JP2012135320A - 生乳の脂肪酸の組成を変える方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生乳中の不飽和脂肪酸のレベルがβ−カゼイン変異型との間に相関がある、との関連において飽和脂肪酸のレベルを低減する方法を提供する。
【解決手段】生乳中の飽和脂肪酸−対−不飽和脂肪酸の比率、および生乳中のβ−カゼイン変異型との間に相関があるとの関連から、メスウシの生乳中に産生されるβ−カゼインの67番の位置にあるアミノ酸残基に基づいて、メスウシの遺伝子型および/または表現型を決定し、“低脂肪”牛乳という代替品の製造する。
【選択図】なし
【解決手段】生乳中の飽和脂肪酸−対−不飽和脂肪酸の比率、および生乳中のβ−カゼイン変異型との間に相関があるとの関連から、メスウシの生乳中に産生されるβ−カゼインの67番の位置にあるアミノ酸残基に基づいて、メスウシの遺伝子型および/または表現型を決定し、“低脂肪”牛乳という代替品の製造する。
【選択図】なし
Description
(技術分野)
本発明は生乳において、不飽和脂肪酸のレベルとの関連において飽和脂肪酸のレベルを低減する方法に関する。特に本発明はメスウシの生乳中に産生されるβ−カゼインの67番に位置するアミノ酸残基に基づいて、メスウシの遺伝子型および/または表現型を決定
することに関する。
本発明は生乳において、不飽和脂肪酸のレベルとの関連において飽和脂肪酸のレベルを低減する方法に関する。特に本発明はメスウシの生乳中に産生されるβ−カゼインの67番に位置するアミノ酸残基に基づいて、メスウシの遺伝子型および/または表現型を決定
することに関する。
(背景)
食事からの飽和脂肪酸摂取は、特に母集団の栄養状態のよい国々において、ヒトの心疾患の主要なリスク因子であることが知られている。動物製品、例えば乳製品(特に生乳)が、ヒトの食事からの摂取に主に寄与している。生乳中に見出される飽和脂肪酸、特に18より少ない炭素原子の鎖をもつ飽和脂肪酸のレベルが、冠動脈心疾患の1つのリスク因子であることは一般に認められている。反対に、不飽和脂肪酸は有益であると考えられている。このため、動物ベースの製品とは反対に植物由来の油の消費がより好まれてきた。
食事からの飽和脂肪酸摂取は、特に母集団の栄養状態のよい国々において、ヒトの心疾患の主要なリスク因子であることが知られている。動物製品、例えば乳製品(特に生乳)が、ヒトの食事からの摂取に主に寄与している。生乳中に見出される飽和脂肪酸、特に18より少ない炭素原子の鎖をもつ飽和脂肪酸のレベルが、冠動脈心疾患の1つのリスク因子であることは一般に認められている。反対に、不飽和脂肪酸は有益であると考えられている。このため、動物ベースの製品とは反対に植物由来の油の消費がより好まれてきた。
医学界でも、アテローム発生性であると考えられている飽和脂肪酸C:14:0が多量に存在することから、生乳中に見出される脂肪の消費が懸念されている。乳製品製造業は、化学的分離および抽出技術を用いての、 “低脂肪”牛乳という代替品の製造すること
で、部分的には答えてきた。
で、部分的には答えてきた。
脂肪に加えて、β−カゼインタンパク質のA1変異型を含む生乳中の特定のタンパク質
成分も、健康のリスク因子である。ヒトによるβ−カゼインタンパク質のA1の消費が、
ある種の疾患、特に糖尿病 (Elliot et al. 1999 Diabetologia 42: 292-6; Wasmuth et al. 1999 Diabetologia 42 (Suppl.1): A88 Proceedings of the Kongress der Europaischen Diabetesgesellschaft vom 28. -30.09.1999 in Brussels/Belgium)および冠動脈心疾患(McLachlan, C.N., Med. Hypotheses 56(2): 262-72,2001) のより高い発症率にリンクするといういくつかの報告がある。
メスウシの生乳中に産生される特定のβ−カゼイン変異型(1つまたは複数)を同定することにより、同メスウシの表現型を決定することに加えて、特異的な一塩基多型(SNP)について遺伝子型を決定して、メスウシがその生乳中にどのβ−カゼイン変異型(1つまたは複数)を産生するかを決定することができることはよく知られている。この遺伝子型を決定する方法に基づいてメスウシを選択し、β−カゼインA1変異型を含まない、そ
して好ましくはβ−カゼインA2変異型のみを含む生乳を産生する搾乳用の集団を得る方
法は、PCT/NZ96/00039(WO 96/36239として公開されている)の
主題である。
成分も、健康のリスク因子である。ヒトによるβ−カゼインタンパク質のA1の消費が、
