JP2012131879A - 潤滑油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】省燃費化の為に低粘度化され、高出力の車輌や機械で長期に使用されても、酸化安定性と銅腐食防止に優れた潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】100℃の動粘度が1.4〜50mm/sの鉱油、ポリ-αオレフィン、αオレフィンオリゴマー、ジカルボン酸ジエステル、ヒンダードエステル、ヒンダードジエステルから選択される1種又は2種以上を混合した基油に、下記式(1)で示すジヒドロカルビルジチオカルバミン酸亜鉛を組成物全量に対して亜鉛量で50〜1,000ppmを含有させて潤滑油組成物とする。
Figure 2012131879

【選択図】なし

Description

本発明は潤滑油組成物に関し、特に、省燃費化の為に低粘度化され、高出力の車輌や機械で長期に使用されても、酸化安定性と銅腐食防止に優れた潤滑油組成物に関するものである。
ジチオリン酸金属塩、特にジアルキルジチオリン酸亜鉛あるいはジアリールジチオリン酸亜鉛などのジチオリン酸亜鉛(以下、ZnDTPと表示する)は、現在世界的に広く使用されている潤滑油添加剤の1つである。このZnDTPは、酸化防止剤や腐食防止剤として作用するほか、優れた摩耗防止性能を有しており、自動車内燃機関用潤滑油(以下、エンジン油と表示する)に広く使用されている。
このように、ZnDTPは、その優れた多機能性と効果の両面から、上記エンジン油をはじめ広く産業用機械の潤滑油分野で汎用されているが、エンジン油においては、これに含まれるリン成分が自動車の排気浄化触媒や酸素センサーを被毒するため、排気ガス制御システムの能力が著しく低下するのを免れないという問題がある。
そこで、従来、エンジン油の低リン化を図るために、ZnDTPの添加量を低減する方法がとられてきた。しかしながら、ZnDTPの添加量を低減すると、潤滑油の耐摩耗性が低下し、例えば、動弁系の摩耗によりエンジンの耐久性が低下するなどの問題が生じる。したがって、ZnDTPの添加量を低減しつつ、例えば、無灰清浄分散剤、金属清浄剤などの他の添加剤との組合せによってエンジン油として必要な性能が付与されてきた。
一方、現在、地球規模での環境規制はますます厳しくなり、特に自動車を取り巻く状況は、燃費規制、排ガス規制等厳しくなる一方である。この背景には地球温暖化等の環境問題と、石油資源の枯渇に対する懸念からの資源保護の要請がある。こうした理由から自動車の省燃費化は今後ますます進められると考えられる。
自動車の省燃費化に関しては、自動車の軽量化、エンジンの改良等、自動車自体の改良と共にエンジンでの摩擦ロスを防ぐためのエンジン油の低粘度化、良好な摩擦調整剤の添加等、エンジン油の改善も重要となっている。
しかし、このエンジン油の低粘度化はエンジン各部での摩耗の増大を引き起こす原因になるため、この低粘度化に伴う摩擦損失の低減や摩耗防止のために、摩擦調整剤、極圧剤等の働きがますます重要になっている。
さらに省燃費化の一層の向上の為、低粘度化と共に摩擦調整剤の添加が行われると、酸化安定性の低下や下記に示すような各種金属の腐食が一層大きな問題となって来ている。
上記エンジン等の摺動部分には鉄系材料、アルミニウム系材料が主として使用されているが、メインベアリングやコンロッドベアリングなどの摺動部、例えば軸受けメタル等の材質には鉄系に限らずアルミニウム、銅、すず、鉛等と多種の金属が使用されている。これら銅又は鉛含有金属材料は、疲労現象が少ないという優れた特徴を有するが、一方では、腐食され易いという欠点がある。したがって、潤滑油やその添加剤に対しては、上記の摩擦損失の低減や摩耗防止とともに、各種金属材料、特に銅や鉛に対する耐腐食性が求められている。
エンジン油の酸化安定性の向上のためには、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤のヒンダードフェノールやアミン系の酸化防止剤を単独あるいは併用した報告が多く見られる。(特許文献1、特許文献2)
上述のように、低リン化に伴うZnDTPの添加量の削減、低粘度化による基油の熱安定性などの低下から、その酸化防止作用には限度が見られる。
また、エンジン内部の金属腐食の防止には、チアジアゾールやベンゾチアゾールなどのチアジアゾール誘導体の添加を行えば、一定度の効果が見られる。しかし、これらの添加剤は高温下での消耗が大きく、長寿命化に適さない点及び前述の酸化防止性能が無いために、酸化防止剤と金属の腐食防止剤を併用して使用しなければならず、コスト削減の点から経済的には余り有利ではない。
さらに、リン酸系化合物とチアジアゾール誘導体による組合せにより、油圧作動油中への銅の溶解性を抑制しようとするものもあるが、この方法では銅腐食に対して必ずしも十分な性能が見られない。(特許文献3)
