本発明の、ポリマーと金属化合物を含有するゲート絶縁材料について説明する。本発明のゲート絶縁材料に用いられるポリマーは、溶媒に可溶性のものが好ましく、その骨格は直鎖状、環状、分岐状の何れも用いられる。また側鎖には架橋性やの官能基や、極性を有する官能基や、ポリマーの種々の特性を制御する官能基が導入されていることが好ましい。これらの特性を制御したポリマーを用いることによって、FET素子の作製工程においては例えば、塗布性、表面の平坦性、耐溶剤性、透明性、他インクの良好な濡れ性などが得られ、さらにはFET素子形成後の耐久性や安定性など、全てにバランスできる良好なFET素子を得ることができる。
さらに本発明のゲート絶縁材料に用いられる硬化剤は、マグネシウム化合物、亜鉛化合物、銅化合物、インジウム化合物、ランタニウム化合物、マンガン化合物、カルシウム化合物、スズ化合物、チタニウム化合物、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物(以下、アルミニウム化合物以外の金属化合物という場合がある。)の何れか1つ以上およびアルミニウム化合物とを含む。これにより、高耐久性、高移動度、高オンオフ比であり、かつ低ヒステリシス、低ターンオン電圧のFETを得ることができる。
FET素子形成に用いられるポリマーのゲート絶縁材料は、金属化合物を添加せずとも絶縁膜を形成できFET特性を得ることができるが、移動度が小さい、オンオフ比が小さいなどの課題が生じる。そのため、極性基の導入、高誘電率の微粒子の添加、金属酸化物の添加、金属化合物の添加などが通常行われる。
例えば、ポリシロキサンに金属化合物を添加して、絶縁膜の架橋・硬化による耐久性向上と、移動度向上、オンオフ比向上などの効果を得ている。しかし、アルミニウム化合物以外の金属化合物ではターンオン電圧とヒステリシスが大きいという課題が残り、一方でアルミニウム化合物のみを添加したポリシロキサンを用いたFETでは、ターンオン電圧が0V付近に低減されるものの、アルミニウム化合物以外の金属化合物を用いたときとは逆方向のヒステリシスが生じ、やはりヒステリシスは大きいという課題が残る。
そこで本発明では、硬化剤にアルミニウム化合物と、アルミニウム化合物以外の金属化合物とを同時に用いることで、耐久性向上と、移動度向上、オンオフ比向上を果たした上で、なおかつヒステリシスを5V以下に、かつターンオン電圧を15V以下に調整できる特異的な現象を見出した。
本発明に用いられるアルミニウム化合物は、溶媒中に均一溶解できるものが好ましいが、懸濁するものであっても濾過などにより粒径が1μm以下であれば好ましく用いることができる。アルミニウム化合物の好ましい例としては、金属キレート化合物もしくは金属アルコキシド化合物があげられ、具体的には、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムn − ブトキシド、アルミニウムt − ブトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、アルミニウムトリフルオロアセチルアセトナート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)アルミニウム等のアルミニウム化合物である。
本発明に用いられるアルミニウム化合物以外の金属化合物は、溶媒中に均一溶解できるものが好ましいが、懸濁するものであっても濾過などにより粒径が1μm以下であれば好ましく用いることができる。好ましくは金属キレート化合物もしくは金属アルコキシド化合物があげられ、具体的な例としては、エチルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(アセチルアセトネート)等のマグネシウム化合物、亜鉛ビス(エチルアセトアセテート)、亜鉛ビス(アセチルアセトネート)等の亜鉛化合物、銅ビス(エチルアセトアセテート)、銅ビス(アセチルアセトネート)等の銅化合物、ニッケルビス(エチルアセトアセテート)、ニッケルビス(アセチルアセトネート)等のニッケル化合物、クロムトリス(エチルアセトアセテート)、クロムトリス(アセチルアセトネート)等のクロム化合物、コバルトトリス(エチルアセトアセテート)、コバルトトリス(アセチルアセトネート)等のコバルト化合物、鉄トリス(エチルアセトアセテート)、鉄トリス(アセチルアセトネート)等の鉄化合物、インジウムトリス(エチルアセトアセテート)、インジウムトリス(アセチルアセトネート)等のインジウム化合物、ランタントリス(エチルアセトアセテート)、ランタントリス(アセチルアセトネート)等のランタン化合物、ジルコニアテトラキス(エチルアセトアセテート)、ジルコニアテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、ジルコニウムトリフルオロアセチルアセトナート、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)ジルコニウム、ジルコニウムサルフェートテトラヒドレート、等のジルコニア化合物、錫テトラキス(エチルアセトアセテート)、錫テトラキス(アセチルアセトネート)、等の錫化合物、チタンテトラキス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラキス(アセチルアセトネート)、チタンテトライソプロポキシド、チタニウムn−ブトキシド、チタニウムt−ブトキシド、チタニウムエトキシド、チタニウム2−エチルヘキソキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウム(ジイソプロポキシド)ビス(アセチルアセトナート) 、チタニウムオキシドビス(アセチルアセトナート)、トリクロロトリス(テトラヒドロフラン)チタニウム、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)チタニウム、(トリメチル)ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウム、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキシド、テトラクロロビス(シクロヘキシルメルカプト) チタニウム、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)チタニウム、テトラクロロジアミンチタニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)チタニウム、テトラキス(ジメチルアミノ)チタニウム、ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジカルボニルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(ペンタメチルシクロペタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)オキソチタニウム、クロロチタニウムトリイソプロポキシド、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド、ジクロロビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)チタニウム、ジメチルビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウム、ジ(イソプロポキシド)ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)チタニウム等のチタン化合物、ハフニウムn−ブトキシド、ハフニウムt−ブトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムイソプロポキシド、ハフニウムイソプロポキシドモノイソプロピレート、ハフニウムアセチルアセナート、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム等のハフニウム化合物があり、何れも用いることができる。
アルミニウム化合物と組みあわせるアルミニウム化合物以外の金属化合物としては、ジルコニア化合物、ハフニウム化合物、チタニウム化合物が好ましく、中でもジルコニア化合物がより好ましい。