ある種の疾患、特に糖尿病 (Elliot et al. 1999 Diabetologia 42: 292-6; Wasmuth et al. 1999 Diabetologia 42 (Suppl.1): A88 Proceedings of the Kongress der Europaischen Diabetesgesellschaft vom 28. -30.09.1999 in Brussels/Belgium)および冠動脈心疾患(McLachlan, C.N., Med. Hypotheses 56(2): 262-72,2001) のより高い発症率にリンクするといういくつかの報告がある。
メスウシの生乳中に産生される特定のβ−カゼイン変異型(1つまたは複数)を同定することにより、同メスウシの表現型を決定することに加えて、特異的な一塩基多型(SNP)について遺伝子型を決定して、メスウシがその生乳中にどのβ−カゼイン変異型(1つまたは複数)を産生するかを決定することができることはよく知られている。この遺伝子型を決定する方法に基づいてメスウシを選択し、β−カゼインA1変異型を含まない、そ
して好ましくはβ−カゼインA2変異型のみを含む生乳を産生する搾乳用の集団を得る方
法は、PCT/NZ96/00039(WO 96/36239として公開されている)の
主題である。
出願者は今回、生乳中の飽和脂肪酸−対−不飽和脂肪酸の比率、および生乳中のβ−カゼイン変異型との間に相関があることを発見した。動物製品の脂肪酸の組成を変える公知の方法はあるが、これらの方法は典型的には化学的抽出、特定の食餌および管理システム、ならびに生乳中の特異的な脂肪酸のレベルに関する定量的な遺伝子の選択を含む。いずれの方法もコストを要し、一般に非効率的である。
したがって、不飽和脂肪酸との関連においてレベルの低減した飽和脂肪酸を有する生乳、もしくはその生乳から得られる製品を提供すること、または少なくとも有用な代替品を一般消費者に提供することが、本発明の1つの目的である。
(発明の提示)
本発明の第1の側面において、ウシの生乳における不飽和脂肪酸のレベルとの関連において飽和脂肪酸のレベルを低減する方法を以下により提供する:
(a)ある集団が、67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するメスウシ、および67番の位置にヒスチジンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するメスウシを包含する場合において、67番の位置にプロリン残基を有するβ−カゼインをコードするDNAの存在について、該集団の各メスウシの遺伝子の素材を検査することにより、または67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインの存在について、該集団の各メスウシにより産生される生乳(またはその生乳から製造される製品)を検査することにより、該集団のどのメスウシが67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するのかを決定すること;
(b)67番の位置にプロリン残基を有するβ−カゼインをコードするDNAを有するメスウシ、または67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するメスウシを選択すること;および
(c)選択されたメスウシから搾乳し、該集団から得られる生乳と比較して、不飽和脂肪酸のレベルとの関連においてレベルの低減した飽和脂肪酸を有する生乳を得ること。
本発明の第1の側面において、ウシの生乳における不飽和脂肪酸のレベルとの関連において飽和脂肪酸のレベルを低減する方法を以下により提供する:
(a)ある集団が、67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するメスウシ、および67番の位置にヒスチジンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するメスウシを包含する場合において、67番の位置にプロリン残基を有するβ−カゼインをコードするDNAの存在について、該集団の各メスウシの遺伝子の素材を検査することにより、または67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインの存在について、該集団の各メスウシにより産生される生乳(またはその生乳から製造される製品)を検査することにより、該集団のどのメスウシが67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するのかを決定すること;
