以下、図1〜図15を参照して、本発明の実施形態に係るバックル移動装置10について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは、バックル移動装置10が搭載された車両用シート12の前方向を示し、矢印UPは、車両用シート12の上方向を示し、矢印LHは、車両用シート12の左方向を示し、矢印RHは、車両用シート12の右方向を示している。また、本実施形態では、車両用シート12の前方向、上方向、左方向、右方向は、この車両用シート12が搭載された車両14の前方向、上方向、左方向、右方向と一致している。
(実施形態の構成)
図1に示されるように、バックル移動装置10は、所謂3点式のシートベルト装置16の一部を構成している。このシートベルト装置16は、長尺帯状に形成されたシートベルト18(図1以外では図示省略)を備えている。
シートベルト18の長手方向一端部は、車両用シート12の幅方向一側(ここでは右側)で、車両のセンターピラー20の下端部近傍に固定されたリトラクタ22の巻取軸に係止されている。シートベルト18の長手方向他端部は、センターピラー20の下端部近傍に固定されたアンカ部材24に係止されている。シートベルト18の長手方向中間部は、センターピラー20の上部に取り付けられたスリップジョイント26に挿通されて折り返されている。さらに、シートベルト18の長手方向中間部には、スリップジョイント26とアンカ部材24との間において、タングプレート28(タング)が摺動可能に取り付けられている。このタングプレート28は、車両用シート12を構成するシートクッション32の幅方向側方(ここでは左側の側方)に配置されたバックル30に装着可能とされている。
バックル30にタングプレート28が装着されると、シートベルト18のうちタングプレート28とアンカ部材24との間の部分が乗員Pの腰部を拘束するラップベルト18Aとなり、タングプレート28とスリップジョイント26との間の部分が乗員Pの上体を拘束するショルダベルト18Bとなる。
本実施形態に係るバックル移動装置10は、上述のバックル30を、シートクッション32の後端側におけるバックル格納位置(拘束位置)と、当該バックル格納位置よりも前方側のアクセス位置(前方位置)との間で移動させるための装置(ベルト装着アシスト装置)であり、シートクッション32の幅方向側部(ここでは左側の側部)に固定されたレール34を備えている。なお、図1では説明の都合上、バックル移動装置10が概略的に図示されている。
図2〜図4に示されるように、レール34は、板金材料によって長尺な直線状に形成されており、車両用シート12の左右方向から見て長手方向がシートクッション32の座面32Aに沿うように配置されている。シートクッション32の座面32Aは、前端側へ向かうに従い上昇するように、水平方向に対して僅かに傾斜しており、当該傾斜に沿うようにレール34が配置されている。
このレール34は、図5に示されるように、上下に対向する一対の側壁34A、34Bと、これらの一対の側壁34A、34Bにおけるシートクッション32側の端部を連結した連結壁34Cとを有しており、シートクッション32とは反対側が開口した開断面形状に形成されている。さらに、レール34の長手方向中間部においては、一対の側壁34A、34Bにおけるシートクッション32とは反対側の端部からそれぞれスライダ保持壁34D、34Eが延出されている。これらのスライダ保持壁34D、34Eは、互いに接近する側へ延出されており、レール34の長手方向中間部は、断面略C字状に形成されている。
また、図4に示されるように、連結壁34Cの前端部には、リベット36によってフロントブラケット38の長手方向一端部(上端部)が締結固定されている。このフロントブラケット38の長手方向他端部(下端部)は、ボルト及びナットによってシートクッション32のクッションフレーム(図示省略)に締結されている。これにより、レール34の前端部がフロントブラケット38を介してシートクッション32の前端側に締結固定されている。このフロントブラケット38の長手方向中間部には、ネジ及びナットによってホールセンサAssy40が固定されている。このホールセンサAssy40は、車両に搭載された図示しない制御装置に電気的に接続されており、後述する遮蔽板130に対応している。
連結壁34Cの後端部には、貫通孔42が形成されており、当該貫通孔42に挿通されたボルトがシートクッションフレーム側のナットに螺合することで、レール34の後端部がシートクッション32の後端部に締結固定されている。
一対の側壁34A、34Bの間には、送りネジとしての長尺なドライブスクリュー46が配置されている。このドライブスクリュー46は、軸線方向がレール34の長手方向に沿う状態で配置されている。
図6及び図7に示されるように、ドライブスクリュー46の後端部(軸線方向一端部)は、スクリューブラケット48(支持部材)を介してレール34の後端部(長手方向一端部)に支持されている。スクリューブラケット48は、板金材料によって形成されたものであり、一対の側壁34A、34Bのそれぞれと重ね合わされた一対の固定部48A、48Bと、これらの固定部48A、48Bにおける連結壁34Cとは反対側の端部を連結した連結部48Cと、連結部48Cの長手方向中間部からシート前方側へ延出された支持部48Dとを有している。
図8に示されるように一対の固定部48A、48Bは、一対の側壁34A、34Bの各外側面に当接して配置されており、固定具としての長尺な段付ボルト50によって一対の側壁34A、34Bに締結固定されている。段付ボルト50は、軸線方向中間部が円柱状に形成されている。段付ボルト50の軸線方向一端部には、軸線方向中間部よりも大径な頭部50Aが設けられ、段付ボルト50の軸線方向他端部には、軸線方向中間部よりも小径な雄ネジ部50Bが設けられている。
この段付ボルト50は、軸線方向一端側が固定部48Bに形成された貫通孔52及び側壁34Bに形成された貫通孔54を貫通している。これらの貫通孔52、54は頭部50Aよりも小径に形成されており、頭部50Aが貫通孔52の孔縁部に当接することにより、段付ボルト50の上方側への変位が規制されている。
また、段付ボルト50は、雄ネジ部50Bが側壁34Aに形成された貫通孔56及び固定部48Aに形成された貫通孔58を貫通している。この貫通孔58の内周部には雌ネジが形成されており、当該雌ネジに雄ネジ部50Bが螺合することで、段付ボルト50がスクリューブラケット48に締結されている。つまり、この段付ボルト50は、一対の側壁34A、34B及び一対の固定部48A、48Bを貫通しており、当該貫通状態でスクリューブラケット48をレール34に固定している。
