に向かう略L字状に形成され、その上面から前面に至る外面が曲面状に形成される。また、図4に示すように、この一方のセンタフォーマ15の先端部は下方に向かって先細りに形成され、その下方に向かう先細部15aの幅Hが巻線対象である磁極2の幅W(図6)と略等しく形成される。そして、フライヤ4から繰り出された線材3は、このセンタフォーマ15の曲面に沿って滑り落ちて先端における先細部15aから磁極2に案内されるように表面が研磨されて仕上げられる。
一方、下方における他方のセンタフォーマ16も、図2に示すように、鉛直移動板35bから前方に伸びた後に上方に向かう略L字状に形成され、その下面から前面に至る外面が曲面状に形成される。また、図4に示すように、この他方のセンタフォーマ16の先端部も上方に向かって先細りに形成され、その上方に向かう先細部16aの幅Hも巻線対象である磁極2の幅W(図6)と略等しく形成される。そして、フライヤ4から繰り出された線材3は、このセンタフォーマ16の曲面に沿って滑り落ちて先端における先細部16aから磁極2に案内されるように表面が研磨されて仕上げられる。
図2〜図4に示すように、センタフォーマ支持板33には、ガイドレール34及び鉛直移動板35a,35bを覆うサイドプレート支持板32が支柱32aを介してセンタフォーマ支持板33と平行に取付けられる。このサイドプレート支持板32には、水平方向に延在したガイドレール37a,37bが設けられ、ガイドレール37a,37bのそれぞれにはガイドレール37a,37bに沿って移動可能な水平移動板38a,38bが係合している。水平移動板38a,38bは、双方に連結された弾性部材としてのスプリング40a,40bにて互いに近づく方向に付勢される。そして、水平移動板38a,38bのそれぞれにはサイドプレート39,39が、フライヤ4の回転軸を中心として互いに対称な位置に取付けられる。
水平移動板38a,38bに取付けられた一対のサイドプレート39,39は、図6に示すように磁極2を幅方向から挟持するものであって、その先端縁が一対のセンタフォーマ15,16の先端縁と面一となるように配置される。この一対のサイドプレート39,39は、図3における上面視において先端に向かって先細りに形成されるけれども、磁極2を挟む対向面が互いに平行になるように形成される。
一対のサイドプレート39,39は対象構造であり、その一方を代表してその側面視を説明すると、図2及び図7に示すように、サイドプレート39の側面視における外縁は、先端縁39bが鉛直方向に伸びて直線状を成しその上下方向になだらかな円弧状を成すように形成される。直線を成す先端縁39bは磁極2の厚さD(図7)より僅かに長くなるように形成され、その上下方向における円弧状部39cは一対のセンタフォーマ15,16におけるそれぞれの先細部15a,16bをY軸方向から挟むように形成される。そして、このサイドプレート39の外面及び周囲はその表面が研磨されて仕上げられ、フライヤ4から繰り出されてセンタフォーマ16の曲面に沿って滑り落ちた線材3が、このサイドプレート39外面及び周囲に沿って滑り落ちて磁極2に案内されるように構成される。
また、磁極2をY軸方向から挟持する一対のサイドプレート39,39には、磁極2における鍔部2aが進入可能な開口39aがそれぞれ形成される。図7に示すように、この開口39aは方形を成し、Z軸方向の寸法Mは鍔部2aのZ軸方向の寸法Hより大きくしてその鍔部2aが進入可能な大きさとされる。また、この開口39aのX軸方向の寸法Nは、図7に示すように、その開口39aに鍔部2aが進入した状態でサイドプレートの先端縁39bが環状部1aに近接可能であって、その開口39aに鍔部2aが進入した状態でその先端縁39bが環状部1aから離れて鍔部2a近傍にまで達することができるよう形成される。
図1に戻って、本発明の巻線装置100は、主スピンドル24に貫通し回転軸Tを回転中心として回転自由に設けられ、一端に案内部材15,16,39が設けられ又は係合するロッド44,47を備える。この実施の形態では、案内部材が一対のセンタフォーマ15,16と一対のサイドプレート39,39を有するので、ロッドも、中空の筒状に形成された第一ロッド44とその第一ロッド44に挿通された第二ロッド47を備える。
即ち、主スピンドル24の内周に軸受25を介して支持された主中心体26は、主スピンドル24の回転軸Tを回転中心として回転可能に主スピンドル24に支持される。この主中心体26には、回転中心である回転軸Tと同軸上に主挿通孔26aが形成され、その主挿通孔26aには円筒体43が圧入される。第一ロッド44はその円筒体43の内周にスプライン係合され、これにより第一ロッド44は、主中心体26に対して回転軸Tを回転中心とする回転が不能であるけれども、軸方向であるフライヤ4の回転軸T方向に移動可能に構成される(第一ロッド44の移動機構については後述する)。そして、この第一ロッド44の内部に第二ロッド47が更に摺動自在に挿入され、第一ロッド44の一端には、先端がテーパ形状45a(図2)に形成された第一カム45が連結される。
