JP2012158573A - ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物及びその用途 - Google Patents

ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた作用を有し、安全性、環境性、及び生産性に優れた、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物、並びに該ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有するEGF産生促進剤、FGF−2産生促進剤、フィブロネクチン産生促進剤、保湿機能改善剤、シワ形成抑制剤、バリア機能改善剤、及び飲食品の提供。
【解決手段】下記構造式(1)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有するヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物である。前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有するEGF産生促進剤、FGF−2産生促進剤、フィブロネクチン産生促進剤、保湿機能改善剤、シワ形成抑制剤、バリア機能改善剤などの態様が好ましい。

【選択図】なし

Description

本発明は、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物、並びに該ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有するEGF産生促進剤、FGF−2産生促進剤、フィブロネクチン産生促進剤、保湿機能改善剤、シワ形成抑制剤、バリア機能改善剤、及び飲食品に関する。
皮膚は、角層、表皮、基底膜、及び真皮から構成されている。角層の主要な機能は、バリア機能、すなわち、環境での乾燥に抵抗して角層内の水分を保持する機能、及び外界からの刺激物の角層を通しての進入を防ぐ機能である。角層保湿機能に関与している角層細胞間脂質は、その成分としてセラミドが約50%を占め、角層細胞間にラメラ構造を形成し、角層内の約15%の水分の保持に重要な役割を担っている(非特許文献1参照)。正常な皮膚においては、これら皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことによって、水分保持力、柔軟性、弾力性等が確保され、外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
ところが、紫外線、著しい空気の乾燥、過度の皮膚洗浄、ストレス、喫煙等の外的因子の影響を受けたり、加齢が進んだりすると、表皮細胞代謝が正常に行われずに停滞したり、細胞外マトリックスの結合が阻害されたり、細胞ストレスに対応してセラミド代謝のバランスが崩れたりする。その結果、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、表皮の肥厚乃至角化が起こり、シワ形成、きめの消失等の老化症状を呈し、バリア機能が損なわれるようになる。また、心理的ストレスや環境ストレスによっても、バリア機能の低下が引き起こされる。
上皮細胞増殖因子(EGF)は、TGF−βも含まれるEGFファミリーの1つであり、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に結合することにより、細胞の増殖や分化のコントロールにおいて重要な役割を果たす成長因子である。EGFがEGFRへ結合すると、タンパク質−チロシンキナーゼ活性を刺激し、活性化したチロシンキナーゼは、次にタンパク質合成増加とEGFR遺伝子を含む特定の遺伝子発現の増加を引き起こし、DNA合成と細胞増殖に導く。
線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)とも呼ばれ、成長因子ファミリーの1つであり、多種の作用を持つ多機能タンパク質であり、血管形成、傷治癒と胎児の発育に関係する成長因子であり、細胞の有糸分裂を促進する。
皮膚においては、これらの成長因子は、表皮細胞の細胞分裂(表皮細胞代謝や再生修復など)に働き、肌の保水量を保つと共に、シワの形成を抑え、皮膚のバリア機能を正常に保つと考えられる。
フィブロネクチン(Fibronectin)は、脊椎動物の細胞接着面や血漿などに存在する高分子量(〜440kDa)の細胞外マトリックス糖タンパク質であり、細胞の接着、成長及び分化に重要な役割を担うと考えられている。表皮細胞など細胞接着面においては、細胞外マトリックス成分(例えば、コラーゲン、フィブリン、ヘパラン硫酸プロテオグリカンなど)を結合させる機能を有する。
したがって、EGFの産生、FGF−2の産生及びフィブロネクチンの産生を促進することにより皮膚のバリア機能を維持又は改善することができ、シワの形成や表皮の肥厚を抑制することができると考えられる。そこで、EGF産生促進作用、FGF−2産生作用及びフィブロネクチン産生促進作用を有する物質を、安全性の高い天然物から入手することが望まれている。
これまでに、EGF産生促進作用を有し、皮膚のバリア機能を維持又は改善する作用を有するものとしては、例えば、アンジェリカ抽出物などが知られている(特許文献1参照)。
また、FGF−2を有効成分とする皮膚化粧料が知られている(特許文献2及び3参照)。
これまでに、フィブロネクチン産生促進作用を有し、皮膚のバリア機能を維持又は改善する作用を有するものとしては、例えば、ガラクトシルジグリセリド及びセラミドの配合物などが知られている(特許文献4参照)。
しかしながら、安全性、及び生産性に優れ日常的に摂取可能であり、かつ安価でありながら、優れたEGF産生促進作用、FGF−2産生促進作用、フィブロネクチン産生促進作用、保湿機能改善作用(経表皮水分蒸発抑制作用、表皮水分保持能改善作用、角質水分保持能改善作用)、シワ形成抑制作用、及びバリア機能改善作用の少なくともいずれかを有する天然系の各種製剤に対する需要者の要望は極めて強く、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
特開2008−266156号公報 特開平5−043442号公報 特表2009−512684号公報 特許第4604556号
機能性化粧品素材開発のための実験法−in vitro/細胞/組織培養−、2007年、監修:芋川 玄爾、発行:株式会社シーエムシー出版
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、安全性、及び生産性に優れ日常的に摂取可能であり、かつ安価でありながら、優れたEGF産生促進作用、FGF−2産生促進作用、フィブロネクチン産生促進作用、保湿機能改善作用、シワ形成抑制作用、及びバリア機能改善作用の少なくともいずれかを有するヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れたEGF産生促進作用を有し、安全性の高いEGF産生促進剤を提供することを目的とする。また、本発明は、優れたFGF−2産生促進作用を有し、安全性の高いFGF−2産生促進剤を提供することを目的とする。また、本発明は、優れたフィブロネクチン産生促進作用を有し、安全性の高いフィブロネクチン産生促進剤を提供することを目的とする。また、本発明は、優れた保湿機能改善作用を有し、安全性の高い保湿機能改善剤を提供することを目的とする。また、本発明は、優れたシワ形成抑制作用を有し、安全性の高いシワ形成抑制剤を提供することを目的とする。