一方、図7に示されるように、スクリューブラケット48の支持部48Dは、基端側が略直角に屈曲しており、先端側がレール34の連結壁34C側へ延出されている。支持部48Dの先端部は、連結壁34Cに形成された矩形の貫通孔60に挿入されており、貫通孔60におけるシート前方側の内周面に当接している。また、支持部48Dの先端部には、シート前方側へ向けて突出した引掛部48Eが設けられており、当該引掛部48Eが連結壁34Cに引っ掛けられている。さらに、支持部48Dの中間部には、円形の貫通孔が形成されており、この貫通孔には、リング状に形成されたブッシュ62が嵌合している。
ブッシュ62は、外周に形成された段部が支持部48Dと係合することにより、レール34の前端側への変位を規制されている。このブッシュ62の内側には、ドライブスクリュー46の軸線方向一端部が回転可能に嵌合している。これにより、ドライブスクリュー46の軸線方向一端部は、ブッシュ62及びスクリューブラケット48を介してレール34の後端部に支持されている。
ドライブスクリュー46の軸線方向一端部には、ドライブスクリュー46の外径寸法を拡大する鍔部46Aが設けられている。この鍔部46Aがブッシュ62の端面と係合することにより、レール34の前端側へのドライブスクリュー46の変位が規制されている。また、スクリューブラケット48の支持部48Dには、ゴム等の弾性体からなるダンパー64(緩衝材)が装着されている。
ここで、前述した段付ボルト50は、ドライブスクリュー46の軸線方向一端面(鍔部46Aの端面)と対向する位置に配置されており、その軸線がドライブスクリュー46の軸線と直交した状態で配置されている。この段付ボルト50には、樹脂製のブッシュ66が装着されている。このブッシュ66は、略角柱状に形成されており、長手方向が一対の側壁34A、34Bの対向方向に沿う状態で一対の側壁34A、34B間に配置されている。このブッシュ66には、当該ブッシュ66をその長手方向に貫通したボルト挿通孔68が形成されており、このボルト挿通孔68には、段付ボルト50が挿通されている。これにより、ブッシュ66が段付ボルト50に支持されている。
このブッシュ66は、鍔部46Aの端面(ドライブスクリュー46の軸線方向一端面)と当接して配置されている。これにより、レール34の後端側(シート後方側)へのドライブスクリュー46の変位が規制されており、ドライブスクリュー46がレール34に対して軸線方向に位置決めされている。なお、上述のブッシュ66は、鍔部46Aの端面と当接する部位が球面状に形成されている。
一方、図9に示されるように、ドライブスクリュー46の前端部(軸線方向他端部)は、スクリューブラケット70を介してレール34の前端部(長手方向他端部)に支持されている。このスクリューブラケット70は、板金材料によって形成されたものであり、レール34の長手方向に対向する一対の脚部70A、70Bと、これらの脚部70A、70Bにおける連結壁34C側の端部を連結した連結部70Cとを有している。
連結部70Cは、前述したリベット36によって連結壁34Cの前端部に締結固定されている。シート後側の脚部70Aには、ゴム等の弾性体からなるダンパー72(緩衝材)が装着されている。このダンパー72及び脚部70Aには、それぞれ同心状の貫通孔が形成されており、これらの貫通孔にはドライブスクリュー46の軸線方向他端側が挿通されている。
シート前側の脚部70Bには、円形の貫通孔が形成されており、この貫通孔には、円筒状に形成されたブッシュ74が嵌合している。このブッシュ74の内側には、ドライブスクリュー46の軸線方向他端側が回転自在に嵌合している。これにより、ドライブスクリュー46の軸線方向他端側がブッシュ74及びスクリューブラケット70を介してレール34の前端部に支持されている。
ドライブスクリュー46の軸線方向他端部は、脚部70Bよりもシート前方側へ突出しており、当該突出部分には、角柱状の連結部46Bが設けられている。この連結部46Bは、スクリュージョイント76の中央部に形成された角孔に嵌合している。これにより、スクリュージョイント76がドライブスクリュー46の軸線方向他端部に相対回転不能に取り付けられている。このスクリュージョイント76は、駆動源78を構成している。
駆動源78は、図4に示されるように、ギアハウジング82を備えている。このギアハウジング82は、レール34の前端部に形成されたギアハウジング取付部34Fにビスによって締結固定されており、上述のスクリュージョイント76は、このギアハウジング82内に収容されている。このギアハウジング82の下端側には、モータ84が取り付けられている。
モータ84は、図示しない出力軸がレール34の長手方向に沿う状態でレール34の下方側に配置されており、車両に搭載された図示しない制御装置に電気的に接続されている。このモータ84の出力軸には、ギア86が固定されている。このギア86には、別のギア88が噛合されており、このギア88には、更に別のギア90が噛合されている。これらのギア88、90は、ギアハウジング82に回転可能に支持されている。また、ギア90は、図9に示されるように、弾性変形可能なジョイントダンパ92を介してスクリュージョイント76と連結されている。これにより、モータ84の出力軸の回転が、ギア86、88、90、ジョイントダンパ92、及びスクリュージョイント76を介してドライブスクリュー46に伝達される。
この場合、モータ84の出力軸が正方向に回転すると(モータ84が正転すると)、ドライブスクリュー46が軸線回り一方へ回転され、モータ84の出力軸が逆方向に回転すると(モータ84が逆転すると)、ドライブスクリュー46が軸線回り他方へ回転される。なお、上述したギア86、88、90は、ギアハウジング82内に収容されており、複数のビスによってギアハウジング82に固定されたカバー94によって覆われている。
一方、ドライブスクリュー46には、アンカスライダ96(スライダ)が取り付けられている(図2〜図5、図7、図9参照)。アンカスライダ96は、レール34の長手方向に沿って長尺な角柱状に形成されている。このアンカスライダ96は、図5に示されるように、一対の側壁34A、34Bの間に配置されており、レール34に対して長手方向に移動可能(スライド可能)とされている。図5に示されるように、アンカスライダ96の外側には、樹脂材料によって薄肉状に形成されたシュー98が被せられている。シュー98は、断面略C字状に形成されており、連結壁34C側及びアンカスライダ96の長手方向両端側が開口している(図10参照)。
