JP2012114024A - リチウムイオン二次電池用炭素材、リチウムイオン二次電池用負極合剤、リチウムイオン二次電池用負極、およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明のリチウムイオン二次電池用炭素材、負極合剤は水系バインダーを使用しても、充電容量、放電容量が高く、充放電効率に優れたリチウムイオン電池を提供するものである。
【解決手段】下記式で示される初期吸湿速度(X)が 0.1mg/m2・h以上、5mg/m2・h以下の範囲であり、且つX線回折スペクトル法からBragg式を用いて算出される炭素材の平均面間隔d002が、3.40Å以上、4.00Å以下、さらに窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が0.001m2/mg以上、0.015m2/mg以下であることを特徴とする、リチウムイオン二次電池用炭素材。
【選択図】 なし
Description
しかしながら、有機溶剤の使用は、環境保全への配慮やコストの低減等の観点から好ましくなく、最近ではスチレンブタジエン系ゴム、等の水系バインダーが添加量を少なくできることや、水系分散液で用いるため電極製造工程が簡易化されることなどのメリットから多く用いられるようになってきた。
特許文献1には、樹脂組成物を炭化処理してなる、温度40℃、湿度90%RHの条件下7日後の吸湿率が4.0%以下であり、炭素材の密度が1.1g/cm3以上、2.2g/cm3以下である炭素材が開示されている。特許文献1に開示された炭素材は吸湿率を抑制することにより、放電容量、充放電効率を向上させることに成功しているが、水系バインダーと併用した場合において放電容量、充放電効率のさらなる向上を達成する技術の開示はない。
初期吸湿速度(X)(mg/m2・h)=((40℃、湿度90%の恒温恒湿下で60分放置後の粉末の重量)−(測定前の粉末の重量))/(測定前の粉末の重量×窒素吸着におけるBET3点法による比表面積)
(ただし、前記粉末の重量の単位はmg、比表面積はm2/mgである。)
(リチウムイオン二次電池用炭素材)
はじめに、本発明のリチウムイオン二次電池用炭素材(以下、炭素材という場合もある)の概要について説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池用炭素材は、
下記式で示される初期吸湿速度(X)が 0.1mg/m2・h以上、5mg/m2・h以下の範囲であり、且つX線回折スペクトル法からBragg式を用いて算出される炭素材の平均面間隔d002が、3.40Å以上、4.00Å以下、さらに窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が0.001m2/mg以上、0.015m2/mg以下であることを特徴とする、リチウムイオン二次電池用炭素材である。
初期吸湿速度(X)(mg/m2・h)=[(40℃、湿度90%の恒温恒湿下で60分放置後の粉末の重量)−(測定前の粉末の重量)]/(測定前の粉末の重量×窒素吸着におけるBET3点法による比表面積)
(ただし、前記粉末の重量の単位はmg、比表面積はm2/mgである。)
ここで、本発明の初期吸湿速度(X)は吸湿条件下に放置された場合における、初期の吸湿量から算出される。従来の吸湿性、例えば40℃、湿度90%の恒温恒湿下で7日間放置した場合の吸湿率は、炭素材の飽和吸湿量を示すものであり、炭素材表面近傍に存在する微量水分に影響を及ぼすと考えられる初期吸湿特性を示すものとはなっていなかった。
本発明における初期吸湿速度(X)はリチウムイオン二次電池用負極作製後における吸湿性を示すものでり、初期吸湿速度(X)を5mg/m2・h以下とすることで、水に由来する充放電効率の低下を抑制できるという効果がある。特に、水溶性高分子等、吸湿性の高い水系バインダーと併用する場合における吸湿を抑制することができる。また、初期吸湿速度(X)を0.1mg/m2・h以上とすることで、前記炭素材と結着剤成分とを水に分散させる際に炭素材の凝集を抑制することができ、炭素材と結着剤とが十分に混合されるため、充放電を繰り返した場合に炭素材同士の脱落などの現象が生じにくく、容量低下を抑制することができる。
平均面間隔d002が3.40Å以上、特に3.60Å以上である場合には、リチウムイオンの吸蔵に伴う層間の収縮・膨張が起こり難くなるため、充放電を繰り返した場合の充電容量、放電容量の低下を抑制できる。
一方で、平均面間隔d002が4.00Å以下、特に3.80Å以下である場合にはリチウムイオンの吸蔵・脱離が円滑に行われ、充放電効率の低下を抑制できる。
