JP2012139652A - ワイヤソースラッジからのグリコール除去方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シリコンスラッジ中の固形分に含まれるグリコールの低濃度化が容易かつ安価に図れ、製鋼用の成分調整用添加剤原料として再利用が可能なワイヤソースラッジからのグリコール除去方法を提供する。
【解決手段】シリコンスラッジを、固形分のグリコール濃度が3重量%以下となる量の純水に分散させて希釈するので、固形分に含まれるグリコールの低濃度化が容易かつ安価に図れる。その後、シリコンスラッジを固液分離し、グリコールが除去された固形分を回収する。これにより、固形分が製鋼用の成分調整用添加剤原料として再利用ができる。
【選択図】図1
【解決手段】シリコンスラッジを、固形分のグリコール濃度が3重量%以下となる量の純水に分散させて希釈するので、固形分に含まれるグリコールの低濃度化が容易かつ安価に図れる。その後、シリコンスラッジを固液分離し、グリコールが除去された固形分を回収する。これにより、固形分が製鋼用の成分調整用添加剤原料として再利用ができる。
【選択図】図1
Description
この発明は、ワイヤソースラッジからのグリコール除去方法、詳しくはワイヤソーを用いたシリコンインゴットのスライス時に発生するシリコンスラッジ中からグリコールを除去するワイヤソースラッジからのグリコール除去方法に関する。
ワイヤソーを用いてシリコンインゴットをスライスする際には、複数本のグルーブローラ間で走行中のワイヤ列に、例えば遊離砥粒およびグリコールを含む水溶性スラリーを供給しながら、シリコンインゴットを押し当てる。これにより、シリコンインゴットから多数のシリコンウェーハが切り出される。
スライス中には、ワイヤソーから使用済みスラリーが排出される。使用済みスラリーは、スラリー回収タンクにいったん貯留後、スラリーポンプによりワイヤ列の上に循環供給される。
スライス後の使用済みスラリーはスラリー回収タンクから回収され、遊離砥粒を遠心分離し、得られたシリコン(Si)粉、グリコール、遠心分離不能な遊離砥粒を含むシリコンスラッジに対して洗浄、乾燥などの後処理が順次施される。こうして回収されたシリコン粉、遠心分離不能な遊離砥粒の微粒子を含む固形分は、例えば製鋼用の成分調整用添加剤原料として再利用できる。
スライス中には、ワイヤソーから使用済みスラリーが排出される。使用済みスラリーは、スラリー回収タンクにいったん貯留後、スラリーポンプによりワイヤ列の上に循環供給される。
スライス後の使用済みスラリーはスラリー回収タンクから回収され、遊離砥粒を遠心分離し、得られたシリコン(Si)粉、グリコール、遠心分離不能な遊離砥粒を含むシリコンスラッジに対して洗浄、乾燥などの後処理が順次施される。こうして回収されたシリコン粉、遠心分離不能な遊離砥粒の微粒子を含む固形分は、例えば製鋼用の成分調整用添加剤原料として再利用できる。
しかしながら、水溶性スラリーを使用してシリコンインゴットをスライスした場合、シリコンスラッジ中には、有機化合物のグリコールが多量に含まれていた。そのため、これをそのまま炉内に投入すれば、一般的に0.3〜2.0重量%とされる炭素鋼の炭素含有量が過剰となり、不良品が発生するおそれがあった。
そこで、これを解消する従来技術として、例えば特許文献1に開示されたグリコール除去方法が知られている。特許文献1の方法は、シリコンスラッジを炉内に投入し、あらかじめその液分を蒸発させてから固形分を1050℃〜1450℃の温度で焼成し、このときの焼成熱でグリコールを熱分解するものである。
そこで、これを解消する従来技術として、例えば特許文献1に開示されたグリコール除去方法が知られている。特許文献1の方法は、シリコンスラッジを炉内に投入し、あらかじめその液分を蒸発させてから固形分を1050℃〜1450℃の温度で焼成し、このときの焼成熱でグリコールを熱分解するものである。
しかしながら、特許文献1に開示されたシリコンスラッジの焼成時にグリコールを焼失させる方法では、グリコールの熱分解に伴い二酸化炭素と水とが生成する。このうち、炭素酸化物である二酸化炭素を完全にガス化して除去することは、1400℃を超える焼成熱を加えても困難であった。その結果、シリコンスラッジの固形分には、炭酸が表面に付着するなどして炭素の含有量が増加し、これが固形分を炭素鋼の珪素濃度の調整材料として再利用したとき、製鋼後の炭素鋼の炭素含有量が規定量を超過する要因の1つとなっていた。
