JP2012136393A - 五酸化バナジウムの溶融設備 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炉底2と炉側壁3と炉蓋4を有し、五酸化バナジウム堆積物Vhを収容することができる溶融炉1と、溶融炉内に収容された五酸化バナジウム堆積物Vhの表面を直接加熱する加熱器6とを備える。五酸化バナジウム堆積物Vhの表面を直接加熱するので、堆積物の表面が溶融物または焼結物で覆われるため発塵することがなく、作業員の健康被害を防止できる。五酸化バナジウム堆積物Vhを直接加熱して溶融させるものであり、炉内全体を必要以上に高温に加熱するものでないため、五酸化バナジウムの溶湯が炉壁に浸透することを抑制でき、この結果、炉壁の損傷による不純物混入がなくなり五酸化バナジウム製品を高純度に維持できる。
【選択図】図1
Description
日本は、バナジウム全量を、主にV2O5やフェロバナジウムの形態で輸入しているが、バナジウムは国家備蓄の対象となっていることもあって、リサイクル利用技術が開発され、バナジウムを石油精製用使用済触媒等からの回収という形での生産も行われている。
しかるに、五酸化バナジウムは溶融したときの浸透腐食性が高く、溶融炉内で溶湯が炉壁に接触すると五酸化バナジウムが炉壁に浸透して損傷させる。そして、損傷した炉壁からの不純物が混入すると五酸化バナジウムの純度が落ちる、という問題がある。
特許文献1の従来技術は、安価な低純度バナジウム原料を使用して高純度V2O5を製造する技術であり、製品形態としては、粉体のままか、これを成形器に入れて成形体とするものである。
したがって、粉体のままでは発塵の可能性が高く、成形体もハンドリング時に形が崩れて発塵する可能性が残ることから、人体被害の問題を未然に防ぐことはできない。
しかし、このようにして固形物化したものの形態の具体的な説明はなく、固形物の形が崩れることによる発塵防止については全く言及がなく、人体被害の防止を考慮したものとは考えられない。
また、五酸化バナジウム固形物を溶融してフレーク化する工程については、特許文献1,2に限らず、他の公知文献にも言及したものは見当たらない。したがって、五酸化バナジウムを溶融する際に、その浸透腐食性に起因する溶融炉の損傷を防止する技術についても、課題の提示もないのが現状である。
このように、現状では五酸化バナジウムの実用的な溶融技術は確立されていないのである。
第2発明の五酸化バナジウムの溶融設備は、第1発明において、前記加熱器は、前記溶融炉に投入された五酸化バナジウムの堆積物が山積み状態となってできた斜面を直接加熱できる位置に取付けられていることを特徴とする。
第3発明の五酸化バナジウムの溶融設備は、第1または第2発明において、前記加熱器は、完全燃焼して生成された火炎を放射するバーナであることを特徴とする。
第4発明の五酸化バナジウムの溶融設備は、第1または第2発明において、前記加熱器は、熱風炉で完全燃焼して生成された高温熱風を放射するノズルであることを特徴とする。
第5発明の五酸化バナジウムの溶融設備は、第1発明において、前記溶融炉は、炉底と炉側壁と炉蓋を有しており、該炉側壁の外周に冷却ジャケットを取付けており、該冷却ジャケットの取付高さは、溶融炉における溶湯溜りの高さに合わされていることを特徴とする。
第6発明の五酸化バナジウムの溶融設備は、第1発明において、前記溶融炉は、炉底と炉側壁と炉蓋を有しており、この炉底、炉側壁および炉蓋はいずれも内壁耐火材と外壁耐火材とこれらを保持する鉄皮とからなり、前記内壁耐火材は炭化ケイ素を主材とする耐火材であり、前記外壁耐火材は伝熱性のある耐火材であることを特徴とする。
