JP2012116890A - 難燃性樹脂組成物並びにこれを用いたプリプレグ及び積層板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香環を有する樹脂(A)と、シリコーン縮合体(B)を必須成分とする樹脂組成物であって、シリコーン縮合体(B)が、フェニル基とアルコキシ基とを有する化合物で、縮合反応率が50%以上であり、且つ、20℃で液体である難燃性樹脂組成物並びにこれを用いたプリプレグ及び積層板である。
【選択図】なし
Description
芳香環を有する樹脂は絶縁性や耐熱性、コストなどのバランスが優れるが、燃焼し易いという欠点を有する。このため、積層板の難燃化が必須であり、従来ブロム系難燃剤が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
しかし、ブロム系難燃剤は燃焼時に有害な物質を発生する可能性があり、環境意識の高まりから、有害な物質を発生する材料は電子部品も含めて規制する動きが活発になっている。
しかしながら、金属水酸化物は多量に配合しないと難燃性機能が発現せず、例えば、特許文献2ではワニス中の有機固形分に対して50〜150重量%の水酸化アルミニウムが使用される。また、リン化合物は腐食性を有する、窒素化合物は難燃効果が低いなどの問題がある。
さらに、樹脂組成物に金属含有低融点ガラスを配合することが難燃性の向上に有効であることが知られている(例えば、特許文献5参照)。この場合には融点が400〜500℃の低融点ガラスが用いられ、配合量はエポキシ樹脂に対して10重量%以上である。
本発明の目的は、こうした現状に鑑み、多量の金属水酸化物や低融点ガラスを使用することなく、絶縁性や耐熱性などを有すると共に、難燃性に優れ、電子部品等に好適に用いられる熱硬化性樹脂組成物並びにこれを用いたプリプレグ及び積層板を提供することである。
1.芳香環を有する樹脂(A)と、シリコーン縮合体(B)を必須成分とする樹脂組成物であって、シリコーン縮合体(B)がフェニル基とアルコキシ基とを有する化合物で、縮合反応率が50%以上であり、且つ、20℃で液体であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
2.シリコーン縮合体(B)のシロキサン単位の20%以上がフェニル基とアルコキシ基とを有するシロキサン単位である上記1の難燃性樹脂組成物。
3.さらに水酸化アルミニウム(C)を含有する上記1又は2の難燃性樹脂組成物。
4.芳香環を有する樹脂(A)が、多環式化合物である上記1〜3のいずれかの難燃性樹脂組成物。
5.芳香環を有する樹脂(A)がエポキシ樹脂である、上記4の難燃性樹脂組成物。
6.芳香環を有する樹脂(A)が、エポキシ樹脂の他に硬化剤及び/又は硬化促進剤を有するものである上記5の難燃性樹脂組成物。
7.芳香環を有する樹脂(A)が、ビフェニル環、ナフタレン環、アントラセン環、ジヒドロアントラセン環から選ばれる少なくとも一種の芳香環を有する化合物である上記4〜6いずれかの難燃性樹脂組成物。
8.芳香環を有する樹脂(A)が、下記の一般式(1)で表されるビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、一般式(2)で表されるアントラセン型エポキシ樹脂、一般式(3)で表されるジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一つのエポキシ樹脂を含むものである上記7の難燃性樹脂組成物。
10.上記9のワニスを基材に含浸又は塗工した後、Bステージ化して得られたプリプレグ。
11.基材が、ガラス織布、ガラス不織布、アラミド不織布から選ばれる少なくとも一種である上記10のプリプレグ。
12.上記10又は11のプリプレグを積層成形して得られた積層板。
13.プリプレグの少なくとも一方の面に金属箔を重ねた後、加熱加圧成形して得られた金属張積層板である上記12の積層板。
特許文献5に記載の金属含有低融点ガラスは、炭素皮膜のクラックを抑制することで難燃性を発現していたが、本発明では炭素皮膜のクラックの抑制のみではなく、炭素皮膜を増加させることによって、従来の金属含有低融点ガラスを配合した樹脂組成物より高い難燃性を示す樹脂組成物を得ることができる。また、本発明の難燃性樹脂組成物で使用されるシリコーン縮合体(B)は液状であるので、樹脂組成物中で界面を生ぜず、界面の存在に起因する電食等の問題が無いことから、優れた性能を有するプリプレグや積層板をなどが得られ、電子部品の製造等に好適に用いられる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、芳香環を有する樹脂(A)と、シリコーン縮合体(B)を必須成分とする樹脂組成物であって、シリコーン縮合体(B)が、フェニル基とアルコキシ基とを有する化合物で、縮合反応率(以下、単に「反応率」とも云う)が50%以上であり、且つ、20℃で液体であるものである。
なお、20℃で液体であることは、目視により流動性があることにより確認できる。
該エポキシ樹脂は、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらの化合物の分子量は特に制限されず、何種類かの芳香環を有する樹脂を併用することもできる。
また、硬化促進剤の例としては、例えば、イミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、第二級アミン類、第三級アミン類、及び第四級アンモニウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
なお、本発明の難燃性樹脂組成物において、エポキシ樹脂の他に硬化剤および硬化促進剤を使用する場合、芳香環を有する樹脂(A)は使用される硬化剤および硬化促進剤を含んだ樹脂となる。
