JP2012153932A - ノズル - Google Patents
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Abstract
【課題】メンテナンス作業の手間を低減させ、プラズマCVD装置の稼動率を向上させながらも、被処理体の膜厚のばらつきを抑制できるノズルを提供する。
【解決手段】被処理体1の表面に成膜処理を施すプラズマCVD装置に取り付けられ、被処理体1が配置された放電空間に放電ガスおよび成膜ガスを供給し、放電ガスを供給する放電ガス流路14と成膜ガスを供給する成膜ガス流路16とを各別に設け、放電ガス流路14の下流側の端部に、放電ガスを吐出する放電ガス吐出口15を設けるとともに、成膜ガス流路16の下流側の端部に、放電ガス吐出口15から吐出される放電ガスを挟み込み又は包囲する領域に成膜ガスを吐出する成膜ガス吐出口17を設けてある。
【選択図】図1
【解決手段】被処理体1の表面に成膜処理を施すプラズマCVD装置に取り付けられ、被処理体1が配置された放電空間に放電ガスおよび成膜ガスを供給し、放電ガスを供給する放電ガス流路14と成膜ガスを供給する成膜ガス流路16とを各別に設け、放電ガス流路14の下流側の端部に、放電ガスを吐出する放電ガス吐出口15を設けるとともに、成膜ガス流路16の下流側の端部に、放電ガス吐出口15から吐出される放電ガスを挟み込み又は包囲する領域に成膜ガスを吐出する成膜ガス吐出口17を設けてある。
【選択図】図1
Description
本発明は、被処理体の表面に成膜処理を施すプラズマCVD装置に取り付けられ、前記被処理体が配置された放電空間に放電ガスおよび成膜ガスを供給するノズルに関する。
従来のプラズマCVD装置に関して、例えば、図3に示すように、放電ガスと成膜ガスとの混合ガスを供給する混合ガス流路を設け、混合ガス流路の下流側の端部に混合ガス吐出口を設けるノズルが知られている。この技術では、混合ガス吐出口から吐出された混合ガスに含まれる放電ガスが放電空間で電離してプラズマが生成される。混合ガスに含まれる成膜ガスはその流動の初期段階からプラズマに接触し、励起・イオン化する。このとき、混合ガス吐出口付近で励起・イオン化されたラジカルやイオンがノズル先端部に堆積してノズル先端部に汚れが付着し易くなる。ノズル先端部に付着する汚れの量が増大すると、ノズル先端部に突起が形成されて局所的に電界が集中し、突起の先端から異常放電が発生する。このような異常放電が発生すると、均一なプラズマを維持できなくなり、被処理体の表面を成膜処理できなくなる。このため、ノズルを頻繁に清掃して突起を除去する必要がある等、メンテナンス作業の手間が掛かる問題があった。加えて、メンテナンス作業中はプラズマCVD装置を稼動できないため、プラズマCVD装置の稼動率が低下する問題もあった。
これに対し、例えば、特開2004−91837号公報、特開2004−124240号公報、特開2004−143568号公報、特開2004−176108号公報、特開2009−21615号公報には、成膜ガスを供給する成膜ガス流路および成膜ガス吐出口の両横側に、放電ガスを供給する放電ガス流路および放電ガス吐出口を設ける構成が開示されている(特許文献1〜5参照)。
この技術では、放電ガスが放電空間で電離してプラズマが生成される。成膜ガスが、その流動に伴ってプラズマに少しずつ接触し、励起・イオン化する。このため、成膜ガスがノズル先端部から流動方向に離間した位置で励起・イオン化し易くなる。その結果、励起・イオン化されたラジカルやイオンがノズル先端部の表面に堆積し難くなり、ノズルに汚れが付着し難くなる。
しかしながら、上記特許文献1〜5の技術では、成膜ガスが放電ガスによって挟み込まれた状態で流動する。このため、成膜ガスが両横側に拡散し難くなり、中央側に成膜ガスの濃度が高い領域が形成される。よって、励起・イオン化されたラジカルやイオンがノズル先端部の表面の中央に堆積してノズルが汚れることがあり、いまだ改善の余地があった。加えて、成膜ガスがノズル中心から両横側に拡散するのを過度に抑制する結果、成膜領域の周辺におけるラジカルやイオンの濃度が低くなり、例えば被処理体の側部の膜厚が中央部の膜厚に比べて薄くなる等、被処理体の膜厚が安定しなくなる。