第7発明の五酸化バナジウムの溶融設備は、第5発明において、前記炉側壁のうち、前記冷却ジャケットの取付け部分は、内壁耐火材も外壁耐火材も炭化ケイ素を主材とする耐火材からなることを特徴とする。
第8発明の五酸化バナジウムの溶融設備は、第2または第3発明において、前記溶融炉は、五酸化バナジウムを炉内で1ヵ所に堆積するものであることを特徴とする。
第9発明の五酸化バナジウムの溶融設備は、第2または第3発明において、前記溶融炉は、五酸化バナジウムを炉内で隣接する複数ヶ所に堆積するものであることを特徴とする。
第10発明の五酸化バナジウムの溶融設備は、第2発明において、前記溶融炉は、内部の高温ガスを排出する排ガスダクトを備えていることを特徴とする。
第11発明の五酸化バナジウムの溶融設備は、第1発明において、前記溶融炉は、五酸化バナジウムの堆積物が溶融した溶湯を取り出す出湯口と、溶湯が該出湯口に集まるように当該溶融炉を傾転させる傾転機構とを備えることを特徴とする。
第12発明の五酸化バナジウムの溶融設備は、第1発明において、前記溶融炉は、傾斜した炉底と傾斜が低い方の炉側壁に前記出湯口が形成されていることを特徴とする。
第2発明によれば、五酸化バナジウム堆積物の斜面に対し、加熱領域が限定され、加熱領域以外の炉壁等は加熱されず高温とならない。このため、溶湯が炉壁に浸透して損傷することも防止しやすく、同時に炉壁からの不純物混入がなくなり五酸化バナジウム製品を高純度に維持できる。
第3発明によれば、バーナから完全燃焼した火炎を放射して五酸化バナジウム堆積物を加熱すれば、五酸化バナジウムが還元されないので低級酸化物の生成を抑制できる。
第4発明によれば、ノズルから完全燃焼した高温熱風を放射して五酸化バナジウム堆積物を加熱すれば、五酸化バナジウムが還元されないので低級酸化物の生成を抑制できる。
第5発明によれば、炉側壁より熱を逃がすことに加え、冷却ジャケットにより炉側壁を介して溶湯を強制冷却するので、五酸化バナジウムの溶湯のうち炉側壁に接する部分を冷却して固化して、固化部分を炉底や炉側壁の保護層とすることができる。また炉側壁の表面温度を下げ五酸化バナジウム溶湯の炉材への浸透を抑制することができる。
第6発明によれば、内壁耐火材が炭化ケイ素を主材とするものであるから、耐熱性が高く、バナジウムに対する化学安定性も高いので、五酸化バナジウムの溶湯が炉壁に浸透することを抑制しやすく、このため炉壁の損傷による不純物混入がなくなり五酸化バナジウム製品を高純度に維持できる。また、外壁耐火材は伝熱性を利用して耐火材内側の温度を極力低下させ、五酸化バナジウムの耐火材への浸透を抑制することができる。さらに、内壁耐火材内側近傍における五酸化バナジウムの温度も抑制することができ、一定厚さで固化層を形成することにより(いわゆるセルフコーティング)、耐火材の保護を可能にすることができる。
第7発明によれば、冷却ジャケットの内側の内壁耐火材と外壁耐火材は伝熱性を有する炭化ケイ素を主材とする耐火材なので、溶融炉内の五酸化バナジウム溶湯を効率よく強制冷却することができる。
第8発明によれば、五酸化バナジウム堆積物が溶融炉内で1ヵ所の山積み状態に積み上げられるので、溶湯が流れ出る斜面を自然に形成することができ、五酸化バナジウム堆積物に直接加熱することも可能となる。
第9発明によれば、五酸化バナジウム堆積物が溶融炉内で複数ヶ所の隣接した山積み状態に積み上げ溶湯が流れ出る谷間を自然に形成することができ、溶湯が谷間を流れることにより炉壁に高温の溶湯を接触しないようにすることができ、かつ原料堆積物により炉側壁を保護することができる。
