JP2012115585A - アレイ型超音波送波器 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的低い駆動電圧により高電界を圧電体に印加でき、かつ、高超音波出力時にも発熱が少ない圧電素子よりなる、駆動電圧あたりの超音波出力が高い高強度集束超音波治療用のアレイ型超音波送波器を提供する。
【解決手段】共振特性を厚み共振でなく幅方向の機械的共振により得ることにより、厚み方向の電極間距離を縮めることを可能とする圧電素子構造を、その超音波放射面および背面の両方またはどちらか一方に、球面状の曲率を与えることにより実現する。
【選択図】図4

Description

本発明は、超音波を腫瘍などの病的組織に集束して送波することにより、それを治療するためのアレイ型超音波送波器に関するものである。
腫瘍などを治療することを目的に、病的組織に高強度の超音波を集束して送波し、そのエネルギーによって病的組織に壊死をもたらす高強度集束超音波治療法は、現在、臨床的に普及しつつある。その原理は、体表または体腔表面近くに置いた送波器から、生体組織に適度に吸収される周波数1MHz弱ないし数MHzの超音波を発し、1程度のFナンバー(F値)にて病的組織に集束させるものである。超音波周波数の概略の大きさが、生体中の超音波伝播距離に応じて選ばれる結果、一般に、数十波長のサイズの開口をもつ送波器が用いられる。
最初に開発された体腔内挿入式送波器は、このサイズの一体型球殻状圧電体よりなるもので、これを機械的に動かすことによって超音波焦点を治療目的領域に対して走査するものである。次に開発された体表接触式送波器は、多数の圧電素子を配列したアレイ型で、超音波焦点を治療目的領域に対して電子的に走査可能なものである。高速に行うことに利のある焦点走査範囲は1cm程度であるので、後者においても、電子的走査範囲をその程度に設定し、圧電素子を球殻状に配列することによって、独立駆動可能な圧電素子または素子群の必要数を抑えて、それらを駆動するアンプ数やケーブル本数を抑えている。その結果、電気的に独立駆動可能な圧電素子または素子群の幅およびその隣接間隔は1波長以上となる。
ここで、基準としている生体内の超音波波長は、水中の波長にほぼ等しく、圧電セラミック中の波長は、その2ないし3倍である。従って、半波長厚み共振型の圧電セラミック素子の厚さは、水中の波長と同程度となり、その幅を1波長程度に選ぶと、図11に示すように、幅と厚みとが同程度となってしまう。
PZTに代表される圧電セラミックは、分極方向に電界をかけるとその方向に伸び縮みする縦圧電効果を有するが、それだけでなく、電界方向に伸びるときそれに直交する方向に縮み、電界方向に縮むときそれに直交する方向に伸びる横圧電効果を有する。この効果が、通常の弾性体でも有する、1方向に伸びるときそれに直交する方向に縮み、1方向に縮むときそれに直交する方向に伸びる性質に加わるので、厚みと幅とが同程度の圧電セラミックに電界をかけると、厚み方向の歪に幅方向の歪が結合した複合変形を生ずる。このため、厚み方向に一様な変形を得られず、疎密波源として望ましい排除体積変化を効率良く得ることが困難である。
そこで、従来の体表接触式アレイ型送波器では、1−3複合圧電材を用いている。これは、圧電セラミックを厚みに比べて充分に狭い幅の柱状に細かく分割し、隙間に高分子材を充填して位置決めした構造をもつ。柱状構造により、厚み方向に伸縮するとき、幅方向の変形と結合しにくいので、上記のような問題が生じない(例えば、非特許文献1参照)。
第2回国際超音波治療シンポジウム会議録(Proceedingsof 2nd International Symposium on Therapeutic Ultrasound,2002,Seattle,USA)、p.428-436
高強度集束超音波治療に必要な高出力超音波を送波するには、送波器を構成する圧電体に高電界を印加させる必要がある。従来のような、半波長厚み共振型の圧電セラミックまたはそれを基本とする1−3複合圧電材では、水中波長程度の厚さをもつ圧電体の両側に取り付けた前面および背面電極の間に電圧を印加する必要があるので、高出力送波器に必要な高電界を与えるのに、高電圧が必要である。結果として、高強度集束超音波治療用の送波器には、数百V程度の高い送波電圧が必要となっているという課題があった。この電圧は、超音波周波数域で用いることのできる半導体回路の耐圧の上限に近く、高強度集束超音波治療装置を構成する上での制約となっている。特に、機械走査用の一体型球殻状圧電送波器とは異なり、アレイ型送波器を駆動するには多数のアンプが必要であるので、この制約は重大である。