本発明の目的は、メンテナンス作業の手間を低減させ、プラズマCVD装置の稼動率を向上させながらも、被処理体の膜厚を安定化し得るノズルを提供する点にある。
本発明のノズルは、被処理体の表面に成膜処理を施すプラズマCVD装置に取り付けられ、前記被処理体が配置された放電空間に放電ガスおよび成膜ガスを供給するものであって、その第1特徴構成は、前記放電ガスを供給する放電ガス流路と前記成膜ガスを供給する成膜ガス流路とを各別に設け、前記放電ガス流路の下流側の端部に、前記放電ガスを吐出する放電ガス吐出口を設けるとともに、前記成膜ガス流路の下流側の端部に、前記放電ガス吐出口から吐出される前記放電ガスを挟み込み又は包囲する領域に前記成膜ガスを吐出する成膜ガス吐出口を設けた点にある。
本構成のように、ノズルから吐出された成膜ガスが放電ガスを挟み込み又は包囲する状態で流動することで、プラズマの生成領域を中央側に確保しつつ、成膜ガスが両横側又は径方向外方側に拡散し易くなる。成膜ガスと放電ガスとが直ちに混合することは無く、ノズルから離間した位置で成膜ガスがプラズマに接触し、励起・イオン化される。この結果、ラジカルやイオンがノズル先端部の表面に堆積し難くなり、ノズルが汚れ難くなる。成膜ガスは、両横側又は径方向外方側に拡散した状態でプラズマに接触し、励起・イオン化される。このため、広い領域で成膜処理を施すことができる。加えて、成膜ガスが被処理体の側部に回り込み易くなり、被処理体の側部においても十分な膜厚を確保できる等、被処理体の膜厚が安定化する。
本発明の第2特徴構成は、内側の筒状部と外側の筒状部とを二重円筒状に配置し、前記内側の筒状部の内部に前記放電ガス流路を形成するとともに、前記内側の筒状部と前記外側の筒状部との間に前記成膜ガス流路を形成し、前記内側の筒状部の先端部に、先端側ほど径が大きい放電ガス案内部を設けてある点にある。
本構成によれば、放電ガス案内部の案内によって、放電ガスがノズル軸心方向から径方向外方側に傾斜する方向に沿って流動する。このため、放電ガス吐出口から吐出された放電ガスが径方向外方側に拡散し易くなり、プラズマの生成領域が径方向に拡大する。その結果、成膜ガスが励起・イオン化される領域が径方向に拡大し、被処理体の広い領域に対して均一な成膜を施すことができる。
本発明の第3特徴構成は、前記外側の筒状部の先端部の内周面に、拡径部を設けてある点にある。
放電ガス案内部の案内によって、放電ガス案内部付近を流動する成膜ガスはノズル軸心方向から径方向外方側に傾斜する方向に沿って流動する。このため、成膜ガスが必要以上に径方向外方側に拡散することがある。
本構成によれば、成膜ガスが拡径部を回り込んで成膜ガス吐出口から吐出される。このため、成膜ガス吐出口に対して成膜ガス流路をより径方向外方側に位置させることができる。よって、成膜ガスが放電ガス案内部によって案内され難くなり、成膜ガスが必要以上に径方向外方側に拡散することを抑制できる。本構成であれば、放電ガスが径方向外方側に拡散してプラズマの生成領域を広く確保できるとともに、成膜ガスの過度の拡散を抑制することができ、ノズルからやや離間した位置であっても必要な成膜ガス濃度を得ることができる。加えて、拡径部が成膜ガスの圧力の偏りを吸収するバッファ空間の機能を有するため、成膜ガスを均等に吐出できる。よって、成膜ガス濃度が均一となる。
本構成によれば、成膜ガスが拡径部を回り込んで成膜ガス吐出口から吐出される。このため、成膜ガス吐出口に対して成膜ガス流路をより径方向外方側に位置させることができる。よって、成膜ガスが放電ガス案内部によって案内され難くなり、成膜ガスが必要以上に径方向外方側に拡散することを抑制できる。本構成であれば、放電ガスが径方向外方側に拡散してプラズマの生成領域を広く確保できるとともに、成膜ガスの過度の拡散を抑制することができ、ノズルからやや離間した位置であっても必要な成膜ガス濃度を得ることができる。加えて、拡径部が成膜ガスの圧力の偏りを吸収するバッファ空間の機能を有するため、成膜ガスを均等に吐出できる。よって、成膜ガス濃度が均一となる。
