JP2012162711A - 難燃剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】難燃性を有する難燃化合物と、ケイ酸化合物および/または炭酸塩からなる潮解防止剤と、を含むことを特徴とする難燃剤。潮解防止剤の含有量が、前記難燃化合物100重量部に対して、0.5〜3.0重量部となるように配合される。ケイ酸化合物としては二酸化ケイ素やケイ酸カルシウム、炭酸塩としては炭酸カルシウムが挙げられる。
【選択図】なし
Description
特許文献1にはリン酸アンモニウム、ハロゲン化合物などの難燃性を有する難燃化合物を加圧注入法により木材繊維に含浸させて、建築用木材を不燃材料とする技術が開示されている。
この不燃材料は、木材繊維に難燃化合物を含有するので、耐火性を備えているという利点がある。
例えば、特許文献1の技術では、難燃化合物を含浸させた木材の表面には、含浸させた難燃化合物が空気中の水分を吸収することにより木材繊維中の難燃化合物が表面に溶出し、水滴状となる、いわゆる潮解現象が生じる。この潮解現象により生じた難燃化合物の溶液はベトツキといわれるものであり、しかも、木材表面の難燃化合物の溶液中の水分が蒸発すれば、難燃化合物が木材表面に析出するいわゆる白色化が生じる。
つまり、木材に含浸させた難燃化合物が、時間とともに木材表面にしみだすため、かかる木材に付与した難燃性または不燃性の効果が経時的に失われるという問題がある。
難燃化合物を含有する難燃剤であって、しかも、難燃化合物の潮解現象を防止する機能を備えた難燃剤が開発されれば、かかる難燃剤を可燃部材に使用するだけで、長期間優れた難燃性を付与できるので、建物を火災等から守る上で非常に有益である。
第2発明の難燃剤は、第1発明において、前記潮解防止剤の含有量が、前記難燃化合物100重量部に対して、0.5〜3.0重量部となるように配合されていることを特徴とする。
第3発明の難燃剤は、第1または第2発明において、前記ケイ酸化合物には、ケイ酸および/またはケイ酸塩が含まれていることを特徴とする。
第4発明の難燃剤は、第1、第2または第3発明において、前記炭酸塩には、炭酸カルシウムが含まれており、前記ケイ酸には、二酸化ケイ素が含まれており、前記ケイ酸塩には、ケイ酸カルシウムが含まれていることを特徴とする。
第5発明の難燃剤は、第1、第2、第3または第4発明において、前記難燃化合物が、ハロゲン化アンモニウム塩であることを特徴とする。
第6発明の難燃剤は、第5発明において、前記ハロゲン化アンモニウム塩には、臭化アンモニウムが含まれていることを特徴とする。
第7発明の難燃剤は、第1、第2、第3、第4、第5または第6発明において、金属水酸化物をさらに含むことを特徴とする。
第8発明の難燃剤は、第7発明において、前記金属水酸化物の含有量が、前記難燃化合物100重量部に対して、150〜280重量部となるように配合されていることを特徴とする。
第9発明の難燃剤は、第7または第8発明において、前記金属水酸化物には、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムの中から選ばれた1または2以上の金属水酸化物が含まれていることを特徴とする。
第10発明の難燃剤は、第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8または第9発明において、水性塗料をさらに含むことを特徴とする。
第11発明の難燃剤は、第10発明において、前記水性塗料の含有量が、前記難燃化合物100重量部に対して、50〜140重量部となるように配合されており、前記潮解防止剤の含有量が、前記難燃化合物100重量部に対して、0.5〜2.5重量部となるように配合されていることを特徴とする。
第12発明の難燃剤は、第9、第10または第11発明において、前記金属水酸化物が水酸化カルシウムであり、さらに酸化カルシウムを含むことを特徴とする。
しかも、この難燃剤を、可燃部材に塗布しても、難燃剤に含有した難燃性化合物が溶出するのを防止できるので、塗膜が剥離して剥がれ落ちや、ひび割れ等を防止できる。
