JP2012153901A - 粘着剤、粘着シート及び粘着剤付き光学フィルム - Google Patents

粘着剤、粘着シート及び粘着剤付き光学フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】偏光板などの光学フィルムを液晶セルなどに耐久性よく接着し得ると共に、得られた液晶表示装置が、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくいなどの特性を有し、再剥離が容易にできる粘着剤、該粘着剤を用いた粘着シート、該粘着剤を用いた粘着剤付き光学フィルムを提供すること。
【解決手段】(A)水酸基含有モノマーをモノマー組成比で0.01〜5質量%含み、かつ、カルボキシル基含有モノマーをモノマー組成比で0.01質量%以上2.0質量%未満含むモノマー組成物を重合してなる重量平均分子量100万以上のアクリル系共重合体、(B)水酸基含有モノマーがモノマー組成比で0.01質量%未満であり、かつ、カルボキシル基含有モノマーをモノマー組成比で0.01〜15.0質量%含むモノマー組成物を重合してなる重量平均分子量100万以上のアクリル系共重合体、及び(C)活性エネルギー線硬化型化合物を含む粘着性材料に活性エネルギー線を照射してなる粘着剤であって、成分(A)と成分(B)の質量比が100:1〜100:30であり、かつ、23℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3MPa以上であり、ゲル分率が85%以上である粘着剤である。
【選択図】なし

Description

本発明は、粘着剤、粘着シート及び粘着剤付き光学フィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は、偏光板、特に視野角拡大フィルムなどと一体化してなる偏光板に、又は偏光板に位相差板が積層される場合に好適に適用され、該偏光板を液晶セルに耐久性よく接着し得ると共に、得られた液晶表示装置が、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくいなどの特性を有し、さらに貼合を誤った際などに容易に再剥離可能な粘着剤、粘着シート及び粘着剤付き光学フィルムに関するものである。
従来、ガラス、セラミックス、金属などの被着体に、粘着剤を介して有機材料からなるシートを貼合した場合、経時により、シート端部が剥がれてきたり、浮きが生じるなど、好ましくない事態がしばしば生じる。
このような事態を解決するために、一般的には、粘着剤を構成する成分の分子量を上げたり、架橋密度を高めるなどして、粘着性能を高めた強粘着性材料を用いることが行われている。しかしながら、このような強粘着性材料を用いた場合、保持力は向上するものの、高温高湿条件下では、有機材料からなるシートの収縮や膨潤によって発生する形状変化に、粘着剤が追従できなくなり、様々なトラブルの発生要因となっている。
ところで、光学部品の中には、その表面に偏光板を貼合して使用するものがあり、その代表例として液晶表示装置(LCD)の液晶セルが挙げられる。以下、図1を用いて説明する。
この液晶セル13は、一般に配向層を形成した2枚の透明電極基板の配向層を内側にして、スペーサにより所定の間隔になるように配置し、その周辺をシールして、該間隔に液晶材料を挟持させると共に、上記2枚の透明電極基板に、それぞれ粘着剤12を介して、偏光板11が配置された構造を有している。前記偏光板は、一般的にポリビニルアルコール系偏光子の両面に、光学的等方性フィルム、例えばトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどを貼り合わせた3層構造を有する偏光フィルムからなり、さらにその片面には、液晶セルなどの光学部品に貼着することを目的に粘着剤層が設けられている。
また、図2に示す模式図のように、視野角特性の改善を図るため、偏光板21と液晶セル23の間に粘着剤22及び25を介して位相差板24が配置される場合もある。
上述のような構成の偏光板を液晶セルなどの光学部品に貼着した場合、又は偏光板と位相差板を貼着した場合、異種材料の多層構造となり、材料特性から寸法安定性が乏しく、特に高温高湿環境下では、収縮や膨潤による寸法変化が大きい。該偏光板には粘着剤として、一般に前述の強粘着性のものが用いられているため、偏光板の寸法変化に伴う浮きや剥がれは抑制することができるが、該偏光板の寸法変化に伴う応力を粘着剤層で吸収することができず、偏光板における残留応力が不均一になる。その結果、TN液晶セルでは、いわゆる「光漏れ」が、STN液晶では「色むら」が発現しやすくなるという問題が生じる。
このような問題を解決するために、例えば粘着剤に可塑剤などの低分子量体を添加することで、適度に軟らかくして応力緩和性を付与する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、低分子量体の添加は、偏光板を剥離した際に液晶セルを汚染する原因となる上、保持力を低下させることとなり、経時による浮きや剥がれが発生しやすくなる。
一方、アクリル系共重合体と側鎖に放射線重合性基を有するアクリル系重合体を、重量比100:1〜100:100の割合で含むものを放射線架橋してなる感圧接着剤シートが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
この公報においては、偏光板用として実施例が記載されているが、いずれの実施例においても、光漏れ性について、評価サンプルのサイズに関する記載がない。本発明者らが、該公報の実施例に記載された感圧接着剤を用いて光漏れ性を15インチサイズの偏光板で評価した結果は、十分に満足し得るものでなかった。
このように、偏光板用粘着剤においては、接着耐久性と光漏れ防止性を両立させることは困難であり、それを両立させることが課題となっていた。
特に、車載用途などより過酷な耐久性が要求される場合には、接着耐久性と光漏れ防止性を両立させることはさらに困難になる。
