JP2012143075A - 電力変換装置、および電力変換装置の過電流保護方法 - Google Patents

電力変換装置、および電力変換装置の過電流保護方法 Download PDF

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功治 羽賀
Hiroaki Miyata
博昭 宮田
Kaoru Sonobe
薫 園部
Kenji Takeda
賢治 武田
Yasuaki Nakayama
靖章 中山
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Abstract

【課題】整流器とインバータからなる電力変換装置から負荷側へ大きな突入電流が流れる場合でも、過電流保護動作による機器停止を回避して電力変換装置の稼動を継続させる。
【解決手段】電力変換装置1aから変圧器や電動機等の負荷13に大きな突入電流が流れたら、ゲートサプレス制御部6がインバータ3へゲートブロック信号Sgを送信してスイッチング動作を制御する駆動パルス信号を一時的にブロック(遮断)してインバータ3の出力を停止する。所定時間後にゲートサプレス状態が解除される前に、所定の制御周期で起動される電圧絞り制御部5が、出力電流帰還値Ifに基づいて生成した電圧絞り制御信号Scによって、出力電圧制御AVR4からインバータ3へ出力する電圧制御量Vrを出力電圧を低減するように補正させる電圧絞り制御を行うことで、過電流を抑制する。
【選択図】図1

Description

本発明は、直流電力を所望の交流電力に変換して負荷に供給するインバータを備えた電力変換装置、および電力変換装置の過電流保護方法に関する。
整流器とインバータなどからなる電力変換装置においては、その負荷側に変圧器や電動機等が存在すると、起動時や負荷接続時などに変圧器や電動機等へ大きな突入電流(励磁突入電流)が流れることがある。このような大きな突入電流の発生によって装置が過電流の状態になると、過電流保護回路が作動し装置が停止してしまい、負荷に電力を供給することができなくなる。そこで、従来から、過電流の状態になっても装置をすぐには停止させずに継続して装置を稼動させるための過電流保護技術が提案されている。
まず始めに、従来の電力変換装置における突入電流発生時の過電流保護動作について説明する。図9は、従来の電力変換装置の概略構成を示すブロック図であり、この図には、電力変換装置の主回路およびインバータ部分の制御部の構成を示している。図9に示すように、電力変換装置101は、整流器2、インバータ3、出力電圧制御AVR(Automatic Voltage Regulator:自動電圧調整器)4、および出力電圧指令部7を備えて構成され、入力側が商用電源11に接続され、出力側が負荷投入用開閉器12を介して負荷13に接続されている。このような構成により、商用電源11から供給される交流電力は整流器2で所定電圧の直流電力に変換され、その直流電力はインバータ3によって所望の交流電力に変換される。このとき、出力電圧制御AVR4が、出力電圧指令部7で生成された目標電圧である出力電圧指令値Voと、インバータ3の出力電圧を帰還させた出力電圧帰還値Vfとの偏差に応じて、電圧制御量Vrを調整することにより、インバータ3の出力電圧を目標電圧に一致させるようにフィードバック制御を行う。これにより、電力変換装置101から一定電圧の交流電力が出力される。そして、負荷投入用開閉器12をONすることにより、電力変換装置101から出力される交流電力が負荷13に供給される。
ここで、負荷13に変圧器や電動機のような大きな突入電流を発生させる要素が含まれていると、負荷投入用開閉器12をOFFからONに切り換えた直後に、インバータ3から負荷13へ大きな突入電流が流れる。このとき負荷13へ流れる突入電流は、電力変換装置101の定格電流の数倍にも達する場合があるため、電力変換装置101は装置を保護するために出力電流が所定の過電流保護電流値(例えば、定格電流の200%値)を超えると、過電流保護動作により機器停止するようになっている。
これに関連する従来の過電流保護技術として、特許文献1には、電力変換装置からの出力電流が定格電流を超えた場合に、その超えた部分の大きさに比例する負の電圧補償値を付加することで目標電圧を下げてインバータ制御を行うことにより、過電流を抑制して装置を継続稼動させる技術が開示されている。また、特許文献2には、電源装置から負荷へ基準値以上のラッシュ電流(突入電流)が流れた場合に、半導体スイッチ素子を一時的にOFF(ゲートブロック)させ、所定時間経過後にその半導体スイッチ素子を再びONさせることにより、単発性のラッシュ電流に起因する過電流保護動作によって電源装置が停止に至るのを回避する技術が開示されている。