第10発明によれば、加熱器から放射され五酸化バナジウム堆積物を加熱した後の熱が五酸化バナジウム堆積物を貫流して排ガスダクトに向うので、熱と五酸化バナジウム堆積物との接触により予め乾燥させたり予備加熱ができるので、効率よく溶融させることができる。
第11発明によれば、傾転機構により溶融炉を傾斜させると出湯口から溶湯をバッチ式で取り出すことができる。
第12発明によれば、溶け出た溶湯を傾斜した炉底に沿わせて最底部に集め、出湯口から連続して取り出すことができる。
本発明の溶融設備は、固液分離されたケーキ、またはケーキを造粒成形した粒状物あるいはその乾燥物である五酸化バナジウムをフレーク状に成形するために、いったん溶融するための設備である。
既述のごとく、五酸化バナジウムは、人体に対し有害物質であり発塵性があるので、処理中に発塵を防止する必要があり、また、五酸化バナジウムが高い浸透性や腐食性を有することから、溶融炉の炉壁を保護し、また炉壁の損傷による不純物混入によるバナジウム製品の品質低下を防ぐ必要がある。
これらの課題に応えるものとして、本発明の溶融設備は、溶融炉の内部に堆積した五酸化バナジウムを加熱器で直接加熱し、直接加熱された部分(つまり、当て吹きされた部分)を中心に融点以上に昇温させて五酸化バナジウム堆積物の表面から溶融させて溶湯だまりに流下させると共に、この溶融過程において、溶湯あるいは焼結物によって五酸化バナジウム堆積物を覆うことによって発塵を防止し、また溶湯の一部を固化させて溶融炉の炉壁に対する保護層として機能させ、溶融炉の損傷とバナジウム製品の品質を高く維持するようにしたものである。
これに対し、本発明では、当て吹きしている溶融部分こそ五酸化バナジウムの溶融温度(690℃)に達しているが、それ以外の部分は融点以下にできるので、五酸化バナジウムが炉壁に浸透することを防止できる。このため、溶融炉の炉壁を保護でき、かつ損傷した炉壁からの不純物混入も防止できる。また、五酸化バナジウムの溶湯をフレーク状に固化させる際も、反射炉方式による場合よりも低い温度から開始できるので、時間が短くてすみ容易に作業ができる、という利点がある。
以下、上記の技術原理に基づく溶融設備の第1実施形態Aを、図1〜図4に基づき説明する。
本実施形態の溶融設備Aは、溶融炉1と、この溶融炉1に収容された五酸化バナジウムVの堆積物(以下、五酸化バナジウム堆積物Vhという)を直接加熱する加熱器6を備えている。
溶融炉1は、直接加熱により溶融する五酸化バナジウム堆積物Vhを収容するための炉であり、炉自体は直接加熱を受けない。換言すれば、内部に五酸化バナジウム堆積物Vhを収容し、これを当て吹きできる炉であれば、とくに制限なく、どのような炉であってもよい。したがって、後述する炉底2、炉側壁3、炉蓋4を用いたものと異なる構造の溶融炉であってもよい。
図1〜図4において、2は炉底、3は4面を囲む炉側壁、4は炉蓋である。なお、本明細書では、炉底2、炉側壁3および炉蓋4を総称して炉壁という。これらの炉壁は、いずれも内壁耐火材9aと外壁耐火材9bと構造材としての鉄皮9cとからなり、鉄皮9cは最外側に配置され外壁耐火材9bと内壁耐火材9aを保持している。
そして、内壁耐火材9aは五酸化バナジウムへの耐食性の高い材料、たとえばSiCレンガ9yを用い、外壁耐火材9bは、後述する冷却ジャケット7の無い部分では温度を下げやすい材料、たとえば断熱ボード9xを用いて、鉄皮9cを高温による強度低下から保護し溶融炉の耐久性を確保するようにしている。
なお、後述する冷却ジャケット7の取付部分では、内壁耐火材9aも外壁耐火材9bも、伝熱性が良く五酸化バナジウムへの耐食性も高い炉材、例えば内壁側がSiCレンガ9y、外壁側における断熱材9xに挟まれた部分はSiCモルタル9zを用いて冷却ジャケット7による強制冷却の効果が高まるようにされている。
