JP2012155862A - 固体高分子形燃料電池のガス拡散層、そのガス拡散層を含む膜−電極接合体、そのガス拡散層の製造方法、および、そのガス拡散層の製造に用いるスラリー - Google Patents

固体高分子形燃料電池のガス拡散層、そのガス拡散層を含む膜−電極接合体、そのガス拡散層の製造方法、および、そのガス拡散層の製造に用いるスラリー Download PDF

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Abstract

【課題】IPガス透過性で評価される高いガス透過性と断面加圧抵抗値で評価される高い導電性とを同時に備える固体高分子形燃料電池のガス拡散層を提供する。
【解決手段】加熱により相互に熱融着させられた熱融着性有機繊維OFにより構成される多孔質骨材構造30を有し、その多孔質骨材構造30内において、炭素繊維CFが導電性微粒子と共に結合剤樹脂Rによって相互に結着されて成ることから、比較的少ない熱融着性有機繊維OFの相互融着によって比較的高い剛性を有する多孔質骨材構造30がガス拡散層18(20)内に形成されるので、高いガス透過性および加圧時の導電性とが同時に具備するガス拡散層18(20)が得られる。
【選択図】図2

Description

本発明は、固体高分子形燃料電池に用いられるガス拡散電極の一部を構成するガス拡散層、そのガス拡散層を含むガス拡散電極を備える膜−電極接合体、そのガス拡散層の製造方法、および、そのガス拡散層の製造に用いるスラリーに関する。
燃料電池は、燃料として水素、メタノール、化石燃料からの改質水素等の還元剤を用い、空気や酸素を酸化剤として、電池内で燃料を電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換して取り出すものである。そのため、内燃機関に比較して効率が高く、静粛性に優れると共に、大気汚染の原因となるNO 、SO、粒子状物質(PM)等の排出量が少ないことから、近年、クリーンな電気エネルギー供給源として注目されている。例えば、電動機の駆動電源、住宅用等の分散型電源や熱電供給システムとしての利用が期待されている。
このような燃料電池は、用いる電解質の種類によって、アルカリ形、リン酸形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形、固体高分子形等に分類される。これらのうちプロトン伝導性の電解質を用いるリン酸形および固体高分子形は、熱力学におけるカルノーサイクルの制限を受けることなく高い効率で運転できるものであり、その理論効率は、25( ℃) において83( %) にも達する。特に、固体高分子形燃料電池は、近年電解質膜や触媒技術の発展により性能の向上が著しくなり、低公害自動車用電源や高効率発電方法として注目を集めている。
ところで、固体高分子形燃料電池は、一般に、水素イオン(プロトン)を選択的に伝導する薄い高分子電解質層の両面を一対のガス拡散電極で挟んだ構造を備えるものであり、通常は、このような膜−電極接合体(Membrane Electrode Assembly:以下、MEA) をセパレータを介して積層したスタック構造で用いられる。ガス拡散電極はそれぞれ触媒層およびガス拡散層から構成されており、これら触媒層およびガス拡散層は、一体化或いは複層化されたものもある。
上記ガス拡散層は、ガス拡散電極用基材とも称される層状体であり、触媒層および電解質層表面に燃料ガスや空気を導くと共に、発生した電流を取り出すために、高いガス拡散性能と高い導電性とが共に要求される。また、加湿燃料中の水蒸気や反応により発生した水によるガス流路の閉塞を抑制するために優れた排水性能を有することも要求されている。
特開2010−015908号公報 特開2010−153222号公報
上記ガス拡散層として、特許文献1および特許文献2に提案されたものがある。たとえば、特許文献1に記載されたものは、炭素繊維、樹脂、導電性炭素粒子から成るスラリーを150℃程度の温度の比較的低温で成膜できる利点がある。しかし、これらの材料で形成されるガス拡散層では、実際に燃料電池に組み込まれ発電する際に、セパレータによる圧縮圧力のためにガス拡散層自体が変形してしまい、圧縮された細孔が特に面内( In−Plane)方向のガス拡散および反応水の排出を妨げてしまうという問題があった。
これに対して、特許文献2に記載されたものは、ガラス繊維と炭素繊維分散スラリーを複合化することで、柔軟で且つ薄く、引っ張りや圧縮に対して強度を保持できるようにしたガス拡散層が提案されている。しかし、これはあくまでもその骨材となるガラス繊維による強度付与であって、ガラス繊維相互の結合体による強度の付与ではないことから、加圧下において高いガス透過性を得るためにはガラス繊維の割合を高めて気孔をつぶれ難くする必要があるが、ガラス繊維の割合が高くなると加圧抵抗が高くなるという相反的な現象が生じるという問題があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、IPガス透過性で評価される高いガス透過性と断面加圧抵抗値で評価される高い導電性とを同時に備えるガス拡散層、そのガス拡散層を含む膜−電極接合体( MEA) 、そのガス拡散層の製造方法、および、そのガス拡散層の製造に用いるスラリーを提供することにある。
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) 固体高分子形燃料電池の固体高分子電解質上にガス拡散電極を構成するためにその固体高分子電解質上に触媒層を介して設けられる多孔質且つ導電性のガス拡散層であって、(b) 加熱により相互に熱融着させられた熱融着性有機繊維により構成される多孔質骨材構造を有し、(c) その多孔質骨材構造内において、炭素繊維が導電性微粒子と共に結合剤樹脂によって相互に結着されて成ることを特徴とする。
請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1の発明において、(d) 前記熱融着性有機繊維は、芯部樹脂とその芯部樹脂の外周を被覆しその芯部樹脂よりも融点或いは軟化点が低い鞘部樹脂とから構成されていることを特徴とする。
請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項1又は2の発明において、(e)前記熱融着性有機繊維は、前記炭素繊維よりも長い繊維長を有することを特徴とする。
請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1の発明において、(f) 前記熱融着性有機繊維の前記ガス拡散層に対する重量割合は、0.5〜8%の範囲内であることを特徴とする。
請求項5に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至4のいずれか1の発明において、(g) 前記熱融着性有機繊維は、40〜500の範囲内のアスペクト比を有していることを特徴とする。
請求項6に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至5のいずれか1の発明において、(h)前記導電性微粒子は炭素微粒子であり、(i)その炭素微粒子の前記ガス拡散層内の結合剤樹脂に対する重量比(結合剤樹脂量/炭素微粒子量) は、8以下であることを特徴とする。
