JP2012122362A - 軸流ターボ機械、およびその改造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構造で、静翼本来の作動流体を加速するといった性能および静翼単体設計時に定めた静翼流出角を変化させることなく、静翼後流周波数一次成分での動翼に作用する励振力を低減できる軸流ターボ機械の静翼構造を提供する。
【解決手段】静翼列3と動翼列4を組み合わせた段落構造を備える軸流ターボ機械において、動翼列4の上流側に設置される静翼列3を構成する静翼8の間に後流形成物体11を設置し、後流形成物体11のタービン半径方向各位置における断面は、各静翼8間に形成される流路で最も狭い静翼スロート部12より下流側、且つ静翼列3の下流側に設置される動翼列4の動翼列前縁線13よりも上流側に位置し、後流形成物体11のタービン半径方向各位置における断面の形状は、タービン半径方向同位置にある静翼断面の翼弦線10に平行な静翼翼弦平行線14に沿った流線形状であることを特徴とする軸流ターボ機械。
【選択図】 図4

Description

本発明は、軸流ターボ機械の静翼構造に関する。
軸流ターボ機械は、静翼と、静翼の作動流体流れ方向下流側に配置された動翼とからなる段落構造を有する。
一般に、軸流ターボ機械の静翼下流側では、当該静翼が存在する部分と存在しない部分とでは、作動流体の流速等、流れの特性が異なり、上流側に当該静翼が存在する部分の流れを後流と呼ぶ。この静翼の下流側に配置された回転する動翼は、後流を繰り返し通過することから、当該動翼の回転周波数と静翼枚数との積で表される静翼後流周波数(Nozzle Passing Frequency、以下NPF)の流体加振力によって加振される。そして、この静翼後流周波数と動翼の固有振動数が一致した場合、共振により動翼に過大な変動応力が発生し、そのため、動翼が疲労破壊してしまう可能性がある。従来では、かかる動翼の疲労破壊を防止するために、定格回転速度における静翼後流周波数と動翼の固有振動数を離調させる設計が行われている。
しかしながら、多段落構造を採用する軸流ターボ機械では、段落初段から最終段にかけて翼長の異なる動翼が採用されるため、全ての動翼で固有振動数の離調設計を行うことは多大な時間がかかるだけでなく、静翼枚数に制限が与えられるため、段落設計を行う際の課題となっている。
本技術分野の従来技術として、特開2001−27103号公報(特許文献1)がある。この公報には、軸流ターボ機械の動翼列の上流に設置される静翼列の出口の各静翼の中間に外周から軸中心線側に向って垂下する半羽根を設けたターボ機械の静翼構造が記載されている。
また、特開2004−100553号公報(特許文献2)がある。この公報には、各静翼の外側端面より延びる回転軸と、該回転軸より側方に延びるアームとを有し、該各アームをリンクにより回転駆動して該各静翼の取付角度を変化させる回転機械の静翼構造が記載されている。
特開2001−27103号公報 特開2004−100553号公報
前述したように前記特許文献1には、軸流ターボ機械の動翼列の上流に設置される静翼列の出口の各静翼間に外周から軸中心線側に向って垂下する半羽根を設けたターボ機械の静翼構造が記載されている。
しかし、特許文献1の静翼構造では、例えば、蒸気タービンなどに採用されている周方向に湾曲した静翼を対象とする場合には、外周から軸中心線側に向って垂下した半羽根を用いる構造だと、半羽根の先端側では静翼翼面と半羽根の距離が短くなり、半羽根の後流と静翼の後流が足し合わさって、逆に動翼に作用する励振力が大きくなる可能性がある。
また特許文献1では、半羽根の翼幅は1/3〜1/2が望ましいと記載されているが、例えば、蒸気タービンのような静翼スロート部が翼後縁付近にある軸流ターボ機械では、半羽根の翼幅が1/3〜1/2であると静翼スロート部に半羽根が重なってしまい、作動流体を加速するといった静翼本来の性能を発揮することが困難となり、効率が低下してしまう可能性がある。
さらに、特許文献1の図1では、半羽根が静翼翼弦線に沿った形状をしていないため、半羽根を設置することによって、静翼単体での設計で定めた静翼流出角を保持できない可能性がある。
前記特許文献2には、簡単な構成で、翼列干渉励振力を低減する非対称静翼構造を容易に変更,調整可能とした回転機械の静翼構造を提供すると記載されている。
しかし、特許文献2に示されている実施例では、アームをリンクにより回転駆動するフラップを用いているため、例えば、蒸気タービンなどに採用されている周方向に湾曲した静翼を用いる場合に、回転軸を中心に回動するフラップ構造では、湾曲したフラップを用いることができない可能性がある。