また、複合圧電材には、圧電セラミック柱の隙間を充填する高分子材が用いられており、これが、圧電セラミックが高電界下で大変形するのを受けて大きく歪む。このときに生ずる熱による温度上昇に起因する高分子自身の熱破壊が、このような構造をもつ複合圧電材より成る送波器の超音波出力の上限を決めているという課題もあった。
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、より低い電極間電圧において圧電体に高電界を印加でき、かつ、高超音波出力時にも発熱の少ない素子構造を有するアレイ型超音波送波器を提供することを目的としている。これにより、高強度集束超音波治療のためのアレイ型送波器の性能を向上させ、装置全体のコストを抑制することができる。
上記目的を達成するために、本発明者らは、共振特性を厚み共振でなく幅方向の機械的共振により得ることにより、厚み方向の電極間距離を縮めることを可能とし、低い電極間電圧においても圧電体に高電界を印加できる圧電素子構造を採用した。このためには、縦圧電効果だけでなく横圧電効果を積極的に利用する必要がある。本発明者らは、この目的のために、回転軸対称性をもつ様々な圧電素子形状について、印加電圧と超音波出力との関係を調べた結果、超音波放射面および背面の両方またはどちらか一方に、球面状の曲率を与えることにより、同じ印加電圧において大きな超音波出力が得られることを見出し、本発明に至った。
また、本発明者らは、球殻状の圧電素子について、素子見込み角を120°程度以上に選べば、素子をハウジングに支持する辺縁部の振動振幅を適度に抑制できることを見出した。凹面状の超音波放射面と平面状の背面をもつ圧電素子については、素子見込み角を45°程度以上に選べば、同様の効果が得られることを見出した。
さらに、凹面状の超音波放射面をもつ球殻状の圧電素子について、素子見込み角を180°近くに選ぶと、凸面状の超音波放射面をもつ球殻状の圧電素子について、素子見込み角を180°近くに選んだ場合に比べて段違いに良好な超音波出力特性が得られることを見出した。これは、凹面状の超音波放射面に囲まれた水の共振現象が利用されているためであり、そのため、水中波長をやや超える素子径により得られた特性であると推察される。加えて、凹面状の超音波放射面をもつ球殻状の圧電素子について、素子見込み角を130°近くに選ぶと、基本共振周波数のほぼ2倍の周波数における高調波共振が得られることを見出したが、これは、キャビテーション生成を利用する超音波治療を可能とする送波器を構成する圧電素子として好適な特性である。
すなわち、本発明に係るアレイ型超音波送波器は、高強度の超音波を送波するためのアレイ型超音波送波器において、水中における超音波波長の1ないし2倍の直径をもち、超音波放射面および背面の両方またはどちらか一方が球面状の曲率をもつ圧電素子を有することを、特徴とする。
本発明に係るアレイ型超音波送波器は、前記圧電素子が、凸面の超音波放射面をもつ球殻状であり、その見込み角が10ないし30度であってもよい。また、前記圧電素子が、凹面の超音波放射面をもつ球殻状であり、その見込み角が120ないし180度であってもよい。さらに、前記圧電素子が、凹面の超音波放射面と平面の背面とをもつ軸対称形状であり、その凹面の見込み角が50度以上であってもよい。
本発明によれば、超音波周波数域で用いることのできる半導体回路の耐圧をはるかに下回る低い駆動電圧においても高電界を圧電体に印加することにより、高出力の超音波を送波することのできるアレイ型超音波送波器を提供することができる。また、高超音波出力時にも発熱が少なく熱破壊しにくい圧電素子よりなるアレイ型超音波送波器を提供することも可能である。これらにより、高い性能の高強度集束超音波治療装置を、装置全体のコストを抑えて提供することができる。