請求項7に係る発明の、請求項1乃至6のいずれか1の多孔質且つ導電性のガス拡散層とを含むことを特徴とする膜−電極接合体の要旨とするところは、(j) 固体高分子電解質膜と、(k) その固体高分子電解質膜の一面および他面にそれぞれ設けられた触媒層と、(l) それら触媒層の表面にそれぞれ設けられたことを特徴とする。
請求項8に係る発明の、請求項1乃至6のいずれか1の多孔質且つ導電性のガス拡散層の製造方法の要旨とするところは、(m) 炭素繊維、導電性微粒子、結合剤樹脂、および、加熱により相互に熱融着させられる熱融着性有機繊維が溶媒に分散させられたスラリーから、シート状成形体を成形する成形工程と、(n) その成形工程により成形された前記シート状成形体を熱処理することで前記熱融着性有機繊維を相互に熱融着させて多孔質骨材構造を構成すると共に、その多孔質骨材構造内において前記炭素繊維が導電性微粒子と共に結合剤樹脂によって相互に結着させる熱処理工程とを、含むことを特徴とする。
請求項9に係る発明の、請求項1乃至6のいずれか1のガス拡散層の製造に用いるスラリーの要旨とするところは、(o) 炭素繊維、導電性微粒子、結合剤樹脂、および、加熱により相互に熱融着させられる熱融着性有機繊維が溶媒に分散させられていることを特徴とする。
請求項1に係る発明の多孔質且つ導電性のガス拡散層は、(b) 加熱により相互に熱融着させられた熱融着性有機繊維により構成される多孔質骨材構造を有し、(c) その多孔質骨材構造内において、炭素繊維が導電性微粒子と共に結合剤樹脂によって相互に結着されて成ることから、比較的少ない熱融着性有機繊維の相互融着によって比較的高い剛性を有する多孔質骨材構造がガス拡散層内に形成されるので、高いガス透過性および加圧時の導電性とが同時に具備するガス拡散層が得られる。
請求項2に係る発明の多孔質且つ導電性のガス拡散層によれば、(d) 前記熱融着性有機繊維は、芯部樹脂とその芯部樹脂の外周を被覆しその芯部樹脂よりも融点或いは軟化点が低い鞘部樹脂とから構成されているので、熱処理時の加圧のばらつきがあっても安定した形状および強度を有する多孔質骨材構造を構成することができる。
請求項3に係る発明の多孔質且つ導電性のガス拡散層によれば、(e)前記熱融着性有機繊維は、前記炭素繊維よりも長い繊維長を有することから、結合剤樹脂によって導電性微粒子と共に相互に結着された炭素繊維を孔内に含む多孔質骨材構造が容易に形成される。この熱融着性有機繊維の繊維長は、炭素繊維に比較して2倍乃至100倍の範囲内が望ましい。熱融着性有機繊維の繊維長が炭素繊維に比較して2倍を下回ると、少ない割合で混合される熱融着性有機繊維が相互に熱融着される点が少なくなった十分に剛性の高い多孔質骨材構造が形成され難くなり、100倍を上回ると、炭素繊維との均一な混合が困難となる。
請求項4に係る発明の多孔質且つ導電性のガス拡散層によれば、(f) 前記熱融着性有機繊維の前記ガス拡散層に対する重量割合は、0.5〜8%の範囲内であることから、加熱により相互に熱融着させられた熱融着性有機繊維により高い剛性の多孔質骨材構造を構成するので、セパレータからの圧縮圧力でもガス拡散層自体が変形しない。熱融着性有機繊維のガス拡散層に対する重量割合が0.5%を下回ると、その熱融着性有機繊維の相互の熱融着により構成される多孔質骨材構造の剛性が十分に得られず、ガス拡散層の機械的強度が不足する可能性がある。反対に、熱融着性有機繊維のガス拡散層に対する重量割合が8%を上回ると、十分なガス透過性や導電性が得られ難くなる。
請求項5に係る発明の多孔質且つ導電性のガス拡散層によれば、(g) 前記熱融着性有機繊維は、40〜500の範囲内のアスペクト比( =繊維長/繊維径) を有していることから、加熱により相互に熱融着させられた熱融着性有機繊維により高い剛性の多孔質骨材構造が得られる。熱融着性有機繊維のアスペクト比が40を下まわると、その熱融着性有機繊維の相互の熱融着により構成される多孔質骨材構造の孔が小さくなり過ぎてガス透過性が損なわれる。反対に、熱融着性有機繊維のアスペクト比が500を上まわると、その熱融着性有機繊維の相互の熱融着により構成される多孔質骨材構造の孔が大きくなり過ぎて十分な剛性が得られない。
請求項6に係る発明の多孔質且つ導電性のガス拡散層によれば、(h)前記導電性微粒子は炭素微粒子であり、(i)その炭素微粒子の前記ガス拡散層内の結合剤樹脂量に対する重量比( 結合剤樹脂量/炭素微粒子量) は、8以下であることから、高い導電性およびガス拡散性を有する多孔質のガス拡散層が得られる。炭素微粒子のガス拡散層内の樹脂に対する重量割合が8を超えると、ガス透過性が低下し、ガス拡散層の導電性が低下する可能性がある。
請求項7に係る発明の膜−電極接合体によれば、(j)固体高分子電解質膜と、(m) その固体高分子電解質膜の一面および他面にそれぞれ設けられた触媒層と、(k)それら触媒層の表面にそれぞれ設けられた請求項1乃至6のいずれか1の多孔質且つ導電性のガス拡散層とを含むことから、導電性およびガス拡散性が共に高く且つフッ素を用いなくとも排水性の高いガス拡散層を用いた膜−電極接合体が得られる。
請求項8に係る発明のガス拡散層の製造方法によれば、(l) 炭素繊維、導電性微粒子、結合剤樹脂、および、加熱により相互に熱融着させられる熱融着性有機繊維が溶媒に分散させられたスラリーから、シート状成形体を成形する成形工程と、(m) その成形工程により成形された前記シート状成形体を熱処理することで前記熱融着性有機繊維を相互に熱融着させて多孔質骨材構造を構成すると共に、その多孔質骨材構造内において前記炭素繊維が導電性微粒子と共に結合剤樹脂によって相互に結着させる熱処理工程とを、含むことから、成形したシート状成形体のままで連続的にガス拡散層を製造することができ、そのガス拡散層を低価格で得ることができる。
請求項9に係る発明の、前記ガス拡散層の製造に用いるスラリーは、(n) 炭素繊維、導電性微粒子、結合剤樹脂、および、加熱により相互に熱融着させられる熱融着性有機繊維が溶媒に分散させられていることから、そのスラリーからシート状成形体を成形し、そのシート状成形体の状態で熱処理を施すことにより、熱融着性有機繊維を相互に熱融着させて多孔質骨材構造を構成すると同時に、その多孔質骨材構造内において前記炭素繊維が導電性微粒子と共に結合剤樹脂によって相互に結着させることができるので、連続的にガス拡散層を製造でき、そのガス拡散層を低価格で得ることができる。
ここで、請求項1に係る発明において、「固体高分子電解質上に」とは、固体高分子電解質の上にガス拡散層が直接設けられている場合の他、触媒層等の他の層を介してガス拡散層が設けられている場合が含まれる。
また、好適には、前記熱融着性有機繊維の芯部樹脂は、通常のポリエステルまたはポリエチレンから成り、また、その芯部樹脂の外周を被覆しその芯部樹脂よりも融点或いは軟化点が低い鞘部樹脂は、低融点のポリエステルまたはポリエチレンから成る。