本発明の炭素材におけるX線回折スペクトルは、島津製作所製・X線回折装置「XRD−7000」により測定したものである。本発明の炭素材における、上記平均面間隔の測定方法は以下の通りである。
本発明の炭素材のX線回折測定から求められるスペクトルより、平均面間隔d(Å)を以下のBragg式より算出した。
λ=2dhklsinθ Bragg式 (dhkl=d002)
λ:陰極から出力される特性X線Kα1の波長
θ:スペクトルの反射角度
窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が0.015m2/mg以下であることで、炭素材と電解液との反応を抑制できる。
また、窒素吸着におけるBET3点法による比表面積を0.001m2/mg以上とすることで電解液の炭素材への適切な浸透性が得られるという効果がある。
比表面積の算出方法は以下の通りである。
下記(1)式より単分子吸着量Wmを算出し、下記(2)式より総表面積Stotalを算出し、下記(3)式より比表面積Sを求めた。
1/[W(Po/P−1)=(C−1)/WmC(P/Po)/WmC・・(1)
式(1)中、P:吸着平衡にある吸着質の気体の圧力、Po:吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧、W:吸着平衡圧Pにおける吸着量、Wm:単分子層吸着量、C:固体表面と吸着質との相互作用の大きさに関する定数(C=exp{(E1−E2)RT})[E1:第一層の吸着熱(kJ/mol)、E2:吸着質の測定温度における液化熱(kJ/mol)]
Stotal=(WmNAcs)M・・・・・・・・・(2)
式(2)中、N:アボガドロ数、M:分子量、Acs:吸着断面積
S=Stotal/w・・・・・・(3)
式(3)中、w:サンプル重量(mg)
リチウムイオン二次電池用炭素材に用いられる原料あるいは前駆体は特に限定されるものではないが、エチレン製造時に副生する石油系のタールおよびピッチ、石炭乾留時に生成するコールタール、コールタールの低沸点成分を蒸留除去した重質成分やピッチ、石炭の液化により得られるタール及びピッチのような石油系又は石炭系のタール若しくはピッチ、さらには前記タール、ピッチ等を架橋処理したものや、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂または樹脂組成物を炭化処理することにより得られるものが好適であり、特に後述する樹脂あるいは、樹脂組成物が好ましい。ただし、前記石油、石炭等から得られるタール、ピッチ、あるいはそれらの架橋処理を行ったものも、本発明では広義の樹脂あるいは樹脂組成物に含まれ、これらは単独あるいは二種類以上を併用することができる。
また、後述するように、樹脂組成物は、上記樹脂を主成分とするとともに、硬化剤、添加剤などを併せて含有することができる。
そして、熱硬化性樹脂の中でも、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂及び、アニリン樹脂、およびこれらの変性物から選ばれるものであることが好ましい。これにより、炭素材の設計の自由度が広がり、低価格で製造することができる。
ここで用いられる硬化剤としては特に限定されないが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合はヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂、ポリアセタール、パラホルムなどを用いることができる。また、エポキシ樹脂の場合は、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミンなどのポリアミン化合物、酸無水物、イミダゾール化合物、ジシアンジアミド、ノボラック型フェノール樹脂、ビスフェノール型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂など、エポキシ樹脂にて公知の硬化剤を用いることができる。
なお、通常は所定量の硬化剤を併用する熱硬化性樹脂であっても、本発明で用いられる樹脂組成物においては、通常よりも少ない量を用いたり、あるいは硬化剤を併用しないで用いたりすることもできる。
ここで用いられる添加剤としては特に限定されないが、例えば、200℃以上、800℃以下にて炭化処理した炭素材前駆体、有機酸、無機酸、含窒素化合物、含酸素化合物、芳香族化合物及び非鉄金属元素などを挙げることができる。