さらに、この難燃剤を、例えば、既存の建物において、難燃性を付与していない可燃部材、難燃性を付与したが長期間経過した可燃部材、または従来の難燃剤を塗布、含浸等した可燃部材などに塗布するだけで、可燃部材に長期間優れた難燃性を付与できるので、既存の建物を火災や延焼等から保護できる。
第2〜4発明によれば、難燃剤に含まれる潮解防止剤の潮解防止機能を確実に発揮させることができる。
また、潮解防止剤にケイ酸化合物を含む場合、この難燃剤を可燃部材に塗布すれば、可燃部材の表面(基材表面)と塗膜との界面における密着性、つまり粘着力を向上させることができるので、塗膜の剥がれ落ちやひび割れなどの防止効果をさらに向上させることができる。
さらに、ケイ酸化合物は、熱を加えるとガラス化するので、火災が起きた場合には、難燃剤の塗膜表面にガラス系保護膜が形成される。したがって、難燃剤を塗布した可燃部材の難燃性効果をさらに向上させることができる。
また、潮解防止剤に炭酸塩を含む場合、炭酸塩は、熱分解により可燃阻害物質である二酸化炭素を生成するので、難燃剤を塗布した可燃部材の難燃性効果をさらに向上させることができる。
第5〜6発明によれば、難燃剤に含まれる難燃化合物のハロゲン化アンモニウム塩は、例えば、リン系難燃化合物などの難燃化合物に比べ、極めて優れた難燃性を有するので、極めて優れた難燃性を可燃部材に付与できる。
また、ハロゲン化アンモニウム塩はフェニル基等を有さないので、燃焼等しても、ダイオキシン類などの環境汚染物質が生成するのを防ぐことができる。
第7〜9発明によれば、金属水酸化物中のアルミニウム、カルシウム、マグネシウムは、金属触媒として、可燃部材に塗布したときに形成される塗膜表面に吸着等した物質を分解することができる。すると、この難燃剤を可燃部材に塗布しておけば、火災等のときに発生する人体に有害なガスを構成する物質の発生を抑制することができる。
しかも、難燃剤に含まれる金属水酸化物の割合を最適にすれば、この金属水酸化物の物質分解機能を確実に発揮させることができる。
また、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウムの金属水酸化物を加熱すれば水蒸気等の不燃性のガスを発生させることができる。この不燃性のガスは、難燃性の機能をも有するので、難燃剤を塗布した可燃部材の難燃性効果をさらに向上させることができる。
第10〜11発明によれば、難燃剤に水性塗料が含まれるので、水性塗料の色を顔料等で調整すれば、建物の内壁部材や外壁等の外装部材などに所望の色彩を付与することができる。
また、水性塗料に使用する溶媒は実質的に水であるので、揮発性有機化合物の発生がなく、取り扱いが容易である。このため、この難燃剤を使用しても健康上問題となる揮発性有機化合物を発生させないから、作業者等の安全性を向上させることができる。
しかも、難燃剤に含まれる水性塗料の割合を最適にすれば、この水性塗料の色調を保持しつつ、難燃性および潮解防止機能を確実に発揮させることができる。
第12発明によれば、難燃剤を金属製の部材に塗布することができる。
しかも、難燃剤に含有した潮解防止剤により、難燃性化合物が塗膜中から塗膜表面へ溶出するのを防止できるので、難燃化合物の溶出による塗膜が剥離する剥がれ落ちやひび割れ等を防止できる。
また、難燃剤は、既存の建物の可燃部材に塗布するだけで、可燃部材の難燃性を長期間保つことができる。例えば、既存の建物において、難燃性を付与していない可燃部材、難燃性を付与したが長期間経過した可燃部材や従来の難燃剤を塗布や含浸等した可燃部材などに本発明の難燃剤を塗布するだけで、可燃部材に長期間優れた難燃性を付与することができる。
さらに、可燃部材の表面上に形成された難燃剤の塗膜が略無色透明になるように調整すれば、この難燃剤を可燃部材に塗布しても、塗膜を通して基材となる可燃部材表面を見ることができる。すると、この可燃部材が内装用クロスであれば、内装用クロスの表地の柄等を生かしたまま、かかる内装用クロスに難燃性を付与することができる。また、この可燃部材が、無垢材であれば、その木目を生かしたまま難燃性を付与することができる。つまり、本発明の難燃剤は、既存の可燃部材の柄、木目等を生かしつつ、既存の可燃部材に難燃性を付与することができるのである。
