実施の形態1.
図1は、この実施の形態1を示す空気調和機の室内機1の分解斜視図であり、図2は、図1に示す室内機1の正面意匠パネル10を開いたときの斜視図である。そして、図3は、図1の室内機1の縦断面図であり、図4は、図2に示す状態の室内機1の側面図である。この室内機1は、壁掛けタイプであり、空調する部屋の壁面の天井に近い上部に設置されるもので、図1〜4に示されるように、室内機本体50と、その本体50の前面側に取り付けられ、室内機本体50の上部を回動中心として上下方向に回動し開閉自在である正面意匠パネル10とを備えている。室内機1は、屋外に配置される室外機(図示なし)と冷媒配管で接続されていて冷凍サイクル回路が構成される。
正面意匠パネル10は、通常は図3に示すように閉じており、その閉じた状態において、正面部分に位置する正面パネル部10aが室内に臨んで、この室内機1の外観意匠に大きく貢献する。室内機本体50は、図1〜3に示すように、その筐体として、壁面側に位置する背面ケース52と、その背面ケース52の前方に位置する前面枠51とを備える。そして、上下方向に正面側に凸となるような曲面形状を成す正面パネル部10aを有する正面意匠パネル10は、前面枠51の前面に取り付けられる。背面ケース52は、その正面側に貫流ファン2や、その貫流ファン2を囲うように配置される熱交換器3を保持している。
背面ケース52の前方(正面側)に背面ケース52と接して位置する前面枠51は、枠体であり、背面ケース52から前方に突出している上記の貫流ファン2や熱交換器3を内部に収めている。そして、前面枠51の下部には、室内機本体50の左右方向に長く伸びる吹出口53(図3参照)が形成されている。吹出口53には、吹出空気の風向を上下方向に調整する上下風向調整板4が設置されていて、室内機1の運転停止時には、前後2枚の上下風向調整板4により、吹出口53が塞がれる。
また、前面枠51と背面ケース52の上面には格子状に形成された室内空気の吸込口54が設けられている(図1参照)。前面枠51の前面も、中央のメイン縦桟56の左右両側に、強度確保のためのいくつかの桟を有して開口55が形成されており、上面の吸込口54から吸い込まれた室内空気は、この前面の開口55からも本体50の内部へと流れ込む。
室内機本体50の右側端部には、この室内機1の制御基板等を有する電気品収納部6(図1、2参照)が位置する。電気品収納部6も筐体内に収まっている。ここで本明細書において、左右方向に細長い形状を呈する室内機1の左右方向については、室内機1を正面から見た状態、すなわち正面視で右方向を右側、左方向を左側と定義する。
前面枠51の前面には、左右方向の両端近傍と中央上部の3ヶ所に、正面意匠パネル10の背面上部のパネル回動軸12を回動自在に支持する軸受部57が設けられている。中央部の軸受部57は、メイン縦桟56の上部に形成されていて、右側に位置する軸受部57は、電気品収納部6の上方に形成されている。
また、前面枠51の前面下部には、左右方向の両端近傍と、それらの間で左右方向に距離を空けた2ヶ所の計4ヶ所に、正面意匠パネル10の背面下部に形成されたパネル係止突起13(図7参照)を受け止めて、これを保持する係止ツメ58が設けられている。最も右側に位置する係止ツメ58は、電気品収納部6の下方に形成されている。
図5は、正面意匠パネル10の背面側上部に設けられたパネル回動軸12を示す斜視図、図6は同じく正面意匠パネル10の背面側下部に設けられたパネル係止突起13を示す斜視図である。図5に示すパネル回動軸12は、正面意匠パネル10の中央部に設けられるものであるが、ここに図示されるように、パネル回動軸12は、正面意匠パネル10の背面上部に立設された軸アーム11の先端部に左右方向に突き出て形成される。軸アーム11は、正面意匠パネル10が閉じた状態において、正面パネル部10aの背面から室内機本体50の方向へ突出し、途中で上方へと向きを変える略L字状を成し、その先端部分に左右方向に伸びる円筒状のパネル回動軸12が設けられている。
また、図6に示すように、正面意匠パネル10の背面下部に形成されたパネル係止突起13は、正面意匠パネル10が閉じた状態において、正面パネル部10aの背面から室内機本体50の方向へ突き出ており、その先端部13aは菱形形状となっている。一方、このパネル係止突起13を受け止める前面枠51の係止ツメ58は、そのパネル係止突起13の菱形形状の先端部13aを上下両側から挟み込む上下2枚の板状片を有し(図17、18参照)、それぞれの板状片の先端に互いに向き合うように形成されている鉤状部で、パネル係止突起13の菱形形状の先端部13aを引っ掛けてパネル係止突起13を保持する。
正面意匠パネル10の背面におけるパネル係止突起13の位置は、説明を後述する図7に示されるように、正面パネル部10aの背面下部である。なお、パネル係止突起13の菱形形状の先端部13aは、上下方向(鉛直方向)に菱形形状を呈しているが、左右方向(水平方向)に菱形形状を成すように形成してもよく、その際には、係止ツメ58の板状片は、左右両側からパネル係止突起13の先端部13aを挟み込むように左右方向に向き合うように設置することになる。
図3に示すように、室内機本体50は、縦断面の中央やや下寄りに貫流ファン2を備え、その貫流ファン2の前方と上方を囲うように、逆V字形状に熱交換器3が配置されている。そして、筐体上面の吸込口54より下流側で熱交換器3の上流側に、着脱自在なフィルター5が配置される。フィルター5は、室内機本体50の前面側においては、前面枠51前面の開口55の前方に位置し、熱交換器3をその前方と上方とで覆うように、コーナー部が緩やかにカーブした逆L字状を呈して取り付けられている。なお、図1、2に示す室内機本体50においては、フィルター5の図示は省略している。
貫流ファン2の回転により、筐体(前面枠51と背面ケース52)上面の吸込口54から室内空気が、室内機本体50の内部へと吸い込まれる。室内空気は上方からそのまま下向きに内部へと吸い込まれるものもあれば、前面の開口55を経由して吸い込まれるものもある。室内空気は、室内機本体50の内部に吸い込まれる過程でフィルター5を通過し、その際に室内空気といっしょに吸い込まれた室内に漂っていた塵埃が、フィルター5によって捕捉される。よって、熱交換器3には、塵埃が除去された室内空気が届けられる。
フィルター5を通過した室内空気は、続いて熱交換器3を通過するが、その過程で、冷凍サイクル回路を循環する冷媒と熱交換し、冷房運転であれば冷やされ、暖房運転であれば暖められて調和空気となり、吹出口53から室内へと吹き出される。これにより室内の空気調和が行われる。吹出口53から吹き出される調和空気の気流は、図示しない左右風向調整板にて左右方向に、上下風向調整板4により上下方向に調整される。なお、室内機1の運転が停止されると、上下風向調整板4は吹出口53を塞ぐような位置まで回動して停止し、室内機本体50の内部が吹出口53を通してはっきりと見えてしまうことを防いでいる。
