JP2012125087A - 高分子アクチュエータ及びアクチュエータ装置 - Google Patents

高分子アクチュエータ及びアクチュエータ装置 Download PDF

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Abstract

【課題】小型化が可能で、高い出力を得ることができる高分子アクチュエータ及びアクチュエータ装置を提供する。
【解決手段】高分子アクチュエータ2において、正極配線15及び負極配線16を介して、電源Bによって正電極板10と負電極板11の間に電圧を印加すると、負に帯電した高分子ゲル12が、クーロン引力で正電極板10に引き付けられて圧縮変形する。電圧の印加を停止すると、高分子アクチュエータ2は誘電性高分子を含有する高分子ゲル12の弾性力によって、元の状態に復帰する。このように、高分子アクチュエータ2は、電極板10,11に垂直な方向に往復変位する電動型アクチュエータとして機能する。
【選択図】図2

Description

本発明は、高分子アクチュエータ及びアクチュエータ装置に関し、特に、小型で高い出力が得られる高分子アクチュエータ及びアクチュエータ装置に関する。
従来、自動化の進んだ工場内で使用されてきたエアシリンダは、エアコンプレッサによる高圧エアの製造時及びエアシリンダまでの配管による高圧エアの配送時におけるロスが大きいため、電動アクチュエータの約10倍の電力を消費すると言われている。そこで、近年、省エネルギー化及び地球温暖化防止を目的として、エアシリンダから電動アクチュエータへの置き換えが進められている。
しかし、電磁式モータを応用した電動アクチュエータは、小型化すると出力が大幅に低下するという問題点を有する。このため、より一層の小型化が可能なアクチュエータとして、特許文献1乃至特許文献3に開示されるように、新しい駆動原理に基づく高分子アクチュエータが提案されている。これらの高分子アクチュエータは、誘電性高分子に電圧を印加した時に起こる誘電性高分子の圧縮変形を応用したものである。
特開2001−258275号公報 特開2005−323482号公報 特開2009−273207号公報
しかしながら、上記特許文献1乃至特許文献3に記載された高分子アクチュエータにおいては、誘電性高分子を帯電させるためにイオン性物質やイオン性液体、或いは電荷捕捉剤等の材料を添加していることから、材料費が高くなる。また、これらの高分子アクチュエータは、片持ち梁構造とした薄い高分子片の先端が撓む駆動方式を取っている。このため、極めて小さい駆動力しか得ることができず、高い出力が得られないという問題点があった。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、小型化が可能で、高い出力を得ることができる高分子アクチュエータ及びアクチュエータ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る高分子アクチュエータは、
正電極板と、
負電極板と、
前記正電極板と前記負電極板との間に設けられた誘電性高分子及び可塑剤を含有する高分子ゲルと、
を有し、
前記可塑剤は、前記正電極板と前記負電極板とを可塑剤分子が接続するように、前記誘電性高分子の間に分散していることを特徴とする。
前記正電極板と前記負電極板とは、互いに平行に向かい合って配置されていることとしても良い。
前記正電極板と前記負電極板とは、間に前記高分子ゲルを挟んでそれぞれ複数枚、交互に配置されていることとしても良い。
前記正電極板は、貫通孔及び/または窪みを有することとしても良い。
前記負電極板の厚さは、0.2mm以下であることとしても良い。
前記可塑剤は、前記高分子ゲルに対する重量百分率で50%以上含有されていることとしても良い。
前記誘電性高分子は、重合度が5000未満であることとしても良い。
前記高分子ゲルの厚さは、0.1mm乃至2.0mmの範囲内であることとしても良い。
前記誘電性高分子は、ポリ塩化ビニル及び/またはポリメタクリル酸メチルであることとしても良い。
前記可塑剤は、アジピン酸エステル及び/またはフタル酸エステルであることとしても良い。
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係るアクチュエータ装置は、
可動部と、
固定部と、
前記可動部と前記固定部との間に設けられた請求項1乃至10のいずれか1項に記載の高分子アクチュエータと、
を有することを特徴とする。
前記可動部及び/または前記固定部の少なくとも表面の一部が絶縁性材料であることとしても良い。
前記可動部及び/または前記固定部の少なくとも表面以外の部分が導電性材料であることとしても良い。
前記可動部と前記固定部の間に案内機構を設けたこととしても良い。