よって、難燃剤における潮解防止剤の含有量は、難燃化合物100重量部に対して、0.5〜3.0重量部とするのが好ましく、とくに0.8〜2.5重量部とすれば、好適である。
(潮解防止剤)
本発明の難燃剤における潮解防止剤は、ケイ酸および/またはケイ酸塩を含むケイ酸化合物、炭酸塩の中から選ばれた1種または2種以上を含有する。
例えば、ケイ酸として、二酸化ケイ素を基本構成とする疎水性シリカ、親水性シリカ等が挙げられ、ケイ酸塩であれば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコン、ケイ酸カリ等を挙げることができる。
なお、ケイ酸塩として、ポリケイ酸塩のほかアルミノケイ酸塩等をも挙げることができる。
親水性シリカおよび/または疎水性シリカとしては、市販されているシリカを用いることができる。
例えば、親水性シリカとして、親水性レオロシール((株)トクヤマ社製、型番:QS−10、QS−20、QS−30、QS−40等)、親水性トクシール((株)トクヤマ社製、型番:トクシール(TOKUSIL)GU等)、ファインシール((株)トクヤマ社製、型番:FMグレード等)、親水性アエロジル(日本アエロジル社製、型番:90、130、150、200、OX−50等)などを挙げることができる。
また、例えば、疎水性シリカとして、シリカの表面のシラノール基をメチルトリクロロシラン等のメチル基等で置換した疎水性レオロシール((株)トクヤマ社製、型番:DM−10、DM−20、DM−30等)、疎水性アエロジル(日本アエロジル社製、型番:R972、R104、R202,R7200等)などを挙げることができる。
なお、上述したシリカの製造方法は、乾式法や湿式法が挙げられるが、とくに限定されない。
潮解防止剤を炭酸塩とすれば、熱分解により可燃阻害物質である二酸化炭素が生成するので、難燃剤を塗布した可燃部材の難燃性の効果をさらに向上させることができる。
例えば、炭酸塩として、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム等を挙げることができる。
本発明の難燃剤における難燃化合物には、ハロゲン系の塩素系化合物、ハロゲン系の臭素系化合物、リン系化合物、ホウ酸等のホウ素系化合物、グアニジン等の尿素系窒素化合物等を使用することができる。
例えば、塩素系化合物として、塩化アンモニウム、デクロラン等が挙げられ、臭素系化合物であれば、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、ペンタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモエタン、臭化アンモニウム等を挙げることができる。
また、例えば、リン系化合物として、リン酸水素二アンモニウム、リン酸エステル、リン酸二水素アンモニウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸グアニジン等を挙げることができる。
また、リン系難燃化合物などの難燃化合物に比べ、極めて優れた難燃性を有するので、極めて優れた難燃性を可燃部材に付与することができる。
しかも、ハロゲン化アンモニウム塩は、フェニル基はおろか、ポリブロモジフェニルエーテル(PBB)等のようなジフェニルエーテル骨格等すら有していないので、この難燃剤を燃焼等しても、ダイオキシン類(臭素化ダイオキシン等)などの環境汚染物質が生成する可能性がないという利点が得られる。
さらに、臭化アンモニウムは、難燃性を有する臭素系化合物のうち最も健康上安全な化合物とされているので、建物の内装部材等に難燃化合物として使用する場合に、好適である。
本発明の難燃剤が、金属水酸化物を含有すれば、金属水酸化物に含まれる金属イオンが有する金属触媒として機能を、難燃剤に付加することができる。すると、この難燃剤を可燃部材に塗布して塗膜を形成すれば、この塗膜表面に吸着等した物質を酸化または還元して分解することができる。
