JP2012157299A - 土壌改良材の施用方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エタノール製造過程で得られる糖化残渣又は蒸留残液を土壌改良材として用いるときに、農作物等の植物の生育を阻害することのない施用方法を提供する。
【解決手段】バイオマスからなる基質を糖化酵素により糖化処理し、得られた糖化溶液を発酵処理して発酵溶液を得た後、発酵溶液を蒸留してエタノールを製造するときに、糖化溶液に含まれる糖化残渣を分離すると共に、発酵溶液の蒸留後に残された蒸留残液を回収し、糖化残渣又は蒸留残液を土壌改良材として土壌に施用する。前記土壌改良材を施用した後、20〜1500℃日の有効積算温度の間、土壌を酸化状態に維持する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、土壌改良材の施用方法に関する。
従来、バイオエタノールは、例えばリグノセルロース系バイオマス等のバイオマスからなる基質を糖化酵素により糖化処理し、糖化処理により得られた糖化溶液を発酵させ、発酵により得られた発酵溶液をさらに蒸留することにより製造されている。このとき、前記発酵溶液の蒸留後に残される蒸留残液は有機物を含んでいるので、土壌改良材として用いることが知られている(例えば特許文献1参照)。前記土壌改良材は、土壌に施用することにより前記有機物により該土壌の肥効性等を改良することができる。
また、前記糖化溶液は、前記糖化処理後には未糖化の前記バイオマスや該糖化処理に用いた糖化酵素等の糖化残渣を含んでおり、該糖化残渣はそれ自体有機物である。そこで、前記糖化溶液から前記糖化残渣を分離し、前記蒸留残液と同様に土壌改良材として用いることが考えられる。
特開2008−54676号公報
しかしながら、前記糖化残渣又は前記蒸留残液は、そのまま土壌改良材として施用すると、農作物等の植物の生育を阻害することがあるという不都合がある。
そこで、本発明は、かかる不都合を解消して、前記糖化残渣又は前記蒸留残液を土壌改良材として用いるときに、農作物等の植物の生育を阻害することのない施用方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記糖化残渣又は前記蒸留残液をそのまま土壌改良材として施用したときに、該土壌改良材が農作物等の植物の生育を阻害する理由について検討した。前記検討の結果、本発明者らは、前記糖化残渣又は前記蒸留残液が糖、酵素、菌体等の易分解性有機物を多く含んでいるために、土壌改良材としてそのまま土壌に施用すると、土壌中で腐敗したり、メタンガスの発生源となることを見い出した。前記易分解性有機物が、土壌中で腐敗したり、メタンガスの発生源となると、土壌中において酸素分の欠乏を招き、農作物等の植物の生育が阻害されるものと考えられる。
かかる目的を達成するために、本発明の土壌改良材の施用方法は、バイオマスからなる基質を糖化酵素により糖化処理し糖化溶液を得る工程と、該糖化溶液を発酵処理して発酵溶液を得る工程と、該発酵溶液を蒸留してエタノールを得る工程とによりエタノールを製造するときに、該糖化溶液に含まれる糖化残渣を分離すると共に、該発酵溶液の蒸留後に残された蒸留残液を回収し、該糖化残渣又は該蒸留残液を土壌改良材として土壌に施用する土壌改良材の施用方法において、該糖化残渣又は該蒸留残液を土壌改良材として土壌に施用した後、20〜1500℃日の範囲の有効積算温度の間、該土壌を酸化状態に維持することを特徴とする。
本発明によれば、前記糖化残渣又は前記蒸留残液を土壌改良材として土壌に施用した後、20〜1500℃日の範囲の有効積算温度の間、該土壌を酸化状態に維持することにより、該糖化残渣又は該蒸留残液に含まれる易分解性有機物を十分に分解させることができる。この結果、前記糖化残渣又は前記蒸留残液を土壌改良材として土壌に施用しても、腐敗したり、メタンガスの発生源となることがないので、農作物等の植物の生育を阻害することなく、土壌の肥効性等を改良することができる。
前記酸化状態において、有効積算温度が20℃日未満では、前記糖化残渣又は前記蒸留残液に含まれる前記易分解性有機物の分解が不十分になり、植物の生育が阻害される。一方、有効積算温度が1500℃日を超えると、前記糖化残渣又は前記蒸留残液を施用した後、前記易分解性有機物を十分に分解するための期間が長くなり、実用的ではない。