上記添加剤は、用いる樹脂の種類や性状などにより、単独あるいは二種類以上を併用することができる。
熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、シアネート樹脂、ウレタン樹脂のほか、アミンなどの含窒素成分で変性されたフェノール樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフタルアミドなどが挙げられる。
上記含窒素化合物としては、主成分樹脂に含窒素樹脂類を含む場合であっても含まない場合であっても、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
このような樹脂組成物あるいは樹脂の炭化処理を行うことにより、最終的に得られる炭素材中の炭素原子含有量が95wt%以上であり、窒素原子含有量が0.5wt%以上、5wt%以下であることが好ましい。
このように窒素原子を0.5wt%以上、特に1wt%以上含有することで、窒素の有する電気陰性度により、炭素材に好適な電気的特性を付与することができる。これにより、リチウムイオンの吸蔵・放出を促進させ、高い充放電特性を付与することができる。
たとえば、上述したような窒素含有量である炭素材を得る方法としては、樹脂組成物あるいは樹脂中の窒素含有量を所定値として、これを炭化処理する際の条件、特に、最終温度を調整する方法があげられる。
本方法は、測定試料を、燃焼法を用いて単純なガス(CO2、H2O及びN2)に変換した後に、ガス化した試料を均質化した上でカラムを通過させるものである。これにより、これらのガスが段階的に分離され、それぞれの熱伝導率から、炭素、水素及び窒素の含有量を測定することができる。
はじめに、炭化処理すべき、樹脂あるいは、樹脂組成物を製造する。
樹脂組成物の調製のための装置としては特に限定されないが、例えば、溶融混合を行う場合には、混練ロール、単軸あるいは二軸ニーダーなどの混練装置を用いることができる。また、溶解混合を行う場合は、ヘンシェルミキサー、ディスパーザーなどの混合装置を用いることができる。そして、粉砕混合を行う場合には、例えば、ハンマーミル、ジェットミルなどの装置を用いることができる。
このようにして得られた樹脂組成物は、複数種類の成分を物理的に混合しただけのものであってもよいし、樹脂組成物の調製時、混合(攪拌、混練など)に際して付与される機械的エネルギーおよびこれが変換された熱エネルギーにより、その一部を化学的に反応させたものであってもよい。具体的には、機械的エネルギーによるメカノケミカル的反応、熱エネルギーによる化学反応をさせてもよい。
ここで炭化処理の条件としては特に限定されないが、例えば、常温から1℃/時間以上、200℃/時間以下で昇温し、0.1時間以上、50時間以下、好ましくは0.5時間以上、10時間以下保持して行うことができる。炭化処理時の雰囲気としては窒素、ヘリウムガスなどの不活性雰囲気下、もしくは不活性ガス中に微量の酸素が存在するような、実質的に不活性な雰囲気下、または還元ガス雰囲気下で行うことが好ましい。このようにすることで、樹脂の熱分解(酸化分解)を抑制し、所望の炭素材を得ることができる。
このような炭化処理時の温度、時間等の条件は、炭素材の特性を最適なものにするため適宜調整することができる。
ここでプレ炭化処理の条件としては特に限定されないが、例えば、常温から1℃/時間以上、500℃/時間以下で昇温し、200℃以上、600℃以下、好ましくは400℃以上、600℃以下で1時間以上、10時間以下行うことができる。このように、炭化処理前にプレ炭化処理を行うことで、樹脂組成物あるいは樹脂を不融化させ、炭化処理工程前に樹脂組成物あるいは樹脂の粉砕処理を行った場合でも、粉砕後の樹脂組成物あるいは樹脂が炭化処理時に再融着するのを防ぎ、所望とする炭素材を効率的に得ることができるようになる。
硬化処理方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂組成物に硬化反応が可能な熱量を与えて熱硬化する方法、あるいは、樹脂と硬化剤とを併用する方法などにより行うことができる。これにより、プレ炭化処理を実質的に固相でできるため、樹脂の構造をある程度維持した状態で炭化処理またはプレ炭化処理を行うことができ、炭素材の構造や特性を制御することができるようになる。