ポリマー中に含有させるアルミニウム化合物とアルミニウム化合物以外の金属化合物の混合比としては、100/1〜100/500が好ましく、100/2〜100/30がより好ましい。この範囲にあることでターンオン電圧低減効果とヒシテリシス低減効果を得ることができる。
アルミニウム化合物とアルミニウム化合物以外の金属化合物の添加量としては、ポリマー100重量部に対して0.1〜100重量部が好ましく、1〜30重量部がより好ましい。この範囲にあることで、良好なFET特性、すなわち高移動度、高オンオフ比、低ターンオン電圧、低ヒステリシスを得ることができ、かつ凝集塊のない均質なゲート絶縁材料もしくはゲート絶縁層を得ることができる。
本発明に用いられるポリマーは、ポロシロキサン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール等を用いることができる。また、これらのポリマーに他のポリマーを共重合したもの、混合したものを用いることもできる。これらの何れも好ましく用いることができるが、ポリシロキサン、ポリビニルフェノールがより好ましく用いられる。さらに絶縁層形成後に耐溶剤性に優れていることが好ましいことから、これらのポリマーと硬化剤もしくは架橋剤を反応させてポリマーを架橋体として用いることが好ましい。
本発明のFETに適したポリシロキサンの一例として、一般式(1)で表されるシラン化合物および一般式(2)で表されるエポキシ基含有シラン化合物を共重合成分とするポリシロキサンがある。
一般式(1)で表されるシラン化合物について説明する。
R1 m Si(OR2)4−m (1)
ここで、R1は水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基またはアルケニル基を示し、R1が複数存在する場合、それぞれのR1は同じでも異なっていてもよい。R2はアルキル基またはシクロアルキル基を示し、R2が複数存在する場合、それぞれのR2は同じでも異なっていてもよい。mは1〜3の整数を示す。
アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換基を有している場合の追加の置換基には特に制限はなく、例えば、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、これらはさらに置換基を有していてもよい。また、アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、1以上20以下が好ましく、より好ましくは1以上8以下である。
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換基を有する場合、置換基には特に制限はなく、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、これら置換基はさらに置換基を有していてもよい。これら置換基に関する説明は、以下の記載にも共通する。シクロアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、3以上20以下の範囲が好ましい。
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、アミド環などの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環から導かれる基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は、特に限定されないが、2以上20以下の範囲が好ましい。
アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は、特に限定されないが、6〜40の範囲が好ましい。
ヘテロアリール基とは、例えば、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピリジル基、キノリニル基など、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する芳香族基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は、特に限定されないが、2〜30の範囲が好ましい。
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、2以上20以下の範囲が好ましい。
また上記で置換基として挙げたアルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など、エーテル結合の一方を脂肪族炭化水素基で置換した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は、特に限定されないが、1以上20以下の範囲が好ましい。
本発明のポリシロキサンに一般式(1)で表されるシラン化合物を導入することにより、可視光領域において高い透明性を保ちつつ、絶縁性、耐薬品性を高め、かつヒステリシスの原因となる絶縁膜内のトラップが少ないゲート絶縁膜を形成できる。
また、一般式(1)におけるm個のR1の少なくとも1つがアリール基またはヘテロアリール基であると、ゲート絶縁膜の柔軟性が向上し、クラック発生が防止できるため好ましい。
本発明に用いられる一般式(1)で表されるシラン化合物としては、具体的に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、α−ナフチルトリメトキシシラン、β−ナフチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリエトキシシラン、トリフルオロエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロエチルメチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルメチルジエトキシシラン、トリフルオロエチルメチルジイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルメチルジイソプロポキシシラン、トリフルオロエチルエチルジメトキシシラン、トリフルオロエチルエチルジエトキシシラン、トリフルオロエチルエチルジイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、トリルオロプロピルエチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルエチルジイソプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルエチルジイソプロポキシシラン、p−トリフルオロフェニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
上記シラン化合物のうち、架橋密度を上げ、耐薬品性と絶縁特性を向上させるために、m=1であるビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシシラン、フェニルトリメトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、α−ナフチルトリメトキシシラン、β−ナフチルトリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、p−トリフルオロフェニルトリエトキシシランを用いることが好ましい。また、量産性の観点から、R2がメチル基であるビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、α−ナフチルトリメトキシシラン、β−ナフチルトリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリメトキシシラン、トリメトキシシランを用いることが特に好ましい。
また、一般式(1)で表されるシラン化合物を2種以上組み合わせることが好ましい例として挙げられる。中でも、アルキル基を有するシラン化合物とアリール基またはヘテロアリール基を有するシラン化合物を組み合わせることにより、高い絶縁性とクラック防止のための柔軟性を両立できるため、特に好ましい。