また、本発明の土壌改良材の施用方法において、前記酸化状態は、前記土壌を±0〜+500mVの範囲の酸化還元電位に維持することが好ましい。前記酸化還元電位が±0mV未満では、前記易分解性有機物を酸化的に分解することができなくなる。また、前記酸化還元電位が+500mVを超える場合には、前記易分解性有機物を酸化分解する微生物の活性が低下し、十分に分解することができなくなる虞がある。
本発明の土壌改良材の施用方法において、前記土壌を前記酸化状態に維持する期間は、前記易分解性有機物を十分に分解することができればよく、該土壌に植物を播種又は移植する前であってもよく、該土壌に植物を播種又は移植した後であってもよい。本発明の土壌改良材は、前記土壌に植物を播種又は移植する前では元肥として施用され、該土壌に植物を播種又は移植した後では、追肥として施用される。
また、本発明の土壌改良材の施用方法において、前記糖化残渣は、8〜40の範囲のC/N比と、30〜150mg/gの範囲の生物化学的酸素要求量とを有することが好ましい。前記糖化残渣は、C/N比が8未満かつ生物化学的酸素要求量が30mg/g未満であるときには、土壌に施用しても、該土壌を十分に改良することができないことがある。また、前記糖化残渣は、C/N比が40を超えかつ生物化学的酸素要求量が150mg/gを超えると、土壌を酸化条件に保つ期間の有効積算温度が20〜1500℃日を満たしていても超えても該糖化残渣に含まれる前記易分解性有機物が十分に分解されないことがある。
また、本発明の土壌改良材の施用方法において、前記バイオマスからなる基質は、前記糖化酵素により80%以上の糖化率となるように糖化処理されていることが好ましい。
このようにすることにより、前記糖化残渣のC/N比と生物化学的酸素要求量とを前記範囲とすることができる。
また、本発明の土壌改良材の施用方法において、前記蒸留残液は、2〜20の範囲のC/N比と、30〜100mg/gの範囲の生物化学的酸素要求量とを有することが好ましい。前記蒸留残液は、C/N比が2未満かつ生物化学的酸素要求量が30mg/g未満であるときには、土壌に施用しても、該土壌を十分に改良することができないことがある。また、前記蒸留残液は、C/N比が20を超えかつ生物化学的酸素要求量が100mg/gを超えると、土壌を酸化条件に保つ期間の有効積算温度が20〜1500℃日を満たしていても該蒸留残液に含まれる前記易分解性有機物が十分に分解されないことがある。
また、本発明の土壌改良材の施用方法において、前記発酵溶液は、前記糖化溶液中の糖のアルコールへの変換率が70%以上となるように発酵されていることが好ましい。このようにすることにより、前記蒸留残液のC/N比と生物化学的酸素要求量とを前記範囲とすることができる。
また、本発明の土壌改良材の施用方法において、前記バイオマスとしては、例えば、リグノセルロース系バイオマスを用いることができる。
本発明の土壌改良材の施用方法を示すフローチャート。 本発明の実施例1及び比較例1におけるイネの栽培方法を示すフローチャート。 本発明の実施例1及び比較例1におけるイネの生育状態(葉齢)を示すグラフ。 本発明の実施例1及び比較例1におけるイネの生育状態(草丈)を示すグラフ。 本発明の実施例2,3及び比較例2におけるイネの栽培方法を示すフローチャート。 本発明の実施例2,3及び比較例2におけるイネの生育状態(葉齢)を示すグラフ。 本発明の実施例2,3及び比較例2におけるイネの生育状態(草丈)を示すグラフ。 本発明の実施例2,3及び比較例2におけるメタンガス発生量を示すグラフ。
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
本実施形態の土壌改良材は、リグノセルロース系バイオマスを基質とし、該基質を糖化、発酵させてエタノールを製造する過程で得られる糖化残渣又は、蒸留残液からなる。そこで、次に、リグノセルロース系バイオマスを基質とするエタノールの製造方法について説明する。
前記エタノールの製造方法では、まず、リグノセルロース系バイオマスからなる基質としての稲藁と、アンモニア水とを攪拌し、基質混合物を得る。得られた基質混合物は、貯留槽内で所定時間貯留されることにより、加熱することなく前記稲藁からリグニンを解離し、又は該稲藁を膨潤させることにより、糖化前処理物を得る。
