図1は本実施の形態に係る通信システム100の構成を示す図である。本実施の形態に係る通信システム100は、例えば、複信方式としてTDD(Time Division Duplexing)方式が採用されたLTEであって、複数の基地局1を備えている。各基地局1は、複数の通信端末2と通信を行う。LTEでは、下り通信ではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が使用され、上り通信ではSC−FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access)方式が使用される。したがって、基地局1から通信端末2への送信にはOFDMA方式が使用され、通信端末2から基地局1への送信にはSC−FDMA方式が使用される。OFDMA方式では、互いに直交する複数のサブキャリアが合成されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号が使用される。
図1に示されるように、各基地局1のサービスエリア10は、周辺基地局1のサービスエリア10と部分的に重なっている。複数の基地局1は、図示しないネットワークに接続されており、当該ネットワークを通じて互いに通信可能となっている。また、ネットワークには図示しないサーバ装置が接続されており、各基地局1は、ネットワークを通じてサーバ装置と通信可能となっている。
<基地局の構成>
図2は各基地局1の構成を示す図である。基地局1は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される無線リソースを複数の通信端末2のそれぞれに個別に割り当てることによって、当該複数の通信端末2と同時に通信することが可能となっている。
図2に示されるように、基地局1は、無線処理部11と、当該無線処理部11を制御する制御部12とを備えている。無線処理部11は、複数のアンテナ110aから成るアレイアンテナ110を有している。無線処理部11は、アレイアンテナ110で受信される複数の受信信号のそれぞれに対して増幅処理、ダウンコンバート及びA/D変換処理等を行って、ベースバンドの複数の受信信号を生成して出力する。
また、無線処理部11は、制御部12で生成されるベースバンドの複数の送信信号のそれぞれに対して、D/A変換処理、アップコンバート及び増幅処理等を行って、搬送帯域の複数の送信信号を生成する。そして、無線処理部11は、生成した搬送帯域の複数の送信信号を、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aにそれぞれ入力する。これにより、各アンテナ110aから送信信号が無線送信される。
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)及びメモリなどで構成されている。制御部12は、機能ブロックとして、送信処理部120、受信処理部121、無線リソース割り当て部122、判定部123及び変動測定部124を備えている。
送信処理部120は、送信データを生成し、当該送信データを含むベースバンドの送信信号を生成する。この送信信号は、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aの数だけ生成される。送信処理部120で生成された複数の送信信号は、無線処理部11に入力される。
ここで、LTEにおいては、基地局の送信モードとして、“Transmission Mode 1”から“Transmission Mode 8”までの8種類のモードが規定されている。そのうちの“Transmission Mode 7”においては、2つの送信方式を使用することが可能となっている。1つ目の送信方式は、アダプティブアレイアンテナ方式を用いて通信端末に信号を送信する送信方式、つまり、通信端末に信号を送信する際に、当該通信端末からの既知信号に基づいて複数のアンテナでの送信指向性を制御して、当該送信指向性に関するビームを当該通信端末に向ける送信方式である。2つ目の送信方式は、複数のアンテナを利用した、開ループの送信ダイバーシティを用いて通信端末に信号を送信する送信方式である。
1つ目の送信方式は、閉ループ型の方式であるため、1つ目の送信方式が機能するためには、通信端末が基地局に既知信号を送信する際の上り方向の電波伝搬特性と、基地局が当該既知信号に基づいて送信指向性を制御して通信端末に信号を送信する際の下り方向の電波伝搬特性との間にあまり差が無いことが必要とされる。一方で、2つ目の送信方式は、開ループ型の方式であるため、2つ目の送信方式が機能するか否かは、上り方向の電波伝搬特性と下り方向の電波伝搬特性との間の差異は関係しないことになる。LTEにおいては、2つ目の送信方式には、SFBC(Space-Frequency Block Coding、空間周波数ブロック符号化)を用いた送信ダイバーシティが使用される。
以後、1つ目の送信方式を「送信指向性制御方式」と呼び、2つ目の送信方式を「送信ダイバーシティ方式」と呼ぶ。本実施の形態に係る基地局1が、“Transmission Mode 7”で動作する場合には、送信指向性制御方式と送信ダイバーシティ方式のいずれか一方を用いて通信端末2に信号を送信する。
送信処理部120では、基地局1で使用される送信方式に応じた複数の送信信号が生成され、当該複数の送信信号が無線処理部11に入力される。