また、本発明は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有する飲食品を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、下記構造式(1)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有するヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物が、優れたEGF産生促進作用、FGF−2産生促進作用、フィブロネクチン産生促進作用、保湿機能改善作用(経表皮水分蒸発抑制作用、表皮水分保持能改善作用、角質水分保持能改善作用)、シワ形成抑制作用、及びバリア機能改善作用の少なくともいずれかを有し、EGF産生促進剤、FGF産生促進剤、フィブロネクチン産生促進剤、保湿機能改善剤、シワ形成抑制剤、バリア機能改善剤及び飲食品としての用途に適することを見出した。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記構造式(1)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有することを特徴とするヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物である。
<2> 下記構造式(2)〜(5)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体の少なくともいずれかを更に含有する前記<1>に記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物である。
<3> パイナップル可食部を溶媒により抽出することにより得られる前記<1>から<2>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物である。
<4> パイナップル可食部の圧搾後の残渣を溶媒により抽出することにより得られる前記<1>から<2>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物である。
<5> 溶媒が、70体積%〜100体積%エタノールである前記<3>から<4>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とするEGF産生促進剤である。
<7> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とするFGF−2産生促進剤である。
<8> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とするフィブロネクチン産生促進剤である。
<9> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とする保湿機能改善剤である。
<10> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とするシワ形成抑制剤である。
<11> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とするバリア機能改善剤である。
<12> 前記<1>から<5>のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とする飲食品である。
本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物によると、安全性、及び生産性に優れ日常的に摂取可能であり、かつ安価でありながら、優れたEGF産生促進作用、FGF−2産生促進作用、フィブロネクチン産生促進作用、保湿機能改善作用、シワ形成抑制作用、及びバリア機能改善作用の少なくともいずれかを有するヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を提供することができる。
本発明のEGF産生促進剤によると、従来における諸問題を解決することができ、優れたEGF産生促進作用を有し、安全性の高いEGF産生促進剤を提供することができる。
本発明のFGF−2産生促進剤によると、従来における諸問題を解決することができ、優れたFGF−2産生促進作用を有し、安全性の高いFGF−2産生促進剤を提供することができる。
本発明のフィブロネクチン産生促進剤によると、従来における諸問題を解決することができ、優れたフィブロネクチン産生促進作用を有し、安全性の高いフィブロネクチン産生促進剤を提供することができる。
本発明の保湿機能改善剤によると、従来における諸問題を解決することができ、優れた保湿機能改善作用を有し、安全性の高い保湿機能改善剤を提供することができる。
本発明のシワ形成抑制剤によると、従来における諸問題を解決することができ、優れたシワ形成抑制作用を有し、安全性の高いシワ形成抑制剤を提供することができる。
本発明の飲食品によると、従来における諸問題を解決することができ、安全性、及び生産性に優れ日常的に摂取可能であり、かつ安価でありながら、優れたEGF産生促進作用、FGF−2産生促進作用、フィブロネクチン産生促進作用、保湿機能改善作用、シワ形成抑制作用、及びバリア機能改善作用の少なくともいずれかを有するヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有する飲食品を提供することができる。
図1は、実施例の各群における飼料摂取量を示すグラフである。 図2は、実施例の各群における体重推移を示すグラフである。 図3は、実施例の各群における経表皮水分蒸発量(TEWL)を示すグラフである。 図4は、実施例の各群における皮膚水分含有量を示すグラフである。 図5は、実施例の各群における角層水分含有量を示すグラフである。 図6は、実施例の各群における背部皮膚のマイクロスコープ画像を示す図である。 図7は、実施例の各群における背部皮膚のデジタルカメラ画像を示す図である。 図8は、実施例の各群における背部皮膚のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色像を示す図である。
(ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物)
本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物は、ヒドロキシ脂肪酸誘導体として、下記構造式(1)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体を主成分として含有してなり、必要に応じて更にその他の成分を含有する。本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物は、下記構造式(2)〜(5)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体の少なくともいずれかを更に含有することが好ましい。
前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物は、パイナップル可食部を溶媒により抽出することにより得られることが好ましく、パイナップル可食部の圧搾後の残渣を溶媒により抽出することにより得られることがより好ましい。
<ヒドロキシ脂肪酸誘導体>
前記構造式(1)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体は、グルコシル基と、脂肪酸として炭素数20の直鎖α−ヒドロキシ酸と、スフィンゴイド塩基としてスフィンゴシン(2−アミノ−4−オクタデセン−1,3−ジオール)の8位が2重結合となった2−アミノ−4,8−オクタデシジエン−1,3−ジオールからなる、化学式C4483NOのヒドロキシ脂肪酸誘導体である。