図5に示すように、センタフォーマ15,16が取付けられた一対の鉛直移動板35a,35bは、互いに対向する部分中央に開口部を有し、それらの開口部が上下から互いに対向するようにガイドレール34に係合される。そして、それらの対向する部分であってそのY軸方向の両内側にはローラ35cがそれぞれ設けられる。そして、第一ロッド44の一端に設けられた第一カム45は、前進することによってセンタフォーマ支持板33の開口部33a(図2)を挿通してそのテーパ形状45aがローラ35cに当接するように配置される。図2に示すように、第一カム45のテーパ形状45aは、多極電機子1に向かって先細りに形成され、ローラ35cに当接したテーパ形状45aが多極電機子1に向かって前進することによって、一対の鉛直移動板35a,35bは、スプリング36の付勢力に抗して押し広げられてZ軸方向に互いに離れる方向、つまり鉛直方向に移動するように構成される。
このように、第一カム45を前進させることによって一対のセンタフォーマ15,16は互いに離れる方向に移動し、第一カム45を後退させることによって一対のセンタフォーマ15,16はスプリング36の付勢力によって近づく方向に移動するように構成される。よって、この鉛直移動板35a,35b、スプリング36、及び第一カム45が、一対のセンタフォーマ15,16を多極電機子1の回転軸方向に互いに離接するように移動させるフォーマ離接機構41に該当し、第一ロッド44の一端はこのフォーマ離接機構41を介して一対のセンタフォーマ15,16に係合される。
図2及び図3に示すように、第一ロッド44に軸方向に移動可能に挿通された第二ロッド47の先端には第二カム48が連結される。一対の移動板38a,38bの対向する面38cは多極電機子1に向かって広がる対称な斜面状に形成される(図3)。第二ロッド47先端の第二カム48は一対の移動板38a,38bの間を貫通して一対の移動板38a,38bより多極電機子1側に突出して設けられる。第二カム48は図3に示す上面視において先端に向かって幅が広がる台形状に形成され、その両側における傾斜面48aに沿うように一対の移動板38a,38bに対向する斜面38cが形成される。そして、台形状の第二カムは第二ロッド47とともに後退することによって、その両側における傾斜面48aが一対の移動板38a,38bの対向する斜面38cにそれぞれ当接するように配置される。
第二カム48の傾斜面48aに対向して一対の移動板38a,38bの対向する斜面38cが形成されているため、第二カム48が一対の移動板38a,38bの間を後退して傾斜面48aが斜面38cに当接することによって、一対の移動板38aと38bは、スプリング40a,40bの付勢力に抗して押し広げられ互いに離れる方向、つまり水平方向に移動する。このように、第二カム48を後退させることによって一対のサイドプレート39,39は互いに離れる方向に移動し、第二カム48を前進させることによって一対の移動板38aと38bはスプリング40a,40bの付勢力によって近づく方向に移動する。よって、この移動板38a,38b、スプリング40a,40b、及び第二カム48が、一対のサイドプレート39,39を多極電機子1の周方向であるY軸方向に互いに離接するように移動させるプレート離接機構42に該当し、第二ロッド47の一端はこのプレート離接機構42を介して一対のサイドプレート39,39に係合される。
図1に戻って、この巻線装置100は、第一及び第二ロッド44,47をその軸方向であるX軸方向に移動させて、フォーマ離接機構41及びプレート離接機構42を介して案内部材である一対のセンタフォーマ15,16及び一対のサイドプレート39,39を実際に離接させる案内部材移動機構17を備える。この実施の形態における移動機構17は、第一ロッド44を軸方向に移動させる第一ロッド移動機構55と、第二ロッド47を軸方向に移動させる第二ロッド移動機構56とからなる。この第一ロッド移動機構55及び第二ロッド移動機構56を備える移動機構17は、移動台21とともに移動する取付壁22の後方に設けられたフレーム57に設けられる。
フレーム57には、回転軸Tと平行であってかつその回転軸Tから偏倚する中心軸Cを回転中心とする副スピンドル62,77が回転可能に設けられ、この副スピンドル62,77には、その中心軸Cを回転中心とする中心体64,79が回転自由に設けられる。第一ロッド44と第二ロッド47を有するこの実施の形態における副スピンドルは,第一中心体64を回転自由に支持する第一副スピンドル62と,第二中心体79を回転自由に支持する第二副スピンドル77を有する場合を示す。そして、フレーム57には、フライヤ4の回転軸Tと平行であって、後述する回転伝達機構12を構成するガイド軸58が上方にその軸芯を中心に回転可能に架設される。