正面意匠パネル10が閉じた状態では、パネル係止突起13の菱形形状の先端部13aが、室内機本体50側の係止ツメ58に引っ掛かって保持されているので、正面意匠パネル10が室内機本体50に対して浮き上がることはなく、閉じた状態を安定的に維持される。以降、本明細書において、正面意匠パネル10が閉じた状態のことを閉鎖状態と表現する場合がある。正面意匠パネル10の閉鎖状態とは、正面意匠パネル10が閉じた状態のことを意味するものである。同様に、正面意匠パネル10を閉じることを閉鎖すると表現する場合がある。図3の縦断面図は、正面意匠パネル10の閉鎖状態を示している。
ユーザが正面意匠パネル10を開ける場合、正面意匠パネル10の下端や側壁10bの下部に指を掛け、正面意匠パネル10の下部を手前側に引き寄せれば、パネル係止突起13の菱形形状の先端部13aが前方に移動し、その際に係止ツメ58を上下両側に広げるように弾性変形させ、係止ツメ58の引っ掛かりを外し、係止ツメ58による保持を解除する。
係止ツメ58からパネル係止突起13を外した後は、そのまま正面意匠パネル10の下部を手前側へと引き上げるように移動させれば、正面意匠パネル10は、室内機本体50の上部で、軸受部57に回転摺動を支持されたパネル回動軸12を中心として上方へと回動し、正面意匠パネル10が開いた状態となる。図2が、正面意匠パネル10が開いた状態の斜視図、図4が、正面意匠パネル10が開いた状態の側面図であり、図2、4に示すように、正面意匠パネル10を開くことにより、室内機本体50の前面を室内に露出させることができる。
再び、正面意匠パネル10を閉じた状態にする場合には、開いた正面意匠パネル10の下部を室内機本体50側へ押し下げるように移動させれば、室内機本体50上部に位置しているパネル回動軸12を中心に下方へと回動し、パネル係止突起13の菱形形状の先端部13aが奥側へ移動する際に係止ツメ58を上下両側に広げるように弾性変形させ、係止ツメ58内に進入し、係止ツメ58に再び引っ掛けられて保持され、安定的な閉鎖状態へと移行する。このときに、パネル係止突起13が挟み込まれる際の係止ツメ58の弾性変形が、パネル係止突起13から側壁10b等を介してユーザに手応えとして感じられるので、係止ツメ58による保持がなされたこと、すなわち正面意匠パネル10を閉じる作業が無事に完了したことをユーザはこの手応えによって認識することができる。
なお、正面意匠パネル10の背面には、パネル係止突起13の左右どちらか一方の横側に並んで、四角錐状のガイド突起14(図6参照)が形成されており、正面意匠パネル10を閉じる際には、これらガイド突起14が、前面枠51の下部で係止ツメ58の横隣りに形成されているガイド溝59(図17、18参照)に案内されながら入り込み、そこに収まることで、室内機本体50に対する閉鎖状態の正面意匠パネル10の位置が上下方向、左右方向ともに微調整される。
この室内機1は、冷房や暖房の能力が大きい(例えば8.0kWの)大形機であり、正面意匠パネル10の左右方向幅(長手方向幅)が大きく重量も大であるため、正面意匠パネル10の開閉時に、正面意匠パネル10の自重によるたわみを防止してスムーズな開閉動作が得られるように、左右方向両端近傍だけでなく中央部にもパネル回動軸12と軸受部57の嵌合箇所を設けて正面意匠パネル10の回動を支持させているが、正面意匠パネル10の大きさや重量によっては、中央部の回動支持を省き、左右両端近傍の2ヶ所だけで支持するなど、回動支持点の数は正面意匠パネルの大きさや重量に応じて増減させてよい。
同様に、正面意匠パネル10の閉鎖時に、正面意匠パネル10下部の浮き上がりを防止し安定した閉鎖状態を維持するパネル係止突起13と係止ツメ58の掛り止めも、正面意匠パネル10の大きさや重量によっては、左右両端近傍の2ヶ所だけであったり、それに中央部1ヶ所を加えた3ヶ所としたりなどその数を増減させてよい。
これより、この実施の形態1が示す室内機1の特徴的な構成である、正面意匠パネル10を所定の大きな開き角度で開いた状態に保持する保持構造について説明する。なお、本明細書において、正面意匠パネル10が開いた状態のことを解放状態と表現する場合がある。正面意匠パネル10の開放状態とは、正面意匠パネル10が開いた状態のことを意味するものである。同様に、正面意匠パネル10を開けることを開放すると表現する場合がある。
この室内機1においても、正面意匠パネル10の開放状態を保持するために、正面意匠パネル10と室内機本体50との間に板状の保持アーム30を介在させ、開かれた正面意匠パネル10を室内機本体50に対して保持アーム30で支えてその開放状態を保持する保持構造となっている。
ただし、この室内機1では、正面意匠パネル10の開放状態を保持するにあたって、正面意匠パネル10の背面上に横倒しされて収まっている板状の保持アーム30を左右方向に回動させて起き上がらせる点、また、正面意匠パネル10の開放状態を保持する必要がないときは、板状の保持アーム30を、その長手方向を正面意匠パネル10の長手方向である左右方向におおよそ沿わせて正面意匠パネル10の背面上に横倒しして収めている点が特徴的であり、以下に詳細に説明する。
図7は、正面意匠パネル10を背面(室内機本体50に向き合う面)側から見た斜視図であり、図8は、正面意匠パネル10の背面図である。両図に示すように、正面意匠パネル10背面の左右方向の両端近傍それぞれに、保持アーム30を設置している。図7、図8には、正面意匠パネル10の開放状態を保持する必要がないときの正面意匠パネル10の背面上に横倒しされて収まっている状態での保持アーム30が示されている。また、図9は、保持アーム30の単体斜視図である。
保持アーム30は、正面意匠パネル10とは別体に成形される樹脂部品であり、図示されるように、おおよそ直角三角形状の板状部材であり、その直角三角形は、直角に隣接する2つの辺(隣辺)の一方が他方より長い長辺で、他方が短辺となる形状を呈しており、その短辺に位置する短辺部30aが室内機1の上下方向に沿い、長辺に位置する長辺部30bが室内機1の長手方向である左右方向に沿うように、正面パネル部10aの背面上に寝かされている(横倒しされている)。そして、その状態において、直角三角形の斜辺に位置する斜辺部30cが、長辺部30bより上方に位置している。なお、室内機1が室内の壁に設置された場合、室内機1の上下方向は重力方向である。
斜辺部30cと長辺部30bとが交わる部分には、曲面形状の曲面状先端部30dが形成されている。保持アーム30が図7に示すように横倒し状態にあるときは、左右方向両側にそれぞれ配置される2つ保持アーム30は、互いの曲面状先端部30dを向き合うようにして正面意匠パネル10の背面上に収まっている。図3は、正面意匠パネル10が閉じた状態の室内機1の縦断面図であるので、保持アーム30が正面パネル部10aの背面上に寝かされており、保持アーム30は、正面意匠パネル10背面上で、正面意匠パネル10背面と室内機本体50前面の間に収まっている。
