JP2012130824A - 膜の監視方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜面への有機物とスケールとが付着するのを予め監視し、安定した生産水を生産することが可能な膜の監視方法を提供する。
【解決手段】本発明の膜の監視方法は、海水11を逆浸透膜12に通水させて透過水13と濃縮水20とに分離する膜の監視方法であり、海水11をろ過処理する前後にORP計23−1、23−2を設け、海水11と濃縮水20とにORP電極24−1、24−2を浸漬し、海水11と濃縮水20との両方のORPを測定し、ORP計23−1、23−2の測定値が連続して上昇した場合、ORP電極24−1、24−2を海水11と濃縮水20とから取り出して洗浄し、洗浄したORP電極24−1、24−2を用いて海水11と濃縮水20とのORPを再度測定し、得られるORP計23−1、23−2の測定値を洗浄前のORP計23−1、23−2の測定値と比較して、逆浸透膜12の表面への有機物、スケールの析出の有無を検知する。
【選択図】図1

Description

本発明は、膜の監視方法に関するものであり、特に、海水淡水化装置に用いられる逆浸透膜の洗浄方法に関する。
従来、原水である海水から淡水を得る装置として、海水に圧力をかけて逆浸透膜(RO膜:Reverse Osmosis Membrane)と呼ばれるろ過膜の一種に通し、海水の塩分を濃縮して除去することにより海水を淡水化させて上水として使用する淡水(透過水)を生産する淡水化装置が用いられている。
この淡水化装置では、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3)や水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)などの無機成分が濃縮してスケールが逆浸透膜に付着すると、逆浸透膜が目詰まりして生産水量が低下し、透水性能を低下させる。また、海水中に含まれる微量の重金属化合物が逆浸透膜に付着すると、逆浸透膜の膜面に付着した重金属化合物が触媒となり、酸化性物質を発生させて逆浸透膜を劣化させ、透過水の水質を低下させる。例えば、微量の重金属化合物が存在し、pHが高い(例えば、pH9〜11程度)状況下で、重亜硫酸ソーダ(Sodium Bisulfate Soda:SBS)と溶存酸素とが反応することで、ペルオキソ二硫酸など酸化物が発生し、この酸化物が逆浸透膜を酸化劣化し、透過水の水質を低下させる。
このように、逆浸透膜の膜面に析出物や有機物などの付着物などが発生することに起因して逆浸透膜の膜性能の低下を引き起こすことが知られており、逆浸透膜の膜性能が低下した後、逆浸透膜を定期的に洗浄して膜面の付着物を除去するか、逆浸透膜を交換し、逆浸透膜の安定した透水性能を維持する必要があった。
逆浸透膜を洗浄する方法の一例として、例えば、アルカリ性領域に調整された原水を逆浸透膜に通水させることにより、逆浸透膜に付着した有機物を分解・除去し、安定して透過水を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
特開2005−892号公報 特開2008−132421号公報
しかしながら、特許文献1、2に示すような従来の逆浸透膜の洗浄方法では、逆浸透膜の膜面に付着物が発生することにより起因して逆浸透膜の膜性能が低下することを未然に把握することはできなかった。そのため、逆浸透膜の透水性能が低下するか、透過水の水質が低下したことを確認した後でなければ、逆浸透膜を洗浄して膜面の付着物を除去するか、逆浸透膜を交換することができなかったため、常時安定して透過水を生産することが困難であるという問題がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ろ過膜の膜面に付着物が発生するのを予め監視し、安定した生産水を生産することが可能な膜の監視方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、原水をろ過膜に通水させて透過水と濃縮水とに分離する膜の監視方法であり、前記原水をろ過処理する前後の何れか一方又は両方に、酸化還元電位(ORP)計を設け、前記原水と前記濃縮水との何れか一方又は両方にORP電極を浸漬し、前記原水のろ過処理運転中に、前記原水と前記濃縮水との何れか一方又は両方のORPを測定し、前記ORP計の測定値が連続して上昇した場合には、前記ORP電極を前記原水と前記濃縮水との何れか一方又は両方から取り出して洗浄し、洗浄したORP電極を用いて前記原水と前記濃縮水との何れか一方又は両方のORPを再度測定し、得られる前記ORP計の測定値を洗浄前の前記ORP計の測定値と比較して、前記ろ過膜の表面への有機物、スケールの何れか一方又は両方の析出の有無を検知することを特徴とする膜の監視方法である。