本発明の第4特徴構成は、前記拡径部は、ノズル軸心方向に沿う円筒面を有している点にある。
本構成によれば、円筒面の案内によって、円筒面付近を流動する成膜ガスはノズル軸心方向に沿って流動する。このため、成膜ガスが必要以上に径方向外方側に拡散することを抑制できる。よって、成膜ガスが励起・イオン化する領域をより適正に形成することができる。
本発明の第5特徴構成は、前記円筒面の先端部に、先端側ほど径が小さい成膜ガス案内部を形成してある点にある。
本構成によれば、成膜ガス案内部の案内によって、成膜ガス案内部付近を流動する成膜ガスはノズル軸心方向から径方向内方側に傾斜する方向に沿って流動する。このため、成膜ガスが必要以上に径方向外方側に拡散することを確実に抑制できる。
放電ガス案内部付近を流動する成膜ガスは、成膜ガス案内部付近を流動する成膜ガスに衝突してその流動方向を内方寄りに変更する。これにより、成膜ガス案内部付近だけでなくて放電ガス案内部付近を流動する成膜ガスをも必要以上に径方向外方側に拡散することを抑制できる。
本発明の第6特徴構成は、前記外側の筒状部および前記内側の筒状部の先端を、多数のガス噴出孔を有する単一円板状の電極に構成した点にある。
電極の先端面に凸部が存在すると、凸部の先端に電界が集中して異常放電が発生することがある。これに対し、本構成のように電極の先端面が単一の平坦面であれば、電極の先端面に局所的に電界が集中することが無くなり、電極から異常放電が発生することを防止でき、均質なプラズマを生成することができる。また、成膜ガス吐出および放電ガス吐出口を同一の電極で構成することができ、部品点数を削減することができる。
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る成膜装置の一例としてのプラズマCVD装置について説明する。
図1に示すように、プラズマCVD装置は、放電ガスおよび成膜ガスをワーク1(被処理体の一例)に吹き付けるステンレス製のノズル2と、そのノズル2に対して放電ガスおよび成膜ガスを供給する放電ガス源および成膜ガス源(図示しない)と、ワーク1を載置する載置部3と、一方をノズル2に接続するとともに、他方を載置部3に接続する高周波電源4と、を備えている。
以下、本発明に係る成膜装置の一例としてのプラズマCVD装置について説明する。
図1に示すように、プラズマCVD装置は、放電ガスおよび成膜ガスをワーク1(被処理体の一例)に吹き付けるステンレス製のノズル2と、そのノズル2に対して放電ガスおよび成膜ガスを供給する放電ガス源および成膜ガス源(図示しない)と、ワーク1を載置する載置部3と、一方をノズル2に接続するとともに、他方を載置部3に接続する高周波電源4と、を備えている。
尚、電源は高周波電源に限られるものではなく、直流電源やパルス電源であってもよい。ノズル2および載置部3は真空容器(図示しない)内に設置されている。真空容器の内部は、例えば、60〜80torr程度に減圧され、そこで成膜処理が行われる。しかし、真空容器を設けずに、大気圧下で成膜処理を行なってもよい。大気圧下では平均自由工程が短くなるため、プラズマ中の電子とイオンとの衝突頻度が高くなり、プラズマが熱化し易くなる。このようなプラズマの熱化を防止するために、ノズル2および載置部3の少なくともいずれか一方を誘電体で被膜してバリア放電を行なってもよい。これにより、ノズル2および載置部3に高周波電圧を印加したときに、誘電体に電荷が蓄積され、放電が短期間で終了する。載置部3に代えてワーク1を搬送する搬送手段を設け、ワーク1を連続的に成膜してもよい。バッチ処理ではなく連続処理で成膜を行うことにより、成膜の処理効率が高まる。