例えば、基地局1において送信指向性制御方式が使用される場合には、送信処理部120は、送信データを含む送信信号をアンテナ110aの数だけ生成すると、得られた複数の送信信号に対して、アレイアンテナ110の送信指向性を制御するための複数の送信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、送信処理部120は、複数の送信ウェイトがそれぞれ設定された複数の送信信号に対して逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse Discrete Fourier Transform)を行った後に、当該複数の送信信号を無線処理部11に入力する。
また、基地局1において送信ダイバーシティ方式が使用される場合には、送信処理部120は、SFBCを用いて符号化された複数の送信信号を生成する。そして、送信処理部120は、生成した当該複数の送信信号に対して逆離散フーリエ変換を行った後に、当該複数の送信信号を無線処理部11に入力する。
受信処理部121は、無線処理部11から入力される複数の受信信号に対して、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を行った後に、アレイアンテナ110での受信指向性を制御するための複数の受信ウェイトをそれぞれ設定する。受信処理部121は、複数の受信ウェイトがそれぞれ設定された複数の受信信号を合成して合成受信信号を生成する。そして、受信処理部121は、生成した合成受信信号に対して、逆離散フーリエ変換、等化処理及び復調処理等を行って、当該合成受信信号に含まれる制御データやユーザデータなどを取得する。
アレイアンテナ110での受信指向性を制御するための受信ウェイトは、通信端末2からの既知信号に基づいて算出することができる。そして、送信指向性制御方式で使用される、アレイアンテナ110での送信指向性を制御するための送信ウェイトは、受信ウェイトから算出することができる。受信ウェイトは、例えば、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムやRLS(Recursive Least-Squares)アルゴリズムなどの逐次推定アルゴリズムを用いて算出することができる。この逐次推定アルゴリズムを用いて受信ウェイトを算出することによって、アレイアンテナ110での受信指向性のビームを希望波に向けるととともに、当該受信指向性のヌルを干渉波に向けることができる。そして、逐次推定アルゴリズムを用いて算出された受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを算出することによって、アレイアンテナ110での送信指向性のビームを通信対象の通信端末2に向けるととともに、当該送信指向性のヌルを、通信対象ではない通信装置(他の通信端末2や周辺基地局1)に向けることができる。以後、受信ウェイト及び送信ウェイトを算出する際に使用される通信端末2からの既知信号を「アレイ制御用既知信号」と呼ぶ。LTEでは、SRS(Sounding Reference Signal)及びリファレンス信号などの複数種類の既知信号が規定されているが、そのうちのいずれの既知信号をアレイ制御用既知信号として使用しても良い。
このように、本実施の形態に係る基地局1では、通信端末2と通信を行う際には、ビームフォーミング及びヌルステアリングを行っているが、ヌルステアリングは行わずに、ビームフォーミングだけを行っても良い。
本実施の形態に係る基地局1では、無線処理部11、送信処理部120及び受信処理部121によって、アレイアンテナ110を用いて複数の通信端末2と通信を行う通信部13が構成されている。通信部13は、基地局1での送信方式が送信指向性制御方式である場合には、アレイアンテナ110の送信指向性を適応的に制御しながら複数の通信端末2と通信する。一方で、通信部13は、基地局1での送信方式が送信ダイバーシティ方式である場合には、アレイアンテナ110の送信指向性を制御せずに、SFBCで符号化された複数の送信信号を複数のアンテナ110aからそれぞれ送信する。
無線リソース割り当て部122は、通信対象の各通信端末2に対して、当該通信端末2への送信に使用する下り無線リソース(送信周波数及び送信時間帯)を割り当てる。送信処理部120は、無線リソース割り当て部122が通信端末2に割り当てた下り無線リソースに基づいて、当該通信端末2に送信すべき送信信号を生成するとともに、当該下り無線リソースの送信時間帯に基づいて当該送信信号を無線処理部11に入力する。これにより、通信端末2に送信すべき送信信号が、当該通信端末2に割り当てられた下り無線リソースを用いて通信部13から送信される。
また無線リソース割り当て部122は、通信対象の各通信端末2に対して、当該通信端末2が基地局1に送信する際に使用する上り無線リソースを割り当てる。送信処理部120は、無線リソース割り当て部122が通信端末2に割り当てた上り無線リソースを当該通信端末2に通知するための送信信号を生成して出力する。これにより、通信端末2は、基地局1への送信に使用する上り無線リソースを知ることができ、当該上り無線リソースを用いて基地局1に信号を送信する。