(b)67番の位置にプロリン残基を有するβ−カゼインをコードするDNAを有するメスウシ、または67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するメスウシを選択すること;および
(c)選択されたメスウシから搾乳し、該集団から得られる生乳と比較して、不飽和脂肪酸のレベルとの関連においてレベルの低減した飽和脂肪酸を有する生乳を得ること。
67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインは、β−カゼインA2、A3、D、EおよびFの1つまたはそれより多くを含むことが好ましい。67番の位置にヒスチジンを有するβ−カゼインは、β−カゼインA1、BおよびCの1つまたはそれより多くを含むこと
もまた好ましい。
もまた好ましい。
本発明の好ましい態様において、67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインはβ−カゼインA2であり、67番の位置にヒスチジンを有するβ−カゼインはβ−カゼインA1である。
メスウシの該集団により産生される生乳において、不飽和脂肪酸のレベルとの関連において飽和脂肪酸のレベルを低減することに加えて、各炭素鎖中に6から14の炭素原子を有する短鎖および中鎖の飽和脂肪酸(C6:0−C14:0)のレベルもまた低減することは、さらに好ましい。
本発明のさらに好ましい態様において、該集団のどのメスウシが67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するかの決定は、67番の位置にプロリン残基を有するβ−カゼインをコードするDNAの存在についてメスウシの遺伝子の素材を検査することによる。これに代わる態様において、該集団のどのメスウシが67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するかの決定は、67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインの存在についてメスウシにより産生される生乳(またはその生乳から製造される製品)を検査することによる。
メスウシの遺伝子の素材は有核細胞を含有する、または含有していたいかなる組織でもよいが、遺伝子の素材は好ましくは血液、体毛、または生乳から得る。
本発明の第2の側面において、本発明の第1の側面の方法により得られる生乳を提供する。
本発明の第2の側面において、本発明の第1の側面の方法により得られる生乳を提供する。
本発明の第3の側面において、本発明の第1の側面の方法により得られる生乳から調製される乳製品を提供する。
本発明の第4の側面において、67番の位置にプロリンを有する一定量のβ−カゼインを食品に加えることにより、該食品中の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の比率を変える方
法を提供する。
本発明の第4の側面において、67番の位置にプロリンを有する一定量のβ−カゼインを食品に加えることにより、該食品中の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の比率を変える方
法を提供する。
好ましくは飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の比率は、該食品中の飽和脂肪酸のレベルを低減することにより変える。
好ましくは該食品は、生乳または生乳から調製される乳製品である。本発明の第1の側面の方法により得られる生乳(または生乳からの抽出物)を加えることにより、67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを該食品に加えることもまた好ましい。
好ましくは該食品は、生乳または生乳から調製される乳製品である。本発明の第1の側面の方法により得られる生乳(または生乳からの抽出物)を加えることにより、67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを該食品に加えることもまた好ましい。
(発明の詳細な説明)
動物の遺伝的性質が、生産レベルおよび製品の品質、ならびに健康、環境、および動物の福祉の問題に、かなりの影響を及ぼすことはよく知られている。遺伝子検査を用いて動物の表現型を決定する能力は、有益な特徴を持つ動物および動物の製品の迅速な同定を達成するための、そして強化された生産および/または製品の品質を有する動物の群を形成
するための、有益な手段である。経済的利益のある動物または動物の製品の特徴に関連する遺伝的差異に基づいて、動物を分類することができる。