第2の発明は、第1の発明において、前記ORP電極を前記原水に浸漬し、前記ORP計の測定値が連続して上昇した後、ORP電極を洗浄し、洗浄したORP電極を用いて前記原水のORPを再度測定した際、前記ORP計の測定値が洗浄前の前記ORP計の測定値より低下しない場合には、前記ろ過膜の表面に有機物が析出したことを検知する膜の監視方法である。
第3の発明は、第1の発明において、前記ORP電極を前記濃縮水に浸漬し、前記ORP計の測定値が連続して上昇した後、洗浄したORP計を用いて前記濃縮水のORPを再度測定した際、前記ORP計の測定値が洗浄前の前記ORP計の測定値より低下しない場合には、前記ろ過膜の表面にスケールが析出したことを検知する膜の監視方法である。
本発明の膜の監視方法によれば、ろ過膜の膜面に付着物が発生するのを予め監視し、安定した生産水を生産することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る膜の監視方法が適用される淡水化装置の構成を簡略に示す図である。 図2は、ORP計の時間とORP値の変化との関係を示す図である。 図3は、ORP電極の洗浄前後におけるORP値の変化を示す図である。 図4は、本発明の実施形態に係る膜の監視方法が適用される淡水化装置の他の構成を簡略に示す図である。
以下、本発明を好適に実施するための形態(以下、実施形態という。)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
図1は、本発明の実施形態に係る膜の監視方法が適用される淡水化装置の構成を簡略に示す図である。図1に例示される淡水化装置10は、海水(原水)11に圧力をかけて逆浸透膜(RO膜:Reverse Osmosis Membrane)12を通し、海水11の塩分を濃縮して除去することにより透過水(淡水)13を得る装置である。淡水化装置10は、前処理装置14と、昇圧ポンプ15と、逆浸透膜装置16とを有している。
前処理装置14は、海水11中の濁質分をろ過する前処理膜17を有する。海水11は海水ライン18を介して前処理装置14に送給され、前処理装置14で海水11中の濁質分がろ過される。その後、前処理装置14で処理された海水11は昇圧ポンプ15により加圧されて海水ライン19を介して逆浸透膜装置16に送給される。
逆浸透膜装置16は、昇圧ポンプ15で加圧された海水11から塩分を除去して透過水13を得る逆浸透膜12を有する。逆浸透膜装置16は、例えば逆浸透膜12を備えた逆浸透膜エレメントを耐圧容器に装填した逆浸透膜モジュールで構成される。逆浸透膜12は、膜を介する溶液間の浸透圧差以上の圧力を高濃度側にかけて、溶質を阻止し、溶媒を透過する液体分離膜である。逆浸透膜装置16に供給した海水11は昇圧ポンプ15を用いて逆浸透膜12の海水11側に浸透圧以上の圧力をかけ、海水11を逆浸透膜12に通水させることにより、海水11を透過水13と濃縮水20とに分離して透過水13を得る。
透過水13は、透過水ライン21を介して外部の水使用設備などに供給される。逆浸透膜装置16で濃縮された濃縮水20は、濃縮水ライン22を介して系外に排出される。
逆浸透膜12の膜構造としては、複合膜、相分離膜などの高分子膜などを挙げることができる。逆浸透膜12の素材としては、例えば、芳香族系ポリアミド、脂肪族系ポリアミド、これらの複合材などのポリアミド系素材、酢酸セルロースなどのセルロース系材料などを挙げることができる。これらの中でも、芳香族系ポリアミドを用いた逆浸透膜12を好適に適用することができる。
