JP2012138211A - 二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】正電極30と負電極40との間に帯状のセパレータ50を挟み、正電極30と、負電極40と、セパレータ50とを積層して捲回してなる電極捲回体20と、電極捲回体20を内部に収容するケース部材70とを有する電池10において、電極捲回体20では、セパレータ50が、正極塗工部32の最外周側に位置する正極塗工エンド部32E、及び負極塗工部42の外周側に位置する負極塗工エンド部42Eを越えて捲回されていること、セパレータ50の最外周側に位置するセパレータ最外周部50Eと、ケース部材70の第1,第3側部71,73との間隙s1,s2には、アルミニウム製の間隙充填材60が設けられている。
【選択図】 図1
Description
特許文献1は、組電池を構成する単電池110毎に、上記隙間を間隙充填材160で埋めることにより、単電池110の配列方向の寸法を均一にして、拘束荷重による単電池110の変形を防止できている。
二次電池は、通常の充放電時のほか、過充電時等の異常時にも、ケース内の発電要素(捲回電極体及び電解質)で生じる化学反応熱によって発熱する。二次電池では、発熱温度が高くなると電池性能に悪影響を及ぼすことから、発熱した熱を効率良く放熱することが重要となる。
樹脂は、熱伝導率が金属と比べて低く、熱を伝え難い。特許文献1は、間隙充填材160を樹脂で形成しているため、熱が、捲回電極体120から間隙充填材160を介してケース170に伝わり難く、ケース170から外部への放熱を効率良くできない問題がある。
(1)正極合材が帯状の正電極板に塗工された正極塗工部を含む正電極、及び負極合材が帯状の負電極板に塗工された負極塗工部を含む負電極を備え、正電極と負電極との間に帯状のセパレータを挟み、正電極と、負電極と、セパレータとを積層して捲回してなる電極捲回体と、電極捲回体を内部に収容するケース部材とを有する二次電池において、電極捲回体では、セパレータが、正極塗工部の最外周側に位置する正極塗工エンド部、及び負極塗工部の外周側に位置する負極塗工エンド部を越えて捲回されていること、セパレータの最外周側に位置するセパレータ最外周部と、ケース部材との間隙には、金属製の間隙充填材が設けられていることを特徴とする。
なお、正極合材には、正極活物質が含まれている。また、負極合材には、負極活物質が含まれている。
(2)(1)に記載する二次電池において、正電極は、正電極板のうち、正極合材が塗工されていない正極未塗工部を含み、負電極は、負電極板のうち、負極合材が塗工されていない負極未塗工部を含み、正極未塗工部では、正電極板が、電極捲回体の径方向内側に圧縮されて互いに重なり合っていること、負極未塗工部では、負電極板が、径方向内側に圧縮されて互いに重なり合っていること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する二次電池において、セパレータ最外周部の表面に接触させる間隙充填材の面積は、セパレータ最外周部の表面積以下であることを特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する二次電池において、間隙充填材は、板状または箔状に形成されていることを特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する二次電池において、間隙充填材は、アルミニウム製であることを特徴とする。
本発明の二次電池では、
(1)正極合材が帯状の正電極板に塗工された正極塗工部を含む正電極、及び負極合材が帯状の負電極板に塗工された負極塗工部を含む負電極を備え、正電極と負電極との間に帯状のセパレータを挟み、正電極と、負電極と、セパレータとを積層して捲回してなる電極捲回体と、電極捲回体を内部に収容するケース部材とを有する二次電池において、電極捲回体では、セパレータが、正極塗工部の最外周側に位置する正極塗工エンド部、及び負極塗工部の外周側に位置する負極塗工エンド部を越えて捲回されていること、セパレータの最外周側に位置するセパレータ最外周部と、ケース部材との間隙には、金属製の間隙充填材が設けられているので、充放電時のほか、過充電時等の異常時に、ケース部材内の発電要素(捲回電極体及び電解質)で生じる化学反応により、発電要素が発熱したときに、熱が、捲回電極体のセパレータ外周部から間隙充填材に、間隙充填材を樹脂で形成した従来の電池に比べて伝わり易く、間隙充填材を介してケース部材外部への放熱が効率良くできる。