動物の遺伝的性質が、生産レベルおよび製品の品質、ならびに健康、環境、および動物の福祉の問題に、かなりの影響を及ぼすことはよく知られている。遺伝子検査を用いて動物の表現型を決定する能力は、有益な特徴を持つ動物および動物の製品の迅速な同定を達成するための、そして強化された生産および/または製品の品質を有する動物の群を形成
するための、有益な手段である。経済的利益のある動物または動物の製品の特徴に関連する遺伝的差異に基づいて、動物を分類することができる。
動物の特定の身体的特徴の原因となる遺伝子(またはその遺伝子の変異型)は、一部の場合には、一塩基多型(SNP)により同定可能としてよい。SNPは、ある動物のゲノム中のある位置の1つのDNA配列が、たった1つのヌクレオチドのために別の動物のゲノム中の同位置のDNA配列とは異なっているDNA配列である。これと同じような小さな差異であっても、1頭の動物が特定の身体的特徴を示すのに対して、別の動物はそれを示さないことを意味し得る。
生乳のカゼイン含有量と脂肪含有量との間の関連性が同定されたが、これらはその相関のサイズおよび方向付けにおいて一定しなかった。したがってこの結果は決定的とはいえない。Bovenhius および Weller (Genetics; 137(10): 267-80, 1994)は、この関連性は
それらが存在する場合、畜牛の同一染色体(6番染色体)上のfat QTL との連鎖(1頭の雄親の系統において)または連鎖不平衡(1つの母集団において)によると結論した。公開されたデータからの全体としての結論は、生乳中の脂肪総量はβ−カゼイン遺伝子型には関係しないこと、およびβ−カゼインがヒトの健康に及ぼすかもしれない1つまたは複数の影響は、脂肪摂取総量には関係しないことである。しかし本出願人は今回、畜牛の6番染色体上のβ−カゼイン遺伝子の遺伝子型、およびメスウシの生乳の脂肪酸組成との間に、予想外の関連性を同定した。
それらが存在する場合、畜牛の同一染色体(6番染色体)上のfat QTL との連鎖(1頭の雄親の系統において)または連鎖不平衡(1つの母集団において)によると結論した。公開されたデータからの全体としての結論は、生乳中の脂肪総量はβ−カゼイン遺伝子型には関係しないこと、およびβ−カゼインがヒトの健康に及ぼすかもしれない1つまたは複数の影響は、脂肪摂取総量には関係しないことである。しかし本出願人は今回、畜牛の6番染色体上のβ−カゼイン遺伝子の遺伝子型、およびメスウシの生乳の脂肪酸組成との間に、予想外の関連性を同定した。
β−カゼインA1を含有する生乳(A1生乳)は、β−カゼインA1を含有しない生乳(A2生乳)と比較して、脂肪の全体としての比率は類似するという先の所見を、本出願人は確認した。驚くことに、そして以前の所見とは矛盾して、A1生乳はA2生乳と比較して、より高い比率の飽和脂肪酸およびより低い比率の不飽和脂肪酸を有することを、本出願人は発見した。また驚くことには、C6、C8、C10、C12およびC14の脂肪酸のレベルが、β−カゼインA2のホモ接合体のメスウシからの生乳では低減する、という
所見が認められた。この有意な所見は、実質的にβ−カゼインA1を含まない生乳はまた
、より低レベルの飽和脂肪酸および中鎖脂肪酸(C6からC14)、ならびにより高レベルの不飽和脂肪酸を有する乳脂肪をも産生することになることを示す。したがってこの生乳は、飽和脂肪酸の高摂取に伴う疾患のリスク、例えばアテローム硬化症、肥満、冠動脈心疾患、および糖尿病のリスクを低減する健康への有益性を有する。
所見が認められた。この有意な所見は、実質的にβ−カゼインA1を含まない生乳はまた
、より低レベルの飽和脂肪酸および中鎖脂肪酸(C6からC14)、ならびにより高レベルの不飽和脂肪酸を有する乳脂肪をも産生することになることを示す。したがってこの生乳は、飽和脂肪酸の高摂取に伴う疾患のリスク、例えばアテローム硬化症、肥満、冠動脈心疾患、および糖尿病のリスクを低減する健康への有益性を有する。
典型的にはメスウシはその生乳中にβ−カゼインを産生する。しかしA1、A2、A3、
B、C、D、EおよびFを含む、様々なβ−カゼイン変異型が存在する。これらのタンパク質間の差異は、β−カゼイン遺伝子中の配列の変異により決定される。例えば1つの差異は、A2、A3、D、EおよびF変異型は67番の位置にプロリン残基を有するのに対し
、A1、BおよびC変異型は67番の位置にヒスチジン残基を有することである。この差
異は、β−カゼイン遺伝子をコードする領域の200番の位置での、ヌクレオチドアデニンのヌクレオチドシトシンによる置換により決定される。メスウシのβ−カゼイン変異型の表現型は、これらの変異型のタイプを識別する要因となるSNPの遺伝子型を決定することにより、間接的に決定することができる。