前記案内機構は、滑りガイドであることとしても良い。
本発明によれば、正電極板と負電極板との間に設けられた高分子ゲルに含有される可塑剤が、正電極板と負電極板とを可塑剤分子が繋ぐように、誘電性高分子の間に分散している。これによって、正電極板と負電極板との間に電圧を印加すると、極性部分を有する繋がった可塑剤の双極子が回転して、電子の受け渡しが行われて電流が通ずる。同時に、誘電性高分子の一部及び可塑剤の一部が負に帯電する。この結果、全体として負に帯電した高分子ゲルが、クーロン引力で正電極板に引き付けられて圧縮変形する。電圧の印加を停止すると、高分子ゲルは誘電性高分子の弾性力で元の状態に復帰する。
このようにして、本発明に係る高分子アクチュエータは、正電極板に垂直な方向に往復変位する電動型アクチュエータとして機能する。したがって、大きな駆動力が得られ、高い出力を得ることができる。また、変位方向が正電極板に垂直な方向であるため、正電極板、高分子ゲル及び負電極板の面積を小さくしても、変位量は殆ど変化しない。これによって、高分子アクチュエータを小径化することができ、より一層の小型化が可能となる。また、高分子アクチュエータを応用した本発明に係るアクチュエータ装置においても、大きな駆動力が得られ、高い出力を得ることができ、より一層の小型化が可能となる。
(a)は本発明の実施の形態1に係るアクチュエータ装置の平面図、(b)は縦断面図である。 本発明の実施の形態1に係るアクチュエータ装置に用いられる高分子アクチュエータの構造を示す縦断面図である。 本発明の実施の形態1に係るアクチュエータ装置に用いられる高分子アクチュエータの基本的構造を示す模式図である。 本発明の実施の形態1に係るアクチュエータ装置に用いられる高分子アクチュエータの電圧が印加されていないときの状態を示す部分拡大縦断面図である。 本発明の実施の形態1に係るアクチュエータ装置に用いられる高分子アクチュエータに電圧を印加したときの状態を示す部分拡大縦断面図である。 本発明の実施の形態1に係るアクチュエータ装置に用いられる高分子アクチュエータの電圧印加時の変位量を示すグラフである。 本発明の実施の形態1に係るアクチュエータ装置に用いられる高分子アクチュエータに使用される誘電体高分子の重合度と変位量の関係を示すグラフである。 (a)は本発明の実施の形態2に係るアクチュエータ装置の平面図、(b)は縦断面図である。
以下、本発明の実施の形態に係る高分子アクチュエータ及びアクチュエータ装置について、添付の図面を参照しつつ具体的に説明する。
[実施の形態1]
まず、本発明の実施の形態1に係るアクチュエータ装置及び高分子アクチュエータについて、図1乃至図7を参照して説明する。
図1に示されるように、本実施の形態1に係るアクチュエータ装置1は、高分子アクチュエータ2を応用した電動型アクチュエータである。図1(a)に示されるように、アクチュエータ装置1は円筒形状のアクチュエータであり、図1(b)に示されるように、円柱形状の可動部21と、底を有する中空円筒形状の固定部22と、その間に挟まれた円柱形状の高分子アクチュエータ2とから構成される。
固定部22の外径D1は10mm、内径は8mm、高さは40mmである。また、可動部21の外径D2は8mm、高さは40mmである。可動部21は樹脂製であり、具体的にはポリアセタール樹脂からなる。また、固定部22は金属製であり、具体的にはアルミニウム合金からなる。
可動部21と固定部22とは、円柱形状の可動部21の外面が、中空円筒形状の固定部22の内面と摺動することによって、図1(b)の上下方向に相対移動することができる。本実施の形態1においては、固定部22が固定面20に接着固定されているため、可動部21が固定部22に対して、上下方向に摺動することになる。高分子アクチュエータ2が上下方向に伸縮することによって、可動部21が固定部22に対して上下方向に摺動する。
高分子アクチュエータ2は、図2に示されるように、ステンレス鋼製網板(正電極板)10と、高分子ゲル12と、ステンレス鋼箔(負電極板)11とを、交互に積層したものである。ステンレス鋼製網板10、高分子ゲル12、ステンレス鋼箔11の形状は、いずれも直径7mmの円板形状である。
また、ステンレス鋼製網板10の厚さは0.5mm、高分子ゲル12の厚さも0.5mm、ステンレス鋼箔11の厚さは0.05mmである。高分子ゲル12の積層数は20層、ステンレス鋼製網板10の枚数は10枚、ステンレス鋼箔11の枚数は11枚である。このように構成された高分子アクチュエータ2の全体の厚さは、約20mmとなる。
また、図1においては図示を省略しているが、高分子アクチュエータ2には電圧を印加する必要があるので、図2に示されるように、正極配線15が10枚の正電極板10に接続され、負極配線16が11枚の負電極板11に接続されている。そして、一本にまとめられた正極配線15及び負極配線16は、図1では図示されない固定部22の開口部を通過して外部へ引き出され、電源に接続されている。