例えば、この難燃剤を可燃部材に塗布しておけば、火災等のときに発生する人体に有害なガス等を構成する物質を塗膜で吸着し分解することができるのである。
しかも、この難燃剤を内装部材に塗布しておけば、建物内の空気中に存在する健康上有害な物質、例えば、一酸化炭素、ホルムアルデヒド等のガスをも塗膜で吸着し分解することができる。
つまり、難燃剤が金属水酸化物を含有すれば、かかる難燃剤を塗布した可燃部材に有害物質を分解する触媒機能をも付与することができるのである。
また、金属水酸化物は、加熱すると水蒸気等の不燃性のガスを発生するので、かかる難燃剤を可燃部材に塗布すれば、この不燃性のガスによっても、可燃部材に難燃性を付与することができる。したがって、金属水酸化物を含有した難燃剤を、可燃部材に塗布すれば、可燃部材の難燃性効果をさらに向上させることができるのである。
よって、難燃剤における金属水酸化物の含有量は、難燃化合物100重量部に対して、150〜280重量部とするのが好ましく、とくに150〜230重量部とすれば、好適である。
例えば、水酸化インジウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニル、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化セリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。
例えば、水酸化カルシウム100重量部に対して、酸化カルシウムの含有量が、65〜250重量部となるように本発明の難燃剤を調整すれば、水酸化カルシウムの物質分解機能および可燃部材や金属製の部材または金属製の部材を有する可燃部材に塗布した際に形成された塗膜の強度をより長期間保つことができる。とくに、水酸化カルシウム100重量部に対する酸化カルシウムの含有量が、100〜250重量部とすることが、より好適である。
上述した難燃剤には、接着剤として、樹脂系接着剤、アルミナ系またはアルミナ・シリカ系等の無機系接着剤、デンプンを主成分とするデンプン系接着剤等を混合してもよい。
この難燃剤は、可燃部材に塗布して形成される塗膜中において、樹脂系接着剤等により上述した潮解防止剤を塗膜中に定着固定することができる。すると、潮解防止剤は、難燃化合物の潮解現象を防止するので、可燃部材に付与した難燃性効果をさらに向上させることができる。
なお、樹脂系接着剤の含有量が、難燃化合物100重量部に対して、5.0重量部より多くなれば、難燃剤中における樹脂系接着剤の分散性が悪くなりゲル状化等の問題が生じる。また、1.5重量部未満となれば、接着力が低下するといった問題が生じる。
よって、樹脂系接着剤の含有量が、難燃化合物100重量部に対して、1.5〜5.0重量部とするのが好ましく、とくに2.0〜4.0重量部とすれば、好適である。
難燃剤を、樹脂系接着剤、無機系接着剤またはデンプン系接着剤と混合すれば、難燃性接着剤としても使用できる。
この難燃性接着剤を、合板や建材等の接着に使用すれば、この難燃性接着剤に混合されている難燃化合物が、合板や建材等の木材繊維等に含浸するので、かかる合板や建材等自体に難燃性または不燃性を付与することができる。
この難燃性接着剤には、潮解防止剤が含まれているので、合板や建材等に含浸等した難燃性化合物が潮解現象を生じて溶出するということを防止できるから、合板や建材等に付与した難燃性または不燃性を長期間保つことができる。
さらに、この難燃性接着剤に金属水酸化物が含有されていれば、この金属イオンが触媒としても機能し、合板や建材等に吸着した物質が分解される。よって、かかる合板や建材等が建物内に使用されていれば、建物内に存在する一酸化炭素、ホルムアルデヒド等のガスを吸着し分解できるし、外装部材として使用されていれば、火災等の際に発生する有毒ガス等をも吸着し分解することができる。