次に一般式(2)で表されるエポキシ含有シラン化合物について説明する。
R3 nR4 lSi(OR5)4−n−l(2)
ここで、R3は1つ以上のエポキシ基を鎖の一部に有するアルキル基またはシクロアルキル基を示し、R3が複数存在する場合、それぞれのR3は同じでも異なっていてもよい。R4は水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基またはアルケニル基を示し、R4が複数存在する場合、それぞれのR4は同じでも異なっていてもよい。R5はアルキル基またはシクロアルキル基を示し、R5が複数存在する場合、それぞれのR5は同じでも異なっていてもよい。lは0〜2の整数、nは1または2を示す。ただし、l+n≦3である。
R3のエポキシ基を鎖の一部に有するアルキル基またはシクロアルキル基とは、隣り合う2つの炭素原子が1つの酸素原子と結合して形成される3員環エーテル構造を鎖の一部に有するアルキル基またはシクロアルキル基を示す。
その他のR3〜R5の説明は、上記R1およびR2の説明と同様である。
本発明に用いられるポリシロキサンが一般式(2)で表されるエポキシ基含有シラン化合物を有することにより、ゲート絶縁膜上へのレジストや有機半導体塗液の塗布性を良好にすることができ、かつヒステリシスが小さい優れたFETが得られる。
本発明に用いられる一般式(2)で表されるエポキシ基含有シラン化合物としては、具体的に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
これらのうち、架橋密度を上げ、耐薬品性と絶縁特性を向上させるために、n=1、l=0であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシランを用いることが好ましい。また、量産性の観点から、R5がメチル基であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシランを用いることが特に好ましい。
本発明の(a)ポリシロキサンは、一般式(1)または(2)で表されるシラン化合物以外に、その他のシラン化合物を共重合成分として含むことができる。その他のシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが挙げられる。
また、ポリシロキサンのうち、一般式(2)で表されるエポキシ基含有シラン化合物に由来する構成単位の含有量は、ポリシロキサンの共重合成分であるシラン化合物の全構成単位に対して0.1モル%〜40モル%であることが好ましい。0.1モル%以上であれば、有機半導体塗液のはじきを抑制した良好な塗布性を得ることができ、1モル%以上がより好ましい。一方、40モル%以下であれば、ヒステリシスの小さい優れたFET特性を得ることができ、35モル%以下がより好ましい。
本発明に用いられるポリシロキサンは、例えば次の方法で得ることができる。溶媒中に全シラン化合物を溶解し、ここに酸触媒および水を1〜180分かけて添加した後、室温〜80℃で1〜180分加水分解反応させる。加水分解反応時の温度は、室温〜55℃がより好ましい。この反応液を、50℃以上、溶媒の沸点以下で1〜100時間加熱し、縮合反応を行うことにより、エポキシ基含有ポリシロキサンを得ることができる。この場合、一般式(2)で表されるエポキシ基含有シラン化合物のエポキシ基に水を付加させてジオールを形成させるため、全シラン化合物中のアルコキシル基と当量の水に加えて、エポキシ基と当量以上の水を添加する必要がある。
また、加水分解における各種条件は、反応スケール、反応容器の大きさ、形状などを考慮して、例えば、酸濃度、反応温度、反応時間などを設定することによって、目的とする用途に適した物性を得ることができる。
シラン化合物の加水分解反応に利用される酸触媒としては、蟻酸、蓚酸、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、ポリリン酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂などの酸触媒が挙げられる。酸触媒の含有量は、ポリシロキサンの共重合成分である全シラン化合物100重量部に対して0.05重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がより好ましい。また、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましい。酸触媒の含有量が、0.05重量部以上であれば加水分解反応が十分進行し、また、10重量部以下であれば、急激な反応を抑制することができる。
加水分解反応に用いられる溶媒としては、有機溶媒が好ましく、エタノール、プロパノール、ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、エチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールアセテートなどのアセテート類、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素のほか、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。溶媒の量は、ポリシロキサンの共重合成分である全シラン化合物100重量部に対して、50重量部〜500重量部の範囲が好ましい。50重量部以上であれば、急激な反応を抑制でき、500重量部以下であれば、加水分解を十分進行させることができる。
また、加水分解に用いられる水としては、イオン交換水が好ましい。水の量は、任意に選択可能であるが、シラン化合物中のアルコキシル基と当量モルの水に加えて、エポキシ基と当量モル以上の水を添加するのがよい。ポリシロキサンの重合度を上げるために、再加熱もしくは塩基触媒の添加を行うことも可能である。
本発明に用いられるエポキシ基含有シラン化合物を共重合成分として含むポリシロキサンは、絶縁性、耐薬品性が高く、かつヒステリシスの原因となる絶縁膜内のトラップが少ないことから、ゲート絶縁材料として好適に用いられる。ポリシロキサンがエポキシ基含有シラン化合物を含むことは、元素分析、核磁気共鳴分析、赤外分光分析等の各種有機分析手法を単独または複数組み合わせることにより判定することができる。
本発明のゲート絶縁材料は、本発明のポリシロキサンを1種または2種以上含んでもよい。また、本発明の1種以上のポリシロキサンと1種以上の前記シラン化合物を混合して用いてもよい。
本発明のゲート絶縁材料は、さらに1気圧における沸点が110〜200℃の溶媒を含有することが好ましい。このような溶媒としては、具体的に、エチレングリゴールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアセテート類、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。沸点が110℃以上であれば、ゲート絶縁材料塗布時、溶媒の揮発が抑制されて、塗布性が良好となりまた、200℃以下であれば、膜中に残存する溶媒が少なく、耐薬品性や絶縁性に優れたゲート絶縁膜が得られる。さらに好ましくは沸点が130℃〜190℃である。これら溶媒は単独あるいは2種以上用いてもかまわない。
これらの溶媒の好ましい含有量は、ポリシロキサン100重量部に対して、100重量部〜1500重量部である。100重量部以上であれば、ゲート絶縁材料塗布時、溶媒の揮発が抑制され塗布性が良好となり、1500重量部以下であれば、膜中に残存する溶媒が少なく、耐薬品性や絶縁性に優れたゲート絶縁膜が得られる。
溶媒を2種以上用いる場合、大気圧下沸点が110℃を下回る低沸点溶媒あるいは、大気圧下沸点が200℃を越える高沸点溶媒を1種以上含有することも可能である。
本発明のゲート絶縁材料に含まれる硬化剤の含有量は、ポリシロキサン100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜100重量部であり、さらに好ましくは1重量部〜30重量部である。含有量が0.1重量部以上であれば、硬化が十分進行し、良好な耐薬品性や絶縁性を有するゲート絶縁膜が得られる。一方、30重量部以下であれば、ゲート絶縁材料の保存安定性が良好となり、絶縁膜も非常に平滑で安定な膜が得られる。なお、ここで用いる硬化剤は、熱酸発生剤、光酸発生剤、金属アルコキシド、金属キレートなどが用いられ、より好ましくは本発明の金属化合物が用いられる。