その結果、ケース部材に伝わった熱として、ケース部材の表面温度をケース部材外部から計測した場合には、本発明の二次電池に係るケース部材の温度は、間隙充填材を樹脂で形成した従来の電池に係るケース部材の温度に比べ、例えば70%以下の低い温度に抑制することができる。
すなわち、発電要素の発熱時に、間隙充填材から伝熱したケース部材が外気等によって効率良く冷却され、発電要素の温度上昇が抑制できるようになるため、充放電時に、発電要素において化学反応が活性化され、信頼性の高い電池性能が得られる。
従って、本発明の二次電池では、発熱時の放熱性が高く、信頼性の高い電池性能を備えた二次電池を提供することができる、という優れた効果を奏する。
また、正電極の正極未塗工部は、正極電位を有しているものの、電極捲回体の径方向内側に正電極板を圧縮させて互いに重なり合わせているため、電極捲回体がケース部材に収容された状態でも、セパレータが正極未塗工部まで配置されている如何を問わず、正電極板はケース部材とは接触せず、ケース部材に電位は有しない。
また、負電極の負極未塗工部は、負極電位を有しているものの、正電極の正極未塗工部と同様、電極捲回体の径方向内側に負電極板を圧縮させて互いに重なり合わせているため、電極捲回体がケース部材に収容された状態でも、セパレータが負極未塗工部まで配置されている如何を問わず、負電極板はケース部材とは接触せず、ケース部材に電位は有しない。
このような二次電池を単電池として、複数一列状に接続して拘束された組電池を構成し、例えば、ハイブリッドカーや電気自動車等の電源に、この組電池を搭載することがある。このような組電池には、その性能試験の一つに、釘刺し試験が行われている。
電極捲回体の最外周にセパレータが配置されず、電極捲回体の正電極または負電極と、金属製のケース部材との間隙に、金属製の間隙充填材が直に充填されると、金属は導電性であるため、ケース部材は、正極電位または負極電位となる。
この場合、ケース部材、間隙充填材、電極捲回体の径方向外側から内側に向けた順で層別に分けると、(A−1)ケース部材(正極電位)、(A−2)間隙充填材(正極電位)、(A−3)正電極(正極電位)、(A−4)セパレータ、(A−5)負電極(負極電位)…となる。
組電池の性能を釘刺し試験で評価をするときに、電極捲回体の径方向に沿った方向から釘をケース部材に突き刺すと、(A−1)ケース部材、(A−2)間隙充填材、及び(A−3)正電極の正極電位と、(A−4)セパレータを介して(A−3)正電極と隣接する (A−5)負電極の負極電位との間は、突き刺さった釘(何らかの理由で外部から強い衝撃・応力等を受けた場合に相当)により短絡して導通し、電圧降下が生じる。
Alを含んだ正極電位側では、(A−1)ケース部材、(A−2)間隙充填材、及び(A−3)正電極が積層してこられの厚みが厚くなるため、正極電位側が溶けて負極電位側と完全に溶断されるまでに時間を長く要し、その時間中、正極電位側が(A−5)負電極と導通し続けているため、電圧降下が大きく生じる。
この場合、ケース部材、間隙充填材、電極捲回体の径方向外側から内側に向けた順で層別に分けると、(B−1)ケース部材(負極電位)、(B−2)間隙充填材(負極電位)、(B−3)負電極(負極電位)、(B−4)セパレータ、(B−5)正電極(正極電位)…となる。
組電池の性能を釘刺し試験で評価をするときに、電極捲回体の径方向に沿った方向から釘をケース部材に突き刺すと、 (B−1)ケース部材、(B−2)間隙充填材、及び(B−3)負電極の負極電位と、(B−4)セパレータを介して(B−3)負極と隣接する(B−5)正電極の正極電位との間は、突き刺さった釘により短絡して導通する。その結果、加熱した正電極板及び負電極板のうち、融点の低い電極板が溶融し、溶断によって負極電位側と正極電位側とが遮断されるまでの間、電圧降下が生じる。
Li‐Al合金が生成されると、電池性能が格段に悪化してしまい、電池の寿命特性が低下すると共に、電源として、安定した起電力を発生することができなくなる。