前記構造式(2)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体は、グルコシル基と、脂肪酸として炭素数18の直鎖α−ヒドロキシ酸と、スフィンゴイド塩基として2−アミノ−8−オクタデシジエン−1,3−ジオールからなる、化学式C4479NOのヒドロキシ脂肪酸誘導体である。
前記構造式(3)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体は、グルコシル基と、脂肪酸として炭素数24の直鎖α−ヒドロキシ酸と、スフィンゴイド塩基として2−アミノ−4−オクタデセン−1,3,4−トリオールからなる、化学式C4995NO10のヒドロキシ脂肪酸誘導体である。
前記構造式(4)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体は、グルコシル基と、脂肪酸として炭素数25の直鎖α−ヒドロキシ酸と、スフィンゴイド塩基として2−アミノ−4−オクタデセン−1,3,4−トリオールからなる、化学式C5097NO10のヒドロキシ脂肪酸誘導体である。
前記構造式(5)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体は、グルコシル基と、脂肪酸として炭素数26の直鎖α−ヒドロキシ酸と、スフィンゴイド塩基として2−アミノ−4−オクタデセン−1,3,4−トリオールからなる、化学式C5199NO10のヒドロキシ脂肪酸誘導体である。
−ヒドロキシ脂肪酸誘導体の同定方法−
前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体の同定方法としては、特に制限はなく、常法により行うことができる。例えば、TCL分析により、単糖をもった糖脂質であるモノヘキソシルセラミド(CMH)の分子骨格を有することを確認し、次いで、MALDI−TOFMS分析などの質量分析によって測定した分子量と、先の分子骨格情報から、分子構造を推定する。続いて、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体を加水分解することにより、構成単位であるグルコシル基と、脂肪酸と、スフィンゴイド塩基とに分解し、脂肪酸部分及びスフィンゴイド塩基部分についてそれぞれ構造解析を行い、推定した分子構造情報と併せて、ヒドロキシ脂肪酸誘導体の分子構造を決定することができる。
脂肪酸部分及びスフィンゴイド塩基部分の同定方法としては、GC−MS分析などの質量分析により行うことができる。
−パイナップル−
パイナップル(Pinapple)は、パイナップル科アナナス属に属する多年生の植物で、学名:Ananas comosus(L.)Merr.乃至Ananas sativus Schultであり、中国では鳳梨とも呼ばれている。果実は大角形で多肉、黄色く熟し芳香を放ち、食用として用いられる。パイナップルの産地は、米国、フィリピン、マレーシア、ブラジル、オースラリアなどを主としているが、本発明に用いられる抽出物を得るにあたっては、その種類や産地は特に限定されない。
前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の抽出原料としては、果肉、果芯部(芯)などのパイナップル可食部であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、パイナップル可食部の圧搾後の残渣、即ち、パイナップル果汁を採取した後に残留した繊維質(パイナップルパルプ)が特に好ましい。
前記抽出原料は、採取後、洗浄して乾燥し、粉砕したものを用いることが好ましい。ここで、乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を使用して行ってもよい。
前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物は、前記パイナップル可食部を、前記溶媒に投入し、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で任意の装置を用いて抽出することにより容易に得ることができる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール;ヘキサン;低級脂肪族アルコール、低級脂肪族ケトン、多価アルコールなどの親水性有機溶媒と水との混合溶媒などが挙げられる。これらの中でも、親水性有機溶媒と水との混合溶媒が好ましい。前記親水性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メタノール、エタノール、プロパノール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールなどが好ましく、エタノールがより好ましい。
水と親水性有機溶媒との混合溶媒において、前記親水性有機溶媒として低級アルコールを用いる場合、前記低級脂肪族アルコールの前記混合溶媒における含有量としては、10体積%〜100体積%が好ましく、70体積%〜100体積%がより好ましく、90体積%が特に好ましい。前記親水性有機溶媒として低級脂肪族ケトンを用いる場合、前記低級脂肪族ケトンの前記混合溶媒における含有量としては、10体積%〜80体積%が好ましい。前記親水性有機溶媒として多価アルコールを用いる場合、前記多価アルコールの前記混合溶媒における含有量としては、10体積%〜90体積%が好ましい。
前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の抽出方法としては、前記パイナップル可食部に含まれる脂溶性成分を前記溶媒に溶出させることが可能であれば、特に限定されるものではなく、常法に従って行うことができる。また、抽出処理の際には、特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温乃至還流加熱下において任意の装置を使用することができる。
具体的には、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の抽出方法としては、例えば、エタノール水溶液などの前記溶媒を満たした処理槽に、パイナップル可食部を圧搾した後の残渣(パイナップルパルプ)などの前記抽出原料を投入し、必要に応じて適宜攪拌しながら、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過して脂溶性成分を溶出した後、エバポレーターを用いて減圧下で濃縮し、さらに同様の濾過処理を行い、目的とするヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を得る方法が挙げられる。
この際、抽出条件は、前記抽出原料などに応じて適宜調整し得るが、前記抽出溶媒量は、前記抽出原料としてのパイナップル可食部に対して5倍量〜20倍量(質量比)が好ましく、抽出時間は1時間〜3時間が好ましく、抽出温度は20℃〜95℃が好ましい。
なお、得られた前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の希釈物、濃縮物、乾燥物、粗精製物、精製物などを得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製などの処理を施してもよい。
また、得られた前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物は、そのままでも後述するEGF産生促進剤、FGF−2産生促進剤、フィブロネクチン産生促進剤、保湿機能改善剤、シワ形成抑制剤、及びバリア機能改善剤のいずれかとして使用することができるが、利用しやすい点で、前記濃縮液、前記乾燥物が好ましい。前記乾燥物を得るに当たって、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリンなどのキャリアーを加えてもよい。