そこで、発明者は鋭意研究の結果、ワイヤソーから排出されたグリコールを含むシリコンスラッジを多量の純水に分散させて希釈し、得られた溶媒を固液分離すれば、容易かつ安価に、シリコンスラッジ中の固形分のグリコール濃度が低下するとともに、固形分からのグリコールの分離も図れることを知見し、この発明を完成させた。
この発明は、シリコンスラッジの固形分に含まれるグリコールの低濃度化を容易かつ安価に図ることができ、これにより、その固形分が添加された出鋼後の炭素鋼において、グリコールによる炭素含有量の増加を抑制することができるワイヤソースラッジからのグリコール除去方法を提供することを目的としている。
請求項1に記載の発明は、シリコンインゴットのスライスを行うワイヤソーから排出されたグリコールを含むシリコンスラッジを、該シリコンスラッジ中の固形分のグリコール濃度が3重量%以下となる量の純水に分散させて希釈することで溶媒とし、その後、該溶媒を減圧状態で固液分離することで、前記シリコンスラッジの固形分を回収するワイヤソースラッジからのグリコール除去方法である。
請求項2に記載の発明は、前記ワイヤソーから排出された前記シリコンスラッジのグリコール濃度を35〜40重量%とし、前記シリコンスラッジの純水による希釈倍率を15〜25倍とした請求項1に記載のワイヤソースラッジからのグリコール除去方法である。
請求項3に記載の発明は、前記純水への前記シリコンスラッジの分散は、クロスフローろ過器の内部空間に収納された平板形状のろ過材の表面と平行に前記シリコンスラッジを含む純水が供給される際に発生する撹拌作用によって行われる請求項1または請求項2に記載のワイヤソースラッジからのグリコール除去方法である。
請求項1に記載の発明によれば、ワイヤソーから排出されたグリコールを含むシリコンスラッジを、その固形分のグリコール濃度が3重量%以下となる量の純水に分散して希釈することで溶媒とする。これにより、シリコンスラッジ中の固形分に含まれるグリコールの低濃度化を容易かつ安価に図ることができる。その後、溶媒中からシリコンスラッジを減圧状態で固液分離し、グリコールが除去された固形分(シリコン粉、遊離砥粒の微粒子など)を回収する。
回収後の固形分に含まれるグリコールは、その濃度が3重量%以下の微量である。そのため、固形分を、例えば製鋼用の成分調整用添加剤原料として、再利用しても、グリコールに起因した炭素鋼の炭素含有量の増加はほとんど生じない。
回収後の固形分に含まれるグリコールは、その濃度が3重量%以下の微量である。そのため、固形分を、例えば製鋼用の成分調整用添加剤原料として、再利用しても、グリコールに起因した炭素鋼の炭素含有量の増加はほとんど生じない。
請求項2に記載の発明によれば、ワイヤソーから排出されたシリコンスラッジのグリコール濃度を35〜40重量%とし、シリコンスラッジの純水による希釈倍率を15〜25倍とした場合、純水に分散されたシリコンスラッジのグリコール濃度を1.4〜2.7重量%とすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、純水へのシリコンスラッジの分散時には、シリコンスラッジが含まれた純水をクロスフローろ過器に循環供給する。このとき、クロスフローろ過器の内部空間では、ろ過材の表面と平行に流れるシリコンスラッジが含まれた純水が、ろ過材に形成された多数の微細孔を篩目としてろ過(固液分離)される。その際、シリコンスラッジが含まれた純水は、各微細孔の表面側(流入側)の周壁面に衝突した際に発生するせん断力により撹拌される。このクロスフローろ過器へのシリコンスラッジが含まれた純水の循環供給を所定時間継続することで、純水へのシリコンスラッジの分散が行われる。
これにより、グリコール濃度が高いシリコンスラッジを含む純水であっても、例えば撹拌羽根を回転させる撹拌方式のものなどに比べて短時間でシリコンスラッジを純水中に分散させることができる。
これにより、グリコール濃度が高いシリコンスラッジを含む純水であっても、例えば撹拌羽根を回転させる撹拌方式のものなどに比べて短時間でシリコンスラッジを純水中に分散させることができる。
この発明のワイヤソースラッジからのグリコール除去方法は、シリコンインゴットのスライスを行うワイヤソーから排出されたグリコールを含むシリコンスラッジを、その固形分のグリコール濃度が3重量%以下となる量の純水に分散させて希釈することで溶媒とし、その後、この溶媒を固液分離することで、シリコンスラッジの固形分を回収するものである。