本発明の二次電池に基づいて、組電池を構成し、その組電池に釘刺し試験を行った場合、ケース部材、間隙充填材、電極捲回体の径方向外側から内側に向けた順で層別に分けると、(C−1)ケース部材、(C−2)間隙充填材、(C−3) セパレータ、(C−4)負電極、(C−5) セパレータ、(C−6)正電極…となる。あるいは、(C−4)正電極、(C−5) セパレータ、(C−6)負電極…となる。
(C−1)ケース部材、(C−2)間隙充填材、及び(C−3) セパレータは、電気的に中立であり、突き刺さった釘により、(C−4)負電極と(C−6)正電極とが短絡して導通し、電圧降下が生じる。あるいは、(C−4)正電極と(C−6)負電極とが短絡して導通し、電圧降下が生じる。
本発明の二次電池では、釘刺し試験を行っても、突き刺さった釘により、(C−4)負電極と(C−6)正電極とが短絡して導通し、(C−6)正電極が先に溶断される。あるいは、突き刺さった釘により、(C−4)正電極と(C−6)負電極とが短絡して導通し、(C−4)正電極が先に溶断される。
前述した〔ケース部材が正極電位の場合〕と異なり、溶断する(C−6)正電極(あるいは(C−4)正電極)と、(C−1)ケース部材及び(C−2)間隙充填材とが別々になり、溶断する(C−6)正電極(あるいは(C−4)正電極)の厚みが薄いため、溶断するまでの時間が短く、短絡状態が短くなることから、電圧降下が小さく抑制される。
従って、ケース部材は、正極電位や負極電位を持たず、電気的に中立にすることから、当該二次電池に釘刺し試験を行ったときに、ケース部材に正極電位または負極電位を持った二次電池に比べ、降下する電圧を低く抑えることができる。
すなわち、組電池を構成するとき、複数の単電池において、ケース部材に収容された状態の電極捲回体のセパレータ最外周部の表面と、ケース部材との間隙の大きさが、単電池毎に異なることがある。この場合でも、間隙充填材は、箔状であることから、例えば、t1=0.1(mm)、t2=0.2(mm)、t3=0.3(mm)等のように、間隙充填材の厚みにバリエーションを持たせることが容易にできる。
よって、ケース部材との間隙の大きさに対応した厚みの間隙充填材を選択し、その隙間に充填すれば、電極捲回体の径方向に沿う厚み方向に対する大きさを、各単電池で均一に揃えることが簡単にできる。
本実施形態に係る二次電池は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素二次蓄電池等の電池であり、ハイブリットカーや電気自動車等の駆動電源として用いられる。
図12に、実施形態に係る電池で構成したバッテリパックを搭載した車両を示す。図13は、図12に示すバッテリパックの説明図である。
車体2には、フロントモータ4及びリヤモータ5の駆動用電源として、バッテリパック6が搭載され、フロントモータ4及びリヤモータは、ケーブル7によりバッテリパック6と接続されている。このバッテリパック6は、図13に示すように、複数の電池10をバスバ13により直列接続して一列状に拘束された組電池10Cを複数列置した構成となっている。
図1は、実施形態に係る電池を示す斜視図である。図2は、図1中、A−A矢視断面図である。図3は、図1中、B−B矢視断面図である。図4は、図3中、D部拡大図である。図5は、図1中、C−C矢視断面図である。図6は、実施形態に係る電池の電極捲回体を示す斜視図である。図7は、図6に示す電極捲回体の正電極、負電極の説明図である。
本実施形態では、電池10(二次電池)は、図1乃至図5に示すように、略直方体形状の角型単電池である。電池10は、図示しない電解液、電極捲回体20、この電解液と電極捲回体20とを内部に収容するケース部材70、封口部材80から構成されている。
ケース部材70は、例えば、アルミニウム等の金属からなり、図1に示すように、外形が略直方体形状で、挿入側(図1中、上側)が開口し、厚みが0.5(mm)の素材を深絞りすることにより有底箱状に一体成形されている。
ケース部材70は、略長方形板状の底部と、この底部の四辺から延びる4つの側部、すなわち第1側部71、第2側部72、第3側部73及び第4側部74を有している。