また、この難燃性接着剤に水酸化カルシウムが含有されていれば、水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムを形成し、この炭酸カルシウムが難燃性接着剤中のケイ素等と合板や建材等の繊維等との間を架橋化する。すると、時間とともに難燃性接着剤の硬化が進行するので、かかる合板や建材等に水が浸み込んだとしても、強度低下を防ぐことができる。そして、いったん硬化した難燃性接着剤は、水等の影響を受けにくいので、かかる合板や建材等を接着した接着力を長期間保つことができる。
上述した難燃剤には、界面活性剤を混合してもよい。
この難燃剤は、可燃部材に塗布する際にピンホール等が生じるのを防止できる。例えば、基材となる可燃部材の表面上に、撥水性等を有する部位が存在する場合でも、界面活性剤により、可燃部材の表面上と、塗布した難燃剤との個体−液体界面において、界面張力を低下させることができる。すると、可燃部材に塗布した難燃剤により形成される塗膜にピンホール等が生じるのを防止できる。
なお、界面活性剤の含有量が、難燃化合物100重量部に対して、2.0重量部より多くなれば、難燃剤中における界面活性剤の分散性が悪くなりゲル状化等の問題が生じる。また、0.5重量部未満となれば、塗膜表面のピンホール等を防止する機能が低下するといった問題が生じる。
よって、界面活性剤の含有量は、難燃化合物100重量部に対して、0.5〜2.0重量部とするのが好ましく、とくに0.6〜1.0重量部とすれば、好適である。
本発明の難燃剤には、塗料を混合してもよい。
この難燃剤を、建物の内壁等の内装部材や外壁等の外装部材などの可燃部材に塗布等すれば、可燃部材に難燃性を付与し、かつ、所望の色彩をも付与することができるので、好適である。
なお、塗料の含有量が、難燃化合物100重量部に対して、140重量部より多くなれば、難燃剤の粘性が高くなるので、この難燃剤を可燃部材の表面上に塗布するとききれいに塗れなくなるといった問題が生じる。また、50重量部未満となれば、色調が薄くなり所望の色彩を可燃部材の表面上に付与することができないといった問題が生じる。
よって、塗料の含有量は、難燃化合物100重量部に対して、50〜140重量部とするのが好ましく、とくに50〜90重量部とすれば、好適である。
水溶性の塗料は、溶媒が水系であるので、揮発性有機化合物を溶媒とする油性の塗料に比べ、この難燃剤を使用等しても揮発性有機化合物の発生がないので、人の健康上問題とならないので、好適である。
また、水溶性の塗料は溶媒が実質的に水であるので、溶媒としての水が揮発等して、難燃剤における塗料濃度が高くなり、塗り性が悪くなった場合でも、容易に水等(例えば、上述した水酸化カルシウムを溶解した水酸化カルシウム水溶液)を追加して塗り性を回復させることができる。
つまり、水溶性の塗料は、周囲への環境影響および取り扱いという点で油性の塗料に比べて好ましいのである。
すると、かかる割合とすれば、可燃部材に色彩を付与できるほか、潮解防止機能、潮解防止剤等の塗膜中での定着固定機能および/または可燃部材表面上に形成する塗膜表面のピンホール等の防止機能を確実に発揮させることがきるので、好ましい。
よって、難燃剤における潮解防止剤の含有量は、難燃化合物100重量部に対して、0.5〜2.5重量部とするのが好ましく、とくに0.6〜1.9重量部、さらには0.7〜1.5重量部とすれば、好適である。
よって、樹脂系接着剤の含有量は、難燃化合物100重量部に対して、1.5〜5.0重量部とするのが好ましく、とくに1.8〜4.0重量部、さらには2.0〜4.0重量部とすれば、好適である。
よって、界面活性剤の含有量は、難燃化合物100重量部に対して、0.5〜1.5重量部とするのが好ましく、とくに0.5〜1.2重量部、さらには0.6〜0.9重量部とすれば、好適である。
例えば、水酸化カルシウム100重量部に対して、酸化カルシウムの含有量が、65〜250重量部となるように本発明の難燃剤を調整すれば、水酸化カルシウムの物質分解機能および可燃部材や金属製の部材または金属製の部材を有する可燃部材に塗布した際に形成された塗膜の強度をより長期間保つことができる。とくに、水酸化カルシウム100重量部に対する酸化カルシウムの含有量が、100〜250重量部とすることが、より好適である。