(EGF産生促進剤、FGF−2産生促進剤、フィブロネクチン産生促進剤、保湿機能改善剤、シワ形成抑制剤、バリア機能改善剤)
本発明のEGF産生促進剤は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明のFGF−2産生促進剤は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明のフィブロネクチン産生促進剤は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明の保湿機能改善剤は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明のシワ形成抑制剤は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明のバリア機能改善剤は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明のEGF産生促進剤は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物のみからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。前記EGF産生促進剤中の前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のFGF−2産生促進剤は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物のみからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。前記FGF−2産生促進剤中の前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のフィブロネクチン産生促進剤は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物のみからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。前記フィブロネクチン産生促進剤中の前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の保湿機能改善剤は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物のみからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。前記保湿機能改善剤中の前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のシワ形成抑制剤は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物のみからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。前記シワ形成抑制剤中の前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のバリア機能改善剤は、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物のみからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。前記バリア機能改善剤中の前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<その他の成分>
前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物は、デキストリン、シクロデキストリンなどの薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状などの任意の剤形に製剤化して提供することができ、他の組成物(例えば、経口医薬品等)に配合して使用できる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味剤、矯臭剤などを用いることができる。
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸などが挙げられる。また、前記結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられ、前記崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖などが挙げられ、前記滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、前記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられ、前記矯味剤乃至矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。
なお、本発明のEGF産生促進剤、FGF−2産生促進剤、フィブロネクチン産生促進剤、保湿機能改善剤、シワ形成抑制剤、及びバリア機能改善剤は、必要に応じてEGF産生促進作用、FGF−2産生促進作用、フィブロネクチン産生促進作用、保湿機能改善作用、シワ形成抑制作用、及びバリア機能改善作用のいずれかを有する他の天然抽出物などを共に配合して用いることができる。
前記EGF産生促進剤は、有効成分として含有される前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の作用により、EGF産生促進作用を発揮する。
前記FGF−2産生促進剤は、有効成分として含有される前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の作用により、FGF−2産生促進作用を発揮する。
前記フィブロネクチン産生促進剤は、有効成分として含有される前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の作用により、フィブロネクチン産生促進作用を発揮する。
前記保湿機能改善剤は、有効成分として含有される前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の作用により、保湿機能改善作用を発揮する。ここで、前記保湿機能改善作用とは、経表皮水分蒸発抑制作用、表皮水分保持能改善作用、及び角質水分保持能改善作用の少なくともいずれかを指す。
前記シワ形成抑制剤は、有効成分として含有される前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の作用により、シワ形成抑制作用を発揮する。
前記バリア機能改善剤は、有効成分として含有される前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の作用により、バリア機能改善作用を発揮する。ここで、前記バリア機能改善作用とは、保湿機能改善作用、及びシワ形成抑制作用の少なくともいずれかを指す。