放電ガスとして、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、水素等の不活性ガスが挙げられる。成膜ガスは、薄膜の種類によって適宜選択される。例えば、DLC(Diamond−Like−Carbon)を成膜する場合には、成膜ガスとして、メタン、エタン、プロパン等の炭化水素系のガスが挙げられる。炭素のsp3結合によってDLCの硬度が高くなるため、ワーク1にDLCを成膜することによって耐磨耗性および低摩擦性を付与できる。例えば、インジェクタやカムフォロア等のエンジン部品にDLCを成膜すれば、それらエンジン部品の長寿命化を図ることができる。
ノズル2は、上側に位置するノズル取付部6と、下側に位置するノズル本体5と、を備えている。
ノズル取付部6は円柱状に構成してある。このノズル取付部6の内部には、放電ガス源からの放電ガスを供給するノズル取付部側の放電ガス流路7、および成膜ガス源からの成膜ガスを供給するノズル取付部側の成膜ガス流路8が形成されている。放電ガス流路7は、径方向に沿って延出する第1部分7aと、ノズル軸心X方向に沿って延出する第2部分7bとを備えている。成膜ガス流路8は、径方向に沿って延出する第3部分8aと、ノズル軸心X方向に沿って延出する第4部分8bと、を備えている。尚、第4部分8bは、第2部分7bの周囲に位置する1つの管状に構成してもよく、第2部分7bの周囲に複数並ぶ筒状に構成してもよい。ノズル取付部6の下面には、円筒状の雄ねじ部9(外側の筒状部の一例)が下方に突出形成されている。第4部分8bの下流側の開口は雄ねじ部9の径方向内方側に位置している。
ノズル本体5は、二重ノズル構造を呈し、ノズル取付部6の雄ねじ部9に螺合する雌ねじ部10(外側の筒状部の一例)と、雌ねじ部10から下方に突出形成された外側のノズル部11(外側の筒状部の一例)と、外側のノズル部11の下端の部位に固着された円板状のシャワー電極12と、外側のノズル部11と同軸上に配置される状態でシャワー電極12の上面に固着された内側のノズル部13(内側の筒状部の一例)と、を備えている。シャワー電極12には、多数のガス噴出孔12aが形成されている。
内側のノズル部13の内部には、ノズル本体側の放電ガス流路14が形成されている。ノズル本体側の放電ガス流路14における下流側の端部、つまり、シャワー電極12における内側のノズル部13の内方側部位には、放電ガス吐出口15が形成されている。内側のノズル部13と雄ねじ部9および外側のノズル部11との間には、ノズル本体側の成膜ガス流路16が形成されている。ノズル本体側の成膜ガス流路16における下流側の端部、つまり、シャワー電極12における内側のノズル部13と外側のノズル部11とで囲まれる部位には、成膜ガス吐出口17が形成されている。
内側のノズル部13は、円筒状の基端側部分13aと先端側ほど径が大きい円錐状の先端側部分13b(放電ガス案内部の一例)とを備えて、ラッパ状に構成されている。基端側部分13aは、第2部分7bの下流側の開口よりも径方向外方側で、かつ第4部分8bの下流側の開口よりも径方向内方側に位置している。これにより、ノズル取付部6にノズル本体5を取り付けたときに、ノズル取付部側の放電ガス流路7とノズル本体側の放電ガス流路14とが連通接続されるとともに、ノズル取付部側の成膜ガス流路8とノズル本体側の成膜ガス流路16とが連通接続される。
外側のノズル部11は、円筒状の基端側部分11aと、先端側ほど径が小さい逆円錐状の先端側部分11bと、を備えている。基端側部分11aの内周面は雄ねじ部9の内周面よりも大径に構成する。基端側部分11aの内周面が拡径部21の円筒面21aを構成する。先端側部分11bの内周面が成膜ガス案内部22を構成する。
次に、本発明に係るプラズマCVD装置による成膜処理について説明する。