また、好適には、前記熱融着性有機繊維は、5乃至20μmφの径を有し、0.4乃至5mm程度の繊維長を有するものである。このようなガス拡散層によれば、50mΩcm以下の断面加圧抵抗、5000ml・mm/cm/min以上のTPガス透過性、10cc/sec以上の1MPaIPガス透過性、35μm以上の1MPaIPバブルポイント細孔径、10%以下の1MPa圧縮変形率、1.5N以上の引張強度が得られる。実証試験は行っていないが、熱融着性有機繊維の繊維長が0.4mmを下回ると1MPaIPガス透過率が低下し、繊維長が5mmを超えると繊維が絡まりあい、成形が困難になることが予想される。
また、好適には、前記炭素繊維の前記ガス拡散層に対する重量割合は、50乃至68%である。炭素繊維の重量割合が50%を下まわると気孔率が低下して十分なガス透過性が得られず、炭素繊維の重量割合が68%を超えると導電性が十分に得られない。
また、好適には、前記炭素繊維のアスペクト比(=繊維長/繊維径)が4.5〜25の範囲内である。このようにすれば、炭素繊維が比較的太く且つ短いため、炭素繊維相互に導電性微粒子を介して或いは直接的に接触し易く、しかも、炭素繊維相互の隙間が適度な大きさになるので、高い導電性および高いガス透過性が得られる。アスペクト比が4.5未満では、炭素繊維が短いので密度が高くなり延いてはガス透過性が低くなる。また、アスペクト比が25を超えると、炭素繊維が長いのでガス拡散層の面に沿った横向きになるため、厚み方向における導電性が低下すると共に、炭素繊維相互間に空隙の多い組織になる。
また、好適には、前記導電性微粒子は平均一次粒子径が10〜100(nm)である。このようにすれば、炭素繊維相互の接点で導電経路が十分に確保されることから、一層高い導電性が得られる。また、上記導電性微粒子の一次粒子径が十分に小さいので、ガス拡散層のガス透過性が高いという利点がある。上記平均一次粒子径が10(nm)未満では、多数の導電性微粒子が相互に凝集し易くなるため、ガス拡散層の製造の際に導電性微粒子の分散が不均一になり易くなる。また、上記平均一次粒子径が100(nm)を超えると、導電性微粒子による炭素繊維相互の接点での導電性を高める効果が十分に得られずガス拡散層の導電性が低下する。
また、好適には、前記導電性微粒子はクラスター構造を成すものである。このようにすれば、複数本の炭素繊維は、クラスター構造の導電性微粒子との間の無数の接点を通して相互に接触させられるため、前記ガス拡散層は高い導電性を得ることができる。
また、好適には、前記結合剤樹脂は、前記ガス拡散層に対する重量割合が24乃至37%である。結合剤樹脂の重量割合が24%を下回ると炭素繊維間の結合が低下し、37%を上まわるとガス透過性が低下する。また、好適には、前記結合剤樹脂は、フェノール樹脂の他に、アクリルシリコン系樹脂が用いられてもよい。このアクリルシリコン系樹脂は、アクリルモノマーが重合して形成する主鎖に対しケイ素を含む疎水性の側鎖が結合した構造を有する。また、そのアクリルシリコン系樹脂の分子量が数十万程度と非常に大きいと、樹脂分子群同士の間に水が入り難くさらに耐水性が高くなる。
また、前記固体高分子形燃料電池には、反応の生じる三相界面に触媒(例えば、貴金属系触媒)が備えられていることが望ましい。例えば、ガス拡散電極が、上記触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒層と、前記ガス拡散層とを層状に備えており、固体高分子形燃料電池は、一対を成す上記ガス拡散電極が触媒層を内側にして前記固体高分子電解質層(膜)の両面に接合された構造となる。また、上記触媒は、ガス拡散層中に炭素繊維や導電性微粒子に担持された状態で備えられていてもよい。ガス拡散層中に備えられている態様は、例えば、ガス拡散層の形成後に触媒を含むスラリーを含浸させる方法や、ガス拡散層製造用スラリー中に触媒を混合して、ガス拡散層を形成すると同時に触媒を担持させる方法等で実施し得る。
また、前記炭素繊維は特に限定されず、ポリアクリロニトリル系(PAN系)炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等の適宜のものを用い得る。ポリアクリロニトリル系炭素繊維を用いた場合には、炭素繊維の強度が高いため機械的強度の特に高いガス拡散電極が得られる。また、ピッチ系炭素繊維を用いた場合には、電気伝導性の特に高いガス拡散電極が得られる。
また、前記炭素繊維は、平均径が1〜30( μm)の範囲内のものが好ましい。更に、平均径が5( μm)以上であれば、繊維が十分に太く、折れ難いことから十分に高い機械的強度が得られる。また、平均径が20( μm)以下であれば、導電性微粒子、結合剤樹脂や溶媒との混合が容易である。
また、前記炭素繊維は、平均繊維長が50〜250( μm)の範囲内のものが好ましい。平均繊維長が50( μm)以上であれば、炭素繊維相互の絡み合いが十分に多くなって機械的強度が十分に高くなる。また、平均繊維長が250( μm)以下であれば、炭素繊維の分散性が十分に高められ、ガス拡散層の組織の均質性が十分に高くなる。
また、固体高分子形燃料電池には、燃料極側および空気極側のそれぞれにガス拡散電極が備えられるが、本発明のガス拡散層は、それら燃料極側および空気極側の何れの電極にも適用され得る。但し、両極で同一構成の電極が設けられることが必須ではなく、所望する特性や製造上の都合等に応じて、適宜の電極構成を採用することができ、本発明を適用されるのが両極のうちの一方のみであってもよい。
また、本発明は、種々の固体高分子電解質が用いられた固体高分子形燃料電池に適用され、固体高分子電解質の材質は特に限定されない。例えば、イオン交換基(-SOH 基等)を有するモノマーの単独重合体または共重合体、イオン交換基を有するモノマーとそのモノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、加水分解等の後処理によりイオン交換基に転換し得る官能基(すなわちイオン交換基の前駆的官能基)を有するモノマーの単独重合体、または共重合体(プロトン伝導性高分子前駆体)に同様な後処理を施したもの等が挙げられる。
上記高分子電解質の具体例としては、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂等のパーフルオロ型のプロトン伝導性高分子、パーフルオロカーボンカルボン酸樹脂膜、スルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)共重合体膜、スルホン酸型ポリ(トリフルオロスチレン)−グラフト−ETFE共重合体膜、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)スルホン酸膜、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(ATBS)膜、炭化水素系膜等が例示される。