図1に戻って、固定部22と、高分子アクチュエータ2、図示されない正極配線15及び負極配線16との絶縁を確保するために、固定部22の内面には、絶縁ワニスが塗布されている。
次に、高分子アクチュエータ2の駆動原理について説明する。図3は、本実施の形態1に係る高分子アクチュエータ2の縦断面の一部を拡大したものである。図3に示されるように、高分子アクチュエータ2に用いられる高分子ゲル12は、誘電性高分子13と可塑剤14とが混合されてなる。本実施の形態1においては、誘電性高分子13としてポリ塩化ビニルを使用し、可塑剤14としてアジピン酸ジブチルを使用する。
高分子ゲル12は、溶媒としてのテトラヒドロフラン(THF)に、ポリ塩化ビニルとアジピン酸ジブチルを溶解させて液状にし、型に流し込んでTHFを蒸発させることによって作製する。
ここで、可塑剤14は、高分子ゲル12に対する重量百分率で50%以上含有されていることが好ましい。また、可塑剤14は、高分子ゲル12に対する重量百分率で80%以上含有されていることがより好ましく、90%以上含有されていることが更に好ましく、95%以上含有されていることが一層好ましい。
本実施の形態1においては、高分子ゲル12中における誘電性高分子13と可塑剤14との含有率は、重量百分率で誘電性高分子(ポリ塩化ビニル)の含有率を14%、可塑剤(アジピン酸ジブチル)の含有率を86%、とする。このようにして作製した円板状の高分子ゲル12の両面に、それぞれステンレス鋼製網板10とステンレス鋼箔11とを、ポリ塩化ビニル13の粘着力で貼り付けて、高分子アクチュエータ2を作製する。
ここで、図3に示されるように、高分子アクチュエータ2を構成する高分子ゲル12においては、可塑剤14の各分子が繋がって、正電極板10と負電極板11とを接続するように、誘電性高分子13の間を貫通している部分がところどころに存在している。これによって、正電極板10と負電極板11の間に電圧を印加すると、極性部分を有する可塑剤14の双極子が回転して電子の受け渡しが行われ、電流が通ずる。それとともに、誘電性高分子13の一部及び可塑剤14の一部が、負に帯電する。
上述したように、高分子ゲル12において、重量百分率で可塑剤14の含有率を86%と、可塑剤14の混合比を大きくしたのは、図3に示されるように可塑剤14の各分子が繋がって、正電極板10と負電極板11を接続するように、誘電性高分子13の間を貫通する部分をより多く形成するためである。また同時に、比較的硬い誘電性高分子13を可塑剤14で柔軟化させることによって、高分子ゲル12が圧縮変形しやすくするためでもある。
図4に示されるように、ステンレス鋼製網板10は、全面に無数の網孔(貫通孔)10aを有している。電圧が印加されていない状態においては、高分子ゲル12の厚さはそれぞれd1である。
図2に示されるように、正電極板10と負電極板11の間に電源Bで電圧を印加すると、上述したように、誘電性高分子13及び可塑剤14の一部が負に帯電する。この結果、高分子ゲル12全体が負に帯電して、図5に示されるように、クーロン引力で正電極板10に引き付けられる。貫通孔10aの内壁も正電極であるため、高分子ゲル12は貫通孔10a内にも引き込まれ、大きく圧縮変形する。
これによって、図5に示されるように、高分子ゲル12の厚さはそれぞれd2まで圧縮される。高分子アクチュエータ2は、20層の高分子ゲル12を積層して構成されているので、(d1−d2)×20の変位量が得られる。電圧の印加を停止すると、高分子アクチュエータ2は、図4に示される状態に戻る。
上述したように、これらの正電極板10及び負電極板11に同時に電圧を印加するために、図2に示されるように、正極配線15及び負極配線16が接続されている。負極配線16は、一本にまとめられて電源Bの負極側に接続され、正極配線15も一本にまとめられて、図示しない開閉スイッチを介して電源Bの正極側に接続されている。
この高分子アクチュエータ2の開閉スイッチを開閉して、電源Bによって電圧を印加した場合の変位量を測定した。測定結果を、図6に示す。図6は、一定時間間隔で、高分子アクチュエータ2に300Vの電圧を印加した場合の変位量を示すグラフである。
図6に示されるように、電圧を印加すると、高分子アクチュエータ2は約−3.2mm変位する。すなわち、約20mmの厚さを有する高分子アクチュエータ2が、約16.8mmの厚さまで縮む。そして、電圧の印加を停止すると、元の厚さに戻る。このように、積層構造の高分子アクチュエータ2は、充分に実用的な大きさの変位量を有することが明らかになった。