アンカスライダ96は、連結壁34Cとは反対側の側面における上下方向中間部が、連結壁34Cとは反対側へ向けて突出した突出部96Aとされている。この突出部96Aは、アンカスライダ96の長手方向に沿って延在している。また、シュー98は、突出部96Aと対向(接触)した部分が、突出部96Aの形状に対応した膨出部98Aとされている。これらの膨出部98A及び突出部96Aは、レール34のスライダ保持壁34D、34Eの間に配置されている。なお、図5に示されるように、下側のスライダ保持壁34Eの上下方向寸法は、上側のスライダ保持壁34Dの上下方向寸法よりも大きく設定されている。
図10に示されるように、突出部96Aの前端側には、連結壁34Cとは反対側へ向けて突出した円柱状のボス100が設けられている。このボス100は、膨出部98Aの前端側に形成された貫通孔102を貫通している。また、突出部96Aの後端側には、ボルト孔104が形成されており、当該ボルト孔104の孔縁部には、連結壁34Cとは反対側へ向けて円筒状に突出した位置決め部106が設けられている。この位置決め部106は、膨出部98Aの後端側に形成された円形の貫通孔108に嵌合している。これにより、シュー98がアンカスライダ96に対して位置決めされており、アンカスライダ96に対するシュー98の相対移動が規制されている。このため、シュー98は、アンカスライダ96がレール34に対して長手方向にスライドした際には、アンカスライダ96に追従して(アンカスライダと一体的に)レール34に対し長手方向にスライドされる。
なお、シュー98が連結壁34Cとは反対側(ボルト孔104側)へ開口した開断面形状である場合には、アンカスライダ96のスライド時にシュー98が追従し難いが、本実施形態では上述の構成によりシュー98がアンカスライダ96に良好に追従する。
上述のアンカスライダ96には、当該アンカスライダ96をその長手方向に沿って貫通した貫通孔110が形成されている。この貫通孔110の内周には、雌ネジが形成されており、この雌ネジには、ドライブスクリュー46の外周に形成された雄ネジが螺合している。このため、ドライブスクリュー46が軸線回りに回転することにより、アンカスライダ96及びシュー98がレール34に対して長手方向に移動(スライド)される。
なお、図5に示されるように、シュー98には、連結壁34Cとアンカスライダ96との間に介在された部位に上下一対のリブ112、114が設けられており、これらのリブ112、114が連結壁34Cと接触している。これにより、シュー98がレール34に対してシート左右方向に位置決めされている。また、シュー98には、膨出部98Aの上下に一対のリブ116、118が設けられている。上側に設けられたリブ116は、スライダ保持壁34Dの端面に接触しており、下側に設けられたリブ118は、スライダ保持壁34Eの端面に接触している。これにより、シュー98がレール34に対して上下方向に位置決めされている。これらのリブ112、114、116、118は、シュー98の長手方向両端部にそれぞれ設けられている。このため、上述の如くアンカスライダ96及びシュー98がレール34に対してスライドする際には、シュー98がリブ112、114、116、118においてレール34と摺動する。これにより、レール34に対するシュー98の摺動抵抗が大幅に低減されるようになっている。
一方、図10に示されるように、アンカスライダ96に対してシート左側(シートクッション32とは反対側)には、ロアブラケット122が配置されている。ロアブラケット122は、アンカスライダ96と共に移動部材を構成すると共に、後述するバックルステー136及びバックル30等と共にインナアンカ120を構成している。このロアブラケット122は、板金材料によって長尺状に形成されている。ロアブラケット122の長手方向一端部(下端部)には、貫通孔124が形成されており、当該貫通孔124に挿入されたボルト126がアンカスライダ96のボルト孔104に螺合している。これにより、ロアブラケット122は、アンカスライダ96に対して前傾した姿勢で(アンカスライダ96からシート前方側の斜め上方側へ突出した状態で)アンカスライダ96に締結固定されている。
また、ロアブラケット122の下端部からは、シート前方側へ向けて回止部122Aが延出されている。この回止部122Aには円形の貫通孔128が形成されており、当該貫通孔128にはアンカスライダ96のボス100が嵌合している。これにより、アンカスダイダ96に対するロアブラケット122の相対回転が規制されている。
さらに、ロアブラケット122の下端部とシュー98との間には、薄い板金材料によって形成された遮蔽板130が配置されている。この遮蔽板130の中央部には、ボルト126が貫通した貫通孔132が形成されており、遮蔽板130は、ボルト126の締結力によってロアブラケット122の下端部とアンカスライダ96の位置決め部106との間に挟持されている(図5参照)。また、遮蔽板130の前端部には、アンカスライダ96のボス100が貫通した貫通孔134が形成されている。これにより、アンカスライダ96に対する遮蔽板130の相対回転が防止されている。さらに、この遮蔽板130には、上方側へ突出した上方突出片130Aと、下方側へ突出した下方突出片130Bとが設けられている。これらの上方突出片130A及び下方突出片130Bは、前述したホールセンサAssy40及び後述するホールセンサAssy162に対応している。
ロアブラケット122の長手方向他端部(上端部)には、バックルステー136(アンカステー)が連結されている。このバックルステー136は、板金材料によって長尺状に形成されている。バックルステー136の長手方向一端部(下端部)は、ロアブラケット122の上端部に対して重ね合わされており、ロアブラケット122の上端部に形成された貫通孔138、及びバックルステー136の下端部に形成された貫通孔140を貫通した第1回転軸142(リベット)がカシメられている。これにより、バックルステー136は、ロアブラケット122に対して第1回転軸142回りにシート前後方向へ傾動(回転)可能に連結されている。なお、バックルステー136の下端部とロアブラケット122の上端部との間には、バックルステー136がロアブラケット122に対して回転する際の摺動抵抗を低減する樹脂製のワッシャ137が介在している。