本発明の一実施例である平板型のMEAを示す図である。 図1のMEAに備えられたガス拡散電極のガス拡散層の構成を模式的に示す図である。 図2のガス拡散電極用ガス拡散層における炭素繊維相互の接合状態を説明するための模式図である。 図2のガス拡散電極用ガス拡散層およびその試験片の製造方法を説明するための工程図である。 炭素繊維、炭素微粒子、熱融着性有機繊維、結合剤樹脂の割合を変えて図4に示す工程で製造された17種類のガス拡散層試験片の組成および評価結果と、炭素繊維、炭素微粒子、結合剤樹脂の割合を変えて図4と同様の工程で製造された熱融着性有機繊維を含まない6種類のガス拡散層試験片の組成および評価結果とを示す図表である。 1MPaIPガス透過性の測定に用いられた試験片固定装置を説明する図である。 IPバブルポイントの測定に用いられた試験片固定装置を説明する図である。 図5の熱融着性有機繊維を含む17種類のガス拡散層試験片の断面加圧抵抗の測定値を、図5の熱融着性有機繊維を含まない6種類のガス拡散層試験片と対比して示すグラフである。 図5の熱融着性有機繊維を含む17種類のガス拡散層試験片の断面加圧抵抗値の、熱融着性有機繊維の含有量に対する変化を示すグラフである。 図5の熱融着性有機繊維を含む17種類のガス拡散層試験片の1MPaIPガス透過性の測定値の、熱融着性有機繊維の含有量に対する変化を示すグラフである。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例である平板型の膜−電極接合体10(以下、「MEA10」という)の断面構造を示す図である。MEA10は、固体高分子形燃料電池の単電池の中心部を構成する部材であり、燃料ガスおよび酸化ガスをそれぞれガス拡散電極22,24へ供給する一対の図示しないセパレータ26から挟圧されることで1個の電池セルが構成され、その電池セルが複数個積層されることで燃料電池が構成される。MEA10は、図1に示すように、薄い平板層状の電解質膜12と、この電解質膜12を挟むように一体的に貼り合わされた一対のガス拡散電極22,24とから構成されている。そして、その一対のガス拡散電極22,24は、触媒層14,16と、ガス拡散層18,20とを層状に有し、触媒層14,16を内側にして、すなわち、触媒層14,16を電解質膜12側にして、その電解質膜12の一面および他面にそれぞれ接合されている。
上記の電解質膜12は、本発明の固体高分子電解質層に対応し、例えばNafion( デュポン社の登録商標)DE520等のプロトン導電性電解質から成るもので、例えば50( μm)程度の厚さ寸法を備えている。
また、上記の触媒層14,16は、例えば球状の炭素粉末に白金等の貴金属系触媒を担持させたPt担持カーボンブラックから成る導電性のものである。これは、例えば田中貴金属工業( 株) から市販されているもの(例えばTEC10E70TPM 等)を用い得る。触媒層14,16の厚さ寸法は、例えば50( μm)程度である。
また、上記のガス拡散層18,20は、その厚み(膜厚)に限定は無いがそれぞれ200( μm)程度の厚さ寸法を備え、その表面と裏面(すなわち触媒層14,16側の一面)との間で容易に気体が流通し得るように構成された導電性を有する多孔質層である。
上記のガス拡散層18,20は、例えば、多数の炭素繊維CFと、多数の導電性微粒子である炭素微粒子CPと、結合剤として機能する結合剤樹脂Rと、熱融着性有機繊維OFとから構成されている。そして、それらの炭素繊維CF、炭素微粒子CP、結合剤樹脂R、熱融着性有機繊維OFの各構成割合は限定されるわけでは無いが、例えば、熱融着性有機繊維OFのガス拡散層18,20( 固形分) に対する重量割合は0.5〜8(%)の範囲内であり、。炭素微粒子CPのガス拡散層18,20に対する重量割合は5〜7(%)の範囲内であり、結合剤樹脂Rのガス拡散層18,20に対する重量割合は24〜37(%)の範囲内であり、且つ、炭素繊維CFのガス拡散層18,20に対する重量割合は50〜68(%)の範囲内である。
炭素繊維CFは、ピッチを原料とするピッチ系カーボンファイバーであり、その平均直径が1〜30( μm)程度である。また、炭素繊維CFの平均繊維長が50〜250( μm)程度の範囲内であって、且つ、ガス拡散層18,20の膜厚に対する上記平均繊維長の比(=平均繊維長/膜厚)が0.1〜1の範囲内であることが望ましい。例えば、ガス拡散層18,20の膜厚が200( μm)程度であるので、炭素繊維CFの平均繊維長が50〜200( μm)程度の範囲内であることが望ましい。具体的に本実施例で採用される炭素繊維CFは、平均直径が8〜12( μm)程度であって平均繊維長が200( μm)程度のピッチ系カーボンファイバーである。炭素繊維CFのアスペクト比(=繊維長/繊維直径)は、ガス拡散層18,20の高い導電性と高いガス透過性とを確保するため、4.5〜25の範囲内であることが望ましい。上記炭素繊維CFの平均直径、平均繊維長、およびアスペクト比は、電子顕微鏡による観察から求められる。例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)測定を行い、その画像から炭素繊維CFの直径および長手方向の長さを直接測定する。
炭素微粒子CPは、その平均一次粒子径が10〜100(nm)程度の極めて微小な微粒子である。たとえば、キャボット社製のXC−72が好適に用いられる。具体的に本実施例で採用される炭素微粒子CPの平均一次粒子径は30(nm)程度である。本実施例において、上記平均一次粒子径とは一次粒子径の平均値であり、その一次粒子径は、電子顕微鏡による観察から求められる定方向径である。なお、炭素微粒子CPは、本発明の導電性微粒子に対応する。
また、結合剤樹脂Rは、熱硬化性樹脂としてよく知られたものが好適に用いられる。
熱融着性有機繊維OFは、融点或いは軟化点の相違する樹脂たとえばポリエステル樹脂やポリエチレン樹脂から構成された芯鞘タイプの有機繊維である。この芯鞘タイプの有機繊維のうちの芯部樹脂はたとえば200乃至350℃程度(好ましくは240乃至260℃程度)の相対的に高融点或いは高軟化点を有する樹脂たとえばレギュラーPETに提示される通常のポリエチレン樹脂やポリエステル樹脂(ポリテレフタル酸エチレン:PET樹脂)から構成され、その芯部樹脂の外周を被覆する鞘部( 被覆側)樹脂はたとえば60乃至180℃程度(好ましくは70乃至80℃程度)の相対的に低融点或いは低軟化点を有する樹脂たとえば低融点PETに例示される低融点のポリエチレン樹脂やポリエステル樹脂から構成される。このような芯鞘タイプの有機繊維はすでに各種上市されたものがあり、目的の熱処理温度、耐熱性の観点から選択できる。好適には、少なくとも上記鞘部樹脂は上記ポリエチレン樹脂やポリエステル樹脂のような親水性樹脂から構成されるか或いは熱融着性有機繊維OFの表面に親水処理が施される。たとえば、帝人ファイバー社製のTJ04CNは、253℃程度の融点を有するレギュラーPET樹脂から芯部樹脂が構成され、75℃程度の融点を有する低融点PET樹脂から鞘部樹脂が構成されているので、熱融着性有機繊維OFとして好適に用いられる。このように構成された熱融着性有機繊維OFは、鞘側樹脂の融点或いは軟化点よりも高い温度が加えられることで、相互に熱融着して、多孔質骨材構造30を構成する。多孔質骨材構造30とは、相互に熱融着した熱融着性有機繊維OFによって形成される相対的に剛性の高い多孔質の有機繊維結合体である。このような多孔質骨材構造30を構成するために、上記熱融着性有機繊維OFは、たとえば10μmφ程度の繊維径と、炭素繊維CFよりも2倍乃至100倍程度の十分に長い繊維長たとえば0.4〜5mm程度の繊維長とを有しており、40〜500の範囲内のアスペクト比を有している。