次に、本実施の形態1に係る高分子アクチュエータ2を構成する高分子ゲル12において、誘電性高分子13(図3参照)であるポリ塩化ビニルの重合度を変化させた場合の変位量の変化について、検討を行った。ここで、「重合度」とは、ポリ塩化ビニル分子を構成する塩化ビニルモノマーの数の平均値として定義される。測定条件は、図6の場合と同様である。測定結果を、図7に示す。
図7に示されるように、重合度が少なくなるほど、すなわちポリ塩化ビニルの数平均分子量が小さくなるほど、変位量の絶対値は大きくなるという結果となった。具体的には、重合度が9008のとき変位量は−0.27mm、重合度が5280のとき変位量は−1.77mm、重合度が3728のとき変位量は−2.19mm、重合度が1552のとき変位量は−2.40mmである。
したがって、変位量の絶対値を大きくするためには、ポリ塩化ビニルの重合度は5000未満であることが好ましい。更に、重合度が3800未満であることがより好ましく、重合度が2000未満であることが一層好ましい。本実施の形態1に係る高分子アクチュエータ2においては、重合度を1500とした。
このように構成されたアクチュエータ装置1において、図1では図示されない電源によって高分子アクチュエータ2に電圧を印加すると、高分子アクチュエータ2が圧縮変形して可動部21が下方へ移動する。300Vの電圧を印加すると、高分子アクチュエータ2は約3.2mm縮んで可動部21が約3.2mm下方へ移動する。電圧の印加を停止すると、高分子アクチュエータ2は元の厚さに戻って、可動部21も元の位置まで上昇する。
本実施の形態1においては、可動部21が固定部22に対して摺動することによって、滑りガイドを構成している。可動部21と固定部22の間にボールガイド等を設けると、固定部22の外径が大きくなって、アクチュエータ装置1の小型化の要請に反するからである。そのため、可動部21を摺動特性及び耐摩耗性に優れたポリアセタール樹脂で作製し、可動部21の表面がアルミニウム合金製の固定部22の内面との間で滑らかに摺動するようにしている。
他の滑りガイドの構成例として、金属基材上の焼結金属表面にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂をコーティングした滑り軸受け材を固定部に用いて、金属製の可動部と摺動させる滑り案内機構の構成としても、コンパクトに構成できる。
また、図2に示されるように、高分子アクチュエータ2においては、正電極板10、高分子ゲル12、負電極板11、高分子ゲル12、正電極板10、高分子ゲル12、負電極板11、・・・という順に積層している。このため、単に高分子ゲル12を正電極板10と負電極板11で挟んだ単層の高分子アクチュエータを積層した場合と比較して、正電極板10及び負電極板11の数が半分になる。したがって、高分子アクチュエータ2の厚さを薄くすることができる。
更に、本実施の形態1に係る高分子アクチュエータ2においては、正電極板10として無数の貫通孔(網孔)を有するステンレス鋼製網板を用いるとともに、高分子ゲル12を20層積み重ねる積層構造としたことから、全体としての変位量が極めて大きくなっている。
また、高分子アクチュエータ2は、従来の高分子アクチュエータと異なり、イオン性物質やイオン性液体、或いは電荷捕捉剤等を加えることなく、誘電性高分子13と可塑剤14のみで可動部分(高分子ゲル12)を構成している。これによって、製造工程が簡略化されるとともに、原材料の成分数が減るため、高分子アクチュエータ2を低コストで製造することができる。
アクチュエータ装置1は、図1(b)の上下方向に往復変位する電動型アクチュエータとして機能する。板状の高分子ゲル12が表面に垂直な方向に圧縮変形するため、大きな駆動力が得られ、高い出力を得ることができる。また、変位方向が正電極板10に垂直な方向であるため、正電極板10、高分子ゲル12及び負電極板11の面積を小さくしても、変位量は殆ど変化しない。これによって、高分子アクチュエータ2及びアクチュエータ装置1を小径化することができ、より一層の小型化が可能となる。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について、図8を参照して説明する。なお、実施の形態1と同一の部分については、同一の符号を付して、その説明を省略または簡略化する。
図8に示されるように、本実施の形態2に係るアクチュエータ装置5は、アクチュエータ装置1と同様に、上記高分子アクチュエータ2を応用した電動型アクチュエータである。図8(a)に示されるように、アクチュエータ装置5は円筒形状のアクチュエータであり、図8(b)に示されるように、底を有する中空円筒形状の可動部23と、円柱形状の固定部24と、その間に挟まれた円柱形状の高分子アクチュエータ2とから構成される。
すなわち、本実施の形態2に係るアクチュエータ装置5は、上述したアクチュエータ装置1の上下を反転させて、可動部21を固定部24に、固定部22を可動部23に入れ替えた構造を有している。