逆浸透膜12としては、上述のように、RO膜を挙げることができるが、特にこれに限定されるものではなく、限外ろ過膜(Ultrafiltration Membrane:UF膜)、精密ろ過膜(Microfiltlation Membrane:MF膜)などを用いてもよい。
逆浸透膜12を備える逆浸透膜装置16の逆浸透膜モジュールの形状については、特に制限はなく、例えば直径3mmから7mm程度の太さで中が空胴の糸状に成型した中空糸膜を逆浸透膜12として、外側から内側へろ過する中空糸膜モジュール、1枚の逆浸透膜12を、丈夫なメッシュ状のサポートと重ね合わせて袋状に閉じ、これをロールケーキ状に巻いてその断面方向から加圧するスパイラル膜モジュール、管状膜モジュール、平面膜モジュールなどを適用することができる。
海水ライン18には、海水11の酸化還元電位(ORP:Oxidation-reduction Potential)を測定するORP計23−1が設けられている。濃縮水ライン22には、濃縮水20のORPを測定するORP計23−2が設けられている。ORP計23−1、23−2は、ORP電極24−1、24−2を、各々海水11、濃縮水20に浸漬し、ORP値を測定し、ORP電極24−1、24−2で測定された値がORP計23−1、23−2に伝達される。ORP計23−1、23−2により測定された情報は制御装置25に伝達される。制御装置25は、ORP計23−1、23−2の測定結果から海水11、濃縮水20のORPを算出することができる。
ORP計23−1、23−2は、海水11、濃縮水20のORPの測定用に用いられるが、本実施形態では、さらに逆浸透膜12の膜性能の劣化を検知するための電極としても用いられる。上述の通り、ORP電極24−1、24−2で測定された値はORP計23−1、23−2に伝達され、ORP計23−1、23−2は、ORP電極24−1、24−2における海水11、濃縮水20のORP値を測定している。海水11中に含まれる重金属化合物は海水11中に含まれるバクテリアなどの有機物と流入する場合が多く、水酸化鉄(Fe(OH)3)などの重金属化合物は有機物と共に逆浸透膜12の膜面に付着する。また、炭酸カルシウム(CaCO3)や水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)などの無機成分は、逆浸透膜装置16内で濃縮されるため、濃縮水20が逆浸透膜装置16から排出される際、海水11中に含まれる無機成分が濃縮されて析出する析出物などが逆浸透膜12の膜面に付着し易い。よって、海水11中に含まれる重金属化合物や有機物、又は濃縮水20中に含まれる無機成分が濃縮されて析出する析出物(スケール)などが逆浸透膜12の膜面に付着する場合、海水11中に含まれる重金属化合物、有機物は、逆浸透膜12の前流側にあるORP電極24−1にも同様に析出する割合が高い傾向にあり、濃縮水20中に含まれる析出物は、逆浸透膜12の後流側にあるORP電極24−2にも同様に析出する割合が高い傾向にある。
なお、本実施形態におけるスケールとは、海水11に含まれるマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)などの無機成分などが逆浸透膜装置16内で濃縮され、濃度が高くなり、ある回収率以上でMg(OH)2、CaCO3などの塩の濃度が溶解度以上になったときに逆浸透膜12の膜面に析出する無機塩類をいう。
そこで、ORP計23−1を逆浸透膜装置16の前流側に設け、ORP計23−1のORP電極24−1の表面に、海水11中に含まれる重金属化合物、有機物などが付着し始めているか付着していることを検知することで、逆浸透膜12の膜面上にも同様に、海水11中に含まれる重金属化合物、有機物などが付着し始めているか付着していることを検知でき、予め逆浸透膜12の膜性能が劣化していることを検知することができる。
また、ORP計23−2を逆浸透膜装置16の後流側の濃縮水ライン22に設け、ORP計23−2のORP電極24−2の表面に、濃縮水20中に無機成分に起因して生じるスケールが析出し始めているか析出していることを検知することで、逆浸透膜12の膜面上にも同様に、海水11中に含まれる無機成分が析出し始めているか析出していることを検知することができ、予め逆浸透膜12の膜性能が劣化していることが検知できる。