特開2008−167630号公報 特開2008−172901号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、マイコンを用いたプログラム制御によって所定周期で実行される制御サイクル毎にインバータの目標電圧を設定するものであるため、制御の応答性が低く、変圧器や電動機等へ流れる突入電流のように瞬時に大きく増加する過電流には対処できないという問題がある。
また、特許文献2に開示された技術は、制御の応答性が高く、突入電流発生時においても過電流を瞬時に停止させることができるが、その後、ゲートブロックを解除したときに再び突入電流が流れると、装置が停止してしまうという問題がある。装置を停止させずに再度ゲートブロックする方法も考えられるが、変圧器や電動機などでは励磁と消磁とが短期間に繰り返されるために、突入電流による過電流の繰り返しが発生して出力電流が大きく振動し、電力変換装置の機器を破損させるおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、負荷へ大きな突入電流が流れたときの過電流保護動作による機器停止を回避して装置を継続して稼動させることができる電力変換装置、および電力変換装置の過電流保護方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、前記インバータを構成するスイッチング素子の動作タイミングを制御して前記インバータに所望電圧の交流電力を出力させる制御部とを備えた電力変換装置であって、前記インバータから前記負荷へ出力される出力電流が、所定の過電流保護電流値を超えたときに、前記インバータから前記負荷への交流電力の供給を一時的に停止させるゲートサプレス制御手段と、所定の制御周期で起動され、前記ゲートサプレス制御手段による前記交流電力の供給の停止が解除されたときの前記インバータから前記負荷へ出力される出力電圧を、前記出力電流が前記電力変換装置の定格電流よりも小さくなるように、前記所望電圧よりも低減させる電圧絞り制御を行う電圧絞り制御手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、前記インバータを構成するスイッチング素子の動作タイミングを制御して前記インバータに所望電圧の交流電力を出力させる制御部とを備えた電力変換装置の過電流保護方法であって、前記インバータから前記負荷へ出力される出力電流が、所定の過電流保護電流値を超えたときに、前記インバータから前記負荷への交流電力の供給を一時的に停止させるゲートサプレス制御を行う第1のステップと、所定の実行周期で実行され、前記ゲートサプレス制御による前記交流電力の供給の停止が解除されたときの前記インバータから前記負荷へ出力される出力電圧を、前記出力電流が前記電力変換装置の定格電流よりも小さくなるように、前記所望電圧よりも低減させる電圧絞り制御を行う第2のステップとを含むことを特徴とする。
本発明によれば、負荷へ大きな突入電流が流れたときの過電流保護動作による機器停止を回避して装置を継続して稼動させることができる電力変換装置、および電力変換装置の過電流保護方法を提供できる。
第1実施形態に係る電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。 第2実施形態に係る電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。 電圧絞り制御とゲートサプレス制御とを併用する場合の出力電圧と出力電流の変化を示す特性図である。 電圧絞り制御を行う電力変換装置の構成例を示すブロック図である。 電圧絞り制御を行う電力変換装置の他の構成例を示すブロック図である。 電圧絞り制御が間に合わない場合の出力電圧と出力電流の変化を示す特性図である。 ゲートサプレス制御を行う電力変換装置の構成例を示すブロック図である。 ゲートサプレス制御による電流振動が発生する場合の出力電圧と出力電流の変化を示す特性図である。 従来の電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
《本発明の基礎となる技術》
〈出力電圧制御AVRを制御する電圧絞り制御〉
図4は、本発明の基礎となる技術の1つである電圧絞り制御を行う電力変換装置の構成例を示すブロック図である。この第1の構成例は、電圧絞り制御部5が出力電圧制御AVR4を制御して電圧絞り制御(出力電圧を下げる制御)を行う場合の例を示している。図4に示すように、電力変換装置10aは、図9に示した従来の電力変換装置101に対して、インバータ3の出力電流帰還値Ifを入力して電圧絞り制御信号Scを生成し、この電圧絞り制御信号Scによって出力電圧制御AVR4に出力電圧の低減を指示する電圧絞り制御部5が追加されたものである。