炉底2:外壁耐火材9bが耐火レンガ、内壁耐火材9aがSiCレンガ
炉側壁3:外壁耐火材9bが断熱ボード、内壁耐火材9aがSiCレンガ
炉蓋4:外壁耐火材9bが断熱キャスタブル、内壁耐火材9aがSiCキャスタブル
上記炉壁のうち、「SiC」は炭化ケイ素(Silicon Carbide 化学式SiC)を示しており、これは組織が緻密であって、硬度、耐熱性、化学的安定性に優れているという特徴がある。加えて、各種材質の溶融五酸化バナジウムへの耐食性評価試験の結果、炭化ケイ素質純分の高い炉材が最も五酸化バナジウムへの耐食性・耐浸透性に優れているという知見が得られたため、五酸化バナジウムの溶湯に直接接触する内壁耐火材9aにはSiC(純分90%以上のもの)を用いて、五酸化バナジウムの浸透、腐食に対する耐性を高めている。
外壁耐火材9bには、伝熱性のある種々の耐熱材や耐火レンガが用いられるが、これは炉壁2,3,4を熱が伝わる間に放冷できるよう厚さが伝熱計算により調整されており、最外側の鉄皮9cを200℃以下、好ましくは150℃以下位の温度に維持できるようにしている。このレベルの温度になると、鉄皮9cがその強度を維持し、シェルとしての機能を発揮させることができる。
なお、上記の材料例示に示す「キャスタブル」は不定形な材料であって任意の形や厚さに施工できる材料であることを意味している。また、「レンガ」は定形の材料であることを意味している。
なお、レンガを用いるかキャスタブルを用いるかは任意であって、設計や施工上の都合でいずれか一方を採用してよい。ただし、レンガの方が組織が緻密であるので、一般的にはレンガの方が破損防止には好ましい。
炉蓋4に設けたシュート5から五酸化バナジウムVを投入して、五酸化バナジウム堆積物Vhを溶融炉1内で1ヵ所の山積み状態に積み上げると、後述するように溶湯が流れ出る斜面を自然に形成することができる。
そして、加熱器6は溶融炉1内に収容した五酸化バナジウム堆積物Vhを直接加熱できるもの、すなわち当て吹きできるものであれば、どのような加熱手段であってもよい。代表的には、火炎を噴射するバーナや熱風を放射する熱風ノズルなどが挙げられる。
また、溶け出してくる溶湯に対して間接的に熱を与えるので溶湯が出湯するまでの間の流動性を保持でき、出湯作業を容易にできる。
火炎が完全燃焼している場合、五酸化バナジウムが還元されないので、V低級酸化物の生成を抑制することができる。
このような水平面および垂直面内での角度調整を可能とすることにより、五酸化バナジウム堆積物Vhの表面加熱の範囲を広げたり、溶融速度を適正に維持することができる。
つまり本実施形態では、五酸化バナジウムのスポット状の溶融部分から離れた炉壁を融点以下に保持することに加え、溶湯溜り部分の炉側壁を冷却して保護層cを作ることによっても、五酸化バナジムの浸透から炉壁を保護しているのである。
出湯口8の取付け位置は、溶湯取り出しのために溶融炉1を傾転したときに、溶湯が集まる部位であればよい。図示の溶融炉1では、五酸化バナジウム堆積物Vhの山から遠い位置であり、かつ加熱器6の下方の部位に設けられている。
このように、溶湯が溜る部位に出湯口8があるので、溶湯の排出が短時間で行え、溶湯が炉側壁3に浸透して損傷することも防止しやすく、同時に炉側壁3からの不純物混入がなくなり五酸化バナジウム製品を高純度に維持できるようになる。
傾転軸部11は、溶融炉1の炉側壁3に取付けた傾転軸12と、この傾転軸12を回転自在に支持する軸受13とからなる。なお、軸受13は溶融炉1を全体的に支えている基台10に固定されている。