図2は、ORP計23−1の時間とORP値の変化との関係を示す図である。図2に示すように、ろ過開始当初から所定時間T1までの間は、ORP値がX1mV前後で安定していたが、ろ過を開始してから所定時間T1を経過すると、ORP値は急激に上昇し、ろ過を開始してから所定時間T2を経過すると、ORP値がX2mV前後になった。これは、所定時間T1を経過すると、ORP電極24−1の表面に海水11中に含まれる重金属化合物、有機物などが付着し、ORP電極24−1の検出感度が低下したためである。
図3は、ORP計23−1のORP電極24−1の洗浄前後におけるORP値の変化を示す図である。図3に示すように、ORP電極24−1の浸漬前(浸漬時間:0分)はORP電極24−1のORP値がX1mV前後であり、ORP電極24−1を所定時間T2浸漬した後ではORP電極24−1のORP値はX2mV前後であった。ORP電極24−1を洗浄した後、ORP電極24−1のORP値はX1mV前後にまで低下した。これにより、ORP電極24−1の表面に付着した重金属化合物、有機物などが除去され、ORP電極24−1の検出感度が回復したためであるといえる。
よって、ORP電極24−1、24−2のORP値の上昇は、海水11中に含まれる重金属化合物や有機物、無機成分に起因して生じるスケールがORP電極24−1、24−2に付着したことによるものといえる。このため、ORP電極24−1、24−2のORP値が上昇し始めていることを検知することで、逆浸透膜12の膜面にも同様に、海水11中に含まれる重金属化合物や有機物、無機成分に起因して生じるスケールが析出し始めているか析出していることを予め検知することが可能となる。
そこで、海水11の淡水化処理を行っている際に、ORP計23−1、23−2でORP値の継続的な上昇が確認された場合には、ORP計23−1、23−2のORP電極24−1、24−2を海水11、濃縮水20から抜き出して洗浄する。洗浄したORP電極24−1、24−2を、再度、海水11、濃縮水20に浸漬してORP計23−1、23−2でORP値を測定する。ORP計23−1、23−2のORP値が低下した場合には、ORP電極24−1、24−2の洗浄が十分行われ、逆浸透膜12の膜性能がまだ劣化していないことを検知することができる。すなわち、ORP電極24−1、24−2を洗浄することで、ORP電極24−1、24−2の表面に付着していた重金属化合物、有機物、スケールなどが除去されているため、ORP電極24−1、24−2の検出感度は通常状態に回復している。このため、ORP電極24−1、24−2の洗浄後、ORP計23−1、23−2により測定されるORP値が通常状態に戻り、ORP値が下がる場合には、ORP電極24−1、24−2の洗浄前に観察されたORP値の上昇がORP電極24−1、24−2の表面に付着した重金属化合物、有機物、スケールなどによるものであり、逆浸透膜12の膜面に重金属化合物、有機物、スケールなどが付着したことによるものでないと判断できるので、逆浸透膜12の膜性能はまだ劣化していないと判断できる。
また、ORP値が洗浄前と近い値でほとんど低下しない場合には、逆浸透膜12の膜面に重金属化合物、有機物、スケールなどが付着して逆浸透膜12が劣化し、逆浸透膜12の膜性能が低下していることを検知することができる。すなわち、上述の通り、ORP電極24−1、24−2を洗浄することで、ORP電極24−1、24−2の表面に付着していた重金属化合物、有機物、スケールなどが除去されているため、ORP電極24−1、24−2の検出感度は通常状態に回復する。しかし、洗浄後のORP計23−1、23−2により測定されるORP値が通常状態に回復せず、ORP値が下がらない場合には、ORP電極24−1、24−2の洗浄前に観察されたORP値の上昇がORP電極24−1、24−2の表面に付着した重金属化合物、有機物、スケールなどによるものの他に、逆浸透膜12の膜面に付着している重金属化合物、有機物、スケールなどによるものであると判断できる。よって、逆浸透膜12の膜面に重金属化合物、有機物、スケールなどが付着して逆浸透膜12の膜性能は劣化していると判断できる。