該シリコーン縮合体(B)は、シロキサン単位の20%以上がフェニル基とアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポシキ基など)とを有するシロキサン単位であることが好ましく、フェニル基とアルコキシ基とを有するシロキサン単位の含有量(フェニルアルコキシシラン含有率とも云う)が40%以上であることが更に好ましい。
シリコーン縮合体(B)を構成するシロキサン単位としては、フェニル基を1個と3個のアルコシキ基有するシロキサン単位及び4個のアルコシキ基を有するシロキサン単位から構成されたものであることが特に好ましい。
シリコーン縮合体(B)にフェニル基とアルコキシ基とを有するシロキサン単位が多く含まれることにより炭素皮膜の生成量が増加し、高い難燃効果が得られる。
縮合反応率=
〔脱水量(g)〕/〔18×(全アルコキシ基のモル数)/2〕×100(%)
なお、脱水反応は酸触媒の存在で加温することにより行われる。分母の〔18×(全アルコキシ基のモル数)/2〕は、理論上、2個のアルコキシ基から水1分子生成するので1/2とし、これに水の分子量(18)を乗じたものである。
芳香環を有する樹脂(A)と、シリコーン縮合体(B)の比率は、芳香環を有する樹脂(A)100質量部に対し、シリコーン縮合体(B)を1〜10質量部が好ましく、2〜9質量部がより好ましく、3〜8質量部が特に好ましい。シリコーン縮合体(B)を1〜10質量部とすることにより、芳香環を有する樹脂(A)の硬化性を悪化させずに、難燃効果が得られる。
水酸化アルミニウム(C)の配合量は、芳香環を有する樹脂(A)とシリコーン縮合体(B)の合計量100質量部に対して、0〜150質量部とすることが好ましく、30〜100質量部とすることがさらに好ましい。
水酸化アルミニウム(C)を上記範囲に含有させることにより、水酸化物の界面増加に伴う絶縁性の低下や水酸化物の分解に伴う耐熱性の低下などがなく、難燃性を高めることができる。
水酸化アルミニウム(C)を含む無機充填剤の配合量は、本発明の難燃性樹脂組成物が均一でかつ良好な取扱性を得るために、芳香環を有する樹脂(A)とシリコーン縮合体(B)の合計量100質量部に対して、300質量部以下とすることが好ましく、200重量部以下にすることがさらに好ましい。
無機充填剤や添加剤を均一に分散させるため、らいかい機、ホモジナイザー、ビーズミル、高圧を用いたナノマイザー等を用いることが有効である。
有機溶剤は芳香環を有する樹脂(A)とシリコーン縮合体(B)を溶解するものであれば特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。
有機溶剤の配合量は、芳香環を有する樹脂(A)とシリコーン縮合体(B)の合計量100質量部に対して、30〜300質量部とすることが好ましく、50〜200質量部とすることがさらに好ましい。上記の有機溶剤は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
基材の厚さは、特に制限されないが、例えば、約0.01〜0.2mmのものを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。該基材に対する樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で、20〜90質量%となるように、基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて、本発明のプリプレグを得ることができる。
なお、製造例で得られたシリコーン縮合体(B)のフェニルアルコキシシランの比率および実施例での積層板の樹脂層における難燃性は以下の数値である。
(2)積層板の樹脂層における難燃性(秒):UL−94に準拠し、5本の試験片を用い、有炎燃焼時間の平均値とする。
温度計、冷却管、ディーンスターク管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、フェニルトリエトキシシラン(関東化学株式会社製)50.0g、テトラエトキシシラン(関東化学株式会社製)4.8g、燐酸(関東化学株式会社製)0.23g、エタノール(関東化学株式会社製)13.7g、蒸留水12.9を投入し、20℃で2時間撹拌した。その後、120℃のオイルバスにセパラブルフラスコを浸け、反応率が50%になるまでの脱水縮合反応を行い、シリコーン縮合体aを作製した。得られたシリコーン縮合体aは20℃で液体であり、フェニルアルコキシシラン比率は94%であった。
温度計、冷却管、ディーンスターク管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、フェニルトリエトキシシラン(関東化学株式会社製)50.0g、テトラエトキシシラン(関東化学株式会社製)10.8g、燐酸(関東化学株式会社製)0.25g、エタノール(関東化学株式会社製)15.2g、蒸留水15.0gを投入し、20℃で2時間撹拌した。その後、120℃のオイルバスにセパラブルフラスコを浸け、反応率が50%になるまでの脱水縮合反応を行い、シリコーン縮合体bを作製した。得られたシリコーン縮合体bは20℃で液体であり、フェニルアルコキシシランの比率は87%であった。
温度計、冷却管、ディーンスターク管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、フェニルトリエトキシシラン(関東化学株式会社製)50.0g、テトラエトキシシラン(関東化学株式会社製)18.6g、燐酸(関東化学株式会社製)0.29g、エタノール(関東化学株式会社製)17.1g、蒸留水17.7gを投入し、20℃で2時間撹拌した。その後、120℃のオイルバスにセパラブルフラスコを浸け、反応率が50%になるまでの脱水縮合反応を行い、シリコーン縮合体cを作製した。得られたシリコーン縮合体cは20℃で液体であり、フェニルアルコキシシランの比率は79%であった。