そのため、特許文献2に記載されている回転軸を中心に回動するフラップ構造を湾曲した静翼に適用した場合に、フラップと静翼翼面との距離が短くなる領域が存在し、フラップの後流と静翼の後流が足し合わさって、逆に動翼に作用する励振力が大きくなるといった可能性がある。
さらに、特許文献2の図5では、フラップが静翼スロート部に重なっており、作動流体を加速するといった静翼本来の性能を発揮することができず、効率が低下してしまう可能性がある。
静翼列に半羽根やフラップ等の構造体を追設する場合、静翼本来の性能を阻害しないように、構造体と静翼の形状や設置位置との相対的関係を考える必要があるが、上記従来技術ではこの点については考慮されていない。
そこで、本発明は、簡単な構造で、効率の低下を抑制しつつ、静翼後流周波数一次成分での動翼に作用する励振力を低減できる軸流ターボ機械を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、静翼列と動翼列を組み合わせた段落構造から成る軸流ターボ機械において、動翼列の上流側に設置される静翼列を構成する静翼の間に後流形成物体を設置し、後流形成物体は、タービン半径方向各位置における断面が、各静翼間に形成された作動流体の流路で最も狭い静翼スロート部より下流側であり、且つ静翼列の下流側に設置される動翼列の前縁線よりも上流側に位置するように設置され、後流形成物体のタービン半径方向各位置における断面の形状を、タービン半径方向同位置にある静翼断面の翼弦線に平行な静翼翼弦平行線に沿った流線形状にしたことを特徴とする。
本発明によれば、静翼構造の大幅な変更をすることなく簡単な構造体を設置することで、静翼本来の作動流体を加速するといった性能および静翼単体設計時に定めた静翼流出角の変化を少なくして、効率の低下を抑制でき、かつ静翼列下流側に設置される動翼に作用する静翼後流周波数一次成分での励振力を低減できる。
蒸気タービンの段落構造の例である。 一般的な蒸気タービンの静翼列構造の例である。 本発明を静翼の半径方向全断面に適用した実施例(実施例1)である。 本発明に係る蒸気タービンの静翼列構造の例(実施例1)を示した断面図である。 本発明と従来の静翼構造の静翼下流側での変動速度分布を比較した例である。 後流形成物体の大きさに対する静翼下流側での変動速度分布を示した例である。 本発明を静翼の先端付近のみに適用した実施例(実施例2)である。 本発明を湾曲した静翼に適用した実施例(実施例3)である。 後流形成物体の大きさを半径方向各断面で変化させた実施例(実施例4)である。 後流形成物体を円形状にした場合の実施例(実施例5)である。
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施例は、軸流ターボ機械の一例として蒸気タービンに本発明を適用した例であるが、本発明は、蒸気タービンに限らず、ガスタービンにも適用可能である。
本発明の第1の実施例について説明する。まず最初に、本発明が適用される蒸気タービンの一例について説明する。
図1は、軸流ターボ機械の一例である蒸気タービンの段落構造の例である。
図1において、1はダイアフラム内輪、2はダイアフラム外輪、3は静翼列、4は動翼列、5はロータ、6はケーシング、7はシュラウドカバー、20で示した矢印は作動流体である蒸気の流れ方向を各々示す。
静翼列3は、円環状に組み立てられたダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2との間に周方向に複数枚の静翼を固定して形成される。動翼列4は、回転体であるロータ5のディスク部に周方向に複数枚の動翼を固定して形成される。動翼列4の外周側は、一般的にシュラウドカバー7で連結され、固定されている。
蒸気タービンの段落構造は、ダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2の間に環状流路を形成する静翼列3と、静翼列3の作動流体20の流れ方向下流側に設置される動翼列4とを、一列ずつ組み合わせて一つの段落を形成している。一般的な蒸気タービンは、静翼列3と動翼列4を組み合わせた段落が、タービン軸方向に複数設けられた多段落構造となっている。なお、段落数は設計条件により決定される。
図2は、一般的な蒸気タービンの静翼列構造の例を示す図である。なお、図2では静翼列3を構成する各静翼8が形成する複数の静翼間のうち、ある一つの静翼間を示しており、ダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2が形成する円環の全周360°に渡って所定数の静翼8を配置することで静翼列3を構成している。