第1側部71と第3側部73とは、ケース部材70の長辺と高さを含む側部であり、何れも同形で互いに平行に配置されている。第2側部72と第4側部74とは、ケース部材70の短辺と高さを含む側部であり、何れも同形で互いに平行に配置されている。
このケース部材70の内部では、第2側部72及び第4側部74の沿う厚み方向T(図5中、左右方向)に対し、第1側部71の内側面と第3側部73の内側面との大きさが距離m(0<m)となっている。
封口部材80は、ケース部材70の開口を閉塞する略矩形板状に形成された蓋であり、弁孔80Hと、正極端子挿通孔81Hと、負極端子挿通孔82Hとを有している。弁孔80Hは、金属製の安全弁86により封止されている。封口部材80は、ケース部材70に、後述する電極捲回体20を収容し、図示しない電解液を注入した後に、液密に閉塞される。ケース部材70と封口部材80とは、例えば、レーザ溶接等により、これらの全周にわたる溶接部87で固着されている。
電極捲回体20は、正極合材31Pが帯状の正電極板31に塗工された正極塗工部32を含む正電極30、及び負極合材41Pが帯状の負電極板41に塗工された負極塗工部42を含む負電極40を備えている。電極捲回体20は、この正電極30とこの負電極40との間に帯状のセパレータ50を挟み、正電極30と、負電極40と、セパレータ50とを積層し、図1に示すように、軸線AXを中心に捲回し扁平した形態で形成されている。
また、正電極30は、正電極板31のうち、正極合材31Pが塗工されていない正極未塗工部33を含んでいる。この正極未塗工部33では、正極側集箔部34として、正極塗工部32を除いた正電極板31の一部のみが渦巻状に重なって露出し、電極捲回体20において、軸線AXを中心とする径方向内側、すなわち厚み方向Tに圧縮されて互いに重なり合っている。
正極側集箔部34は、電極捲回体20の軸線AXに沿った方向(図2中、左右方向)の一端側(図2において右側)に配置される。
この正電極端子35の上部は、図2に示すように、封口部材80を通じてケース部材70の外部に露出し、樹脂からなる正極シール部材37により、封口部材80と電気的に絶縁された状態で、かつ、封口部材80に液密に保持されている。
また、負電極40は、負電極板41のうち、負極合材41Pが塗工されていない負極未塗工部43を含んでいる。この負極未塗工部43では、負極側集箔部44として、負極塗工部42を除いた負電極板41の一部のみが渦巻状に重なって露出し、電極捲回体20において、軸線AXを中心とする径方向内側、すなわち厚み方向Tに圧縮されて互いに重なり合っている。
負極側集箔部44は、電極捲回体20の軸線AXに沿った方向(図2中、左右方向)の他端側(図2において左側)に配置されている。
この負電極端子45の上部は、図2に示すように、封口部材80を通じてケース部材70の外部に露出し、樹脂からなる負極シール部材47により、封口部材80と電気的に絶縁された状態で、かつ、封口部材80に液密に保持されている。
電極捲回体20は、図3及び図4に示すように、セパレータ50を軸芯に配置し、セパレータ50、正電極30、セパレータ50、負電極40を、1組として積層した状態で、軸線AXを中心に所定の捲回数を螺旋状に捲回してなる。
この電極捲回体20では、セパレータ50は、正電極30の正極塗工部32の最外周側に位置する正極塗工エンド部32E、及び負電極40の負極塗工部42の外周側に位置する負極塗工エンド部42Eを越えて捲回されている。本実施形態では、捲回されたセパレータ50のうち、最外周側に位置するセパレータ最外周部50Eは、負電極40の周りを完全に捲回した状態で、端部をテープTPで留めて固定されている。
図8は、間隙充填材を示す図であり、(a)は最も薄い厚みt1の場合、(b)は中間の厚みt2の場合、(c)は最も厚い厚みt3の場合である。
電極捲回体20をケース部材70に収容した状態では、本実施形態では、電極捲回体20のうち、セパレータ50の最外周側に位置するセパレータ最外周部50Eと、ケース部材70の第1側部71との間隙、及びセパレータ最外周部50Eと第3側部73との間隙には、アルミニウム製の間隙充填材60がそれぞれ設けられている。
なお、本実施形態以外に、場合によっては、第1側部71との間隙s1または第3側部73との間隙s2のいずれか一方に、間隙充填材60が設けられることもある。