また、ガス拡散層18,20は、図2に模式的に示すように、相互に熱融着された熱融着性有機繊維OFから成る有機繊維結合体内において、膜厚(基材厚)よりも十分に小さく且つ熱融着性有機繊維OFよりも短い繊維長を有している炭素繊維CFは、ガス拡散層18,20の厚み方向或いはこれに傾斜した方向に伸びる向きでそのガス拡散層18,20内に多数存在する。また、各炭素繊維CFは相互に絡み合い、それらの接触点において、図3に模式的に示すように、各々の炭素繊維CFは直接的に或いはそれらの相互間に多数の炭素微粒子CPを介在させた状態で結合剤樹脂Rにより接合されている。炭素微粒子CPは、多数個が凝集してクラスター構造を成しており、無数の接点を通して炭素繊維CF相互を電気的に接触させている。このような構造を備えていることから、ガス拡散層18,20は、セパレータ26からの締付圧に対して上記相互に熱融着された熱融着性有機繊維OFから成る有機繊維結合体の強度により変形が抑制されており、十分に高い導電性と高いガス透過性とが維持されている。
なお、上記図3は、本実施例のガス拡散層18,20における典型的な構造例を模式的に示したもので、この図3に示されるような構造は必ずしも炭素繊維CFの全ての接触点で形成されていない。すなわち、相互に熱融着された熱融着性有機繊維OFから成る有機繊維結合体( 図示せず)内において、炭素繊維CFが相互に直に接していたり、炭素微粒子CPが介在させられず結合剤樹脂Rのみで接合されている部分も存在する。
平板型のガス拡散層18,20は、例えば以下のようにして製造される。以下、図4を参照して製造方法を説明する。図4は、後述する試験サンプルの製造方法を示した工程図であるが、最後の評価工程を除けば、以下に述べるガス拡散層18,20の製造方法を説明するための工程図でもある。
まず、炭素繊維CFと炭素微粒子CPと溶媒とが前述の範囲内の所定の重量割合となるように秤量され、第1混合工程P1において15分程度の時間で混合される。この混合は、スターラまたはそれと同様の構造の混合機が300rpm程度の回転で実行される。
次いで、850μm程度の目開きのステンレスメッシュを通してほぐした熱融着性有機繊維OFと溶媒とが前述の範囲内の所定の重量割合となるように秤量され、第2混合工程P2において超音波混合機を用いて3分程度の時間で混合される。この第2混合工程P2は、熱融着性有機繊維OFをほぐして溶媒中に分散させるためのものである。そして、溶媒と液状の結合剤樹脂Rとが前述の範囲内の所定の重量割合となるように秤量され、第3混合工程P3において10分程度の時間で混合される。この混合は、スターラまたはそれと同様の構造の混合機が300rpm程度の回転で実行される。この第3混合工程P3における混合処理の結果、ガス拡散層18,20を製造するためのスラリーが得られる。熱融着性有機繊維OFの表面には良くしられた親水処理が施されている一方で、親水性が備えられた結合剤樹脂と熱融着性有機繊維OFが容易に濡れて均一に混合される。このスラリーは、炭素繊維CF、導電性微粒子である炭素微粒子CP、結合剤樹脂R、および、加熱により相互に熱融着させられる熱融着性有機繊維OFが溶媒内に均一に分散させられたものである。第1混合工程P1、第2混合工程P2、第3混合工程P3が、スラリー製造工程に対応している。
続く成形工程P4では、200μm程度またはそれよりやや大きい寸法の厚みを有するステンレス或いは銅などの金属版に成形すべき所定形状たとえば100mm×100mmの矩形の成形穴が貫通して形成されたメタルマスクをその底板と重ねた状態でスラリー槽内に入れてスラリーを掬い入れ且つメタルマスクを底板と共に揺らしながら膜厚均等化してガス拡散層成形体を得る。上記ガス拡散層成形体には、必要に応じて、例えば5〜75℃程度の温度の乾燥処理が所定時間施される。
そして、熱処理工程P5では、熱融着性有機繊維OFが溶媒中で流動する状態のまま乾燥処理ができるようになるべく速やかにメタルマスクから外したガス拡散層成形体に、乾燥炉( オーブン)内において150℃程度の温度で3時間程度の間乾燥が行われる。この加熱によって、ガス拡散層18、20内から溶媒が除去されるとともに、その鞘側樹脂の軟化点よりも高い温度が加えられることで、主として熱融着性有機繊維OFが相互に熱融着させられて多孔質骨材構造30が構成される。同時に、親水性のある結合剤樹脂が親水処理された熱融着性有機繊維OFの表面に優先的に付着し、それに炭素繊維CFおよび炭素微粒子CPが絡み着き、結合剤樹脂Rが乾燥硬化させることで固定される。これにより、上記多孔質骨材構造30内において炭素繊維CFが相互に絡み合い且つクラスター構造の炭素微粒子CPを介して結合剤樹脂Rで接合される。すなわち、MEA10のガス拡散電極22,24を構成するためのガス拡散層18,20が得られる。乾燥・熱処理後の厚さ寸法は、例えば200( μm)程度である。前記乾燥処理および前記熱処理工程P5は、本発明の硬化工程に対応する。
上記のようにして製造されたガス拡散層18,20は、その片面に触媒スラリーが塗布されて触媒層14,16が形成され或いは予め成形された触媒層14,16が重ねられたガス拡散電極(電極シート)22,24が作製され、シート状の電解質膜12を触媒層14,16が内側になるように2枚のガス拡散電極22,24で挟み、ホットプレスを施すことで、MEA10が得られる。このように、ガス拡散層18,20はガス拡散電極用基材として機能している。なお、触媒スラリーおよび電解質膜12を構成する電解質の詳細については、本実施例を理解するために必要ではないので省略する。
ここで、上記ガス拡散層18,20が熱融着性有機繊維OFを含むことによる効果を確認するために、以下の条件下で作成したガス拡散層試験片について、以下の条件下で行った試験の評価結果、すなわち断面加圧抵抗、ガス透過性、バブルポイント細孔径、圧縮変形率、引張強度を説明する。断面加圧抵抗は、厚み方向に加圧した状態で測定した表面と裏面との間の単位面積当たりの膜厚を考慮しない抵抗値( mΩcm)である。TP(スループレーン) ガス透過性は、所定圧力のガスをガス拡散層試験片の一面に与えたときに他面へ透過する単位面積当たりのガス流量( ml・mm/cm/min)である。IP(インプレーン) ガス透過性は、所定圧力で挟圧されたガス拡散層試験片の一面に所定圧力のガスを与えたときそのガス拡散層試験片の外側端面から流出するガス流量( cc/sec)である。IPバブルポイント細孔径は、ガス拡散層試験片の片面から他面へ通過する細孔の実質的な径( μmφ)である。圧縮変形率は、ガス拡散層試験片を厚み方向に所定の圧力で加圧( 挟圧) した前後の膜圧変化率( %)である。引張強度は、ガス拡散層試験片に引っ張り張力を加えたときに破断に至る直前の応力( N)である。
<ガス拡散層試験片の材料および製造条件>
・結合剤樹脂:住友ベークライト株式会社製のフェノール系樹脂
・炭素繊維:三菱樹脂株式会社製の
カーボンファイバー(10 μm φ×200 μm)
・導電性微粒子:キャボット社製の炭素微粒子XC-72
・熱融着性有機繊維:帝人ファイバー株式会社製の
芯鞘型有機繊維TJ04CN(10 μm φ×1.0 mm)
・溶媒 :日本アルコール販売社のアルコール混合溶媒ソルミックスAP-7
図4に示す製造工程により上記の材料を図5に示す割合で有する、23種類の試験片1乃至23を直径25mmφ×厚み200μmとなるようにそれぞれ作成した。試験片1乃至17は熱融着性有機繊維OFを含む試験片であり、試験片18乃至23は熱融着性有機繊維OFを含まない試験片である。