本発明のゲート絶縁材料には一般式(1)および(2)で表されるシラン化合物やその他シラン化合物の加水分解物、すなわちシラノールが存在する。シラノールは酸や塩基の作用により縮合してシロキサンとなるが、ゲート絶縁材料の保管中に縮合が進行すると粘度が上昇し、塗膜の膜厚が変化する要因となる。ゲート絶縁膜として用いる場合、膜厚変化はゲート電圧印加時すなわちオン状態での蓄えられる絶縁膜中の電荷容量が変化するため、FET特性のばらつき要因となる。そこで、ゲート絶縁材料のpHを、シラノールの縮合速度の遅い条件である2〜7、好ましくは3〜6に制御して、粘度上昇を抑制することが好ましい。pHはゲート絶縁材料と同重量の水と接触撹拌させ、その水溶液相のpHを測定することで調べることができる。pH制御方法としては、ゲート絶縁材料を水洗いする方法、イオン交換樹脂で過剰の酸や塩基を取り除く方法などが好ましく用いられる。
また、本発明のゲート絶縁材料は、必要に応じて、粘度調整剤、界面活性剤、安定化剤などを含有することができる。
界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤などを挙げることができる。
フッ素系界面活性剤の具体的な例としては、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2−テトラフロロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフロロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロデカン、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N′−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルなどが挙げられる。また、市販品としては、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、エフトップEF301、同303、同352(新秋田化成(株)製)、フロラードFC−430、同FC−431(住友スリーエム(株)製))、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭硝子(株)製)、BM−1000、BM−1100(裕商(株)製)、NBX−15、FTX−218((株)ネオス製)などを挙げることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、SH28PA、SH7PA、SH21PA、SH30PA、ST94PA(いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、BYK−333(ビックケミー・ジャパン(株)製)などが挙げられる。その他の界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジステアレートなどが挙げられる。
界面活性剤の含有量は、好ましくはポリシロキサン100重量部に対して0.0001〜1重量部である。界面活性剤は2種以上を同時に使用してもよい。
次に、本発明のゲート絶縁膜について詳細に説明する。本発明のゲート絶縁膜は、本発明のゲート絶縁材料を塗布することにより形成したコーティング膜を100〜300℃の範囲で熱処理することによって得られる。
上記ゲート絶縁材料の塗布方法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。ゲート絶縁材料をガラス基板やプラスチック基板に前記塗布方法で塗布、乾燥することで得られたコーティング膜を熱処理することによって、ゲート絶縁膜を形成できる。ゲート絶縁膜の膜厚は0.01〜5μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましい。熱処理の温度としては、100〜300℃の範囲にあることが好ましい。プラスチック基板上へのゲート絶縁膜の形成という観点から、100〜200℃であることがさらに好ましい。
また、本発明のゲート絶縁膜は誘電率が3〜50であることが好ましい。誘電率が大きいほどFETのターンオン電圧を小さくすることができる。
また、本発明のゲート絶縁膜は、アルカリ金属や、ハロゲンイオンの濃度が少ないことが好ましい。具体的には、アルカリ金属やハロゲンイオンがいずれもゲート絶縁材料の100ppm以下が好ましく、より好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは0.1ppm以下である。
次に、本発明のゲート絶縁膜を用いたFETについて説明する。本発明のFETは、ゲート電極、ゲート絶縁層、活性層、ソース電極およびドレイン電極を有する電界効果型トランジスタであって、前記ゲート絶縁層が本発明のゲート絶縁膜を含有する。
図1および図2は、本発明のFETの例を示す模式断面図である。図1では、本発明のゲート絶縁膜を含有するゲート絶縁層3で覆われたゲート電極2を有する基板1上に、ソース電極5およびドレイン電極6が形成された後、さらにその上に活性層4が形成されている。図2では、本発明のゲート絶縁膜を含有するゲート絶縁層3で覆われたゲート電極2を有する基板1上に活性層4が形成された後、さらにその上にソース電極5およびドレイン電極6が形成されている。
基板1に用いる材料としては、例えば、シリコンウエハー、ガラス、アルミナ焼結体等の無機材料、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン等の有機材料が挙げられる。
ゲート電極2、ソース電極5およびドレイン電極6に用いる材料としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物、あるいは白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデン、アモルファスシリコンやポリシリコンなどの金属やこれらの合金、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体など、ヨウ素などのドーピングなどで導電率を向上させた導電性ポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの電極材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
本発明のFETにおいて、ゲート絶縁層3は、本発明のゲート絶縁膜を含有する。ゲート絶縁層3は、単層、もしくは複数層から構成される。複数層の場合には、本発明の複数のゲート絶縁膜を積層してもよいし、本発明のゲート絶縁膜と公知のゲート絶縁膜を積層してもよい。既知のゲート絶縁膜としては、特に限定されないが、酸化シリコン、アルミナ等の無機材料、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール等の有機高分子材料、あるいは無機材料と有機高分子材料の混合物を用いることができる。
ゲート絶縁層3の膜厚は0.01μm以上5μm以下が好ましい。この範囲の膜厚にすることにより、均一な薄膜形成が容易になり、さらにゲート電圧によって制御できないソース・ドレイン間電流を抑制し、FETのオンオフ比をより高くすることができる。膜厚は、原子間力顕微鏡やエリプソメトリ法、表面粗さ計、レーザー顕微鏡などにより測定できる。
活性層4には有機半導体、カーボンナノチューブ、あるいはその混合体もしくは複合体が用いられる。