また、液晶ディスプレイ等の製造工程において、偏光板を液晶セルなどの光学部品に貼合するに際し、貼合位置にずれが生じた場合など、貼合からある時間が経過した後に偏光板を剥離し、高価な液晶セルを再利用することが必要となる場合がある。従って、偏光板に塗布されている粘着剤を介して貼合した後、例えば1週間、もしくはそれ以上の長い期間が経過した後であっても液晶セルから剥離することが行われる場合がある。このような、長期間経過した後でも容易に剥離することができる粘着剤が求められていた。これは、接着耐久性を付与するための強粘着力化とは相反する性質であって、これらを両立することが課題であった。
特許第3272921号公報 特開2001−107005号公報
本発明は、このような状況下で、例えば、偏光板、特に視野角拡大フィルムなどと一体化してなる偏光板に、又は偏光板に位相差板が積層される場合に好適に適用され、該偏光板を液晶セルに耐久性よく接着し得ると共に、得られた液晶表示装置が、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくいなどの特性を有し、かつ貼合からある時間が経過した後であっても、液晶セルから剥離すること(以下「再剥離」ということがある。)が容易にできる粘着剤、該粘着剤を用いた粘着シート、及び該粘着剤を用いた粘着剤付き光学フィルムを提供することを目的とするものである。
一般的に再剥離性粘着剤の特性としては、貼付してから粘着力上昇が極力少なく、低粘着力であっても耐久性に優れることが必要とされる。特に、偏光板用途では、低粘着力かつ耐久性に優れることが強く望まれる。しかしながら、実際のディスプレイ構成において、低粘着力で長期間高耐久性が維持されるかという点は不安材料として残る。そこで、本発明者らは、徐々に粘着力上昇は起こるが、その上昇速度が低いため、再剥離性が必要とされる貼付後14日間は10N/25mm程度の再剥離可能な粘着力領域にあり、その後、強粘着剤へと変化する粘着剤を開発することが重要であると認識した。なお、本発明において、このように貼合後の所定期間は再剥離可能な粘着力領域にあり、その後、強粘着力領域へと変化する性質を「リワーク性」という。
そして、該リワーク性を有する粘着剤を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、2種類の特定のアクリル系重合体と、活性エネルギー線硬化型化合物を含む粘着性材料に、活性エネルギー線を照射してなる粘着剤が、その目的に適合し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)(A)水酸基含有モノマーをモノマー組成比で0.01〜5質量%含み、かつ、カルボキシル基含有モノマーをモノマー組成比で0.01質量%以上2.0質量%未満含むモノマー組成物を重合してなる重量平均分子量100万以上のアクリル系共重合体、(B)水酸基含有モノマーがモノマー組成比で0.01質量%未満であり、かつ、カルボキシル基含有モノマーをモノマー組成比で0.01〜15.0質量%含むモノマー組成物を重合してなる重量平均分子量100万以上のアクリル系共重合体、及び(C)活性エネルギー線硬化型化合物を含む粘着性材料に活性エネルギー線を照射してなる粘着剤であって、成分(A)と成分(B)の質量比が100:1〜100:30であり、かつ、23℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3MPa以上であり、ゲル分率が85%以上である粘着剤、
(2)成分(A)と成分(C)の質量比が100:1〜100:40である上記(1)に記載の粘着剤、
(3)成分(A)が重量平均分子量150万以上のアクリル系共重合体である上記(1)又は(2)に記載の粘着剤、
(4)さらに、(E)シランカップリング剤を含有し、成分(A)と成分(E)の質量比が100:0.1〜100:0.5である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の粘着剤、
(5)さらに、(D)ポリイソシアネート化合物及び(E)シランカップリング剤を含有し、成分(A)中の水酸基含有モノマーと成分(D)のモル比が0.8:1.2〜1.2:0.8であって、かつ、成分(A)と成分(E)の質量比が100:0.1〜100:0.5である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着剤、
(6)23℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3〜15MPaである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の粘着剤、
(7)80℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.1〜15MPaである上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着剤、
(8)剥離シートの剥離層上に上記(1)〜(7)のいずれかに記載の粘着剤からなる粘着性材料層を有する粘着シート、
(9)2枚の剥離シートの剥離層側に接するように上記(1)〜(7)のいずれかに記載の粘着剤を挟持してなる粘着シート、
(10)光学フィルム上に上記(1)〜(7)のいずれかに記載の粘着剤からなる粘着性材料層を有する粘着剤付き光学フィルム、及び
(11)前記光学フィルムが偏光板である上記(10)に記載の粘着剤付き光学フィルム、
を提供するものである。
本発明によれば、例えば、偏光板、特に視野角拡大フィルムなどと一体化してなる偏光板に、又は偏光板に位相差板が積層される場合に好適に適用され、該偏光板を液晶セルに耐久性よく接着し得ると共に、得られた液晶表示装置が、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくいなどの特性を有し、かつリワーク性を有する粘着剤、粘着シート、粘着剤付き光学フィルム、及び粘着剤付き偏光板を提供することができる。
LCDの構成を示す概略図である。 LCDの構成を示す概略図である。 実施例、比較例で得られた粘着剤付き偏光板の光漏れ性を評価する方法を示す説明図である。