判定部123は、“Transmission Mode 7”で動作する基地局1の通信部13が送信指向性制御方式を用いて通信端末2に信号を送信している際に、送信指向性制御方式が機能しているか否かを判定する。つまり、判定部123は、基地局1が送信指向性制御方式を使用することによって期待される効果が発揮されているか否かを判定する。判定部123において、送信指向性制御方式が機能していないと判定されると、通信部13は、送信指向性制御方式に替えて送信ダイバーシティ方式を用いて通信端末2に信号を送信する。なお、この基地局1での送信方式の切り替え動作については後で詳細に説明する。
変動測定部124は、上り方向の電波伝搬特性の時間変動を測定する。変動測定部124は、例えば、通信端末2が送信するSRSを用いて、当該通信端末2についての上り方向の電波伝搬特性の変動を測定する。変動測定部124は、通信端末2から送信されるSRSと、当該SRSよりも後に当該通信端末2から送信されるSRSとの間の相関値を求めて、この相関値を、当該通信端末2と基地局1が通信している際の上り方向の電波伝搬特性の時間変動の大きさを示す値とする。以後、この値を「上り伝搬特性変動量」と呼ぶ。変動測定部124で得られた上り伝搬特性変動量は、後述するように、“Transmission Mode 7”で動作する基地局1において、送信方式を、送信指向性制御方式から送信ダイバーシティ方式に切り替えるか否かの判定に使用される。なお、SRSについては非特許文献2の8.2に記載されている。
<通信端末の構成>
図3は各通信端末2の構成を示す図である。図3に示されるように、通信端末2は、無線処理部21と、当該無線処理部21を制御する制御部22とを備えている。無線処理部21は、通信端末2が信号を送信する際に使用されるとともに、通信端末2が信号を受信する際に使用される送受信アンテナ210aと、通信端末2が信号を受信するときのみに使用される受信専用アンテナ210bとを備えている。無線処理部21は、送受信アンテナ210a及び受信専用アンテナ210bで受信される複数の受信信号のそれぞれに対して増幅処理、ダウンコンバート及びA/D変換処理等を行って、ベースバンドの複数の受信信号を生成して出力する。
また、無線処理部21は、制御部22で生成されるベースバンドの送信信号に対して、D/A変換処理、アップコンバート及び増幅処理等を行って、搬送帯域の送信信号を生成する。そして、無線処理部21は、生成した搬送帯域の送信信号を送受信アンテナ210aに入力する。これにより、送受信アンテナ210aから送信信号が無線送信される。
制御部22は、CPU、DSP及びメモリなどで構成されている。制御部22は、機能ブロックとして、送信処理部220、受信処理部221及び受信品質測定部222を備えている。
送信処理部220は、送信データを生成し、当該送信データを含むベースバンドの送信信号を生成する。この送信信号は無線処理部21に入力される。
受信処理部221は、無線処理部21から入力される複数の受信信号に対して、離散フーリエ変換を行う。受信処理部221は、離散フーリエ変換後の複数の受信信号を、例えば最大比合成法を用いて合成して合成受信信号を生成する。そして、受信処理部221は、合成受信信号に対して等化処理や復調処理等を行って、当該合成受信信号に含まれる制御データやユーザデータを取得する。このとき、受信処理部221は、合成受信信号に対して、基地局1で使用されている送信方式に応じた処理を行って、基地局1からの制御データやユーザデータを取得する。
例えば、基地局1において送信指向性制御方式が使用されている場合には、基地局1は、各通信端末2に対して当該通信端末2に固有のリファレンス信号を送信する。通信端末2の受信処理部221は、データを含む合成受信信号(データシンボル)に対して、自装置に固有のリファレンス信号に基づいて等化処理を行って当該合成受信信号を補正する。そして、受信処理部221は、補正後の合成受信信号に対して復調処理等を行って、制御データやユーザデータを取得する。
また、基地局1において送信ダイバーシティ方式が使用されている場合には、受信処理部221は、生成した合成受信信号に対して、等化処理や復調処理などを行った後、SFBCに対応した復号化処理を行って、制御データやユーザデータを取得する。
本実施の形態に係る通信端末2では、無線処理部21、送信処理部220及び受信処理部221によって、送受信アンテナ210a及び受信専用アンテナ210bを用いて基地局1と通信を行う通信部23が構成されている。通信部23は、基地局1に送信すべき送信信号を生成し、当該送信信号を送受信アンテナ210aのみを使用して送信する。また、通信部23は、基地局1から送信される信号を、送受信アンテナ210a及び受信専用アンテナ210bの両方を使って受信し、受信した複数の受信信号に基づいて、基地局1からの制御データやユーザデータを取得する。このように、通信部23では、送信アンテナの数(1つ)が受信アンテナの数(2つ)よりも少なくなっている。送信アンテナの数が増えると、送信アンプの数が増えることになり、それによって通信端末2の部品コスト及び消費電力が大きくなることから、それを抑制するために、本実施の形態では、送信アンテナの数を受信アンテナの数よりも少なくしている。
受信品質測定部222は、基地局1からの信号に対する通信部23での受信品質を測定する。受信品質測定部222で測定された受信品質は、通信部23から基地局1に通知される。
<基地局での通信端末に対する送信モードの通知処理>