本発明の初期吸湿速度(X)が0.1mg/m2・h以上、5mg/m2・h以下の範囲であり、且つX線回折スペクトル法からBragg式を用いて算出される炭素材の平均面間隔d002が、3.40Å以上、4.00Å以下、さらに窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が0.001m2/mg以上、0.015m2/mg以下である炭素材を得るために、還元ガスまたは不活性ガスの存在下で、500℃以上、800℃以下まで自然放冷(冷却)し、その後、200℃以下、好ましくは100℃以下となるまで20℃/時間以上、500℃/時間以下で冷却する。
前記範囲内の条件で冷却すれば、自然放冷よりも冷却速度が速くなり、冷却過程に発生する内部応力を急速に高めることができるため、微細な細孔の生成を抑制することができる。その結果、微細な細孔に吸着する水分を抑制することができ、本発明の初期吸湿速度(X)が 0.1mg/m2・h以上、5mg/m2・h以下の範囲である炭素材を得ることができると推測される。
次に、本発明のリチウムイオン二次電池用負極合剤の実施形態について説明する。本発明のリチウムイオン二次電池用負極合剤は、本発明のリチウムイオン二次電池用炭素材と、結着剤と、水とを含むものである。
前記結着剤としては、水と親和性、相溶性等がなくとも、水を含む媒体中に分散できれば何ら限定されるものではなく、例えば、水を含むNMP等の溶剤にポリフッ化ビニリデン等の結着剤を溶解、分散して用いたり、先に溶剤に結着剤を溶解、分散した後、水を加えることもできるが、合成ゴム系ラテックス型接着材、水溶性高分子、を単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。これらの結着剤と本発明の炭素材を用いることにより、水系分散液でも良好な電池特性を発現し得る負極合剤とすることができるため、環境保全への配慮やコストの低減等の観点から好ましいものとなる。
前記結着剤としては、合成ゴム系ラテックス型接着材と、水溶性高分子とを併用することが好ましい。合成ゴム系ラテックス型接着材と、水溶性高分子とを併用することにより、合成ゴム系ラテックス型接着材の分散性を向上することができ、炭素材と集電体との密着力が十分となり、充放電を繰り返した場合に炭素材同士の脱落などの現象が生じにくく、容量低下を抑制することができる。
水溶性高分子がカルボキシメチルセルロース及び/又はカルボキシメチルセルロース塩である場合は、水への溶解性、保存安定性、製造コストなどの点からエーテル化度は0.3以上、2.0以下であることが好ましく、0.5以上、1.7以下であることが特に好ましい。エーテル化度が0.3以上、 2.0以下である場合、作業性や密着力の面で好ましく、エーテル化度が0.3以上だと、前述の密着力が十分となり、充放電を繰り返した場合に炭素材同士の脱落などの現象が生じにくく、容量低下を抑制する。またエーテル化度が2.0以下だと、電極スラリーとした場合の粘度が極端に上昇せず、円滑に集電体に塗布することができる。
次に、本発明のリチウムイオン二次電池用負極合剤の製造方法について説明する。本発明の負極合剤は、本発明の二次電池用炭素材と、結着剤と、水とを含むものであればよいが、例えば、本発明の炭素材を結着剤成分を含む水に分散し、該分散体に、必要に応じて導電助材、分散剤、粘度調整剤を混合することにより、製造することができる。各成分の添加順序などについては、これに限定されるわけではない。
前記結着剤は、前記炭素材100重量部に対して0.1重量部以上、30重量部以下用いることが好ましい。また、より好ましくは0.5重量部以上、15重量部以下である。0.1重量部以上だと、充放電を繰り返した場合に炭素材の脱落や、炭素材と集電体との密着性の低下などが生じにくく、また、30重量部以下だと、負極内の炭素材の量が十分なものとなり、充電容量、放電容量が十分なものとなる。
溶媒として加える水の配合割合は、特に制限されるものではなく、必要に応じて有機溶剤と併用することもできる。水の配合割合により、ペースト状の負極合剤の粘度を調整することができるため、集電体表面への塗布方法によってその割合を適宜調整することができる。
次に、本発明の二次電池用負極材(以下、単に「負極材」という)の実施形態およびこれを用いた実施形態であるリチウムイオン二次電池(以下、単に「二次電池」という)について説明する。
二次電池10は、負極材12および負極集電体14により構成される負極13と、正極材20および正極集電体22により構成される正極21と、ならびに電解液16と、セパレータ18とを含むものである。
上記炭素材100重量部に対して、結着剤、水、及び必要に応じて適量の粘度調整用溶剤(N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、水)を添加して混練し、ペースト状にした混合物を圧縮成形、ロール成形などによりシート状、ペレット状などに成形して、負極材を得ることができる。