本発明の粘着剤は、成分(A)として、官能基を有しない(メタ)アクリル酸エステル(主モノマー)、水酸基含有モノマー及びカルボキシル基含有モノマーを構成単位として含むアクリル系共重合体と、成分(B)として、官能基を有しない(メタ)アクリル酸エステル(主モノマー)及びカルボキシル基含有モノマーを構成単位として含み、水酸基含有モノマーを構成単位として実質的に含まないアクリル系共重合体を組み合わせて用いることが重要である。
このような組み合わせをとることで、貼合の優れた耐久性を実現しながら、貼合の後の粘着力の上昇速度を抑制することができ、再剥離性が要求される期間は再剥離領域の粘着力を示すようなリワーク性を有する粘着剤を得ることができることを見出したものである。
より具体的には、本発明の粘着剤は、(A)水酸基含有モノマーをモノマー組成比で0.01〜5質量%含み、かつ、カルボキシル基含有モノマーをモノマー組成比で0.01質量%以上2.0質量%未満含むモノマー組成物を重合してなる重量平均分子量100万以上のアクリル系共重合体、(B)水酸基含有モノマーがモノマー組成比で0.01質量%未満であり、かつ、カルボキシル基含有モノマーをモノマー組成比で0.01〜15.0質量%含むモノマー組成物を重合してなる重量平均分子量100万以上のアクリル系共重合体、及び(C)活性エネルギー線硬化型化合物を含む粘着性材料に活性エネルギー線を照射してなる粘着剤である。
成分(A)のアクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸ブチル等の官能基を有しない(メタ)アクリル酸エステルを主モノマーとし、これと架橋性官能基として水酸基を含有するモノマーとカルボキシル基を含有するモノマーとの共重合体である。成分(A)のアクリル系共重合体は、本発明の粘着剤に対して、再剥離性を付与し、貼付した後の経時的な粘着力の変化を制御する重要な構成要素である。
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
上記成分(A)において、官能基を有しない(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては特に制限はなく、例えば、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルを好ましく挙げることができる。ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの化合物のうち、特に、(メタ)アクリル酸ブチルが、適度な粘着性能を得ることができるのと、重量平均分子量100万以上の(メタ)アクリル酸エステル重合体を容易に製造できる点で好ましい。
上記成分(A)における水酸基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルなどが挙げられ、これらのうち特に(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが、重量部平均分子量100万以上の(メタ)アクリル酸重合体を容易に製造できる点から好ましい。
上記成分(A)において、水酸基含有モノマーの含有量はモノマー組成比で0.01〜5質量%の範囲である。0.01質量%未満であると、高温下での耐久性に劣る点で不都合であり、5質量%を超えると、高温・高湿下での耐久性が不十分となる。以上の観点から、水酸基含有モノマーの含有量はモノマー組成比で0.1〜4質量%の範囲が好ましく、0.5〜3質量%の範囲がさらに好ましい。
上記成分(A)におけるカルボキシル基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられ、重量平均分子量100万以上の(メタ)アクリル酸エステル共重合体を容易に製造できる点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
また、成分(A)において、カルボキシル基含有モノマーの含有量はモノマー組成比で0.01質量%以上、2.0質量%未満である。0.01質量%未満であると、粘着力を上昇させることができず、再剥離を要求される期間を過ぎても十分な粘着力を有するものとはならない。また、2.0質量%以上であると、再剥離を要求される期間での粘着力上昇が大きく、リワーク性を発揮できない。以上の観点から、カルボキシル基含有モノマーの含有量はモノマー組成比で0.1〜1.5質量%の範囲が好ましく、0.2〜1.0質量%の範囲がさらに好ましい。
また、成分(A)のアクリル系共重合体は、重量平均分子量が100万以上である。重量平均分子量が100万未満であると、被着体との密着性や高温・高湿下での接着耐久性が不十分となり、浮きや剥がれなどが生じる場合がある。密着性及び接着耐久性などを考慮すると、この重量平均分子量は、120万〜220万のものが好ましく、特に150万〜200万のものが好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率を表す分子量分布(Mw/Mn)は20以下が好ましい。分子量分布が20以下であると、十分な接着耐久性が得られる。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
当該粘着性材料においては、この成分(A)のアクリル系共重合体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
次に、成分(B)のアクリル系共重合体は、官能基を有しない(メタ)アクリル酸エステルを主モノマーとし、これと主に架橋性官能基としてカルボキシル基を含有するモノマーとの共重合体である。官能基を有しない(メタ)アクリル酸エステル及びカルボキシル基を含有するモノマーの具体例については、上記成分(A)において記載したものと同様である。