この保持アーム30は直角三角形状であるが、その長辺部30bが伸びる方向を保持アーム30の長手方向として、保持アーム30は、その長手方向を正面意匠パネル10の長手方向である左右方向に沿わせて、正面パネル部10aの背面上に横倒しされている。保持アーム30の長手方向と、それを収めている正面視で矩形状の正面意匠パネル10の長手方向とを概ね合致させているのである。
このように、保持アーム30による正面意匠パネル10の開放状態保持を行わない場合に、保持アーム30を左右方向に長い細長形状の正面意匠パネル10の左右方向にその長手方向をおおよそ沿わせて横倒し状態にして、正面意匠パネル10背面上の空間に収めるようにしているので、保持アーム30の長手方向の長さを、十分に長くすることができる。そのように長くできる収納スペースが確保できる。これによる作用効果については後述する。
図9は、室内機1の右側に位置する保持アーム30を示しているが、図示するように、保持アーム30の一端である短辺部30aには、ジョイント片31を介して円筒状のアーム回動軸32が、短辺部30aと平行に上下方向に伸びて接続されている。アーム回動軸32の軸方向となる上下方向の長さは、ジョイント片31の上下方向の長さよりも長く、アーム回動軸32の上端部と下端部は、それぞれ上下方向に所定の長さだけジョイント片31との接続部位がなく、独立した円筒形状を有している。このように、保持アーム30は、一端にアーム回動軸32が接続し、他端には曲面状先端部30dが形成されている。
また、保持アーム30が、図7に示すように正面パネル部10aの背面上に横倒しされている状態において、室内機本体50の方向を向く面(正面意匠パネル10と対向する面の反対側の面)上には、ユーザが掴むことが可能な把手33がその面から浮き上がるように突出して形成されている。この把手33は、短辺部30aよりも曲面状先端部30dに近い位置に設けられる。さらに、把手33の下側では、板状の保持アーム30の板厚方向に貫通した略矩形状の穴である係止孔34が設けられている。
なお、以降、保持アーム30が正面パネル部10aの背面上に横倒しされ、正面意匠パネル10が閉じた状態のときに、保持アーム30の室内機本体50の方向を向く面を、本体対向面と呼ぶものとする。そして、その本体対向面の反対側の面となる面を、パネル対向面と呼ぶものとする。把手33は、本体対向面上に突出している。そして、把手33は矩形状の係止孔34の対向する2つの内側面間を跨ぐように形成されている。この保持アーム30では、把手33は、係止孔34の長手方向に向き合う内側面間に跨っているが、長手方向に直交する方向の内側面間に跨って形成されていてもよい。ただし、長手方向にまたがった方が、把手33の長さを長くでき、ユーザが掴み易いというメリットがある。
また、アーム回動軸32近傍の保持アーム30の本体対向面上、言い換えると、短辺部30aの近傍の本体対向面上には、先端が鉤状になってその面から突出するアーム突起35が形成されている。そしてこのアーム突起35の先端の鉤状部35aは、おおよそアーム回動軸32の方向に突き出ている。なお、アーム突起35は、短辺部30aの近傍であれば、保持アーム30の本体対向面上でなく、ジョイント片31の同じ側の面上から突出させてもよく、両者に跨って形成してもよい。
なおここで、この保持アーム30は、おおよそ直角三角形状を呈しているが、その形状は、細長形状であれば、二等辺三角形など他の三角形状であってもよく、三角形ではなく矩形状や台形状といった四角形状であってもよい。いずれの細長形状の保持アームであっても、その細長形状の長手方向の一端にアーム回動軸32を接続し、他端には曲面状に形成した曲面状先端部30dを設ける。そして、その長手方向を正面意匠パネル10の長手方向におおよそ沿わせように横倒しして、正面意匠パネル10背面上の空間に収めるようにする。
ここで、保持アームの長手方向とは、その保持アームの細長形状が長く伸びる方向を指すもので、保持アーム30のように、直角三角形状であれば、長い方の隣辺が伸びる方向であり、二等辺三角形(ただし直角二等辺三角形は除く)や他の三角形であれば、アーム回動軸32に接続する端面を底辺として、その底辺の中心と、その底辺上には位置しない頂点とを結ぶ線分が伸びる方向である。また、矩形状であればその長辺方向が長手方向であり、台形状であれば、互いに平行となる対辺の一方(上底か下底)となる端面にアーム回動軸32を接続し、上底および下底に直交する方向が長手方向である。
なお、この実施の形態では、保持アーム30、ジョイント片31、アーム回動軸32、把手33、係止孔34、アーム突起35は、一体的に樹脂成形されている。また、図9に示す室内機1の右側に位置する保持アーム30を用いて説明したが、室内機1の左側に位置する保持アーム30も、長手方向の向きが180度異なるだけで、右側に位置する保持アーム30と同様な構成である。
続いて、保持アーム30が図7、図8に示されるような横倒しされた状態を安定的に保つための正面意匠パネル10側に形成された支承構造と、それらによる保持アーム30の支持作用について説明する。図10は、正面意匠パネル10とは別体の保持アーム30が取り付けられる前の状態の正面意匠パネル10を背面側から見た斜視図で、図7から保持アーム30を除去した図である。また、図11は、正面意匠パネル10背面に設けられた保持アーム30を安定的に支える支承構造の斜視図であり、図10の要部拡大斜視図である。この図11は、室内機1の右側に位置する保持アーム30を支える方の支承構造を示している。
正面パネル部10aの背面上に横倒しされている保持アーム30を支え、その状態を安定的に保つための支承構造として、正面パネル部10aの背面には、保持アーム30に接続するアーム回動軸32を載置しその回動を支持するアーム軸支承台20、保持アーム30をその長手方向に所定の間隔空けて載置する第1載置片15と第2載置片16、およびこれら2つの載置片15、16の間に設けられ、保持アーム30の係止孔34を本体対向面側へと通り抜け、本体対向面上の係止孔34の開口縁に引っ掛かる鉤状部17aを先端に有するアーム係止突起17、鉤状部17aが突出する方向の係止孔34の内側面をアーム係止突起17の方向へ移動させる三角形状のガイド片18を備えている。
図11に示すように、アーム軸支承台20は、曲面状の正面パネル部10aの背面から少し浮き上がった位置に平坦な支持面21を有している。この支持面21上にアーム回動軸32が載置される。そして、この支持面21が、後述する保持アーム30が横倒し状態から起き上がる際に略90度の範囲で回動するアーム回動軸32を支持する。