また、試験片10に相当する基本調合を有し且つそれに含まれる熱融着性有機繊維OFの繊維長が異なるもの(0.4mm、0.6mm 、0.8mm 、1.0mm 、5.0mm)を有する繊維長試験片を5種類作成した。
<断面加圧抵抗の試験条件>
アズワン( 株) 製の小型熱プレス機AH-2003 を用いて前記ガス拡散層試験片を一対の金メッキ銅板で挟んだ状態で予め定められた一定の圧力( 1MPa)で加圧し、且つ、50(mA)の測定電流を通電させたときの上記一対の金メッキ銅板間の電圧を室温にて測定することにより断面加圧抵抗( mΩcm)を求めた。
<TPガス透過性の試験条件>
PMI社製のキャピラリーフローポロメータ1200AEL を用い、空気圧が30(kPa) のガスを、所定の透過性測定治具に固定されたガス拡散層試験片の片面に与えたときの他面へ透過する空気流量すなわち他面から流出する単位時間当たりの空気流量を室温にて測定し、その空気流量に基づいてTPガス透過性( ml・mm/cm/min)を求めた。
<1MPaIPガス透過性の試験条件>
PMI社製キャピラリフローポロメータ1200AEL を用い、図6に示すステンレス製の試験片固定治具にガス拡散層試験片を1MPaの圧力で挟圧し、そのガス拡散層試験片の一面に30(kPa) の圧力の空気を与えたとき、その拡散層試験片の外周端面から流出する単位時間当たりの空気流量を室温にて測定し、その空気流量に基づいてIPガス透過性( cc/sec)を求めた。
<1MPaIPバブルポイント細孔径試験条件>
PMI社製キャピラリフローポロメータ1200AEL を用い、図7に示すステンレス製の試験片固定治具によって1MPa圧力でガス拡散層試験片を挟圧し、室温にて、そのガス拡散層試験片の一面に水を満たした状態で圧力の空気を与えたときその水を押し退けて外周端面へ通過してその外周端面からバブルが発生したときの空気圧を測定し、予め求められた細孔径と空気圧との関係から測定された空気圧に基づいてバブルポイント細孔径( μmφ)を算出し求めた。
<1MPa圧縮変形率試験条件>
所定の試験片厚み測定治具を用いて1MPaの圧力で前記ガス拡散層試験片を全面的に押圧したときのその押圧前後の膜厚みを室温にてそれぞれ求め、それら押圧前後の膜圧の変化率( %)を算出した。
<引張強度試験条件>
島津製作所製の小型卓上試験機EZ Testを用いて室温中にて前記ガス拡散層試験片(幅15mm×長さ45mm×厚み200μm)を長手方向に引っ張り、破壊したときの強度( N)を求めた。
図5には、各試験片の断面加圧抵抗および1MPaIPガス透過性の測定値が示されており、図8、図9、図10はそれらの測定値をグラフ化したものである。図8は各試験片の炭素微粒子CPに対する結合剤樹脂Rの重量比R/CPに対する断面加圧抵抗値( mΩcm)の関係を示し、図9は各試験片の熱融着性有機繊維OFの含有量( 重量%)に対する断面加圧抵抗値( mΩcm)の関係を示し、図10は各試験片の熱融着性有機繊維OFの含有量( 重量%)に対する1MPaIPガス透過性( cc/sec)の関係を示している。断面加圧抵抗( mΩcm)は50以下が一応の判定基準とされており、図5および図8に示すように、炭素微粒子CPに対する結合剤樹脂Rの重量比R/CPが8以下の範囲の試験片1乃至14がそれを満足している。同様に、図5および図9に示すように、熱融着性有機繊維OFの含有量( 重量%)が8以下の試験片1乃至14がそれを満足している。さらに、1MPaIPガス透過性( cc/sec)は10以上が一応の判定基準とされており、図5および図10に示すように、熱融着性有機繊維OFを含む試験片1乃至17がそれを満足している。すなわち、試験片1乃至14は、実用上望まれる十分に低い断面加圧抵抗値( mΩcm)と、実用上望まれる十分に高い1MPaIPガス透過性( cc/sec)との両方を備えており、実施例に対応している。
しかし、熱融着性有機繊維OFを含む試験片1乃至17のうち、炭素繊維CFの重量割合が50%を下回るもの、炭素微粒子CPの重量割合が5%を下回るもの、熱融着性有機繊維OFが8%を上回るもの、結合剤樹脂Rが37%を上回るもの、すなわち試験片15乃至17は、断面加圧抵抗値( mΩcm)の実用上望まれる低い値が得られない。また、熱融着性有機繊維OFを含まない試験片18乃至23は、実用上望まれる十分に低い断面加圧抵抗値( mΩcm)が得られないし、実用上望まれる十分に高い1MPaIPガス透過性( cc/sec)が得られない。すなわち、試験片15乃至23は、断面加圧抵抗値( mΩcm)および1MPaIPガス透過性( cc/sec)のうちの少なくとも一方が実用上望まれる範囲から外れた特性を備えており、比較例に対応している。
TPガス透過性( ml・mm/cm/min) については5000以上であることが一応の判定基準とされているが、試験片1乃至17のガス透過性の測定値についてはいずれもその判定基準を超えている。また、1MPaIPバブルポイント細孔径( μm) は35μm以上が一応の判定基準とされているが、試験片1乃至17の1MPaIPバブルポイント細孔径の測定値はいずれもその判定基準を超えている。また、1MPa圧縮変形率 (%) については10%以下が一応の判定基準とされているが、試験片1乃至17の殆どのものがその判定基準を下まわっている。また、その判定基準を少し上回るものが含まれているが、製品として使用可能の範囲内であって問題はない。また、引張強度( N)については1.5N( ニュートン) 以上が一応の判定基準とされているが、試験片1乃至17の殆どのものがその判定基準を超えている。
また、前記5種類の繊維長試験片について、断面加圧抵抗、TPガス透過性、1MPaIPガス透過性、1MPaIPバブルポイント細孔径、1MPa圧縮変形率、引張強度を測定した。この結果、5種類の繊維長試験片は、それぞれ、50mΩcm以下の断面加圧抵抗、5000ml・mm/cm/mm以上のTPガス透過性、10cc/sec以上の1MPaIPガス透過性、35μm以上の1MPaIPバブルポイント細孔径、10%以下の1MPa圧縮変形率、1.5N以上の引張強度を有し、判定基準を満足した。
特に、TPガス透過性については、上記試験片1乃至14および繊維長試験片は判定基準5000( ml・mm/cm/min)の4倍程度の20000前後の値を示し、従来の市販のカーボンペーパーの値よりも格段によい値を示している。相互融着した熱融着性有機繊維OFにより形成される多孔質骨材構造30の存在により、燃料ガス或いは酸化性ガスの透過が容易となって、MEA10の大幅な性能向上が期待できる。
上述したように、本実施例のガス拡散層18、20によれば、加熱により相互に熱融着させられた熱融着性有機繊維OFにより構成される多孔質骨材構造30を有し、その多孔質骨材構造30内において、炭素繊維CFが炭素微粒子CPと共に結合剤樹脂Rによって相互に結着されて成ることから、比較的少ない熱融着性有機繊維OFの相互融着によって比較的高い剛性を有する多孔質骨材構造30がガス拡散層18、20内に形成されるので、高いガス透過性および加圧時の導電性とが同時に備えられたガス拡散層18、20が得られる。また、多孔質骨材構造30が150℃程度の比較的低温で熱融着性有機繊維OFの相互融着によって形成されるので、高温焼成が不要で安価に製造でき、高いガス透過性( ガス拡散性) と導電性を有してフッ素を用いなくとも高排水性が得られ、セパレータ26からの圧縮圧力でもガス拡散層18、20自体が変形しない高い剛性を有し、しかも、スラリーの塗布状態での温度処理によってそのまま強度が付与される。従って、導電性およびガス拡散性が共に高く且つフッ素を用いなくとも排水性の高いガス拡散層18、20が得られる。