成分(B)においては、カルボキシル基含有モノマーの含有量は、モノマー組成比で0.01〜15.0質量%の範囲である。0.01質量%未満であると高温下での耐久性の点で不十分であり、15.0質量%を超えると、高温・高湿下での耐久性が不十分となる。以上の観点から、成分(B)におけるカルボキシル基含有モノマーの含有量は、モノマー組成比で0.1〜8質量%の範囲が好ましく、特に、十分な耐久性に加えて、リワーク性のバランスを向上させる観点から、3〜7質量%の範囲がさらに好ましい。
また、成分(B)においては、水酸基含有モノマーは実質的に含まれず、モノマー組成比で0.01質量%未満である。水酸基含有モノマーの含有量を0.01質量%以下とすることで、ガラスに対する急激な粘着力の上昇を抑制する効果が得られる。以上の観点から、成分(B)において、水酸基含有モノマーは含有されないことが好ましい。
成分(B)のアクリル系共重合体は、重量平均分子量が100万以上である。重量平均分子量が100万未満であると、成分(A)において記載したのと同様に、被着体との密着性や高温・高湿下での接着耐久性が不十分となり、浮きや剥がれなどが生じる場合がある。密着性及び接着耐久性などを考慮すると、この重量平均分子量は、120万〜220万のものが好ましく、特に150万〜200万のものが好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率を表す分子量分布(Mw/Mn)についても、成分(A)と同様に20以下が好ましい。分子量分布が20以下であると、十分な接着耐久性が得られる。
なお、当該粘着性材料においては、この成分(B)のアクリル系重合体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の粘着性材料においては、上記成分(A)と成分(B)の質量比(成分(A):成分(B))は100:1〜100:30の範囲である。この質量比が100:1未満、すなわち成分(B)の含有量が成分(A)100質量部に対して1質量部未満であると、十分な接着耐久性が得られず、特に過酷な耐久性が要求される場合に、接着性が不十分となる。一方、上記質量比が100:30を越える、すなわち成分(B)の含有量が成分(A)100質量部に対して30質量部を超えると、十分な再剥離性が得られない。以上の観点から、成分(A):成分(B)は、100:5〜100:20の範囲が好ましい。
上記成分(A)及び成分(B)には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、構成成分として共重合可能な成分を含んでいてもよい。具体的には、官能基として、アミド基、アミノ基などを含むモノマーであり、具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキルなどが挙げられる。これらのモノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の粘着性材料において、成分(C)として用いられる活性エネルギー線硬化型化合物としては、2官能から6官能までの種々の多官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることができ、特に分子量1000未満の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。
多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどの3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能型などが挙げられる。
本発明において、これらの多官能(メタ)アクリレート系モノマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、骨格構造に環状構造を有するものを含有することが好ましい。環状構造は、炭素環式構造でも、複素環式構造でもよく、また、単環式構造でも多環式構造でもよい。このような多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えばジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌレート構造を有するもの、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどが好適であり、特にイソシアヌレート構造を有するものが好ましい。
また、成分(C)として活性エネルギー線硬化型のアクリレート系オリゴマーを用いることができる。このアクリレート系オリゴマーは重量平均分子量50,000以下のものが好ましい。このようなアクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。
ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応させ、エステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
上記アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値で、上述のように50,000以下が好ましく、より好ましくは500〜50,000、さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲で選定される。
これらのアクリレート系オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、成分(C)として(メタ)アクリロイル基を有する基が側鎖に導入されたアダクトアクリレート系ポリマーを用いることもできる。このようなアダクトアクリレート系ポリマーは、例えば、前述の成分(A)又は成分(B)において説明した(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に官能基を有するモノマーとの共重合体を用い、該共重合体の官能基の一部に、(メタ)アクリロイル基及び該官能基と反応する基を有する化合物を反応させることにより得ることができる。該アダクトアクリレート系ポリマーの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、通常50万〜200万である。