図5は溶融作業開始直後の状況を示している。五酸化バナジウムVはシュート5から投入されて山積み状態に堆積している。五酸化バナジウム堆積物Vhの頂点はシュート5付近にあり、堆積物の加熱器6に向き合う斜面が長い緩斜面となっている。
また、これらの原料物は、水分を含んだままのものであれば、含んでいる水分により投入作業時の発塵を抑制しやすくなる。
同図(I)は、五酸化バナジウム堆積物Vhの長斜面での溶融が進み、五酸化バナジウムVの溶融物である溶湯mが下方に流れ出て、保護層cの上面に溜りつつある状態である。
上記の溶融は、加熱器6が噴射した火炎fや熱風が五酸化バナジウム堆積物Vhの表面に直接当る、いわゆる当て吹きを行い溶融エリアを作る。こうすることにより溶融エリア以外の五酸化バナジウム堆積物Vhの表面が全体的に加熱され、五酸化バナジウム堆積物Vhの全体表面が溶湯または焼結物で覆われるので、五酸化バナジウムVの発塵を防止することができる。
この間、溶湯mは溶融時の高温から少しづつ温度低下していくが、溶融温度を維持しつつ流動性を保っている。
既述したように各炉壁は外側断熱材の伝熱により放冷しているが、これに加え冷却ジャケット7による強制冷却で内壁温度(とくに溶湯が接触する内壁面)を融点(690℃)以下に冷却されている。
そして、下層部の溶湯mは、伝熱による放冷及び冷却ジャケット7により冷却されて、固化していき、その部分は既述したように保護層cとなる。
図示のように五酸化バナジウム堆積物Vhがある程度残り、斜面が形成されている状態で、出湯作業にかかる方が、原料堆積物Vhがほとんどなくなるまで加熱するよりも効率的に溶融作業を進めることができる。
溶融炉1の傾転は傾転ジャッキ14を伸長させ、出湯口8が下になるように傾けると、溶湯mを出湯口8から取り出すことができる。
このようにして取り出された溶湯mは、フレーク化工程にまわされ製品化される。
第2実施形態の溶融設備では、溶融炉1内に五酸化バナジウムVを複数ヵ所に堆積するようにした設備である。
堆積ヶ所は2ヵ所以上であれば、とくに制限されない。本実施形態の溶融設備では、図7(A)に示すように、炉蓋4には2個のシュート5A,5Bが設けられている。各シュート5A,5Bに1基づつのフィーダ20を配置してもよく、図示のように伸縮自在の1基のフィーダ20で2ヵ所のシュート5A,5Bを選択して原料投入するようにしてもよい。また、フィーダ20の配置位置は、溶融炉1の側方でもよく、加熱器6に対向する方向から接近離間するように配置してもよい。
さらに、溶融炉1との傾動時の干渉を避けるため、フィーダ20を進退式にしたり、旋回式にする等の設計は任意に採用できる。
なお、五酸化バナジウムを3ヵ所以上に堆積した場合も、谷間vを当て吹きでき、炉壁の損傷を防止できることは同様である。
図9は前記第2実施形態と同様に溶融炉1内に五酸化バナジウム堆積物Vhを2山に堆積する実施形態である。
本実施形態では、フィーダ21が溶融炉1の炉側壁であって、加熱器6に対向する側の炉側壁3に固定されている。このフィーダ21はスクリュー式やベルト式など任意の機構を採用できる。
また、フィーダ21の上面にはホッパ22が設けられ、このホッパ22から原料をフィーダ21に投入できるようになっている。なお、ホッパ22には図示しないフィーダで原料を投入すればよい。
そして、本実施形態においても、図9(B)に示すように、五酸化バナジウム堆積物Vhの山が2ヵ所に隣接してできるため、二つの山の間が谷間vとなる。この谷間vは、五酸化バナジウム堆積物Vhを当て吹きしたとき溶湯mが流れ出る谷間vを自然に流れ落ちるので、高温状態の溶湯mが炉側壁3に近寄らず、炉壁の損傷を防止しやすくなる。