蒸気タービンの静翼列構造は、図2に示したようにダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2に静翼8が固定された構造となっているため、ダイアフラム内輪1からダイアフラム外輪2に向けて隣り合う静翼8の翼間距離が広がる構造となる。
ここで静翼8の役割としては、流入する作動流体20を加速する役割を果たしており、静翼8によって加速された作動流体20のエネルギーが、動翼列4によって回転エネルギーに変換され、ロータ5を回転させる。ロータ5は図示しない発電機に連結されており、ロータ5の回転によって発電する。
蒸気タービンを含め、一般的な軸流ターボ機械の静翼構造では、静翼8の下流側に設置される動翼形状および設計条件に合わせて、タービン半径方向各断面でのスロート/ピッチで規定される静翼流出角が決定される。そのため、例えば、図2に示しているダイアフラム内輪1側,中間断面,ダイアフラム外輪2側のタービン半径方向各断面での静翼翼弦線10は角度が異なる形状となる。
次に、本実施例に係る蒸気タービンの静翼列構造について説明する。
図3は、本実施例の静翼列構造を示した図である。なお、図3では静翼列3を構成する各静翼8が形成する複数の静翼間のうち、ある一つの静翼間を示しており、ダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2が形成する円環の全周360°に渡って所定数の静翼8を配置することで静翼列3を構成している。
図3では、ダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2の間に環状流路を形成する静翼列3を構成する、各静翼8間に後流形成物体11が設置されている。後流形成物体11はタービン半径方向の端部がダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2に固定された両端支持構造となっている。
図4は、図3に示した後流形成物体11を各静翼間に設置した場合の静翼列3と動翼列4を組み合わせた段落構造を、タービン半径方向のある位置で見た断面図である。
なお、図4に示した断面図は、ダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2の間に環状流路を形成する静翼列3の全周360°に渡って適用され、図3で示した静翼構造において、後流形成物体11を設置するタービン半径方向各断面に適用される。
本実施例では、後流形成物体11の作動流体20流れ方向での設置位置は、静翼8間に形成される作動流体の流路の最も狭い部分である静翼スロート部12より下流側で、且つ動翼列4を構成する各動翼9の動翼列前縁線13より上流側に位置する。
その理由としては、例えば、蒸気タービンのような静翼スロート部12で作動流体を加速する軸流ターボ機械では、静翼スロート部12に後流形成物体11を設置してしまうと、スロート部の面積が設計値から変わり、作動流体を加速するといった静翼本来の役割を阻害し、タービン効率が低下してしまう可能性がある。
本実施例では、静翼スロート部12より下流側で、且つ動翼列4を構成する各動翼9の動翼列前縁線13より上流側に後流形成物体11を設置しているので、作動流体の加速を阻害せず、タービン効率の低下を抑制できる。
さらに、後流形成物体11の形状は、タービン半径方向各位置における断面で、後流形成物体11を設置する静翼間流路を形成する静翼8の、タービン半径方向同位置にある静翼翼弦線10に平行な静翼翼弦平行線14に沿った流線形状にする必要がある。
その理由としては、軸流ターボ機械の静翼流出角は、静翼スロート部12近傍から下流側の静翼8の静翼翼弦線10の形状によって決定されるため、この部分に静翼8の静翼翼弦線10に沿った形状と異なる形状の物体を設置してしまうと、静翼単体設計で定めた静翼流出角とは異なる角度で作動流体20が流出してしまい、タービン効率が低下してしまうためである。
本実施例では、後流形成物体11をタービン半径方向各位置における断面で静翼翼弦線10に平行な静翼翼弦平行線14に沿った流線形状にすることで、各断面での設計で定めた作動流体の静翼流出角を保持でき、タービン効率の低下を抑制できる。
本実施例では、図4に示すように後流形成物体11は各静翼8の間に一つずつ設置されており、後流形成物体11の周方向設置位置は各静翼8の間の中間部に設置されることが望ましい。