また、アーム支承台20には支持面21の上下方向の両端それぞれに、この支持面21に対して直角をなす壁面であるストッパ面22が形成されている。両ストッパ面22は互いに対向している。さらに、それぞれのストッパ面22における正面意匠パネル10左右方向の端寄りには、ストッパ面22を貫通するストッパ孔23が形成されている。詳細は後述するが、支持面21の両端に位置するストッパ孔23に、保持アーム30に接続するアーム回動軸32の独立した円筒形状を成す上端部と下端部がそれぞれ入り込む。支持面21の両端にそれぞれ位置するストッパ孔23は互いに対向し、互いの孔中心を結ぶ線分は、正面意匠パネル10の上下方向にほぼ平行となる。これにより、アーム回動軸32は、その軸方向が正面意匠パネル10の上下方向に沿うように設置される。
また、正面パネル部10aの背面上でアーム支承台20の最も左右方向端寄りには、コ字状のアーム支え壁24が、室内機本体50側(正面意匠パネル10の閉鎖時)の方に向かって立設されている。アーム支え壁24の中央部には、矩形状に凹んだ係止凹溝24aが設けられている。そしてアーム支え壁24は、コ字状が開口する側の先端面24bが支持面21側を向いている。アーム支え壁24は、アーム回動軸32と側壁10bとの間で、アーム回動軸32の左右方向における外側寄り(端寄り)側のアーム回動軸32に隣接した位置に設けられる。
保持アーム30の長手方向における長さの真ん中から曲面状先端部30dまでの部分を先端寄り領域と呼ぶとすれば、第1載置片15と第2載置片16には、保持アーム30の先端寄り領域が載せられる。両載置片15、16はともに、その載置面15a、16aに保持アーム30のパネル対向面が接触し、保持アーム30の先端寄り領域が正面パネル部10aの背面に直接接触することを防止している。そのため、保持アーム30は正面パネル部10aに対して左右方向に傾くことはなく、正面パネル部10の背面から長手方向に一定の高さ位置で平行を保っている。
第1載置片15は、正面意匠パネル10の上下方向に平行に突設されている。そして、保持アーム30を載置する載置面15aの両端(上下端)にそれぞれ接続し、載置面15aから離れるほど互いの上下方向の幅が徐々に広がっていくような案内傾斜面15bが両端それぞれに設けられている。同様な構造で、第2載置片16の載置面16aの両端には、案内傾斜面16bが設けられている。
アーム係止突起17とガイド片18は、正面意匠パネル10の上下方向に並んで配置される。アーム係止突起17もガイド片18も、正面パネル部10aの背面から室内機本体50側(正面意匠パネル10の閉鎖時)の方に向かって突設されている。アーム係止突起17の先端部に形成される鉤状部17aは、ガイド片18が位置する側とは180度反対の方向に突出する。
ガイド片18は、左右方向にから見て三角形状の板状片であり、アーム係止突起17の鉤状部17aの突出する方向と相反する方向を向き傾斜している調整傾斜面18aを有している。調整傾斜面18aは、ガイド片18の頂点(先端)から正面パネル部10aの背面へ向かうほど、アーム係止突起17との距離が広がるように傾斜している。
図11に示す保持アーム30の支承構造は、室内機1の右側に位置する保持アーム30を支持する方であるが、室内機1の左側に位置する保持アーム30を支持する支承構造も、左右方向の向きが180度異なるだけで、右側に位置する保持アーム30の支承構造と同様な構成である。また、これらの支承構造は、樹脂製の正面意匠パネル10に一体的に成形されている。
図12は、保持アーム30が、正面パネル部10aの背面に形成された支承構造に支持され横倒しされている状態(横倒し状態)の斜視図である。そして、図13は、図12の状態におけるアーム係止突起17と係止孔34周辺を示す要部拡大斜視図である。
図12において、アーム回動軸32は、アーム軸支承台20の支持面21上に載っている。そして、アーム回動軸32のジョイント片31との接続部位がなく円筒形状に独立している両端部(上端部と下端部)のそれぞれが、ストッパ孔23に入り込んでいる。アーム回動軸32と保持アーム30とをつなぐジョイント片31の上端面と下端面のそれぞれが、ジョイント片31の上下に位置するストッパ面22と接触することでアーム回動軸32の軸方向(上下方向)への移動量が制限される。そして、アーム回動軸32のストッパ孔23への入り込み長さをその制限された移動量よりも長くしているので、アーム回動軸32がストッパ孔23から抜け出てしまうことはない。
図12に示すような保持アーム30の横倒し状態においては、図13に示されるように、第1載置片15と第2載置片16のそれぞれに保持アーム30の先端寄り領域が載せられている。そして、アーム係止突起17が保持アーム30の係止孔34を通り抜け、その先端部に位置する鉤状部17aが保持アーム30の本体対向面上に突き出ている。係止孔34の本体対向面側の開口縁に鉤状部17aが引っ掛かることにより、保持アーム30の室内機本体50側への移動量をわずかな量に制限する。これにより、横倒し状態にある保持アーム30の先端寄り領域の浮き上がりを防止し、また、保持アーム30がアーム回動軸32を中心として勝手に回動してしまうことを防止している。すなわち、係止孔34の開口縁にアーム係止突起17の鉤状部17aが引っ掛かることにより、保持アーム30の回動が制限され、横倒し状態が維持されることになる。
次に、図7や図8、図12に示すような、横倒しされて正面意匠パネル10の背面上に収納されている状態の保持アーム30を使って、正面意匠パネル10を所定の大きな開き角度に開いた状態に保持する動作を、ユーザが作業する手順に沿って説明する。正面意匠パネル10を上方に回動させて開ける作業は、前述したとおりであって、ここでの説明では省略する。
図4に示すような開いた状態の正面意匠パネル10を片手で支えながら、もう片方の手で、その手と同じ側に配置されている方の保持アーム30の把手33を掴み、保持アーム30を起き上がらせるように力を加える。その際、保持アーム30の係止孔34の開口縁が鉤状部17aを押し上げようとし、そのときの力により係止アーム突起17が鉤状部17aの突出する方向と反対の方向へ反るように弾性変形し、鉤状部17aの引っ掛かりが解除される。解除されるとともに、係止アーム突起17の弾性変形は解除される。そのまま把手33を掴んで保持アーム30を起き上がらせるようにすれば、アーム回動軸32の上端部と下端部がアーム軸支承台20のストッパ孔23により浮き上がりを抑えられているので、保持アーム30が、アーム回動軸32を中心として回動して起き上がる。