また、ロアブラケット122の上端部からは、バックルステー136の傾動範囲を一定角度に制限するための前後一対のストッパ部122B、122Cが延出されている。これらのストッパ部122B、122Cは、基端側において屈曲しており、先端側がシートクッション32側へ突出している。バックルステー136の下端部は、前後一対のストッパ部122B、122Cの間に配置されている。このため、バックルステー136の下端部が前側のストッパ部122Bに当たることにより、ロアブラケット122に対するバックルステー136のシート前方側への回転が規制され、バックルステー136の下端部が後側のストッパ部122Cに当たることにより、ロアブラケット122に対するバックルステー136のシート後方側への回転が規制される。
また、バックルステー136の下端部に対してロアブラケット122とは反対側には、コイルスプリング146(第1付勢部材)が配置されている。このコイルスプリング146は、コイル状に形成された中間部を第1回転軸142が貫通した状態で当該第1回転軸142に支持されている。コイルスプリング146の一端部は、バックルステー136に形成された貫通孔148に挿入されてバックルステー136に係止されており、コイルスプリング146の他端部は、後側のストッパ部122Cに形成された切欠150に挿入されてロアブラケット122に係止されている。これにより、コイルスプリング146は、バックルステー136を後側のストッパ部122Cと当接する方向へ付勢している。このため、バックルステー136は、通常は後側のストッパ部122Cと当接した状態に保持されているが、バックルステー136に対してコイルスプリング146の付勢力を上回るシート前方側へ向いた力が作用すると、バックルステー136がロアブラケット122に対して第1回転軸142回りにシート前方側へ回転(傾動)するようになっている。
さらに、バックルステー136の下端部には、シート前方側の斜め下方側へ突出したローラー取付部136Aが設けられている。このローラー取付部136Aには、円筒状に形成されたローラー152(被ガイド部)がローラーリベット154によって取り付けられている。ローラーリベット154は、ローラー152の中心部に挿通されると共にローラー取付部136Aに形成された貫通孔156に挿通されてカシメられている。ローラーリベット154及びローラー152は、軸線方向がシート左右方向に沿う状態で配置されており、ローラー152は、ローラーリベット154に対して回転自在に支持されている。このローラー152は、後述するインナガイドブラケット160に対応している。
一方、バックルステー136の上端部には、バックル30が取り付けられている。バックル30は、図11に示されるように、板金材料によって形成されたバックルボディ170と、このバックルボディ170を覆う樹脂製のバックルケース172とを備えている。バックルボディ170の下端部は、バックルステー136の上端部に重ね合わされており、バックルステー136の上端部に形成された貫通孔、及びバックルボディ170の下端部に形成された貫通孔を貫通した第2回転軸174(リベット)がカシメられている。この第2回転軸174は、首振りバックル機構176を構成しており、バックル30は、バックルステー136に対して第2回転軸174回りにシート前後方向へ傾動(回転)可能に連結されている。
また、バックルステー136の上端部からは、バックルボディ170の傾動範囲を一定角度に制限するための前後一対のストッパ部136B、136Cが延出されている。これらのストッパ部136B、136Cは、基端側において屈曲しており、先端側がシートクッション32とは反対側(バックルボディ170が重ね合わされた側)へ突出している。バックルボディ170の下端部は、前後一対のストッパ部136B、136Cの間に配置されている。このため、バックルボディ170の下端部が前側のストッパ部136Bに当たることにより、バックルステー136に対するバックル30のシート前方側への回転が規制され、バックルボディ170の下端部が後側のストッパ部136Cに当たることにより、バックルステー136に対するバックル30のシート後方側への回転が規制される。
また、バックルボディ170の下端部に対してバックルステー136とは反対側には、首振りバックル機構176を構成するコイルスプリング178(第2付勢部材)が配置されている。このコイルスプリング178は、コイル状に形成された中間部を第2回転軸174が貫通した状態で当該第2回転軸174に支持されている。コイルスプリング178の一端部は、バックルボディ170に係止されており、コイルスプリング178の他端部は、バックルステー136に係止されている。これにより、コイルスプリング178は、バックルボディ170を前側のストッパ部136Bと当接する方向へ付勢している。このため、バックル30は、通常はバックルボディ170が前側のストッパ部136Bと当接した状態に保持されているが、バックル30に対してコイルスプリング178の付勢力を上回るシート後方側へ向いた力が作用すると、バックル30がバックルステー136に対して第2回転軸174回りにシート後方側へ回転(傾動)するようになっている。
但し、本実施形態では、バックル30を前述した第1回転軸142回りにシート前方側へ傾けるために必要な力よりも、バックル30を第2回転軸174回りにシート後方側へ傾けるために必要な力の方が小さくなるように、コイルスプリング146、178の各付勢力が設定されている。
さらに、上述の首振りバックル機構176では、バックルボディ170と第2回転軸174との間には遊びが設けられており、バックル30は、バックルステー136の上端部に対してシート左右方向に首振り可能(傾動可能)に連結されている。但し、バックル30がバックルステー136の上端部に対してシート左右方向に傾動する際には、コイルスプリング178が圧縮される構成になっている。このため、バックル30は、通常は中立位置に保持されている。なお、図12には、バックル30が中立位置に配置された状態が実線で示され、バックル30が中立位置からシート幅方向内側(ここではシート右側)へ傾いた状態が二点鎖線で示されている。