B、C、D、EおよびFを含む、様々なβ−カゼイン変異型が存在する。これらのタンパク質間の差異は、β−カゼイン遺伝子中の配列の変異により決定される。例えば1つの差異は、A2、A3、D、EおよびF変異型は67番の位置にプロリン残基を有するのに対し
、A1、BおよびC変異型は67番の位置にヒスチジン残基を有することである。この差
異は、β−カゼイン遺伝子をコードする領域の200番の位置での、ヌクレオチドアデニンのヌクレオチドシトシンによる置換により決定される。メスウシのβ−カゼイン変異型の表現型は、これらの変異型のタイプを識別する要因となるSNPの遺伝子型を決定することにより、間接的に決定することができる。
β−カゼイン変異型のタイプ、またはβ−カゼイン遺伝子中の遺伝子の変異に基づいて動物を選択することで、その動物の生乳の脂肪酸の組成において有意な差異をもつ動物の群を同定することができることを、本出願人は発見した。例えば、β−カゼイン遺伝子をコードする領域の200番の位置がアデニンヌクレオチドのホモ接合体(A1)である動物からの生乳は、同位置がアデニンおよびシトシンのヌクレオチドのヘテロ接合体(A1/A2)である動物からの生乳とは脂肪酸の組成において異なり、そして同位置がシトシ
ンのホモ接合体(A2)である動物からの生乳ともやはり異なる。
ンのホモ接合体(A2)である動物からの生乳ともやはり異なる。
より具体的にはβ−カゼイン遺伝子の200番の位置のアデニンが、飽和脂肪酸C6:0、C8:0、C10:0、C12:0およびC14:0のレベルを増加させ、匹敵する量で不飽和脂肪酸C18:1を減少させる。集団、集団内の一群、血統、年齢2−8+、搾乳状態の日数、メチル化群、および雄親の効果を考慮しない場合、β−カゼイン遺伝子型は、動物間のこれらの特異的な脂肪酸プロフィールにおける変化の15−20%の原因となる。
β−カゼインの67番の位置のヒスチジンの存在は、酵素によるβ−カソモルフィン−7の形成を可能にする。β−カソモルフィン−7は、β−カゼインA1、BおよびCから
のみ形成される7つのアミノ酸のペプチドである。カソモルフィンペプチドは、オピオイドとして作用することが知られている。Lin et al. (1998, Peptides 19(2): 325-31)に
よるデータは、β−カソモルフィン−7が食事からの脂肪の摂取を調節しているかもしれないことを示唆している。β−カソモルフィンがラットにおいて食餌の脂肪の摂取を刺激するのに対して、エンテロスタチンは摂取を阻害する。加えてチロシル末端残基を含むカゼイン加水分解物由来のペプチド(例えばβ−カソモルフィン−7)は、ヒトのLDL(低密度リポタンパク質)のペルオキシダーゼ依存性の酸化を促進することが発見された。したがってβ−カゼインA1についての現在の理解は、ヒトの健康に有害な因子とのその
関係という点でカゼインの作用に関し、そして、摂取したヒトの脂肪の代謝においてはカゼイン由来のペプチドの作用に関するが、異なるβ−カゼイン遺伝子型の動物からの生乳の脂肪組成における差異には触れていない。
のみ形成される7つのアミノ酸のペプチドである。カソモルフィンペプチドは、オピオイドとして作用することが知られている。Lin et al. (1998, Peptides 19(2): 325-31)に
よるデータは、β−カソモルフィン−7が食事からの脂肪の摂取を調節しているかもしれないことを示唆している。β−カソモルフィンがラットにおいて食餌の脂肪の摂取を刺激するのに対して、エンテロスタチンは摂取を阻害する。加えてチロシル末端残基を含むカゼイン加水分解物由来のペプチド(例えばβ−カソモルフィン−7)は、ヒトのLDL(低密度リポタンパク質)のペルオキシダーゼ依存性の酸化を促進することが発見された。したがってβ−カゼインA1についての現在の理解は、ヒトの健康に有害な因子とのその
関係という点でカゼインの作用に関し、そして、摂取したヒトの脂肪の代謝においてはカゼイン由来のペプチドの作用に関するが、異なるβ−カゼイン遺伝子型の動物からの生乳の脂肪組成における差異には触れていない。
β−カゼインが生乳の脂肪酸の組成に影響を及ぼすメカニズムは、遺伝子の連結によるものではないようである。というのは複数の雄親にわたって観察されたこの効果のサイズおよびコンシスタンシーのためである。本発明を何ら限定するものではないが、本発見は哺乳類の組織中の脂質の生体内合成におけるβ−カゼインの直接的な影響に関する、と推測される。あるいは本発見は、生乳中のカゼインの脂質との相互作用の直接的な結果であってもよい。後者が正しければ、製品の脂肪酸プロフィールを変えることが可能であってもよい。したがって規定の加工条件下の製品に、選択されたカゼイン変異型のタイプの動物から得られるβ−カゼイン(例えばβ−カゼインA1を含まない)を加えることで、そ
の製品の脂肪酸プロフィールを有益に変えることにもなる。
の製品の脂肪酸プロフィールを有益に変えることにもなる。