図1に示すように、放電ガス源からの放電ガスは、放電ガス流路7,14を流動し、放電ガス吐出口15からシャワー電極12と載置部3との間の放電空間に供給される。放電空間に供給された放電ガスは電離されてプラズマが生成される。
図1に示すように、放電ガス源からの放電ガスは、放電ガス流路7,14を流動し、放電ガス吐出口15からシャワー電極12と載置部3との間の放電空間に供給される。放電空間に供給された放電ガスは電離されてプラズマが生成される。
内側のノズル部13の先端側部分13bの案内によって、放電ガスがノズル軸心X方向から外方側に傾斜する方向に沿って流動する。このため、放電空間に供給された放電ガスが径方向に拡散し易くなり、プラズマの生成領域が径方向に拡大する。その結果、成膜ガスが励起・イオン化される領域が径方向に拡大し、ワーク1の広い領域に対して均一な成膜を施すことができる。ワーク1に均一な成膜を施すためには、先端側部分13bから下方に延長した円錐面の内方側にワーク1が位置することが望ましい。
成膜ガス源からの成膜ガスは、成膜ガス流路8,16を流動し、成膜ガス吐出口17からシャワー電極12と載置部3との間の放電空間に供給される。上記生成されたプラズマによって、放電空間に供給された成膜ガスがプラズマに接触して励起・イオン化され、ラジカルやイオンが生成される。上記生成されたラジカルやイオンがワーク1の表面に堆積して薄膜が形成される。
成膜ガス吐出口17から吐出された成膜ガスがその流動に伴って少しずつプラズマに接触して励起・イオン化する。このため、成膜ガスがシャワー電極12の下面から流動方向に離間した位置で励起・イオン化し易くなる。その結果、励起・イオン化されたラジカルやイオンがシャワー電極12の下面に堆積し難くなり、シャワー電極12の下面に汚れが付着し難くなる。
成膜ガスが放電ガスを包囲する状態で流動することで、プラズマの生成領域を中央側に確保しつつ、成膜ガスが径方向外方側に拡散し易くなる。よって、成膜ガスはノズル2の先端部からやや離間した位置で励起・イオン化されるため、ラジカルやイオンがシャワー電極12の下面に堆積し難くなり、ノズル2が汚れ難くなる。成膜ガスの励起・イオン化される位置がノズル2から離間した位置となる結果、成膜ガスと放電ガスとが混合する領域が拡大する。つまり、本構成であれば、従来技術のように、ノズル2の先端部の近傍でラジカルやイオンの濃度が不均一な領域が形成されるのではなく、ノズル2の先端部から離間した位置でラジカルやイオンの濃度の均一な領域が形成される。この結果、成膜ガスがワーク1の側部に回り込み易くなり、ワーク1の側部においても十分な膜厚を確保できる。加えて、拡径部21が成膜ガスの圧力の偏りを吸収するバッファ空間の機能を有するため、成膜ガスを均一に吐出できる。
成膜ガスが成膜ガス吐出口17から吐出される際には、成膜ガスは、拡径部21における円筒面21aの案内によってノズル軸心X方向に沿って流動したのち、成膜ガス案内部22の案内によってノズル軸心X方向から内方側に傾斜する方向に沿って流動する。つまり、成膜ガス吐出口17に対して直前の成膜ガス流路16の位置をより径方向外方側に位置させることができ、ノズル2から吐出される成膜ガスの吐出方向もより内側に向けられるため、成膜ガスが内側のノズル部13の先端側部分13bによって過度に外方に案内されるのを防止し、成膜ガスが必要以上に径方向外方側に拡散することを抑制できる。その結果、成膜ガスをより適切な位置で励起・イオン化することができる。
内側のノズル部13の先端側部分13b付近を流動する成膜ガスは、成膜ガス案内部22付近を流動する成膜ガスに衝突してその流動方向を内方寄りに変更する。これにより、成膜ガス案内部22付近に加えて先端側部分13b付近を流動する成膜ガスをも必要以上に径方向外方側に拡散することを抑制できる。
〔第2実施形態〕
図2に示すように、本発明のノズル2は、ノズル本体5が、角筒状のケーシング31と、ケーシング31の下端の部位に固着されたシャワー電極32と、ケーシング31とシャワー電極12とで囲まれた空間を仕切る一対の仕切板33と、を備えるように構成することもできる。シャワー電極32には、多数のガス噴出孔32aが形成されている。