本発明においては、成分(C)として、前記の多官能アクリレート系モノマー、アクリレート系オリゴマー及びアダクトアクリレート系ポリマーの中から、適宜1種を選び用いてもよく、2種以上を選び併用してもよい。
本発明においては、成分(C)の活性エネルギー線硬化型化合物の含有割合は、前記成分(A)のアクリル系重合体に対して、得られる粘着剤の性能の面から、質量比(成分(A):成分(C))で、100:1〜100:40の範囲であることが好ましい。
この範囲であると、成分(A)及び成分(B)の特性を妨げずに活性エネルギー線照射後の粘着剤の貯蔵弾性率を最適な範囲に制御できる点で有利である。以上の観点から、成分(A):成分(C)は、100:5〜100:30の範囲であることがさらに好ましい。
本発明における粘着性材料には、所望により光重合開始剤を含有させることができる。この光重合開始剤としては、例えばベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、前記成分(C)100質量部に対して、通常0.2〜20質量部の範囲で選ばれる。
本発明における粘着性材料には、所望により、架橋剤を含有させることができる。この架橋剤としては、特に制限はなく、従来アクリル系粘着剤において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアネート化合物(成分(D))が好ましく用いられる。
ここで、(D)ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
これらのうち、例えば、偏光板の表面材料として使用されるトリアセチルセルロース(TAC)フィルムとの密着性を向上させ得る点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
本発明においては、上記架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、架橋剤の種類にもよるが、前記成分(A)のアクリル系重合体100質量部に対し、通常0.01〜20質量部、好ましくは、0.1〜10質量部である。
また、(D)ポリイソシアネート化合物を用いる場合には、上記成分(A)中の水酸基含有モノマーと(D)ポリイソシアネート化合物のモル比が0.8:1.2〜1.2:0.8の範囲であることが好ましい。当該モル比の範囲であると、成分(A)及び成分(B)の特性を妨げずに活性エネルギー線照射後の粘着剤の貯蔵弾性率を最適な範囲に制御できる点で好ましい。
本発明における粘着性材料には、所望により、成分(E)としてシランカップリング剤を含有させることができる。このシランカップリング剤を含有させることにより、偏光板などの光学フィルムを、例えば液晶セルなどに貼合する場合に、粘着剤と液晶セルの間の密着性がより良好となる。このシランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、粘着剤成分との相溶性がよく、かつ光透過性を有するもの、例えば実質上透明なものが好適である。このようなシランカップリング剤の添加量は、成分(A)と(E)シランカップリング剤の質量比が100:0.1〜100:0.5の範囲であることが好ましい。当該モル比の範囲であると、液晶セルなどの無アルカリガラスとの密着性と再剥離性を両立できる点で好ましい。
前記シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の粘着剤は、このようにして得られた前記粘着性材料に、活性エネルギー線を照射してなるものである。
活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線などが挙げられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプなどで得られ、一方、電子線は電子線加速器などによって得られる。この活性エネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、光重合開始剤を添加することなく、粘着剤を形成することができる。
当該粘着性材料に対する活性エネルギー線の照射量としては、好適な貯蔵弾性率、無アルカリガラスに対する粘着力を有する架橋化粘着剤が得られるように、適宜選定されるが、紫外線の場合は照度50〜1000mW/cm2、光量50〜1000mJ/cm2、電子線の場合は10〜1000kradの範囲が好ましい。
本発明の粘着剤は、23℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3MPa以上であることを必須とする。この貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上であれば十分な光漏れ防止性が得られる。23℃における貯蔵弾性率(G’)の上限については特に限定されないが、接着耐久性がより良好な粘着剤を得るためには、50MPa以下であることが好ましく、さらに15MPa以下であることが好ましい。以上の観点から特に好ましい23℃の貯蔵弾性率(G’)は0.35〜12MPaである。また、80℃の貯蔵弾性率(G’)も、通常0.1MPa以上が好ましく、さらには0.1〜15MPa、特には0.3〜10MPaであることが好ましい。
なお、前記貯蔵弾性率(G’)は、下記の方法で測定した値である。
<貯蔵弾性率(G’)の測定方法>
貯蔵弾性率(G’)は、厚さ30μmの粘着剤を積層し、8mmφ×3mm厚の円柱状の試験片を作製し、ねじり剪断法により、下記の条件で測定する。
測定装置:レオメトリック社製動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDAII」
周波数 :1Hz
温度 :23℃、80℃
また、本発明の粘着剤は、無アルカリガラスに対する粘着力を、貼合後14日まで10N/25mmに抑制することができる。従って、貼合から14日経過後であっても、液晶セルにダメージを与えることなく再剥離が可能である。