上記第1〜第3実施形態の溶融設備は、溶湯が一定量溜ると出湯させるバッチ式であったが、本発明では、連続して出湯させる連続式の溶融設備に構成することも可能である。
図10に示す第4実施形態の溶融設備における溶融炉1は、炉底2が一方が高く他方が低くなるように傾斜して設けられている。このように構成するには、炉底2を構成する耐火レンガやSICキャスタブルの厚さを連続的に変化させることで可能である。そして、傾斜が低い方の炉側壁3には出湯口8が形成されている。
そして、山積み状に堆積した五酸化バナジウム堆積物Vhの斜面に火炎または熱風が当るように加熱器6が炉側壁3と炉蓋4を介して取付けられている。本実施形態では、加熱器6が2個取付けられており、五酸化バナジウム堆積物Vhの斜面の上方からと斜面に対向する側からの2方向から加熱できるようにしている。このように2方向から加熱すれば、溶融を効率的に行いうるが、1個の加熱器6で加熱するかは任意である。
前記第1実施形態では、排ガスダクト16は加熱器6に近い位置に設けたが、図11で実線図示するように、排ガスダクト16を加熱器6を設けた炉側壁3に対向する炉側壁3に接続してもよい。図示では排ガスダクト16を2本設けたが、本数は任意である。また、同図で鎖線図示するように、加熱器6に対向する炉側壁3aにつながる側方の炉側壁3bに排ガスダクト16を取付けてもよい。
上記各実施形態の溶融設備の利点をまとめると、つぎのとおりである。
(1)原料の五酸化バナジウムを水分含有状態または成形固化状態で溶融炉内に装入でき、かつ五酸化バナジウム堆積物Vhの表面を当て吹きで直接加熱するので、五酸化バナジウム堆積物Vhの表面が溶融物または焼結物で覆われるため、装入、溶融過程を通じて発塵することがない。このため、作業員の健康被害を防止できる。
(2)五酸化バナジウム堆積物Vhを溶融炉内で直接当て吹きして溶融させるものであり、炉内全体を高温にしなくてよい。このため、五酸化バナジウムの溶湯が炉壁に浸透して損傷することも抑制しやすく、同時に炉壁の損傷によるSiやAl等の不純物混入がなくなり五酸化バナジウム製品を高純度に維持できる。
(3)溶融炉1内の五酸化バナジウム堆積物Vhの中央部分から溶融させることができ、炉側壁に近い部分を溶融することが避けられるので、炉壁溶損の影響を小さくすることができる。
(4)溶湯が溜る部位に出湯口8があるので、出湯が短時間で行え、溶湯が炉壁に浸透して損傷することも抑制しやすく、同時に炉壁からの不純物混入がなくなり五酸化バナジウム製品を高純度に維持できる。
(5)五酸化バナジウム溶湯のうち上層部分を製品として取り出しつつ、底層部分を冷却して固化すれば、固化部分が炉底の保護層となるので炉壁の損傷を抑制できる。
(6)上記実施形態において、五酸化バナジウムVの堆積にウエットケーキをそのまま直投した場合は、投入前に乾燥工程を入れなくてよいので工程が簡略となる。また、ウエットケーキは水分を含んでいるので、投入時の発塵を抑制することができる。
(7)五酸化バナジウムVの堆積に、ウエットケーキから造粒した粒状物を投入したときは、堆積した粒状物の間に隙間ができるので、加熱時に堆積物の中まで予熱される。このため、溶融効率が高くなる。また、堆積物の水分蒸発・予備乾燥が早く進行し、炉内における溶解時間も短縮できる。
上記各実施形態では好ましい実施形態を挙げたが、本発明の本質を変更しない範囲で種々の実施形態が可能である。
たとえば、加熱器6は火炎や熱風を照射するもの以外でもよく、加熱器6の設置数も任意である。設置数が多い場合、加熱面積が広がり、溶融効率が高くなる。
溶融炉1の傾転機構も昇降機構や吊下げ式以外であっても、傾転さえできればどのような機構であってもよい。排ガスダクトの構造や設置場所も任意である。