可動部23の外径D3は10mm、内径は8mm、高さは40mmである。高分子アクチュエータ2の外径D4は7mm、高さは20mmである。また、固定部24の外径は8mm、高さは40mmである。可動部23は樹脂製であり、具体的にはポリアセタール樹脂からなる。また、固定部24は金属製であり、具体的にはアルミニウム合金からなる。
可動部23と固定部24とは、中空円筒形状の可動部23の内面が、円柱形状の固定部24の外面と摺動することによって、上下方向に移動することができる。本実施の形態2においては、固定部24が固定面20に接着固定されているため、可動部23が固定部24に対して、上下方向に摺動することになる。
また、図8においては図示を省略しているが、高分子アクチュエータ2には電圧を印加する必要があるので、図2に示されるように、正極配線15が10枚の正電極板10に接続され、負極配線16が11枚の負電極板11に接続されている。そして、一本にまとめられた正極配線15及び負極配線16は、図8では図示されない可動部23の開口部を通過して外部へ引き出され、電源に接続されている。
なお、固定部24と高分子アクチュエータ2との間の絶縁を確保するために、固定部24の上面には、絶縁ワニスが塗布されている。
このように構成されたアクチュエータ装置5において、図示しない電源によって高分子アクチュエータ2に電圧を印加すると、高分子アクチュエータ2が圧縮変形して可動部23が下方へ移動する。300Vの電圧を印加すると、高分子アクチュエータ2は約3.2mm縮んで可動部23が約3.2mm下方へ移動する。電圧の印加を停止すると、高分子アクチュエータ2は元の厚さに戻って、可動部23も元の位置まで上昇する。
このように、アクチュエータ装置5は、図8(b)の上下方向に往復変位する電動型アクチュエータとして機能する。板状の高分子ゲル12が表面に垂直な方向に圧縮変形するため、大きな駆動力が得られ、高い出力を得ることができる。また、変位方向が正電極板10に垂直な方向であるため、正電極板10、高分子ゲル12及び負電極板11の面積を小さくしても、変位量は殆ど変化しない。これによって、高分子アクチュエータ2及びアクチュエータ装置5を小径化することができ、より一層の小型化が可能となる。
上記各実施の形態においては、高分子ゲル12を構成する誘電性高分子13として、ポリ塩化ビニルを使用する例について説明した。これに限られるものではなく、誘電性高分子13としては、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系合成樹脂を始めとして、導電性高分子を除くあらゆる合成樹脂を用いることができる。
上記各実施の形態においては、高分子ゲル12を構成する可塑剤14としてアジピン酸ジブチルを使用する例について説明した。これに限られるものではなく、可塑剤14としては、アジピン酸ジメチル等の他のアジピン酸エステルや、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステルを始めとして、通常用いられるあらゆる可塑剤を用いることができる。
上記各実施の形態においては、高分子ゲル12中における誘電性高分子13と可塑剤14との含有率は、重量百分率で誘電性高分子(ポリ塩化ビニル)を14%、可塑剤(アジピン酸ジブチル)を86%、とした。これに限られるものではなく、可塑剤14の各分子が繋がって正電極板10と負電極板11を接続するように誘電性高分子13の間を貫通した状態とすることができれば、可塑剤14の含有率は何%でも構わない。
上記各実施の形態においては、正電極板としてステンレス鋼製網板を、負電極板としてステンレス鋼箔を用いる場合について説明した。これに限られるものではなく、正電極板及び負電極板としては、あらゆる金属を始めとする導電性材料を用いることができる。また、金属メッキ等によって表面に導電性を付与した合成樹脂等の絶縁性材料をも用いることができる。
上記各実施の形態においては、負電極板として、厚さ0.05mmの金属箔を使用する場合について説明した。これに限られるものではなく、負電極板の厚さは、もっと厚くても、もっと薄くても良い。
上記各実施の形態においては、可動部21,23をポリアセタール樹脂で作製し、固定部22,24をアルミニウム合金で作製する場合について説明したが、これに限られるものではない。可動部21,23をポリアセタール樹脂以外の合成樹脂で作製しても良いし、固定部22,24をアルミニウム合金以外の金属で作製することもできる。