この際、アーム回動軸32が、正面意匠パネル10の上下方向と平行になるようにアーム軸支承台20に装着されているので、保持アーム30は、正面意匠パネル10の左右方向に回動して起き上がることになる。また、保持アーム30の回動にあたって、アーム回動軸32と保持アーム30とをつないでいるジョイント片31が、アーム軸支承台20のストッパ面22に接触することで上下方向への移動が制限されているので、起き上がった保持アーム30が上下方向に位置ずれしてしまうことはない。なお、以降、このように横倒しされていた保持アーム30が約90度回動して起き上がることを、起立すると表現することもある。
図14は、保持アーム30が横倒し状態から約90度回動し、正面パネル部10に対してほぼ直角に起き上がった状態(以降、この状態を起立状態と呼ぶこともある)の保持アーム30周りの斜視図である。この図14では、室内機1の右側に配置される保持アーム30を示している。そして、図15は、図14におけるアーム軸支承台20近傍を示す拡大斜視図である。
保持アーム30を約90度回動させると、保持アーム30の本体対向面がアーム支え壁24のコ字状先端面24bにぶつかることでそれ以上の回動が止められ、保持アーム30が起立状態となる。そして、この保持アーム30が回動されながら起立状態へと移行する際に、短辺部30a近傍に立設されたアーム突起35が、アーム軸支承台20のアーム支え壁24に形成される係止凹溝24a内に入り込む。
そして、アーム突起35の先端部に形成された鉤状部35aが係止凹溝24aの底縁(支持面21側)に接触するが、そのときのユーザの回動させようとする力に対するアーム支え壁24からの反力により、アーム突起35が鉤状部35aの突出する方向と反対方向に弾性変形し、それにより、鉤状部35aが係止凹溝24aの底縁を乗り越え、図15に示すように入り込んだ側(支持面21側)の反対側へと突き出る。突き出ると同時に、アーム突起35の弾性変形は解除される。
図15に示すような起立状態の保持アーム30は、アーム突起35の鉤状部35aがアーム支え壁24の係止凹溝24aの底縁(反支持面21側)に引っ掛かることで、元の横倒し状態に戻る方向へ勝手に回動してしまうことが防止される。言い換えれば、元の横倒しされていた方向への戻り回動が制限される。また、保持アーム30の本体対向面がアーム支え壁24のコ字状先端面24bに接触しそれに支えられることで、90度を越える回動、すなわち起立状態を超える回動が止められる。これにより、保持アーム30の安定した起立状態が維持される。
なお、この時点で起立状態にさせた保持アーム30が室内機本体50と接触しないように、片手で支えている正面意匠パネル10は、保持アーム30を用いてその開放状態を保持するときの所定の開き角度よりも少しばかり大きな開き角度の状態で支えておく。ここで開き角度は、図4に示すように、室内機本体50の上下方向に対して正面意匠パネル10の上下方向がなす鈍角であり、正面意匠パネル10の閉鎖状態からの回動角度を示すもので、この開き角度が0度のとき、正面意匠パネル10が閉じた状態であり、室内機本体50の上下方向に対して正面意匠パネル10の上下方向が平行となる。
ユーザは、アーム突起35の鉤状部35aがアーム支え壁24の係止凹溝24aの底縁を乗り越える際のアーム突起35の弾性変形の解除を、把手33を介して手応え(カチッという感覚)として感じることができる。この手応えにより、ユーザは保持アーム30が正常な起立状態になったことを認識することができ、正しく起き上がっていない状態で把手33から手を離して回動を止めてしまうことを防止できる。
一方の保持アーム30を安定した正常な起立状態とした後は、把手33から手を離し、開いた状態の正面意匠パネル10を支えている手を入れ替え、他方の保持アーム30を同様に回動させて起立状態にする。図16は、左右両側にそれぞれに離れて配置された2つの保持アーム30が約90度回動して起き上がり、アーム支え壁24の支えにより90度を越える回動が、また、アーム突起35の鉤状部35aの引っ掛かりにより、横倒し状態への戻り回動が防止された正常な起立状態にある正面意匠パネル1を背面側から見た斜視図である。そして、図16の点線矢印は、図7に示される横倒し状態の2つの保持アーム30を起立状態にするときを表している。
左右2つの保持アーム30は、それぞれ順番に回動されることになるが、図16に示すように、右側に位置する保持アーム30は、正面意匠パネル10の右方向へ回動して起き上がり、左側に位置する保持アーム30は、左方向へ回動して起き上がる。このように、正面意匠パネル10の背面の左右両端近傍それぞれに配置された2つの保持アーム30は、互いが観音開きするような格好で回動して起立することになる。このため、正面意匠パネル10背面の左右両側の端部に、起立状態にさせた保持アーム30を配置することができる。
左右の2つの保持アーム30を正常な起立状態にさせたならば、開き角度を保持する所定角度よりも少しばかり大きめに開いた位置で支えていた正面意匠パネル10を下方へと少しばかり回動させて、起立状態にある保持アーム30の突端となっている曲面状先端部30dをそれぞれ、室内機本体50の前面枠51の前面下部に形成されるアーム受け部60に当接させる。図17は、室内機1の右側に位置する保持アーム30が当接するアーム受け部60を示す斜視図で、図18は、室内機1の左側に位置する保持アーム30が当接するアーム受け部60を示す斜視図である。それぞれのアーム受け部60の前面枠51の前面における位置関係は、図2に示すとおりである。
それぞれのアーム受け部60は、四方を囲う枠体とその枠体内に形成される平坦面により構成される。四方を囲う枠体は、前面枠51の前面に前方へ凸状に突出させたリブ60aと、元より前面枠51に形成されている壁面や段差を利用して構成される。図17に示す右側に位置するアーム受け部60では、下側を除く三方にはリブ60aを設け、下側は前面枠51の段差を用いることで、四方を囲う枠体を形成している。また、図18に示す左側に位置するアーム受け部60では、上側と右側にはリブ60aを設け、左側は前面枠51の壁面を、下側は前面枠51の段差を用いることにより、四方を囲う枠体を形成している。
図19は、室内機1の右側に位置する保持アーム30を、図20は、室内機1の左側に位置する保持アーム30を、それぞれ起立状態として、対向する室内機本体50のアーム受け部60に当接させた状態を示す斜視図である。図示されるように、正しい起立状態にある保持アーム30は、曲面状先端部30dが前面枠51のアーム受け部60の枠内にある平坦面の左右方向ほぼ中央に当接する。これは、正面意匠パネル10が閉鎖状態にあるときに、アーム回動軸32がアーム受け部60の左右方向略中央の前方に位置しているためであり、アーム回動軸32がそのような位置となるように、アーム軸支承台20のストッパ孔23を正面意匠パネル10の背面に設けているのである。