これは、後流形成物体11を各静翼8の中間部に設置することで、静翼8の後流による速度の変動周期と、後流形成物体11の後流による速度の変動周期の位相が逆になるためである。
後流形成物体11を各静翼8の中間部に設置し、後流による速度の変動周期の逆位相にした方が、中間部以外の場所に設置した場合に比べて、より小さな後流形成物体11で静翼後流周波数一次成分での後流速度変動幅を小さくできるため、後流形成物体11の大きさによる摩擦損失をより低減できるといった利点があるためである。
しかし、後流形成物体11の周方向設置位置は、必ずしも中間部に設置することを限定するものではなく、中間部でない位置に設置した場合でも静翼後流周波数一次成分での後流速度変動幅を小さくできる。従って、静翼8の後流と後流形成物体11の後流が重ならないように後流形成物体11と静翼翼面が所定の距離を保てば、中間部以外の場所に設置しても良い。
また、後流形成物体11の設置数は、静翼8の後流と後流形成物体11の後流が重ならない範囲であれば、各静翼間に複数設置しても構わない。この理由としては、静翼8の後流と後流形成物体11の後流が重なってしまうと、両者の後流の重ね合わせにより静翼下流側での変動速度が増大してしまい、逆に動翼9に作用する励振力が大きくなってしまうためである。
さらに、後流形成物体11は、必ずしも全ての静翼間に設置する必要はなく、例えば、2静翼間ごとに設置しても動翼に作用する励振力を低減することができる。
次に、本実施例の効果について説明する。図5は、本実施例での静翼下流位置での、静翼8単体での変動速度分布,後流形成物体11単体での変動速度分布,各静翼8の間に後流形成物体11を設置した本実施例での変動速度分布を比較した例である。なお、変動速度は静翼後流周波数一次成分のみを示している。また、静翼8単体での変動速度最大値を1として無次元化している。
図5より、後流形成物体11単体での後流速度の変動周期と静翼8単体での後流速度の変動周期が逆位相になっているため、各静翼8の間に後流形成物体11を設置した本実施例での変動速度の振幅が小さくなることがわかる。
ここで、静翼列3の下流での速度変動幅が小さい方が静翼列3下流側に設置される動翼9に作用する励振力が小さくなるため、本実施例により動翼に作用する励振力を低減することが可能となる。
さらに、本実施例の効果について追記する。図6は後流形成物体11から生じる後流の強さを変化させた場合の、静翼8の下流側位置での、変動速度の静翼後流周波数一次成分を示している。なお、図中の横軸は、静翼8の後流強さに対する後流形成物体11の後流強さの比を示している。ここで述べた後流強さとは、後流の速度欠損領域の幅および深さのことである。
図6より、後流形成物体11の後流強さが静翼に近づくにつれ、速度変動値が小さくなるのが確認できる。よって、後流形成物体11の大きさは、後流形成物体11の後流強さと静翼8の後流強さが同じ大きさになるようにすることが望ましいが、必ずしも同じ後流強さにする必要はなく、後流形成物体11を大きくすることによる摩擦損失の増加と動翼に作用する励振力の減少要望の観点から決定される。
本実施例によると、静翼間に後流形成物体を設置することで、静翼本来の役割である作動流体を加速するといった性能を損なうことなく、且つ静翼流出角の設計値を保持したままタービン効率の低下を最小限に抑えて、動翼に作用する静翼後流周波数一次成分での励振力を低減できるといった効果がある。
また、本実施例では、後流形成物体11を両端支持構造にすることによって、動翼根元部から動翼先端部まで、全ての断面で動翼に作用する静翼後流周波数一次成分での励振力を低減できるため、動翼全体の励振力が問題となる振動モードでの共振を回避できるといった利点がある。
また、後流形成物体11のタービン半径方向各位置における断面での形状は静翼翼弦平行線14に沿った流線形状をしているため、例えば、タービン半径方向各断面の静翼形状または取り付け角が異なる場合でも、各断面での設計で定めた静翼流出角を保持しつつ後流形成物体11を設置することができる。
次に本発明の第2の実施例について説明する。図7は、実施例1で示した静翼構造を、タービン半径方向外周側の静翼先端付近にのみ適用した本実施例の静翼構造を示した図である。なお、図7では前記静翼列3を構成する各静翼8が形成する複数の静翼間のうち、ある一つの静翼間を示しており、ダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2が形成する円環の全周360°に渡って所定数の静翼8を配置することで静翼列3を構成している。
ここで、先に第1の実施例で説明した構成と同等の構成については同一の符号を付して説明を省略し、主に先に説明した実施例と異なる箇所について説明をする。