なお、該粘着力の下限値については、通常0.2N/25mm以上であることが好ましい。この粘着力が0.2N/25mm以上であれば、偏光板を十分な粘着力で液晶セル等に貼合することができる。
なお、上記粘着力は、下記の方法で測定した値である。
<無アルカリガラスとの粘着力>
粘着剤付き偏光板から、25mm幅、100mm長のサンプルを切り出し、剥離フィルムを剥がして(粘着剤層の厚さ25μm)、無アルカリガラス[コーニング社製「1737」]に貼付したのち、栗原製作所製オートクレーブにて、0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧する。その後、23℃、50%RH環境下で14日間放置した後、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力を測定する。
本発明の粘着剤はゲル分率が85%以上である。すなわち、有機溶媒にて抽出される程度の低分子量成分が少ない場合は、加熱下や温熱下の環境で浮きや剥がれ、被着体への汚染が少なく、ゲル分率が85%以上である粘着性材料は耐久性や安定性が高い。ゲル分率はさらに90〜99.9%であることが好ましい。
本発明の粘着剤には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望によりアクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。
本発明の粘着剤は、偏光フィルム単独からなる偏光板に適用して、該偏光板を、例えば液晶セルに接着させるのに用いることができるが、特に偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなる偏光板に適用し、この偏光板を、例えば液晶セルに接着させるのに、好ましく用いることができる。
前記偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなる偏光板としては、例えばポリビニルアルコール系偏光子の両面に、それぞれトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを貼り合わせてなる偏光フィルムの片面に、例えばディスコティック液晶からなる視野角拡大機能層(視野角拡大フィルム)を塗布により設けたもの、あるいは視野角拡大フィルムを接着剤で貼り合わせたものなどを挙げることができる。この場合、粘着剤は、前記視野角拡大機能層又は視野角拡大フィルム側に設ける。
また、偏光板としてはポリビニルアルコール系偏光子の片面にトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを貼り合わせ、もう一方の面にシクロオレフィン系フィルムやポリカーボネートフィルムなどからなる位相差フィルムを貼り合わせたものでもよい。この場合、粘着剤は位相差フィルム側に設ける。
また、図2に示すように偏光板と液晶セルの間に位相差板がある場合にも、本発明の粘着剤は好適に使用し得る。すなわち、偏光フィルム単独からなる偏光板と位相差板を本発明の粘着剤で貼合して光学フィルムを製造し、該光学フィルムの位相差板と液晶セルを粘着剤で貼合するものである。ここで位相差板と液晶セルを貼合する粘着剤としては特に限定されず、通常偏光板と液晶セルの貼合に用いられる粘着剤を使用することができる。具体的には、特開平11−131033に開示されるアクリル系共重合体、架橋剤及びシランカップリング剤からなる粘着性材料などが挙げられる。なお、偏光板と液晶セルの貼合に、本発明の粘着剤を用いることもできる。
本発明の粘着剤を用いて、前記のようにして液晶セル又は位相差板に偏光板を接着させることにより作製した液晶表示装置は、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくい上、偏光板と液晶セルとの接着耐久性に優れている。
本発明はまた、光学フィルム上、例えば偏光板上に、前述の本発明の粘着剤からなる層を有する粘着剤付き光学フィルムをも提供する。この偏光板としては、前述したように、偏光フィルム単独からなるものであってもよいが、図1に示すような構成の場合には、偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなるものが好ましい。
また、前記の粘着剤からなる粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm程度、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。
この粘着剤付き光学フィルムの製造方法については、偏光板などの光学フィルム上に本発明の粘着剤からなる層が設けられたものが得られる方法であればよく、特に制限はないが、以下に示す本発明の方法によれば、効率よく所望の粘着剤付き光学フィルムを製造することができる。
本発明の方法においては、剥離シートの剥離層上に設けられた粘着性材料層に、偏光板を貼合した後、該剥離シート側から活性エネルギー線を、前記粘着性材料層が、前述の所定の特性を有する本発明の粘着剤から構成される層になるように照射することによって、本発明の粘着剤付き光学フィルムが得られる。
前記剥離シートとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布し剥離層を設けたものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
また、粘着性材料及び活性エネルギー線の照射条件については、前述の本発明の粘着剤において説明したとおりである。
剥離シート上に粘着性材料層を設ける方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、好ましくは溶剤を加えた粘着性材料をコーティングして塗膜を形成させ、乾燥させる方法を用いることができる。乾燥条件は特に制限されないが、通常50〜150℃で10秒〜10分程度である。また、用いる溶剤としても特に限定されず、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