尚、本願において、解離とは、リグノセルロース系バイオマスのセルロース又はヘミセルロースに結合しているリグニンの結合部位のうち、少なくとも一部の結合を切断することをいう。また、膨潤とは、液体の浸入により結晶性セルロースを構成するセルロース又はヘミセルロースに空隙が生じ、又は、セルロース繊維の内部に空隙が生じて膨張することをいう。
前記糖化前処理物はアンモニア水を含有しているので、次にアンモニアを分離することにより、アンモニア分離糖化前処理物とされる。前記アンモニア分離糖化前処理物は、糖化酵素と混合され、所定時間保持されることにより、前記基質としての稲藁に含まれるセルロース、ヘミセルロース等が糖化された糖化溶液が得られる。前記基質としての稲藁は、前記糖化酵素により80%以上の糖化率となるように糖化処理されている。前記糖化溶液は、未糖化の前記稲藁、前記糖化酵素等を糖化残渣として含んでいるので、次に、固液分離により前記糖化残渣が分離される。
次に、前記糖化残渣が分離された前記糖化溶液に、酵母等の発酵菌を混合し、所定時間保持する。この結果、前記糖化溶液に含まれる糖が前記酵母等の発酵菌によりエタノール発酵し、エタノールを含む発酵溶液が得られる。前記発酵溶液は、前記糖化溶液中の糖のアルコールへの変換率が70%以上となるように発酵されている。アルコールへの変化率は、前記発酵菌の種類によって変化する。
次に、前記発酵溶液を蒸留することにより、前記エタノールを分離すると共に、該発酵溶液の蒸留後に残された蒸留残液を回収する。
そして、前記糖化溶液から分離された糖化残渣又は、前記発酵溶液の蒸留後に回収された蒸留残液を本実施形態の土壌改良材として使用する。
ここで、前記糖化残渣は、C/N比が8〜40の範囲にあると共に、生物化学的酸素要求量(BOD)が30〜150mg/gの範囲にある。また、前記蒸留残液は、C/N比が2〜20の範囲にあると共に、生物化学的酸素要求量(BOD)が30〜100mg/gの範囲にある。
次に、本実施形態の土壌改良材の施用方法について、図1に基づいて説明する。
図1に示すように、土壌改良材としての前記糖化残渣又は前記蒸留残液は、前季の収穫後、次季の播種又は移植までの間に土壌に施用するか、次季の播種又は移植後に土壌に施用する。または、前期収穫後、次期の播種又は移植間での間に元肥として土壌に施用し、さらに次期の播種又は移植後に追肥として土壌に施用するようにしてもよい。
本実施形態の土壌改良材は、前記いずれの場合にも、施用後、20〜1500℃日の範囲の有効積算温度の間、土壌を酸化状態に維持する。尚、本実施形態では有効積算温度の基準温度を5℃に設定している。この場合、5℃より低温では、土壌改良材の腐敗が進行し難くなるので、意味がないと考えられる。
本実施形態の土壌改良材を元肥として施用する場合、前記有効積算温度が1500℃日となるのは、低温期に前記易分解性有機物を十分に分解する期間に相当する。前記低温期は、例えば、前季の植物の生育が終了した後、農作物であればその収穫後に、前記糖化残渣又は前記蒸留残液を施用する場合である。
また、本実施形態の土壌改良材を元肥として施用する場合、前記有効積算温度が20℃日となるのは、高温期に前記易分解性有機物を十分に分解する期間に相当する。前記高温期は、例えば、次季の植物の播種又は移植の直前に、前記糖化残渣又は前記蒸留残液を施用する場合である。
一方、本実施形態の土壌改良材を追肥として施用する場合には、前記糖化残渣又は前記蒸留残液に含まれる易分解性有機物が腐敗したり、メタンガスの発生源となることなく酸化分解されればよく、有効積算温度は20〜1500℃日の範囲であればよい。
前記酸化状態は、具体的には、土壌の酸化還元電位を±0〜+500mVの範囲に維持することを意味する。前記土壌を前記酸化状態に維持するためには、例えば、灌水により土壌が水で飽和するようにしてもよく、水田であれば乾田状態にしてもよい。
この結果、本実施形態の土壌改良材の施用方法によれば、前記糖化残渣又は前記蒸留残液に含まれる糖、酵素、菌体等の易分解性有機物を土壌中で酸化分解することができ、腐敗やメタンガスの発生を防止することができる。従って、土壌中で酸素分が欠乏することがなく、農作物等の植物の生育を阻害することなく、土壌の肥効性等を改良することができる。
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
〔実施例1〕