図7では、ダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2の間に環状流路を形成する静翼列3を構成する、各静翼8間に後流形成物体11が設置されている。後流形成物体11はタービン半径方向の片方の端部がダイアフラム外輪2に固定され、固定されない端部は各静翼8が構成する流路内部へダイアフラム外輪2からダイアフラム内輪1に向かって伸びている片持ち支持構造となっている。
ダイアフラム外輪2に固定された片持ち支持構造にすることによって、動翼先端付近に作用する静翼後流周波数一次成分での励振力を低減できるため、動翼先端付近の励振力が問題となる振動モードでの共振を回避できるといった利点がある。
ここで、実施例1で述べたとおり、後流形成物体11のタービン半径方向各位置における断面の形状は、タービン半径方向同位置にある静翼の断面の翼弦線に平行な静翼翼弦平行線14に沿った流線形状をしている。そのため、例えば、タービン半径方向各位置における静翼断面の形状または取り付け角が異なる場合でも、タービン半径方向各断面の静翼流出角設計値を保持して後流形成物体11を設置することができる。
さらに、図7の後流形成物体11のタービン半径方向各位置における断面の設置位置は、実施例1で述べたように、各静翼8が形成する作動流体の流路の最も狭い部分である静翼スロート部12より作動流体流れ方向下流側で、且つ前記動翼列4を構成する各動翼9の動翼列前縁線13より作動流体流れ方向上流側に設置するようにしなければならない。
また、後流形成物体11のタービン周方向の設置位置は、実施例1で述べたように、タービン半径方向各断面の静翼8間の中間部であることが望ましいが、静翼8の後流と後流形成物体11の後流が重ならないように後流形成物体11と静翼翼面が所定の距離を保てば、必ずしも中間部である必要はない。
さらに、実施例1で述べたように、後流形成物体11の設置数は、静翼8の後流と後流形成物体11の後流が重ならない範囲であれば、各静翼間に複数設置しても構わない。
また、実施例1で述べたように、後流形成物体11は、必ずしも全ての静翼間に設置する必要はなく、例えば、2静翼間ごとに設置しても動翼に作用する励振力を低減することができる。
本実施例によると、実施例1と同様に、静翼本来の役割である作動流体を加速するといった性能を損なうことなく、且つ静翼流出角の設計値を保持したままタービン効率の低下を最小限に抑えて、動翼の先端部分に作用する静翼後流周波数一次成分での励振力を低減できるといった効果がある。
なお、本実施例の図7では、動翼先端付近での励振力が問題となる場合に適用される静翼構造であるが、例えば、動翼根元付近での励振力が問題となる場合には、後流形成物体11をダイアフラム内輪1に固定し、固定されない端部は各静翼8が構成する流路内部へダイアフラム内輪1からダイアフラム外輪2に向かって伸びている片持ち支持構造にすれば、動翼根元部に作用する励振力を低減することができ、本実施例と同様の効果を得ることができる。
また、両持ち支持構造とするのに比較して、本実施例の構造は、後流形成物体11の面積を小さくでき、後流形成物体11自体による損失を小さくでき、より安価に製造することができる。
次に本発明の第3の実施例について説明する。
図8は、本発明を、周方向に湾曲した静翼を有する静翼構造に適用した実施例を示す図である。なお、図8では静翼列3を構成する各静翼8が形成する複数の静翼間のうち、ある一つの静翼間を示しており、ダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2が形成する円環の全周360°に渡って所定数の静翼8を配置することで静翼列3を構成している。
ここで、先に第1の実施例で説明した構成と同等の構成については同一の符号を付して説明を省略し、主に先に説明した実施例と異なる箇所について説明をする。
図8では、ダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2の間に環状流路を形成する静翼列3を構成する、各静翼8間に後流形成物体11が設置されている。後流形成物体11はタービン半径方向の端部がダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2に固定された両端支持構造となっている。