この発明によれば、ワイヤソーから排出されたグリコールを含むシリコンスラッジを、その固形分のグリコール濃度が3重量%以下となる量の純水に添加して撹拌し、シリコンスラッジを純水中に分散させて溶媒とする。これにより、シリコンスラッジの固形分のグリコール濃度が上記濃度まで希釈される。その結果、シリコンスラッジ中の固形分に含まれるグリコールの低濃度化を容易かつ安価に図ることができる。その後、溶媒からシリコンスラッジを固液分離し、グリコールが除去された固形分(シリコン粉、遊離砥粒の微粒子など)を回収する。
また、回収された固形分は、そのグリコール濃度が3重量%以下と微量であるため、この固形分を、製鋼用の成分調整用添加剤原料として、再利用しても、グリコールに起因した炭素鋼の炭素含有量の増加はほとんど生じない。
また、回収された固形分は、そのグリコール濃度が3重量%以下と微量であるため、この固形分を、製鋼用の成分調整用添加剤原料として、再利用しても、グリコールに起因した炭素鋼の炭素含有量の増加はほとんど生じない。
ワイヤソーは、例えば、ワイヤ列の上部にインゴット下面が当接するものでも、ワイヤ列の下部にインゴットの上面が押し当てられるものでもよい。グルーブローラの使用本数は、例えば2本、3本または4本である。
ワイヤの素材としては、例えばピアノ線などの鋼線を採用することができる。ワイヤの直径は100〜150μmである。
シリコンインゴットとしては、例えば単結晶シリコン、多結晶シリコンなどを採用することができる。
ワイヤの素材としては、例えばピアノ線などの鋼線を採用することができる。ワイヤの直径は100〜150μmである。
シリコンインゴットとしては、例えば単結晶シリコン、多結晶シリコンなどを採用することができる。
水溶性スラリーとしては、水分とグリコールとを含む液分に、遊離砥粒などの固形分を混ぜ合わせたものを採用することができる。
グリコールは、水溶性スラリーの液分の主剤を構成し、分散剤が添加された水溶性スラリーを適切な粘度に調整するものである。
グリコールは、水溶性スラリーの液分の主剤を構成し、分散剤が添加された水溶性スラリーを適切な粘度に調整するものである。
遊離砥粒としては、SiC砥粒を採用することができる。遊離砥粒の平均粒径は10〜20μmである。
「ワイヤソースラッジ」とは、ワイヤソーによりシリコンインゴットを切断した際に発生した使用済みスラリーに含まれるシリコンスラッジを意味する。使用済みスラリー中には、スラリー成分の他に、遊離砥粒、シリコンインゴットのスライス時に発生したシリコン粉、ワイヤの切削屑などが含まれる。
「ワイヤソースラッジ」とは、ワイヤソーによりシリコンインゴットを切断した際に発生した使用済みスラリーに含まれるシリコンスラッジを意味する。使用済みスラリー中には、スラリー成分の他に、遊離砥粒、シリコンインゴットのスライス時に発生したシリコン粉、ワイヤの切削屑などが含まれる。
シリコンスラッジとは、使用済みスラリー中から遊離砥粒を遠心分離した際に残るシリコン粉と、遊離砥粒の微粒子と、不純物と、水分とグリコールが泥状に混ざり合ったものである。
シリコンスラッジの固形分はシリコン粉と砥粒であるSiCと不純物とである。固形分(シリコン粉を含む)の平均粒径は1〜10μmである。
不純物とは、例えばCu、Fe、Ni、C、Cr、Znなどである。
シリコンスラッジの固形分はシリコン粉と砥粒であるSiCと不純物とである。固形分(シリコン粉を含む)の平均粒径は1〜10μmである。
不純物とは、例えばCu、Fe、Ni、C、Cr、Znなどである。
純水希釈後のシリコンスラッジに含まれる固形分のグリコール濃度が3重量%を超えれば、グリコールによる炭素成分が多くなり、成分調整用添加剤としての炭素濃度が多くなるため再利用できない。グリコール濃度は、より低減された方が好ましい。しかしながら、純水希釈量が多くなると純水コストが高くなるという不具合が生じる。
特に、この発明では、シリコンスラッジ中の固形分のグリコール濃度を35〜40重量%とした場合、シリコンスラッジの純水による希釈倍率を10〜25倍とした方が望ましい。