そして、負極集電体と積層することにより、負極を製造することができる。
この非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類、ジメチルカーボネートやジエチルカーボネートなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル類などの混合物などを用いることができる。
電解質としては、LiClO4、LiPF6などのリチウム金属塩、テトラアルキルアンモニウム塩などを用いることができる。また、上記塩類をポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリルなどに混合し、固体電解質として用いることもできる。
正極集電体としては、例えばアルミニウム箔を用いることができる。
そして、本実施形態における正極は、既知の正極の製造方法により製造することができる。
はじめに、以下の実施例、比較例における測定方法を説明する。
(1.初期吸湿速度)
(1)炭素材の乾燥条件
真空条件下にて、130℃、5時間乾燥を行った。
(2)初期吸湿速度の測定
乾燥後の炭素材を40℃、湿度90%の恒温恒湿下で処理をおこない、下記式により初期吸湿速度を計算した。
初期吸湿速度(X)(mg/m2・h)=((40℃、湿度90%の恒温恒湿下で60分放置後の粉末の重量)−(測定前の粉末の重量))/(測定前の粉末の重量×窒素吸着におけるBET3点法による比表面積)
(ただし、前記粉末の重量の単位はmg、比表面積はm2/mgである。)
島津製作所製・X線回折装置「XRD−7000」を使用して平均面間隔を測定した。
炭素材のX線回折測定から求められるスペクトルより、平均面間隔d002(Å)を以下のBragg式より算出した。
λ=2dhklsinθ Bragg式 (dhkl=d002)
λ:陰極から出力される特性X線Kα1の波長
θ:スペクトルの反射角度
ユアサ社製のNova−1200装置を使用して窒素吸着におけるBET3点法により測定した。具体的な算出方法は、前記実施形態で述べた通りである。
(1)二次電池評価用二極式コインセルの製造
各実施例、比較例で得られた合剤を18μmの銅箔の両面に塗布し、その後、110℃で12時間真空乾燥した。真空乾燥後、ロールプレスによって電極を加圧成形した。これを直径16.156mmの円形として切り出し負極を作製した。
正極はリチウム金属を用いて二極式コインセルにて評価を行った。電解液として体積比が1:1のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合液に過塩素酸リチウムを1モル/リットル溶解させたものを用いた。
充電条件は電流25mA/gの定電流で1mVになるまで充電した後、1mV保持で1.25mA/gまで電流が減衰したところを充電終止とした。また、放電条件のカットオフ電位は 1.5Vとした。
上記(2)で得られた値をもとに、下記式により算出した。
充放電効率(%)=[放電容量/充電容量]×100
<炭素材1の調製>
樹脂組成物として、フェノール樹脂PR−217(住友ベークライト(株)製)を以下の工程(a)〜(f)の順で処理を行い、炭素材1を得た。
(a)還元ガス置換、不活性ガス置換、還元ガス流通、不活性ガス流通のいずれも無し
で、室温から500℃まで、100℃/時間で昇温
(b)還元ガス置換、不活性ガス置換、還元ガス流通、不活性ガス流通のいずれも無し
で、500℃で2時間脱脂処理後、冷却
(c)振動ボールミルで微粉砕
(d)不活性ガス(窒素)置換および流通下、室温から1200℃まで、100℃/時
間で昇温
(e)不活性ガス(窒素)流通下、1200℃で8時間炭化処理
(f)不活性ガス(窒素)流通下、600℃まで自然放冷後、600℃から100℃ま
で、100℃/時間で冷却
<炭素材2の調製>
実施例1においてフェノール樹脂にかえて、アニリン樹脂(以下の方法で合成したもの)を用いた。
アニリン100部と37% ホルムアルデヒド水溶液697部、蓚酸2部を攪拌装置及び冷却管を備えた3つ口フラスコに入れ、100℃で3時間反応後、脱水し、アニリン樹脂110部を得た。得られたアニリン樹脂の重量平均分子量は約800であった。
以上のようにして得られたアニリン樹脂100部とヘキサメチレンテトラミン10部を粉砕混合し得られた樹脂組成物を、実施例1と同様の工程で処理を行い、炭素材2を得た。
<炭素材3の調製>