β−カゼインに関する検査を使用して、搾乳用の集団に含める動物を選択することができる、または同検査を使用して、搾乳用の集団に含める動物の後代を育種する人工育種またはクローニングのための、雄親、雌親、もしくは組織のドナーとして使用する動物を選択することができる。このような方法で、その生乳のタンパク質分画にβ−カゼインA1
タンパク質を含まない(または唯一のβ−カゼインの存在がβ−カゼインA2である)、
そしてその生乳の脂肪分画において特定の飽和脂肪酸のレベルが低減し特定の不飽和脂肪酸のレベルが増加している生乳を、産生する搾乳用メスウシの集団を形成することができる。このような遺伝子型決定に基づいてメスウシを選択し、β−カゼインA1変異型を含
まない、そして好ましくはβ−カゼインA2変異型のみを含む生乳を産生することになる
搾乳集団を形成する方法は、PCT/NZ96/00039(WO 96/36239とし
て公開されている)の主題である。
タンパク質を含まない(または唯一のβ−カゼインの存在がβ−カゼインA2である)、
そしてその生乳の脂肪分画において特定の飽和脂肪酸のレベルが低減し特定の不飽和脂肪酸のレベルが増加している生乳を、産生する搾乳用メスウシの集団を形成することができる。このような遺伝子型決定に基づいてメスウシを選択し、β−カゼインA1変異型を含
まない、そして好ましくはβ−カゼインA2変異型のみを含む生乳を産生することになる
搾乳集団を形成する方法は、PCT/NZ96/00039(WO 96/36239とし
て公開されている)の主題である。
本発明の付加的な特徴は、一度特定の遺伝子型を持つ動物が選択されて、それらから生乳が産生されれば、その生乳の出所、またはその他の製品、例えば粉乳および加工乳製品が、選択された動物から産生されているものとして証明することができる。このことは、このような乳製品の脂肪酸の組成を決定することにより達成することができる。消費者はしたがって、その生乳が本当に所望の遺伝子型の動物に由来することを確信することができる。
本発明の生乳の利点は以下に多数挙げられる:
(1)β−カゼインA1タンパク質が存在せずβ−カゼインA2のみが存在すること
で、冠動脈心疾患およびI型糖尿病のリスクをより低下させる
(2)不飽和脂肪酸で飽和脂肪酸を置き換えることで、冠動脈心疾患、肥満およびそ
の他の疾患のリスクをより低下させる
(3)アテローム発生性であると考えられているC14:0の消費が低減する。
(1)β−カゼインA1タンパク質が存在せずβ−カゼインA2のみが存在すること
で、冠動脈心疾患およびI型糖尿病のリスクをより低下させる
(2)不飽和脂肪酸で飽和脂肪酸を置き換えることで、冠動脈心疾患、肥満およびそ
の他の疾患のリスクをより低下させる
(3)アテローム発生性であると考えられているC14:0の消費が低減する。
カゼインが生乳の脂肪酸の組成に影響を与えるメカニズムは明らかではないが、それがカゼイン由来のカソモルフィンペプチドの形成を通して仲介される可能性はある。このこととヒトによるβ−カゼインA1の消費の影響との間にメカニズム的な関係があるかもし
れない。しかし生乳の脂肪酸プロフィールへのカゼインの遺伝子型の直接的影響は、摂取したヒトの代謝におけるカゼインおよびカゼイン代謝物の直接的影響とは全く別の有用性を有する。β−カゼイン(または特定の変異型)が生乳の脂肪酸の組成を直接修飾し得る、直接的な影響もまたあるかもしれない。
れない。しかし生乳の脂肪酸プロフィールへのカゼインの遺伝子型の直接的影響は、摂取したヒトの代謝におけるカゼインおよびカゼイン代謝物の直接的影響とは全く別の有用性を有する。β−カゼイン(または特定の変異型)が生乳の脂肪酸の組成を直接修飾し得る、直接的な影響もまたあるかもしれない。
(実施例)
β−カゼイン遺伝子の200番のヌクレオチドがヘテロ接合体のA/Cである6頭の雄
親に由来する、1114頭の産子由来の生乳からDNAを抽出し、脂肪酸の組成を決定した。
β−カゼイン遺伝子の200番のヌクレオチドがヘテロ接合体のA/Cである6頭の雄
親に由来する、1114頭の産子由来の生乳からDNAを抽出し、脂肪酸の組成を決定した。
DNAは以下の方法で生乳から抽出した。生乳は反転により完全に混合し、1.0mlをピペットでとり、1.5mlのマイクロ遠心チューブに入れた。このチューブを8,000rpmで10分間遠心し、上清(粗DNAを含む)の100μlアリコートを各サンプルからピペットでとり、新しい1.5mlチューブに入れた。この粗DNA抽出物は−20℃で凍結保存し、さらに精製せずに遺伝子型決定用として1−5μlを使用した。
使用した遺伝子型を決定する方法は、先にPCT/NZ96/00039(WO 96/
36239として公開されている)に詳細に記載されている。
