JP2012150074A - 気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、シリコン薄膜に数μmの単位の幅のスリット2Bを形成することによって作製されたカンチレバー2Aを、気体と溶液の気液界面に配置することにより、気体4に面する面における親水性負荷を取り除き高い信号雑音比(SNR)が得られるようにし、レーザーを用いて駆動した前記カンチレバー2Aの共振周波数を前記気体4側に配置した監視装置5によって測定するようにした。
【選択図】 図1
Description
図13は従来の継続的監視のための閉ループフィードバック実験システムの模式図である。
図14は従来の液体中における原子間力顕微鏡用カンチレバーの模式図である。
このように構成することにより、液体中に配置されたカンチレバー202によって、サンプル203の微小凹凸面を計測するようにしている。
この図において、301はマイクロ流路、302はカンチレバー、303はスリット、304はPDMSからなるカバー、305は空気部、306はガラス基板、307は磁気ひずみ膜である。
本発明は、上記状況に鑑みて、気液界面でも安定した高い信号雑音比(SNR)を得ることができる、気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサを提供することを目的とする。
〔1〕気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、シリコン薄膜に数μm単位の幅のスリットを形成することによって作製されたカンチレバーを、気体と溶液の気液界面に配置することにより、気体に面する面における親水性負荷を取り除き高い信号雑音比(SNR)が得られるようにし、レーザーを用いて駆動した前記カンチレバーの共振周波数を前記気体側に配置した監視装置によって測定するようにしたことを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、前記監視装置は、前記カンチレバーの前記気体に面する面から反射されるドップラーレーザーを用いてリアルタイムに前記カンチレバーの共振周波数を監視することを特徴とする。
〔6〕上記〔4〕記載の気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、前記カンチレバーの表面を検出分子に特異的に結合する分子で予め修飾して、分子識別能を付加しておき、前記カンチレバーの表面に前記検出分子が吸着した時に発生する共振周波数の変化を検出することを特徴とする。
〔8〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、前記カンチレバーの溶液に面する面に原子間力顕微鏡の探針を具備することを特徴とする。
マイクロ流路に構築された気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、カンチレバーの気体に面する面の親水性負荷を取り除きカンチレバーの変位計測における信号雑音比を向上させることができる。
また、カンチレバーの周波数特性が向上するので、液中原子間力顕微鏡の撮像においてより微小な凹凸情報の検出ができる。
図1は本発明の実施例を示す気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサの全体構成図、図2は図1のマイクロカンチレバーセンサのカンチレバーの裏面図、図3は図1のA部拡大図である。
ここでは、バイオセンサ構造について説明する。
マイクロ流路3に組み込んだカンチレバー2Aを、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)プロセスを用いてシリコン・オン・インシュレーター(SOI、Si/SiO2 /Si:5/2/400μm)ウェハ上に作製した。カンチレバー2Aは、図2に示すように、メニスカス力によって液体を維持する数μm幅のスリット2Bを形成することによって、マイクロ流路3の底面に形成した。流体溶液の流入と流出を可能にするため、マイクロ流路3の上に厚さ2mmのPDMSカバー1を加工した。カンチレバー2Aの共振周波数を検出しながら、溶液をマイクロ流路3に流入させ、カンチレバー2Aの上面と接触させるようにした。なお、2CはSiO2 膜である。
なお、図2に示されるカンチレバーは、長さ80μm、幅20μm、厚さ5μmである。スリット2Bの幅は、図3に示されるように、マイクロ流路3中の液体が漏れることなく維持される限り、適宜設定することができる。
図4は本発明に係るカンチレバー周囲の環境が異なる場合の周波数特性図であり、大気中〔図4(a)〕、大気と純水との界面〔図4(b)〕、および純水中〔図4(c)〕という3種類の異なる条件でカンチレバーを共振させ、その共振周波数を測定した結果を示す。環境の影響を正確に把握するため、同じカンチレバーを異なる条件で共振させた。
一方、カンチレバーを純水に浸漬させた状態では、図4(c)に示すようにカンチレバー周辺の流体力学負荷(hydrodynamic loading)の影響によって、共振周波数およびQ値は788.5kHzおよび11まで大幅に低下した。さらに、片面が大気に晒されているカンチレバーの場合は、図4(b)に示すように、他の条件の場合の中間である919.5kHzの共振周波数と少なくとも15のQ値を有していた。