実施例2と同様の樹脂組成物を使用した。
また、樹脂組成物の処理に際して、(d)、(e)の工程を以下のようにした点以外は、実施例2と同様にして炭素材3を得た。
(d)不活性ガス(窒素)置換および流通下、室温から1100℃まで、100℃/時間で昇温
(e)不活性ガス(窒素)流通下、1100℃で8時間炭化処理
<炭素材4の調製>
実施例3において、樹脂組成物をTGP1000(大阪化成(株)製)に変えた点以外は、実施例3と同様な工程で処理を行い、炭素材4を得た。
<負極合剤1の作製>
実施例1で作製した炭素材1を100部、スチレンブタジエンラテックス(JSR製、TRDー2001)3.0部、カルボキシメチルセルロース((ダイセルファインケム製、CMCダイセル2200))1.5部、イオン交換水120部をプラネタリーミキサーで十分撹拌して負極合剤1を得た。
<負極合剤2の作製>
実施例5において炭素材1に代わり炭素材2を、スチレンブタジエンラテックス3.0部、カルボキシメチルセルロース1.5部に代わり、ポリアクリル酸(和光純薬製、平均分子量100万)6部を用いた以外は、実施例5と同様な工程で処理を行い、負極合剤2を得た。
<負極合剤3の作製>
実施例6において、ポリアクリル酸6部に代わり、スチレンブタジエンラテックス(JSR製、TRDー2001)2.0部、カルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム製、CMCダイセル2200)1.0部を用いた以外は実施例6と同様な工程で処理を行い、負極合剤3を得た。
<負極合剤4の作製>
実施例5において、炭素材1に代わり炭素材3を用いた以外は、実施例5と同様な工程で処理を行い、負極合剤4を得た。
<負極合剤5の作製>
実施例6において、炭素材2に代わり炭素材4を、ポリアクリル酸6部に代わりカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム製、CMCダイセル2200)6部を用いた以外は、実施例6と同様な工程で処理を行い、負極合剤5を得た。
<炭素材5の調製>
黒鉛(メソフェーズカーボンマイクロビーズ)から構成される炭素材を用意し、炭素材5を得た。
<炭素材6の調製>
ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト製PR−53195)30部、ヘキサメチレンテトラミン3部、メラミン樹脂70部を粉砕混合して樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物を、以下の工程で処理を行い、炭素材6を得た。
(a)還元ガス置換、不活性ガス置換、還元ガス流通、不活性ガス流通のいずれも無し
で、100℃から200℃まで、20℃/時間で昇温
(b)還元ガス置換、不活性ガス置換、還元ガス流通、不活性ガス流通のいずれも無し
で、200℃で1時間熱処理
(c)振動ボールミルで微粉砕
(d)窒素雰囲気下にて室温から1200℃まで10℃/時間で昇温
(e)窒素雰囲気下にて1200℃で10時間炭化処理
(f)自然放冷
<炭素材7の調製>
アントラキノール135重量部、37%ホルムアルデヒド水溶液40重量部、25%
硫酸水溶液2重量部、およびメチルイソブチルケトン150重量部を攪拌機および冷却管を備えた3つ口フラスコに入れ、100℃で3時間反応後、反応温度を150℃に上昇して脱水し、多環フェノール樹脂90重量部を得た。
得られた多環フェノール樹脂100重量部に対してヘキサメチレンテトラミンを10重量部の割合で添加したものを粉砕混合した後、還元ガス置換、不活性ガス置換、還元ガス流通、不活性ガス流通のいずれも無しで、200℃にて5時間硬化処理を行った。硬化処理後、窒素雰囲気下にて昇温し、1000℃到達後10時間の炭化処理を行い、自然放冷して炭素材7を得た。
<炭素材8の調製>
比較例2において、ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト製PR−53195)30部の代わりに、ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト製PR−53195)100部を、ヘキサメチレンテトラミン3部の代わりにヘキサメチレンテトラミン10部を、メラミン樹脂70部の代わりにフェノールスルホン酸30部を用いた以外は、比較例3と同様な工程で処理を行い、炭素材8を得た。
<負極合剤6の作製>