本実施例では、図2(a)に示すように、まずポットに土壌3.5kgを充填した後、稲藁を基質とするエタノール製造過程で得られた糖化残渣10.3g及び蒸留残液22.6gからなる土壌改良材32.9gを該ポット内の土壌に施用し、培土を調製した。本実施例の土壌改良材において、前記糖化残渣はC/N比19.3、BOD140mg/gであり、前記蒸留残液はC/N比7.1、BOD86.5mg/gである。
次に、前記培土調製を基準としてその後1日目に催芽籾を前記ポット内の土壌に播種した。その後、前記培土調製から19日目まで、前記ポット内の土壌を乾田状態とし、有効積算温度342℃日の間、酸化状態に維持した。このとき、前記ポット内の土壌の酸化還元電位は、+150〜+280mVの範囲であった。
そして、19日目に、土壌の腐敗臭の有無と、イネの生育状態を観察した。本実施例では、前記ポット内の土壌に腐敗臭はなく、イネの生育は順調であった。イネの生育状態として、葉齢と草丈との観察結果を図3及び図4に示す。
〔比較例1〕
本比較例では、図2(b)に示すように、まずポットに土壌3.5kgを充填した。また別途、育苗培土として苗床を調製し、苗床調製を基準としてその後1日目に催芽籾を前記苗床に播種し、イネの苗を生育させた。
次に、前記ポットに土壌充填後12日目に該ポットの土壌に湛水して代掻きすると共に、実施例1で用いたものと全く同一の土壌改良材32.9gを該ポット内の土壌に施用した。
前記ポットは、湛水状態のままとし、土壌充填後13日目に、前記苗床に生育させたイネの苗を移植した。ここで、前記ポットは湛水状態とされているので、前記ポット内の土壌は還元状態となっている。
そして、19日目に、土壌の腐敗臭の有無と、イネの生育状態を観察した。本比較例では、前記ポット内の土壌に腐敗臭があり、イネの生育は遅延が認められた。イネの生育状態として、葉齢と草丈との観察結果を図3及び図4に示す。
図3,4から、実施例1の施用方法によれば、前記土壌改良材を施用した土壌中で該土壌改良材が腐敗することがなく、イネも順調に生育できることが明らかである。
〔実施例2〕
本実施例では、図5(a)に示すように、まずポットに土壌3.5kgを充填した後、稲藁を基質とするエタノール製造過程で得られた糖化残渣10.3g及び蒸留残液5.6gからなる土壌改良材15.95gを該ポット内の土壌に元肥として施用し、培土を調製した。本実施例の土壌改良材において、前記糖化残渣はC/N比19.3、BOD140mg/gであり、前記蒸留残液はC/N比7.1、BOD86.5mg/gである。
前記培土は、灌水によりポット内の土壌が水で飽和するようにして、有効積算温度157℃日の間、酸化状態に維持した。このとき、前記ポット内の土壌の酸化還元電位は、+100〜+300mVの範囲であった。
次に、前記培土調製から11日目に催芽籾を前記ポット内の土壌に播種した。尚、図5(a)では、前記播種を基準として「1日目」として示し、前記培土調製を「11日前」としている。
次に、前記播種から47日目まで、前記ポット内の土壌に間断灌水を行って、有効積算温度949℃日の間、酸化状態に維持した。このとき、前記ポット内の土壌の酸化還元電位は、+106〜+371mVの範囲であった。また、この間に、C/N比7.1、BOD86.5mg/gの蒸留残液5.65gからなる土壌改良材を前記ポット内の土壌に追肥として施用した。
そして、47日目に、イネの生育状態として、葉齢と草丈とを観察すると共に、メタンガスの発生量を測定した。本実施例では、イネの生育は見かけ上順調であり、メタンガスの発生は無かった。イネの生育状態の観察結果を図6及び図7に、メタンガス発生量の測定結果を図8に示す。
〔実施例3〕
本実施例では、図5(b)に示すように、まずポットに土壌3.5kgを充填した後、稲藁を基質とするエタノール製造過程で得られた糖化残渣10.3g及び蒸留残液5.6gからなる土壌改良材15.95gを該ポット内の土壌に元肥として施用し、培土を調製した。本実施例の土壌改良材において、前記糖化残渣はC/N比19.3、BOD140mg/gであり、前記蒸留残液はC/N比7.1、BOD86.5mg/gである。
前記培土は、灌水によりポット内の土壌が水で飽和するようにして、有効積算温度509℃日の間、酸化状態に維持した。このとき、前記ポット内の土壌の酸化還元電位は、+100〜+480mVの範囲であった。