シリコンスラッジの純水による希釈倍率が15倍(固形分のグリコール濃度1重量%)未満では、シリコンスラッジ固形分に含まれるグリコールの濃度がターゲットである3重量%に近いため、攪拌条件や純水供給条件を細かく設定し、管理しなければならず、僅かな条件設定のばらつきによってターゲットを満足しない。また、25倍(固形分のグリコール濃度0.41量%)を超えれば、純水使用量が多くなり、純水コストが高くなる。シリコンスラッジの純水による好ましい希釈倍率は15〜25倍である。この範囲であれば、攪拌条件や純水供給条件のばらつきを許容できる。もちろん、シリコンスラッジの純水への希釈倍率は、純水希釈後のシリコンスラッジ中の固形分のグリコール濃度が3重量%以下となれば任意である。
特に、この発明では、シリコンスラッジ中の固形分のグリコール濃度を35〜40重量%とした場合、シリコンスラッジの純水による希釈倍率を10〜25倍とした方が望ましい。
シリコンスラッジの純水による希釈倍率が15倍(固形分のグリコール濃度1重量%)未満では、シリコンスラッジ固形分に含まれるグリコールの濃度がターゲットである3重量%に近いため、攪拌条件や純水供給条件を細かく設定し、管理しなければならず、僅かな条件設定のばらつきによってターゲットを満足しない。また、25倍(固形分のグリコール濃度0.41量%)を超えれば、純水使用量が多くなり、純水コストが高くなる。シリコンスラッジの純水による好ましい希釈倍率は15〜25倍である。この範囲であれば、攪拌条件や純水供給条件のばらつきを許容できる。もちろん、シリコンスラッジの純水への希釈倍率は、純水希釈後のシリコンスラッジ中の固形分のグリコール濃度が3重量%以下となれば任意である。
また、この発明では、純水へのシリコンスラッジの分散として、クロスフローろ過器の内部空間に収納された平板形状のろ過材の表面と平行にシリコンスラッジを含む純水が供給される際に発生する撹拌作用によって行われる方法(以下、クロスフロー式撹拌方法)を採用した方が望ましい。
すなわち、純水へのシリコンスラッジの分散時には、シリコンスラッジが含まれた純水をクロスフローろ過器に供給する。このとき、クロスフローろ過器の内部空間では、ろ過材の表面と平行に流れるシリコンスラッジを含んだ純水が、ろ過材に存在する多数の微細孔を篩目としてろ過(固液分離)される。その際、シリコンスラッジを含む純水は、各微細孔の表面側(流入側)の周壁面に衝突した際に発生するせん断力により撹拌される。これにより、純水へのシリコンスラッジの分散が行われる。その結果、例えばグリコール濃度が高いシリコンスラッジを含んだ純水であっても、従来の撹拌羽根による撹拌などに比べて、純水中にシリコンスラッジを短時間で分散させることができる。
すなわち、純水へのシリコンスラッジの分散時には、シリコンスラッジが含まれた純水をクロスフローろ過器に供給する。このとき、クロスフローろ過器の内部空間では、ろ過材の表面と平行に流れるシリコンスラッジを含んだ純水が、ろ過材に存在する多数の微細孔を篩目としてろ過(固液分離)される。その際、シリコンスラッジを含む純水は、各微細孔の表面側(流入側)の周壁面に衝突した際に発生するせん断力により撹拌される。これにより、純水へのシリコンスラッジの分散が行われる。その結果、例えばグリコール濃度が高いシリコンスラッジを含んだ純水であっても、従来の撹拌羽根による撹拌などに比べて、純水中にシリコンスラッジを短時間で分散させることができる。
シリコンスラッジの純水へのその他の分散(撹拌)方法としては、例えばバブリング法、純水などが投入された密閉容器を振るシェイク法などを採用することができる。
シリコンスラッジの純水による希釈倍率が5倍を超えない場合は、撹拌羽根による撹拌方法、シェイク法、バブリング法などによるシリコンスラッジの純水への分散を採用した方がよい。また、シリコンスラッジの純水による希釈倍率が10倍以上の場合には、クロスフロー式撹拌方法を採用した方が、シリコンスラッジを含む純水を、多数の微細孔が形成されたろ過材の表面と平行にポンプ圧送することで生じるシリコンスラッジのせん断による撹拌が容易に行われるために好ましい。
シリコンスラッジの純水による希釈倍率が5倍を超えない場合は、撹拌羽根による撹拌方法、シェイク法、バブリング法などによるシリコンスラッジの純水への分散を採用した方がよい。また、シリコンスラッジの純水による希釈倍率が10倍以上の場合には、クロスフロー式撹拌方法を採用した方が、シリコンスラッジを含む純水を、多数の微細孔が形成されたろ過材の表面と平行にポンプ圧送することで生じるシリコンスラッジのせん断による撹拌が容易に行われるために好ましい。
シリコンスラッジの固液分離方法としては、全量ろ過を採用することができる。その際、濾過効率を高めるため、減圧状態でのろ過とする。減圧の程度としては、例えば0.01〜0.02MPaである。