上記構成のバックル30は、バックルケース172の上端に図示しないタング挿入口が形成されており、タングプレート28に設けられた舌片が当該タング挿入口に挿入されることにより、タングプレート28がバックル30に装着(係止)される。また、バックル30に設けられた図示しない解除ボタンが押圧操作されると、バックル30に対するタングプレート28の装着状態が解除される。このバックル30には、タングプレート28を検出するためのバックルスイッチ158(図10参照)が設けられている。このバックルスイッチ158は、タングプレート28がバックル30に装着されているときにはオン状態となり、タングプレート28がバックル30に装着されていないときにはオフ状態となる。このバックルスイッチ158は、前述した制御装置に電気的に接続されている。制御装置は、バックルスイッチからの信号に基づいて、タングプレート28がバックル30に装着されているか否かを検知する。
一方、図2及び図3に示されるように、レール34には、板金材料によって長尺状に形成されたインナガイドブラケット160(ガイド部材)が取り付けられている。インナガイドブラケット160は、長手方向がレール34の長手方向に沿う状態で配置されており、連結壁34Cにおけるシートクッション32側の面に溶接等の手段によって固定されている(図13参照)。このインナガイドブラケット160は、レール34よりも短く(ここではレール34の長さ寸法の3分の2程度の長さ寸法に)形成されており、レール34の後部寄りに配置されている。
図10に示されるように、インナガイドブラケット160の後端部からは、上方側へ向けてセンサ取付部160Aが延出されている。このセンサ取付部160Aには、ネジ及びナットによってマグネット付きのホールセンサAssy162が固定されている。このホールセンサAssy162は、前述した制御装置に電気的に接続されており、前述した遮蔽板130に対応している。
また、インナガイドブラケット160の前端側及び長手方向中間部からは、上方側へ向けて上方延出部160Bが延出されている。この上方延出部160Bの上端からは、シートクッション32とは反対側の斜め上方側へ向けて傾斜部160Cが延出されており、この傾斜部160Cの上端からは、シートクッション32とは反対方向へ向けてローラーガイド部160Dが延出されている。
このローラーガイド部160Dの下面は、前述したローラー152が接触する(転動する)ローラー接触面とされている。このローラーガイド部160Dは、レール34の上面(側壁34Aの外側面)と対向して配置されており、シート後方側へ向かうに従いレール34に接近するようにレール34に対して僅かに傾斜して配置されている。また、このローラーガイド部160Dの前端部には、シート前方側へ向かうに従い上昇するように湾曲した湾曲部160Eが設けられている。
ここで、上記構成のバックル移動装置10では、制御装置がモータ84を正転させることにより、ドライブスクリュー46が軸線回り一方へ回転されると、アンカスライダ96がレール34の前端側へスライドされる。これにより、アンカスライダ96に連結されたインナアンカ120が、シートクッション32の前端側に設定されたアクセス位置(図2に実線で示される位置)へと移動される。また、制御装置がモータ84を逆転させることにより、ドライブスクリュー46が軸線回り他方へ回転されると、アンカスライダ96がレール34の後端側へ移動される。これにより、アンカスライダ96に連結されたインナアンカ120が、シートクッション32の後端側に設定されたバックル格納位置(図3に示される位置)へと移動される。
図2に実線で示されるように、インナアンカ120がアクセス位置に配置された状態では、バックルステー136の下端部に回転可能に取り付けられたローラー152が、インナガイドブラケット160からシート前方側へ大きく離間して配置される。この状態では、インナアンカ120のバックルステー136が、コイルスプリング146の付勢力によってロアブラケット122の後側のストッパ部122Cに押し当てられる。これにより、バックルステー136及びバックル30の前傾角度が小さくなり、バックルステー136及びバックル30がシートクッション32の前端側において起立する(略上下方向に沿って配置される)。この状態では、バックル30がシートクッション32の座面32Aよりも上方側へ大きく突出して配置される。
一方、インナアンカ120がアクセス位置からバックル格納位置へ向けて移動されると、バックルステー136に設けられたローラー152がインナガイドブラケット160に接触するまでは、バックルステー136及びバックル30がアクセス位置における前傾姿勢と同じ姿勢のままでレール34に沿って直線的に移動される(図2に示される一点鎖線S1参照)。なお、図2に示される一点鎖線S2は、バックル30に装着されたタングプレート28におけるシートベルト挿通孔の中央部の移動軌跡を示している。
そして、インナアンカ120がアクセス位置とバックル格納位置との間の中央付近に到達すると、ローラー152がインナガイドブラケット160の湾曲部160Eに案内されて、ローラーガイド部160Dの下面に接触する。この状態から更にインナアンカ120がバックル格納位置側へ移動されると、ローラー152がローラーガイド部160Dの下面で転動しながらローラーガイド部160Dの後端側へ移動する。ローラーガイド部160Dの後端側は、ローラーガイド部160Dの前端側よりもレール34に近接して配置されているため、ローラー152はローラーガイド部160Dの後端側へ向かうに従いレール34に接近する。これにより、バックルステー136がコイルスプリング146の付勢力に抗してロアブラケット122に対し第1回転軸142回りにシート前方側へ傾動する(ロアブラケット122に対するバックルステー136の傾斜角度が変更される)。これにより、バックル30及びタングプレート28は、バックル格納位置へ向けて円弧を描いて降下する(図2に示される一点鎖線S1及び一点鎖線S2参照)。
インナアンカ120がバックル格納位置に到達すると、図3に示されるように、バックルステー136とロアブラケット122とが一直線上に並び、バックル30が第1回転軸142を介してボルト126とは反対方向に配置される。この状態では、バックル30及びバックルステー136の前傾角度が、アクセス位置における前傾角度よりも大きくなり、バックル30が乗員Pの腰骨の側方に配置される。また、この状態では、ロアブラケット122の前側のストッパ部122Bとバックルステー136の下端部との間には、僅かに隙間が確保される。このため、バックルステー136は、バックル格納位置に配置された状態においても、ロアブラケット122に対してシート前方側へ一定角度傾動可能とされる。
なお、インナアンカ120がバックル格納位置からアクセス位置へ向けて移動される際にも、バックル30は図2に示される一点鎖線S1(仮想線)に沿って移動され、タングプレート28は図2に示される一点鎖線S2に沿って移動される。