因みに、特許第3547013号公報に記載のガス拡散層は、カーボンペーパー( 炭素繊維から成る炭素紙) にフッ素樹脂をコーティングして排水処理を施したものであるが、カーボンペーパー製造時にカーボン繊維を1800℃程度の極めて高温で焼成する必要がある点、MEAに適用する際には構造的な制限がある点、高価である点等において問題があった。また、特開2004−079406号公報に記載されたものでは、導電性のカーボンファイバ同士の接触部において導電性を付与するために入れるカーボン粒子の粒径が大きく、ガス透過性を阻害するためにガス透過性が低く、接触点が少ないために導電性が低いという問題があった。また、特開2009−037932号公報に記載されたものでは、MEAの製造に際してはフッ素樹脂を溶着する350℃程度の高温処理工程が必要であり、フッ素樹脂の溶着によってガス拡散層或いはガス拡散電極のガス透過性が低下し、製造コストが高くなり、また、耐熱性が低い電解質層を含むためMEAの連続製造が困難であるという問題点があった。これに対して、本実施例のガス拡散層18、20によれば、相互に融着された熱融着性有機繊維OFからなる多孔質骨材構造30を含むことで、加圧時の細孔保形強度が高められて1MPaIPガス透過性が向上したのに加え、断面加圧抵抗やTPガス透過性についても大幅に向上した。
また、本実施例のガス拡散層18、20によれば、熱融着性有機繊維OFは、芯部樹脂とその芯部樹脂の外周を被覆しその芯部樹脂よりも融点或いは軟化点が低い鞘部樹脂とから構成されているので、熱処理時の加圧のばらつきがあっても安定した形状および強度を有する多孔質骨材構造30を構成することができる。
また、本実施例のガス拡散層18、20によれば、熱融着性有機繊維OFは、炭素繊維CFよりも長い繊維長を有することから、結合剤樹脂Rによって導電性微粒子CPと共に相互に結着された炭素繊維CFを孔内に含む多孔質骨材構造30が十分に且つ容易に形成される。
また、本実施例のガス拡散層18、20によれば、熱融着性有機繊維OFは親水性であるため、親水性の結合剤樹脂Rが優先的に付着して多孔質骨材構造30を強化するために使われるので、余分な結合剤樹脂が炭素繊維CF間に入り込まず、断面加圧抵抗が大幅に向上すると同時に、TPガス透過性および1MPaIPガス透過性が大幅に向上する。ここで、親水性とは、例えば、水に対する接触角が、100°程度より小さいことをいう。
また、本実施例のガス拡散層18、20によれば、熱融着性有機繊維OFのガス拡散層18、20(固形分) に対する重量割合は、0.5〜8%の範囲内であることから、加熱により相互に熱融着させられた熱融着性有機繊維OFにより高い剛性の多孔質骨材構造30を構成するので、セパレータ26からの圧縮圧力でもガス拡散層18、20自体が変形しない。熱融着性有機繊維OFのガス拡散層に対する重量割合が0.5%を下回ると、その熱融着性有機繊維OFの相互の熱融着により構成される多孔質骨材構造30の剛性が十分に得られず、ガス拡散層の機械的強度が不足する可能性がある。反対に、熱融着性有機繊維OFのガス拡散層18、20に対する重量割合が8%を上回ると、十分なガス透過性や電導性が得られ難くなる。
また、本実施例のガス拡散層18、20によれば、熱融着性有機繊維OFは、40〜500の範囲内のアスペクト比( =繊維長/繊維径) を有していることから、加熱により相互に熱融着させられた熱融着性有機繊維OFにより高い剛性の多孔質骨材構造30が得られる。熱融着性有機繊維OFのアスペクト比が40を下まわると、その熱融着性有機繊維OFの相互の熱融着により構成される多孔質骨材構造30の孔が小さくなり過ぎてガス透過性が損なわれる。反対に、熱融着性有機繊維OFのアスペクト比が500を上まわると、その熱融着性有機繊維OFの相互の熱融着により構成される多孔質骨材構造30の孔が大きくなり過ぎて十分な剛性が得られない。
また、本実施例のガス拡散層18、20によれば、炭素微粒子CPの結合剤樹脂Rに対する重量比( 結合剤樹脂量R/炭素微粒子量CP) は、8以下であることから、高い導電性およびガス拡散性を有する多孔質のガス拡散層18、20が得られる。炭素微粒子CPの結合剤樹脂Rに対する重量割合が8を超えると、ガス透過性が低下し、ガス拡散層18、20の導電性が低下する可能性がある。
また、本実施例のガス拡散層18、20によれば、固体高分子電解質膜12と、その固体高分子電解質膜12の一面および他面にそれぞれ設けられた触媒層14、16と、それら触媒層14、16の表面にそれぞれ設けられた多孔質且つ導電性のガス拡散層18、20とを含むことから、導電性およびガス拡散性が共に高く且つフッ素を用いなくとも排水性の高いガス拡散層18、20を用いたMEA(膜−電極接合体)10が得られる。
また、本実施例のガス拡散層18、20の製造方法によれば、(o) 炭素繊維CF、導電性微粒子CP、結合剤樹脂R、および、加熱により相互に熱融着させられる熱融着性有機繊維OFが溶媒に分散させられたスラリーから、シート状成形体を成形する成形工程P4と、その成形工程P1により成形されたシート状成形体を熱処理することで前記熱融着性有機繊維OFを相互に熱融着させて多孔質骨材構造30を構成すると共に、その多孔質骨材構造30内において炭素繊維CFが導電性微粒子CPと共に結合剤樹脂Rによって相互に結着させる熱処理工程P5とを、含むことから、成形したシート状成形体のままで比較的低温の熱処理工程P5を通すことにより連続的にガス拡散層18、20を製造することができ、そのガス拡散層18、20を低価格で得ることができる。また、本実施例のガス拡散層18、20の製造方法によれば、高温焼成が不要で安価に製造でき、高いガス透過性と導電性を有し、セパレータからの圧縮圧力でもガス拡散層自体が変形しない高い剛性を有し、しかも、スラリーの塗布状態での温度処理によってそのまま強度をガス拡散層18、20に付与できる。
また、本実施例のガス拡散層18、20の製造に用いるスラリーは、炭素繊維CF、導電性微粒子CP、結合剤樹脂R、および、加熱により相互に熱融着させられる熱融着性有機繊維OFが溶媒に分散させられていることから、そのスラリーからシート状成形体を成形し、そのシート状成形体の状態で熱処理を施すことにより、熱融着性有機繊維OFを相互に熱融着させて多孔質骨材構造30を構成すると同時に、その多孔質骨材構造30内において炭素繊維CFが導電性微粒子CPと共に結合剤樹脂Rによって相互に結着させることができるので、連続的にガス拡散層18、20を製造でき、そのガス拡散層18、20を低価格で得ることができる。また、本実施例のガス拡散層18、20の製造方法に用いるスラリーによれば、高温焼成が不要で安価に製造でき、高いガス透過性と導電性を有し、セパレータからの圧縮圧力でもガス拡散層自体が変形しない高い剛性を有し、しかも、スラリーの塗布状態での温度処理によってそのまま強度をガス拡散層18、20に付与できる。