全量ろ過方法で用いられるろ過材としては、例えばろ紙、メンブレンフィルター、セラミックス膜、スポンジなどを採用することができる。
ろ過材の微細孔の孔径は0.2〜30μmである。0.2μm未満ではろ過時間が長くなってしまう。また、30μmを超えれば、スラッジがろ過材を通過してしまう。微細孔の好ましい孔径は、0.2〜1μmである。
全量ろ過方法で用いられるろ過材としては、例えばろ紙、メンブレンフィルター、セラミックス膜、スポンジなどを採用することができる。
ろ過材の微細孔の孔径は0.2〜30μmである。0.2μm未満ではろ過時間が長くなってしまう。また、30μmを超えれば、スラッジがろ過材を通過してしまう。微細孔の好ましい孔径は、0.2〜1μmである。
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。ここでは、多結晶シリコン系太陽電池用のシリコンインゴットのワイヤソーによるスライス時に発生したワイヤソースラッジからのグリコール除去方法を例とする。
まず、図1〜図6を参照して、この発明の実施例1に係るワイヤソースラッジからのグリコール除去方法を説明する。
図1のフローシートに示すように、この発明の実施例1に係るワイヤソースラッジからのグリコール除去方法は、ワイヤソーから排出されたシリコンスラッジを回収するスラッジ回収工程と、回収されたシリコンスラッジを純水に分散させて希釈することで溶媒を得るスラッジ希釈工程と、溶媒中のシリコンスラッジを固液分離してシリコンスラッジの固形分を回収する固液分離工程と、固液分離されたシリコンスラッジ中の固形分を乾燥する固形分乾燥工程とを備えている。
図1のフローシートに示すように、この発明の実施例1に係るワイヤソースラッジからのグリコール除去方法は、ワイヤソーから排出されたシリコンスラッジを回収するスラッジ回収工程と、回収されたシリコンスラッジを純水に分散させて希釈することで溶媒を得るスラッジ希釈工程と、溶媒中のシリコンスラッジを固液分離してシリコンスラッジの固形分を回収する固液分離工程と、固液分離されたシリコンスラッジ中の固形分を乾燥する固形分乾燥工程とを備えている。
まず、図2を参照して、スラッジ回収工程を説明する。
ワイヤソー100によるシリコンインゴットIのスライスは、3本のグルーブローラ112A〜112C間で走行中のワイヤ列113に、遊離砥粒(SiC粉)を含む水溶性スラリーSを供給しながら、シリコンインゴットIを押し当てる。その際、ワイヤ111とシリコンインゴットIのワイヤ溝の奥部との間で挟まれた遊離砥粒の研削作用により、シリコンインゴットIから多数枚のシリコンウェーハがスライスされる。
使用される水溶性スラリーSは、一般的に50重量%の固形分と50重量%の液分とからなる。このうち、固形分を構成する成分としては前記遊離砥粒の他、微量な炭素、Feが挙げられる。また、液分を構成する成分としては、ベース液のグリコールおよび純水の他、微量な分散剤、増粘剤、及び界面活性剤などが挙げられる。このうち、グリコールの含有量は、一般的に水溶性スラリー全体で40〜50重量%である。
ワイヤソー100によるシリコンインゴットIのスライスは、3本のグルーブローラ112A〜112C間で走行中のワイヤ列113に、遊離砥粒(SiC粉)を含む水溶性スラリーSを供給しながら、シリコンインゴットIを押し当てる。その際、ワイヤ111とシリコンインゴットIのワイヤ溝の奥部との間で挟まれた遊離砥粒の研削作用により、シリコンインゴットIから多数枚のシリコンウェーハがスライスされる。
使用される水溶性スラリーSは、一般的に50重量%の固形分と50重量%の液分とからなる。このうち、固形分を構成する成分としては前記遊離砥粒の他、微量な炭素、Feが挙げられる。また、液分を構成する成分としては、ベース液のグリコールおよび純水の他、微量な分散剤、増粘剤、及び界面活性剤などが挙げられる。このうち、グリコールの含有量は、一般的に水溶性スラリー全体で40〜50重量%である。