図2に示すように、本発明のノズル2は、ノズル本体5が、角筒状のケーシング31と、ケーシング31の下端の部位に固着されたシャワー電極32と、ケーシング31とシャワー電極12とで囲まれた空間を仕切る一対の仕切板33と、を備えるように構成することもできる。シャワー電極32には、多数のガス噴出孔32aが形成されている。
一対の仕切板33の間には、放電ガス流路34が形成されている。放電ガス流路34における下流側の端部、つまり、シャワー電極32における一対の仕切板33で囲まれる部位には、放電ガス吐出口35が形成されている。一方の仕切板33とケーシング31における一方の側面部38との間、および他方の仕切板33とケーシング31における他方の側面部38との間には、成膜ガス流路36が形成されている。成膜ガス流路36における下流側の端部、つまり、シャワー電極12における一方の仕切板33とケーシング31における一方の側面部31aとで囲まれる部位、および他方の仕切板33とケーシング31における他方の側面部31bとで囲まれる部位には、成膜ガス吐出口37が形成されている。
一対の仕切板33は、それぞれ上下方向に沿う基端側部分33aと上下方向から左右外方側に傾斜する方向に沿う先端側部分33bとを備えて、屈曲状に形成されている。先端側部分33bは先端側ほど間隔が広くなる状態に配置してある。
両側面部38は、それぞれ上下方向に沿う基端側部分38aと上下方向から左右内方側に傾斜する方向に沿う先端側部分38bとを備えて、屈曲状に形成されている。先端側部分38bは先端側ほど間隔が狭くなる状態に配置してある。
本構成のノズル2が奏する機能は上記実施形態に係るものと基本的に同じである。
図2に示すように、放電ガス源からの放電ガスは、放電ガス流路34を流動し、放電ガス吐出口35からシャワー電極32と載置部3との間の放電空間に供給される。放電空間に供給された放電ガスは電離されてプラズマが生成される。
図2に示すように、放電ガス源からの放電ガスは、放電ガス流路34を流動し、放電ガス吐出口35からシャワー電極32と載置部3との間の放電空間に供給される。放電空間に供給された放電ガスは電離されてプラズマが生成される。
放電ガスは仕切板33の先端側部分33bの案内によって左右外方側に拡散し易くなり、プラズマの生成領域が左右外方側に拡大する。よって、ワーク1の広い領域に対して均一な成膜を施すことができる。
成膜ガス源からの成膜ガスは、成膜ガス流路36を流動し、シャワー電極32に形成された多数のガス噴出孔32aを通過して、シャワー電極32と載置部3との間の放電空間に供給される。上記生成されたプラズマによって、放電空間に供給された成膜ガスがプラズマに接触して励起・イオン化され、ラジカルやイオンが生成される。上記生成されたラジカルやイオンがワーク1の表面に堆積して薄膜が形成される。
成膜ガスが放電ガスを挟み込む状態で流動することで、プラズマの生成領域を中央側に確保しつつ、成膜ガスが左右外方側に拡散し易くなる。よって、ノズル2の先端部から離間した位置でラジカルやイオンの濃度の均一な領域が形成され、ワーク1の側部においても十分な膜厚を確保できる。
成膜ガスが成膜ガス吐出口37から吐出される際には、放電ガスは側面部38の先端側部分38bの案内によって上下方向から左右内方側に傾斜する方向に沿って流動する。このため、成膜ガスが必要以上に左右外方側に拡散することを抑制できる。その結果、成膜ガスを効率よく励起・イオン化できる。
ノズル本体5をワーク1に沿わせることによって、ワーク1の形状が長尺状の場合であってもワーク1の表面に良好に成膜処理を施すことができる。載置部3に代えてワーク1を搬送する搬送手段を設けた場合、搬送手段の全幅に亘ってノズル本体5を配置することによって、ワーク1を連続的に成膜できる。
〔別実施形態〕