実施例1で述べたとおり、後流形成物体11のタービン半径方向各位置における断面の形状は、タービン半径方向同位置にある静翼の断面の翼弦線に平行な静翼翼弦平行線14に沿った流線形状をしている。そのため、例えば、静翼が周方向に湾曲しているため、半径方向各位置の静翼断面形状または取り付け角が異なる場合にも、後流形成物体の後縁線の形状を、静翼の後縁線の形状に合わせて周方向に湾曲させることができ、半径方向各断面での設計で定めた静翼流出角を保持しつつ後流形成物体11を設置することができる。
図8の例では、静翼の後縁線は、周方向に凸状に湾曲している。そのため、タービン半径方向各位置における断面の静翼形状,取り付け角が異なる。一方、後流形成物体11は、タービン半径方向各位置における断面の形状を、タービン半径方向同位置にある静翼の断面の翼弦線に平行な静翼翼弦平行線14に沿った流線形状に形成している。そのため、後流形成物体11も静翼8の後縁線に合わせて周方向に凸状に湾曲した形状となり、後流形成物体11の後縁線を静翼8の後縁線に略同一な形状とすることができる。よって、半径方向各断面での設計で定めた静翼流出角を保持することができる。
ここで、図8の後流形成物体11のタービン半径方向各位置における断面の設置位置は、実施例1で述べたように、各静翼8が形成する流路の最も狭い部分である静翼スロート部12より下流側で、且つ前記動翼列4を構成する各動翼9の動翼列前縁線13より上流側に設置するようにしなければならない。
さらに、後流形成物体11のタービン周方向の設置位置は、実施例1で述べたように、半径方向各断面の静翼8間の中間部であることが望ましいが、必ずしも中間部である必要はない。例えば、図8に示した湾曲した静翼の場合には、静翼8の後縁線に近い形状になるように後流形成物体11を湾曲させて、半径方向各断面で周方向設置位置が異なる形状にして、後流形成物体11と静翼翼面が所定の距離を保つように設置すれば、静翼8の後流と後流形成物体11の後流が重なることがないため、後流の重ね合わせによる静翼後流での変動速度の増大を防ぐことができ、動翼に作用する励振力を低減することができる。
さらに、実施例1で述べたように、後流形成物体11の設置数は、静翼8の後流と後流形成物体11の後流が重ならない範囲であれば、各静翼間に複数設置しても構わない。
また、実施例1で述べたように、後流形成物体11は、必ずしも全ての静翼間に設置する必要はなく、例えば、2静翼間ごとに設置しても動翼に作用する励振力を低減することができる。
本実施例によると、実施例1の効果に加えて、静翼形状が複雑な形状をしている場合でも、静翼の後流と後流形成物体の後流が重なることなく、動翼全断面に作用する静翼後流周波数一次成分での励振力を低減できるといった利点がある。
なお、本実施例の図8では、湾曲した静翼を示しているが、必ずしも湾曲した静翼に限定されるものではなく、例えば、傾斜した静翼や後縁線が複雑な形状をした静翼でも、本実施例で述べたように、後流形成物体11の周方向設置を半径方向各断面で異なる位置になるような形状にすれば、動翼に作用する励振力を低減することができる。
次に本発明の第4の実施例について説明する。
図9は、実施例1で示した静翼構造を、静翼のタービン半径方向各位置における断面の後縁線が軸方向に変化している場合に適用した実施例である。なお、図9では静翼列3を構成する各静翼8が形成する複数の静翼間のうち、ある一つの静翼間を示しており、ダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2が形成する円環の全周360°に渡って所定数の静翼8を配置することで静翼列2を構成している。
ここで、先に第1の実施例で説明した構成と同等の構成については同一の符号を付して説明を省略し、主に先に説明した実施例と異なる箇所について説明をする。
図9では、静翼8の後縁線が軸方向に湾曲しており、それに合わせて半径方向高さ各位置における断面での静翼スロート部の位置も軸方向に変化している。
図9の例では、静翼8の後縁線が翼高さ方向中央部に向って、作動流体流れ方向下流側に凸状に湾曲している。この場合、後縁線に合わせて静翼スロート部の位置も翼高さ方向中央部に向って徐々に下流側に移動する。
このような場合に、実施例1で述べた後流形成物体11の設置位置を、各静翼8が形成する作動流体流路の最も狭い部分である静翼スロート部12より下流側で、且つ前記動翼列4を構成する各動翼9の動翼列前縁線13より上流側に位置するように設置すると、半径方向各位置における断面での後流形成物体11の大きさが一定の場合には、後流形成物体11は、下流側に凸状に湾曲したような形状になる。そして、部分的に後流形成物体11と動翼8の距離が近い領域ができてしまい、ポテンシャル干渉による流れ場への影響が生じてしまう。ここで、ポテンシャル干渉とは、物体同士の圧力場が干渉することである。