本発明の実施の形態のアレイ型超音波送波器の、水中波長をやや越える直径と回転軸対称性とを有する圧電素子を球殻状のハウジングに配列した構造を示す断面図および平面図である。 本発明の実施の形態のアレイ型超音波送波器の、水中波長をやや越える素子径とその約10分の1の厚さとを有する球殻状圧電素子について、一定の駆動電圧により得られる超音波出力の相対値を、素子見込み角の関数としてプロットしたグラフである。 本発明の実施の形態のアレイ型超音波送波器の、凸面状超音波放射面を有する球殻状圧電素子を示す断面図および平面図である。 本発明の実施の形態のアレイ型超音波送波器の、凹面状超音波放射面を有する球殻状圧電素子を示す断面図および平面図である。 本発明の実施の形態のアレイ型超音波送波器の、凹面状超音波放射面と平面状背面とを有する圧電素子を示す断面図および平面図である。 本発明の実施の形態のアレイ型超音波送波器の、球殻状圧電素子ならびに凹面の超音波放射面および平面状の背面を有する圧電素子について、その中心軸方向投影面積あたりの質量分布をプロットしたグラフである。 本発明の実施の形態のアレイ型超音波送波器の、素子見込み角180°の凹面状超音波放射面を有する球殻状圧電素子が放射する超音波音圧の分布をプロットした断面図である。 本発明の実施の形態のアレイ型超音波送波器の、素子見込み角180°の凹面状超音波放射面を有する球殻状圧電素子の超音波出力を圧電素子の厚さの関数としてプロットしたグラフである。 本発明の実施の形態のアレイ型超音波送波器の、素子見込み角180°の凹面状超音波放射面を有する球殻状圧電素子の電気的インピーダンスを周波数についてプロットしたグラフである。 本発明の実施の形態のアレイ型超音波送波器の、素子見込み角130°の凹面状超音波放射面を有する球殻状圧電素子の電気的インピーダンスを周波数についてプロットしたグラフである。 従来の水中波長にほぼ等しい厚さと幅とを有する半波長厚み共振型の圧電セラミック素子を示す断面図および平面図である。
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、水中波長をやや越える直径と素子回転軸対称性とを有する圧電素子5を、球殻状の超音波放射面をもつハウジング4に配列させた構造を有する、本発明の実施の形態のアレイ型超音波送波器である。それぞれの圧電素子5の超音波放射面側電極3は、導電性ハウジング4に電気的に接続されている。また、それぞれの圧電素子5の背面側電極2からは、それぞれ電気的に独立した導線6が引き出されている。これらの導線と導電性ハウジングとの間に与えた電圧が、それぞれの圧電素子に印加される構造となっている。
図2は、素子径が水中波長をやや越える4mm、厚さが0.3mmの球殻状の圧電セラミック1よりなる素子について、一定の駆動電圧により得られる超音波出力の相対値を、素子見込み角の関数としてプロットしたものである。圧電セラミック1としては、高出力超音波送波器に一般的に用いられる種類のPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系セラミックを選んだ。
図2中の負の素子見込み角は、図3に示すような凸面状の超音波放射面をもつ球殻状の圧電素子、正の素子見込み角は、図4に示すような凹面状の超音波放射面をもつ球殻状の圧電素子に対応する。
また、図2には、図5に示すような凹面状の超音波放射面と平面状の背面とをもつ圧電素子についても、素子見込み角60°、素子中央における厚さ0.1mmの素子からの超音波出力をプロットした(図2中の「平凹中央厚0.1mm」)。さらに、比較対象として、図11に示す一体構造の厚み共振型PZT素子(図2中の「厚み共振型PZT」)、および、従来技術によるアレイ型高強度集束超音波治療送波器に用いられている1−3複合圧電材(図2中の「1−3複合材」)についても、同じ超音波放射面積からの超音波出力をプロットした。
図2に示すように、図11の厚み共振型PZT素子に比べ、1−3複合圧電材は、数倍大きな超音波出力を発生しているが、本発明の圧電素子は、いずれの場合も、そのさらに数倍以上の超音波出力を発生している。素子見込み角0°付近に着目すると、凹面状、凸面状にかかわらず、わずかでも曲率を与えると、大きな超音波出力を発生するようになることがわかる。特に、10ないし30°の見込み角の凸面状超音波放射面をもつ球殻状の圧電素子は、きわめて大きな超音波出力を発生する。しかし、このように比較的小さな見込み角の超音波放射面をもつ球殻状の圧電素子は、振動する際、辺縁部の振動振幅が特に大きくなるため、ハウジングにより支持するには、特別な工夫が必要となる。
これに対し、球殻状の圧電素子について、素子見込み角を120°程度以上に選べば、図6に示すように、素子をハウジングに支持する辺縁部の質量を相対的に増やすことができるので、素子をハウジングに支持する部分の振動振幅を適度に抑制できる。このように小さな振動振幅であれば、ハウジング材料として、超音波吸収による発熱の小さいアルミニウム合金などの金属を用いることができ、高超音波出力時にも熱破壊しにくい送波器を実現しやすい。また、凹面状の超音波放射面と平面状の背面とをもつ圧電素子について、素子見込み角を45°程度以上に選べば、図6に示すように、同様の効果が得られる。