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:YX−8800)100g、エポキシ樹脂の硬化剤としてベンゾグアナミン(関東化学株式会社製)7.4gとクレゾールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:KA−1165)25.4g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学株式会社製)127gを投入し、140℃で5時間反応させた。その後、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:NC−3000−H)65.8g、クレゾールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:KA−1165)59.2g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学株式会社製)125gを加え、100℃で30分間加熱溶解した。その後、シリカ(株式会社アドマテックス製、商品名SO−G1)170.4g、水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、商品名:HP−350)208.3g、製造例1で作製したシリコーン縮合体a 20.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学株式会社製)100g、硬化促進剤1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社、商品名2PZ−CN)0.5gを投入し、1時間撹拌してワニスを製造した。
製造例1で作製したシリコーン縮合体aを製造例2で作製したシリコーン縮合体b20.4gに代えた以外は全て実施例1と同様にして行った。評価結果を第1表に示す。
実施例1で作製したシリコーン縮合体aを製造例3で作製したシリコーン縮合体c20.4gに代えた以外は全て実施例1と同様にして行った。評価結果を第1表に示す。
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名YX−8800)100g、エポキシ樹脂の硬化剤としてベンゾグアナミン(関東化学株式会社製)7.4gとクレゾールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名KA−1165)25.4g、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学株式会社製)127gを投入し、140℃で5時間反応させた。その後、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社、商品名:NC−3000−H)65.8g、クレゾールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:KA−1165)59.2g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(関東化学株式会社製)125gを加え、100℃で30分間加熱溶解した。
以下、実施例と同様にして両面銅張積層板を作製し、銅箔をエッチング除去し、試験片を切り出し、難燃性を評価した。評価結果を第1表に示す。
比較例1に低融点ガラス粉(日本山村硝子株式会社製、商品名:BT328)41.5gを加えた以外は比較例1と同様にして行った。評価結果を第1表に示す。
また、実施例1〜3の平均燃焼時間に比較して、フェニル基とアルコキシ基とを有するシリコーン縮合体(B)を使用しない比較例1および低融点ガラスを用いた比較例2の平均燃焼時間は長く、難燃効果が低いことが分かる。
従って、芳香環を有する樹脂にフェニル基とアルコキシ基とを有するシリコーン縮合体(B)を配合することが難燃性の向上に有効であり、従来の低融点ガラスよりも優れた難燃性を有するものであることが分かる。
Claims (13)
- 芳香環を有する樹脂(A)と、シリコーン縮合体(B)を必須成分とする樹脂組成物であって、シリコーン縮合体(B)が、フェニル基とアルコキシ基とを有する化合物で、縮合反応率が50%以上であり、且つ、20℃で液体であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
- シリコーン縮合体(B)のシロキサン単位の20%以上がフェニル基とアルコキシ基とを有するシロキサン単位である請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- さらに水酸化アルミニウム(C)を含有する請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
- 芳香環を有する樹脂(A)が、多環式化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- 芳香環を有する樹脂(A)がエポキシ樹脂である、請求項4に記載の難燃性樹脂組成物。
- 芳香環を有する樹脂(A)が、エポキシ樹脂の他に硬化剤及び/又は硬化促進剤を有するものである請求項5に記載の難燃性樹脂組成物。
- 芳香環を有する樹脂(A)が、ビフェニル環、ナフタレン環、アントラセン環、ジヒドロアントラセン環から選ばれる少なくとも一種の芳香環を有する化合物である請求項4〜6のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物に有機溶剤を含有するワニス。
- 請求項9に記載のワニスを基材に含浸又は塗工した後、Bステージ化して得られたプリプレグ。
- 基材が、ガラス織布、ガラス不織布、アラミド不織布から選ばれる少なくとも一種である請求項10に記載のプリプレグ。
- 請求項10又は11に記載のプリプレグを積層成形して得られた積層板。
- プリプレグの少なくとも一方の面に金属箔を重ねた後、加熱加圧成形して得られた金属張積層板である請求項12に記載の積層板。
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