比較例1で用意した炭素材5を100部、スチレンブタジエンラテックス(JSR製、TRDー2001)3.0部、カルボキシメチルセルロース((ダイセルファインケム製、CMCダイセル2200))1.5部、イオン交換水を120部をプラネタリーミキサーで十分撹拌して負極合剤6を得た。
<負極合剤7の作製>
比較例5において、炭素材5に代わり炭素材6を用いた以外は、比較例5と同様な工程で処理を行い、負極合剤7を得た。
<負極合剤8の作製>
比較例5において、炭素材5に代わり炭素材7を用いた以外は、比較例5と同様な工程で処理を行い、負極合剤8を得た。
<負極合剤9の作製>
比較例5において、炭素材5に代わり炭素材8を用いた以外は比較例5と同様な工程で処理を行い、負極合剤9を得た。
<負極合剤10の作製>
比較例4で作製した炭素材8を100部、結合剤としてポリフッ化ビニリデン10部、希釈溶媒として脱水N−メチル−2−ピロリドン120部をプラネタリーミキサーで十分撹拌して負極合剤10を得た。
初期吸湿速度(X)が 0.1mg/m2・h以上、5mg/m2・h以下の範囲であることによって、リチウムイオン二次電池用負極作製過程、リチウムイオン二次電池作製過程、における吸湿を抑制することができ、水に由来する不可逆容量が抑制されていると推測される。さらに、X線回折スペクトル法からBragg式を用いて算出される炭素材の平均面間隔d002が、3.40Å以上、4.00Å以下、さらに窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が0.001m2/mg以上、0.015m2/mg以下、であることによって、リチウムイオンの吸蔵・脱離が円滑に行われ、優れた充電容量、放電容量と充放電効率が高度に両立していると推測される。
X線回折スペクトル法からBragg式を用いて算出される炭素材の平均面間隔d002が、3.40Å未満の炭素材を用いた比較例5では充放電効率が高いが、放電容量が低くなった。また、初期吸湿速度(X)が 5mg/m2・h以上の炭素材を用いた、比較例6、7は、放電容量と充放電効率が低くなり、比較例8、9はある程度放電容量は大きいが充放電効率が低くなった。また初期吸湿速度(X)が大きい炭素材8を使用した比較例8、9において、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを用い、水を使用しなかった比較例9に対して、水系バインダーを使用した比較例8は放電容量、充放電効率が低くなった。すなわち、本発明の炭素材の技術骨子である、初期吸湿速度(X)は水系バインダーを使用した場合に特に重要な指標であることを示すものである。
12 負極材
14 負極集電体
13 負極
20 正極材
22 正極集電体
21 正極
16 電解液
18 セパレーター
Claims (7)
- 下記式で示される初期吸湿速度(X)が 0.1mg/m2・h以上、5mg/m2・h以下の範囲であり、且つX線回折スペクトル法からBragg式を用いて算出される炭素材の平均面間隔d002が、3.40Å以上、4.00Å以下、さらに窒素吸着におけるBET3点法による比表面積が0.001m2/mg以上、0.015m2/mg以下であることを特徴とする、リチウムイオン二次電池用炭素材。
初期吸湿速度(X)(mg/m2・h)=((40℃、湿度90%の恒温恒湿下で60分放置後の粉末の重量)−(測定前の粉末の重量))/(測定前の粉末の重量×窒素吸着におけるBET3点法による比表面積)
(ただし、前記粉末の重量の単位はmg、比表面積はm2/mgである。) - 請求項1記載のリチウムイオン二次電池用炭素材と、結着剤と、水とを含むリチウムイオン二次電池用負極合剤。
- 前記結着剤が、合成ゴム系ラテックス型接着剤と水溶性高分子とを含む請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用負極合剤。
- 前記合成ゴム系ラテックス型接着剤が、スチレンブタジエンゴムラテックスである請求項3記載のリチウムイオン二次電池用負極合剤。
- 前記水溶性高分子がカルボキシメチルセルロース及び/又はカルボキシメチルセルロース塩である請求項3または請求項4記載のリチウムイオン二次電池用負極合剤。
- 請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極合剤を用いて得られるリチウムイオン二次電池用負極。
- 請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用負極を含むリチウムイオン二次電池。
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