図2からわかるように、凹面状の超音波放射面をもつ球殻状の圧電素子について、素子見込み角を180°に選ぶと、凸面状の超音波放射面をもつ球殻状の圧電素子について、素子見込み角を180°に選んだ場合に比べて、段違いに高い超音波出力が得られる。
図7は、前者の圧電素子が放射する超音波音圧の分布をプロットしたものであるが、凹面状の超音波放射面に囲まれた水が共振状態にある様子が観察される。この現象のために、圧電素子の振動が効率的に水の体積振動に変換され、良好な超音波出力特性が得られていると考えられる。なお、同じ周波数において共振する水玉の直径は、この素子径にほぼ等しい。
また、図8は、その超音波出力を圧電素子の厚さの関数としてプロットしたものである。0.3mmすなわち水中波長の10分の1程度の厚さにおいて超音波出力が最大となる穏やかな出力特性が観察される。これは、圧電素子の駆動力と、凹面状の超音波放射面に囲まれた水の弾性とがバランスする圧電素子の厚さであると解釈できる。
図9は、この圧電素子の電気的インピーダンスを周波数についてプロットしたものである。電気的インピーダンスが純抵抗となる基本周波数は0.5MHzにあり、この周波数の電圧を電極間に印加することにより、大きな超音波出力が得られる。また、0.87MHz付近にも電気的インピーダンスが純抵抗に近くなる周波数がある。
一方、図10は、130°の素子見込み角の凹面状超音波放射面をもつ球殻状圧電素子の電気的インピーダンスを周波数についてプロットしたものである。電気的インピーダンスが純抵抗となる基本周波数は0.55MHzにあり、その2倍である1.1MHz付近においても電気的インピーダンスが純抵抗に近くなる。この特性を利用すれば、キャビテーション生成に好適な、基本波に第2高調波を重畳した超音波を送波することができる。これは、通常の半波長厚み共振型圧電素子が奇数倍高調波しか電気信号を超音波に変換できないのに対して際立つ特長であり、キャビテーションを利用して効率を高める超音波治療を可能とする送波器を構成する圧電素子として好適な特性である。さらに、基本周波数の3倍である1.65MHz付近においても電気的インピーダンスが純抵抗に近くなることが認められるように、この圧電素子は、一般に偶数倍・奇数倍両方の高調波の電気信号を超音波に変換できる。すなわち、基本波周期の任意波形の周期関数の電気信号を超音波に変換できるという、超音波送波器として優れた特性を有する。
以上説明したように、本発明によれば、超音波周波数域で用いることのできる半導体回路の耐圧をはるかに下回る低い駆動電圧により高電界を圧電体に印加でき、かつ、高超音波出力時にも発熱が少なく熱破壊しにくい圧電素子よりなる、駆動電圧あたりの超音波出力が高く高強度集束超音波治療に好適なアレイ型超音波送波器を実現することができる。これにより、高い性能の高強度集束超音波治療装置を、装置全体のコストを抑えて提供できる。また、本発明に係るアレイ型超音波送波器の応用は、超音波治療分野のみに限られるものでなく、送波素子と受波素子とを別々に具備する構造をもつソナーなど、水中超音波装置に用いられるアレイ型送受波器にも及ぶものである。従って、本発明の医療ならびに工業における意義はきわめて大きい。
1 圧電セラミック
2 背面側電極
3 超音波放射面側電極
4 ハウジング
5 圧電素子
6 導線

Claims (4)

  1. 高強度の超音波を送波するためのアレイ型超音波送波器において、水中における超音波波長の1ないし2倍の直径をもち、超音波放射面および背面の両方またはどちらか一方が球面状の曲率をもつ圧電素子を有することを、特徴とするアレイ型超音波送波器。
  2. 前記圧電素子が、凸面の超音波放射面をもつ球殻状であり、その見込み角が10ないし30度であることを、特徴とする請求項1記載のアレイ型超音波送波器。
  3. 前記圧電素子が、凹面の超音波放射面をもつ球殻状であり、その見込み角が120ないし180度であることを、特徴とする請求項1記載のアレイ型超音波送波器。
  4. 前記圧電素子が、凹面の超音波放射面と平面の背面とをもつ軸対称形状であり、その凹面の見込み角が50度以上であることを、特徴とする請求項1記載のアレイ型超音波送波器。
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