ただし、電池10において、後に詳述する電極捲回体収容工程及びケース封口工程以外は、公知の手法によれば良いので、これらの工程を中心に説明し、その他は省略または簡略に説明する。
まず、別途、公知の方法により、正極側接続部36で正電極端子35を正極側集箔部34に接続する共に、負極側接続部46で負電極端子45を負極側集箔部44に接続して、電極捲回体20を構成しておく。
次いで、正極シール部材37により正電極端子35と正極端子挿通孔81Hとの間を、及び、負極シール部材47より負電極端子45と負極端子挿通孔34Hとの間を、それぞれ気密にシールする。
はじめに、図5に示すように、電極捲回体20のうち、セパレータ最外周部50Eで厚み方向Tに薄く扁平状に捲回された平坦部分の厚みn(0<n)を計測しておく。また、この電極捲回体20を収容する対象のケース部材70に対し、第1側部71の内側面と第3側部73の内側面との距離m(n<m)を計測しておく。
次に、電極捲回体20をケース部材70に収容した状態において、ケース部材70の距離mと電極捲回体20の厚みnとの差であるクリアランス(m−n)を求め、このクリアランスに対応した厚さの間隙充填材60を選択し充填する。
図9及び図10に、電極捲回体収容工程の工程図を示す。電極捲回体収容工程では、図9に示すように、以下に説明する吸引装置95を用いて、ケース部材70の第1,第3側部71,73を外側に向けて弾性変形させ、第1,第3側部71,73をそれぞれ外側に凸の形状に変形させる。
そこで、まず吸引装置90を簡単に説明した後、この装置を用いた電極捲回体収容工程について説明する。
次に、ケース部材70の第1側部71と第3側部73にそれぞれ対向する位置にある電極捲回体20の間隙充填材配設予定面51に、間隙充填材60の一面60aをそれぞれ当接させておき、この状態で、封口部材80と共に一体となった電極捲回体20を、その下方からケース部材70の開口に向けて収容する。収容後、ケース部材70に電解液を注入する。
この吸引装置90により、ケース部材70の第1側部71と第3側部73とを吸引して、第1側部71及び第3側部73を、互いに反対側に向けてそれぞれ弾性変形させたため、ケース部材70では、第1側部71、第2側部72、第3側部73及び第4側部74は、平板状から湾曲状に変形が生じている。
第1押圧部材91は、平板状に形成され、押圧装置により、ケース部材70の外部から第1側部71に向けて移動し、ケース部材70のうち、第1側部71全体に当接して、第1側部71を押圧する治具である。
第2押圧部材92は、直方体状に形成され、押圧装置により、ケース部材70の外部から第2側部72に向けて移動し、ケース部材70のうち、第2側部72全体に当接して、第2側部72を押圧する治具である。
第4押圧部材94は、ブロック状に形成され、押圧装置により、ケース部材70の外部から封口部材80に向けて移動し、封口部材80のうち、正電極端子35の露出部及び正極シール部材37と、負電極端子45の露出部及び負極シール部材47とを除いた範囲に当接して、封口部材80を押圧する治具である。
図11に、ケース封口工程の工程図を示す。ケース封口工程では、図11に示すように、第1乃至第4押圧部材91,92,93,94を、それぞれケース部材70の外側からケース部材70に向けて移動させる。
この移動により、第1押圧部材91をケース部材70の第1側部71に、第2押圧部材92をケース部材70の第2側部72に、第3押圧部材93をケース部材70の第3側部73及び第4側部74にそれぞれ当接させて、第1側部71及び第3側部73を、互いに近接させ平行となる向きにそれぞれ弾性変形させる。
また、第1側部71及び第3側部73が互いに外部側に弾性変形したことに伴って、第2側部72及び第4側部74が弾性変形した分を、互いに平行となる向きにそれぞれ弾性変形させる。
すなわち、間隙充填材60は、間隙充填材配設予定面51、及び第1,第3側部71,73の内側面に密着した状態となり、電極捲回体20と第1側部71との隙間s1と、電極捲回体20と第3側部73との隙間s2は、間隙充填材60によって埋められる。
かくして、電池10が製造される。