また逆に、可動部21,23を金属で作製し、固定部22を合成樹脂で作製しても良い。但し、可動部21,23の底面は高分子アクチュエータ2の上面の電極板に直接接触することから、漏電を避けるため、少なくとも底面は絶縁性の材料を使用するか、絶縁膜を設ける必要がある。また、固定部22,24が金属であれば、万が一漏電した場合でも、固定面20に接地しているため安全を確保することができる。したがって、固定部22,24は、導電性材料からなることが好ましい。
更に、可動部21,23及び固定部22,24をともに金属等の導電性材料から作製しても良いし、ともに合成樹脂等の絶縁性材料から作製することもできる。
また、図1及び図8に示したように、上記各実施の形態においては、円筒形状のアクチュエータ装置について説明した。これに限られるものではなく、角筒形状等の他の形状のアクチュエータ装置とすることもできる。
なお、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した各実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
本発明の高分子アクチュエータ及びアクチュエータ装置は、自動化の進んだ工場における小型アクチュエータとして適している。
1,5 アクチュエータ装置
2 高分子アクチュエータ
10 正電極板
11 負電極板
12 高分子ゲル
13 誘電性高分子
14 可塑剤
21,23 可動部
22,24 固定部

Claims (15)

  1. 正電極板と、
    負電極板と、
    前記正電極板と前記負電極板との間に設けられた誘電性高分子及び可塑剤を含有する高分子ゲルと、
    を有し、
    前記可塑剤は、前記正電極板と前記負電極板とを可塑剤分子が接続するように、前記誘電性高分子の間に分散していることを特徴とする高分子アクチュエータ。
  2. 前記正電極板と前記負電極板とは、互いに平行に向かい合って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の高分子アクチュエータ。
  3. 前記正電極板と前記負電極板とは、間に前記高分子ゲルを挟んでそれぞれ複数枚、交互に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高分子アクチュエータ。
  4. 前記正電極板は、貫通孔及び/または窪みを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高分子アクチュエータ。
  5. 前記負電極板の厚さは、0.2mm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高分子アクチュエータ。
  6. 前記可塑剤は、前記高分子ゲルに対する重量百分率で50%以上含有されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の高分子アクチュエータ。
  7. 前記誘電性高分子は、重合度が5000未満であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の高分子アクチュエータ。
  8. 前記高分子ゲルの厚さは、0.1mm乃至2.0mmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の高分子アクチュエータ。
  9. 前記誘電性高分子は、ポリ塩化ビニル及び/またはポリメタクリル酸メチルであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の高分子アクチュエータ。
  10. 前記可塑剤は、アジピン酸エステル及び/またはフタル酸エステルであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の高分子アクチュエータ。
  11. 可動部と、
    固定部と、
    前記可動部と前記固定部との間に設けられた請求項1乃至10のいずれか1項に記載の高分子アクチュエータと、
    を有することを特徴とするアクチュエータ装置。
  12. 前記可動部及び/または前記固定部の少なくとも表面の一部が絶縁性材料であることを特徴とする請求項11に記載のアクチュエータ装置。
  13. 前記可動部及び/または前記固定部の少なくとも表面以外の部分が導電性材料であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のアクチュエータ装置。
  14. 前記可動部と前記固定部の間に案内機構を設けたことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載のアクチュエータ装置。
  15. 前記案内機構は、滑りガイドであることを特徴とする請求項14に記載のアクチュエータ装置。
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