また、パワーステアリングオイルの銅の腐食に関して、アルキル基の炭素数が1〜20のジアルキルジチオリン酸亜鉛、アルキル基の炭素数が1〜20のジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛を0.05〜5.0wt%及び金属清浄剤0.05〜5.0wt%を含有する油圧作動油組成物も知られているが、エンジン油に比べて作動温度領域が低く銅腐食の対策としては未だ不充分である。特に、銅腐食に対してジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛のハイドロカルビル基はアルキル基であり、実施例には炭素数が3のジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛が示されているにすぎない。(特許文献4)
また、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛のハイドロカルビル基について、親油基の平均炭素数が4以下のZnDTCは潤滑油に難溶性であるため、従来、潤滑油添加剤としては殆ど使用されておらず、僅かに親油基の炭素数が4のZnDTCが潤滑油の酸化防止剤、金属不活性化剤及びベアリング腐食防止剤として、低濃度で使用するものが知られているにすぎない。又、Mo−DTCは4つの親油基の平均炭素数が4を越えると、潤滑油に対する溶解性はあるものの、耐摩耗性が低下してZnDTPに代替可能な添加剤とすることができず、親油基の平均炭素数の上限は、耐摩耗性等の機能の面から好ましくは3以下であるとされてきた。(特許文献5)
特開平8−165485号公報 特開平7−331270号公報 特開平2−212596号公報 特開平6−200272号公報 特開平5−39495号公報
上記したように、従来、提案されているZnDTCは親油基がすべて第1級アルキル基のものである。近年、排気ガスの浄化のため、エンジン油について、リン含有量がますます制限される傾向にあり、従来以上に極低リン化ないし無リン化が要求されているが、未だ十分に対応できていないのが実状である。一方、本発明者らの研究でも、ZnDTCの親油基がベンジル基では、殆どオイルには溶解しない結果が得られており、これまでベンジル基のZnDTCは潤滑油分野には利用することができないでいた。
本発明者らは、鋭意研究・検討を行った結果、ベンジル基を持ったZnDTCを耐摩耗剤としてではなく、酸化防止剤として使用するときにはその機能が優れていることを見出した。しかし、これを鉱油あるいは合成油に溶解する時に80℃以下の温度を掛けてもなかなか溶けにくいという特性を持っている。ところが120℃以上の温度をかけたとき、約0.6質量%以下の少量であれば、少し時間を掛ければ溶解することができることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成したものである。
本発明は、100℃の動粘度が1.4〜50mm/s、好ましくは1.5〜35mm/s、より好ましくは3.0〜25mm/sの鉱油、ポリ-αオレフィン、αオレフィンオリゴマー、ジカルボン酸ジエステル、ヒンダードエステル、ヒンダードジエステルから選択される1種又は2種以上を混合してなる基油に、下記式(1)で示すジヒドロカルビルジチオカルバミン酸亜鉛を組成物全量に対して亜鉛量で50〜1,000ppmを含有させて潤滑油組成物とするものである。そして、下記式(1)中、R、R、R、Rは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数の合計が8以下の無置換又はアルキル基で置換されたアリール基によって構成されている。
Figure 2012131879
本発明の潤滑油組成物は、ガソリン出力エンジンおよびディーゼルエンジン(特に、ヘビーデューティディーゼルエンジン)用の潤滑油組成物として有用である。本潤滑油組成物は、少なくともその1実施形態では、従来技術のものと比較したときにアミン系酸化防止剤やフェノール系酸化防止剤を使用したものに比べて、酸化安定性を大幅に改善することができるという特徴を持っている。更に、この特性はグループ2やグループ3基油などのような、低硫黄分の基油に使用した場合において、非常に低い添加濃度で有効であるということで一層特徴付けられる。また、他の1実施形態では、この潤滑油組成物は、鉛および銅腐食耐性においても格段の腐食防止性を示すことができる。
先ず、潤滑油組成物における省燃費ガソリンエンジン油組成物について説明する。近年、エンジンオイルは省燃費化のために、低粘度化が進んでおり、SAEエンジン油粘度番号の0W−20、0W−30、5W−20や5W−30が普及しており、高温側の100℃の動粘度は約10〜12mm/sが一般的になり、一方の低温側の粘度も0Wか5Wとなっており、使用される基油も100℃で3〜6mm/sのものが中心になっている。
本発明における基油としては、鉱油、合成油およびそれらの混合油を使用することが出来るもので、本発明で使用される基油およびその特性については以下のとおりである。
基油として用いられるグループ2の鉱油は、100℃の動粘度が1.4〜50mm/sで、好ましくは1.5〜35mm/s、より好ましくは3.0〜25mm/s、粘度指数が100〜120、流動点が−10℃以下で、飽和分が90%以上、芳香族分が3%以下のものである。