そこで、図9に示したように半径方向各断面での後流形成物体11の断面積の大きさを変化させることで、動翼と後流形成物体11を所定の距離に保つことができる。
図9の例では、静翼8の後縁線がタービン軸方向に湾曲しており、それに合わせてタービン半径方向各位置における断面での静翼スロート部の位置も翼高さ方向中央部に向って徐々に下流側に移動する。後流形成物体11は、スロート部が下流側に移動するのに合わせて、翼高さ方向中央部に向って断面積が小さくなるように形成する。そのため、後流形成物体11は、下流側に凸状に湾曲したような形状になることを防ぐことができ、後流形成物体11と動翼8の距離を一定に保ち、ポテンシャル干渉による流れ場への影響を抑制できる。
なお、後流形成物体の半径方向各位置における断面の設置位置は、実施例1で述べたように、各静翼8が形成する流路の最も狭い部分である静翼スロート部12より下流側で、且つ前記動翼列4を構成する各動翼9の動翼列前縁線13より上流側に設置するようにしなければならない。
また、実施例1で述べたとおり、図9に示した後流形成物体11のタービン半径方向各位置における断面の形状は、半径方向同位置にある静翼の半径方向断面の翼弦線に平行な静翼翼弦平行線14に沿った流線形状にしなければならない。
さらに、後流形成物体11の周方向設置位置は、実施例1で述べたように、タービン半径方向各位置における断面の静翼8間の中間部であることが望ましいが、静翼8の後流と後流形成物体11の後流が重ならないように後流形成物体11と静翼翼面が所定の距離を保てば、必ずしも中間部である必要はない。
また、実施例3に示したように、周方向にも湾曲した静翼の場合には、静翼8の後縁線に近い形状になるように周方向にも湾曲させて、半径方向各断面で周方向設置位置が異なる形状にして、後流形成物体11と静翼翼面が所定の距離を保つように設置すればよい。
さらに、実施例1で述べたように、後流形成物体11の設置数は、静翼8の後流と後流形成物体11の後流が重ならない範囲であれば、各静翼間に複数設置しても構わない。
また、実施例1で述べたように、後流形成物体11は、必ずしも全ての静翼間に設置する必要はなく、例えば、2静翼間ごとに設置しても動翼に作用する励振力を低減することができる。
本実施例によると、実施例1の効果に加えて、半径方向各断面での後流形成物体11の断面積の大きさを変化させることで、動翼と後流形成物体を所定の距離に保つことができるため、動翼と後流形成物体が近づきすぎることによるポテンシャル干渉の影響を防ぐことができるといった利点がある。
次に本発明の第5の実施例について説明する。図10は、円形状の後流形成物体11を各静翼間に設置した場合の静翼列3と動翼列4を組み合わせた段落構造を、半径方向から見た断面図である。
図10に示した断面図は、ダイアフラム内輪1とダイアフラム外輪2の間に環状流路を形成する静翼列3の全周360°に渡って適用され、後流形成物体を設置する半径方向各断面に適用させる。
ここで、先に第1の実施例で説明した構成と同等の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施例では、後流形成物体11の半径方向断面形状は円形状となっている。
ここで、実施例1で述べたように、後流形成物体11の作動流体20流れ方向での設置位置は、各静翼8が形成する流路の最も狭い部分である静翼スロート部12より下流側で、且つ前記動翼列4を構成する各動翼9の動翼列前縁線13より上流側に設置するようにしなければならない。
さらに、実施例1で述べたように、後流形成物体11の周方向設置位置は各静翼8の間の中間部に設置されることが望ましいが、静翼8の後流と後流形成物体11の後流が重ならないように後流形成物体11と静翼翼面が所定の距離を保てば、必ずしも中間部である必要はない。
また、実施例3に示したように、湾曲した静翼の場合には、静翼8の後縁線に近い形状になるように湾曲させて、半径方向各断面で周方向設置位置が異なる形状にして、後流形成物体11と静翼翼面が所定の距離を保つように設置すればよい。
また、実施例1で述べたように、後流形成物体11の設置数は、静翼8の後流と後流形成物体11の後流が重ならない範囲であれば、各静翼間に複数設置しても構わない。
さらに、実施例1で述べたように、後流形成物体11は、必ずしも全ての静翼間に設置する必要はなく、例えば、2静翼間ごとに設置しても動翼に作用する励振力を低減することができる。