第一ロッド移動機構55は取付壁22と略平行な第一ヘッド60を有し、ガイド軸58はその第一ヘッド60に挿通される。第一ヘッド60はガイド軸58に支持されると共に、そのガイド軸58に沿って移動可能に構成される。第一ヘッド60は、軸受61を介して回転自在である円筒形状の第一副スピンドル62を支持すると共に、第一副スピンドル62の内周には軸受63を介して中心軸Cを回転中心とする第一中心体64が支持される。
一方、第二ロッド移動機構56は、第一ヘッド60と略平行な第二ヘッド75を有する。ガイド軸58は第二ヘッド75も挿通しており、第二ヘッド75も第一ヘッド60と同様、ガイド軸58に支持されると共に、そのガイド軸58に沿って移動可能に構成される。第二ヘッド75は、軸受76を介して回転自在である円筒形状の第二副スピンドル77を支持すると共に、第二副スピンドル77の内周には軸受78を介して中心軸Cを回転中心とする第二中心体79が支持される。
第一中心体64には、主中心体26の主挿通孔26aと同軸上に第一挿通孔64aが形成される。即ち、第一挿通孔64aは第一中心体64にその中心軸Cから偏心して形成され、その第一挿通孔64aには主挿通孔26aに回転不能に挿通された第一ロッド44の他端が軸方向に移動不能に固定される。また、第二中心体79にも、主中心体26の主挿通孔26aと同軸上に第二挿通孔79aが形成される。即ち、第二挿通孔79aは第二中心体79にその中心軸Cから偏心して形成される。そして、その第二挿通孔79aには、第一ロッド44とともに第一中心体64を貫通し、その第一ロッド44の他端縁から突出した第二ロッド47の他端が軸方向に移動不能に固定される。このように、主中心体26の回転軸Tと同軸のロッド44,47の他端は、第一及び第二中心体64,79にその中心軸Cから偏心して固定されるため、第一及び第二中心体64,79の回転はそのロッド44,47により拘束される。
また、フレーム57に覆われる移動台21には第一ロッド移動機構55を構成する第一ロッド移動モータ71が固定され、第一ロッド移動モータ71の出力軸にはガイド軸58に平行なボールねじ72が連結される。そして、このボールねじ72は、第一ヘッド60の下部に螺合している。これにより、第一ロッド移動モータ71が駆動すると、第一ヘッド60はガイド軸58に沿って移動し、第一中心体64に固定された第一ロッド44を軸方向に移動させるように構成される。このように、第一ロッド移動モータ71を駆動することによって、第一ロッド44先端の第一カム45を前進又は後退させることができ、一対のセンタフォーマ15,16を鉛直方向に移動させて互いに離れ又は接近させるように構成される。
フレーム57に覆われる移動台21には第二ロッド移動機構56を構成する第二ロッド移動モータ85が固定され、第二ロッド移動モータ85の出力軸にはガイド軸58に平行なボールねじ86が連結され、このボールねじ86は、第二ヘッド75の下部に螺合している。これにより、第二ロッド移動モータ85が駆動すると、第二ヘッド75はガイド軸58に沿って移動し、第二中心体79に連結された第二ロッド47が軸方向に移動するように構成される。このように、第二ロッド移動モータ85を駆動することによって、第二ロッド47の先端の第二カム48を後退又は前進させることができ、一対のサイドプレート39,39を水平方向に移動させて互いに離れ又は接近させることが可能に構成される。
従って、第一及び第二ロッド移動機構55,56からなるこの実施の形態における案内部材移動機構17は、第一及び第二副スピンドル62,77を第一及び第二中心体64,79とともに軸方向に移動させるものであり、それにより移動するロッド44,47により、案内部材である一対のセンタフォーマ15,16及び一対のサイドプレート39,39を実際に離接させるものである。ここで、図1における87は、移動台21に設けられ、ボールねじ72の後端部とボールねじ86の前端部を突き合わせ状態で枢支する枢支部材87を示す。
また、フレーム57には、フライヤ回転モータ29による主スピンドル24の回転を第一及び第二副スピンドル62,77に伝達してその第一及び第二副スピンドル62,77を主スピンドル24と同期回転させる回転伝達機構12が設けられる。この実施の形態における回転伝達機構12は、フライヤ4の回転軸Tと平行に設けられたガイド軸58と、主スピンドル24とガイド軸58との間に掛け渡されて主スピンドル24の回転をガイド軸58に伝達してそのガイド軸58を回転させる主ベルト59cと、ガイド軸58と副スピンドル62,77との間に掛け渡されてガイド軸58の回転を副スピンドル62,77に伝達してその副スピンドル62,77を回転させる副ベルト68,83とを有する。