ORP電極24−1、24−2の洗浄は、例えば、過酸化水素(H22)、H22と塩酸(HCl)との混合溶液などにORP電極24−1、24−2を浸漬し、ORP電極24−1、24−2の表面に付着した付着物を除去する方法などが挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
このように、逆浸透膜12の膜面に海水11中に含まれる重金属化合物、有機物、析出物などが逆浸透膜12の膜面に析出する場合、ORP電極24−1、24−2にも同様に析出する割合が高い傾向にあることから、ORP電極24−1、24−2を逆浸透膜12の膜性能の劣化を予め検知するための電極として用いることができるといえる。よって、ORP電極24−1、24−2のORP値の上昇を検知した後、ORP電極24−1、24−2を洗浄して、再度、海水11および濃縮水20の測定用の電極として用い、得られるORP値を洗浄前のORP値と比較して、海水11中に含まれる重金属化合物、有機物、スケールなどが逆浸透膜12の膜面に析出し始めているか又は析出しているかを予め検知でき、逆浸透膜12の膜性能の劣化の有無を検知することができる。
海水ライン18には、海水11の流量を測定する流量計30−1と、海水11の温度を測定する温度計31と、海水11の電気伝導度を測定する電気伝導率計(EC(Electric Conductivity)メーター)32と、海水11の圧力を測定する圧力計33−1と、逆浸透膜装置16の入口付近の海水11のpHを計測するためのpH計34とが設けられている。透過水ライン21には、逆浸透膜12の出口付近の透過水13の流量を計測する流量計30−2と、透過水13の圧力を測定する圧力計33−2とが設けられている。濃縮水ライン22には、濃縮水20の圧力を測定する圧力計33−3が設けられている。流量計30−1、30−2、温度計31、ECメーター32、圧力計33−1〜33−3、pH計34により測定された情報は制御装置25に伝達される。制御装置25は、流量計30−1、30−2の測定結果から、逆浸透膜12の透過水量を算出し、温度計31の測定結果から、海水11の温度を算出し、ECメーター32の測定結果から海水11の電気伝導度を算出し、圧力計33−1〜33−3の測定結果から海水11、透過水13、濃縮水20の圧力を算出し、pH計34の測定結果から海水11のpHを算出することができる。
濃縮水ライン22には、エネルギー回収装置35を設けている。濃縮水20は、濃縮水ライン22に圧力が高いまま送給される(昇圧ポンプ15による海水11の供給圧力が例えば6MPa程度の場合には、少し低下した5.5MPa程度)。濃縮水20の高圧を利用することで、エネルギー回収装置35は濃縮水20からエネルギーを回収することができる。エネルギー回収装置35で濃縮水20から回収されたエネルギーは、例えば昇圧ポンプ15を高圧で駆動させるためのエネルギーの確保や、透過水13を高圧に変換するための圧力変換用として利用することができ、淡水化装置10などを含む海水淡水化設備のエネルギー効率を向上させることに寄与する。
エネルギー回収装置35としては、例えばPeltonWheel型エネルギー回収装置、Turbochager型エネルギー回収装置、PX(Pressure Exchanger)型エネルギー回収装置、DWEER(Dual Work Exchanger Energy Recovery)型エネルギー回収装置など公知のものを挙げることができる。
逆浸透膜12の洗浄を行う際には、淡水化装置10の運転を一時的に停止させ、淡水化装置10から逆浸透膜装置16を取り外して逆浸透膜12を取り出して洗浄を行う。
以上のように、本実施形態に係る淡水化装置10によれば、ORP計23−1、23−2のORP値を監視し、ORP電極24−1、24−2の洗浄後におけるORP値の回復具合に応じて逆浸透膜12の膜性能が劣化し始めているか否かを予め検知することができるので、逆浸透膜12の膜性能が低下する前に逆浸透膜12を洗浄することができる。
よって、淡水化装置10の運転中に逆浸透膜12の膜性能を監視しつつ、海水11の淡水化処理を行いながら逆浸透膜12の透水性能を常に所望の状態に保持することができる。したがって、淡水化装置10は、長期間にわたって逆浸透膜装置16を安定して運転させ、透過水13を製造することができる。