本発明のEGF産生促進剤によると、優れたEGF産生促進作用を通じて、例えば、細胞増殖を促進し、肌機能を維持することが可能となる。ただし、本発明のEGF産生促進剤は、これらの用途以外にもEGF産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本発明のFGF−2産生促進剤によると、優れたFGF−2産生促進作用を通じて、例えば、表皮細胞の細胞分裂乃至成長を促進し、シワの形成及び皮膚バリア機能の低下を予防及び改善することが可能となる。ただし、本発明のFGF−2産生促進剤は、これらの用途以外にもFGF−2産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本発明のフィブロネクチン産生促進剤によると、優れたフィブロネクチン産生促進作用を通じて、例えば、細胞の接着乃至成長及び分化を促進し、肌機能の低下を予防及び改善することが可能となる。ただし、本発明のフィブロネクチン産生促進剤は、これらの用途以外にもフィブロネクチン産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本発明の保湿機能改善剤によると、優れた保湿機能改善作用を通じて、例えば、肌の保湿機能の低下を予防及び改善することが可能となる。ただし、本発明の保湿機能改善剤は、これらの用途以外にも保湿機能改善作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本発明のシワ形成抑制剤によると、優れたシワ形成抑制作用を通じて、例えば、肌におけるシワの形成を予防及び改善することが可能となる。ただし、本発明のシワ形成抑制剤は、これらの用途以外にもシワ形成抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本発明のバリア機能改善剤によると、優れたバリア機能改善作用を通じて、例えば、肌のバリア機能の低下を予防及び改善することが可能となる。ただし、本発明のバリア機能改善剤は、これらの用途以外にもバリア機能改善作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
本発明のEGF産生促進剤、FGF−2産生促進剤、フィブロネクチン産生促進剤、保湿機能改善剤、シワ形成抑制剤、及びバリア機能改善剤は、優れた作用を有するとともに、食用とされるパイナップルから得られたヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物であり、安全性に優れているため、飲食品に配合するのに好適である。
また、本発明のEGF産生促進剤、FGF−2産生促進剤、フィブロネクチン産生促進剤、保湿機能改善剤、シワ形成抑制剤、及びバリア機能改善剤は、優れた作用を有するので、EGF、FGF−2、フィブロネクチン、保湿機能、シワ形成、及びバリア機能の研究や、EGF、FGF−2、フィブロネクチン、保湿機能、シワ形成、及びバリア機能に関連する機能乃至疾患の研究のための試薬として好適に利用できる。
なお、本発明のEGF産生促進剤、FGF−2産生促進剤、フィブロネクチン産生促進剤、保湿機能改善剤、シワ形成抑制剤、及びバリア機能改善剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
(飲食品)
本発明の飲食品は、本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物、並びにEGF産生促進剤、FGF−2産生促進剤、フィブロネクチン産生促進剤、保湿機能改善剤、シワ形成抑制剤、及びバリア機能改善剤の少なくともいずれかを配合してなり、更に必要に応じてその他の成分を配合してなる。
前記飲食品とは、人の健康に危害を加える恐れが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、美容用食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
また、本発明の飲食品は、飲料、ハードカプセル、ソフトカプセル、顆粒などの形状に形態に加工することにより簡便に飲食でき、広範囲に利用することが可能である。
前記飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これら飲料の濃縮液及び調整用粉末を含む。);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;サラダ、漬物等の惣菜;種々の形態の健康・美容・栄養補助食品;錠剤、顆粒剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。なお、前記飲食品は上記例示に限定されるものではない。
本発明のEGF産生促進剤、FGF−2産生促進剤、フィブロネクチン産生促進剤保湿機能改善剤、シワ形成抑制剤、及びバリア機能改善剤の前記飲食品に対する添加量としては、添加する飲食品に応じて異なり一概には規定できないが、錠剤、カプセル剤などの場合は、1質量%〜90質量%が好ましく、その他の飲食品では、0.001質量%〜50質量%が好ましい。また、添加対象飲食品の一般的摂取量を考慮して、成人一日当たりの前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の摂取量が約1mg〜1,000mg程度になるように調製することが好ましい。
前記その他の成分としては、前記飲食品を製造するに当り通常用いられる補助的原料、添加物などが挙げられる。
前記補助的原料乃至添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
本発明の飲食品は、日常的に経口摂取することが可能であり、有効成分である前記パイナップル抽出物の働きによって、フィブロネクチン産生促進作用、EGF産生促進作用、FGF−2産生促進作用、シワ形成抑制作用、及びバリア機能改善作用の少なくともいずれかを極めて効果的に達成することができる。
なお、本発明の飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
以下、製造例及び試験例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
(製造例1:ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物の製造)
パイナップル可食部の圧搾後の残渣(パイナップルパルプ)、100gを90体積%エタノール1,000mlに加え、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過した。その後、エバポレーターを用いて減圧下で濃縮し、さらに同様の濾過処理を行った。得られた残渣について500mlの水で洗浄し、ペースト状のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物1.5gを得た。抽出物の収率は、1.5(質量%)であった。
得られたヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物について、以下の通り成分分析を行った。
−ヒドロキシ脂肪酸誘導体の測定−
前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有乾燥物100mgをエタノール1mLに溶解したものを被験試料として用い、市販のスフィンゴ糖脂質標準品エタノール溶液(0.25mg/mL、0.5mg/mL、1、2mg/mL、5mg/mL)とともにシリカゲル薄層クロマトグラフィープレートにアプライし、クロロホルム:メタノール混合溶液(9:1、体積比)で展開した。展開後、硫酸を噴霧し、加熱を行い、スフィンゴ糖脂質標準品と同じRf値となるスポットをスフィンゴ糖脂質のスポットとした。薄層クロマトグラフィーの発色強度を、デンシトメーター(島津製作所製 CS−9300PC)により測定し、得られた標準品の発色強度に基づいて検量線を作成し、試料の発色強度よりスフィンゴ糖脂質量を求めた。測定の結果、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物は、3.9質量%のヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有することがわかった。