次に、基地局1が自装置が使用する送信モードを通信端末2に対して通知する処理について説明する。本実施の形態に係る通信システム100では、“Transmission Mode 7”で動作する基地局1と通信端末2との間の通信処理が特徴的であるため、以下の説明では、基地局1が“Transmission Mode 7”で動作するものとする。また、説明の対象となる通信端末2を「対象通信端末2」と呼ぶ。
基地局1は、制御部12が対象通信端末2との間の送信モードとして“Transmission Mode 7”を使用すると決定すると、対象通信端末2との無線リンクを確立する際に、“RCCConectionSetup message”と呼ばれるメッセージを利用して、送信モードが“Transmission Mode 7”であることを対象通信端末2に通知する。これにより、対象通信端末2の制御部22は、基地局1の送信モードが“Transmission Mode 7”であることを認識できる。なお、“RCCConectionSetup message”については、上述の非特許文献3の5.3.3.1に記載されている。
基地局1は、対象通信端末2との無線リンクが確立すると、対象通信端末2に対する無線リソースの割り当て結果などを含むDCI(Downlink control information、下り制御情報)を、PDCCH(Physical Downlink Control Channel、物理下り制御チャネル)を用いて対象通信端末2に通知する。LTEでは、DCIのフォーマットとして複数種類のフォーマットが規定されている。“Transmission Mode 7”で動作する基地局1は、送信指向性制御方式を用いてDCIを送信する際には、そのフォーマットとして“DCI format 1”を使用し、送信ダイバーシティ方式を用いてDCIを送信する際には、そのフォーマットとして“DCI format 1A”を使用する。“DCI format 1”については、上述の非特許文献1の5.3.3.1.2に記載されており、“DCI format 1A”については、非特許文献1の5.3.3.1.3に記載されている。
“DCI format 1”のDCIと“DCI format 1A”のDCIとは、互いにメッセージサイズが異なっており、それらに付加されるCRC(Cyclic Redundancy Check)の適用ビット長が互いに異なっている。したがって、“Transmission Mode 7”で動作する基地局1では、DCIに付加するCRCの適用ビット長として、送信指向性制御方式及び送信ダイバーシティ方式にそれぞれ対応した2種類のCRC適用ビット長が使用される。
対象通信端末2の受信処理部221は、基地局1の送信モードが“Transmission Mode 7”であると制御部22が理解すると、“Transmission Mode 7”で使用される2種類のCRC適用ビット長の一方を用いて、基地局1から受信したDCIに対して誤り検出を行うとともに、当該2種類のCRC適用ビット長の他方を用いて、基地局1から受信したDCIに対して誤り検出を行う。基地局1が使用している送信方式に対応するCRC適用ビット長とは異なるCRC適用ビット長を用いてDCIに対して誤り検出を行った場合には、その結果が異常となることから、対象通信端末2の制御部22は、当該2種類のCRC適用ビット長のうち、誤り検出結果が正常となった方のCRC適用ビット長に対応する送信方式を、基地局1で使用されている送信方式であるとする。このようにして、対象通信端末2は、基地局1が使用している送信方式を特定することができる。
<基地局での送信方式の切り替え処理>
送信方式として送信指向性制御方式を使用している基地局1においては、図4に示されるように、対象通信端末2の送受信アンテナ210aから送信されるアレイ制御用既知信号300をアレイアンテナ110で受信し、当該アレイ制御用既知信号300に基づいて、アレイアンテナ110の送信指向性を制御する。そうすると、アレイアンテナ110の送信指向性に関するビーム(以後、「送信ビーム」と呼ぶ)は、当該アレイ制御用既知信号300の到来方向に向くようになることから、送信指向性制御方式が機能していれば、当該アレイ制御用既知信号300を送信した送受信アンテナ210aの方に送信ビームが向くようになる。よって、図5に示されるように、基地局1のアレイアンテナ110から送受信アンテナ210aに向かう信号の強度は大きくなり、アレイアンテナ110から受信専用アンテナ210bに向かう信号の強度は小さくなる。図5では、基地局1から送信される強度の大きい信号を実線の矢印で示しており、基地局1から送信される強度の小さい信号を波線の矢印で示している。この点については、後述の図6でも同様である。したがって、対象通信端末2では、送受信アンテナ210aでの受信強度が、受信専用アンテナ210bでの受信強度よりも大きくなって、送受信アンテナ210aでの受信品質が、受信専用アンテナ210bでの受信品質よりも良くなる。
一方で、対象通信端末2が、アレイ制御用既知信号300を送信してから、基地局1からの信号を受信するまでの間に大きく移動するなどして、対象通信端末2が基地局1にアレイ制御用既知信号300を送信する際の上り方向の電波伝搬特性と、基地局1が対象通信端末2に信号を送信する際の下り方向の電波伝搬特性との間に大きな差が生じた場合には、送信指向性制御方式が機能しなくなり、基地局1の送信ビームは、アレイ制御用既知信号300を送信した送受信アンテナ210aの方に向かなくなる。この場合には、図6に示されるように、基地局1から送受信アンテナ210aに向かう信号の強度は小さくなり、基地局1から受信専用アンテナ210bに向かう信号の強度と同等かそれよりも小さくなる。その結果、送受信アンテナ210aでの受信品質が、受信専用アンテナ210bでの受信品質と同等か、それよりも悪くなる。なお図6のエリア400は、基地局1からの送信信号の強度が大きいエリアを示している。