本実施形態に係る淡水化装置10においては、海水11をろ過処理する前後にORP計23−1、23−2を設けているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、海水11をろ過処理する前の海水ライン19にのみORP計23−1を設けてもよいし、海水11をろ過処理した後の濃縮水ライン22にのみORP計23−2を設けるようにしてもよい。
逆浸透膜12の洗浄方法は、淡水化装置10の運転を一時的に停止させ、淡水化装置10から逆浸透膜装置16を取り外して逆浸透膜12を取り出して洗浄する方法に限定されるものではない。図4は、淡水化装置の他の構成を簡略に示す図である。図4に示すように、本実施形態に係る淡水化装置40は、逆浸透膜装置16の前流側に海水11中に酸性薬剤41を供給する酸性薬剤供給部42と、アルカリ性薬剤43を供給するアルカリ性薬剤供給部44とを有する。このとき、酸性薬剤41、アルカリ性薬剤43は、制御装置25により供給速度を調整し、一定の供給速度で海水11に供給するようにする。淡水化装置40の運転中に、所定時間の間、海水11にアルカリ性薬剤43を供給して、逆浸透膜装置16の入口付近における海水11のpHをアルカリ性領域の所定の範囲に調整し、逆浸透膜12に付着したバクテリアなどの有機物を分解・除去する。また、所定時間の間、海水11に酸性薬剤41を供給して、逆浸透膜装置16の入口付近における海水11のpHを酸性領域の所定の範囲に調整し、逆浸透膜12に付着した無機成分に起因して発生する析出物を分解・除去する。
酸性薬剤41やアルカリ性薬剤43が添加される前、通常の淡水化処理運転を行う際の海水11のpHは、約7.2である。アルカリ性薬剤供給部44からアルカリ性薬剤43を海水11に添加する場合、制御装置25は、海水11のpHは8.5以上12.0以下が好ましく、より好ましくは、9.0以上12.0以下となるように、アルカリ性薬剤43を海水11に添加する。海水11のpHを12.0以下とすることで、逆浸透膜12の劣化を抑制することができる。海水11のpHを8.5以上とすることで、バクテリアなどの有機物も効果的に分解・除去することができる。一般的に、アルカリ性の溶液はバクテリアなどの有機物を分解する性能を有している。このため、上記範囲のpHに調整された海水11を逆浸透膜12に通すことで、逆浸透膜12に付着したバクテリアなどの有機物が分解され、バクテリアなどの有機物の繁殖が抑制される。その結果、有機物の付着に起因して逆浸透膜12が目詰まりするのを防止することが可能となる。よって、逆浸透膜12を所望の透水性能に維持することができる。また、アルカリ性薬剤43としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウムなどを挙げることができるが、特に、最も安価であるという理由から、水酸化ナトリウムを用いるのが好ましい。
酸性薬剤供給部42から酸性薬剤41を海水11に添加する場合、制御装置25は、逆浸透膜装置16に供給する海水11のpHが2.0以上7.2以下、好ましくは、2.0以上5.0以下となるように、酸性薬剤供給部42から海水11に供給される酸性薬剤41の供給量を制御する。海水11中に生成したスケールは、pH7.2前後の中性溶液中でもある程度は溶解するため、逆浸透膜12に付着したスケールの量が比較的少ない場合には、海水11が中和される程度(例えば、pH7.2程度)に酸性薬剤41を添加することにより、逆浸透膜12に付着したスケールを十分に溶解・除去することができ、十分な洗浄効果が得られ、逆浸透膜12の透過水量を所望の値まで回復させることができる。また、逆浸透膜12に付着したスケールの量が比較的多い場合には、逆浸透膜12の殺菌効果も得る観点から、海水11のpHを5.0以下にすることで、確実にスケールを溶解・除去することができると同時に、有機物と無機物の複合汚れも効果的に除去することが可能となる。また、海水11のpHを2.0以上にすることで、逆浸透膜12の劣化を抑制することができる。その結果、スケールに起因して逆浸透膜12が目詰まりするのを防止することが可能となる。よって、逆浸透膜12を所望の透水性能に維持することができる。酸性薬剤41としては、硝酸、硫酸、塩酸などを挙げることができるが、最も安価であるという理由から、特に硫酸を用いるのが好ましい。