図4に示す電力変換装置10aの主回路およびインバータ部分の制御部の基本的な動作については、図9に示した従来の電力変換装置101と同様であるため説明を省略し、ここでは、追加された電圧絞り制御部5の動作について説明する。
電圧絞り制御部5は、マイコンを用いたプログラム制御により所定の制御周期で起動され、インバータ3の出力電流帰還値Ifを入力し、この出力電流帰還値Ifが装置の過電流保護電流値(例えば、定格電流の200%値)よりも低く設定される所定の基準電流値(例えば、定格電流の120%値)を超えると、出力電圧の低減率を指示する電圧絞り制御信号Scを生成し、この電圧絞り制御信号Scを出力電圧制御AVR4へ送信する。出力電圧制御AVR4は、電圧絞り制御信号Scを受信すると、インバータ3へ出力する電圧制御量Vrの補正を行うことによってインバータ3の出力電圧を指示された低減率(例えば、現在の50%の値)に低減させる。具体的には、電圧制御量VrがPWM(Pulse Width Modulation)制御におけるパルス幅を指定するものであれば、例えばパルス幅を50%に絞ることで、また、電圧制御量VrがPAM(Pulse Amplitude Modulation)制御におけるパルス振幅を指定するものであれば、例えばパルス振幅を50%に絞ることで、インバータ3の出力電圧を出力電圧指令値Voの2分の1に低減させる。これにより、電圧絞り制御部5は、出力電流が装置の過電流保護電流値に至らないようにインバータ3の出力電流の増加を抑制するべく動作する。
〈出力電圧指令値を制御する電圧絞り制御〉
図5は、電圧絞り制御を行う電力変換装置の他の構成例を示すブロック図である。この第2の構成例は、電圧絞り制御部5が出力電圧指令部7を制御して電圧絞り制御(出力電圧を下げる制御)を行う場合の例を示している。前記した第1の構成例(図4)では、電圧絞り制御部5から出力される電圧絞り制御信号Scを出力電圧制御AVR4へ送信して、出力電圧制御AVR4にインバータ3の出力電圧を低減させるものとしたが、図5の構成例では、電圧絞り制御部5から出力される電圧絞り制御信号Scを出力電圧指令部7へ送信して、出力電圧指令部7が生成する出力電圧指令値Voを低減させる。
ここで、電圧絞り制御部5は、マイコンを用いたプログラム制御により所定の制御周期で起動され、インバータ3の出力電流帰還値Ifを入力し、この出力電流帰還値Ifが装置の過電流保護電流値(例えば、定格電流の200%値)よりも低く設定される所定の基準電流値(例えば、定格電流の120%値)を超えると、出力電圧の低減率を指示する電圧絞り制御信号Scを生成し、この電圧絞り制御信号Scを出力電圧指令部7に送信する。出力電圧指令部7は、電圧絞り制御信号Scを受信すると、出力電圧制御AVR4の目標電圧となる出力電圧指令値Voを、指示された低減率にしたがって(例えば、現在の50%の値に)低減し、出力電圧制御AVR4は低減された新たな値を目標値としてインバータ3の出力電圧をフィードバック制御する。これにより、電圧絞り制御部5は、出力電流が装置の過電流保護電流値に至らないようにインバータ3の出力電流の増加を抑制するべく動作する。
〈電圧絞り制御の課題〉
一般に、インバータを構成するスイッチング素子を駆動パルス信号を用いて高速にON/OFF動作させて出力電圧を制御するためには、マイコンによるプログラム制御が行われる。また、市販のインバータの多くは10kHz以下のキャリア周波数で動作するようになっており、このキャリア周波数に基づいてパルス幅などの制御を行うマイコンの制御周期が設定される。通常は、キャリア周波数が1kHzのインバータであればマイコンの制御周期は1msに設定され、キャリア周波数が6.6kHzのインバータであればマイコンの制御周期は150μsに設定される。したがって、多くの場合はマイコンの制御周期は100μs以上に設定されている。前記した電圧絞り制御部5は、このマイコンの制御周期毎に実行されるプログラムにその機能を付加することによって安価に実現できるが、その場合、電圧絞り制御の実行周期はマイコンの制御周期と等しく、多くは100μs以上となるものと考えられる。
これに対して、前記の電力変換装置10a,10bに負荷13を接続したときに変圧器等を励磁する際に流れる突入電流は、ゼロから装置の過電流保護電流値(例えば、定格電流の200%値)に到達するまでの立ち上がり時間が50μs以内となることも少なくない。このため、図4、図5にて説明した電圧絞り制御によって突入電流に伴う過電流を抑制しようとしても、マイコンによる制御が間に合わずに電力変換装置10a,10bの出力電流が装置の過電流保護電流値を超え、過電流保護動作により機器停止に至る可能性が高い。
このように、電圧絞り制御の応答性が低いために電力変換装置10a,10bが過電流耐量を超える現象について、図面を用いてさらに詳しく説明する。図6は、電圧絞り制御が間に合わない場合の出力電圧と出力電流の変化を示す特性図であり、横軸に時間、縦軸にインバータ3の出力電圧(INV出力電圧)、出力電流(INV出力電流)を示している。
ここで、図6において、インバータ3の出力電圧が時刻t0以降にて目標値に維持されているときに、時刻t1において電力変換装置10a,10bに負荷である変圧器(TR)が投入(接続)されて大きな突入電流が発生したものと仮定する。
このとき、時刻t1で発生した突入電流によるインバータ3の出力電流は、時刻tbにて電圧絞り制御を開始させるための基準電流値(例えば、定格電流の120%値)に到達するが、マイコンによりこれを検出して電圧絞り制御を有効とするには、斜線を付した時刻tbと時刻t2との間で出力電流を検出し、かつ、時刻t2までにインバータ3に出力電圧を低下させる制御信号を送信しなければならない。したがって、多くの場合は過電流の発生が検知されないまま時刻t2にて過電流保護動作による機器停止に至り、時刻t2以降における出力電圧、出力電流は共にゼロになってしまう。
図6の例のように、仮に、マイコンの制御周期が100μsであったとしても、制御サイクルの開始タイミングが時刻taから時刻tbまでの間に入っている場合は、マイコンによる電圧絞り制御が間に合わずに装置が機器停止に至る結果となる。また、マイコンの制御周期がもっと長ければ、機器停止に至る可能性はより高くなる。このように、マイコンによる電圧絞り制御だけでは、制御の応答性が低いために、大きな突入電流の発生に伴う機器停止を回避できないという課題がある。
〈ゲートサプレス制御〉
図7は、本発明の基礎となるもう1つの技術であるゲートサプレス制御を行う電力変換装置の構成例を示すブロック図である。この構成例は、ゲートサプレス制御部6がインバータ3のスイッチング動作を制御する駆動パルス信号を一時的にブロック(遮断)して、出力電圧を抑制する制御を行う場合の例を示している。図7に示す電力変換装置10cは、図9に示した従来の電力変換装置101に対して、インバータ3の出力電流帰還値Ifを入力してゲートブロック信号Sgを生成し、このゲートブロック信号Sgによってインバータ3にスイッチング動作を行わせるための駆動パルス信号を一時的にブロック(遮断)するゲートサプレス制御部6が追加されたものである。
なお、ゲートサプレス制御とは、出力電圧制御AVR4がインバータ3のスイッチング素子をON/OFF動作させるタイミングを制御するために出力する駆動パルス信号を、1乃至数パルスだけ一時的にブロック(遮断)して無効化することによって、インバータ3のスイッチング動作を停止させてインバータ3からの出力を瞬時に停止させる制御である。
図7に示すゲートサプレス制御を行う電力変換装置10cが、図4、図5に示した電圧絞り制御を行う電力変換装置10a,10bと異なるのは、電圧絞り制御部5およびその信号回路を取り除いて、ゲートサプレス制御部6およびその信号回路を追加している点である。
ここで、ゲートサプレス制御部6は、インバータ3の出力電流帰還値Ifを入力し、この出力電流帰還値Ifが装置の過電流保護電流値(例えば、定格電流の200%値)を超えると、ゲートブロック信号Sgを生成し、このゲートブロック信号Sgをインバータ3へ送信する。インバータ3は、ゲートブロック信号Sgを受信すると、出力電圧制御AVR4から入力した駆動パルス信号を1乃至数パルスだけ遮断することにより、その間のスイッチング動作を停止することで出力を一時的に停止させる。
例えば、インバータ3が10kHzのキャリア周波数でPWM制御を行っているとすると、ゲートサプレス制御部6から出力されるゲートブロック信号Sgによって、出力電圧制御AVR4から受信したPWM駆動パルス信号を1乃至数パルスだけ(時間に換算すると100μs乃至数100μsの間)強制的に遮断することにより、その間のスイッチング動作を停止してインバータ3の出力を一時的に停止させる。これにより、ゲートサプレス制御部6は、出力電流が装置の過電流保護電流値を超えた場合に、所定時間だけ出力を停止する過電流保護回路として機能する。
なお、このようなゲートサプレス制御を行うための演算は比較的単純なので、ゲートサプレス制御部6は、ハードウェアによって構成することができる。したがって、ゲートサプレス制御の動作時間は半導体素子のターンオン時間に相当する1μs以下であり、高速制御が可能である。そのため、ゲートサプレス制御により電力変換装置10cの過電流保護機能を実現することができる。
〈ゲートサプレス制御の課題〉
以上説明したように、変圧器等へ大きな突入電流が流れたときにはゲートサプレス制御によって過電流を瞬時に抑制することができる。ところが、所定時間の経過後にゲートサプレス状態が解除されてインバータ3からの出力が再開されたときに、再び大きな突入電流が流れる場合がある。例えば、電力変換装置10cの負荷となる変圧器へ大きな突入電流が流れて、出力電流が過電流保護電流値を超えた際には、直ちに(1μs以内に)ゲートサプレス状態へ切り換わり、インバータ3の出力電圧、出力電流は共にほぼゼロになる。しかし、所定時間の経過後にゲートサプレス状態が解除されてインバータ3からの出力が再開されるときには、インバータ3の出力電圧がゼロ付近から急速に元の電圧まで上昇するので、再度大きな突入電流が発生してしまうことがある。その場合は、再度ゲートサプレス制御によってゲートサプレス状態へ切り換え、インバータ3からの出力を停止する。このように、ゲートサプレス状態への切り換えと解除との動作が何度も繰り返されることによって、電力変換装置10cの出力電流が過電流領域で大きく振動する現象が発生する場合がある。
このようなゲートサプレス制御による電流振動の発生について、図面を用いてさらに詳しく説明する。図8は、電力変換装置のゲートサプレス制御部によって電流振動が発生する場合のインバータ3の出力電圧と出力電流の変化を示す特性図であり、横軸に時間、縦軸に出力電圧、出力電流を示している。
ここで、図8において、インバータ3の出力電圧が時刻t0以降にて目標値に維持されているときに、時刻t1において電力変換装置10cに負荷である変圧器(TR)が投入(接続)されて大きな突入電流が発生したものと仮定する。
このとき、時刻t1で発生した突入電流によるインバータ3の出力電流は、時刻t1から50μs後の時刻t2においてインバータ3の過電流保護電流値である定格電流の200%値に達したものとする。これにより、時刻t2において、ゲートサプレス制御が働き、極めて高速(例えば、1μs以内)にインバータ3の駆動パルス信号が遮断され、インバータ3の出力電圧および出力電流は共にほぼゼロになる。そして、ゲートサプレス状態の継続時間が100μsに設定されているものとすると、時刻t2から100μs後の時刻t3において、ゲートサプレス状態が解除されることになる。
ゲートサプレス状態では、負荷となる変圧器への電力供給が停止されるので、先の突入電流によって一旦励磁が開始された変圧器は、この100μsの間に消磁されて元の状態に戻ってしまう。そこで、時刻t3においてインバータ3の出力電圧が目標値まで急速に立ち上がると、時刻t3から変圧器へ再び大きな突入電流が流れ出す。そして、インバータ3の出力電流がインバータ3の過電流保護電流値(例えば、定格電流の200%値)に到達する時刻t3から約50μs後の時刻t4において、再びゲートサプレス制御が働いて、インバータ3の出力電圧および出力電流は再びほぼゼロになる。
時刻t4以降においても同様な動作が繰り返されることにより、インバータ3の出力電圧および出力電流が、装置の定格電流を超える過電流領域において大きく振動することとなり、電力変換装置が故障に至るおそれがある。
《本発明による課題の解決》
以上説明したように、マイコンによる電圧絞り制御は、過電流の抑制が可能であるが、制御の応答性が低いために、大きな突入電流が流れた場合には制御が間に合わずに、過電流保護動作によって装置が機器停止に至る場合がある。他方、ゲートサプレス制御は、制御の応答性が高いが、突入電流そのものを抑制するものではないので、装置の過電流領域での電流振動が発生する場合がある。これに対し、本発明は、電圧絞り制御とゲートサプレス制御との両者を併用することにより、これらの課題を解決する電力変換装置およびその過電流保護方法を提供するものである。
〈第1実施形態〉
図1は、電圧絞り制御とゲートサプレス制御とを併用する本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。この構成は、図4を用いて説明した、電圧絞り制御部5が出力電圧制御AVR4へ電圧絞り制御信号Scを送信して出力電圧を低下させるようにインバータ3への電圧制御量Vrの補正を指示する電圧絞り制御と、図7を用いて説明した、ゲートサプレス制御部6がインバータ3へゲートブロック信号Sgを送信してインバータ3のスイッチング動作を停止して出力を一時的に停止させるゲートサプレス制御と、を併用した例を示している。
図1に示すように、電力変換装置1aは、図9に示した従来の電力変換装置101に対して、インバータ3の出力電流帰還値Ifを入力して電圧絞り制御信号Scを生成し、この電圧絞り制御信号Scによって出力電圧制御AVR4に出力電圧の低減を指示する電圧絞り制御を行う電圧絞り制御部5と、インバータ3の出力電流帰還値Ifを入力してゲートブロック信号Sgを生成し、このゲートブロック信号Sgによってインバータ3にスイッチング動作を行わせるための駆動パルス信号を一時的にブロック(遮断)するゲートサプレス制御を行うゲートサプレス制御部6と、が追加されたものである。