具体的に説明すると、取付壁22に支持された主スピンドル24の取付壁22より後方にはプーリ59aが取付けられ、ガイド軸58には別のプーリ59bがガイド軸58に対して回転不能に取付けられる。そして、プーリ59aとプーリ59bとは主ベルト59cを介して連結され、主スピンドル24が回転すると、ガイド軸58も回転するように構成される。
一方、第一副スピンドル62の後端には、プーリ65が取付けられる。また、第一ヘッド60のガイド軸58が挿通された部分には、その第一ヘッド60に対して回転可能であってかつ軸方向に移動不能にプーリ67が取付けられる。このプーリ67はガイド軸58に対しては回転不能であってかつ軸方向に移動可能に構成される。そして、プーリ65とプーリ67とは副ベルト68を介して連結される。これにより、ガイド軸58が回転すると、第一副スピンドル62も回転するように構成される。
また、第二副スピンドル77の後端には、プーリ80が取付けられる。また、第二ヘッド75のガイド軸58が挿通された部分には、その第二ヘッド75に対して回転可能であってかつ軸方向に移動不能にプーリ82が取付けられる。このプーリ82はガイド軸58に対しては回転不能であってかつ軸方向に移動可能に構成される。そして、プーリ80とプーリ82とは副ベルト83を介して連結される。これにより、ガイド軸58が回転すると、第二副スピンドル77も回転するように構成される。
ガイド軸58に取付けられる3つのプーリ59b,67,82はそれぞれ同形同大のものが用いられる。また、主スピンドル24の後端に設けられるプーリ59aと、第一副スピンドル62に取付けられるプーリ65と、第二副スピンドル77に取付けられるプーリ80も同形同大のものが用いられる。従って、主スピンドル24が回転すると主ベルト59cを介してガイド軸58が回転し、このガイド軸58の回転が副ベルト68,83を介して副スピンドル62,77に伝達され、これにより第一及び第二副スピンドル62,77は主スピンドル24と同一の速度で回転することになる。このように、この回転伝達機構12は主スピンドル24の回転に同期して第一及び第二副スピンドル62,77を回転させるように構成される。
第一副スピンドル62は、その回転中心である中心軸Cが主スピンドル24の回転軸Tと偏心するように第一ヘッド60に支持され、第一副スピンドル62には、線材3が挿通する第一副貫通孔62aが形成される。第二副スピンドル77は、第二副スピンドル77の回転中心となる中心軸Cが、第一副スピンドル62の回転中心である中心軸Cと同軸であって、フライヤ4の回転軸T、つまり主スピンドル24の回転軸Tとは偏心するように、第二ヘッド75に支持される。そして、第二副スピンドル77には、第一副貫通孔62aの延長上に第二副貫通孔77aが形成され、第一副貫通孔62aに挿通された線材3がそのまま第二副貫通孔77aに挿通される。
また、巻線装置100は、フライヤ4及びセンタフォーマ15,16を主スピンドル24とともにその軸方向であるX軸方向に移動させるフライヤ移動機構18を備える。フライヤ移動機構18は、基台5に設けられたトラバースモータ50と、トラバースモータ50の出力軸に連結されフライヤ4の回転軸方向に延在するボールねじ51と、ボールねじ51が螺合する移動体52aと、基台5上にボールねじ51と平行に配置され移動体52aを案内するガイドレール53と、そのガイドレール53に案内される移動体52bとを備える。そして、それらの移動体52a,52bに移動台21が取付けられる。
このフライヤ移動機構18では、トラバースモータ50が駆動すると、移動体52a,52bはガイドレール53に案内され、取付壁22を載置する移動台21はフライヤ4の回転軸T方向に移動するように構成される。このように、トラバースモータ50を駆動することによって、フライヤ4及びセンタフォーマ15,16及び一対のサイドプレート39,39をフライヤ4の回転軸方向に移動させることができる。また、この移動台21にフレーム57が設けられ、このフレーム57に第一ロッド移動機構55及び第二ロッド移動機構56から成る移動機構17が設けられるので、この実施の形態におけるフライヤ移動機構18は、主スピンドル24とともに案内部材移動機構17をその主スピンドル24の軸方向に移動させるように構成される。そして、このフライヤ移動機構18は、磁極2への線材3の巻線中、磁極2の周囲に線材3を一周巻線する毎に線材3をX軸方向へ線材3の外径分移動させるために用いられる。