(1)雄ねじ部9と雌ねじ部10を設けずにノズル本体5とノズル取付部6とを互いに係止してもよい。例えば、ノズル本体5およびノズル取付部6の一方を他方に挿入してネジ固定やピン固定したり、一方を他方に嵌合してもよく、各種の接続形態をとることができる。ノズル本体5とノズル取付部6を一体形成してもよい。
(1)雄ねじ部9と雌ねじ部10を設けずにノズル本体5とノズル取付部6とを互いに係止してもよい。例えば、ノズル本体5およびノズル取付部6の一方を他方に挿入してネジ固定やピン固定したり、一方を他方に嵌合してもよく、各種の接続形態をとることができる。ノズル本体5とノズル取付部6を一体形成してもよい。
(2)先端側部分11b,38bの形状を、内方側に湾曲する形状に構成して、先端側部分11b,38bの外周面とシャワー電極12,32の下面とを滑らかに接続してもよい。これにより、先端側部分11b,38bとシャワー電極12,32との合わせ部に異常放電が発生することを防止できる。
本発明を実施例により説明する。
〔エッチング処理〕
例えば、プラズマCVD処理により、ワーク1の表面にDLCを成膜する際に、ワーク1の表面の汚れや表面に形成された酸化皮膜を除去するために、先ず、ワーク1にエッチング処理を施す。
〔エッチング処理〕
例えば、プラズマCVD処理により、ワーク1の表面にDLCを成膜する際に、ワーク1の表面の汚れや表面に形成された酸化皮膜を除去するために、先ず、ワーク1にエッチング処理を施す。
放電ガス流路7にヘリウムガスを供給し、成膜ガス流路8にアルゴンガスと水素ガスとの混合ガスを供給する。原子量が大きいアルゴンガスがワーク1の表面に衝突することにより、ワーク1表面の酸化皮膜や汚れが除去される。水素ガスがワーク1の酸化皮膜と反応することにより、ワーク1表面の酸化皮膜が還元される。
ヘリウム流量は1.4(l/min)であり、混合ガス流量は95(ml/min)である。一例として、アルゴンガス流量を70(ml/min)とし、水素ガス流量を25(ml/min)としてもよい。エッチング処理時間は60(sec)である。真空容器内の圧力は120(Torr)である。電源周波数は40(kHz)で消費電力は220Wである。このとき、ワーク1をセットするステージ(載置部3)の温度は300℃である。
〔中間層の成膜処理〕
次に、ワーク1表面にDLCを成膜する前に、中間層としてのSiCを成膜する。これにより、ワーク1とDLC膜との間に介在されたSiCがバインダとしての役割を果たし、DLCの剥離を防止できる。
次に、ワーク1表面にDLCを成膜する前に、中間層としてのSiCを成膜する。これにより、ワーク1とDLC膜との間に介在されたSiCがバインダとしての役割を果たし、DLCの剥離を防止できる。
放電ガス流路7にヘリウムガスを供給し、成膜ガス流路8にテトラメチルシランガスを供給する。ヘリウム流量は1.4(l/min)であり、テトラメチルシランガス流量は10(ml/min)である。中間層の成膜処理時間は30(sec)である。真空容器内の圧力、電源周波数、消費電力はエッチング処理と同じ条件である。このとき、ワーク1をセットするステージ(載置部3)の温度はエッチング処理と同じ温度に保持されている。
尚、中間層形成時にわずかにシャワー電極12の下面が汚れることがあるが、本構成によれば、そのような汚れについても抑制できる。
尚、中間層形成時にわずかにシャワー電極12の下面が汚れることがあるが、本構成によれば、そのような汚れについても抑制できる。
〔DLCの成膜処理〕
放電ガス流路7にヘリウムガスを供給し、成膜ガス流路8にメタンガスを供給する。ヘリウム流量は1.4(l/min)であり、メタンガス流量は80(ml/min)である。DLCの成膜処理時間は90(sec)である。真空容器内の圧力、電源周波数、消費電力はエッチング処理と同じ条件である。このとき、ワーク1をセットするステージ(載置部3)の温度はエッチング処理と同じ温度に保持されている。
