JP2012113194A - 波長可変干渉フィルターの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第一基板12と、第二基板11と、第一反射膜17と、第二反射膜16と、第一反射膜17と第二反射膜16とのギャップGの大きさを変えることができるギャップ変更部14と、を備え、第一基板12は、第一反射膜17が設けられた可動部121と、可動部121の厚み寸法よりも小さい厚み寸法に形成され可動部121を第二基板11に対して進退移動可能に保持する保持部122と、を有する波長可変干渉フィルター1の製造方法であって、第一基板12に第一反射膜17及びギャップ変更部14を形成する第一基板製造工程と、第二基板11に前記第二反射膜16及びギャップ変更部14を形成する第二基板製造工程と、第一基板12の温度を第二基板11の温度よりも高くした状態で、第一基板12と第二基板11とを接合する接合工程と、を実施する。
【選択図】図2
Description
この特許文献1に記載の光学フィルター装置(波長可変干渉フィルター)は、対向配置された第一基板、および第二基板を有し、これらの第一基板および第二基板の対向する面には、それぞれ可動ミラーおよび固定ミラーが設けられている。
また、第一基板において、可動ミラーは、基板中央部の第一部分(可動部)に設けられ、第一部分の外周には、第一部分よりも厚み寸法が小さい、可撓性を有する第二部分(支持部)が設けられている。そして、第一基板の第二部分の第二基板に対向する面には、第一電極(可動電極)が設けられ、第二基板の第一電極に対向する面には、第一電極と所定の距離を開けて対向配置される第二電極(固定電極)が設けられている。
このような波長可変干渉フィルターでは、第一電極および第二電極間の間に電圧を印加すると、静電引力により第一基板の第二部分が第二基板側に撓み、可動ミラーおよび固定ミラーの間のギャップ寸法が変化する。これにより、波長可変干渉フィルターは、第一電極および第二電極間の電圧を制御することで、入射光から、ミラー間のギャップ寸法に応じた波長の光を取り出すことが可能となる。
このような第一電極や可動ミラーは、第一基板に対して膜状に形成されるが、成膜すると、当該膜の面方向(第一基板の基板表面に沿う方向)に内部応力が作用する。この内部応力の方向や大きさは、成膜方法や膜材質などにより決定される。そして、内部応力が膜中心部に向かう方向に作用している場合、圧縮応力となり、内部応力が第一電極の膜中心部から外側に作用している場合は引張応力となる。ここで、第一基板に形成される当該膜に圧縮応力が作用する場合、第一基板は、第二基板に向かって撓み、第一基板に形成される当該膜に引張応力が作用する場合、第一基板は、第二基板から離れる方向に撓む。
そして、接合工程では、例えば、第一基板を加熱する一方で第二基板を常温に保持して、第一基板の温度を前記第二基板の温度よりも高くした状態で当該第一基板と第二基板とを接合する。
なお、本発明における第一基板及び第二基板の厚み寸法は、各基板の厚みが最大となる部分の寸法をいう。
以下、本発明に係る第一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.エタロンの構成〕
図1は、本発明の波長可変干渉フィルターを構成するエタロン1の概略構成を示す平面図であり、図2は、エタロン1の概略構成を示す断面図である。
エタロン1は、図1に示すように、平面正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン1は、図2に示すように、本発明の第一基板である可動基板12及び本発明の第二基板である固定基板11を備えている。これらの2枚の基板11,12は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。そして、これらの2つの基板11,12は、外周部近傍に形成される接合部113,123が接合されることで、一体的に構成されている。
接合方法としては、例えば、(常温)活性化接合、プラズマ重合膜を用いたシロキサン接合、接着材による接合、陽極接合が挙げられる。
さらに、固定基板11と可動基板12との間には、ギャップ変更部としての静電アクチュエーター14が設けられている。この静電アクチュエーター14は、固定反射膜16及び可動反射膜17の間のギャップGの寸法を調整するためのものであり、固定基板11側に設けられる固定電極141と、可動基板12側に設けられる可動電極142とを備えている。