ユーザが左右2つの保持アーム30の曲面状先端部30dをそれぞれのアーム受け部60に当接させることで、左右2つの保持アーム30が、開いた状態の正面意匠パネル10を支持し、正面意匠パネル10がその自重により下方へ回動して閉じてしまうことを回避し、正面意匠パネル10を開いた状態に保持する。そのときの開き角度が所望する開き角度(所定の開き角度)となるように保持アーム30の長さが調整されている。保持アーム30は、正面パネル部10の背面に対して略直角をなしている。そして、その状態では、右側に位置する保持アーム30は、把手33の突出する方向が室内機1の右方向となり(図19参照)、左側に位置する保持アーム30は、把手33の突出する方向が室内機1の左方向となる。
ここで、室内機1の右側に位置する保持アーム30が、例えば図16に示されるように、左側に位置する保持アーム30と比べると、正面意匠パネル10の側壁10bから左右方向に少し離れて位置しているが、室内機本体50の右端部には、電気品収納部6が設けられており、この電気品収納部6を避けて前面枠51の前面にアーム受け部60を形成しているためである。
保持アーム30の曲面状先端部30dとアーム受け部60の平坦面との接触部位(当接部位)には、正面意匠パネル10の自重が作用し合うため、保持アーム30の当接位置がずれる恐れはない。仮に万が一にも保持アーム30の位置がアーム受け部60上で動いてしまうような事態が生じたとしても、アーム受け部60のリブ60aを含めた四方の枠体がストッパとなって、これらのどこかに接触してずれ移動が止められ、ユーザが意図しない正面意匠パネル10の閉じ動作の発生は回避される。
ユーザが正面意匠パネル10の背面の左右両側でそれぞれ横倒しになっていた2つの保持アーム30を左右方向にそれぞれ略90度回動させて起立させ、起立状態の突端となる曲面状先端部30dをそれぞれ対応する前面枠51のアーム受け部60に当接させることにより、正面意匠パネル10が、所定の開き角度で開いた状態に保持される。図21は、保持アーム30により正面意匠パネル10が所定の開き角度で開いた状態に保持されているときの室内機1の斜視図であり、図22は、図21の状態(正面意匠パネル10の開放状態の保持形態)にある室内機1の側面図である。
これらに図示されるように、正面意匠パネル10の背面から室内機本体50に向かって伸びる起立状態の保持アーム30が、正面意匠パネル10と室内機本体50との間に介在し正面意匠パネル10を支持することにより、正面意匠パネル10を大きな開き角度に開いた状態で保持することができる。この室内機1では、正面意匠パネル10を約60度の開き角度に開いた状態で保持するようになっており、室内機本体50の前面を広く室内に露出させることができる。
このように、大きな開き角度で正面意匠パネル10の開放状態を保持できるのは以下のような理由によるためである。保持アーム30を回動させる際の回動中心となるアーム回動軸32を、その軸方向が正面意匠パネル10の上下方向におおよそ沿わして(略平行となるように)設置し、保持アーム30を正面意匠パネル10の長手方向である左右方向に回動させて起立させるようにしたことで、正面意匠パネル10の閉鎖時では、板状の保持アーム30の長手方向を、正面視で略矩形状な正面意匠パネル10の長手方向である左右方向におおよそ沿わせ、保持アーム30を正面意匠パネル10の正面パネル部10a背面上に横倒しにして、正面意匠パネル10の背面と室内機本体50の前面の間に収納できるようになる。
そして、正面意匠パネル10は、長手方向である左右方向の幅が上下方向の幅に比べて大きく、その背面には、横倒し状態にある保持アーム30を長手方向に伸ばせる左右方向のスペースが十分に展開されている。このため、保持アーム30の長手方向長さを、正面意匠パネル10を所望する大きな開き角度に開いた状態で保持するために必要な長さまで、十分に長く設定することが可能となるのである。
これにより、この室内機1のように、保持アーム30が起立した状態において、正面意匠パネル10の正面パネル部10aの背面から保持アーム30の突端となる曲面状先端部30dまでの保持アーム30の長手方向に沿った距離である、保持アーム30の起立高さH(図14参照)を、正面意匠パネル10の高さ(上下方向幅)と同等以上とすることができる。保持アーム30の長手方向長さをそのような起立高さHとなる長さに設定可能となる。
先に先行技術文献として提示した特許文献2や特許文献3で示されるような、一端を軸支し、そこを中心に上下方向に回動するアームにより開放状態の正面意匠パネルを支持する場合では、そのアームを正面意匠パネルの背面に収めるか、閉鎖時に正面意匠パネルで覆って室内に露出しないようにするためには、アームの長手方向(この場合には正面意匠パネルの上下方向になる)の最大長さを正面意匠パネルの高さよりも短くしなければならず、正面意匠パネルの背面からの(特許文献2)、もしくは室内機本体側の前面枠の前面からの(特許文献3)アームの起立高さを、正面意匠パネルの高さと同等以上にすることはできない。しかし、この室内機1では、上記のとおり、正面意匠パネル10の起立高さHを、正面意匠パネル10の高さと同等もしくはそれ以上に設定することが可能となる。このためこの室内機1では、保持アーム30により、先行技術よりも大きな開き角度で開いた状態に正面意匠パネル10を保持することができるのである。
図22に示すように、この室内機1では、正面意匠パネル10の開放状態を、開き角度が約60度で保持するように(所定の開き角度を約60度に)設定しているが、保持アーム30の長手方向の長さをより長くして、60度を越える開き角度で保持させることもできる。そのように保持アーム30を今より長くすることは、正面視矩形状の正面意匠パネル10は左右方向に長く、横倒し状態にしたときの保持アーム30が収納できるスペースにまだ十分余裕があるので、問題なくできるのである。
ただし、室内機1は室内の壁面上部に設置されるため、開放状態を保持する際の正面意匠パネル10の所定の開き角度を、90度を越えるような角度に設定してしまうと、その所定の開き角度に到達する前の開き角度で、正面意匠パネル10が天井に接触してそれ以上の上方への回動が制限されてしまう恐れが生じる。そうなると、保持アーム30を正しい起立状態にさせることができず、正面意匠パネル10を開いた状態に保持できなくなってしまう。そのため、開放状態を保持するときの正面意匠パネル10の開き角度(所定の開き角度)は、90度以下にするのがよい。
また正面意匠パネル10の閉鎖時には、板状の保持アーム30を正面意匠パネル10の左右方向にその長手方向をおおよそ沿わせて、正面意匠パネル10の背面上に横倒し状態にして収納しておくので、保持アーム30は、その長手方向長さを長く設定できるだけでなく、長手方向と直交する短手方向(長手方向と板厚方向のそれぞれに直交する方向)、すなわち横倒し状態にあるときの保持アーム30の上下方向の長さ(最大値)も長くすることができる。