このように、基地局1において送信指向性制御方式が機能している場合には、対象通信端末2では、送受信アンテナ210aでの受信品質が受信専用アンテナ210bでの受信品質よりも良くなる。一方で、基地局1において送信指向性制御方式が機能していない場合には、対象通信端末2では、送受信アンテナ210aでの受信品質が受信専用アンテナ210bでの受信品質よりも良くはならない。
そこで、本実施の形態では、対象通信端末2において、送受信アンテナ210aでの受信品質が受信専用アンテナ210bでの受信品質よりも良い場合には、基地局1は、自装置が使用している送信指向性制御方式が機能していると判定し、送受信アンテナ210aでの受信品質が受信専用アンテナ210bでの受信品質よりも良くはない場合には、基地局1は、自装置が使用している送信指向性制御方式が機能していないと判定する。これにより、基地局1において送信指向性制御方式が機能しているか否かを適切に判定することができる。基地局1は、送信指向性制御方式が機能していないと判定すると、送信指向性制御方式に替えて送信ダイバーシティ方式を使用して対象通信端末2と通信する。以下に、この判定処理と送信方式の切り替え処理について詳細に説明する。
図7は対象通信端末2が送受信アンテナ210a及び受信専用アンテナ210bでの受信品質を求める際の対象通信端末2の動作を示すフローチャートである。図7に示されるように、ステップs1において、受信品質測定部222は、送受信アンテナ210aでの受信品質を求めて、これを第1受信品質とする。ステップs1では、例えば、受信品質測定部222は、無線処理部21から受信処理部221に入力される、送受信アンテナ210aで受信された受信信号についてのSINR(信号対干渉雑音電力比:Signal to Interference plus Noise power Ratio)を求めて、これを第1受信品質とする。以後、このSIRNを「第1SINR」と呼ぶ。
次にステップs2において、受信品質測定部222は、受信専用アンテナ210bでの受信品質を求めて、これを第2受信品質とする。ステップs2では、例えば、受信品質測定部222は、無線処理部21から受信処理部221に入力される、受信専用アンテナ210bで受信された受信信号についてのSINRを求めて、これを第2受信品質とする。以後、このSINRを「第2SINR」と呼ぶ。
次にステップs3において、受信品質測定部222は、第1SINRと第2SINRとを比較して、第1受信品質が第2受信品質よりも良いか否かを判定する。具体的には、受信品質測定部222は、第1SINRが第2SINRよりも大きい場合には、第1受信品質が第2受信品質よりも良いと判定し、第1SINRが第2SINRよりも小さい場合には、第2受信品質が第1受信品質よりも良いと判定する。その後、ステップs4において、通信部23は、受信品質測定部222での判定結果を示す情報、つまり、第1受信品質が第2受信品質よりも良いか否かを示す情報を良否情報とし、当該良否情報を含む信号を基地局1に送信する。
以上のステップs1〜s4までの処理は、対象通信端末2において、間隔をあけて繰り返し行われる。
なお、上記の例のように、通信端末2は、ステップs1〜s4までの処理を自ら繰り返して実行しても良いし、上記の例とは異なり、基地局1から良否情報を送信する指示があった場合にだけ、ステップs1〜s4までの処理を実行しても良い。
図8は、送信指向性制御方式を使用する基地局1が、送信方式を送信指向性制御方式から送信ダイバーシティ方式に変更するか否かを判定する処理を示すフローチャートである。図8に示されるように、ステップs11において、変動測定部124は、上述のようにして、上り伝搬特性変動量を求める。次にステップs12において、判定部123は、変動測定部124で求められた上り伝搬特性変動量がしきい値以上であるか否かを判定する。つまり、ステップs12では、基地局1と対象通信端末2との間の上り方向の電波伝搬特性の変動が大きいか否かが判定される。
ここで、上り伝搬特性変動量がしきい値未満である場合には、つまり、基地局1と対象通信端末2との間の上り方向の電波伝搬特性の変動が小さい場合には、対象通信端末2が基地局1にアレイ制御用既知信号を送信する際の上り方向の電波伝搬特性と、基地局1が対象通信端末2に信号を送信する際の下り方向の電波伝搬特性との間に大きな差が生じている可能性は低い。したがって、この場合には、送信指向性制御方式が機能していると考えることができる。