−ヒドロキシ脂肪酸誘導体の同定−
下記の手順により、得られたヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物に含まれるヒドロキシ脂肪酸誘導体を同定した。
<1.TLC分析による分子骨格の推定>
下記のTLC分析条件において、下記標準試料と共に被験試料を展開した結果、被験試料が単糖をもった糖脂質であるモノヘキソシルセラミド(CMH)を含むと推定された。
[TLC分析条件]
プレート:HPTLC silica gel 60(Merck社製)
使用直前に120℃、30分間の活性化を行う
展開溶媒:クロロホルム:メタノール:水=65:25:4(体積比)
発色: オルシノール硫酸試薬
標準試料:モノヘキソシルセラミド(CMH)及びステリルグリコシド
<2.MALDI−TOFMS分析による分子構造の推定>
マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization−Time of Flight Mass Spectrometry;MALDI−TOFMS)により、以下の手順で、得られたヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物に含まれるヒドロキシ脂肪酸誘導体の分子構造を推定した。
マトリックス(試料分子イオン化補助剤)としての2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を、10体積%エタノール水溶液で10mg/mlの濃度に調製した溶液をマトリックス溶液として用いた。次いで、被験試料を1mg/ml濃度となるようにクロロホルム:メタノール=1:1(体積比)溶液に溶解して糖脂質溶液を調製し、該糖脂質溶液0.2μlとマトリックス溶液1.0μlとをサンプルプレート上で混合した後、風乾して結晶化させた。このサンプルプレートをMALDI−TOFMS分析装置であるVoyager DE−STR(Applied Biosystems)にセットし、質量分析を行った。
その結果、C4483NOの分子式を持つ下記構造式(1)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体を主成分とし、該ヒドロキシ脂肪酸誘導体とは脂肪酸部分及びスフィンゴイド塩基部分が異なる下記構造式(2)〜(5)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体を含む混合物であると推定された。
<3.GC−MS分析による脂肪酸部分の構造同定>
ガス・クロマトグラフを直結した質量分析計(Gas Chromatography−Mass Spectrometer;GC−MS)により、以下の手順で、脂肪酸部分の構造同定を行った。
被験試料中の糖脂質100μg〜200μg当たり2.5体積%無水塩酸メタノール0.3mlを加えて80℃で12時間加水分解した(メタノリシス)。反応液に等量のヘキサンを加え、生成した脂肪酸メチルエステルをヘキサンで抽出した。ヘキサン抽出を3回繰り返し、得られたヘキサン層を一度窒素気流下で乾固した後、残渣にトリメチルシリル(TMS)化試薬(ピリジン:1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS):トリメチルクロロシラン(TMCS)=1:1.3:0.8、体積比)200μlを加え、60℃で10分間加熱した。反応液を遠心分離し、得られた上清0.2μlをGC−MSにて分析した。GC−MS分析のカラムには、J&W Scientific社のDB−5M(0.25mm×30m)を用い、カラム温度は試料注入後、最初の1分間は60℃に保ち、その後、毎分8℃で300℃まで昇温させ、300℃で9分間保つ条件で行った。
GC−MSによる脂肪酸部分解析の結果、主成分のヒドロキシ脂肪酸誘導体を構成する脂肪酸部分が、炭素数20の直鎖α−ヒドロキシ酸であることが同定できた。また、被験試料に由来する脂肪酸部分としては、炭素数がそれぞれ18、19、20、21、22、23、24、25、26の直鎖α−ヒドロキシ酸が同定できた。
<4.GC−MS分析によるスフィンゴイド塩基部分の構造同定>
被験試料中の糖脂質200μg当たり水性塩酸メタノール(濃塩酸8.6ml、水0.4ml、メタノール41.0mlを混合して調製)0.3mlを加えて75℃で16時間加水分解した。反応液に等量のヘキサンを加え、脂肪酸メチルエステルをヘキサンで抽出除去した。酸性メタノール層を窒素気流下で乾固した後、0.1N水酸化ナトリウム溶液0.6mlとメタノール1.0mlを加え、次いでクロロホルム2.0mlを加えて混合し、遠心分離して上層を除去した。下層のクロロホルム層をFolchの上層(クロロホルム:メタノール:水=1:50:49、体積比)で2回洗浄した。得られたクロロホルム層を窒素気流下で乾固した後、残渣にTMS化試薬(ピリジン:HMDS:TMCS=1:1.3:0.8、体積比)100μlを加え、60℃で10分間加熱した。反応液を遠心分離し、得られた上清0.2μlをGC−MSにて分析した。GC−MSの分析は、脂肪酸分析と同じ条件で行った。
GC−MSによるスフィンゴイド塩基部分解析の結果、主成分のヒドロキシ脂肪酸誘導体を構成するスフィンゴイド塩基部分が、2−アミノ−4,8−オクタデシジエン−1,3−ジオールであることが同定できた。また、被験試料に由来するスフィンゴイド塩基部分としては、2−アミノ−4,8−オクタデシジエン−1,3−ジオール及び2−アミノ−4−オクタデセン−1,3,4−トリオールが同定できた。
<5.ヒドロキシ脂肪酸誘導体の同定>
以上の分析結果から、上記MALDI−TOFMS分析で推定した通り、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物に含まれるヒドロキシ脂肪酸誘導体の主成分は、グルコシル基と、脂肪酸として炭素数20の直鎖α−ヒドロキシ酸と、スフィンゴイド塩基として2−アミノ−4,8−オクタデシジエン−1,3−ジオールからなる、化学式C4483NOの前記構造式(1)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体であることが確認できた。また、前記ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物は、前記構造式(1)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体を主成分として、更にその脂肪酸部分の炭素数及びスフィンゴイド塩基が異なる前記構造式(2)〜(5)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体を含む混合物であることが確認できた。
(実施例:バリア機能関連評価)
上記の製造例1において得られたヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を被験試料として用い、以下の試験例1〜7に示すとおり、乾燥肌モデルマウスを用い、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物に関するバリア機能に関連する評価を行った。
−試験材料及び方法−
<1.被験物質>