放電ガス流路7にヘリウムガスを供給し、成膜ガス流路8にメタンガスを供給する。ヘリウム流量は1.4(l/min)であり、メタンガス流量は80(ml/min)である。DLCの成膜処理時間は90(sec)である。真空容器内の圧力、電源周波数、消費電力はエッチング処理と同じ条件である。このとき、ワーク1をセットするステージ(載置部3)の温度はエッチング処理と同じ温度に保持されている。
〔実験結果〕
上記した成膜処理を5回連続して実施したのち、シャワー電極12の表面に付着した汚れを観察した。従来技術のノズル(図3を参照)を用いた場合、電極表面には多くの汚れが付着していた。尚、この汚れはバッチ回数の増加とともに突起状に成長する。一方、本発明のノズル(図1を参照)を用いた場合、電極表面にはほとんど汚れが付着していなかった。このように本発明のノズルを用いることで、電極を頻繁に清掃して突起を除去する必要が無くなる等、メンテナンス作業を簡素化できる。
上記した成膜処理を5回連続して実施したのち、シャワー電極12の表面に付着した汚れを観察した。従来技術のノズル(図3を参照)を用いた場合、電極表面には多くの汚れが付着していた。尚、この汚れはバッチ回数の増加とともに突起状に成長する。一方、本発明のノズル(図1を参照)を用いた場合、電極表面にはほとんど汚れが付着していなかった。このように本発明のノズルを用いることで、電極を頻繁に清掃して突起を除去する必要が無くなる等、メンテナンス作業を簡素化できる。
本発明のノズルは、被処理体の表面に成膜処理を施す各種プラズマCVD装置に適応可能である。
1 被処理体
9,10,11 外側の筒状部
12,32 電極
12a,32a ガス噴出孔
13 内側の筒状部材
13b 放電ガス案内部
14,34 放電ガス流路
15,35 放電ガス吐出口
16,36 成膜ガス流路
17,37 成膜ガス吐出口
21 拡径部
21a 円筒面
22 成膜ガス案内部
X ノズル軸心
9,10,11 外側の筒状部
12,32 電極
12a,32a ガス噴出孔
13 内側の筒状部材
13b 放電ガス案内部
14,34 放電ガス流路
15,35 放電ガス吐出口
16,36 成膜ガス流路
17,37 成膜ガス吐出口
21 拡径部
21a 円筒面
22 成膜ガス案内部
X ノズル軸心
Claims (6)
- 被処理体の表面に成膜処理を施すプラズマCVD装置に取り付けられ、前記被処理体が配置された放電空間に放電ガスおよび成膜ガスを供給するノズルであって、
前記放電ガスを供給する放電ガス流路と前記成膜ガスを供給する成膜ガス流路とを各別に設け、
前記放電ガス流路の下流側の端部に、前記放電ガスを吐出する放電ガス吐出口を設けるとともに、前記成膜ガス流路の下流側の端部に、前記放電ガス吐出口から吐出される前記放電ガスを挟み込み又は包囲する領域に前記成膜ガスを吐出する成膜ガス吐出口を設けてあるノズル。 - 内側の筒状部と外側の筒状部とを二重円筒状に配置し、前記内側の筒状部の内部に前記放電ガス流路を形成するとともに、前記内側の筒状部と前記外側の筒状部との間に前記成膜ガス流路を形成し、
前記内側の筒状部の先端部に、先端側ほど径が大きい放電ガス案内部を設けてある請求項1に記載のノズル。 - 前記外側の筒状部の先端部の内周面に、拡径部を設けてある請求項2に記載のノズル。
- 前記拡径部は、ノズル軸心方向に沿う円筒面を有している請求項3に記載のノズル。
- 前記円筒面の先端部に、先端側ほど径が小さい成膜ガス案内部を形成してある請求項4に記載のノズル。
- 前記外側の筒状部および前記内側の筒状部の先端に、多数のガス噴出孔を有する円板状の電極を設けてある請求項2〜5のいずれか1項に記載のノズル。
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-
2011
- 2011-01-25 JP JP2011013295A patent/JP2012153932A/ja active Pending
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