本実施形態に係る淡水化装置40は、逆浸透膜12に付着した有機物やスケールを海水11の淡水化処理中に効率的に除去することができるため、逆浸透膜12の透過流量の低下を招くことなく、逆浸透膜12の透水性能を常に所望の状態に保持することが可能となる。また、海水11の淡水化処理を行いながら逆浸透膜12の洗浄を行うため、逆浸透膜12の洗浄のために淡水化装置40の運転を一時的に停止したり、淡水化装置40から逆浸透膜装置16を取り外して洗浄を行う必要がない。このため、淡水化装置40の生産効率を低下させることなく、長期間にわたって有機物やスケールなどの析出の危険性のない状態で安定して逆浸透膜装置16を運転し、海水11の淡水化処理を行い、透過水13を製造することができる。
本実施形態に係る淡水化装置40においては、酸性薬剤供給部42とアルカリ性薬剤供給部44との両方を設けるようにしているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、酸性薬剤供給部42とアルカリ性薬剤供給部44との何れか一方のみを設けるようにしてもよい。
本実施形態に係る淡水化装置10、40は、海水を脱塩して淡水を得る淡水化装置に用いられる逆浸透膜に付着する有機物や析出するスケールなどを監視する場合について説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、ろ過する原水は海水以外にかん水などを脱塩して淡水化する淡水化装置であってもよい。また、淡水化装置以外に、例えば超純水の製造など、廃液処理、汚水処理、その他の水処理などの装置に用いられる逆浸透膜に析出する析出物を監視する場合にも適用することができる。
以上のように、本発明の膜の監視方法は、海水の淡水化装置で用いる逆浸透膜の膜性能の低下を検知するのに有用である。
10、40 淡水化装置
11 海水(原水)
12 逆浸透膜(ろ過膜)
13 透過水
14 前処理装置
15 昇圧ポンプ
16 逆浸透膜装置
17 前処理膜
18、19 海水ライン
20 濃縮水
21 透過水ライン
22 濃縮水ライン
23−1、23−2 ORP計
24−1、24−2 ORP電極
25 制御装置
30−1、30−2 流量計
31 温度計
32 電気伝導率計(ECメーター)
33−1〜33−3 圧力計
34 pH計
35 エネルギー回収装置
41 酸性薬剤
42 酸性薬剤供給部
43 アルカリ性薬剤
44 アルカリ性薬剤供給部

Claims (3)

  1. 原水をろ過膜に通水させて透過水と濃縮水とに分離する膜の監視方法であり、
    前記原水をろ過処理する前後の何れか一方又は両方に、酸化還元電位(ORP)計を設け、前記原水と前記濃縮水との何れか一方又は両方にORP電極を浸漬し、前記原水のろ過処理運転中に、前記原水と前記濃縮水との何れか一方又は両方のORPを測定し、
    前記ORP計の測定値が連続して上昇した場合には、前記ORP電極を前記原水と前記濃縮水との何れか一方又は両方から取り出して洗浄し、
    洗浄したORP電極を用いて前記原水と前記濃縮水との何れか一方又は両方のORPを再度測定し、得られる前記ORP計の測定値を洗浄前の前記ORP計の測定値と比較して、前記ろ過膜の表面への有機物、スケールの何れか一方又は両方の析出の有無を検知することを特徴とする膜の監視方法。
  2. 請求項1において、
    前記ORP電極を前記原水に浸漬し、前記ORP計の測定値が連続して上昇した後、ORP電極を洗浄し、洗浄したORP電極を用いて前記原水のORPを再度測定した際、前記ORP計の測定値が洗浄前の前記ORP計の測定値より低下しない場合には、前記ろ過膜の表面に有機物が析出したことを検知する膜の監視方法。
  3. 請求項1において、
    前記ORP電極を前記濃縮水に浸漬し、前記ORP計の測定値が連続して上昇した後、洗浄したORP計を用いて前記濃縮水のORPを再度測定した際、前記ORP計の測定値が洗浄前の前記ORP計の測定値より低下しない場合には、前記ろ過膜の表面にスケールが析出したことを検知する膜の監視方法。
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