また、図1に示すような構成の場合には、偏光板としては、偏光フィルム単独からなるものである場合が多く、粘着剤からなる粘着剤層の厚さは前記と同様である。図1に示すような構成における粘着剤付き偏光板の製造方法についても、上記と同様に偏光板上に本発明の粘着剤からなる粘着剤層が設けられたものが得られる方法であればよく、特に制限はない。上記した本発明の製造方法によって効率的に製造することができる。
さらに、図2に示すような構成の場合には、2枚の剥離シートの剥離層側に接するように上述の粘着剤を挟持してなる粘着シートを作製しておき、該粘着シートを用いて偏光板と位相差板を貼合することができる。ここで活性エネルギー線は2枚の剥離シートに粘着性材料を挟持した後に照射してもよいし、一方の剥離シートに粘着性材料層を設け、活性エネルギー線を照射した後に他の剥離シートで挟持してもよい。なお、活性エネルギー線の照射条件は、前述の所定の特性を有する本発明の粘着剤から構成される層になるように選択される。
この粘着シートを用いて本発明の光学フィルムを製造する場合には、粘着シートの剥離シートが剥がされ、通常の方法により偏光板と貼合される。
本発明においては、粘着シートから剥離シートを剥離する際の剥離力が30m/分の速度で剥離した場合に100mN/25mm以下であることが好ましい。剥離力が100mN/25mm以下であると剥離帯電が生じにくく、本発明の偏光板等を作製する際に異物を巻き込むことがない。特に大型テレビなどの用途に用いる場合には有効である。
なお、偏光板以外に、本発明のリワーク性を有する粘着剤を適用できる光学フィルムとしては、位相差フィルム、及びプラズマディスプレイパネルや液晶ディスプレイパネル等のディスプレイ表面の保護フィルム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、実施例1〜7及び比較例1〜6で得られた粘着剤の性能及び粘着剤付き偏光板の性能を、以下に示す要領で求めた。
(1)粘着剤の貯蔵弾性率
明細書本文に記載の方法に従って、23℃及び80℃における貯蔵弾性率を測定した。
(2)粘着力(無アルカリガラスとの粘着力)
明細書本文に記載の方法に従って、無アルカリガラスとの粘着力を測定した。粘着力の測定は、オートクレーブにて、0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧した後、23℃、50%RH環境下で、1日、14日、及び21日間、それぞれ放置した後のものを測定した。
(3)ゲル分率
各実施例及び比較例における成分(A)〜成分(E)からなる粘着剤組成物を秤量し(初期質量)、これを酢酸エチル中に投入し、ソックスレー抽出装置を用いて16時間以上還流を行った後、不溶分のみを取り出した。該不溶分に含まれている溶剤を乾燥除去した後、秤量し(不溶分質量)、以下の式によってゲル分率を求めた。
ゲル分率(%)=(不溶分質量/初期質量)×100
(4)粘着剤付き偏光板の耐久性
粘着剤付き偏光板を、裁断装置(荻野精機製作所社製スーパーカッター「PN1−600」)により、233mm×309mmサイズに調整したのち、無アルカリガラス[コーニング社製「1737」]に貼合後、栗原製作所社製オートクレーブにて、0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧した。その後、下記の各耐久条件の環境下に投入し、200時間後に、10倍率ルーペを用いて観察を行い、以下の判定基準で耐久性を評価した。
◎:4辺において、外周端部から0.3mm以上に欠点がないもの。
○:4辺において、外周端部から0.6mm以上に欠点がないもの。
△:4辺のいずれか1辺に、外周端部から0.6mm以上に浮き、剥がれ、発泡、スジなどの0.1mm未満の粘着剤の外観異常欠点があるもの。
×:4辺のいずれか1辺に、外周端部から0.6mm以上に浮き、剥がれ、発泡、スジなどの0.1mm以上の粘着剤の外観異常欠点があるもの。
<耐久条件>
80℃ドライ環境、90℃ドライ環境、60℃・相対湿度90%環境
−20℃⇔60℃の各30分のヒートショック試験、200サイクル
(5)光漏れ性能
粘着剤付き偏光板を、裁断装置(荻野精機製作所製スーパーカッター「PN1−600」)により、233mm×309mmサイズに調整したのち、無アルカリガラス[コーニング社製「1737」]に貼合後、栗原製作所製オートクレーブにて、0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧した。なお、上記貼合は、無アルカリガラスの表裏に、粘着剤付き偏光板を偏光軸がクロスニコル状態になるように行った。この状態で80℃ドライ環境下、200時間放置後、以下に示す方法で光漏れ性を評価した。
大塚電子社製MCPD−2000を用い、図3に示す各領域の明度を測定し、明度差ΔL*を、式
ΔL*=[(b+c+d+e)/4]−a
(ただし、a、b、c、d及びeは、それぞれA領域、B領域、C領域、D領域及びE領域のあらかじめ定められた測定点(各領域の中央部1箇所)における明度である。)で求め、光漏れ性とする。ΔL*の値が小さいほど、光漏れが少ないことを示し、通常4.0未満であれば、液晶表示装置用として使用が可能である。
実施例1〜7及び比較例1〜6
第1表に示すモノマー組成(固形分換算)を用いて、第1表に示す物性を有する、アクリル系共重合体(成分(A))及びアクリル系共重合体(成分(B))を調製した。これに多官能アクリレート系モノマー(成分(C))、光重合開始剤、ポリイソシアネート化合物(成分(D))、シランカップリング剤(成分(E))を第1表に記載する配合量にて配合し、さらに溶剤としてトルエンを加えて固形分20質量%の塗工液を得た。該塗工液を用いて、剥離フィルムとして厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離フィルム[リンテック社製「SP−PET3811」]の剥離層上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように、ナイフ式塗工機で塗布した後、90℃で1分間乾燥処理して粘着性材料層を形成した。