電池10は単電池である。バッテリパック6は、図13に示すように、複数の電池10をバスバ13により直列接続して一列状に拘束された組電池10Cを、1つのユニットとして構成し、この組電池10Cを複数列置して全数の電池10を直列に接続した構成となっている。
本実施形態に係る電池10のほか、一般的な二次電池でも、組電池10Cと同様に、組電池は、複数の単電池を直列接続して一列状に拘束して構成されている。
釘刺し試験は、電源の使用中、外部から車両に何らかの理由で衝突等の強い衝撃・応力が加わり、組電池に損傷を受けた場合を想定し、電池のケース部材に釘を突き刺すことにより、組電池の損傷を擬似的につくり出して、組電池の性能を評価する試験である。
本実施形態でも、組電池10Cについても釘刺し試験を実施し、電池10の性能評価(実施例)を行う共に、比較例1乃至6に係る単電池に基づいて構成した組電池を対象に釘刺し試験を実施し、比較例1乃至6に係る単電池についても性能評価を行った。
また、上記釘刺し試験のほかに、電池10と、この比較例1乃至6に係る単電池について、過充電試験による性能評価を併せて行った。
以下、実施例に係る電池10と、比較例1乃至6に係る単電池とについて、(1)過充電試験と(2)釘刺し試験との共通した試験条件は、
(a)正極:LiNiCoMnO2、負極:炭素
(b)単セル:3つの単電池(電池10を含む)/セル
(c)ケース部材はAl製で厚み0.5mm、間隙充填材の厚み0.1〜0.3mm、正極電極板の厚み10μm、負極電極板の厚み10μm、セパレータの厚み20μm
である。
また、「電極体最外周部セパレータとAl充填材の大小関係」は、参照する電池10において、間隙充填材配設予定面51の表面積Sと間隙充填材60の表面積Kとの大小関係を意味するものである。
はじめに、過充電試験について説明する。試験条件は、
(d)使用電池:単セル
(e)SOC100%開始、電流20A、上限電圧10V、雰囲気温度25℃
である。
この試験では、過充電により発電要素で発熱した熱がケース部材に伝熱する温度を確認するため、ケース外部からケース部材の表面温度を測定した。
これは、間隙充填材60を、熱伝導率がPPの熱伝導率に比べて約1000倍も大きいアルミニウム製で形成したために、発電要素で発熱した熱が、アルミニウム製の間隙充填材を通じてケース部材に伝わり、ケース部材が外気によって効率良く冷却され、発電要素の温度上昇が抑制できるようになるためと考えられる。換言すれば、この実験結果は、電極捲回体とケース部材との間に間隙充填材を設けない場合とほぼ同じような結果となり、PP製の間隙充填材は、発電要素で発熱した熱をケース部材に伝えないことが判る。
次に、釘刺し試験について説明する。試験条件は、
(f)使用電池:3セル直列接続
である。
この試験では、図14に示すように、組電池10C中の電池10に向けて釘96を突き刺しことにより、低下する電圧(正極電位の第1端子11と負極電位の第2端子12との電位差に対し、釘刺し1分後の電圧降下量を測定した。
図15より、実施例1、比較例1,2では、中間セルの電圧降下量が40mV前後で留まっているのに対し、比較例3乃至6では、電圧降下量が200mV前後にまで達していることが判る。
本実施形態に係る電池10を含み、一般的な二次電池では、単電池として、電極捲回体が、合成樹脂製の帯状のセパレータ、アルミニウム製の帯状の正電極、帯状のセパレータ、及び銅製の帯状の負電極を1組として積層させ、積層した状態で捲回されている。そのため、正電極層、負電極層、及びセパレータ層の各層が、セパレータ層、正電極層、セパレータ層、負電極層、セパレータ層、正電極層、…のように、捲回数に応じて幾重にも形成される。
実施例に係る組電池10Cに釘刺し試験を行うと、釘96を刺し込む方向に向けて順に層別毎に分けると、図16に示すように、ケース部材P1、間隙充填材P2、セパレータP3、負極電極板P4、セパレータP5、正極電極板P6…となる。
ケース部材P1、間隙充填材P2、及びセパレータP3は積層され、ケース部材P1は、セパレータP3の存在のほか、「集箔有」及び「Al<セパレータ」により、負極電極板P4とも接触せず、正極電位及び負極電位を持たず、電気的に中立である。
一方、セパレータP5を超えて突き刺さった釘96により、負極電極板P5と正極電極板P6とは短絡して導通する。