固定基板11の厚み寸法は、可動基板12の厚み寸法よりも大きいことが好ましく、可動基板12の厚み寸法に対して1.5倍以上であることがより好ましい。固定基板11は、厚み寸法が例えば500μmに形成されるガラス基材を加工することで形成される。具体的には、図2に示すように、固定基板11には、エッチングにより電極形成溝111及び反射膜固定部112が形成されている。この固定基板11は、可動基板12に対して厚み寸法が大きく形成されており、固定電極141及び可動電極142間に電圧を印加した際の静電引力や、固定電極141の内部応力による固定基板11の撓みはない。
また、固定基板11には、電極形成溝111から、固定基板11の外周縁の頂点方向(例えば図1における左下方向、及び右上方向)に向かって延出する一対の引出形成溝(図示略)が設けられている。
また、この固定電極141の外周縁から、一対の引出形成溝(図1では、右上方向)に沿って伸びる固定引出電極141Aが設けられている。この固定引出電極141Aは、固定電極141の成膜時に同時に形成されるものである。この固定引出電極141Aの先端には、固定電極パッド141Bが形成され、この固定電極パッド141Bが電圧制御部(図示略)に接続されている。なお、電圧制御部は、静電アクチュエーター14の固定電極141及び可動電極142に印加する電圧を制御するためのものである。
ただし、固定電極141及び可動電極142の間に作用する静電引力は、固定電極141及び可動電極142の距離の二乗に反比例する。したがって、これら固定電極141及び可動電極142の距離が近接するほど、印加電圧に対する静電引力も増大し、ギャップGの変動量も大きくなる。特に、本実施形態のエタロン1のように、ギャップGの変更される寸法が微小な場合(例えば250nm〜450nm)、ギャップGの制御が困難となる。したがって、上記のように、反射膜固定溝を形成する場合であっても、電極形成溝111の深さ寸法をある程度確保する方が好ましく、本実施形態では、例えば、1μmに形成されることが好ましい。
可動基板12は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。
具体的には、可動基板12は、図1に示すような平面視において、基板中心点を中心とした円形の可動部121と、可動部121と同軸であり可動部121を保持する保持部122と、を備えている。
ここで、この可動反射膜17は、上述した固定反射膜16と同一の構成の反射膜が用いられる。
そして、可動電極142の外周縁の一部からは、可動引出電極142Aが外周方向に向かって形成されている。具体的には、可動引出電極142Aは、エタロン平面視において、固定基板11に形成される一対の引出形成溝のうち、固定引出電極141Aが形成されていない他方の引出形成溝と対向する位置に設けられている。また、可動引出電極142Aは、先端部には、可動電極パッド142Bが形成され、前記電圧制御部に接続されている。
次に、上記エタロン1の製造方法について、図面に基づいて説明する。
(2−1.固定基板(第二基板)製造工程)
図3は、エタロン1の固定基板11の製造工程を示す図である。
まず、固定基板11の製造素材である厚み寸法が500μmの石英ガラス基板を用意し、この石英ガラス基板の表面粗さRaが1nm以下となるまで両面を精密研磨する。そして、固定基板11の可動基板12に対向する面に電極形成溝111形成用のレジスト61を塗布して、塗布されたレジスト61をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図3(A)に示すように、電極形成溝111が形成される箇所をパターニングする。
次に、図3(B)に示すように、電極形成溝111を所望の深さにエッチングし、電極固定面111Aを形成する。なお、ここでのエッチングとしては、ウェットエッチングが用いられる。
そして、固定基板11の可動基板12に対向する面に反射膜固定面112Aを形成するためのレジスト61を塗布して、塗布されたレジスト61をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図3(B)に示すように、反射膜固定面112Aが形成される箇所をパターニングする。
次に、図3(C)に示すように、反射膜固定面112Aを所望の位置までエッチングした後、レジスト61を除去することで、電極形成溝111及び反射膜固定部112が形成される。
さらに、図3(D)に示すように、第一接合膜113Aを接合部113に形成する。第一接合膜113Aは、ポリオルガノシロキサンを用いたプラズマCVD法により成膜されるプラズマ重合膜であり、厚み寸法は30nmとする。
以上により、固定基板11が製造される。
次に、可動基板12の製造方法について説明する。
図4は、可動基板12の製造工程の概略を示す断面図である。