(実施例1)
・炉側壁の内壁耐火材9aはSiCレンガであり、炉床面積は0.053m2である。
・加熱器6はLPGガスを用いたバーナー1基であり、この加熱器6が炉側壁3cの中央に1基備えられている。
・セルフコーティング層としての五酸化バナジウムの保護層は炉壁側にも炉床にも形成されていない。
(比較例1)
加熱器6を炉側壁3cの左端に1基備えた以外は、実施例1と同様である。
(実験要領)
実験要領は、つぎのとおりである。
・原料として、炉蓋4に形成したシュート5より五酸化バナジウムのウエットケーキを直投して、一山の堆積物を築いた。
・加熱器6により五酸化バナジウム堆積物Vhの斜面を加熱した。このとき炉床温度が200〜800℃の範囲で変化するように加熱量を加減調整した。
・炉床温度に対応するフレークSi品位を測定した。フレークSi品位とは五酸化バナジウムフレーク中の不純物珪素含有率であり、測定はICP発光分光分析法で行った。
Si品位が高いことは炉内壁SiCレンガの溶損進行を意味し、低いことは炉内壁SiCレンガの溶損抑制を意味する。
実験結果を図12に示す。図中の菱形の点は実施例1を示し、四角の点は比較例1を示す。
全体的な傾向としては、炉床温度が高くなるほど、フレーク中のSi品位が高くなっているので、炉床温度により五酸化バナジウムの溶損が進行することを意味している。そして、炉床温度が同じでも、側壁温度が高いと、そこから五酸化バナジウム溶損が進行していると見ることができる。
(比較例1)
比較例1では、炉壁に沿って熱風を循環させ炉壁温度が高い状況となっている。フレークSi品位は、図示のごとく高い数値となっている。これは炉側壁の左端に加熱器6を取付けた結果、炉壁温度が上昇したことが原因と考えられ、五酸化バナジウムによる溶損防止には高温を回避すべきことが分かる。
(実施例1)
実施例1では比較例1に比較してフレークSi品位を示す数値は低かった。これは、加熱位置が中央の方が五酸化バナジウム堆積物Vhに高温域が向けられ、炉壁温度が下がったためと考えられる。したがって、加熱器6の取付位置は、側壁中央が好ましく、五酸化バナジウムによる溶損防止には炉壁温度を低下させることが有効であることが分かる。
炉内温度が高くなるように加熱器6へのLPG量を上げ溶融炉1内への入熱を増やした場合は、実施例1も比較例1も製品フレークの不純物Si品位が上昇した。これは、入熱を増やしたため、反射炉の状態に少し近づいたためと考えられる(反射炉は加熱器による熱を炉壁に反射させて熔融すべき対象物を加熱する。従って炉壁温度は熔融物温度より常に高いという特徴を有す)。
このように、比較例1、実施例1とも、炉壁温度によってフレークSi品位が大きく異なることが見出された。したがって、バッチ処理で溶湯を溜める場合には、溶湯に接する側壁温度及び炉床温度が溶損進行に及ぼす影響が大きいと考えられるので、本発明が採用した炉壁構造による放熱や冷却ジャケット7による強制冷却、さらには五酸化バナジウム固化物によるセルフコーティングが有効であることが分かる。
実施例2は図10に示すような連続処理型式の溶融炉で行った。セルフコーティングとしての五酸化バナジウムの保護層は炉壁側にも炉床にも形成されていない。
炉側壁3が五酸化バナジウム堆積物Vhに覆われている状態を保ち、溶湯が滞留なく流出する連続式で運転し、炉床温度を500〜800℃の範囲で変化させてフレーク品位を測定した。結果を図13に示す。菱形の点は空冷なし、四角の点は冷却ジャケット7による空冷が弱、三角の点は空冷が強の場合を示す。