スライス中には、ワイヤソー100からシリコン粉、遊離砥粒および研削液のグリコールなどを含む使用済みスラリーが排出される。使用済みスラリーは、スラリー回収タンクにいったん貯留後、スラリーポンプによりワイヤ列113に循環供給される。スライス後の使用済みスラリーは、スラリー回収タンクから回収される。その後、再使用される遊離砥粒を遠心分離することで、残渣としてのシリコンスラッジaが得られる(図3a)。シリコンスラッジaの主要成分としては、固形分cとしてのシリコン粉、遊離砥粒の微粒子、ワイヤに含まれたCu、Zn、Feと、液分dとしてのグリコールおよび水とが挙げられる。シリコンスラッジa中のグリコールの含有量は、シリコンスラッジ全体の35〜39重量%である。なお、図2中、114はスラリーノズル、115はインゴットIの固定台である。
次に、スラッジ希釈工程では、透明で筒形状のシェイク容器30の容器本体31に、所定量のシリコンスラッジaと、これを25倍に希釈するために必要な量の純水bとを投入する(図3a)。その後、シェイク容器30の蓋32を閉じ、容器本体31の底部にシリコンスラッジaの凝集体が見えなくなるまでシェイク容器30を約1分間振って、容器内のシリコンスラッジaと純水bとを撹拌する(図3b)。これにより、純水b中にシリコンスラッジaが分散され、シリコンスラッジaが25倍に希釈された溶媒となる。その結果、当初はシリコンスラッジa中に35〜39重量%含まれていたグリコールは、後述する濾過容器(網状フィルタ)14による全量ろ過後の固形分cのグリコール濃度がLC−MS(Liquid Chromatography/Mass Spectrometry;液体クロマトグラフ質量分析装置)とLC−電気化学的分析装置とを用いて測定した際に0.4重量%となるまで低下する。固形分中のグリコールの測定時のサンプルとしては、固形分中のグリコールを純水で溶解した後、ろ過抽出した液を用いた。
続いて、固液分離工程では、図4および図5に示すように、シェイク容器30から取り出されたシリコンスラッジaを含む純水bを固液分離装置に投入し、シリコンスラッジaの固形分cを回収する。まず、固液分離装置10を具体的に説明する。
図4および図5に示すように、固液分離装置10は減圧全量ろ過方式のもので、負圧ポンプPが設けられた排気管11が連通され、上端面が開口された減圧槽12を有している。減圧槽12の上端部には、この開口を塞ぐように、内フランジ状のストッパを介して、格子状の支持トレイ13が載置されている。支持トレイ13には、多数の微細孔(孔径0.2〜30μm)14aが形成された底板を有するテフロン(登録商標)製の濾過容器(網状フィルタ)14が取り出し可能に収納されている。
図4および図5に示すように、固液分離装置10は減圧全量ろ過方式のもので、負圧ポンプPが設けられた排気管11が連通され、上端面が開口された減圧槽12を有している。減圧槽12の上端部には、この開口を塞ぐように、内フランジ状のストッパを介して、格子状の支持トレイ13が載置されている。支持トレイ13には、多数の微細孔(孔径0.2〜30μm)14aが形成された底板を有するテフロン(登録商標)製の濾過容器(網状フィルタ)14が取り出し可能に収納されている。
固液分離時には、まず、シリコンスラッジaが分散された純水bを濾過容器14に投入する(図4)。次に、負圧ポンプPを作動して減圧槽12内を0.015MPaに負圧化する(図5)。これにより、濾過容器14の底板の微細孔14aおよび支持トレイ13の底板の孔を通し、純水bおよびシリコンスラッジaの液分dが下方へ吸引されてシリコンスラッジaの固形分cが底板の上に残る。
その後、濾過容器14を支持トレイ13から取り出し、これを反転させることで、固液分離後のシリコンスラッジaの固形分(含水率20%、グリコール濃度0.4重量%)cを濾過容器14から排出して回収する。
続く、固形分乾燥工程では、固液分離後のシリコンスラッジaの固形分cを数日間、自然乾燥させる。
その後、濾過容器14を支持トレイ13から取り出し、これを反転させることで、固液分離後のシリコンスラッジaの固形分(含水率20%、グリコール濃度0.4重量%)cを濾過容器14から排出して回収する。
続く、固形分乾燥工程では、固液分離後のシリコンスラッジaの固形分cを数日間、自然乾燥させる。
このように、ワイヤソー100から排出されたグリコール35〜39重量%を含むシリコンスラッジaを、固形分のグリコール濃度が3重量%以下となる希釈25倍の純水bにより希釈したので、シリコンスラッジaに含まれるグリコールの低濃度化を容易かつ安価に図ることができる。
また、回収後の固形分cに含まれるグリコールは、その濃度が3重量%以下となる微量である。そのため、固形分cを、製鋼用の成分調整用添加剤原料として再利用が可能となる。