有機半導体は、半導体性を示す材料であれば分子量にかかわらず用いることができ、キャリア移動度の高い材料が好ましく用いることができる。また、有機溶媒に可溶のものがより好ましく、溶液をガラス基板やプラスチック基板に塗布することで簡便に半導体層を形成することができる。有機半導体の種類は特に限定されないが、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリベンゾチオフェンなどのポリチオフェン類、ポリ(2,5−ビス(2−チエニル)−3,6−ジペンタデシルチエノ[3,2−b]チオフェン)、ポリ(4,8−ジヘキシル−2,6−ビス(3−ヘキシルチオフェン−2−イル)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン)、ポリ(4−オクチル−2−(3−オクチルチオフェン−2−イル)チアゾール)、ポリ(5,5’−ビス(4−オクチルチアゾール−2−イル)−2,2’−ビチオフェン)などのチオフェンユニットを主鎖中に含む化合物、ポリピロール類、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリジアセチレン類、ポリカルバゾール類、ポリフラン、ポリベンゾフランなどのポリフラン類、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの含窒素芳香環を構成単位とするポリヘテロアリール類、アントラセン、ピレン、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ルブレンなどの縮合多環芳香族化合物、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの含窒素芳香族化合物、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルに代表される芳香族アミン誘導体、ビス(N−アリルカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類、銅ポルフィリンなどの金属ポルフィリン類、ジスチリルベンゼン誘導体、アミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸ジイミドなどの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、メロシアニン、フェノキサジン、ローダミンなどの有機色素などが例として挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。中でも、チオフェン骨格を有する有機半導体が好ましい。
また、活性層4の別の好ましい形態として、有機半導体とカーボンナノチューブ(CNT)のコンポジットを用いる方法が挙げられる。CNTを添加することは有機半導体の移動度を向上させる手段として好ましく用いられる。
有機半導体とCNTのコンポジットに含まれるCNTの重量分率は、半導体特性を得るためには有機半導体に対し0.01〜3重量%であることが好ましい。0.01重量%よりも小さい場合には添加の効果が小さく、3重量%より大きい重量分率ではコンポジットの導電率が過剰に増加するため半導体層として用いるには不適当となる。より好ましくは2重量%以下である。2重量%以下にすることで高移動度と高オンオフ比の両立が得やすくなる。
有機半導体とCNTのコンポジットをFETに用いる場合、CNTの長さは少なくともソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)よりも短いことが好ましい。これよりも長い場合、電極間を短絡させる原因となる。このため、長さが少なくともソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)よりも短いCNTを用いるか、またはCNTをチャネル長よりも短くする工程を経ることが好ましい。一般に市販されているCNTは長さに分布があり、チャネル長よりも長いCNTが含まれることがある。そこでCNTをチャネル長よりも短くする工程を加えたほうがよく、電極間の短絡を確実に防ぐことができる。CNTの平均長さは電極間距離によるが、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下で使用される。
また、CNTの直径は特に限定されないが、1nm以上100nm以下、より好ましくは50nm以下である。
上述のコンポジット中のCNTには、表面の少なくとも一部に共役系重合体を付着したCNTを用いることができる。これにより、CNTをマトリックス(有機半導体)中により均一に分散することができ、高い移動度とともに高いオンオフ比を実現できる。CNTの表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着した状態とは、CNTの表面の一部、あるいは全部を共役系重合体が被覆した状態を意味する。共役系重合体がCNTを被覆できるのは、それぞれの共役系構造に由来するπ電子雲が重なることによって相互作用が生じるためと推測される。CNTが共役系重合体で被覆されているか否かは、被覆されたCNTの反射色が被覆されていないCNTの色から共役系重合体の色に近づくことで判断できる。定量的にはX線光電子分光(XPS)などの元素分析によって、付着物の存在とCNTに対する付着物の重量比を同定することができる
CNTに共役系重合体を付着させる方法は(I)溶融した共役系重合体中にCNTを添加して混合する方法、(II)共役系重合体を溶媒中に溶解させ、この中にCNTを添加して混合する方法、(III)CNTをあらかじめ超音波等で予備分散させておき、そこへ共役系重合体を添加し混合する方法、(IV)溶媒中に共役系重合体とCNTをいれ、この混合系へ超音波を照射して混合する方法などが挙げられる。本発明では、いずれの方法を用いてもよく、いずれかの方法を組み合わせてもよい。
上記のCNTを被覆する共役重合体は、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ−p−フェニレン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体などが挙げられるが、特に限定されない。上記重合体は単一のモノマーユニットが並んだものが好ましく用いられるが、異なるモノマーユニットをブロック共重合したもの、ランダム共重合したものも用いられる。また、グラフト重合したものも用いることができる。上記重合体の中でも本発明においては、CNTへの付着が容易であり、CNT複合体を形成しやすいポリチオフェン系重合体が特に好ましく使用される。
活性層4には、表面の少なくとも一部に共役系重合体を付着したCNTをそれのみで用いることもできる。たとえばこのCNTの分散液を活性層4の上に塗布・乾燥し、このCNTの均一なネットワークを形成することで良好なFET特性を得ることができる。表面の少なくとも一部に共役系重合体を付着したCNTでは、CNT同士の接点においてCNT同士が接するか、半導体もしくは導電性に優れた共役系重合体を介して接するため、良好なFET特性を得ることができる。
活性層4には、CNT単体を用いることもできる。例えば化学的気相成長CVD法などで合成し捕集網上に薄膜状態で堆積したCNTネットワークを転写して活性層4を形成することもできる。この場合、CNTのネットワークの密度を制御することでFET特性を得ることができる。
活性層4には、表面の少なくとも一部に界面活性剤などの分散剤が付着したCNTも用いることができる。共役系重合体の付着したCNTや、表面に界面活性剤等が付着していないCNTに比べるとFET特性的に多少不利にはなるが、CNTのネットワークを制御することでFETを形成することができる。
活性層4の形成工程は、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から、および本発明のゲート絶縁膜を含むゲート絶縁層3において、塗液のはじきが抑制されている利点を生かすためには、塗布法を用いることが好ましい。具体的には、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などを好ましく用いることができ、塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択できる。また、プラスチック基板への影響を低減するために、溶液塗布後の加熱処理は220℃以下であることが好ましい。