こうしたグループ2の鉱油基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろうなどの精製手段を適宜組合せて適用することにより得られたパラフィン系鉱油がある。ガルフ社法などの水素化精製法により精製されたグループ2基油は、全硫黄分が10ppm未満、芳香族分が5%以下であり、本発明において好適に用いることができる。これらの基油は、粘度指数は100〜120、好ましくは105〜120が良い。また全硫黄分は500ppm未満、好ましくは300ppm未満、更に好ましくは10ppm未満がよい。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満がよい。さらにアニリン点は80〜150℃、好ましくは100〜135℃のものを使用するのがよい。
グループ3鉱油基油は、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、高度水素化精製により製造されるパラフィン系鉱油や、天然ガスの液体燃料化技術のフィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL(ガストゥリキッド)、ワックスおよび脱ろうプロセスにて生成されるワックスを溶剤脱ろうやイソパラフィンに変換・脱ろうするISODEWAXプロセスにより精製された基油や、モービルWAX異性化プロセスにより精製された基油があり、これらも本発明において好適に用いることができる。
これらの基油は100℃の動粘度が1.4〜50mm/s、好ましくは1.5〜35mm/s、より好ましくは3.0〜25mm/s、粘度指数は120以上がよい。また全硫黄分は100ppm未満、好ましくは10ppm未満が良い。全窒素分も10ppm未満、好ましくは1ppm未満が良い。さらにアニリン点は80〜150℃、好ましくは110〜135℃のものを使用するのが好ましい。
また合成油として100℃の動粘度が1.4〜50mm/s、好ましくは1.5〜35mm/s、より好ましくは3.0〜25mm/sの混合ポリα-オレフィン、混合α-オレフィンオリゴマー、及びポリα-オレフィンとα-オレフィンオリゴマーの混合物がある。上記ポリα-オレフィンには、各種α-オレフィンの重合物であり、α-オレフィンの水素化されたオリゴマーが含まれる。
オレフィンとしては任意のものが用いられるが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、炭素数5以上のα−オレフィンなどが挙げられる。ポリα-オレフィンの製造にあたっては、上記オレフィンの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記ポリα-オレフィンは、1種のα-オレフィンを単独重合させたり、2種以上のα-オレフィンを共重合させることで製造することができる。
また合成油としてはエステル基油があり、本発明で使用するジエステル基油としては、ジカルボン酸のジエステルであっても、二価アルコールのジエステルであってもよいが、より好ましいものはジカルボン酸ジエステルである。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ジカルボン酸ジエステルとしては、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、ジエチルマロン酸、グルタル酸、ジメチルグルタル酸、ジエチルグルタル酸、ジn−プロピルグルタル酸、ジイソプロピルグルタル酸、ジブチルグルタル酸、アジピン酸、ジメチルアジピン酸、ジエチルアジピン酸、ジプロピルアジピン酸、ジブチルアジピン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、エチルコハク酸、ジエチルコハク酸、ジプロピルコハク酸、ジブチルコハク酸、ピメリン酸、テトラメチルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ブラシル酸などの脂肪族ジカルボン酸と、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、イソデカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノールなどの1価のアルコールとのジエステルが挙げられる。なお、ジカルボン酸分子中の2つのカルボン酸とエステルを形成する1価のアルコールは1種類であっても2種類であってもよい。
2価アルコールのジエステルとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、2−ブチル2−エチルプロパンジオール、2,4−ジエチル−ペンタンジオールなどの脂肪族2価アルコールと、酢酸、n−プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−バレリン酸、n−ヘキサン酸、α−メチルヘキサン酸、α−エチルバレリン酸、イソオクチル酸、ペラルゴン酸、n−デカン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソヘキサデカン酸などの脂肪族モノカルボン酸とのエステルが挙げられる。カルボン酸は1種類であっても2種類であってもよい。