また、回収後の固形分cに含まれるグリコールは、その濃度が3重量%以下となる微量である。そのため、固形分cを、製鋼用の成分調整用添加剤原料として再利用が可能となる。
さらに、ワイヤソーから排出されたシリコンスラッジaのグリコール濃度を35〜39重量%とし、シリコンスラッジaの純水bによる希釈倍率を25倍としたので、純水に分散されたシリコンスラッジaのグリコール濃度を0.4重量%とすることができる。これにより、製鋼用の成分調整用添加剤原料として再利用ができる。
また、このグリコール35〜39重量%を含むシリコンスラッジaを、その200倍の純水bにより希釈してもよい。これにより、固形分のグリコール濃度がLC−MS測定とLC−電気化学的分析装置とを用いて測定した結果、で0.07重量%となる。
また、このグリコール35〜39重量%を含むシリコンスラッジaを、その200倍の純水bにより希釈してもよい。これにより、固形分のグリコール濃度がLC−MS測定とLC−電気化学的分析装置とを用いて測定した結果、で0.07重量%となる。
ここで、図6のグラフを参照して、実施例1に基づき、シリコンスラッジの固形分のグリコール濃度と、純水によるシリコンスラッジの希釈倍率との関係を検査した結果を説明する。希釈前のシリコンスラッジ中の固形分のグリコール濃度を40重量%とした場合、シリコンスラッジの希釈倍率が6倍程度で固形分のグリコール濃度は目標値の3重量%まで低下した。また、希釈倍率が10倍の場合の固形分のグリコール濃度は2重量%以下となり、希釈倍率が25倍での固形分のグリコール濃度は0.41重量%、希釈倍率が200倍でのグリコール濃度は0.07重量%であった。
次に、図7および図8を参照して、この発明の実施例2に係るワイヤソースラッジからのグリコール除去方法を説明する。
図7および図8に示すように、実施例2のワイヤソースラッジからのグリコール除去方法の特徴は、実施例1のシェイク容器30を用いたスラッジ希釈工程を、クロスフロー式ろ過装置20を使用して行った点である。
図7および図8に示すように、実施例2のワイヤソースラッジからのグリコール除去方法の特徴は、実施例1のシェイク容器30を用いたスラッジ希釈工程を、クロスフロー式ろ過装置20を使用して行った点である。
図7に示すように、クロスフロー式ろ過装置20は、クロスフローろ過器を備えたろ過装置と略同一の構成体からなる撹拌(希釈)装置である。具体的には、クロスフロー式ろ過装置20は、シリコンスラッジaを含む純水bである原液eが貯液された原液タンク21と、電磁弁22付きの純水補給管23を介して、原液タンク21に純水bのみを補給する加水タンク24と、原液タンク21の液面の高さ(貯液量)を検知する液面センサ24Aと、原液タンク21の底部から循環ポンプ25により圧送された原液e中のシリコンスラッジaの固形分cをクロスフローろ過するクロスフローろ過器26を備えている。
このうち、原液タンク21、循環ポンプ25、クロスフローろ過器26は、順次、原液eの循環路28の所定位置に離間して配設されている。クロスフローろ過器26の内部空間には、微細孔29aが多数形成され、かつ内部空間を原液eの導入室26aと透過液cの導出室26bとに2分割するろ過材29が配置されている(図7および図8)。導入室26aでは、原液eがろ過材29の表面と平行に流される。
なお、循環路28には、循環ポンプ25とクロスフローろ過器26との間の部分に、流路弁41と、流量計42と、圧力計と43が下流へ向かって順に配設され、かつクロスフローろ過器26と3方弁45との間の部分に、圧力計44が設けられている。さらに、循環路28のうち、原料タンク21と循環ポンプ25との間の部分と、3方弁45との部分は、バイパス路46により連通されている。
なお、循環路28には、循環ポンプ25とクロスフローろ過器26との間の部分に、流路弁41と、流量計42と、圧力計と43が下流へ向かって順に配設され、かつクロスフローろ過器26と3方弁45との間の部分に、圧力計44が設けられている。さらに、循環路28のうち、原料タンク21と循環ポンプ25との間の部分と、3方弁45との部分は、バイパス路46により連通されている。
次に、図7および図8を参照して、クロスフロー式ろ過装置20を用いたシリコンスラッジaの純水bへの分散方法を説明する。
循環ポンプ25を作動させることで、原液タンク21中の原液eがクロスフローろ過器26の導入室26aに圧送される。導入室26aでは、原液eがろ過材29の表面と平行に流され、その際、原液e中の純水bとグリコールを含む液分dとが、多数の微細孔29aを透過して導出室26bへ流入する(図8)。その後、透過したろ過液である純水bと液分dが器外へ排出され、所定の後処理が施される。