また、このバックル移動装置10では、インナアンカ120がアクセス位置に配置された状態では、遮蔽板130の下方突出片130BがホールセンサAssy40に形成されたスリット40A(図4参照)内に配置される。このスリット40Aは、遮蔽板130がアンカスライダ96と共にレール34の前端側へスライドされた際の下方突出片130Bの移動軌跡上に配置されている。ホールセンサAssy40は、スリット40Aを介して対向した一対のマグネットと、ホールセンサとを有している。ホールセンサは、下方突出部96Aがスリット40A内に侵入してマグネットの磁気が遮蔽されることによりオン状態となる。これにより、制御装置はインナアンカ120がアクセス位置に到達したことを検知し、モータ84への給電を遮断する。
この場合、制御装置は、スクリューブラケット70の脚片70Aに取り付けられたダンパー72にアンカスライダ96が当接する前に、モータ84への給電を遮断してアンカスライダ96を停止させるようになっている。換言すれば、アンカスライダ96がダンパー72に当接する前に、ホールセンサAssy40からの信号によって制御装置がモータ84を停止させるように、ホールセンサAssy40が配置されている。
一方、インナアンカ120がバックル格納位置に配置された状態では、遮蔽板130の上方突出片130AがホールセンサAssy162に形成されたスリット162A(図4参照)内に配置される。このスリット162Aは、遮蔽板130がアンカスライダ96と共にレール34の後端側へスライドされた際の上方突出片130Aの移動軌跡上に配置されている。ホールセンサAssy162は、前述したホールセンサAssy40と同様の構成とされており、上方突出部96Aがスリット162A内に侵入してマグネットの磁気が遮蔽されることによりホールセンサがオン状態となる。これにより、制御装置はインナアンカ120がバックル格納位置に到達したことを検知し、モータ84への給電を遮断する。
この場合、制御装置は、スクリューブラケット48の支持部48Dに取り付けられたダンパー64にアンカスライダ96が当接してから、モータ84への給電を遮断するようになっている。換言すれば、ホールセンサAssy162からの信号によって制御装置がモータ84を停止させるよりも前に、アンカスライダ96がダンパー64に当接するように、ホールセンサAssy162が配置されている。
(実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態では、車両用シート12に着座した乗員P(図1参照)が、シートベルト18を装着するためにタングプレート28をバックル30に係合させる際には、シートクッション32の前端側に設定されたアクセス位置にインナアンカ120が配置される。このため、乗員Pは上体を大きく捩ることなく、容易にタングプレート28をバックル30に係合させることができる。
タングプレート28がバックル30に係合されると、バックルスイッチ158がオン状態になり、制御装置がモータ84を逆転させる。これにより、ドライブスクリュー46が軸線回り他方へ回転し、アンカスライダ96がレール34の後端側へとスライドされ、インナアンカ120がバックル格納位置へと移動される。これにより、シートベルト18が乗員Pの身体に密着し、従来と同様のシートベルト装着状態となる。
一方、バックル30の解除ボタンが押圧操作されることで、バックル30へのタングプレート28の係合が解除されると、バックルスイッチ158がオフ状態になり、制御装置がモータ84を正転させる。これにより、ドライブスクリュー46が軸線回り一方へ回転し、アンカスライダ96がレール34の前端側へと移動され、インナアンカ120がアクセス位置に復帰される。このため、乗員Pが再びシートベルト18を装着する際には、タングプレート28をバックル30に容易に係合させることができる。
ここで、本実施形態では、ドライブスクリュー46は、軸線方向一端部がスクリューブラケット48を介してレール34の後端部に支持されている。このスクリューブラケット48は、段付ボルト50によってレール34に固定されている。この段付ボルト50は、ドライブスクリュー46の軸線方向一端面(鍔部46Aの端面)と対向して配置されており、当該段付ボルト50に装着されたブッシュ66が、ドライブスクリュー46の軸線方向一端面に当接している。これにより、簡素な構成でドライブスクリュー46を軸線方向に位置決めすることができる。
しかも、上述の如く、スクリューブラケット48をレール34に固定する段付ボルト50が、ドライブスクリュー46を軸線方向に位置決めする部材として部品共用されている。したがって、本実施形態では、ドライブスクリュー46を軸線方向に位置決めするための専用部品及びその配置スペースを省略することができるので、レール34の後端部の長さ寸法L1(図7参照)を短縮することができる。これにより、装置の体格を小型化することができ、シートクッション32の後端部からレール34の後端部が突出することを防止できる。なお、図2に示される点線Xは、シートクッション32のスライドレール33の後端と、図示しないシートクッションフレームの後端とを通る仮想線である。
また、ドライブスクリュー46が軸線回り一方へ回転した際(アンカスライダ96がレール34の前端側へスライドされる際)には、ドライブスクリュー46がアンカスライダ96からの反力によってシート後方側へ後退しようとするが、本実施形態では、段付ボルト50によってドライブスクリュー46の後退を阻止することができる。
さらに、本実施形態では、段付ボルト50がレール34の側壁34A、34B及びスクリューブラケット48の固定部48A、48Bを貫通した状態で両者を固定している。このため、車両の衝突時等に車両前方側へ慣性移動しようとする乗員Pからの荷重がシートベルト18等を介してドライブスクリュー46に負荷された際には、ドライブスクリュー46の鍔部46Aからスクリューブラケット48に負荷される過大な荷重F(図7参照)を、段付ボルト50によって良好に支持することができる。
しかも、段付ボルト50がレール34の一対の側壁34A、34B間に掛け渡されているので、上述の荷重Fを一対の側壁34A、34Bによって支持することができる。また、一対の側壁34A、34Bの間に配置されたドライブスクリュー46の軸線方向一端面が、段付ボルト50の長手方向中間部と対向して配置されるため、ドライブスクリュー46の軸線方向の位置決めを簡単な構成で行うことができる。