図1に示す電力変換装置1aの主回路およびインバータ部分の制御部の基本的な動作については、図9に示した従来の電力変換装置101と同様であるため説明を省略し、ここでは、追加された電圧絞り制御部5およびゲートサプレス制御部6の動作について説明する。
ここで、電圧絞り制御部5は、マイコンを用いたプログラム制御により所定の制御周期で(例えば、100μs毎に)起動され、インバータ3の出力電流帰還値Ifが装置の過電流保護電流値(例えば、定格電流の200%値)よりも低く設定される基準電流値(例えば、定格電流の120%値)を超えているとき、および、ゲートサプレス制御によって装置がゲートサプレス状態へ切り換えられているときに、出力電圧の低減率(例えば、50%)を指示する電圧絞り制御信号Scを生成し、この電圧絞り制御信号Scを出力電圧制御AVR4へ送信する。出力電圧制御AVR4は、電圧絞り制御信号Scを受信すると、インバータ3へ出力する電圧制御量Vrを出力電圧を低減させるように補正する。すなわち、出力電圧制御AVR4は、受信した電圧絞り制御信号Scに基づいてインバータ3の出力電圧が指示された低減率になるように、PWM制御におけるパルス幅などの電圧制御量Vrを補正してインバータ3の出力電圧を低下させることで過電流を抑制する。
一方、ゲートサプレス制御部6は、インバータ3の出力電流帰還値Ifが装置の過電流保護電流値(例えば、定格電流の200%値)を超えたときにゲートブロック信号Sgを生成し、このゲートブロック信号Sgをインバータ3へ送信して、インバータ3のスイッチング動作を制御する駆動パルス信号をマイコンの制御周期よりも長い所定時間だけブロック(遮断)させる。例えば、インバータ3の出力電流帰還値Ifが、定格電流の200%値に設定された装置の過電流保護電流値を超えると、ゲートサプレス制御部6は、瞬時(例えば、1μs以内)にゲートブロック信号Sgを生成し、生成したゲートブロック信号Sgをインバータ3へ送信する。これによって、インバータ3は、電圧制御量Vrに基づいたスイッチング動作を行わせるための駆動パルス信号を所定時間だけブロック(遮断)するゲートサプレス状態へ切り換わり、負荷13への出力を停止する。
例えば、インバータ3がキャリア周波数10kHzでPWM制御を行っており、マイコンの制御周期が100μsに設定されている場合であれば、インバータ3はゲートサプレス制御部6からゲートブロック信号Sgを受信したときに、PWM制御のための駆動パルス信号を1制御周期以上の所定時間(100μs以上の時間)が経過するまで、強制的にブロック(遮断)して出力電圧および出力電流を共にほぼ0にする。
そののち、ゲートサプレス状態へ切り換えられてから所定時間が経過すると、ゲートサプレス制御部6はゲートサプレス状態を解除し、インバータ3から負荷への電力供給が再開される。ただし、この所定時間が経過する以前に少なくとも1回はマイコンの制御サイクルが実行されるので、ゲートサプレス状態が解除される時点では、すでに電圧絞り制御部5による電圧絞り制御が有効となっている。したがって、インバータ3の出力電圧は、電圧絞り制御によって元の目標値の出力電圧よりも低減された状態に保つように制御される。これにより、変圧器等の励磁を小さい電流によって行えるので、ゲートサプレス状態が解除された時点で再び出力電流が過電流保護電流値を超えて電流振動が発生する現象を回避することができる。
なお、1回の電圧絞り制御だけでは出力電圧の低減が不十分であった場合には再び過電流保護電流値を超える可能性があるが、そのようなときはゲートサプレス状態への切り換え回数に応じて、電圧絞り制御における出力電圧の低減率をさらに小さい値に設定するようにすればよい。
このようなゲートサプレス制御と電圧絞り制御とを併用した電力変換装置1aの動作について、図面を用いてさらに詳しく説明する。図3は、電力変換装置1aが電圧絞り制御とゲートサプレス制御とを併用して行う場合のインバータの出力電圧と出力電流の変化を示す特性図であり、横軸に時間、縦軸に出力電圧、出力電流を示している。
ここで、図3において、インバータ3の出力電圧が時刻t0以降にて目標値に維持されているときに、マイコンの制御サイクルが開始された時刻ts0の直後の時刻t1において電力変換装置1aに負荷である変圧器(TR)が投入(接続)されて大きな突入電流が発生したものと仮定する。
このとき、時刻t1で発生した突入電流によるインバータ3の出力電流は、時刻t1から50μs後の時刻t2においてインバータ3の過電流保護電流値(例えば、定格電流の200%値)に達したものとする。これにより、時刻t2において、ゲートサプレス制御が働き、極めて高速(例えば、1μs以内)にインバータ3の駆動パルス信号が遮断され、インバータ3の出力電圧および出力電流は共にほぼゼロになる。そして、ゲートサプレス状態の継続時間が例えば200μsに設定されているものとすると、時刻t2から200μs後の時刻t3において、ゲートサプレス状態が解除される。