上記ジエステルは、分子全体の炭素数が20〜42のものが好ましく用いられ、さらには炭素数22〜30、特には22〜28のものが好ましく用いられる。更には、炭素数3〜18のカルボン酸と炭素数5〜20のアルコールの組み合わせからなるジエステルが好ましい。なお、エステル化は、公知の方法により行うことができる。
また、上記ジエステル以外にもヒンダードエステルを使用することも可能であり、これはヒンダードアルコールと脂肪酸とのエステルである。ヒンダードアルコールは、分子中に第4級炭素原子を含むネオペンチル基を有する多価アルコールであり、炭素数5〜30のものが用いられる。ヒンダードアルコールを具体的に例示すると、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチルプロパン−1、3ジオール、2,2−ジブチルプロパン−1、3ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1、3ジオール、2−エチル−2−ブチルプロパン−1、3ジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、テトラトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトール、ペンタペンタエリスリトール等が挙げられ、その1種または2種以上が用いられる。好ましいヒンダードアルコールは、炭素数5〜20のものであり、特に好ましくは、炭素数10以上のものであり、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等の高粘度のヒンダードアルコールが用いられる。
ヒンダードエステルの一方の脂肪酸としては、炭素数4〜20の直鎖状または分岐状脂肪酸が用いられる。直鎖状脂肪酸としては、例えば、n−ブタン酸、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ウンデカン酸、n−ドデカン酸、n−トリデカン酸、n−テトラデカン酸、n−ペンタデカン酸、n−ヘキサデカン酸、n−ヘプタデカン酸、n−オクタデカン酸等が挙げられ、その1種または2種以上が用いられる。また、分岐状脂肪酸としては、例えば、2−メチルプロパン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、2−エチルペンタン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2−エチル−2−メチルブタン酸、3−メチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、2−プロピルペンタン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2−エチル−2−メチルペンタン酸、2−メチルオクタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、2−エチルヘプタン酸、2−メチルノナン酸、2,2−ジメチルオクタン酸、2−エチルオクタン酸、2−メチルノナン酸、2,2−ジメチルノナン酸のほか、炭素数11以上の分岐状脂肪酸が挙げられ、その1種または2種以上が用いられる。好ましい脂肪酸は、炭素数4〜12のものであり、特に5〜9のものが好ましい。上記の如き脂肪酸は、ヒンダードエステルの脂肪酸部分の炭化水素基の炭素数が平均3〜8になるように、炭素数4未満、例えば、n−プロパン酸等を、また、炭素数12以上の脂肪酸も混合して用いることができる。
上記のヒンダードエステルは、従来から採用されている製造方法、例えば、(a)ヒンダードアルコールと脂肪酸とを無触媒または酸性触媒の存在下において脱水縮合により直接エステル化する方法、(b)脂肪酸塩化物を調製し、これとヒンダードアルコールとを反応させる方法、及び(c)低級アルコールと脂肪酸とのエステルとヒンダードアルコールとのエステル交換反応等により製造する方法を用いることができる。具体的には炭素数5〜30のヒンダードアルコールと炭素数4〜20の脂肪酸とのエステルが好適である。
上記したジヒドロカルビルジチオカルバミン酸亜鉛は、分子内にリンを含まないため、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の代替として以前から検討されていたが耐摩耗性や耐焼付き性などが劣るためジアルキルジチオリン酸亜鉛にとって代わることは無かった。その代わりとして、従来、ジアルキルジチオリン酸亜鉛と併用することなども検討されたが、その効果が小さく、また酸化安定性なども十分でない為にあまり使用されない状況にあった。
本発明者らは、下記式(1)におけるR1、R2、R3およびR4の炭化水素基に着目し、これらをアリール基にすることで酸化安定性と銅に対する腐食防止性が優れることを見出した。このアリール基の水素は、アルキル基で置換されていてもよく、好ましくはメチル基、エチル基などのアルキル基で置換され炭素数の合計が8以下になるようにするのが好ましい。
Figure 2012131879