脂肪酸分析用サンプルは15,000rpmで15分間遠心した。液体の上層のアリコートを各サンプルから取り出した。この脂質サンプルを60.0℃まで加熱し、溶けた脂質を取り出して凍結保存した。その後サンプルをメチル化し、ガスクロマトグラフィーで分析した。クロマトグラフのピーク面積を積分して、各脂肪酸のレベルを定量した。各脂肪酸の同定は、各ピークの保持時間を公知の基準値と比較することにより決定した。
36239として公開されている)に詳細に記載されている。
脂肪酸分析用サンプルは15,000rpmで15分間遠心した。液体の上層のアリコートを各サンプルから取り出した。この脂質サンプルを60.0℃まで加熱し、溶けた脂質を取り出して凍結保存した。その後サンプルをメチル化し、ガスクロマトグラフィーで分析した。クロマトグラフのピーク面積を積分して、各脂肪酸のレベルを定量した。各脂肪酸の同定は、各ピークの保持時間を公知の基準値と比較することにより決定した。
分析したサンプルから、200番の位置がCC(A2)、AC(A1/A2)、または
AA(A1)のいずれであるか動物の検査を行った。遺伝子型間の差異は、脂肪酸の組成に影響を与える可能性のあるその他の因子に関して生データを調整する、一般化線形モデルを使用して比較した。前もっての調整は以下の項目:集団、集団内の一群、血統、年齢2−8+、搾乳状態の日数、集団内のメチル化群について行った。最終的に雄親、遺伝子型、および遺伝子型による雄親との相互作用の項目をフィットさせた。
AA(A1)のいずれであるか動物の検査を行った。遺伝子型間の差異は、脂肪酸の組成に影響を与える可能性のあるその他の因子に関して生データを調整する、一般化線形モデルを使用して比較した。前もっての調整は以下の項目:集団、集団内の一群、血統、年齢2−8+、搾乳状態の日数、集団内のメチル化群について行った。最終的に雄親、遺伝子型、および遺伝子型による雄親との相互作用の項目をフィットさせた。
この研究から得られた結果を表1に提供し、そしてこの結果はA2遺伝子型が脂肪酸の組成に有意な影響を有していたことを示している。統計的有意性のレベルは個々の脂肪酸間で様々である(*=p<0.05、**=p<0.1、***=p<0.001)。A1に比較して、A2遺伝子型を持つ動物からの生乳は、長鎖不飽和脂肪酸(C18:1)を有意により高い比率で、および(C6:0−C14:0)の範囲の飽和中鎖脂肪酸をより低い比率で有していた;それに対してA1/A2の個体はこれらの値の中間の値であった。
C18:1の総計の比率として、A2由来の生乳はA1由来の生乳より約3%多いC18:1を有していた。C18:1は乳脂肪の約15%を構成しており、したがって全体への影響は総乳脂肪の比率として、約0.5%多いC18:1となる。飽和脂肪酸の比率の低減は、不飽和脂肪酸の増加と類似していた。モデルにより集団、集団内の一群、血統、年齢2−8+、搾乳状態の日数、メチル化群、および雄親の影響を除外すると、β−カゼイン遺伝子型は、動物間のこれらの特異的な脂肪酸の組成における変化の15−20%の原因となっていた。
本発明を実施例の方法により述べたが、本発明の範疇から離れずに変更および修飾を行ってもよいことは、理解されなければならない。さらに特異的な特徴に対する公知の均等物があれば、このような均等物を本明細書に特異的に言及したものとして援用する。
(産業上の利用可能性)
不飽和脂肪酸と比較して低レベルの飽和脂肪酸を有する生乳は、ある種の疾患および障害の回避に有用である。食事からの脂肪酸の摂取は、心疾患における主要なリスク因子であり、食事からの脂肪酸摂取の多くは生乳および乳製品の消費による。67番の位置にヒスチジンよりむしろプロリンを有するβ−カゼイン変異型を産生するメスウシの能力に基づいて、遺伝子型または表現型を決定したメスウシのみを搾乳することにより、不飽和脂肪酸との関連において飽和脂肪酸が低レベルの生乳を得る能力は、ヒトの健康に有益な生
乳を産生させる有用な方法を提示する。
不飽和脂肪酸と比較して低レベルの飽和脂肪酸を有する生乳は、ある種の疾患および障害の回避に有用である。食事からの脂肪酸の摂取は、心疾患における主要なリスク因子であり、食事からの脂肪酸摂取の多くは生乳および乳製品の消費による。67番の位置にヒスチジンよりむしろプロリンを有するβ−カゼイン変異型を産生するメスウシの能力に基づいて、遺伝子型または表現型を決定したメスウシのみを搾乳することにより、不飽和脂肪酸との関連において飽和脂肪酸が低レベルの生乳を得る能力は、ヒトの健康に有益な生
乳を産生させる有用な方法を提示する。
Claims (16)
- 以下の方法:すなわち