形成されたFETは、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流をゲート電圧を変化させることによって制御することができる。FETの移動度は、下記の(a)式を用いて算出することができる。
μ=(δId/δVg)L・D/(W・εr・ε・Vsd) (a)
ただしIdはソース・ドレイン間の電流、Vsdはソース・ドレイン間の電圧、Vgはゲート電圧、Dは絶縁層の厚み、Lはチャネル長、Wはチャネル幅、εrはゲート絶縁層の比誘電率、εは真空の誘電率(8.85×10−12F/m)である。
また、あるマイナスのゲート電圧におけるId(オン電流)の値と、あるプラスのゲート電圧におけるId(オフ電流)の値の比からオンオフ比を求めることができる。
ヒステリシスは、Vgを正から負へと印加した際のId=10−8におけるゲート電圧Vg1と、Vgを負から正へと印加した際のId=10−8におけるゲート電圧Vg2との差の絶対値|Vg1−Vg2|から求めることができる。
本発明のゲート絶縁材料およびゲート絶縁膜は、薄膜の電界効果型トランジスタ、光起電力素子、スイッチング素子など、各種デバイスの製造に有利に用いることができる。
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
実施例1
(1)CNT複合体分散液の作製
共役系重合体であるポリ−3−ヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製、レジオレギュラー、数平均分子量(Mn):13000、以下P3HTという)0.10gをクロロホルム5mlの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製US−2、出力120W)中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得た。次いでこの溶液をスポイトにとり、メタノール20mlと0.1規定塩酸10mlの混合溶液の中に0.5mlずつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを0.1μm孔径のメンブレンフィルター(PTFE社製:4フッ化エチレン)によって濾別捕集し、メタノールでよくすすいだ後、真空乾燥により溶媒を除去した。さらにもう一度溶解と再沈殿を行い、90mgの再沈殿P3HTを得た。
単層CNT(CNI社製の単層カーボンナノチューブ、純度95%)1.0mgと、上記P3HT1.0mgを10mlのクロロホルム中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(東京理化器械(株)製VCX−500)を用いて出力250Wで30分間超音波撹拌した。超音波照射を30分間行った時点で一度照射を停止し、上記P3HTを1.0mg追加し、さらに1分間超音波照射することによって、CNT複合体分散液A(溶媒に対するCNT濃度0.1g/l)を得た。
CNT複合体分散液A中で、P3HTがCNTに付着しているかどうかを調べるため、分散液A5mlをメンブレンフィルターを用いてろ過を行い、フィルター上にCNTを捕集した。捕集したCNTを、溶媒が乾かないうちに素早くシリコンウエハー上に転写し、乾燥したCNTを得た。このCNTを、X線光電子分光法(XPS)を用いて元素分析したところP3HTに含まれる硫黄元素が検出された。従って、CNT複合体分散液A中のCNTにはP3HTが付着していることが確認できた。
上記CNT複合体分散液Aにo−ジクロロベンゼン(沸点180℃、以下o−DCBという)5mlを加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて、低沸点溶媒であるクロロホルムを留去し、溶媒をo−DCBで置換し、CNT複合体分散液Bを得た。次に分散液Bをメンブレンフィルター(孔径3μm、直径25mm、ミリポア社製オムニポアメンブレン)を用いてろ過を行い、長さ10μm以上のCNTを除去した。得られたろ液にo−DCBを加えて希釈し、CNT複合体分散液C(溶媒に対するCNT濃度0.06g/l)とした。
(2)絶縁層用ポリマー溶液(ゲート絶縁材料)の作製
メチルトリメトキシシラン61.29g(0.45モル)、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン12.31g(0.05モル)、およびフェニルトリメトキシシラン99.15g(0.5モル)をプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)203.36gに溶解し、これに、水54.90g、リン酸0.864gを撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分を留出した。次いでバス温130℃で2.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水とプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる成分を留出した後、室温まで冷却し、固形分濃度26.0重量%のポリマー溶液Aを得た。
得られたポリマー溶液Aを50gはかり取り、プロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)16.6gを混合して、室温にて2時間撹拌し、ポリマー溶液B(固形分濃度19.5重量%)を得た。さらにポリマー溶液B中に、硬化剤としてジルコニアテトラキスアセチルアセトナート(以下、Zr(acac)4と表記)0.65g(ポリマー固形分に対して5重量%)と、アルミニウムトリスアセチルアセトナート(以下、Al(acac)3と表記)0.65gを添加して室温で2時間攪拌して溶解し、ポリマー溶液C(ゲート絶縁材料C)を得た。
(3)FETの作製と評価
図1のFETを作製した。ガラス製の基板1(厚み0.7mm)上に、抵抗加熱法により、メタルマスクを介して、クロムを厚み5nm、続いて金を厚み50nmで真空蒸着し、ゲート電極2を形成した。次に上記(2)で作製したポリマー溶液Cを上記ゲート電極が形成されたガラス基板上にスピンコート塗布(2000rpm×30秒)し、得られたコーティング膜を窒素気流下200℃、1時間加熱処理することによって、膜厚が600nmのゲート絶縁膜を得て、ゲート絶縁層3を形成した。このゲート絶縁層が形成された基板上に、金を厚み50nmになるように真空蒸着した。次に、ポジ型レジスト溶液を滴下し、スピナーを用いて塗布した後、90℃のホットプレートで乾燥し、レジスト膜を形成した。得られたレジスト膜に対して、露光機を用いて、フォトマスクを通して紫外線照射を行った。続いて、基板をアルカリ水溶液に浸漬し、紫外線照射部を除去し、電極形状にパターン加工されたレジスト膜を得た。得られた基板を金エッチング液(アルドリッチ社製、Gold etchant,standard)中に浸漬し、レジスト膜が除去された部分の金を溶解・除去した。得られた基板をアセトン中に浸漬し、レジストを除去した後、純水で洗浄し、100℃のホットプレートで30分間乾燥した。このようにして、電極の幅(チャネル幅)0.2mm、電極の間隔(チャネル長)20μm、厚み50nmの金ソース・ドレイン電極を得た。
次に、電極が形成された基板上に、上述の(1)で調製したCNT複合体分散液Cをインクジェット法を用いて塗布し、ホットプレート上で窒素気流下、150℃、30分間の熱処理を行い、CNT複合体分散膜をチャネル層とするFETを作製した。この際、インクジェット装置に、簡易吐出実験セットPIJL−1(クラスターテクノロジー株式会社製)を用いた。
次に、上記FETのゲート電圧(Vg)を変えたときのソース・ドレイン間電流(Id)−ソース・ドレイン間電圧(Vsd)特性を測定した。測定には半導体特性評価システム4200−SCS型(ケースレーインスツルメンツ株式会社製)を用い、大気中で測定した。Vg=+30〜−30Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から線形領域の移動度を求めたところ、0.32cm2/V・secであった。また、このときのIdの最大値と最小値の比からオンオフ比を求めたところ8×105であった。Vgを+30から−30Vへ掃引したときのI−Vカーブにおいて、電流Iの値が急激に起ち上がるVgの値Vonを読みとったところ+10Vであった。さらに、Id=10−8における行きと帰りのゲート電圧差の絶対値|Vg1−Vg2|からヒステリシスを求めたところ、+1Vであった。