ただ、このジヒドロカルビルジチオカルバミン酸亜鉛の化合物における唯一の問題点は、基油への溶解性が小さいことであって、基油に対する添加量に制限があり、最大でも0.6質量%程度でしかない。しかし、下記の実施例でも示すように、0.1質量%以上では、酸化安定性についてその効果が飽和に近くになっていることから、この程度の溶解性があれば、特に問題は無いことが判った。
そして、このジヒドロカルビルジチオカルバミン酸亜鉛は微量で効果が見られ、組成物全量に対して亜鉛量で50〜1000ppm程度用いるようにすればよい。50ppm未満では本来の酸化防止性や腐食防止性の効果は認められず、逆に1000ppmを超えて添加しても機能は飽和しているため不経済である。
また、本発明において、従来から知られている酸化防止剤であるフェノール系や芳香族アミン系などの酸化防止剤の1種または2種以上を併用しても、特に酸化防止性などに阻害作用は認められなかった。従って、必要に応じてこれらを併用することも可能である。
また、エンジンオイルには、上記のジヒドロカルバミン酸亜鉛に加えて、金属清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、腐食防止剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤や消泡剤などを必要に応じて添加することが出来る。
(性状試験・熱天秤分析)
上記ジヒドロカルバミン酸亜鉛においてアリール基を有するものと、アルキル基を有するものとの性状の相違を知るために熱天秤分析の試験を行って検討した。
アリール基を有するものとしてジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(サンセラーZ-BE)を使用し、アルキル基を有するものとしてジアミルジチオカルバミン酸亜鉛(Vanlube−AZ)を使用した。
上記サンセラーZ-BEは、白色粉末であり、亜鉛量は10質量%である。
上記Vanlube−AZは、油状液体であり、亜鉛量は6質量%である。
熱天秤分析の試験は、空気気流中で、5℃/分の割合で温度上昇させ、アルミニウムパンを用いて行った。
試験結果を表1に示す。
Figure 2012131879
上記表1から、サンセラーZ-BEは、5.1%の重量減少率を示す温度は312.7℃であり、80%重量減少率の温度は371.1℃であり、この間300℃台の温度で緩やかに温度が上昇している。また、565.1℃に上昇時の重量減少率は81.9重量%で、未だ18.1重量%が残存している。
一方、バンルーブ−AZ(Vanlube-AZ)では、5%の重量減少率を示す温度は148.7℃と上記に比べて164℃も低温であり、80%重量減少率の温度もの339.8℃と31℃以上も低くなっている。また、365.3℃に上昇時の重量減少率は97.2重量%で、僅かに2.8重量%しか残存していない。
こうした温度差と重量減少率が見られることから、高温下においてアリール基を有するサンセラーZ-BEが熱安定性に優れていることが判る。
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例の調製にあたり、下記の組成材料を用意した。
1.基油: グループ3の鉱油(特性値:40℃動粘度;35.0mm/s、100℃動粘度;6.50mm/s、粘度指数;141)
2.添加剤
(2−1)ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(サンセラーZ-BE;三新化学工業株式会社製)
(2−2)テトラベンジルチウラムジスルフィド(チウラムTBZTD;三新化学工業株式会社製)
(2−3)フェノール系酸化防止剤:ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−ヒドロキシ−,C7−C9側鎖アルキルエステル(L135;豊通ケミプラス株式会社製)
(2−4)アミン系酸化防止剤:N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンの反応生成物(L57;豊通ケミプラス株式会社製)
(2−5)ジアルキルジチオカーバメート:メチレンビス−ジブチルジチオカーバメート(Van7723;バンダービルド社製)
(2−6)ジチオカルバミン酸亜鉛:ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛(Vanlube−AZ;バンダービルド社製)
(実施例1〜5、比較例1〜6)
上記した組成材料を用いて、表2に示す組成により実施例1〜5を、表3に示す組成により比較例1〜6の潤滑油組成物を調製した。
(物性測定)
上記実施例1〜5及び比較例1〜6の各潤滑油組成物について、40℃動粘度(mm/s)、100℃動粘度(mm/s)を求めた。
(試験)
上記実施例1〜5及び比較例1〜6の各潤滑油組成物について、その性能を見るために以下の試験を行った。
(酸化安定度試験(ISOT粘度増加率))
試験機器および試験方法はJIS K 2514に準拠し、試料中に触媒を浸し、165℃で96時間、かき混ぜ棒で試料をかき混ぜて酸化させた後、未酸化油の性状と比較し、100℃粘度増加率(%)を以下の式により求める。
100℃粘度増加率%=
100×(100℃の試験後の劣化油動粘度−試験前の動粘度)/(100℃の試験前の動粘度)