また、本実施例のガス拡散層18、20において、熱融着性有機繊維OFのガス拡散層18,20( 固形分) に対する重量割合は0.5〜8(%)の範囲内であり、炭素微粒子CPのガス拡散層18,20に対する重量割合は5〜7(%)の範囲内であり、結合剤樹脂Rのガス拡散層18,20に対する重量割合は24〜37(%)の範囲内であり、且つ、炭素繊維CFのガス拡散層18,20に対する重量割合は50〜68(%)の範囲内であり、炭素微粒子CPの結合剤樹脂Rに対する重量比( 結合剤樹脂量R/炭素微粒子量CP) は3.5乃至8である。このようにすれば、ガス拡散層18,20の導電性およびガス透過性が、上記の重量割合の範囲から何れかが外れているものと比較して高いという利点がある。すなわち、ガス拡散層18,20の機械的強度を十分に確保しつつ、ガス拡散層18,20の導電性およびガス透過性が一層高くなるという利点がある。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
例えば、前述の熱融着性有機繊維OFは、相対的に高融点或いは高軟化点を有する芯部樹脂と、その芯部樹脂の外周を被覆し相対的に低融点或いは低軟化点を有する樹脂鞘側( 被覆層側)樹脂とから成る芯鞘型有機繊維であったが、必ずしもそのような芯鞘型有機繊維でなくてもよい。たとえば、熱処理工程P5において相互に熱融着可能な樹脂から成る単純な有機繊維であってもよい。
また、前述の本実施例において、ガス拡散層18,20は導電性微粒子CPを備えているが、この炭素微粒子CPはガス拡散層18,20の導電性を高めるために配合されているものであるのでその微粒子の材質は炭素に限定されるわけではなく、炭素微粒子CPに替えて或いはそれと共に金、銀、白金、銅などの金属微粒子を備えたガス拡散層18,20も考え得る。
また、前述の本実施例において、炭素繊維CFは、ピッチ系カーボンファイバーであるが、ポリアクリルニトリル繊維を炭化したPAN系カーボンファイバーなどの他のカーボンファイバーであっても差し支えない。例えば、炭素繊維CFがPAN系カーボンファイバーであれば、ピッチ系カーボンファイバー等である場合と比較して、PAN系カーボンファイバーは高強度であるので、ガス拡散層18,20の機械的強度が高くなるという利点がある。
また、前述の本実施例の図1において、本発明のガス拡散層18,20はMEA10の両方の電極の何れにも備えられているが、一方の電極が本発明のガス拡散層18を備え他方の電極が従来からのガス拡散層を備えたMEAも考え得る。
また、前述の本実施例において、炭素繊維CFはその平均直径が1〜30( μm)程度であるが、その平均直径が5〜20( μm)程度であればより好ましい。その平均直径が5( μm)以上であれば、繊維が十分に太く、折れ難いことから十分に高い機械的強度が得られ、一方、その平均直径が20( μm)以下であれば、導電性微粒子CP、熱融着性有機繊維OFや溶剤との混合が容易となるからである。
また、前述の本実施例において、ガス拡散層18,20は、多数の炭素繊維CFと、多数の導電性微粒子CPと、結合剤樹脂Rとから構成されているが、その他の材料を含んでいても差し支えない。
また、前述の本実施例の図4において、成形工程P4にて、シート状成形体は、例えばメタルマスクを用いて成型されるが、そのようなメタルマスク型によって成形されることに限定されるわけではない。
また、前述の本実施例の図4において、成形工程P4と熱処理工程P5との間に乾燥工程が設けられてもよいが、その乾燥工程は熱処理工程P5とが一工程で行われて、シート状成形体からの溶媒の除去と熱融着性有機繊維OF相互の熱融着および結合剤樹脂Rの硬化とが並行して進行しても差し支えない。
10:MEA(膜−電極接合体)
12:電解質膜(固体高分子電解質層)
14,16:触媒層
18,20:ガス拡散層
22,24:ガス拡散電極
26:セパレータ
30:多孔質骨材構造
CF:炭素繊維
CP:炭素微粒子(導電性微粒子)
R:結合剤樹脂
OF:熱融着性有機繊維
P1:第1混合工程( スラリー製造工程)
P2:第2混合工程( スラリー製造工程)
P3:第3混合工程( スラリー製造工程)
P4:成形工程
P5:熱処理工程(硬化工程)

Claims (9)

  1. 固体高分子形燃料電池の固体高分子電解質上にガス拡散電極を構成するために該固体高分子電解質上に触媒層を介して設けられる多孔質且つ導電性のガス拡散層であって、
    加熱により相互に熱融着させられた熱融着性有機繊維により構成される多孔質骨材構造を有し、該多孔質骨材構造内において、炭素繊維が導電性微粒子と共に結合剤樹脂によって相互に結着されて成ることを特徴とする多孔質且つ導電性のガス拡散層。
  2. 前記熱融着性有機繊維は、芯部樹脂と該芯部樹脂の外周を被覆し該芯部樹脂よりも融点或いは軟化点が低い鞘部樹脂とから構成されていることを特徴とする請求項1のガス拡散層。
  3. 前記熱融着性有機繊維は、前記炭素繊維よりも長い繊維長を有することを特徴とする請求項1又は2のガス拡散層。
  4. 前記熱融着性有機繊維の前記ガス拡散層に対する重量割合は、0.5〜8%の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1のガス拡散層。
  5. 前記熱融着性有機繊維は、40〜500の範囲内のアスペクト比を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1のガス拡散層。
  6. 前記導電性微粒子は炭素微粒子であり、
    該炭素微粒子の前記ガス拡散層内の結合剤樹脂に対する重量割合(結合剤樹脂量/炭素微粒子量) は、8以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1のガス拡散層。
  7. 固体高分子電解質膜と、該固体高分子電解質膜の一面および他面にそれぞれ設けられた触媒層と、それら触媒層の表面にそれぞれ設けられた請求項1乃至6のいずれか1の多孔質且つ導電性のガス拡散層とを含むことを特徴とする膜−電極接合体。
  8. 請求項1乃至6のいずれか1の多孔質且つ導電性のガス拡散層の製造方法であって、
    炭素繊維、導電性微粒子、結合剤樹脂、および、加熱により相互に熱融着させられる熱融着性有機繊維が溶媒に分散させられたスラリーから、シート状成形体を成形する成形工程と、
    該成形工程により成形された前記シート状成形体を熱処理することで前記熱融着性有機繊維を相互に熱融着させて多孔質骨材構造を構成すると共に、該多孔質骨材構造内において前記炭素繊維が導電性微粒子と共に結合剤樹脂によって相互に結着させる熱処理工程と
    を、含むことを特徴とするガス拡散層の製造方法。
  9. 請求項1乃至6のいずれか1の多孔質且つ導電性のガス拡散層の製造に用いるスラリーであって、
    炭素繊維、導電性微粒子、結合剤樹脂、および、加熱により相互に熱融着させられる熱融着性有機繊維が溶媒に分散させられていることを特徴とするガス拡散層の製造に用いるスラリー。
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