次いで、ディスコティック液晶層(視野角拡大機能層)付偏光フィルムからなる偏光板を、粘着性材料層とディスコティック液晶層が接するように貼合した。貼合してから1時間後に剥離フィルム側から、紫外線(UV)を下記の条件で照射し、粘着剤付き偏光板を作製した。
<UV照射条件>
・フュージョン社製無電極ランプ Hバルブ使用
・照度600mW/cm2、光量150mJ/cm2
UV照度・光量計は、アイグラフィックス社製「UVPF−36」を使用した。
粘着剤の性能及び粘着剤付き偏光板の性能の評価結果を第2表に示す。
Figure 2012153901
*1 BA;アクリル酸ブチル
*2 HEA;アクリル酸2−ヒドロキシエチル
*3 AA;アクリル酸
*4 M−315;トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、分子量=423、3官能型(東亜合成社製、商品名「アロニックスM−315」)
*5 R−684;トリシクロデカンジメタノールアクリレート(日本化薬社製「KAYARAD R−684」、分子量=336)
*6 光重合開始剤;ベンゾフェノンと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとの質量比1:1の混合物、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア500」
*7 ポリイソシアネート化合物;(架橋剤、密着性改良剤):トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製「コロネートL」)
*8 シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−403」)
Figure 2012153901
本発明の粘着剤は、例えば、偏光板、特に視野角拡大フィルムなどと一体化してなる偏光板に、又は偏光板に位相差板が積層される場合に好適に適用され、該偏光板を液晶セルに耐久性よく接着し得ると共に、得られた液晶表示装置が、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくいなどの特性を有している。また、リワーク性に優れるため、貼合位置にずれが生じた場合など、貼合から一定期間は再度剥離することができ、正確に貼合された場合には、一定期間経過することにより、液晶セルに十分に貼合することができる。従って、高価な液晶セルを再利用することができる。
1,2;液晶表示装置
11,21;偏光板
12,22,25;粘着剤
13,23;ガラス(液晶セル)
24;位相差板

Claims (11)

  1. (A)水酸基含有モノマーをモノマー組成比で0.01〜5質量%含み、かつ、カルボキシル基含有モノマーをモノマー組成比で0.01質量%以上2.0質量%未満含むモノマー組成物を重合してなる重量平均分子量100万以上のアクリル系共重合体、(B)水酸基含有モノマーがモノマー組成比で0.01質量%未満であり、かつ、カルボキシル基含有モノマーをモノマー組成比で0.01〜15.0質量%含むモノマー組成物を重合してなる重量平均分子量100万以上のアクリル系共重合体、及び(C)活性エネルギー線硬化型化合物を含む粘着性材料に活性エネルギー線を照射してなる粘着剤であって、成分(A)と成分(B)の質量比が100:1〜100:30であり、かつ、23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上であり、ゲル分率が85%以上である粘着剤。
  2. 成分(A)と成分(C)の質量比が100:1〜100:40である請求項1に記載の粘着剤。
  3. 成分(A)が重量平均分子量150万以上のアクリル系共重合体である請求項1又は2に記載の粘着剤。
  4. さらに、(E)シランカップリング剤を含有し、成分(A)と成分(E)の質量比が100:0.1〜100:0.5である請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤。
  5. さらに、(D)ポリイソシアネート化合物及び(E)シランカップリング剤を含有し、成分(A)中の水酸基含有モノマーと成分(D)のモル比が0.8:1.2〜1.2:0.8であって、かつ、成分(A)と成分(E)の質量比が100:0.1〜100:0.5である請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤。
  6. 23℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3〜15MPaである請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤。
  7. 80℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.1〜15MPaである請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤。
  8. 剥離シートの剥離層上に請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤からなる粘着性材料層を有する粘着シート。
  9. 2枚の剥離シートの剥離層側に接するように請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤を挟持してなる粘着シート。
  10. 光学フィルム上に請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤からなる粘着性材料層を有する粘着剤付き光学フィルム。
  11. 前記光学フィルムが偏光板である請求項10に記載の粘着剤付き光学フィルム。
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