なお、実施例及び比較例は、加えた添加剤量が極微のため、新油時の動粘度に小数点2以下では変化が無かったため、@100℃の動粘度が6.501mm/s、@40℃の動粘度が35.0mm/sを各々の新油の動粘度として使用している。
(全酸価増加量試験)
JIS K2501の中和価試験方法のうちの、電位差滴定法により、ISOT後の酸価から新油時の酸価を引いて、新油時に対する変化量を求めた。
酸価増加量(mgKOH/g)=(ISOT後の酸価)−(新油時の酸価)
(銅版腐食試験)
JIS K2513に基づき、試料油を入れた試験管に、所定の手順で研磨した銅板試験片を浸漬した状態で、温度165℃の恒温槽内に、72時間放置した後、試験片を取り出し、試験片の変色状態を目視で評価した。
銅版の腐食程度の判定はASTM D180に基づき行った。
変色番号1(a,b):わずかに変色
変色番号2(a,b,c,d,e):中程度に変色
変色番号3(a,b):濃く変色
変色番号4(a,b,c):腐食
〔注:aからeに向かって変色の状態が激しくなる。〕
(結果)
上記物性測定及び各試験の結果を表2、表3に示す。
(考察)
表2に示すように実施例1及び実施例2の、グループ3基油にジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(サンセラーZ-BE)を0.11質量%、0.55質量%添加したものは、100℃の粘度増加率においてほとんど増加を示していない。また、既存のアミン系酸化防止剤を併用した実施例4及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を併用添加した実施例5においても粘度増加が見られない。実施例3のフェノール系酸化防止剤とテトラベンジルチウラムジスルフィドをさらに併用添加したものでも粘度増加が見られない。このようにジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛に既存の酸化防止剤を併用しても酸化防止性能には影響しないことが判った。
また、実施例1〜5のものは、全酸価増加量が0.06〜0.09mgKOH/gが低く、銅への腐食防止性も新油で165℃×72時間という厳しい条件下でも1bと良好な結果が得られている。そして、酸化防止性能などは、実施例1のジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛を0.11質量%添加したものと、実施例2の0.55質量%添加したものと同等であり、0.11質量%の添加量ですでに飽和に達していること、及び5倍量添加しても悪影響がないことが判った。
一方、表3に示すように、比較例1は基油そのものをISOTで酸化したものであるが、100℃の粘度増加率は49%と大幅な増粘を示している。また、銅版腐食は実施例とほぼ同様であるが、全酸価の増加量は約11mgKOH/gと増加している。
また、比較例3では既存のヒンダードフェノール系酸化防止剤を、比較例4では既存のアミン系酸化防止剤を、比較例5ではジアルキルジチオカルバメートを、比較例5ではアミン系酸化防止剤を、比較例6はジアミルジチオカルバミン酸亜鉛(Vanlube−AZ)を使用したものであり、比較例2はフェノール系酸化防止剤とテトラベンジルチウラムジスルフィドを併用したものであるが、いずれも粘度増加率は13.5〜36%と増粘しており、全酸価の増加量も7.45〜9.63と大きく増えている。そして、銅版腐食においても比較例1、3は実施例と同様に1bであるが、比較例2、4、5では2a、比較例6では2cと腐食の程度が進んでいる。
このように、実施例のものでは、良好な結果が得られていることが判った。
Figure 2012131879
Figure 2012131879

Claims (3)

  1. 100℃の動粘度が1.4〜50mm/sの鉱油、ポリ-αオレフィン、αオレフィンオリゴマー、ジカルボン酸ジエステル、ヒンダードエステル、ヒンダードジエステルから選択される1種又は2種以上を混合してなる基油に、下記式(1)で示すジヒドロカルビルジチオカルバミン酸亜鉛を組成物全量に対して亜鉛量で50〜1,000ppmを含有する潤滑油組成物。
    Figure 2012131879
    式(1)中、R、R、R、Rは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数の合計が8以下の無置換又はアルキル基で置換されたアリール基を表す。
  2. 上記ジヒドロカルビルジチオカルバミン酸亜鉛が、熱天秤(空気気流中、5℃/分)により重量減少率が80wt%で、温度が350℃以下のものである請求項1に記載の潤滑油組成物。
  3. 金属清浄分散剤、無金属清浄分散剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、防錆剤、腐食防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤の少なくとも1つを更に含有する請求項1または2に記載の潤滑油組成物。
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