実施例2
メチルトリメトキシシラン54.47g(0.40モル)、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン24.62g(0.10モル)、およびフェニルトリメトキシシラン99.15g(0.5モル)、プロピレングリコールモノブチルエーテル161.38gに配合比を変更した以外は実施例1と同様に操作し、固形分濃度45.0重量%のポリマー溶液Dを得た。得られたポリマー溶液Dを25gはかり取り、プロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)25gを混合して、室温にて2時間撹拌し、ポリマー溶液E(固形分濃度22.5重量%)を得た。さらにポリマー溶液D中に、硬化剤のZr(acac)4を0.56g(ポリマー固形分に対して5重量%)と、Al(acac)3を0.56g添加して室温で2時間攪拌して溶解し、ポリマー溶液F(ゲート絶縁材料F)を得た。
ポリマー溶液Fを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.36cm2/V・sec、オンオフ比は8×105、Vonは+10V、ヒステリシスは+1Vであった。
実施例3
上述の実施例2に記載の固形分濃度22.5重量%のポリマー溶液Eに、硬化剤のZr(acac)4を0.56g(ポリマー固形分に対して5重量%)と、Al(acac)3を0.56g、マグネシウムビスアセチルアセトナート(以下、Mg(acac)2と表記)を0.56g添加して室温で2時間攪拌して溶解し、ポリマー溶液G(ゲート絶縁材料G)を得た。
ポリマー溶液Gを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.15cm2/V・sec、オンオフ比は2×105、Vonは+10V、ヒステリシスは+2Vであった。
実施例4
上述の実施例2に記載の固形分濃度22.5重量%のポリマー溶液Eに、硬化剤のAl(acac)3を0.56g(ポリマー固形分に対して5重量%)と、インジウムトリスアセチルアセトナート(In(acac)3)を0.56g添加して室温で2時間攪拌して溶解し、ポリマー溶液H(ゲート絶縁材料H)を得た。
ポリマー溶液Hを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.18cm2/V・sec、オンオフ比は1×105、Vonは+8V、ヒステリシスは−2Vであった。
実施例5
上述の実施例2に記載の固形分濃度22.5重量%のポリマー溶液Eに、硬化剤のAl(acac)3を0.56g(ポリマー固形分に対して5重量%)と、ランタントリスアセチルアセトナート(La(acac)3)を0.56g添加して室温で2時間攪拌して溶解し、ポリマー溶液I(ゲート絶縁材料I)を得た。
ポリマー溶液Iを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.20cm2/V・sec、オンオフ比は1×105、Vonは+10V、ヒステリシスは+5Vであった。
実施例6
上述の実施例2に記載の固形分濃度22.5重量%のポリマー溶液Eに、硬化剤のAl(acac)3を0.56g(ポリマー固形分に対して5重量%)と、Mg(acac)2を0.56g添加して室温で2時間攪拌して溶解し、ポリマー溶液J(ゲート絶縁材料J)を得た。
ポリマー溶液Jを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.12cm2/V・sec、オンオフ比は2×105、Vonは+12V、ヒステリシスは+2Vであった。
実施例7
上述の実施例2に記載の固形分濃度22.5重量%のポリマー溶液Eに、硬化剤のAl(acac)3を0.56g(ポリマー固形分に対して5重量%)と、亜鉛ビスアセチルアセトナート(Zn(acac)2)を0.56g添加して室温で2時間攪拌して溶解し、ポリマー溶液K(ゲート絶縁材料K)を得た。
ポリマー溶液Kを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.19cm2/V・sec、オンオフ比は1×105、Vonは+12V、ヒステリシスは+2Vであった。
実施例8
上述の実施例2に記載の固形分濃度22.5重量%のポリマー溶液Eに、硬化剤のAl(acac)3を0.56g(ポリマー固形分に対して5重量%)と、銅ビスアセチルアセトナート(Cu(acac)2)を0.56g添加して室温で2時間攪拌して溶解し、ポリマー溶液L(ゲート絶縁材料L)を得た。
ポリマー溶液Lを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.11cm2/V・sec、オンオフ比は1×105、Vonは+12V、ヒステリシスは+5Vであった。
実施例9
上述の実施例2に記載の固形分濃度22.5重量%のポリマー溶液Eに、硬化剤のAl(acac)3を0.56g(ポリマー固形分に対して5重量%)と、カルシウムビスアセチルアセトナート(Ca(acac)2)を0.56g添加して室温で2時間攪拌して溶解し、ポリマー溶液M(ゲート絶縁材料M)を得た。
ポリマー溶液Mを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.12cm2/V・sec、オンオフ比は2×105、Vonは+14V、ヒステリシスは+5Vであった。
実施例10
上述の実施例2に記載の固形分濃度22.5重量%のポリマー溶液Eに、硬化剤のAl(acac)3を0.56g(ポリマー固形分に対して5重量%)と、チタニウムビス(イソプロピルオキシ)ビス(アセチルアセトナート)(Ti(acac)2(OiPr)2)を0.56g添加して室温で2時間攪拌して溶解し、ポリマー溶液N(ゲート絶縁材料N)を得た。
ポリマー溶液Nを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.31cm2/V・sec、オンオフ比は2×105、Vonは+12V、ヒステリシスは+4Vであった。
実施例11
CNT複合体を形成する共役系重合体としてP3HTにかえて下記の合成例1で得られたWP−BT1を用い、実施例1と同様の操作を行ってCNT複合体分散液Dを得た。CNT複合体分散液Cの代わりにCNT複合体分散液Dを用いたこと以外は実施例2と同様にしてFETを作製し、特性を測定したところ、移動度は0.54cm2/V・sec、オンオフ比は1×105、Vonは+10V、ヒステリシスは+2Vであった。
合成例1
下記式で表される共役系重合体[WP−BT1]を以下のように合成した。
4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール2.0gと、ビス(ピナコラト)ジボロン4.3gを1,4−ジオキサン40mlに加え、窒素雰囲気下で酢酸カリウム4.0g、[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム1.0gを加え、80℃で8時間撹拌した。得られた溶液に水200mlと酢酸エチル200mlを加え、有機層を分取し、水400mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル)で精製し、4,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールを1.3g得た。
次に、2−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン18.3gをテトラヒドロフラン250mlに溶解し、−80℃に冷却した。n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液)45mlを加えた後、−50℃まで昇温し、再度−80℃に冷却した。2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン18.6mlを加え、室温まで昇温し、窒素雰囲気下で6時間撹拌した。得られた溶液に1N塩化アンモニウム水溶液200mlと酢酸エチル200mlを加え、有機層を分取し、水200mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し2−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3−ヘキシルチオフェン16.66gを得た。