一方で、上り伝搬特性変動量がしきい値以上である場合には、つまり、基地局1と対象通信端末2との間の上り方向の電波伝搬特性の変動が大きい場合には、対象通信端末2が基地局1にアレイ制御用既知信号を送信する際の上り方向の電波伝搬特性と、基地局1が対象通信端末2に信号を送信する際の下り方向の電波伝搬特性との間に大きな差が生じている可能性が高い。したがって、この場合には、送信指向性制御方式が機能していないと考えることができる。しかしながら、上り伝搬特性変動量を求める際に使用されるSRSは熱雑音の影響や干渉を受けることから、上り方向の電波伝搬特性の変動だけを考慮するだけでは、上り方向の電波伝搬特性と下り方向の電波伝搬特性との関係を正確に推定することが困難となる。したがって、基地局1と対象通信端末2との間の上り方向の電波伝搬特性の変動が大きい場合であっても、実際には、対象通信端末2が基地局1にアレイ制御用既知信号を送信する際の上り方向の電波伝搬特性と、基地局1が対象通信端末2に信号を送信する際の下り方向の電波伝搬特性との間に大きな差はなく、送信指向性制御方式が機能している可能性がある。
そこで、本実施の形態では、上り伝搬特性変動量がしきい値以上である場合には、送信指向性制御方式が機能していないと直ちに判断するのではなく、対象通信端末2からの良否情報に基づいて、あらためて送信指向性制御方式が機能しているか否かを判定することにしている。
ステップs12において、上り伝搬特性変動量がしきい値未満であると判定されると、ステップs13において、判定部123は、送信指向性制御方式が機能していると判定する。通信部13は、判定部123において送信指向性制御方式が機能していると判定されると、ステップs14において、送信指向性制御方式の使用を継続することを決定する。
一方で、ステップs12において、上り伝送特性変動量がしきい値以上であると判定されると、ステップs15において、判定部123は、通信部13が対象通信端末2からの良否情報を受信しているか否かを判定する。ステップs15において、基地局1が対象通信端末2からの良否情報を受信していないと判定されると、良否情報に基づいて送信指向性制御方式が機能しているか否かを判定することができないことから、ステップs16において、判定部123は、上り伝搬特性変動量がしきい値以上であることを考慮して、送信指向性制御方式が機能していないと判定する。通信部13は、判定部123において送信指向性制御方式が機能していないと判定されると、ステップs18において、使用する送信方式を、送信指向性制御方式から送信ダイバーシティ方式に変更する。その後、通信部13は、送信ダイバーシティ方式を使用して対象通信端末2に信号を送信する。
なお、基地局1が対象通信端末2と通信を開始した直後にステップs15を実行する際には、対象通信端末2からの良否情報を受信していないことがあることから、この場合にはステップs16,s18が実行される。
ステップs15において、対象通信端末2からの良否情報を基地局1が受信していると判定されると、ステップs17において、判定部123は、対象通信端末2から通知された良否情報に基づいて、送信指向性制御方式が機能しているか否かを判定する。判定部123は、良否情報を参照して、第1受信品質が第2受信品質よりも良い場合には、つまり、上述の図5の状態である場合には、送信指向性制御方式が機能していると判定する。一方で、判定部123は、良否情報を参照して、第1受信品質が第2受信品質よりも良くはない場合には、つまり、上述の図6の状態である場合には、送信指向性制御方式が機能していないと判定する。
ステップs17において、送信指向性制御方式が機能していると判定されると、ステップs14が実行されて、通信部13は、送信指向性制御方式の使用の継続を決定する。一方で、ステップs17において、送信指向性制御方式が機能していないと判定されると、ステップs18が実行されて、通信部13は、送信指向性制御方式に替えて送信ダイバーシティ方式を使用して対象通信端末2に信号を送信する。
ステップs14が実行されて、基地局1において送信指向性制御方式が使用され続ける場合には、再度ステップs11が実行される。以後、基地局1は同様に動作する。
なお、上記の例において、基地局1と対象通信端末2との間の上り方向の電波伝搬特性の変動が大きいか否かを判定せずに、つまりステップs11,12を実行せずに、まずステップs15を実行しても良い。この場合には、対象通信端末2からの良否情報を基地局1が受信していない場合には、ステップs14が実行されて、送信指向性制御方式の使用が継続される。
また、ステップs18が実行されるなどして、送信ダイバーシティ方式を用いて対象通信端末2と通信する基地局1においては、ステップs11と同様に、上り伝搬特性変動量が求められ、上り伝搬特性変動量がしきい値未満の場合には、送信方式が送信ダイバーシティ方式から送信指向性制御方式に変更される。送信方式が送信指向性制御方式に変更された後の基地局1の動作は図8と同様である。一方で、上り伝搬特性変動量がしきい値以上であると判定されると、基地局1では、送信ダイバーシティ方式の使用が継続される。
上述の図7,8に示される通信システム100の動作例では、対象通信端末2において第1受信品質が第2受信品質よりも良いか否かが判定され、その判定結果に基づいて、基地局1が送信指向性制御方式が機能しているか否かを判定していたが、対象通信端末2が第1及び第2受信品質を基地局1に通知し、基地局1が第1受信品質が第2受信品質よりも良いか否かを判定し、その判定結果に基づいて送信指向性制御方式が機能しているか否かを判定してもよい。図9,10はこの場合の対象通信端末2及び基地局1の動作をそれぞれ示すフローチャートである。
図9に示されるように、対象通信端末2の受信品質測定部222は、上述のステップs1,s2を実行して、第1及び第2受信品質を求める。次にステップs21において、通信部13は、受信品質測定部222で求められた第1及び第2受信品質を示す受信品質情報を含む送信信号を生成し、当該送信信号を基地局1に送信する。