実施例では、突き刺さった釘96により、負極電極板P5と正極電極板P6とが短絡して導通すると、正極電極板P6が負極電極板P5より先に溶融し、負極電極板P5と正極電極板P6とが溶断される。
溶断までの時間が短いと、図15及び図18に示すように、組電池10Cの電圧降下量は42mVと小さく、電圧が急激に降下しないため、電池性能を一気に失うこともない。
比較例3の場合、釘刺し試験を行うと、釘96を刺し込む方向に向けて順に層別毎に分けると、図17に示すように、ケース部材Q1、間隙充填材Q2、正極電極板Q3、セパレータQ4、負極電極板Q5…となる。
ケース部材Q1、間隙充填材Q2、及び正極電極板Q3は積層され、ケース部材Q1は、間隙充填材Q2を介して正極電極板Q3と接触して導通し、正極電位を持つ。
一方、セパレータQ4を超えて突き刺さった釘96により、負極電極板Q5と、積層されたケース部材Q1、間隙充填材Q2、及び正極電極板Q3とが短絡する。
しかしながら、二次電池がリチウムイオン電池である場合、ケース部材や間隙充填材が、例えば、イオン化傾向の高い金属の一種であるアルミニウムで形成されていると、発電時に本来、正電極側にあるLiイオンが電解質を通じて負電極側に移動する化学反応が起きるところに、正電極側にあるLiイオンが、負極電位であるケース部材及び間隙充填材と化学反応してしまい、Li‐Al合金を生成してしまう。
Li‐Al合金が生成されると、電池性能が格段に悪化してしまい、電池の寿命特性が低下すると共に、電源として、安定した起電力を発生することができなくなり、好ましくない。
(1)本実施形態に係る電池10では、正極合材31Pが帯状の正電極板31に塗工された正極塗工部32を含む正電極30、及び負極合材41Pが帯状の負電極板41に塗工された負極塗工部42を含む負電極40を備え、正電極30と負電極40との間に帯状のセパレータ50を挟み、正電極30と、負電極40と、セパレータ50とを積層して捲回してなる電極捲回体20と、電極捲回体20を内部に収容するケース部材70とを有する電池10において、電極捲回体20では、セパレータ50が、正極塗工部32の最外周側に位置する正極塗工エンド部32E、及び負極塗工部42の外周側に位置する負極塗工エンド部42Eを越えて捲回されていること、セパレータ50の最外周側に位置するセパレータ最外周部50Eと、ケース部材70の第1,第3側部71,73との間隙s1,s2には、アルミニウム製の間隙充填材60が設けられているので、充放電時のほか、過充電時等の異常時に、ケース部材70内の発電要素(捲回電極体20及び図示しない電解質)で生じる化学反応により、発電要素が発熱したときに、熱が、捲回電極体20のセパレータ最外周部50Eから間隙充填材60に、間隙充填材を樹脂で形成した従来の電池に比べて伝わり易く、間隙充填材60を介してケース部材70外部への放熱が効率良くできる。
その結果、ケース部材70に伝わった熱として、ケース部材70の表面温度をケース部材70外部から計測した場合には、電池10に係るケース部材70の温度は、間隙充填材を樹脂で形成した従来の電池に係るケース部材の温度に比べ、前述したように、例えば70%以下の低い温度に抑制することができる。
すなわち、発電要素の発熱時に、間隙充填材60から伝熱したケース部材70が外気等によって効率良く冷却され、発電要素の温度上昇が抑制できるようになるため、充放電時に、発電要素において化学反応が活性化され、信頼性の高い電池性能が得られる。
そのため、間隙充填材60がアルミニウム等の金属製であっても、正負電極の短絡や、ケース部材70に正極電位または負極出を有することが生じず、これ等に起因した電池性能の低下が防止できている。
従って、本実施形態の電池10では、発熱時の放熱性が高く、信頼性の高い電池性能を備えた二次電池を提供することができる、という優れた効果を奏する。
また、正電極30の正極未塗工部32は、正極電位を有しているものの、電極捲回体20の径方向内側に正電極板31を圧縮させて互いに重なり合わせている正極側集箔部34となっている。そのため、電極捲回体20がケース部材70に収容された状態でも、セパレータ50が正極未塗工部33まで配置されている如何を問わず、正電極板31は、ケース部材70とは接触せず、ケース部材70に電位は有しない。