一方、マイコンの制御周期が100μsであるものとすると、装置がゲートサプレス状態へ切り換わった時刻t2から100μs以内のいずれかの時点(時刻ts1)で次のマイコンの制御サイクルが開始される。この制御サイクルにおいて、装置がゲートサプレス状態へ切り換わっているために電圧絞り制御が開始されることとなり、ゲートサプレス状態が解除される時刻t3の時点では、すでに出力電圧を例えば50%に低減させる電圧絞り制御の指示が有効になっている。すなわち、時刻t3においてゲートサプレス状態が解除されてインバータ3からの電力供給が再開されるまでの間に、すでに電圧絞り制御部5から出力電圧制御AVR4へ電圧絞り制御信号Scが送信されているので、時刻t3以降においては出力電圧制御AVR4からインバータ3へ送信される電圧制御量Vrはインバータ3の出力電圧を例えば目標値の50%に低減させるように補正されることになる。これにより、ゲートサプレス制御が解除される時刻t3においては、電圧絞り制御が働いて出力電圧が低くなるようにインバータ3を立ち上げるので、インバータ3の出力電流のピーク値を過電流保護電流値以下に抑制することができる。
なお、図3の例では、時刻ts2から時刻ts4にて開始される次の3つの制御サイクルにおいても、電圧絞り制御にて出力電圧の低減率を50%に保った結果、その次の制御サイクルが開始される時刻ts5までに変圧器の励磁が完了したため出力電流が低下して定常状態に達したのち、時刻ts5において電圧絞り制御を解除して出力電圧を元の目標値に復帰させた場合を示している。
また、図3の例では出力電圧の低減率を50%に保つものとしたが、この低減率を時間の経過にしたがって50%よりも小さい値から100%になるまで順次大きくしていくようにしてもよい。また、電圧絞り制御を継続する時間は、負荷13の特性などに基づいて予め所定の時間を設定するようにしてもよいし、実際の供給電力量を積算し、この供給電力量が所定の電力量に到達した時点で電圧絞り制御を解除するようにしてもよい。
〈第2実施形態〉
図2は、電圧絞り制御とゲートサプレス制御とを併用する本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。この構成は、前記の第1実施形態の電力変換装置1a(図1)における電圧絞り制御を、図5を用いて説明した、電圧絞り制御部5が出力電圧指令部7へ電圧絞り制御信号Scを送信して出力電圧指令値Voの低減を指示する電圧絞り制御、に置き換えたものである。
図2に示す電力変換装置1bの主回路およびインバータ部分の制御部の基本的な動作については、図9に示した従来の電力変換装置101と同様である。また、電圧絞り制御部5およびその信号回路の構成が異なっているが、電力変換装置1bの動作特性は、図3を用いて説明した、第1実施形態に係る電力変換装置1aの動作特性と同様である。
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1aと、第2実施形態に係る電力変換装置1bとは、いずれも、負荷13へ大きな突入電流が流れる場合は、まずゲートサプレス制御によって瞬時にインバータ3からの出力を停止するゲートサプレス状態へ切り換え、装置がゲートサプレス状態にある所定時間の間にマイコンによる電圧絞り制御を有効としたのちにゲートサプレス状態を解除することで、ゲートサプレス状態解除時の出力電圧を低減させて過電流を抑制する。これにより、負荷へ大きな突入電流が流れる場合であっても過電流保護動作による機器停止を回避して電力変換装置を継続して稼動させることができる。
以上、本発明を実施するための形態を具体的に説明したが、本発明の実施の態様はこれらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
本発明は、変圧器や電動機などのように、起動時に大きな突入電流が流れる負荷に電力を供給する電力変換装置などに有効に利用することができる。
1a,1b,10a,10b,10c,101 電力変換装置
2 整流器
3 インバータ
4 出力電圧制御AVR(制御部)
5 電圧絞り制御部(電圧絞り制御手段)
6 ゲートサプレス制御部(ゲートサプレス制御手段)
7 出力電圧指令部
11 商用電源
12 負荷投入用開閉器
13 負荷
Vo 出力電圧指令値
Vf 出力電圧帰還値
If 出力電流帰還値
Sc 電圧絞り制御信号
Sg ゲートブロック信号
Vr 電圧制御量

Claims (10)