可動基板12の形成では、まず、可動基板12の製造素材である母材(ガラス基板)を用意し、切削等により、例えば厚み寸法を200μmの均一厚みに形成する。そして、母材の表面を鏡面研磨加工することで、平均表面粗さRaが1nm以下の平滑面にする。
そして、フォトリソグラフィ法を用いて、保持部122を形成するためのレジストパターンを形成し、ウェットエッチングにより加工して、図4(B)に示すような可動部121及び保持部122を形成する。
さらに、図4(C)に示すように、第二接合膜123Aを接合部123に形成する。第二接合膜123Aは、ポリオルガノシロキサンを用いたプラズマCVD法により成膜されるプラズマ重合膜であり、厚み寸法は30nmとする。
以上により、可動基板12が製造される。
ここで、可動基板12に可動反射膜17や可動電極142が成膜形成されると、可動反射膜17や可動電極142に作用する内部応力により、可動基板12が撓む。可動基板12が撓む方向は、可動反射膜17や可動電極142を構成する材料に応じて異なるが、固定基板11に近づく方向、または固定基板11から離れる方向となる。
次に、上述の固定基板製造工程及び可動基板製造工程で形成された各基板11,12を下部プレート21及び上部プレート22を備える基板接合装置2を用いて接合する。
図5は、エタロン1の接合工程の概略を示す断面図である。
基板接合装置2において、下部プレート21と上部プレート22とは上下で向き合い、互いに近接及び離間可能に配置されている。
下部プレート21は、図示しない吸着手段を有し、固定基板11の固定反射膜16などが形成された面とは反対側の面を該吸着手段で吸着して保持する。吸着手段としては、下部プレート21の吸着面に複数の孔が形成され、この孔から真空吸着により固定基板11を吸着するものなどが挙げられる。
上部プレート22は、図示しないヒーター等の加熱手段および吸着手段を有し、可動基板12の可動反射膜17などが形成された面とは反対側の面を該吸着手段で吸着するとともに、該加熱手段で可動基板12を加熱する。吸着手段は、下部プレート21と同様のものが挙げられる。
可動基板12は、加熱によって基板表面に沿う方向に膨張する。可動基板12の加熱温度は、接合後に撓みを低減させるように、可動基板12や保持部122の厚み寸法、形成される膜の内部応力の方向や大きさなどに応じて、適宜設定されるものである。このとき、可動基板12に形成した可動反射膜17が劣化しない程度に加熱するのがより好ましい。例えば、可動反射膜17が銀合金を含む場合には、150℃程度が適切である。
まず、固定基板11を下部プレート21にて吸着して保持する。このとき、加熱を行わず、常温にしておく。
そして、可動基板12を上部プレート22にて吸着して保持するとともに、所定温度に加熱して膨張させる。
次に、各基板11,12に形成された第一接合膜113A及び第二接合膜123Aを構成するプラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与するために、O2プラズマ処理またはUV処理を行う。O2プラズマ処理は、O2流量30cc/分、圧力27Pa、RFパワー200Wの条件で30秒間実施する。また、UV処理は、UV光源としてエキシマUV(波長172nm)を用いて3分間処理を行う。
その後、図5に示すように、可動反射膜17及び固定反射膜16が形成された面が向かい合うように下部プレート21に吸着された固定基板11及び上部プレート22に吸着された加熱状態の可動基板12のアライメントを行う。そして、第一接合膜113A及び第二接合膜123Aを重ね合わせて荷重をかけることにより、基板11,12同士を接合する。接合後は、可動基板12を常温に戻す。
これにより、エタロン1が製造される。
上述の第一実施形態に係るエタロン1によれば、以下の効果を奏する。
(1)可動基板製造工程にて撓みが生じた可動基板12を接合工程にて加熱してから固定基板11と可動基板12とを接合する。接合後、可動基板12が常温に戻るときに、可動基板12は、基板表面に沿う方向に収縮しようとする。しかし、可動基板12は、加熱されなかった(常温の状態である)固定基板11と接合されているので、基板表面に沿う方向に収縮できず、可動基板12は基板表面に沿う方向に引っ張られ、撓みが低減された状態となっている。よって、可動基板12の撓みを低減させたエタロン1が得られる。
そのため、初期状態における固定反射膜16及び可動反射膜17の間のギャップGの間隔を高精度に設定でき、固定反射膜16及び可動反射膜17を高精度に平行に維持できるようになり、エタロン1の分解能を向上させることができる。