また、スクリューブラケット48は、ドライブスクリュー46の軸線方向一端部を支持する支持部48Dの先端側が、レール34の連結壁34Cに形成された貫通孔60に挿入されて当該貫通孔60におけるシート前方側の内周と当接している。これにより、スクリューブラケット48に負荷される荷重Fが、レール34の一対の側壁34A、34Bだけでなく連結壁34Cにも分散されるので、当該荷重Fを良好に支持することができる。
さらに、本実施形態では、段付ボルト50の軸線方向他端部に設けられた雄ネジ部50Bが、固定部40Aの貫通孔58の内周に形成された雌ネジに螺合している。これにより、段付ボルト50だけでスクリューブラケット48をレール34に固定することができ、ナットを省略することができるので、部品点数を削減することができる。
次に、本実施形態の他の特徴について説明する。なお、以下に記載する本実施形態の特徴は、請求項1〜請求項4に係る発明とは関係なく、それ自体が発明として成立するものである。換言すれば、以下に記載する本実施形態の特徴は、請求項1〜請求項4に係る発明の構成要件の全てを充足していなければ得られないものではない。
本実施形態では、図5に示されるように、下側のスライダ保持壁34Eの上下方向寸法が、上側のスライダ保持壁34Dの上下方向寸法よりも大きく設定されている。このため、シートベルト18からの荷重がロアブラケット122等を介してアンカスライダ96に対し上方向きに負荷されることにより、アンカスライダ96が下端側をスライダ保持壁34Dに押し付けるようにして回転しようとした際(図5において反時計回りに回転しようとした際)に、当該回転を下側のスライダ保持壁34Eによって良好に阻止することができる。これにより、アンカスライダ96がレール34から脱落することを良好に抑制できる。
また、本実施形態では、アンカスライダ96がレール34の前端側へスライドしてきた際には、制御装置は、スクリューブラケット70の脚片70Aに取り付けられたダンパー72(緩衝材)にアンカスライダ96が当接(衝突)する前に、モータ84への給電を遮断してアンカスライダ96を停止させる。つまり、インナアンカ120をアクセス位置へ移動させる際には、インナアンカ120を高精度に停止させる必要がないため、制御装置はホールセンサAssy40からの信号に基づいてモータ84を停止させる。
このため、モータ84を含む駆動源78が、ダンパー72へのアンカスライダ96の衝突によって繰り返しロックされることを回避できるので、駆動源78の負荷を低減することができる。これにより、駆動源78の耐久性を向上させることができる。また、スクリューブラケット70には、アンカスライダ96との衝突に対する強度及び剛性が要求されないため、スクリューブラケット70を小型軽量化することもできる。
なお、本実施形態では、ダンパー72は非常用に設けられているが、万が一アンカスライダ96がダンパー72に当接(衝突)した場合でも、ダンパー72は、スクリューブラケット70の一方の脚片70Aに取り付けられており、スクリューブラケット70の軸線方向他端部を支持する他方の脚片70Bには影響が及ばない。これにより、アンカスライダ96がダンパーに当接した際に、ドライブスクリュー46の軸がズレることを防止できる。
一方、アンカスライダ96がレール34の後端側へスライドしてきた際には、制御装置は、スクリューブラケット48の支持部48Dに取り付けられたダンパー64にアンカスライダ96が当接してから、モータ84への給電を遮断する。つまり、法規で規定されたバックル格納位置へとインナアンカ120を移動させる際には、バックル格納位置にてインナアンカ120を高精度に停止させる必要があるため、スクリューブラケット48の支持部48Dをストッパとして機能させてアンカスライダ96を高精度に位置決めする。これにより、インナアンカ120をバックル格納位置に高精度に配置させることができる。
しかも、本実施形態では、アンカスライダ96から衝突荷重を受けるスクリューブラケット48がレール34の後端側に配置され、駆動源78がレール34の前端側に配置されている。このように、アンカスライダ96から衝突荷重を受けるスクリューブラケット48と駆動源78がレール34の両端側に離れて配置されているため、当該衝突荷重が駆動源78に伝達されることを抑制できる。これにより、駆動部78が当該衝突荷重による変形の影響を受け難くすることができるので、駆動源78に余計な負荷が加わることを回避できる。したがって、これによっても駆動源78の耐久性を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、相対回転可能に連結された2つのステー(バックルステー136及びロアブラケット122)を介してバックル30がアンカスライダ96に連結されている。これにより、アクセス位置におけるバックル30へのタングプレート28の装着性を向上させつつ、レール34の長さ寸法を短縮することができる。
つまり、アクセス位置においてタングプレート28をバックル30に装着する際には、バックル30を起立させてなるべく上方側に配置させることが好ましい。この点、図14の下側に示されるように、バックル30が1本のステー200を介してアンカスライダ96に連結されている場合、バックル30をアクセス位置において起立させるためには、シート前方側へのアンカスライダ96のスライド量を増加させる必要がある。このため、レール34をシート前方側へ延長する必要がある(図14のL2参照)。
これに対し、本実施形態では、図14の上側に示されるように、アクセス位置においては、バックル30及びバックルステー136がロアブラケット122に対して第1回転軸142回りにシート後方側へ回転する。このとき、ロアブラケットの前傾姿勢には変化がないため、ロアブラケットの下端側が上端側よりもシート後方側に配置される。これにより、バックル30の移動量(可動長さ)を変更せずに、アンカスライダ96の移動量(スライド量)を短縮することができるので、レール34の長さ寸法を短縮することができる。したがって、レール34の小型軽量化及び低コスト化を図ることができる。しかも、レール34の長さ寸法が短縮されることにより、レール34の強度及び剛性が向上するので、コストが高い材料や補強部材が不要になる。したがって、これによってもレール34の小型軽量化や低コスト化が可能になる。
また、本実施形態では、アクセス位置側においては、バックル30がシートクッション32の座面32Aに沿って直線的に、つまり、シートクッション32に着座した乗員Pの大腿部に沿って直線的に移動される。このため、アクセス位置側では、バックル30及びタングプレート28と共に移動するシートベルト18が、乗員Pの大腿部や当該大腿部を覆う衣服に干渉することを抑制できる。これにより、乗員Pの衣服がシートベルト18によって後方へずらされることを効果的に抑制できる。