また、インデックス機構7近辺には、多極電機子1をインデックス台11に対して押圧することによって、インデックス台11との間にて保持するワーク押え機構88が用いられる。このワーク押え機構88は、基台5上に立設した支柱89の端部に固定された電機子押えモータ90と、電機子押えモータ90の出力軸に連結され多極電機子1の回転軸方向に延在するボールねじ91と、ボールねじ91が螺合する移動体92と、支柱89に鉛直方向に延在して配置され移動体92を案内するガイドレール93とを備える。移動体92の側面には軸受94を介して回転自在なロッド95が設けられる。ロッド95は、多極電機子1の回転軸と同軸上に配置され、ロッド95の下端には多極電機子1の環状部1aに当接する電機子押え部材96が連結されている。
そして、電機子押えモータ90が駆動すると、移動体92がガイドレール93に案内され、電機子押え部材96は多極電機子1の回転軸方向に移動する。このように、電機子押えモータ90を駆動することによって、電機子押え部材96はインデックス台11上に載置された多極電機子1の環状部1a上面に当接し、多極電機子1をインデックス台11に対して押圧する。これにより、多極電機子1は、インデックス台11と電機子押え部材96との間にて保持されるように構成される。なお、電機子押え部材96に連結されたロッド95は軸受94を介して支持されているため、インデックスモータ90の駆動による多極電機子1の回転中、電機子押え部材96は多極電機子1に従属して回転することになる。
多極電機子1の周囲には、フライヤ4から繰り出される線材3が、巻線すべき磁極2の両側にある磁極に引っかかることを防止するために、巻線すべき磁極2の両側にある磁極の鍔部2aをそれぞれ覆う一対のサイドフォーマ97が配設される(図1及び図6参照)。サイドフォーマ97は、先端に向かって先細となるような曲面状に形成され、基台5に立設した支柱98に支持され、図示しない機構によって移動可能に構成される。
また、巻線装置100は、多極電機子1の鉛直位置(高さ)をフライヤ4の回転軸と一致させるための電機子移動機構99を備える。この電機子移動機構99は、基台5上に配置された支柱101と、支柱101の頂面に配置された電機子移動モータ102と、電機子移動モータ102の出力に連結され多極電機子1の回転軸方向(鉛直方向)に延在するボールねじ103と、ボールねじ103が螺合する移動体104と、支柱101に鉛直方向に延在して配置され移動体104を案内するガイドレール105とを備える。
移動体104は、インデックスモータ9を載置するインデックスモータ載置台106に連結される。また、インデックスモータ載置台106を中心としてボールねじ103の反対側には鉛直方向に延在するガイドロッド107が配置され、ガイドロッド107にはインデックスモータ載置台106に連結された移動体108が摺動自在に挿入される。そして、電機子移動モータ102が駆動すると、移動体104がガイドレール105に案内されると共に移動体108がガイドロッド107を摺動し、インデックスモータ載置台106は鉛直方向に移動する。これにより、インデックス台11に支持された多極電機子1は、鉛直方向に移動する。このように、電機子移動機構99における電機子移動モータ102を駆動することによって、多極電機子1の鉛直位置(高さ)をフライヤ4の回転軸と一致させることが可能となるように構成される。
次に、巻線装置100の動作について説明する。この巻線装置100の動作は、巻線装置100に搭載された図示しないコントローラによって自動制御されるものとする。
まず、巻線を行う前の準備として、線材供給源(図示せず)から供給される線材3を、テンション装置(図示せず)を経てフレーム57の後部から、第二副スピンドル77の第二副貫通孔77a、第一副スピンドル62の第一副貫通孔62a、主スピンドル24の主貫通孔24bに順番に通し、フライヤ4に設けられた複数のローラ4aを介してフライヤ先端のノズル27に導く。そして、ノズル27から繰り出した線材3を、多極電機子1の環状部1aに設けられたピン1dに係止させる。
次に、多極電機子1を、貫通孔1cに軸11aが挿通するようにしてインデックス台11に載置する。この状態にて、多極電機子1と巻線機構6との位置合せを行う。即ち、電機子移動機構99の電機子移動モータ102を駆動することによって、多極電機子1の鉛直位置(高さ)とフライヤ4の回転軸とを一致させる。つまり、巻線すべき磁極2の巻中心軸とフライヤ4の回転軸とが同じ高さとなるように調整する。調整後、電機子押えモータ90を駆動することによって電機子押え部材96を多極電機子1に向けて下降させ環状部1aに押し付ける。このようにして、多極電機子1を、インデックス台11と電機子押え部材96との間にて支持する。
次に、インデックスモータ9を駆動することによって多極電機子1を回転させ、複数の磁極2のうち巻線すべき磁極2を巻線位置に設定する。具体的には、巻線すべき磁極2をフライヤ4の回転軸方向に一致させる。このように、フライヤ4の回転軸に対向する位置が巻線位置である。図示しないが、このような多極電機子1の巻線位置への位置合せは、磁極2近傍に設けたセンサ等の図示しない検知器を用いて磁極2の位置を検出し、その検出した情報を基に行うことができる。
次に、フライヤ移動機構18のトラバースモータ50を駆動することによって移動台21とともに取付壁22を前進させ、フライヤ4及び一対のセンタフォーマ15,16及び一対のサイドプレート39,39を巻線位置に配置された磁極2の基端部に配置させる。そして、図6及び図7に示すように、一対のセンタフォーマ15,16の先細部15a,16aと多極電機子1における環状部1aとの間、及び一対のサイドプレート39,39の先端縁39bと多極電機子1における環状部1aとの間の双方に、線材3が進入可能な隙間を空けるように配置する。
このとき、案内部材であって磁極2を挟むことになる一対のセンタフォーマ15,16及び一対のサイドプレート39,39を、必要に応じて離接させる。一対のセンタフォーマ15,16の離接は、第一ロッド移動機構55における第一ロッド移動モータ71を駆動して第一ロッド44を第一カム45とともに前進又は後退させる。これにより、一対のセンタフォーマ15,16は、鉛直方向(多極電機子1の回転軸方向)に互いに離れ又は接近するように移動させることができる。この一対のセンタフォーマ15,16のそれぞれのZ軸方向の移動量は、第一カム45の前進量によって調節することができる。
また、一対のサイドプレート39,39を接離させるには、第二ロッド移動機構56における第二ロッド移動モータ85を駆動して第二ロッド47とともに第二カム48を後退又は前進させる。これにより、一対のサイドプレート39,39は、巻線位置に配置された磁極2の幅方向に互いに離れ又は接近するように移動させることができる。一対のサイドプレート39,39のY軸方向の移動量は、第二カム48の後退量によって調節ことができる。以上が巻線を行う前の準備である。
次に、前述した状態で開始される巻線について説明する。
フライヤ4が磁極2の鉛直上方に位置した状態にて、フライヤ回転モータ29を駆動して主スピンドル24とともにフライヤ4を回転させる。そして、フライヤ4を磁極2の周囲に回動させ、フライヤ4から繰り出される線材3を磁極2の周囲に巻回する。主スピンドル24の回転は回転伝達機構12におけるガイド軸58を介して第一副スピンドル62及び第二副スピンドル77に伝達され、フライヤ4の回転に同期させて、第一副スピンドル62及び第二副スピンドル77も回転することになる。これにより、線材供給源から供給される線材3を捻ることなく、ノズル27に案内することができる。
巻線が開始され、フライヤ4が磁極2の鉛直上方から鉛直下方までの180°回転する過程では、フライヤ4から繰り出された線材3は、サイドフォーマ97に当接しその斜面に沿って案内されると共に、次にセンタフォーマ15及びサイドプレート39に当接しその曲面を滑り落ちてそれらの先端から磁極2に案内され、磁極2に巻き付けられる。そして、フライヤ4が磁極2の鉛直下方から鉛直上方までの180°回転する過程では、フライヤ4から繰り出された線材3は、サイドフォーマ97に当接しその斜面に沿って案内されると共に、次にセンタフォーマ16及びサイドプレート39に当接しその曲面を滑り落ちてそれらの先端から磁極2に案内され、磁極2に巻き付けられる、このようにして、フライヤ4が1回転するに伴い、線材3は磁極2に1巻きされる。
案内部材であるセンタフォーマ15,16及びサイドプレート39は固定された磁極2に対して線材3を案内するものであるので、フライヤ4とともに回転することは許されない。このセンタフォーマ15,16及びサイドプレート39,39の回転を防止するために、本発明では、それらの案内部材15,16,39をロッド44,47の一端に係合し、そのロッド44,47を主スピンドル24に貫通して回転軸Tを回転中心としてを回転自由に設け、その主中心体26の回転軸Tと同軸のロッド44,47の他端を第一及び第二中心体64,79にその中心軸Cから偏心して固定している。このため、第一及び第二中心体64,79はそのロッド44,47により拘束されて回転することはない。このように第一及び第二中心体64,79が回転しないと、その第一及び第二中心体64,79に他端が固定された第一及び第二ロッド44,47も回転することはなく、第一ロッド44がスプライン係合された主中心体26は回転不能になる。このように回転不能な主中心体26の先端面にセンタフォーマ支持板33を取付け、このセンタフォーマ支持板33にセンタフォーマ15,16及びサイドプレート39,39を設けることにより、それらから成る案内部材がフライヤ4とともに回転軸Tを回転中心として回転することを防止している。