本実施例によると、実施例1の効果に加えて、後流形成物体11を円形状とすることで、後流形成物体11の形状による静翼流出角への影響を考慮する必要がなくなるため、流線形状である後流形成物体11に比べて、簡易且つ低コストで後流形成物体を設置することができ、動翼に作用する励振力を低減できるといった利点がある。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、後流形成物体11は、既に設置された蒸気タービンの静翼構造に新たに取り付けるものであっても良い。後流形成物体11の静翼構造への取り付け方法としては、ノズルダイアフラムに溶接して固定する方法や、ノズルダイアフラムに埋め込む方法、ボルトで固定する方法など、静翼構造によって様々である。
1 ダイアフラム内輪
2 ダイアフラム外輪
3 静翼列
4 動翼列
5 ロータ
6 ケーシング
7 シュラウドカバー
8 静翼
9 動翼
10 静翼翼弦線
11 後流形成物体
12 静翼スロート部
13 動翼列前縁線
14 静翼翼弦平行線
20 作動流体

Claims (9)

  1. ダイアフラム外輪とダイアフラム内輪との間に設けられた静翼列とロータに設けられた動翼列とを組み合わせた段落構造を備える軸流ターボ機械であって、
    前記動翼列の作動流体流れ方向上流側に設けられた前記静翼列を構成する静翼間に後流形成物体を備え、
    前記後流形成物体のタービン半径方向各位置における断面の設置位置は、前記静翼間に形成された作動流体の流路で最も狭い静翼スロート部より下流側で、且つ前記静翼列の作動流体流れ方向下流側に設けられた前記動翼列の前縁線よりも上流側に位置し、
    前記後流形成物体のタービン半径方向各位置における断面の形状は、タービン半径方向同位置にある前記静翼断面の翼弦線に平行な静翼翼弦平行線に沿った流線形状であることを特徴とする軸流ターボ機械。
  2. 請求項1に記載の軸流ターボ機械であって、
    前記後流形成物体は、タービン半径方向の片方の端部が、前記ダイアフラム外輪に固定されており、他方の端部が前記静翼間に形成された作動流体の流路内部へダイアフラム外輪からダイアフラム内輪に向かって伸びている片持ち支持構造であることを特徴とする軸流ターボ機械。
  3. 請求項1に記載の軸流ターボ機械であって、
    前記後流形成物体は、タービン半径方向の片方の端部が、前記ダイアフラム内輪に固定されており、他方の端部が前記静翼間に形成された作動流体の流路内部へダイアフラム内輪からダイアフラム外輪に向かって伸びている片持ち支持構造であることを特徴とする軸流ターボ機械。
  4. 請求項1に記載の軸流ターボ機械であって、
    前記後流形成物体は、タービン半径方向の端部が、前記ダイアフラム内輪と前記ダイアフラム外輪に固定されている両端支持構造であることを特徴とする軸流ターボ機械。
  5. 請求項2乃至4のいずれか1項に記載の軸流ターボ機械であって、
    前記静翼の後縁線は、タービン周方向に湾曲しており、
    前記後流形成物体の後縁線の形状は、前記静翼の後縁線の形状に合わせて周方向に湾曲していることを特徴とする軸流ターボ機械。
  6. 請求項2乃至4のいずれか1項に記載の軸流ターボ機械であって、
    前記静翼の後縁線は、軸方向に湾曲しており、
    前記後流形成物体のタービン半径方向各位置における断面積を、前記静翼の後縁線の形状に合わせて変化させることを特徴とする軸流ターボ機械。
  7. 請求項1に記載の軸流ターボ機械であって、
    前記流線形状に代えて、前記後流形成物体のタービン半径方向各位置における断面の形状は円形状であることを特徴とする軸流ターボ機械。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の軸流ターボ機械であって、
    前記後流形成物体のタービン半径方向各位置における断面の設置位置が、前記静翼列を構成する前記静翼間の中間部であることを特徴とする軸流ターボ機械。
  9. ダイアフラム外輪とダイアフラム内輪との間に設けられた静翼列とロータに設けられた動翼列とを組み合わせた段落構造を備える軸流ターボ機械の改造方法であって、
    前記静翼列を構成する各静翼間に形成された作動流体の流路で最も狭い静翼スロート部より作動流体流れ方向下流側、且つ前記静翼列の作動流体流れ方向下流側に設けられた前記動翼列の前縁線よりも作動流体流れ方向上流側に、タービン半径方向各位置における断面の形状が、タービン半径方向同位置にある前記静翼断面の翼弦線に平行な静翼翼弦平行線に沿った流線形状に形成された後流形成物体を設置することを特徴とする軸流ターボ機械の改造方法。
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