(塗布等の方法)
難燃剤は、上述したように可燃部材の表面上に塗布等して塗膜を形成することができる。難燃剤を塗布する方法としては、例えば、はけ塗り、ローラー塗り、吹付塗装、エアスプレー、ロールコーター、等を挙げることができる。また、浸漬塗り、加圧含浸法等といった方法により可燃部材の内部にも難燃剤を含浸させることもできる。
難燃剤の水溶液中の水素イオン濃度指数は、略中性(例えば、pH6〜8)となるように調整すれば、環境および健康の上において好ましい。
実験では、ベニヤ合板の一の面に、本発明の難燃剤を塗布して形成した塗膜を備えた難燃合板を作成して、以下の評価(1)〜(2)を実施した。
(1)潮解防止機能
(2)難燃性効果
難燃剤Aは、以下の内容物を含有するように調整した。
臭化アンモニウム(マナック(株)社製、型番:試薬一級)、疎水性レオロシール((株)トクヤマ社製、型番:DM-10)、水酸化カルシウム(北上石灰(株)社製、型番:食品添加物消石灰)、EVA樹脂系接着剤(コニシ(株)社製、型番:プレフィニッシュボンド)およびフッ素系界面活性剤((株)ネオス社製、型番:フタージェント150CH)を含むように調整した。
それぞれの含有量は、臭化アンモニウム100重量部に対して、疎水性レオロシールが1.5重量部、水酸化カルシウムが200重量部、EVA樹脂系接着剤が3.3重量部、そしてフッ素系界面活性剤が0.8重量部になるように混合し、水に溶解して難燃剤Aを調整した。
なお、難燃剤AのpHは、約pH7となるように調整した。
塗料を含有した難燃剤B(以下、単に難燃剤Bという)は、以下の内容物を含有するように調整した。
臭化アンモニウム(マナック(株)社製、型番:試薬一級)、疎水性レオロシール((株)トクヤマ社製、型番:DM-10)、EVA樹脂系接着剤(コニシ(株)社製、型番:プレフィニッシュボンド)、フッ素系界面活性剤((株)ネオス社製、型番:フタージェント150CH)およびアクリル性塗料(カンペハピオ(株)社製、型番:スーパーヒット)を含むように調整した。
それぞれの含有量は、臭化アンモニウム100重量部に対して、疎水性レオロシールが1.4重量部、EVA樹脂系接着剤が2.0重量部、フッ素系界面活性剤が0.6重量部、そしてアクリル性塗料が86重量部になるように混合し、水に溶解して塗料を含む難燃剤Bを調整した。
なお、難燃剤BのpHは、約pH7となるように調整した。
また、水酸化カルシウム(北上石灰(株)社製、型番:食品添加物消石灰)は、本難燃剤Bの粘性が合板に塗布し易い粘性になるように適量(臭化アンモニウム100重量部に対して、20重量部となるように)加えた。
対照剤Cは、以下の内容物を含有するように調整した。
臭化アンモニウム(マナック(株)社製、型番:試薬一級)、水酸化カルシウム(北上石灰(株)社製、型番:食品添加物消石灰)、EVA樹脂系接着剤(コニシ(株)社製、型番:プレフィニッシュボンド)およびフッ素系界面活性剤((株)ネオス社製、型番:フタージェント150CH)を含むように調整した。
それぞれの含有量は、臭化アンモニウム100重量部に対して、水酸化カルシウムが200重量部、EVA樹脂系接着剤が3.3重量部、そしてフッ素系界面活性剤が0.8重量部になるように混合し、水に溶解して対照剤Cを調整した。
なお、対照剤CのpHは、約pH7となるように調整した。
上記のごとく、対照剤Cは、難燃剤Aと比較すると、潮解防止剤としての疎水性レオロシールが含まれていないものである。
塗料を含有した対照剤D(以下、単に対照剤Dという)は、以下の内容物が含有するように調整した。
臭化アンモニウム(マナック(株)社製、型番:試薬一級)、EVA樹脂系接着剤(コニシ(株)社製、型番:プレフィニッシュボンド)、フッ素系界面活性剤((株)ネオス社製、型番:フタージェント150CH)およびアクリル性塗料(カンペハピオ(株)社製、型番:スーパーヒット)を含むように調整した。
それぞれの含有量は、臭化アンモニウム100重量部に対して、EVA樹脂系接着剤が2.0重量部、フッ素系界面活性剤が0.6重量部、そしてアクリル性塗料が86重量部になるように混合し、水に溶解して塗料を含む対照剤Dを調整した。