また別途、育苗培土として苗床を調製し、その後1日目に催芽籾を前記苗床に播種し、イネの苗を生育させた。尚、図5(b)では、前記播種を基準として「1日目」として示し、前記培土調製を「11日前」としている。
次に、前記播種後19日目に該ポットの土壌に湛水して代掻きした。そして、前記播種後20日目に、前記苗床に生育させたイネの苗を、前記ポットの土壌に移植した。
次に、前記播種から47日目まで、前記ポット内の土壌を湛水状態とした。ここで、前記ポットは湛水状態とされているので、前記ポット内の土壌は還元状態となっている。また、この間に前記蒸留残液5.65gからなる土壌改良材を前記ポット内の土壌に追肥として施用した。
そして、47日目に、イネの生育状態として、葉齢と草丈とを観察すると共に、メタンガスの発生量を測定した。本実施例では、イネの生育は見かけ上順調であり、メタンガスの発生は少量であった。イネの生育状態の観察結果を図6及び図7に、メタンガス発生量の測定結果を図8に示す。
〔比較例3〕
本比較例では、図5(c)に示すように、まずポットに土壌3.5kgを充填した後、稲藁7.2gを該ポット内の土壌に施用し、培土を調製した。
前記培土は、灌水によりポット内の土壌が水で飽和するようにして、有効積算温度509℃日の間、酸化状態に維持した。このとき、前記ポット内の土壌の酸化還元電位は、実施例3の場合と同一の範囲であった。
また別途、育苗培土として苗床を調製し、その後1日目に催芽籾を前記苗床に播種し、イネの苗を生育させた。尚、図5(c)では、前記培土調製を「11日前」、前記播種を「1日目」として示している。
次に、前記播種後19日目に該ポットの土壌に湛水して代掻きし、化成肥料を施肥した。そして、前記播種後20日目に、前記苗床に生育させたイネの苗を、前記ポットの土壌に移植した。
次に、前記播種後47日目まで、前記ポット内の土壌を湛水状態とした。ここで、前記ポットは湛水状態とされているので、前記ポット内の土壌は還元状態となっている。
そして、47日目に、イネの生育状態として、葉齢と草丈とを観察すると共に、メタンガスの発生量を測定した。本実施例では、イネの生育は見かけ上順調であるが、メタンガスの発生は多量であった。イネの生育状態の観察結果を図6及び図7に、メタンガス発生量の測定結果を図8に示す。
図6〜8から、実施例2,3の施用方法によれば、前記土壌改良材を施用した土壌中でメタンガスの発生を抑制することができることが明らかである。
〔実施例4〕
本実施例では、まず、50mlのチューブに水田の土壌30gを充填し、30℃のインキュベータ中に保持した。次に、1日後に、糖化残渣0.5g及び水2.5mlを加えよく攪拌した。前記糖化残渣は、C/N比10.4、BOD120mg/gである。
次に、さらに4日後に水25mlを加えよく攪拌した。この操作は代掻きに相当する。次に、前記代掻きに相当する操作を行ったチューブをインキュベータに30℃で96時間(4日間)保持して培養した。前記培養の間、前記土壌は酸化状態に維持されている。このとき、有効積算温度は100℃日である。
前記培養後、土壌の泡立ち、腐敗臭の有無を評価した。本実施例では、泡立ちと腐敗臭とは、いずれも認められなかった。結果を表1に示す。
〔実施例5〕
本実施例では、前記代掻きに相当する操作を行ったチューブを温室中に30℃で19時間保持して培養した以外は実施例4と全く同一にして、前記培養後、土壌の泡立ち、腐敗臭の有無を評価した。このとき、有効積算温度は20℃日である。
本実施例では、泡立ちと腐敗臭とは、いずれも認められなかった。結果を表1に示す。
〔比較例4〕
本比較例では、前記代掻きに相当する操作を行ったチューブを温室中に30℃で8時間保持して培養した以外は実施例4と全く同一にして、前記培養後、土壌の泡立ち、腐敗臭の有無を評価した。このとき、有効積算温度は8.3℃日である。
本比較例では、泡立ちと腐敗臭とが認められた。結果を表1に示す。
〔比較例5〕
本比較例では、前記代掻きに相当する操作を行ったチューブを全く培養しなかった以外は実施例4と全く同一にして、土壌の泡立ち、腐敗臭の有無を評価した。このとき、有効積算温度は0℃日である。
本比較例では、甚だしい泡立ちと腐敗臭とが認められた。結果を表1に示す。
〔実施例6〕