また、負電極40の負極未塗工部42は、負極電位を有しているものの、正電極30の正極未塗工部33と同様、電極捲回体20の径方向内側に負電極板41を圧縮させて互いに重なり合わせている負極側集箔部44となっている。そのため、電極捲回体20がケース部材70に収容された状態でも、セパレータ50が負極未塗工部43まで配置されている如何を問わず、負電極板41は、ケース部材70とは接触せず、ケース部材70に電位は有しない。
この組電池10Cを構成するとき、複数の電池10において、ケース部材70に収容された状態の電極捲回体20のセパレータ最外周部50Eの間隙充填材配設予定面51と、ケース部材70の第1,第3側部71,73の内側面との間隙s1,s2の大きさが、電池10毎に異なることがある。この場合でも、間隙充填材60は、箔状であるため、例示したように、t1=0.1(mm)、t2=0.2(mm)、t3=0.3(mm)等と、箔の厚みにバリエーションを持たせて形成することが容易にできる。
よって、隙間s1,s2の大きさに対応した厚みの間隙充填材60を選択し、それぞれの隙間s1,s2に充填すれば、電極捲回体20の径方向に沿う厚み方向Tに対する大きさを、各電池10で均一に揃えることが簡単にできる。
また、熱伝導率の高い金属のうち、アルミニウムは相対的に安価な材料であるため、間隙充填材60を低コストで形成することができ、ひいては電池10にかかるコストを安価にすることができる。
例えば、実施形態では、電池10は角型単電池としたが、本発明に係る二次電池は、実施形態に限らず、例えば、円筒型単電池等、適宜変更可能である。
20 電極捲回体
30 正電極
31 正電極板
31P 正極合材
32 正極塗工部
32E 正極塗工エンド部
33 正極未塗工部
34 正極側集箔部
40 負電極
41 負電極板
41P 負極合材
42 負極塗工部
42E 負極塗工エンド部
43 負極未塗工部
44 負極側集箔部
50 セパレータ
50E セパレータ最外周部
51 間隙充填材配設予定面(セパレータ最外周部の表面)
60 間隙充填材
70 ケース部材
T 厚み方向
Claims (5)
- 正極合材が帯状の正電極板に塗工された正極塗工部を含む正電極、及び負極合材が帯状の負電極板に塗工された負極塗工部を含む負電極を備え、前記正電極と前記負電極との間に帯状のセパレータを挟み、前記正電極と、前記負電極と、前記セパレータとを積層して捲回してなる電極捲回体と、該電極捲回体を内部に収容するケース部材とを有する二次電池において、
前記電極捲回体では、前記セパレータが、前記正極塗工部の最外周側に位置する正極塗工エンド部、及び前記負極塗工部の外周側に位置する負極塗工エンド部を越えて捲回されていること、
前記セパレータの最外周側に位置するセパレータ最外周部と、前記ケース部材との間隙には、金属製の間隙充填材が設けられていることを特徴とする二次電池。 - 請求項1に記載する二次電池において、
前記正電極は、前記正電極板のうち、前記正極合材が塗工されていない正極未塗工部を含み、前記負電極は、前記負電極板のうち、前記負極合材が塗工されていない負極未塗工部を含み、
前記正極未塗工部では、前記正電極板が、前記電極捲回体の径方向内側に圧縮されて互いに重なり合っていること、
前記負極未塗工部では、前記負電極板が、前記径方向内側に圧縮されて互いに重なり合っていること、を特徴とする二次電池。 - 請求項1または請求項2に記載する二次電池において、
前記セパレータ最外周部の表面に接触させる前記間隙充填材の面積は、前記セパレータ最外周部の表面積以下であることを特徴とする二次電池。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する二次電池において、
前記間隙充填材は、板状または箔状に形成されていることを特徴とする二次電池。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載する二次電池において、
前記間隙充填材は、アルミニウム製であることを特徴とする二次電池。
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