先に先行技術文献として提示した特許文献2では、閉鎖時には正面意匠パネルの側壁に沿わせて板状のアームを収納するので、短手方向の長さは側壁の奥行き幅よりも小さくしなければならない。一方、特許文献3では、板状のアームの短手方向が室内機本体の左右方向となるので、その短手方向を長くすると、その収納場所を確保するために、室内機本体を左右方向に長くしなければならなくなってしまう。しかしこの室内機1では、保持アーム30の上下にも収納できるスペースが展開されているので、この短手方向を、正面意匠パネル10の高さに収まる範囲で長く設定することができる。
このため、保持アーム30に対して、その長手方向の長さを長くするとともに、短手方向の長さ(最大値)も、例えば側壁10bの前後方向の長さ(奥行き幅)よりも長くすることによって、板状の保持アーム30の剛性を十分に高めることができる。これにより、開放状態の正面意匠パネル10を支えるために必要な強度を十二分に有する保持アーム30とすることができ、大きな開き角度(所定の開き角度)に開いた状態の正面意匠パネル10を、この保持アーム30により、安定して保持することができる。
また、上下方向に沿って曲面形状を成す正面パネル部10aの背面上の空間を利用して、横倒し状態の保持アーム30を収納しているので、板状の保持アーム30の板厚も、正面意匠パネル10の閉鎖時に室内機本体50と接触しない範囲で厚くしたり、本体対向面上もしくは先端寄り領域を除いたパネル対向面上に強度補強用のリブを凸状に形成したりして、保持アーム30の剛性を高めることができる。これによっても、大きな開き角度に開いた正面意匠パネル10を、保持アーム30により安定して保持することができる。
また、ユーザが保持アーム30を起立させるときに、本体対向面上に突出する把手33を掴んで回動させるので、回動させる力を保持アーム30に作用させ易く、作業性がよい。そして、その際に室内機1の右側に配置されている保持アーム30の把手33を右手で掴んで右方向に約90度回動させ、また左側に配置されている保持アーム30は左手でその把手33を掴んで左方向へ回動させるので、室内機1の前方斜め下に立って作業するユーザの動作として、把手33を掴んで自分に近づく方へ、もしくは自分から遠ざける方へ上下方向に回動させてることに比べれば、手首などの身体への負担が少ないやり易いスムーズな動作で保持アーム30を起立させることができ、操作性にも優れるものとなる。
また、保持アーム30を起立させるときに、保持アーム30の戻り回動を防止するアーム突起35先端部の鉤状部35aが、アーム軸支承台20に立設するアーム支え壁22の係止凹溝22aの底縁を乗り越えた際のアーム突起35の弾性変形の解除を、把手33を介して手応えとして感じることができるので、ユーザはこの手応え(カチッという感覚)を感じることで、保持アーム30が正しい(正常な)起立状態になったこと、すなわちこの作業が正しく遂行されたことを認識することができる。
このため、正しく起立していないのに、保持アーム30を室内機本体50に当接させてしまい、正面意匠パネル10の自重により保持アーム30が元の横倒し状態の方向へ戻り回動してしまうといった事態の発生を防止できるとともに、ユーザは安心感を持って作業を終了させることができ、作業の信頼性も高まる。なお、万が一上記のような事態になったとしても、アーム受け部60の四方の枠体のうち左右方向中心寄りに位置する枠体(左右両側ともにリブ60aが担当)に保持アーム30のパネル対向面の先端部が接触し、戻り回動はそこで停止させられるので、正面意匠パネル10が閉じてしまうことはない。
上記のような手順で図21や図22に示すように、左右方向に回動させて起立状態にした保持アーム30により、正面意匠パネル10を大きな開き角度で開いた状態に安定的に保持させることで、室内機本体50の前面を広く室内に露出できる。このよう状態にしておくことで、ユーザは、広く露出された室内機本体50前面を直接目視しながら、例えばフィルター5を清掃するためにフィルター5を着脱したり、室内機本体50の前面を拭き清掃したり、または内部を目視点検するなどの室内機本体50のメンテナンス作業を容易に行うことができ、メンテナンス作業の作業性に優れたものとなる。
続いて、ユーザがメンテナンス作業を終え、保持アーム30による正面意匠パネル10の開放状態の保持を解除して、再び通常状態である正面意匠パネル10を閉じた状態に戻す作業について説明する。
まずは、開放状態に保持されている正面意匠パネル10を少しばかり上方へと回動させ、2つの保持アーム30の曲面状先端部30bをそれぞれ対応するアーム受け部60から離して浮かせた状態にする。その状態の正面意匠パネル10を片手で支えながら、もう片方の手で、その手と同じ側で起立している方の保持アーム30の把手33を掴み、横倒しさせるように力を加える。その際、その力によりアーム突起35が弾性変形して、アーム支え壁24の係止凹溝24aの底縁(反支持面21側)に引っ掛かっていたアーム突起35の鉤状部35aが、係止凹溝24aの底縁を乗り越えて支持面21側へと移動し、鉤状部35aの引っ掛かりが解除される。
そのまま横倒しさせるように力を加えて、アーム回動軸32を回動中心として、保持アーム30を寝かせる方向へと回動させる。そうすると、保持アーム30の長辺部30bまたは斜辺部30cのどちらかが、第1載置片15の案内傾斜面15aもしくは第2載置片16の案内傾斜面16aのいずれかまたは両方に接触し、その案内傾斜面に沿って移動して保持アーム30の正面意匠パネル10に上下方向に対する位置が修正される。正面意匠パネル10の閉鎖時に上側に位置する案内傾斜面に斜辺部30cが接しながら移動すれば、位置を下方へ、逆に長辺部30bが下側に位置する案内傾斜面に接しながら移動すれば、上方へと位置が調整される。
案内傾斜面に接触しながら移動しているときに、保持アーム30の係止孔34の開口縁(パネル対向面側)が、アーム係止突起17の鉤状部17a上面に接触する。正面意匠パネル10が閉鎖状態(図3に示す状態)のときに上側に位置する係止孔34の開口縁がアーム係止突起17にぶつかる。
そのまま把手33を介して横倒しさせる方向に保持アーム30を回動させれば、係止孔34の上側開口縁に押されるアーム係止突起17が、下側の開口縁の方向に、言い換えれば、鉤状部17aが突出する方向とは反対の方向に反るように弾性変形して、係止孔34の上側開口縁が鉤状部17aを乗り越えて、鉤状部17aが本体対向面側へと飛び出す。飛び出すとともに、アーム係止突起17の弾性変形は解除される。
そしてそれと並行して、係止孔34の下側内側面が、ガイド片18の調整傾斜面18aと接し、接しながら横倒し方向へと移動する。正面パネル部10aの背面に向けて末広がりとなる三角形状のガイド片18の反アーム係止突起17側の傾斜面である調整傾斜面18aに沿って、保持アーム30が正面パネル部10aの背面に向かって移動することにより、閉鎖時の正面意匠パネル10の下側に向かって保持アーム30の位置が調整され、係止孔34の上側の内側面が、アーム係止突起17に接するようになる。第1載置片15の案内傾斜面15aもしくは第2載置片16の案内傾斜面16aとにより、横倒し状態へと回動される保持アーム30の大まかな上下方向の位置調整がなされ、ガイド片18の調整傾斜面18aにより、上下方向の位置の微調整が行われる。