なお、本例においても、通信端末2は、ステップs1,s2,s21の処理を自ら繰り返して実行しても良いし、基地局1から受信品質情報を送信する指示があった場合にだけ、ステップs1,s2,s21の処理を実行しても良い。
一方で、基地局1においては、図10に示されるように、上述のステップs11,s12が実行され、ステップs12において、上り伝送特性変動量がしきい値未満であると判定されると、ステップs13において、判定部123は、送信指向性制御方式が機能していると判定する。そして、通信部13は、ステップs14を実行して、送信指向性制御方式の使用を継続すると決定する。
ステップs12において、上り伝送特性変動量がしきい値以上であると判定されると、ステップs31において、判定部123は、対象通信端末2からの受信品質情報が基地局1で受信されているか否かを判定する。ステップs31において、対象通信端末2からの受信品質情報が基地局1で受信されていないと判定されると、ステップs16,s18が実行されて、通信部13は、使用する送信方式を、送信指向性制御方式から送信ダイバーシティ方式に変更する。なお、基地局1が対象通信端末2と通信を開始した直後にステップs31を実行する際には、対象通信端末2からの受信品質情報を受信していないことがあることから、この場合にはステップs16,s18が実行される。
ステップs31において、対象通信端末2からの受信品質情報が基地局1で受信されていると判定されると、ステップs32において、判定部123は、受信品質情報を参照して、第1受信品質が第2受信品質よりも良いか否かを判定する。判定部123は、第1受信品質が第2受信品質よりも良い場合には、送信指向性制御方式が機能していると判定する。一方で、判定部123は、第1受信品質が第2受信品質よりも良くはない場合には、送信指向性制御方式が機能していないと判定する。
ステップs32において、送信指向性制御方式が機能していると判定されると、ステップs14が実行されて、通信部13は、送信指向性制御方式の使用を継続する。一方で、ステップs32において、送信指向性制御方式が機能していないと判定されると、ステップs18が実行されて、通信部13は、送信指向性制御方式に替えて送信ダイバーシティ方式を使用して対象通信端末2に信号を送信する。
なお、図8の例と同様に、図10の例においても、ステップs11,12を実行せずに、まずステップs31を実行しても良い。この場合には、対象通信端末2からの受信品質情報が基地局1で受信されていない場合には、ステップs14が実行されて、送信指向性制御方式の使用が継続される。
<良否情報及び受信品質情報の送信方法>
通信端末2が良否情報あるいは受信品質情報を基地局1に送信する方法としては、様々な方法が考えられる。
例えば、LTEにおいては、通信端末2は、基地局1に対してフィードバック情報を送信しており、このフィードバック情報と同じようにして、良否情報あるいは受信品質情報を基地局1に送信しても良い。
通信端末2が基地局1に送信するフィードバック情報の種類としては、上り無線リソースのスケジューリングを要求するためのスケジューリング要求情報、基地局1からのデータを受信できたか否かを示すACK/NACK情報、受信品質を示すCQI(Channel Quality Indication)、基地局1が空間多重伝送を行う際のレイヤ数を示すRI(Rank Indication)、RIが示すレイヤ数に応じたプリコーダ行列を示すPMI(Precoding Matrix Indicator)などがある。CQIは、複数の受信アンテナ(送受信アンテナ210a及び受信専用アンテナ210b)全体での受信品質を示している。CQI、RI及びPMIについては、上述の非特許文献2の7.2に記載されており、ACK/NACK情報については、非特許文献2の7.3に記載されている。
通信端末2は、基地局1からのデータを受信するとすぐにACK/NACK情報を基地局1の送信し、ACK/NACK情報の送信頻度は、CQI、RI及びPMIの送信頻度よりも高くなっている。したがって、基地局1において、送信指向性制御方式が機能しているか否かを頻繁に判定するためには、ACK/NACK情報と同様の頻度で良否情報あるいは受信品質情報を基地局1に送信することが望ましい。
また、ACK/NACK情報は1ビットで表現されることから、同じく1ビットで表現することが可能な良否情報については、伝送効率を高めるために、ACK/NACK情報と同じビット数で送信することが望ましい。
また、受信品質情報が示す第1及び第2受信品質については、CQIと同じような情報であることから、CQIと同じビット数で構成し、CQIと同じ頻度で基地局1に送信しても良い。
なお、フィードバック情報を送信する上り無線リソースに空きがあるようであれば、その空きの部分を利用して、良否情報あるいは受信品質情報を基地局1に送信しても良い。
また、フィードバック情報とは全く異なる独自のビット構成で良否情報あるいは受信品質情報を表現しても良いし、フィードバック情報とは全く異なる独自の送信タイミングで良否情報あるいは受信品質情報を基地局1に送信しても良い。