磁極2への巻線において、フライヤ4を1回転させて線材3を巻芯である磁極2に一巻きする際、磁極2の4面のうち最後に巻線される面(例えば上面)に線材3を巻線するときには、フライヤ移動機構18におけるトラバースモータ50を駆動することによって、フライヤ4及びセンタフォーマ15,16及び一対のサイドプレート39,39を巻線方向(磁極2の径方向)に線材3の外径分だけ多極電機子1から遠ざけるように移動させる。ここで、フライヤ4は主スピンドル24に設けられ、センタフォーマ15,16及び一対のサイドプレート39,39はその主スピンドル24に支持された主中心体26に設けられるので、トラバースモータ50を駆動して、その主スピンドル24を軸方向に移動させるだけで、フライヤ4とともにセンタフォーマ15,16及び一対のサイドプレート39,39を同時に同方向に移動させることができる。
また、この実施の形態におけるフライヤ移動機構18は、主スピンドル24とともに案内部材移動機構17をその主スピンドル24の軸方向に移動させるように構成したので、トラバースモータ50を駆動させるだけで、主スピンドル24とともに第一及び第二副スピンドル62,77も同方向に移動する。このため、第一及び第二副スピンドル62,77とともに第一及び第二中心体64,79も軸方向に移動し、それにより第一及び第二ロッド44,47も同方向に移動するので、主スピンドル24に対する一対のセンタフォーマ15,16及び一対のサイドプレート39,39の相対的な移動は禁止される。即ち、主スピンドル24の軸方向への移動時に、第一ロッド移動モータ71を駆動しなくても一対のセンタフォーマ15,16がZ軸方向に互いに離接するようなことはなく、第二ロッド移動モータ85を駆動しなくても一対のサイドプレート39,39がY軸方向に互いに離接するようなことはない。この点、従来の主スピンドル207に対するフォーマ206の相対的な移動を防止するために、第一及び第二副移動用モータ218,219も同時に駆動する必要のある図12に示す巻線装置200と相違する。そして、このように、フライヤ4の1回転に付き、磁極2の4面のうちの所定の1面(例えば上面)にて線材3の外径分の送りをかけて巻き進めることによって、磁極2に線材3を整列に巻線することができる。
このような整列巻きを繰り返すと一対のサイドプレート39,39は多極電機子1の径方向であるX軸方向に移動し、一層目の巻線が完了する以前に開口39aに鍔部2aが進入している場合には、その鍔部2aが開口39aの口縁に当接することになる。この鍔部2aがその開口39aの口縁に当接することを回避するために、一対のサイドプレート39,39の互いの間隔を広げる。一対のサイドプレート39,39を移動させるには、前述したように、第二ロッド移動機構56における第二ロッド移動モータ85を駆動することにより行うことができる。
また、このような整列巻きを繰り返すと一対のセンタフォーマ15,16も多極電機子1の径方向であるX軸方向に移動し、一層目の巻線が完了する以前にその先細部15a,16aが鍔部2aに当接することになる。この先細部15a,16aが鍔部2aに当接することを回避するために、一対のセンタフォーマ15,16を移動させて互いの間隔を広げる。この一対のセンタフォーマ15,16の移動は、前述したように、第一ロッド移動機構55における第一ロッド移動モータ71を駆動することにより行うことができる。
このように、巻線の途中において、案内部材移動機構17である第一及び第二ロッド移動機構55,56により第一及び第二ロッド44,47を必要に応じて軸方向に移動させ、案内部材である一対のサイドプレート39,39及び一対のセンタフォーマ15,16を離接させる。そして、フライヤ4から繰り出される線材3を巻芯である磁極2に案内する一対のサイドプレート39,39及び一対のセンタフォーマ15,16を図8及び図9の実線矢印で示すように移動させることにより、第一層目の巻線を終了させることができる。
図8及び図9に示すように、第一層目の巻線が終了した後には、その第一層目の巻線の上に第二層目以降の巻線を行う。この第二層目の巻線は、トラバースモータ50を第一層目とは逆方向に回転させ、フライヤ4及びセンタフォーマ15,16及び一対のサイドプレート39,39を多極電機子1に近づけるように移動させる。そして、第二層目の巻線が完了した後は、第一層目の巻線と同様な手順によりその第二層目の巻線の上に更に第3層目の巻線を行うことができる。このようなことを繰り返すことにより、図10及び図11に示すように所望の層数の巻線を巻芯である磁極2に行うことができる。
このようにして、一の磁極2への巻線が終了したら、インデックスモータ9を駆動することによって多極電機子1を回転させ、その一の磁極2と別の磁極2を巻線位置に配置し、新たに巻線を開始する。