(2)上記製造方法で製造されたエタロン1において、固定基板11の厚み寸法(500μm)は、可動基板12の厚み寸法(200μm)に対して1.5倍以上となっているので、固定基板11は、可動基板12よりも剛性に優れている。そのため、固定基板11と可動基板12とを接合した後の可動基板12が基板表面に沿う方向に収縮しようとする力に抗してエタロン1全体の反りを防止できる。
(3)上記製造方法では、ヒーター等の加熱手段にて可動基板12を加熱し、固定基板11を常温にした状態で接合する方法を採用したので、可動基板12の温度を固定基板11の温度よりも高くした状態に設定し易く、エタロン1の製造設備を簡略化できる。
次に、本発明に係る第二実施形態について説明する。
なお、以下の説明では、前記第一実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
第二実施形態は、エタロンの製造方法の接合工程が第一実施形態と相違する。第一実施形態では、可動基板12を加熱し、固定基板11を常温に保持した状態で接合するのに対し、第二実施形態では、可動基板12を常温にし、固定基板11を冷却した状態で接合する。
まず、この第二基板接合装置の上部プレート22で可動基板12を常温の状態で吸着して保持する。一方、下部プレート21の吸着手段で固定基板11を吸着するとともに、該冷却手段で固定基板11を冷却する。固定基板11は、冷却によって収縮する。後述するように、第二実施形態では、固定基板11を冷却して収縮させ、常温に戻したときに生ずる膨張する力を利用して、可動基板12の撓みを低減させようとするものである。よって、固定基板11の冷却温度は、可動基板12の撓みを低減させるように、固定基板11の厚み寸法、可動基板12の撓みの程度などに応じて、適宜設定されるものである。
そして、以降の接合を第一実施形態と同様にして行うことで、第二実施形態に係るエタロンが製造される。
上述の第二実施形態に係るエタロンによれば、以下の効果を奏する。
(4)接合工程にて固定基板11を冷却した状態で、固定基板11と可動基板12とを接合する。接合後、固定基板11が常温に戻るときに、固定基板11は、基板表面に沿う方向に膨張しようとする。ここで、固定基板11は、可動基板12よりも厚み寸法が大きいため、膨張しようとする力が接合部113,123を介して固定基板11よりも剛性に劣る可動基板12にまで及ぶ。そうすると、可動基板12が基板表面に沿う方向に引っ張られるので、可動基板12に生じた撓みが低減される。よって、可動基板12の撓みを低減させたエタロンが得られる。
そのため、初期状態における固定反射膜16及び可動反射膜17の間のギャップGの間隔を高精度に設定でき、固定反射膜16及び可動反射膜17を高精度に平行に維持できるようになり、エタロンの分解能を向上させることができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
上記実施形態に係るエタロンは、例えば、被検査対象の色を分析して測定する測色装置の測色センサーなどに用いられる。
Claims (3)
- 第一基板と、前記第一基板に対向する第二基板と、前記第一基板の前記第二基板に対向する面に設けられた第一反射膜と、前記第二基板の前記第一基板に対向する面に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向する第二反射膜と、前記ギャップの大きさを変えることができるギャップ変更部と、を備え、前記第一基板は、前記第一反射膜が設けられた可動部と、前記可動部の厚み寸法よりも小さい厚み寸法に形成され前記可動部を前記第二基板に対して進退移動可能に保持する保持部と、を有する波長可変干渉フィルターの製造方法であって、
前記第一基板を形成し、前記第一基板に前記第一反射膜及び前記ギャップ変更部を形成する第一基板製造工程と、
前記第二基板を形成し、前記第二基板に前記第二反射膜及び前記ギャップ変更部を形成する第二基板製造工程と、
前記第一基板製造工程及び前記第二基板製造工程の後に、前記第一基板の温度を前記第二基板の温度よりも高くした状態で、前記第一基板と前記第二基板とを接合する接合工程と、を実施する
ことを特徴とする波長可変干渉フィルターの製造方法。 - 請求項1に記載の波長可変干渉フィルターの製造方法において、
前記第一基板を加熱し、前記第二基板が常温である状態で前記接合工程を実施する
ことを特徴とする波長可変干渉フィルターの製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載の波長可変干渉フィルターの製造方法において、
前記第二基板の厚み寸法は、前記第一基板の厚み寸法よりも大きい
ことを特徴とする波長可変干渉フィルターの製造方法。
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