以上のように、本実施の形態に係る基地局1では、送信指向性制御方式を用いて通信端末2に信号を送信している際に、当該通信端末2の送受信アンテナ210aでの受信品質が、当該通信端末2の受信専用アンテナ210bでの受信品質よりも良い場合には、送信指向性制御方式が機能していると判定し、当該通信端末2の送受信アンテナ210aでの受信品質が、当該通信端末2の受信専用アンテナ210bでの受信品質よりも良くはない場合には、送信指向性制御方式が機能していないと判定しているため、送信指向性制御方式が機能しているか否かを適切に判定することができる。
これに対して、上述の説明からも理解できるように、上り伝搬特性変動量だけに基づいて、送信指向性制御方式が機能しているか否かを判定することも可能である。つまり、上り伝搬特性変動量がしきい値未満の場合には、上り方向の電波伝搬特性と下り方向の電波伝搬特性との間の差が小さいと判断して、送信指向性制御方式が機能していると判定し、上り伝搬特性変動量がしきい値以上の場合には、当該差が大きいと判断して、送信指向性制御方式が機能していないと判定することができる。しかしながら、上述のように、上り伝搬特性変動量を求める際に使用されるSRSは熱雑音の影響や干渉を受けることから、上り方向の電波伝搬特性の変動だけを考慮するだけでは、上り方向の電波伝搬特性と下り方向の電波伝搬特性との関係を適切に推定することができないことがある。したがって、上り伝搬特性変動量だけに基づいて、送信指向性制御方式が機能しているか否かを判定したとしても、送信指向性制御方式が機能しているか否かを適切に判定できないことがある。
また、上り伝搬特性変動量と上述のCQIの両方を用いて、送信指向性制御方式が機能しているか否かを判定することも可能である。例えば、上述の図8のフローチャートにおいて、ステップs15の実行の替わりに、基地局1は、対象通信端末2からCQIが通知されているか否かを判定する。基地局1が対象通信端末2と通信を開始した直後では、基地局1は対象通信端末2からのCQIを受信していないことがあることから、この場合には、対象通信端末2からCQIが通知されていないと判定し、上述のステップs18を実行する。基地局1は、対象通信端末2からCQIが通知されている場合には、CQIが示す、対象通信端末2の複数の受信アンテナ(送受信アンテナ210a及び受信専用アンテナ210b)全体での受信品質と、所定の基準とを比較する。そして、基地局1は、対象通信端末2の複数の受信アンテナ全体での受信品質が所定の基準よりも良ければ、送信指向性制御方式が機能していると判定し、当該受信品質が所定の基準よりも良くはなければ、送信指向性制御方式が機能していないと判定する。
このように、上り伝搬特性変動量とCQIの両方を用いて、送信指向性制御方式が機能しているか否かを判定することによって、上り伝搬特性変動量だけを用いて送信指向性制御方式が機能しているか否かを判定する場合よりも、送信指向性制御方式が機能しているか否かを適切に判定することができる。
しかしながら、CQIは、通信端末2の複数の受信アンテナ全体での受信品質を示していることから、基地局1は、通信端末2での受信状態が、上述の図5の状態にあるのか、図6の状態にあるのか、判断することはできない。したがって、上り伝搬特性変動量とCQIの両方を用いて送信指向性制御方式が機能しているか否かを判定する場合であっても、送信指向性制御方式が機能しているか否かを適切に判定することができない場合がある。
本実施の形態では、通信端末2の送受信アンテナ210aでの受信品質が、当該通信端末2の受信専用アンテナ210bでの受信品質よりも良い場合には、送信指向性制御方式が機能していると判定し、当該通信端末2の送受信アンテナ210aでの受信品質が、当該通信端末2の受信専用アンテナ210bでの受信品質よりも良くはない場合には、送信指向性制御方式が機能していないと判定しているため、通信端末2での受信状態が、図5の状態にある場合に、送信指向性制御方式が機能していると判定でき、通信端末2での受信状態が、図6の状態にある場合に、送信指向性制御方式が機能していないと判定することができる。よって、送信指向性制御方式が機能している否かについて適切に判定することができる。
また、本実施の形態に係る基地局1では、送信指向性制御方式が機能していない場合には、この方式の替わりに送信ダイバーシティ方式を使用することにしているので、基地局1と通信端末2との間の下り方向の通信を適切に維持することができる。
なお、上記の例では、通信端末2の送受信アンテナ210aの数を1つとしていたが、送受信アンテナ210aの数を複数としても良い。この場合には、受信品質測定部222は、複数の送受信アンテナ210a全体での受信品質を第1受信品質とする。複数の送受信アンテナ210a全体での受信品質については、当該複数の送受信アンテナ210aでそれぞれ受信された複数の受信信号を合成して得られる合成受信信号から求めることができる。例えば、当該合成受信信号のSINRを求めて、これを第1受信品質とする。
また、通信端末2の受信専用アンテナ210bの数を複数としても良い。この場合には、送受信アンテナ210aの数を複数とした場合と同様に、受信品質測定部222は、複数の受信専用アンテナ210b全体での受信品質を第2受信品質とする。
また、上記の例の送信ダイバーシティ方式では、SFBCで符号化された送信信号を送信したが、STBC(Space-Time Block Coding)などの他の符号化方式で符号化された送信信号を送信しても良い。
上記の例では、本願発明をLTEに適用する場合について説明したが、本願発明は他の通信システムにも当然に適用することができる。