上述したように、本発明の巻線装置100では、主スピンドル24をフライヤ4とともに回転させるフライヤ回転モータ29を備えるけれども、主スピンドル24の回転を回転伝達機構12により第一副スピンドル62及び第二副スピンドル77に伝達するので、フライヤ回転モータ29と別に第一副スピンドル62及び第二副スピンドル77を回転させるための別に独立したモータを用いることをしない。このため、たとえ、更なる副スピンドルを追加したとしても、追加された副スピンドルのために新たなモータが必要とされないことになる。よって、フライヤ回転モータ29と別に副スピンドルを回転させるためのモータを別々に設けていた従来の巻線装置200(図12)に比較して、モータの数を減少させることができる。
また、主スピンドル24の回転は従来から設けられているガイド軸58及びベルト59c,68,83を介して第一副スピンドル62及び第二副スピンドル77に伝達されるので、その伝達のために新たな部品が生じることを回避することができる。そして、このベルト59c,68,83を用いることにより、その組み付けもそのベルト59c,68,83をプーリに掛け回すだけの簡単な作業により行うことができ、その調整も容易となる。よって、組み立てにおける作業工数も減少するので、巻線装置100の単価が押し上げられるようなことは回避され、比較的安価な巻線装置100を得ることができる。
また、図12に示す従来の巻線装置200では、主スピンドル207に対するフォーマ206の相対的な移動を防止するためには、主スピンドル207を移動させる主移動用モータ217とともに、第一及び第二副中心体212a,212bを軸方向に移動させる第一及び第二副移動用モータ218,219も同時に駆動する必要があった。けれども、図1に示す本実施の形態におけるフライヤ移動機構18は、主スピンドル24とともに案内部材移動機構17をその主スピンドル24の軸方向に移動させるように構成したので、フライヤ移動機構18におけるトラバースモータ50を駆動させるだけで、主スピンドル24に対するセンタフォーマ15,16及び一対のサイドプレート39,39の相対的な移動を禁止することができる。よって、それらのモータの全てを同時に駆動する必要がある従来の巻線装置200に比較して、それらのモータの制御を単純化させることができる。
また、この実施の形態では、第一ロッド44と第二ロッド47からなる複数のものであるけれども、第一ロッド44に第二ロッド47を挿通することにより、その複数のロッド44,47を主スピンドル24の回転軸Tに同軸に設けることができる。このため、複数のロッド44,47が設けられる主中心体26が大型化することもなく、この主中心体26の構造が複雑化するようなこともない。そして、副スピンドル62,77をその複数のロッド44,47の数に相応して増加させ、複数の副スピンドル62,77のそれぞれの中心体64,79に複数のロッド44,47の他端をそれぞれ別々に固定しているので、案内部材が一対のセンタフォーマ15,16及び一対のサイドプレート39,39からなる複数のものであっても、その複数の案内部材15,16,39,39に複数のロッド44,47の一端を別々に係合させることにより、その複数の案内部材15,16,39,39に独立した動きを生じさせることができる。
更に、本発明の巻線装置100では、ロッド44,47の他端を、第一及び第二中心体64,79にその中心軸Cから偏心して直接固定することにより、案内部材を静止状態に保持しており、従来必要とされたジョイント214(図12)を用いていない。このため、そのジョイント214を不要にするとともに、そのジョイント214を連結する従来必要とされた作業も不要になり、更なる部品点数の減少とともに、その連結作業をも削減でき、更に安価な巻線装置100を得ることができる。
なお、上述した実施の形態では、案内部材が一対のセンタフォーマ15,16と一対のサイドプレート39,39とを有する場合を説明したが、案内部材はこれらのものに限定されるものではなく、フライヤ4から繰り出される線材3を巻芯2に案内し得る限り、案内部材は他の形状のものであっても良い。
また、上述した実施の形態では、第一ロッド44の一端がフォーマ離接機構41を介して案内部材である一対のセンタフォーマ15,16に係合し、第二ロッド47の一端がプレート離接機構42を介して案内部材である一対のサイドプレート39,39に係合する場合を説明したが、接離機構41,42を設けることなく、案内部材はロッドの一端に直接的に又は間接的に設けるようなものであっても良い。
また、上述した実施の形態では、ロッドが第一ロッド44とその第一ロッド44に挿通された第二ロッド47を有する場合を説明したが、案内部材が単数のものである場合には単一のロッドを用いても良く、案内部材が更に増加した場合には第一ロッド44に挿通された第二ロッドに更に第三ロッドを挿通させるようにしても良い。
更に、上述した実施の形態では、巻芯が多極電機子1の磁極2である場合を説明したが、本発明の巻線装置100が線材3を巻線する巻芯は多極電機子1の磁極2である場合に限られず、トランスにおけるボビン等を巻芯としても良い。