このため、係止孔34を通り抜けたアーム係止突起17の鉤状部17aが、保持アーム30の本体対向面上に確実に突き出て、係止孔34の上側開口縁の本体対向面側にしっかりと引っ掛かるようになる(図13参照)。係止孔34の開口縁がアーム係止突起17の鉤状部17aを乗り越えて、鉤状部17aが保持アーム34の本体対向面上に突出した時点で、その保持アーム30を横倒しさせる作業が終了する。このときには、正面意匠パネル10は開いているので、保持アーム30は本体対向面がおおよそ下方を向いており、鉤状部17aと保持アーム30の係止孔34の開口縁(本体対向面側)が接している。
保持アーム30は、アーム係止突起17の鉤状部17aに引っ掛かることにより、アーム回動軸32を中心に勝手に回動してしまうことはなく、横倒し状態へと移行したことになる。一方の保持アーム30を横倒し状態にさせた後は、把手33から手を離し、開いたままの正面意匠パネル10を支えている手を入れ替え、他方の保持アーム30を同様に回動させて横倒し状態にして、図7に示すような状態とする。
ユーザは、回動させている保持アーム30の係止孔34の開口縁が、アーム係止突起17の鉤状部17aを乗り越える際のアーム係止突起17の弾性変形の解除を、把手33を介して手応え(カチッという感覚)として感じることができる。この手応えを感じることにより、ユーザは、保持アーム30を横倒し状態にする作業が正しく終了したことを認識できるので、安心感を持って作業を終了することができる。また、きちんと横倒し状態になっておらず、保持アーム30がアーム係止突起17による回動阻止作用を受けずに勝手に回動してしまうことを防止できる。また、保持アーム30が正面意匠パネル10背面と室内機本体50の間の収納空間でがたつくことも防止できる。
また、保持アーム30に対して、回動時にユーザが掴む把手33の下方に、アーム係止突起17の鉤状部17aが引っ掛かる開口縁を有した係止孔34を設けている、言い換えれば、係止孔34を跨ぐように把手33を架けているので、ユーザが保持アーム30を回動させようとする力を付与する把手33と、その力が作用するアーム係止突起17の鉤状部17aとの距離が近いので、保持アーム30に作用する両者間のモーメントを小さく抑えることができ、ユーザは円滑に、アーム係止突起17の鉤状部17aを係止孔34の開口縁に乗り越えさせることができ、作業性に優れたものとなる。これは、保持アーム30を起立状態にさせるときにも同じことが言える。
また、把手33を係止孔34の対向する内側面間を架けように設けると、保持アーム30の板状片と把手33の板状片とが重ならずに済むので、樹脂製の保持アーム30を成形する際の型構造を簡素にすることができるという利点もある。
2つの保持アーム30を横倒し状態にしたら、ユーザは正面意匠パネル10を下方に回動させて閉じる。正面意匠パネル10を閉鎖状態にする作業は、前述したとおりであってここでは省略する。これにより、再び図3に示すように、正面意匠パネル10が閉じて、正面意匠パネル10の背面上に横倒しされた保持アーム30が収まった状態に戻る。このとき、保持アーム30の先端寄り領域のパネル対向面が、第1載置片15の載置面15aと第2載置片16の載置面16aに接する。アーム回動軸32がアーム支承台20の支持面21に載置され、保持アーム30の先端寄り領域が第1載置片15と第2載置片16に載置されることで、保持アーム30は、正面パネル部10aの左右方向に対して傾斜することなく、一定の高さの位置で長手方向にほぼ平行を保つ。
この室内機1では、正面意匠パネル10背面の左右両側の端部に1つずつ計2つの保持アーム30を設けたが、左右方向に短く軽量な正面意匠パネルであれば、どちらか1つだけとして、1つの保持アームでその正面意匠パネルの開放状態を保持させるようにしてもよい。
また、この室内機1では、保持アーム30の未使用時、少なくとも正面意匠パネル10が閉じているときには、保持アーム30の長手方向を、正面視で略矩形状を成す正面意匠パネル10の長手方向である左右方向に沿わせて横倒しさせているが、保持アーム30の正面意匠パネル10に対する上下方向の取り付け位置や室内機本体50のアーム受け部60の上下方向の位置との関係で、保持アーム30の長手方向を正面意匠パネル10の左右方向に対して、例えば上下にそれぞれ少なくとも30度ずつ程度までであれば、傾斜させても、保持アーム30を十分に長く設定でき、正面意匠パネル10を大きな開き角度で開いた状態に保持できる効果が得られる。保持アーム30の長手方向を正面意匠パネル10の長手方向である左右方向におおよそ沿わせるということには、この範囲の傾斜を含めている。
また、この室内機1では、アーム回動軸32の軸方向を正面意匠パネル10の上下方向に沿わせて設置し、そのアーム回動軸32を回動中心として、保持アーム30を正面意匠パネル10の長手方向である左右方向に回動させるようにしているが、保持アーム30の正面意匠パネル10に対する上下方向の取り付け位置や室内機本体50のアーム受け部60の上下方向の位置との関係で、アーム回動軸32の軸方向を正面意匠パネル10の上下方向に対して、例えば左右にそれぞれ少なくとも30度ずつ程度までであれば、傾けて、保持アーム30を正面意匠パネル10の左右方向に対して傾いた状態で回動させるようにしても、保持アーム30を十分に長く設定でき、正面意匠パネル10を大きな開き角度で開いた状態に保持できる効果が得られる。アーム回動軸32を正面意匠パネル10の上下方向におおよそ沿わせるということには、この範囲の傾きを含めている。
正面意匠パネル10は、樹脂成形が一般的であるが、意匠的な高級感を持たせるために、例えば回動軸12やパネル係止突起13を背面に一体成形した樹脂製パネルの前面に金属製パネルを装着し、その金属製パネルを室内に臨ませるようにしたものがある。このように構成した正面意匠パネルは、金属製パネルを有しているため、その重量は、樹脂のみで構成された正面意匠パネルの重量に比べると、随分と大きいものとなる。この実施の形態で示した保持アーム30は、前述のとおり、横倒し状態での収納スペースを大きく取れる利点に起因して剛性を高めることができるので、このような重量の大きさが顕著な正面意匠パネルであっても、その開放状態を安定して保持することができ、より一層、保持アーム30の効果が発揮される。
なお、正面意匠パネル10は、室内機本体50に対して着脱可能なものであっても、そうでなくても、どちらであってもこの効果を奏することができる。