(A)カンチレバーの作製
図5は本発明の実施例を示すカンチレバーの製造工程図である。
寸法80μm×20μm×5μmのカンチレバーをDRIEプロセスによってSOIウェハ上に作製し、その親水性表面をSiO2 層で覆った。カンチレバーは、厚さ400μmのシリコン最下層上に作製したマイクロ流路に組み込んだ厚さ5μmのシリコン層上に形成した。そのプロセスは次の通りである。
(2)図5(b)に示すように、熱蒸着プロセスを用いて厚さ100nmのAl層12をSOIウェハ11の底面に堆積させる。
(3)図5(c)に示すように、Al層12上にフォトレジスタS1818を4000rpmで30秒間スピン塗布し、90℃の熱板上で10分間焼成する。Al層12は、マイクロ流路のDRIEプロセス中のエッチングマスクとしての役割を果たす。
(5)図5(e)に示すように、マイクロ流路が予定される領域15を、SiO2 膜14膜まで、STS−ICPの「Tokyoプロセス」を用いて500サイクルで作製し、ピラニア溶液を用いてデバイスを120℃の熱板で15分間洗浄し、次いで純水で数回すすぎを行う。
さらに、カンチレバーの表面を官能基化するため、マイクロ流路側のカンチレバー表面にスパッタリングを施して厚さ130nmのSiO2 を堆積させた。
カンチレバー周囲の様々なスリット幅に関して、静的および動的流動条件における漏れが研究されてきた。マイクロ流路からの溶液の漏れを検証するため、幅2μm〜10μmのスリットを使用した。静的条件では、スリット幅が10μmであっても、スリットはメニスカス力によって漏れを生じることなく溶液を維持した。さらに、動的条件では、純水をマイクロ流路に流したところ、流動速度が生体反応に対する流動速度としてはかなり高速である11,250mm/秒未満のとき、スリットからの漏れはなかった。
図6は本発明に係るカンチレバーの共振周波数を1時間計測した計測値を示す図であり、図6(a)はプル型シリンジポンプを使用した場合、図6(b)のaはプッシュプル型シリンジポンプを使用した場合であり、ピークは規則的に出現した。図6(b)のbはマイクロ流路の流入口/流出口に向かうチューブの長さを調整した後にプッシュプル型シリンジポンプを使用した場合を示している。
図7はプッシュプル型シリンジポンプを使用し、マイクロ流路の両側に向かうチューブの長さを調整して、逆方向の同じ圧力であるべき液圧P1およびP2を平衡させるための実験のセットアップ状態を示す図である。
直径450nmのカルボキシル化微小球を、アミノ基で官能基化したカンチレバーに連続的に暴露して、異なる濃度に対応する反応動態を確認した。アミノ官能基を表面上に均一に分布させるため、APTES(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)溶液、すなわち、APTES5%、純水5%、およびエタノール90%、をカンチレバー上のSiO2 層に30分間適用し、エタノールおよび純水を用いて慎重にすすぎを行った。デバイスは、60℃のオーブン内で一晩完全に乾燥させた。微小球上でアミノ基とカルボキシル基を結び付けるため、EDC〔1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド:水溶性カルボジイミド〕を2mg/mL添加してペプチド結合させた。
この図に示すように、濃度が高いほど反応時間は短くなる。特に、図8(a)に示すように、最も高い濃度では、共振周波数は最初の5分間で大幅に減少し、その後わずかだけ徐々に増加した。対照的に、図8(b),図8(c)に示すように、他の2つの低濃度では、共振周波数はそれぞれ減少し飽和した。
しかしながら、カンチレバー周囲の環境が非対称的であるため、液圧変化の影響を受けやすくなった。プッシュプル型シリンジポンプを利用し、ポンプとマイクロ流路を接続するチューブの長さを調整して、カンチレバーにおける液圧の摂動を補償した。カンチレバーの共振周波数は、大気に晒された表面から反射されるドップラーレーザーを用いてリアルタイムでモニタした。共振周波数は、表面上のアミノ基と微小球のカルボキシル基との間のペプチド結合による負荷質量によって変化した。3種類の異なる濃度は、周波数変化に対して対数関数的に比例することが示された。
スリット付きカンチレバーを用いて、マイクロ流路内の送液圧力を測定するセンサに応用することができる。液体の送液により生じた流路内圧力をカンチレバーの共振周波数変化として図10のように測定することができる。流速の増加に伴い、共振周波数はほぼ線形的に上昇した。これにより、共振周波数変化からカンチレバーに加わる圧力を計算すれば、マイクロ流路内の送液圧力を直接測定することができる。
この図において、31はマイクロ流路、32はマイクロ流路への流入口、33はマイクロ流路からの流出口、34は液体中に配置された探針34Aを有するスリット34B付きのカンチレバー、35はサンプル、36は気体部、Aは励振用レーザー、Bは検出用レーザーである。
(1)図12(a)に示すように、SOIウェハ41の裏面にAl層42を蒸着する。
(2)図12(b)に示すように、裏面のAl層42をパターニングする。
(3)図12(c)に示すように、SOIウェハ41の表面に探針43A付きのAFMカンチレバー43のプローブをパターニングし、異方性エッチングを行う。
(5)図12(e)に示すように、SOIウェハ41のSiO2 膜44まで、裏面のDRIEを行い、マイクロ流路となる領域45を形成する。