循環ポンプ25を作動させることで、原液タンク21中の原液eがクロスフローろ過器26の導入室26aに圧送される。導入室26aでは、原液eがろ過材29の表面と平行に流され、その際、原液e中の純水bとグリコールを含む液分dとが、多数の微細孔29aを透過して導出室26bへ流入する(図8)。その後、透過したろ過液である純水bと液分dが器外へ排出され、所定の後処理が施される。
一方、導入室26aにおいて、ろ過材29の微細孔29aを透過しなかった固形分cは、原液eの流れにしたがって循環路28に排出され、その後、原料タンク21へ戻される(図7)。このとき、原液eの純水bと液分dとの一部が微細孔29aを透過して除去されるため、循環路28に排出される原液eは固形分cが濃縮される。
このように、クロスフロー式撹拌装置20を用いた純水bへのシリコンスラッジaの分散時には、ろ過材29の表面付近で、このろ過材29と平行に流れる原液eが、多数の微細孔29aを篩目としてろ過される。その際、原液eは各微細孔29aの導入室26a側の周壁面に衝突した際に発生するせん断力により撹拌される。その後も、上述した原液eのクロスフローろ過器26への循環供給を所定時間継続することで、純水bにシリコンスラッジaが分散されて溶媒となる。その結果、例えばグリコール濃度が高いシリコンスラッジaを含んだ原液eであっても、従来の撹拌羽根による撹拌などに比べて、純水b中にシリコンスラッジaを短時間で分散させることができる。
例えば、まずシリコンスラッジaの重量に対して5倍希釈分の純水(15リットル)bを用いてクロスフロー式撹拌装置20を用いてろ過しながら、引き続き純水(75リットルを加水(28倍希釈)した場合、固形分cのグリコール濃度はLC−MS測定とLC−電気化学的分析装置とを用いて測定した結果、0.2重量%となった。ただし、5倍希釈時には目標とする3重量%を超えるLC−MS測定とLC−電気化学的分析装置とを用いた測定で13.4重量%となり、上述した炭素鋼の珪素濃度の調整用として再利用可能な濃度レベルには達することができなかった。
実施例2では、このようなクロスフロー式ろ過装置20を使用してシリコンスラッジaを純水b中に分散するので、分散した溶媒を排出することでグリコールを除去できる。
実施例2では、このようなクロスフロー式ろ過装置20を使用してシリコンスラッジaを純水b中に分散するので、分散した溶媒を排出することでグリコールを除去できる。
この発明は、例えば、シリコンスラッジ中のグリコール除去を行い、ワイヤーソーで排出されるシリコンスラッジを再利用する方法として有用である。
100 ワイヤソー、
26 クロスフローろ過器、
29 ろ過材
I シリコンインゴット、
a シリコンスラッジ、
b 純水、
c 固形分。
26 クロスフローろ過器、
29 ろ過材
I シリコンインゴット、
a シリコンスラッジ、
b 純水、
c 固形分。
Claims (3)
- シリコンインゴットのスライスを行うワイヤソーから排出されたグリコールを含むシリコンスラッジを、該シリコンスラッジ中の固形分のグリコール濃度が3重量%以下となる量の純水に分散させて希釈することで溶媒とし、
その後、該溶媒を減圧状態で固液分離することで、前記シリコンスラッジの固形分を回収するワイヤソースラッジからのグリコール除去方法。 - 前記ワイヤソーから排出された前記シリコンスラッジのグリコール濃度を35〜40重量%とし、
前記シリコンスラッジの純水による希釈倍率を15〜25倍とした請求項1に記載のワイヤソースラッジからのグリコール除去方法。 - 前記純水への前記シリコンスラッジの分散は、
クロスフローろ過器の内部空間に収納された平板形状のろ過材の表面と平行に前記シリコンスラッジを含む純水が供給される際に発生する撹拌作用によって行われる請求項1または請求項2に記載のワイヤソースラッジからのグリコール除去方法。
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2011
- 2011-01-04 JP JP2011000201A patent/JP2012139652A/ja active Pending
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