被験物質として、パイナップル可食部由来のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物(ヒドロキシ脂肪酸誘導体の含有量:3.9質量%)とした。以下の試験例1〜7では、ヒドロキシ脂肪酸誘導体として0.01質量%及び0.1質量%の割合で配合した混餌食を調製し自由摂取にて摂取させた。
<2.試験動物>
4週齢の雄性ヘアレスマウス(Hos:HR−1、清水実験材料株式会社、京都市)を購入し、十分検疫馴化した後に一般状態の観察及び体重測定を行い、健康状態が良好な動物を選んで5週齢で使用した。
<3.飼育条件>
動物は温度:23±3℃、湿度:55±15%、換気:常時オールフレッシュ方式、照明12時間/日(午前6時より午後6時)に設定し、プラスチック製飼育ケージに4匹ずつ収容した。
<4.飼料及び飲料水>
通常飼料対照群については、実験動物用粉末飼料ラボMRストック(日本農産工業株式会社)、また特殊飼料対照群には、低ミネラル食であるHR−AD飼料(日本農産工業株式会社)を用いた。各飼料のミネラル含量について下記表1に示した。また、飲料水は福山市水道水を自動給水装置でいずれも自由摂取させた。
なお、HR−AD飼料が、乾燥肌を引き起こす乾燥肌モデルマウス用の飼料として用いられることは周知である(Fujii et al.,J.Pharmacol.Sci.vol.104,pp243−251,2007;Fujii et al.,Eur.J.Pharmacol.vol.530,pp152−156,2006)。
<5.群構成及び投与量>
下記表2に示す4群構成とした。
<6.方法>
5週齢のへアレスマウスを各群に割り付けた後、通常飼料、特殊飼料あるいは被験物質混餌特殊飼料を自由摂取させた。なお、摂餌量は毎日1回、体重は毎週1回記録した。摂取開始後、背部皮膚の経表皮水分蒸散量(TEWL)及び皮膚水分量(表皮水分量及び角層水分量)を無麻酔拘束下で毎週測定した。測定最終日には、さらに皮膚の状態をデジタルカメラ及びマイクロスコープを用いて撮影した後、ペントバルビタール麻酔下で採血を行い肝臓、脾臓を摘出した。また、背部皮膚については摘出後ホルマリン固定を行い、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色による組織学的な検討を行った。また、4週間の飼育後、これらの乾燥肌モデルマウスの背部皮膚を摘出してtotalRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ解析を行った。
<7.統計処理>
被験物質の有効性の検討は、通常飼料群と特殊飼料群間において分散分析を行い、バリア機能崩壊モデルの検討を行った。有意差があった場合、特殊飼料群とパイナップル由来ヒドロキシ脂肪酸誘導体配合群間でBonfferoni/Dunnの多重比較検定を行い、この時p値が0.05未満であれば「有意である」と判定した。
(試験例1:各群における飼料摂餌量及び被験物質の体重に対する作用)
試験期間中における飼料摂餌量を図1及び下記表3に示した。通常飼料群と特殊飼料群間において摂餌量に差が見られたが、特殊飼料群間とパイナップル由来ヒドロキシ脂肪酸誘導体配合群間においては目立った差は確認されなかった。パイナップル由来ヒドロキシ脂肪酸誘導体による摂餌量への影響は無いと考えられた。
被験物質の体重に及ぼす影響を図2に示した。いずれの群も順調な体重増加が確認された。
(試験例2:経表皮水分蒸散量の評価)
TEWAMETER(登録商標)(Courage+Khazaka electronic社製)を用いて経表皮水分蒸散量を計測した結果を、図3及び表4に示した。皮膚バリア機能の指標となる経表皮水分蒸散量(TEWL)は、特殊飼料群において徐々に上昇し、2週間目以降、通常飼料群との有意差が観察された。よって、特殊飼料群においてバリア機能が悪化したことが分かった。一方、パイナップル由来ヒドロキシ脂肪酸誘導体配合群においては4週間後においてもその上昇は抑制され、バリア機能の悪化は確認されなかった。
(試験例3:表皮水分量の評価)
CORNEOMETER(登録商標)(Courage+Khazaka electronic社製)を用いて表皮水分量を計測した結果を、図4及び表5に示した。表皮水分量は、2週間後から特殊飼料摂取により低下が確認された。このとき、パイナップル由来ヒドロキシ脂肪酸誘導体配合群においてはこの低下を抑制し、いずれも有意な作用が確認された。
(試験例4:角層水分量の評価)
SKICON−200EX(アイ・ビイ・エス株式会社製)を用いて、摂取開始4週間後における角層水分量を計測した結果を、図5及び表6に示した。角層水分量は、特殊飼料摂取により有意に低下が確認された。このとき、パイナップル由来ヒドロキシ脂肪酸誘導体配合群においてはこの低下を抑制し、いずれも有意な作用が確認された。
(試験例5:背部皮膚写真の比較(肉眼的所見))
摂取開始4週間後における背部皮膚のマイクロスコープ画像及びデジタルカメラ画像を図6及び図7にそれぞれ示した。特殊飼料群ではシワが認められたのに対し、パイナップル由来ヒドロキシ脂肪酸誘導体配合群においては、共に通常飼料群と同様の皮膚の肉眼的所見を示し、シワの形成は確認されなかった。
(試験例6:組織学的解析)
4週間後における背部皮膚のHE染色画像(代表例)を図8にそれぞれ示した。特殊飼料群では、表皮及び角層の肥厚の亢進が見られたのに対し、パイナップル由来ヒドロキシ脂肪酸誘導体配合群では、表皮及び角層の肥厚の亢進は確認されず、通常飼料群と同様の所見を示した。
パイナップル可食部由来ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物(ヒドロキシ脂肪酸誘導体3.9%含有)のバリア機能崩壊に対する抑制作用について、低ミネラル飼育飼料のヘアレスマウスを用いて検討を行った。4週間の投与において通常飼料群と比較して特殊飼料群ではTEWL値が徐々に上昇し、バリア機能の崩壊が生じるとともに、表皮水分量(CORNEOMETER)及び角層水分量(SKICON−200EX)も徐々に低下することが確認された。肉眼的には深いシワの形成が認められ、組織学的所見では表皮の肥厚、角化の亢進が確認された。
パイナップル可食部由来ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物には、特殊飼料により誘発されるバリア機能の崩壊に対し抑制する効果が確認された。すなわち、ヒドロキシ脂肪酸誘導体0.01%配合群及び0.1%配合群では、摂取開始2週間目以降引き起こされるTEWL値の上昇を完全に抑制した。また、低下する表皮水分量、角層水分量についても有意に抑制し、皮膚の保湿機能を維持していた。肉眼的にも深いシワの形成は抑制され、組織学的な検討においても、いずれの群とも表皮の肥厚や角化の亢進は確認されず、通常飼料群と同様の所見であった。
以上の結果より、パイナップル可食部由来ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物は、皮膚のバリア機能の維持・改善に有効であることが示唆された。また、本試験で用いたバリア機能崩壊モデルはアトピー性皮膚炎モデルとしても利用されることから、抗アトピー効果も期待される。
(試験例7:DNAマイクロアレイ解析)
パイナップル可食部由来ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を、乾燥肌モデルマウスに経口投与し、皮膚のバリア機能に対する影響を、DNAマイクロアレイ解析を用いた遺伝子発現の網羅的解析により検討した。
まず、上述の通り、4週間飼育後の乾燥肌モデルマウスの背部皮膚を摘出した。