なお、対照剤DのpHは、約pH7となるように調整した。
また、水酸化カルシウム(北上石灰(株)社製、型番:食品添加物消石灰)は、本対照剤Dの粘性が合板に塗布し易い粘性になるように適量(臭化アンモニウム100重量部に対して、20重量部となるように)加えた。
上記のごとく、対照剤Dは、難燃剤Bと比較すると、潮解防止剤としての疎水性レオロシールが含まれていないものである。
本発明の難燃剤の有効性を確認するため、難燃合板および対照合板を以下のごとく作成した。
難燃剤A、難燃剤B、対照剤Cおよび対照剤Dは、それぞれ約100mm×70mmのベニヤ合板の一の面に、はけ塗りにより塗布して、難燃合板a、難燃合板b、対照合板cおよび対照合板dを作成した。
なお、各合板は、デシケータ内で24時間以上乾燥させた後、塗布面が乾燥していることを確認して実験に供した。
なお、一般的な火災の炎の温度は、約700〜800℃で燃え広がるので、難燃合板および対照合板の塗膜表面におけるブタンガストーチの炎の温度が約900℃になるように調整し、加熱した。
本発明の難燃剤が、潮解性を有する難燃化合物を含有していても、潮解防止剤によりその潮解現象を防止できることを確認した。
難燃合板a、難燃合板b、対照合板cおよび対照合板dを、湿度約80%(温度約23℃)の雰囲気となるように調整した恒温恒湿室内に、1日間静置した。
各合板は、恒温恒湿室内に1日間静置した後、その室内から取り出して、各合板のそれぞれの塗膜面を比較した。
その結果、難燃合板a、難燃合板bでは、難燃剤A、難燃剤Bをそれぞれ塗布した面は、恒温恒湿室内に入れる前と同じ状態であることを確認した。つまり、難燃化合物として難燃剤に含有した臭化アンモニウムによる潮解現象が生じないことを確認した。
つまり、本発明の難燃剤は、難燃剤にケイ酸化合物を所定の含有量となるように調整すれば、優れた難燃性を有する難燃化合物を含有し、かつ、その潮解現象を防止する潮解防止機能を備えていることが確認できた。
本発明の難燃剤が、合板に難燃性を付与することができることを確認した。
その結果、難燃合板aおよび難燃合板bは、灼熱を開始して5分くらいまでは、灼熱面温度が約900℃であるにもかかわらず、裏面には炎が到達していないことが確認された。このとき、各表面は、黒く劣化していくものの、裏面は実験開始状態と略同じ状態を保たれていた。
また、灼熱開始から10分間経過したときも、難燃剤Aまたは難燃剤Bを塗布した灼熱面が炎を上げて燃えないことを確認した。
つまり、本発明の難燃剤を合板に塗布することにより、合板に難燃性を付与することができたことを確認した。
よって、本発明の難燃剤を可燃性部材に塗布するだけで、難燃性および潮解防止機能を付与できることを確認できた。
実験では、酸化カルシウムと水酸化カルシウムの混合水溶液を調製し、調製した試験溶液に鉄製の釘を所定の期間浸漬させることによって評価した。
また、実験では、市販の鉄製の釘を使用した。
まず、酸化カルシウム65gを100gの水に溶解し、水酸化カルシウム70gを100gの水に溶解し、酸化カルシウム水溶液および水酸化カルシウム水溶性を調製した。各水溶液を静置した後、各水溶液の上澄み液から所定の量の水溶液を分取し、分取した各水溶液を一のビーカに加え混合し、試験溶液を調製した。なお、実験では、各水溶液の上澄み液のpHが、pH11以上となるように調製した。
試験溶液1は、水酸化カルシウム水溶液と酸化カルシウム水溶液が3対7となるように、各水溶液の上澄み液からそれぞれ水酸化カルシウム水溶液30ml、酸化カルシウム水溶液70mlを分取・混合し調製した。試験溶液2〜4も試験溶液1と同様に、試験溶液2では各水溶液が4対6、試験溶液3では各水溶液が5対5、試験溶液4では各水溶液が6対4、試験溶液5では各水溶液が7対3、となるようにそれぞれ調製した。
つまり、各試験溶液の酸化カルシウムの含有量が、試験溶液1では水酸化カルシウム100重量部に対して233.3重量部、試験溶液2では水酸化カルシウム100重量部に対して150重量部、試験溶液3では水酸化カルシウム100重量部に対して100重量部、試験溶液4では水酸化カルシウム100重量部に対して66.6重量部、試験溶液5では水酸化カルシウム100重量部に対して42.8重量部、となるように調製した。