本実施例では、前記糖化残渣に代えて、蒸留残液1.1ml及び水1.5mlを用いた以外は、実施例4と全く同一にして、前記代掻きに相当する操作を行ったチューブを温室中に30℃で96時間(4日間)保持して培養した。前記残留残液は、C/N比56、BOD10.3mg/gである。
次に、前記培養後、土壌の泡立ち、腐敗臭の有無を評価した。このとき、有効積算温度は100℃日である。
本実施例では、泡立ちと腐敗臭とは、いずれも認められなかった。結果を表1に示す。
〔実施例7〕
本実施例では、前記代掻きに相当する操作を行ったチューブを温室中に30℃で19時間保持して培養した以外は実施例6と全く同一にして、前記培養後、土壌の泡立ち、腐敗臭の有無を評価した。このとき、有効積算温度は20℃日である。
本実施例では、泡立ちと腐敗臭とは、いずれも認められなかった。結果を表1に示す。
〔比較例6〕
本比較例では、前記代掻きに相当する操作を行ったチューブを温室中に30℃で8時間保持して培養した以外は実施例6と全く同一にして、前記培養後、土壌の泡立ち、腐敗臭の有無を評価した。このとき、有効積算温度は8.3℃日である。
本比較例では、泡立ちと腐敗臭とが認められた。結果を表1に示す。
〔比較例7〕
本比較例では、前記代掻きに相当する操作を行ったチューブを全く培養しなかった以外は実施例6と全く同一にして、土壌の泡立ち、腐敗臭の有無を評価した。このとき、有効積算温度は0℃日である。
本比較例では、甚だしい泡立ちと腐敗臭とが認められた。結果を表1に示す。
Figure 2012157299
表1から、有効積算温度20℃日以上の間、土壌を酸化状態に維持することにより、泡立ち、腐敗臭が認められず、糖化残渣又は蒸留残液に含まれる易分解性有機物を十分に分解させることができることが明らかである。一方、土壌を酸化状態に維持する有効積算温度が20℃日未満では、泡立ち、腐敗臭が認められ、前記易分解性有機物が腐敗することが明らかである。
符号なし。

Claims (8)

  1. バイオマスからなる基質を糖化酵素により糖化処理し糖化溶液を得る工程と、該糖化溶液を発酵処理して発酵溶液を得る工程と、該発酵溶液を蒸留してエタノールを得る工程とによりエタノールを製造するときに、該糖化溶液に含まれる糖化残渣を分離すると共に、該発酵溶液の蒸留後に残された蒸留残液を回収し、該糖化残渣又は該蒸留残液を土壌改良材として土壌に施用する土壌改良材の施用方法において、
    該糖化残渣又は該蒸留残液を土壌改良材として土壌に施用した後、20〜1500℃日の範囲の有効積算温度の間、該土壌を酸化状態に維持することを特徴とする土壌改良材の施用方法。
  2. 請求項1記載の土壌改良材の施用方法において、前記酸化状態は、前記土壌を±0〜+500mVの範囲の酸化還元電位に維持することを特徴とする土壌改良材の施用方法。
  3. 請求項1又は請求項2記載の土壌改良材の施用方法において、前記土壌改良材は、土壌に植物を播種又は移植する前又は後に、該土壌に施用することを特徴とする土壌改良材の施用方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の土壌改良材の施用方法において、前記糖化残渣は、8〜40の範囲のC/N比と、30〜150mg/gの範囲の生物化学的酸素要求量とを有することを特徴とする土壌改良材の施用方法。
  5. 請求項4記載の土壌改良材の施用方法において、前記バイオマスからなる基質は前記糖化酵素により、80%以上の糖化率となるように糖化処理されていることを特徴とする土壌改良材の施用方法。
  6. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の土壌改良材の施用方法において、前記蒸留残液は、2〜20の範囲のC/N比と、30〜100mg/gの範囲の生物化学的酸素要求量とを有することを特徴とする土壌改良材の施用方法。
  7. 請求項6記載の土壌改良材の施用方法において、前記発酵溶液は、前記糖化溶液中の糖のアルコールへの変換率が70%以上となるように発酵されていることを特徴とする土壌改良材の施用方法。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の土壌改良材の施用方法において、前記バイオマスは、リグノセルロース系バイオマスであることを特徴とする土壌改良材の施用方法。
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