次に、上記2−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン2.52gと、上記2−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3−ヘキシルチオフェン3.0gをジメチルホルムアミド100mlに加え、窒素雰囲気下でリン酸カリウム13g、[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム420mgを加え、90℃で5時間撹拌した。得られた溶液に水200mlとヘキサン100mlを加え、有機層を分取し、水400mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン)で精製し、3,3’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェンを2.71g得た。
次に、上記3,3’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェン2.71gをジメチルホルムアミド8mlに溶解し、N−ブロモスクシンイミド2.88gのジメチルホルムアミド(16ml)溶液を加え、5℃〜10℃で9時間撹拌した。得られた溶液に水150mlとヘキサン100mlを加え、有機層を分取し、水300mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン)で精製し、5,5’−ジブロモ−3,3’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェンを3.76g得た。
次に、上記5,5’−ジブロモ−3,3’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェン3.76gと、上記2−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3−ヘキシルチオフェン4.71gをジメチルホルムアミド70mlに加え、窒素雰囲気下でリン酸カリウム19.4g、[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム310mgを加え、90℃で9時間撹拌した。得られた溶液に水500mlとヘキサン200mlを加え、有機層を分取し、水300mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン)で精製し、3,4’,3’’,3’’’−テトラヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチオフェンを4.24g得た。
次に、上記3,4’,3’’,3’’’−テトラヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチオフェン520mgをクロロホルム20mlに溶解し、N−ブロモスクシンイミド280mgのジメチルホルムアミド(10ml)溶液を加え、5℃〜10℃で5時間撹拌した。得られた溶液に水150mlとジクロロメタン100mlを加え、有機層を分取し、水200mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン)で精製し、5,5’’’−ジブロモ−3,4’,3’’,3’’’−テトラヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチオフェンを610mg得た。
次に、上記4,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール280mgと、上記5,5’’’−ジブロモ−3,4’,3’’,3’’’−テトラヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチオフェン596mgをトルエン30mlに溶解した。ここに水10ml、炭酸カリウム1.99g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)83mg、Aliquat336 1滴を加え、窒素雰囲気下、100℃にて20時間撹拌した。得られた溶液にメタノール100mlを加え、生成した固体をろ取し、メタノール、水、アセトン、ヘキサンの順に洗浄した。得られた固体をクロロホルム200mlに溶解させ、シリカゲルショートカラム(溶離液:クロロホルム)を通した後に濃縮乾固した後、メタノール、アセトン、メタノールの順に洗浄し、共役系重合体[WP−BT1]を480mg得た。GPC測定の結果、重量平均分子量は47698、数平均分子量は13555、重合度nは45.6であった。
実施例12
ポリビニルフェノール(アルドリッチ製、分子量Mw20000)を10g、ポリ(メラミン−co−ホルムアルデヒド)メチレイテッド(アルドリッチ製、ブタノール84%溶液)を5g、プロピレングリコールモノブチルエーテルを100g、Al(acac)3を3g、Zr(acac)4を0.3gとを混合した溶液を室温で30分間攪拌し、ポリマー溶液O(ゲート絶縁材料O)を得た。
ポリマー溶液Oを用いたこととCNT複合体分散液Dを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.08cm2/V・sec、オンオフ比は1×105、Vonは+11V、ヒステリシスは+5Vであった。
比較例1
上述の実施例2に記載の固形分濃度22.5重量%のポリマー溶液Eに、硬化剤をZr(acac)4のみとし、これを0.56g(ポリマー固形分に対して5重量%)添加して室温で2時間攪拌して溶解し、ポリマー溶液P(ゲート絶縁材料P)を得た。
ポリマー溶液Pを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.35cm2/V・sec、オンオフ比は1×106、Vonは+25V、ヒステリシスは+10Vであった。
比較例2
上述の実施例2に記載の固形分濃度22.5重量%のポリマー溶液Eに、硬化剤をAl(acac)3のみとし、これを0.56g(ポリマー固形分に対して5重量%)添加して室温で2時間攪拌して溶解し、ポリマー溶液Q(ゲート絶縁材料Q)を得た。
ポリマー溶液Qを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.80cm2/V・sec、オンオフ比は4×107、Vonは+3V、ヒステリシスは−15Vであった。
比較例3
上述の実施例2に記載の固形分濃度22.5重量%のポリマー溶液Eに、硬化剤をMg(acac)2のみとし、これを0.56g(ポリマー固形分に対して5重量%)添加して室温で2時間攪拌して溶解し、ポリマー溶液R(ゲート絶縁材料R)を得た。
ポリマー溶液Rを用いた以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.08cm2/V・sec、オンオフ比は8×103、Vonは+12V、ヒステリシスは+25Vであった。
比較例4
硬化剤を添加していないポリマー溶液Eをゲート絶縁材料Eとして用いた以外は実施例1と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.02cm2/V・sec、オンオフ比は3×104、Vonは+18V、ヒステリシスは+10Vであった。
比較例5
ポリビニルフェノール(アルドリッチ製、分子量Mw20000)を10g、ポリ(メラミン−co−ホルムアルデヒド)メチレイテッド(アルドリッチ製、ブタノール84%溶液)を5g、プロピレングリコールモノブチルエーテルを100gを混合した溶液を室温で30分間攪拌し、ポリマー溶液S(ゲート絶縁材料S)を得た。ポリマー溶液Sを用いた以外は実施例12と同様の操作を行ってFETを作製し、評価を行ったところ、移動度は0.07cm2/V・sec、オンオフ比は8×104、Vonは+25V、ヒステリシスは+20Vであった。