次いで、皮膚組織からTRIzol reagent(インビトロジェン)によりtotalRNAを抽出し、Whole mouse GenomeオリゴDNAマイクロアレイキット(4×44K)(アジレントテクノロジー)の1color法プロトコールに従い、遺伝子発現の網羅的解析を行った。すなわち、各マウスから抽出したtotalRNAを群ごとに等量ずつ混合し、MMLV−Reverse TranscriptaseとOligo dT−Promoter primerにより、1st strand cDNAを合成すると共に、T7 promoter primerをアニーリングさせた2nd strand cDNAの合成を行った。続いて、T7 promoter primerとCyanine 3−CTP(Cy−3)を用い、Cy−3ラベル化cRNAを合成した。Cy−3ラベル化cRNAは、RNeasyスピンカラム(QIAGEN)で精製後、Nano Drop ND−2000(Thermo Fisher Scientific)で濃度を測定すると共に、Agilent2100バイオアナライザ(アジレントテクノロジー)で質のチェックを行った。精製したCy−3ラベル化cRNAをフラグメント化し、マイクロアレイへ、65℃、17時間ハイブリダイズした。洗浄後、DNAマイクロアレイスキャナシステム(アジレントテクノロジー)でスキャニングし、画像をFeature Extraction Ver9.5sソフトウェアにより解析したデータから、遺伝子の数値化と解析を行った。
データ(45,209スポット)を、パーチップノーマライゼーション処理し、各群のデータを標準化した。次に、コントロールスポット、スポット形態異常、低発現スポット(near background)など18,371スポットを除いた。検出された26,838スポットのうち、重複するものを除いた後、0.01%配合群と、0.1%配合群の両方において、通常飼料群に比べて2倍以上発現が変動した遺伝子を抽出した。2倍以上に発現が上昇した遺伝子(発現上昇遺伝子)は272個であり、0.5倍以下に発現が低下した遺伝子(発現低下遺伝子)は532個であった。
<薬剤代謝関連遺伝子>
これらのデータの中から、薬剤代謝に関わる遺伝子を検索したところ、発現上昇遺伝子の中には見出されなかった。一方、発現低下遺伝子では、(1)cytochrome P450,family 51(Cyp51)、(2)ATP−binding cassette, sub−family D(ALD),member 3(Abcd3)、及び(3)sulfotransferase family,cytosolic,2B,member 1(Sult2b1)の3種類が見出されたが、いずれも機能的にはマイナーであり、皮膚組織サンプルから得られた結果ではあるものの、ヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物は、薬物代謝に変動を与えず、安全な食品素材であると考えられた。
<バリア機能関連遺伝子>
肌のバリア機能に関連する遺伝子を検索し、通常飼料群に比べて2倍以上に発現が上昇した3遺伝子を抽出した。2倍以上に発現が上昇した遺伝子の中には、上皮細胞増殖因子(Epidermal growth factor:EGF)、線維芽細胞成長因子(Fibroblast growth factor:FGF−2)、フィブロネクチン(Fibronectin)が見出された。これらの結果を表7に示す。
試験例2〜6の乾燥肌モデルマウスのバリア機能試験においては、経口摂取されたヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物が、肌の保水量を保つと共に、シワの形成を抑制すること、さらに組織学的検討により、表皮及び角層の肥厚の亢進を抑制することが分かった。試験例7のDNAマイクロアレイ解析の結果と併せると、経口摂取されたヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物が、乾燥肌モデルマウスの肌組織において、EGFやFGF−2などの細胞増殖因子の遺伝子発現を上昇させ、皮膚細胞の増殖を促進することにより、肌の機能維持に効果を発揮する可能性が示された。
当初、経口摂取されたヒドロキシ脂肪酸誘導体は、吸収され、皮膚のセラミド源となり、皮膚バリアの保持に機能すると考えられた。しかし、一般的には植物性スフィンゴ糖脂質の吸収率低いだけでなく、動物性スフィンゴ糖脂質と植物性スフィンゴ糖脂質の構造が異なること、さらに量的な観点から、経口投与したヒドロキシ脂肪酸誘導体が皮膚のセラミド源となることを説明することは難しい。
したがって、経口摂取されたヒドロキシ脂肪酸誘導体により、何らかのメカニズムにより、これらのEGF遺伝子、FGF−2遺伝子、及びフィブロネクチン遺伝子の発現を制御した結果、肌のバリア機能の保持につながったものと考えられる。
本発明のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物、EGF産生促進剤、FGF−2産生促進剤、フィブロネクチン産生促進剤、保湿機能改善剤、シワ形成抑制剤、及びバリア機能改善剤は、安全性、及び生産性に優れ日常的に摂取可能であり、かつ安価でありながら、優れたEGF産生促進作用、FGF−2産生促進作用、フィブロネクチン産生促進作用、保湿機能改善作用、シワ形成抑制作用、及びバリア機能改善作用の少なくともいずれかを有するので、美容用飲食品や、アトピー性皮膚炎などの乾燥肌の改善剤、研究用の試薬として好適に利用できる。

Claims (12)

  1. 下記構造式(1)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体を含有することを特徴とするヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物。
  2. 下記構造式(2)〜(5)で表されるヒドロキシ脂肪酸誘導体の少なくともいずれかを更に含有する請求項1に記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物。
  3. パイナップル可食部を溶媒により抽出することにより得られる請求項1から2のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物。
  4. パイナップル可食部の圧搾後の残渣を溶媒により抽出することにより得られる請求項1から2のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物。
  5. 溶媒が、70体積%〜100体積%エタノールである請求項3から4のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とするEGF産生促進剤。
  7. 請求項1から5のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とするFGF−2産生促進剤。
  8. 請求項1から5のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とするフィブロネクチン産生促進剤。
  9. 請求項1から5のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とする保湿機能改善剤。
  10. 請求項1から5のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とするシワ形成抑制剤。
  11. 請求項1から5のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とするバリア機能改善剤。
  12. 請求項1から5のいずれかに記載のヒドロキシ脂肪酸誘導体含有物を含有することを特徴とする飲食品。
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