試験溶液1〜5、ネガティブコントロールおよびポジティブコントロールに浸漬した釘を10日間経過した後、各溶液から取り出して釘の浸漬する前と後の状態を比較した。
その結果、試験溶液1〜4およびポジティブコントロールに浸漬した釘では、浸漬する前の状態を維持していた。一方、試験溶液5およびネガティブコントロールに浸漬した釘では、10日間浸漬した釘では表面全体が赤褐色を呈していた。とくに、ネガティブコントロールに浸漬した釘では、約2日目から釘の表面が赤褐色を呈するようになった。かかる現象は、ネガティブコントロールに浸漬した釘では、水溶液に接触する表面の鉄が酸化されることによって生じる酸化鉄が釘の表面に発生したものと推測される。
したがって、酸化カルシウムを添加することによって、鉄の酸化を防止または抑制することができたことを確認した。しかも、酸化カルシウムは、水酸化カルシウムと混合した水溶液であっても同様の機能を発揮させることができたことを確認した。かかる理由として、酸化カルシウムを水に溶解させた水溶液によって鉄の表面が被膜されるので、この被膜によって釘の表面の鉄と水溶液中の酸素等が接触するのを防止または抑制できたものと推測される。
したがって、難燃剤に酸化カルシウムを含有すれば、この難燃剤を金属製の部材または金属製の部材を有する可燃部材に塗布しても、可燃部材に難燃剤を塗布した場合と同等の効果を発揮させることが可能であることが示唆された。
Claims (12)
- 難燃性を有する難燃化合物と、
ケイ酸化合物および/または炭酸塩からなる潮解防止剤と、を含む
ことを特徴とする難燃剤。 - 前記潮解防止剤の含有量が、
前記難燃化合物100重量部に対して、0.5〜3.0重量部となるように配合されている
ことを特徴とする請求項1記載の難燃剤。 - 前記ケイ酸化合物には、
ケイ酸および/またはケイ酸塩が含まれている
ことを特徴とする請求項1または2記載の難燃剤。 - 前記炭酸塩には、
炭酸カルシウムが含まれており、
前記ケイ酸には、
二酸化ケイ素が含まれており、
前記ケイ酸塩には、
ケイ酸カルシウムが含まれている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の難燃剤。 - 前記難燃化合物が、
ハロゲン化アンモニウム塩である
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の難燃剤。 - 前記ハロゲン化アンモニウム塩には、
臭化アンモニウムが含まれている
ことを特徴とする請求項5記載の難燃剤。 - 金属水酸化物をさらに含む
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の難燃剤。 - 前記金属水酸化物の含有量が、
前記難燃化合物100重量部に対して、150〜280重量部となるように配合されている
ことを特徴とする請求項7記載の難燃剤。 - 前記金属水酸化物には、
水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムの中から選ばれた1または2以上の金属水酸化物が含まれている
ことを特徴とする請求項7または8記載の難燃剤。 - 水性塗料をさらに含む
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の難燃剤。 - 前記水性塗料の含有量が、
前記難燃化合物100重量部に対して、50〜140重量部となるように配合されており、
前記潮解防止剤の含有量が、
前記難燃化合物100重量部に対して、0.5〜2.5重量部となるように配合されている
ことを特徴とする請求項10記載の難燃剤。 - 前記金属水酸化物が水酸化カルシウムであり、
さらに酸化カルシウムを含む
ことを特徴とする請求項9、10または11記載の難燃剤。
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