  1. 直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、前記インバータを構成するスイッチング素子の動作タイミングを制御して前記インバータに所望電圧の交流電力を出力させる制御部とを備えた電力変換装置であって、
    前記インバータから前記負荷へ出力される出力電流が、所定の過電流保護電流値を超えたときに、前記インバータから前記負荷への交流電力の供給を一時的に停止させるゲートサプレス制御手段と、
    所定の制御周期で起動され、前記ゲートサプレス制御手段による前記交流電力の供給の停止が解除されたときの前記インバータから前記負荷へ出力される出力電圧を、前記出力電流が前記電力変換装置の定格電流よりも小さくなるように、前記所望電圧よりも低減させる電圧絞り制御を行う電圧絞り制御手段と
    を備えることを特徴とする電力変換装置。
  2. 前記ゲートサプレス制御手段は、前記インバータを構成するスイッチング素子の動作を開始させる駆動パルス信号を、前記電圧絞り制御手段が起動される前記制御周期よりも長い時間停止させる
    ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
  3. 前記電圧絞り制御手段は、前記インバータの出力電圧を制御するためのパルス幅またはパルス振幅を、前記所望電圧を得るためのパルス幅またはパルス振幅よりも小さく設定することにより、前記電圧絞り制御を行う
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
  4. 前記電圧絞り制御手段は、前記インバータの出力電圧の目標値となる出力電圧指令値を、前記所望電圧よりも低く設定することにより、前記電圧絞り制御を行う
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
  5. 前記電圧絞り制御手段は、前記負荷へ出力される出力電流が、前記過電流保護電流値よりも低く設定される基準電流値を超えているとき、および、前記ゲートサプレス制御手段が前記負荷への交流電力の供給を停止させているときに、前記電圧絞り制御を開始する
    ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の電力変換装置。
  6. 直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、前記インバータを構成するスイッチング素子の動作タイミングを制御して前記インバータに所望電圧の交流電力を出力させる制御部とを備えた電力変換装置の過電流保護方法であって、
    前記インバータから前記負荷へ出力される出力電流が、所定の過電流保護電流値を超えたときに、前記インバータから前記負荷への交流電力の供給を一時的に停止させるゲートサプレス制御を行う第1のステップと、
    所定の実行周期で実行され、前記ゲートサプレス制御による前記交流電力の供給の停止が解除されたときの前記インバータから前記負荷へ出力される出力電圧を、前記出力電流が前記電力変換装置の定格電流よりも小さくなるように、前記所望電圧よりも低減させる電圧絞り制御を行う第2のステップと
    を含むことを特徴とする電力変換装置の過電流保護方法。
  7. 前記ゲートサプレス制御では、前記インバータを構成するスイッチング素子の動作を開始させる駆動パルス信号を、前記電圧絞り制御を行う前記第2のステップの前記実行周期よりも長い時間停止させる
    ことを特徴とする請求項6に記載の電力変換装置の過電流保護方法。
  8. 前記電圧絞り制御では、前記インバータの出力電圧を制御するためのパルス幅またはパルス振幅を、前記所望電圧を得るためのパルス幅またはパルス振幅よりも小さく設定する
    ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の電力変換装置の過電流保護方法。
  9. 前記電圧絞り制御では、前記インバータの出力電圧の目標値となる出力電圧指令値を、前記所望電圧よりも低く設定する
    ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の電力変換装置の過電保護方法。
  10. 前記負荷へ出力される出力電流が、前記前記過電流保護電流値よりも低く設定される基準電流値を超えているとき、および、前記ゲートサプレス制御によって前記負荷への交流電力の供給が停止しているときに、前記電圧絞り制御を開始する
    ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の電力変換装置の過電流保護方法。
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