(a)ある集団が、67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するメスウシ、および67番の位置にヒスチジンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するメスウシを包含する場合において、67番の位置にプロリン残基を有するβ−カゼインをコードするDNAの存在について、該集団の各メスウシの遺伝子の素材を検査することにより、または67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインの存在について、該集団の各メスウシにより産生される生乳(またはその生乳から製造される製品)を検査することにより、該集団のどのメスウシが67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するのかを決定すること;
(b)67番の位置にプロリン残基を有するβ−カゼインをコードするDNAを有するメスウシ、または67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するメスウシ、を選択すること;および
(c)選択されたメスウシから搾乳し、該集団から得られる生乳と比較して、不飽和脂肪酸のレベルとの関連においてレベルの低減した飽和脂肪酸を有する生乳を得ること;
によりウシの生乳において、不飽和脂肪酸のレベルとの関連において飽和脂肪酸のレベルを低減する方法。 - 67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインが、β−カゼインA2、A3、D、EおよびFの1つまたはそれより多くを含む、請求項1に記載の方法。
- 67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインがβ−カゼインA2である、請求項2に記
載の方法。 - 67番の位置にヒスチジンを有するβ−カゼインが、β−カゼインA1、BおよびCの1
つまたはそれより多くを含む、請求項1に記載の方法。 - 67番の位置にヒスチジンを有するβ−カゼインが、β−カゼインA1である、請求項4
に記載の方法。 - 集団から得られる生乳と比較して、各炭素鎖中に6から14の炭素原子を有する短鎖および中鎖の飽和脂肪酸(C6:0−C14:0)のレベルを低減する、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
- 集団のどのメスウシが67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するかの決定が、67番の位置にプロリン残基を有するβ−カゼインをコードするDNAの存在について、メスウシの遺伝子の素材を検査することによる、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
- 集団のどのメスウシが67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを含有する生乳を産生するかの決定が、67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインの存在について、メスウシにより産生される生乳(またはその生乳から製造される製品)を検査することによる、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
- メスウシの遺伝子の素材が、有核細胞を含有する、または含有していたいかなる組織でもよい、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
- 遺伝子の素材を血液、体毛、または生乳から得る、請求項9に記載の方法。
- 請求項1から10のいずれか1項に記載の方法により得られる生乳。
- 請求項1から10のいずれか1項に記載の方法により得られる生乳から調製される乳製品。
- 食品に、67番の位置にプロリンを有する一定量のβ−カゼインを加えることにより、該食品中の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の比率を変える方法。
- 飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の比率を、食品中の飽和脂肪酸のレベルを低減することにより変える、請求項13に記載の方法。
- 食品が生乳または生乳から調製された乳製品である、請求項13または請求項14に記載の方法。
- 請求項1から10のいずれか1項の方法により得られる生乳(または生乳からの抽出物)を加えることにより、67番の位置にプロリンを有するβ−カゼインを食品に加える、請求項13から15のいずれか1項に記載の方法。
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