(6)図12(f)に示すように、フッ酸でSiO2 膜44をエッチングし、最終的なマイクロ流路となる領域45′を形成する。
また、カンチレバーセンサはカンチレバー表面に検出分子を吸着させた時に発生する、共振周波数や静的変位の変化を検出する装置であり、検出分子に特異的に結合するような分子(例えば抗体)であらかじめカンチレバーの表面を修飾しておくことで、分子識別能を付加させることができる。
2 カンチレバーデバイス
2A,13,34 カンチレバー
2B,34B,43B スリット
2C,14,44 SiO2 膜
3,25,31 マイクロ流路
4,36 気体部
5 カンチレバーの共振周波数の監視装置
11,41 SOIウェハ
12,42 Al層
15,45 マイクロ流路となる領域
15′,45′ 最終的なマイクロ流路となる領域
21 ポンプ
22 第1の流れ
23 注入装置
24 第1のチューブ
26,32 マイクロ流路への流入口
27,33 マイクロ流路からの流出口
28 第2のチューブ
29 第2の流れ
34A,43A 探針
35 サンプル
43 AFMカンチレバー
A 励振用レーザー
B 検出用レーザー
Claims (9)
- シリコン薄膜に数μm単位の幅のスリットを形成することによって作製されたカンチレバーを、気体と溶液の気液界面に配置することにより、気体に面する面における親水性負荷を取り除き高い信号雑音比(SNR)が得られるようにし、レーザーを用いて駆動した前記カンチレバーの共振周波数を前記気体側に配置した監視装置によって測定するようにしたことを特徴とする気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサ。
- 請求項1記載の気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、前記スリットの幅が2μm〜10μmであり、メニスカス力によって前記溶液が前記気体側に漏れるのを防ぐことを特徴とする気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサ。
- 請求項1又は2記載の気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、前記監視装置は、前記カンチレバーの前記気体に面する面から反射されるドップラーレーザーを用いてリアルタイムに前記カンチレバーの共振周波数を監視することを特徴とする気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサ。
- 請求項1、2又は3記載の気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、前記カンチレバーの溶液側に溶液を供給するマイクロ流路を配置し、プッシュプル型シリンジポンプを用いて前記溶液の液圧を前記マイクロ流路の両端でそれぞれ制御するとともに、前記プッシュプル型シリンジポンプと前記マイクロ流路を接続するチューブの長さを調整することにより、前記カンチレバーにおける液圧の摂動を補償するようにしたことを特徴とする気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサ。
- 請求項4記載の気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、前記プッシュプル型シリンジポンプと前記マイクロ流路の流入口との間に、前記マイクロ流路内に化学物質を注入するための注入装置を配置することを特徴とする気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサ。
- 請求項4記載の気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、前記カンチレバーの表面を検出分子に特異的に結合する分子で予め修飾して、分子識別能を付加しておき、前記カンチレバーの表面に前記検出分子が吸着した時に発生する共振周波数の変化を検出することを特徴とする気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサ。
- 請求項4記載の気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、前記マイクロ流路内の液圧を直接測定することを特徴とする気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサ。
- 請求項1、2又は3記載の気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、前記カンチレバーの溶液に面する面に原子間力顕微鏡の探針を具備することを特徴とする気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサ。
- 請求項8記載の気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサにおいて、前記溶液中の生体分子を生理的条件下で観察することを特徴とする気液界面で共振するマイクロカンチレバーセンサ。
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