図示のごとく、フレークへの炉材Siの混入はほとんど見られなかった。これは溶湯が滞留無く流出し、耐火物が溶湯に接する機会がほとんどないため溶損が進行し難いこと、炉側壁が五酸化バナジウム堆積物Vhで覆われており、五酸化バナジウムの浸透がなかったためと考えられる。
さらに連続処理の効果として、熔体の炉内滞留時間が短く、かつ溶湯自体の温度も溶融直後であり熔融温度よりあまり上昇することが無いためバッチ処理の場合に比較して低くなり、炉材の影響がバッチ処理の場合よりも小さくなるという事もあり、加熱器の入熱を増やしても製品フレークの不純物Si品位が上昇しないことによる。したがって、連続処理では、加熱負荷を大きくして処理速度を上げることが可能と考えられる。要するに、五酸化バナジウム溶湯を溜めないで炉壁に接触させないようにした工夫が五酸化バナジウムによる溶損防止に効果的であることが分かる。
2 炉底
3 炉側壁
4 炉蓋
5 シュート
6 加熱器
7 冷却ジャケット
8 出湯口
11 傾転軸部
14 ジャッキ
16 排ガスダクト
20 フィーダ
Vh 五酸化バナウジウム堆積物
m 溶湯
Claims (12)
- 五酸化バナジウムの堆積物を収容することができる溶融炉と、
該溶融炉内に収容された五酸化バナジウムの堆積物の表面を直接加熱する加熱器とを備える
ことを特徴とする五酸化バナジウムの溶融設備。 - 前記加熱器は、前記溶融炉に投入された五酸化バナジウムの堆積物が山積み状態となってできた斜面を直接加熱できる位置に取付けられている
ことを特徴とする請求項1記載の五酸化バナジウムの溶融設備。 - 前記加熱器は、完全燃焼して生成された火炎を放射するバーナである
ことを特徴とする請求項1または2記載の五酸化バナジウムの溶融設備。 - 前記加熱器は、熱風炉で完全燃焼して生成された高温熱風を放射するノズルである
ことを特徴とする請求項1または2記載の五酸化バナジウムの溶融設備。 - 前記溶融炉は、炉底と炉側壁と炉蓋を有しており、該炉側壁の外周に冷却ジャケットを取付けており、該冷却ジャケットの取付高さは、溶融炉における溶湯溜りの高さに合わされている
ことを特徴とする請求項1記載の五酸化バナジウムの溶融設備。 - 前記溶融炉は、炉底と炉側壁と炉蓋を有しており、この炉底、炉側壁および炉蓋はいずれも内壁耐火材と外壁耐火材とこれらを保持する鉄皮とからなり、
前記内壁耐火材は炭化ケイ素を主材とする耐火材であり、前記外壁耐火材は伝熱性のある耐火材である
ことを特徴とする請求項1記載の五酸化バナジウムの溶融設備。 - 前記炉側壁のうち、前記冷却ジャケットの取付け部分は、内壁耐火材も外壁耐火材も炭化ケイ素を主材とする耐火材からなる
ことを特徴とする請求項5記載の五酸化バナジウムの溶融設備。 - 前記溶融炉は、五酸化バナジウムを炉内で1ヵ所に堆積するものである
ことを特徴とする請求項2または3記載の五酸化バナジウムの溶融設備。 - 前記溶融炉は、五酸化バナジウムを炉内で隣接する複数ヶ所に堆積するものである
ことを特徴とする請求項2または3記載の五酸化バナジウムの溶融設備。 - 前記溶融炉は、内部の高温ガスを排出する排ガスダクトを備えている
ことを特徴とする請求項2記載の五酸化バナジウムの溶融設備。 - 前記溶融炉は、五酸化バナジウムの堆積物が溶融した溶湯を取り出す出湯口と、溶湯が該出湯口に集まるように当該溶融炉を傾転させる傾転機構とを備える
ことを特徴とする請求項1記載の五酸化バナジウムの溶融設備。 - 前記溶融炉は、傾斜した炉底と傾斜が低い方の炉側壁に前記出湯口が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の五酸化バナジウムの溶融設備。
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