さらに、本実施形態では、インナアンカ120がバックル格納位置側へ移動される際には、バックル30がバックル格納位置へ向けて円弧を描いて降下する。このため、バックル格納位置へ向けてバックル30及びタングプレート28と共に降下するシートベルト18(ラップベルト18A)が、乗員Pの腰部を下方側へ押し付けるようにして当該腰部に装着される。これにより、ラップベルト18Aによる乗員腰部の拘束性を向上させることができる。
また、本実施形態では、直線状のレール34がシートクッション32の座面32Aに沿って配置されている。このため、アクセス位置側においては、バックルステー136のローラー152をインナガイドブラケット160に接触させなくても、バックル30をシートクッション32の座面32Aに沿わせて直線的に移動させることができる。また、バックルステー136は、常にコイルスプリング146によってロアブラケット122に対しシート後方側(バックルの前傾角度が小さくなる側)へ付勢されている。このため、アクセス位置側においては、バックルステー136のローラー152をインナガイドブラケット160に接触させなくても、バックルの前傾角度を小さくすることができる。これにより、アクセス位置側においては、インナガイドブラケット160を省略することができる。
つまり、バックルステー136がコイルスプリング146によって常に前傾する方向(前側のストッパ部122Bに当接する方向)へ付勢されている場合には、ローラー152の移動軌跡の全域にわたってインナガイドブラケット160を設ける必要があるが、本実施形態ではこれを回避することができる。これにより、インナガイドブラケット160の長さ寸法を短くすることができるので、バックル移動装置10の小型軽量化及び低コスト化を図ることができる。
また、本実施形態では、アクセス位置においてバックル30にタングプレート28を装着する際には、コイルスプリング178の付勢力に抗してバックル30をバックルステー136に対し第2回転軸174回りにシート後方側へ傾けることができる。また、当該装着の際には、コイルスプリング146の付勢力に抗してバックル30をロアブラケット122に対し第1回転軸142回りにシート前方側へ傾けることができる。さらに、バックル30は、アンカステー136との間に設けられた首振りバックル機構176においてシート左右方向へも傾動可能とされている。このように、バックル30が前後左右に傾動可能とされるため、乗員Pがタングプレート28をバックル30に挿入する際にタングプレート28が正確な向きに挿入されなくても、バックル30が可動することで柔軟にタングプレート28を挿入することができる。
さらに、本実施形態では、インナアンカ120がバックル格納位置に配置された状態では、バックル30は、首振りバックル機構176において上方向及びシート左右方向へ傾動可能で、かつ、第1回転軸142回りに下方向へ回転可能とされる。これにより、乗員Pの体格に応じてバックル30が自由に動くことにより、シートベルト18を乗員Pの身体に良好にフィットさせることができる。
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態において、図15に示されるように、インナガイドブラケット160のローラーガイド部160Dがシート左右方向に対して傾斜した構成にしてもよい。このように構成した場合、ローラー152がローラーガイド部160Dの下面に沿って傾斜することにより、アンカステー136及びバックル30をシート左右方向へ傾けることができる。これにより、アンカステー136の回転軸142回りの回転と相まって、アンカステー136及びバックル30を三次元的に自由に傾けることができる。
また、上記実施形態においては、制御装置がバックルスイッチ158からの信号のみに基づいてバックル移動装置10の作動を制御する構成にしたが、請求項1〜請求項8に係る発明はこれに限るものではない。例えば、車両のドアの開閉を検出するドア開閉センサや、乗員Pが車両用シート12に着座したことを検出する着座センサなどの信号に基づいて、制御装置がバックル移動装置10の作動を制御する構成にしてもよい。
また、上記実施形態では、段付ボルト50に装着されたブッシュ66がドライブスクリュー46の軸線方向一端部と当接する構成にしたが、請求項1〜請求項5に係る発明はこれに限らず、ブッシュ66が省略され、ドライブスクリュー46の軸線方向一端部が段付ボルト50に当接する構成にしてもよい。これにより、部品点数を削減することができる。
また、上記実施形態では、スクリューブラケット48の固定部48A、48Bが、レール34の側壁34A、34Bの外側に配置された構成にしたが、請求項1〜請求項5に係る発明はこれに限らず、固定部48A、48Bが側壁34A、34Bの内側に配置された構成にしてもよい。
また、上記実施形態では、段付ボルト50に設けられた雄ネジ部50Bが、固定部48Aの貫通孔58の内周に形成された雌ネジに螺合された構成にしたが、請求項1〜請求項3に係る発明はこれに限らず、雄ネジ部50Bにナットが螺合される構成にしてもよい。また、上述したように固定部48Aが側壁34Aの内側(下側)に配置される場合には、側壁34Aの貫通孔56の内周に形成された雌ネジに雄ネジ部50Bを螺合させる構成にすればよい。また、段付ボルト50の代わりに、リベット、ピン、割りピンなどの他の種類の固定具を用いる構成にしてもよい。
また、上記実施形態では、スクリューブラケット48の支持部48Dの先端部が、レール34の連結壁34Cに形成された貫通孔60に挿入されて当該貫通孔60に内周に係合した構成にしたが、請求項1又は請求項2に係る発明はこれに限らず、支持部48Dの先端部が、連結壁34Cに設けられた凸部と係合する構成にしてもよい。
また、上記実施形態では、スクリューブラケット48(支持部材)の固定部48A、48B及びレール34の側壁34A、34Bを貫通した段付ボルト50(固定具)によってスクリューブラケット48がレール34に固定された構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、固定具によるレールへの支持部材の固定構造は適宜変更することができる。
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことはいうまでもない。