JP2012104766A - 半導体レーザ装置 - Google Patents

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Toru Takayama
徹 高山
Masayuki Ono
将之 小野
Isao Kidoguchi
勲 木戸口
Naoki Nakanishi
直樹 中西
Toru Nishikawa
透 西川
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Abstract

【課題】温度特性に優れ、キンクレベルが高く、動作電圧が小さく、さらに、FFP形状の乱れも光軸変動も少ない2波長半導体レーザ装置を提供する。
【解決手段】赤色レーザ1と赤外レーザ2とを有し、赤色レーザ1のリッジ部40は、長さLR1で幅WR1の第一フロント側領域41と長さLR3で幅WR3第一リア側領域45との間に、第一フロント側ストライプ幅変化領域42、幅WR2の第一中間領域及び第一リア側ストライプ幅変化領域44を備え、赤外レーザ2のリッジ部50は、長さLS1で幅WS1の第二フロント側領域51と長さLS3で幅WS3の第二リア側領域55との間に、第二フロント側ストライプ幅変化領域52、幅WS2の第二中間領域53及び第二リア側ストライプ幅変化領域54を備える。さらに、WR1>WR2>WR3、WS1>WS2>WS3、LR1<LS1、LR3>LS3の関係を満たす。
【選択図】図2

Description

本発明は、光ディスク装置のピックアップ用光源として、又は、その他の電子装置や情報処理装置などに必要な光源として用いられる半導体レーザ装置に関し、特に、発光波長が赤色域及び赤外域の多波長半導体レーザ装置に関する。
半導体レーザ装置(以下、「半導体レーザ」とも記載する)は、様々な分野で幅広く使用されている。例えば、AlGaAs系半導体レーザは、波長780nm帯の赤外レーザ光を得ることができ、また、AlGaInP系半導体レーザは、波長650nm帯の赤色レーザ光を得ることができるため、それぞれCD及びDVDに代表される光ディスクシステムの分野において光源として広く使用されている。
従来のDVD装置の光学ピックアップ用光源には、発光波長が650nmのAlGaInP系半導体レーザが用いられているので、CDの再生を行うことができなかった。
そこで、別々のパッケージにレーザチップを組み込んだ、発光波長が650nm帯のAlGaInP系半導体レーザと発光波長が780nm帯のAlGaAs系半導体レーザとを搭載した光学ピックアップが採用されている。
しかしながら、このような光学ピックアップには、AlGaInP系半導体レーザとAlGaAs系半導体レーザとの二つのパッケージが搭載されているので、光学ピックアップのサイズが大きくなり、これに伴ってDVD装置のサイズも大きくなってしまうという問題が生じる。
そこで、この問題を解決するために、同一基板上に成長された半導体層により発光素子構造が形成され、互いに発光波長が異なる複数種類の半導体発光素子を有する集積型半導体発光装置が提案されている(特許文献1)。
一方、現在、再生のみならず記録機能を有する記録16倍速対応DVD又は記録48倍速対応のCD−Rといった高速書き込み可能な光ディスクシステム用の光源が要望されている。この場合、光源として用いられる半導体レーザには少なくとも200mW以上の高出力動作が求められる。
一般的に、半導体レーザを高出力動作させる場合、レーザ光を取り出す側の共振器端面(前端面)には、反射率10%以下の低反射率を有する誘電体膜のコーティングを行い、前端面とは反対側の共振器端面(後端面)には、反射率85%以上の高反射率を有する誘電体膜のコーティングを行う。このように、レーザ共振器端面に対して低反射率(AR;Anti Reflection)及び高反射率(HR;High Reflection)を有する誘電体膜をコーティングすることにより、電流−光出力特性における外部微分量子効率(スロープ効率)の向上を図ることができる。これにより、少ない注入電流量で高い光出力を実現することができる。また、動作時における前端面のレーザ光のパワー密度を低減することができるので、レーザ光自身の光出力によって半導体レーザの端面が溶融破壊されてしまうというCOD(Catastrophic Optical Damage)の発生を防止することができる。
従って、高出力レーザを得るためには、半導体レーザの前端面における反射率を低減するとともに、後端面における反射率を高めるようにすることが、CODレベルの向上及び光の取り出し効率の向上に有効である。
しかしながら、前端面の反射率を低くしすぎると、共振器内部でフィードバックされるレーザ光が低減してしまうので、発振しきい電流値の増大を招くことになる。また、半導体レーザを光ディスクへ応用する場合、前端面の反射率を低くしすぎると、光ディスクからの反射戻り光により雑音(戻り光誘起雑音)が発生しやすくなる。
そこで、通常高出力レーザにおいては、高い光の取り出し効率を得るとともに、戻り光誘起雑音を低減するために、前端面の反射率は5〜10%程度となるようにコーティングされている。また、後端面の反射率はできるだけ高反射率となるようにコーティングされ、一般的には95%から100%程度の高反射率コートとなるように設定されている。
このように、高出力レーザにおいては、前端面と後端面との反射率の大きさが大きく異なることになる。この場合、活性層を伝搬する共振器方向の光分布強度は、共振器に対して前後対称ではなく、前端面側の光分布強度が後端面側の光強度分布よりも高い前後非対称な光分布強度となっている。この場合、光分布強度が高い前端面側では後端面側に比べてより強い誘導放出が生じるために、前端面側に対しては後端面側に比べてより多くの電子−正孔対を活性層に注入する必要がある。特に、高出力動作状態において、前端面側では活性層中の電子−正孔対が不足することになり、発光効率の飽和の一因となる。こういった発光効率の飽和は、200〜300mW以上の高出力レーザを得る場合、温度特性の劣化をもたらし重大な支障をきたすことになる。
そこで、赤色レーザ光及び赤外レーザ光の2波長のレーザ光を発振する2波長半導体レーザ装置において、赤色レーザ及び赤外レーザのいずれもが温度特性に優れ、且つ、高い光出力を得ることができる発明が提案されている(特許文献2)。以下、特許文献2に開示された従来の2波長半導体レーザ装置について、図19を用いて説明する。図19は、特許文献2に開示された従来の2波長半導体レーザ装置の断面構造を模式的に示した図である。
図19に示すように、従来の2波長半導体レーザ装置は、(100)面から[011]方向に10°傾けた面を主面とするn型GaAsからなる基板110上に、赤色レーザ光を発する赤色レーザ100と、赤外レーザ光を発する赤外レーザ200とが集積化されたものである。
赤色レーザ100は、基板110上に、n型GaAsからなるn型バッファ層111(0.5μm)と、n型(Al0.7Ga0.30.51In0.49Pからなるn型クラッド層112(2.0μm)と、歪量子井戸構造の活性層113((Al0.5Ga0.50.51In0.49Pからなる第一ガイド層113g1+[GaInP(×3)からなるウェル層113w1〜113w3+AlGaInP(×2)からなるバリア層113b1、113b2]+AlGaInPからなる第二ガイド層113g2)と、p型(Al0.7Ga0.30.51In0.49Pからなるp型クラッド層114と、p型Ga0.51In0.49Pからなるp型の保護層115(500Å)と、p型GaAsからなるp型コンタクト層(0.4μm)116とが、順次形成されて構成されている。
p型クラッド層114には、リッジ部140が形成されており、リッジ部140の上部と活性層113までの距離を1.4μmとし、リッジ部140の下端部と活性層113との距離dpを0.2μm)している。リッジ部140は、断面形状が凸状で、後述するように、リッジ幅W1が前端面から後端面までの間にかけて変化するように形成されている。
また、リッジ部140の側面上には、n型AlInPからなる電流ブロック層(0.7μm)117が形成されている。この構造において、p型コンタクト層116から注入された電流は、電流ブロック層117によりリッジ部140のみに狭窄され、リッジ部140の底部下方に位置する活性層113に集中して注入されるので、レーザ発振に必要なキャリアの反転分布状態が数十mAという少ない注入電流により実現される。この時、活性層113へ注入されたキャリアの再結合によって生じた光は、活性層113と垂直な方向に対しては、n型クラッド層112及びp型クラッド層114によって垂直方向の光閉じ込めが行われ、また、活性層113と平行な方向に対しては、屈折率がp型クラッド層114よりも小さい電流ブロック層127によって水平方向の光閉じ込めが行われる。また、電流ブロック層117は、レーザ発振光に対して透明であるため光吸収がなく、低損失の導波路を実現することができる。また、導波路を伝搬する光分布は、電流ブロック層117に大きくしみ出すことができるため、高出力動作に適した10-3のオーダーの実効屈折率差(ΔN)を容易に得ることができ、さらにΔNは上記距離dpによって、同じく10-3のオーダーで精密に制御することができる。このため、光分布を精密に制御しつつ、低電流動作の高出力半導体レーザを得ることができる。
一方、赤外レーザ200は、基板110上に、n型GaAsからなるn型バッファ層121(0.5μm)と、n型(Al0.7Ga0.30.51In0.49Pからなるn型クラッド層122(2.0μm)と、量子井戸構造の活性層123(Al0.5Ga0.5Asからなる第一ガイド層123g1+[GaAs(×2)からなるウェル層123w1、123w2+Al0.5Ga0.5Asからなるバリア層123b1]+Al0.5Ga0.5Asからなる第二ガイド層123g2)と、p型(Al0.7Ga0.30.51In0.49Pからなるp型クラッド層124と、p型Ga0.51In0.49Pからなるp型の保護層125(500Å)と、p型GaAsからなるp型コンタクト層(0.4μm)126とが、順次形成されて構成されている。
p型クラッド層124には、リッジ部150が形成されており、リッジ部150の上部と活性層123までの距離を1.4μmとし、リッジ部150の下端部と活性層123との距離dpを0.24μmとしている。リッジ部150は、断面形状が凸状で、後述するように、リッジ幅W2が前端面から後端面までの間にかけて変化するように形成されている。
また、リッジ部の側面上には、n型AlInPからなる電流ブロック層(0.7μm)127が形成されている。この構造において、p型コンタクト層126から注入された電流は、電流ブロック層127によりリッジ部150のみに狭窄され、リッジ部150の底部下方に位置する活性層123に集中して注入されるので、レーザ発振に必要なキャリアの反転分布状態が数十mAという少ない注入電流により実現される。この時、活性層123へ注入されたキャリアの再結合によって生じた光は、活性層123と垂直な方向に対しては、n型クラッド層122及びp型クラッド層124によって垂直方向の光閉じ込めが行われ、また、活性層123と平行な方向に対しては、屈折率がp型クラッド層124よりも小さい電流ブロック層127によって、水平方向の光閉じ込めが行われる。また、電流ブロック層127は、レーザ発振光に対して透明であるため光吸収がなく、低損失の導波路を実現することができる。また、導波路を伝搬する光分布は、電流ブロック層127に大きくしみ出すことができるため、赤色レーザ100と同様に、高出力動作に適した10-3のオーダーのΔNを容易に得ることができ、さらにそのΔNを上記距離dpによって、同じく10-3のオーダーで精密に制御することができる。このため、光分布を精密に制御しつつ、低電流動作の高出力半導体レーザを得ることができる。
なお、80℃の高温動作時において放熱性を向上させるために、350mW以上の高出力レーザでは共振器長を1500μm以上として動作電流密度を低減することが好ましく、図19では、共振器長を1750μmとしている。また、共振器の前端面には、赤色レーザ100及び赤外レーザ200に対してともに反射率が7%となるように誘電体膜のコーティングを行っており、また、共振器の後端面には、赤色レーザ100及び赤外レーザ200に対してともに反射率が94%となるように誘電体膜のコーティングを行っている。
次に、図19に示す従来の2波長半導体レーザ装置におけるリッジ部140及び150のストライプ構造について、図20を用いて説明する。図20は、図19に示す従来の2波長半導体レーザ装置の上面図である。
図20に示すように、リッジ部140及び150のストライプ構造は、リッジ幅(ストライプ幅)が、レーザ光を取り出す端面である前端面110aから後端面110bに向けて除々に狭まった形状としている。
赤色レーザ100のリッジ部140は、前端面110aでのリッジ幅(幅3.5μm)から距離L1までの間はリッジ幅が一定の直線形状とし、さらにそこから距離L2までの間ではリッジ幅が徐々に狭まる形状とし、そこから後端面110bまでの距離LREのリア領域141ではリッジ幅が一定幅(幅2.1μm)の形状となるようにしている。
また、赤外レーザ200のリッジ部150は、前端面110aでのリッジ幅(幅3.8μm)から距離L3までの間はリッジ幅が一定の直線形状とし、さらにそこから距離L4までの間ではリッジ幅が徐々に狭まる形状とし、そこから後端面110bまで距離LSEのリア領域151ではリッジ幅が一定幅(幅2.1μm)の形状となるようにしている。
なお、リッジ部140及び150のリッジ幅とは、図19に示すように、リッジ部140及び150の下端部の幅W1、W2のことである。
従来の2波長半導体レーザ装置では、赤外レーザ200のリッジ部150における距離L1の長さが、赤色レーザ100のリッジ部140における距離L3の長さよりも長くなるように設定している。
また、リッジ部140及び150のリッジ幅及び共振器方向の長さは、赤色レーザ100及び赤外レーザ200のいずれも図21に示すよう変化させるとよい。図21は、従来の2波長半導体レーザ装置において1つのリッジ部のストライプ構造を示す図である。
図21に示すように、リッジ部は、前端面110a側から後端面110bに向かって徐々にリッジ幅が狭まるように構成することが好ましい。一般的に、高出力レーザでは、通常前端面側の反射率(Rf)は10%以下の低反射率、後端面側の反射率(Rr)は75%以上の高反射率となるように誘電体膜をコーティングする。これは、前端面側の光取り出し効率を向上させ、且つ前端面内部での光密度を低減し、レーザの端面が溶融破壊(COD)する光出力レベルを向上させるためである。このとき、導波路の共振器方向の光密度は、前端面側の方が後端面側よりも高いので、レーザ発振のために消費される活性層のキャリア数は、前端面側の方がより多く必要となる。そのため、電流の注入としては、共振器内部の光密度が相対的に高い前端面側により多くの電流を注入したほうが、電流−光出力特性でのスロープ効率を向上させることができ、温度特性に優れた素子を得ることができる。
ここで、赤色レーザと赤外レーザのリッジ幅の差について説明を行う。活性層のバンドギャップエネルギーとクラッド層のバンドギャップエネルギーとの差は赤色レーザよりも赤外レーザの方が大きいので、赤外レーザの方が熱的に励起されたキャリアのオーバーフローが少ない。また、赤外レーザの活性層の材料であるAlGaAs系材料の方が、赤色レーザの活性層材料であるInGaAlP系材料よりも同じ注入キャリア密度に対する利得が大きいので、赤色レーザよりも赤外レーザの方が、高温及び高出力動作時における動作キャリア密度が低くなる。
活性層での動作キャリア密度の水平方向の分布は、最も光分布強度の高いリッジ部の中央部(リッジ幅の中央)では強い誘導放出が生じるために、図22に示すように、リッジ幅の中央部おけるキャリア濃度は相対的にくぼんだ分布となり、キャリアの空間的ホールバーニングと呼ばれる現象が生じる。また、活性層の動作キャリア濃度が高いと、プラズマ効果により活性層の屈折率は低下する。
ここで、図22において、このキャリア濃度のくぼみの大きさをΔNcとすると、ΔNcが大きいほど、リッジ部の中央部とその下方の活性層との屈折率差が大きくなる。この結果、リッジ部内外の実効屈折率差(ΔN)の増大につながり、高次横モード光がカットオフされにくくなり、高次横モード発振が生じ、電流‐光出力におけるキンクの発生につながる。
このような現象を抑制するためには動作キャリア密度は低い方がよい。従って、同じリッジ幅であれば、温度特性に優れた赤外レーザの方が赤色レーザよりも動作キャリア密度が低く、キンクが発生しにくくなる。
また、リッジ幅は広い方が、水平方向の光分布がリッジ部の内部に閉じ込められ、ΔNcは大きくなる。このため、リッジ幅を広くすると、キンクレベルが低下してしまう。一方、リッジ幅は素子の直列抵抗に影響し、電流注入領域が広い方が、つまり、リッジ幅が広い素子の方が、素子の直列抵抗が小さくなり、動作電圧も低くすることができる。このように動作電圧を低くすることにより、消費電力を低減することができるとともに、発熱量も低下するので温度特性を向上させることができる。また、半導体レーザの駆動電圧も低減できるため、回路設計上、有利となる。従って、リッジ幅はキンクレベルが低下しない範囲で、できるだけ広くなるように設定することが好ましい。
以上をまとめると、従来の2波長半導体レーザ装置において、(1)電流−光出力特性上、スロープ効率を向上させるには、前端面側から後端面側に向かってリッジ幅を徐々に狭めたほうがよい、(2)動作電圧を低減するためには、リッジ幅は広い方がよい、(3)キンク発生を抑制するためには、リッジ幅は狭めた方がよい、ということになる。このことから、動作電流値及び動作電圧を低くし、キンクレベルを高めるように、リッジ部のストライプの形状は、図21に示すような形状とすることが好ましい。
すなわち、図21に示すように、前端面から距離Lfまでの前端面側領域においては、リッジ幅を広くするとともに徐々に狭めるように構成されている。これにより、光密度の高い前端面部に、より多くの電流を供給することができる。また、距離Lfから距離Lbまでの後端面側領域においては、リッジ幅がより狭くなるように、前端面側領域と比較してより急激にリッジ幅を狭めるように構成されている。
なお、フロント側領域のリッジ幅は一定でもよい。これは、リッジ幅が変化すると、リッジ部の側壁での導波光の散乱損失が大きくなり効率の低下につながるからである。従って、リッジ幅を変化させた場合の導波路損失の増大量を低減するためには、光密度の高い前端面側領域におけるリッジ幅の変化は小さい方が良い。
つまり、従来の2波長半導体レーザ装置において、リッジ部のストライプ構造は、前端面のリッジ幅をWf、前端面から距離Lfまでのリッジ幅をWm、前端面から距離Lf+距離Lbまでのリッジ幅をWrとすると、Wf≧Wm、Wm>Wr、(Wf―Wm)/(2Lf)>(Wm―Wr)/(2Lb)の関係を満たすように構成することが好ましい。
なお、図21に示すように、従来の2波長半導体レーザ装置においては、後端面から20μmまでの間においてリッジ幅が一定の領域であるリア領域141及び151が設けられている。これは、素子をへき開により分離する場合において、へき開の位置ずれによるリッジ幅の変動を抑えるためである。
また、温度特性上、赤外レーザの前端面におけるリッジ幅をWf1、赤色レーザの前端面におけるリッジ幅をWf2とすると、Wf1≧Wf2とすることが好ましい。これにより、キンクレベルが高く、低電流及び低電圧で駆動可能な2波長レーザを得ることができる。なお、図21に示す従来の2波長半導体レーザ装置では、赤外レーザ200の前端面110aにおけるリッジ幅を3.8μmとし、赤色レーザ100の前端面110aにおけるリッジ幅を3.5μmとし、赤外レーザの方を0.3μm広く設定している。これにより、高出力動作時の動作電圧の増大を抑制している。
この様に、特許文献2に開示された発明によれば、動作電圧が低く、温度特性に優れ、キンクレベルの高い2波長半導体レーザ装置を実現することができる。
特開平11−186651号公報 特開2008−66506号公報
近年の光ディスクシステムの大容量化の進展によりCDやDVDよりもさらに大容量の記録を可能にするBD(Blu−ray Disc)光ディスクシステムの市場が立ち上がり、波長405nm帯の青紫レーザ光を得ることが可能な窒化物材料系の半導体レーザが実用化されている。
この様な光ディスクシステムの市場動向において、光ディスクシステムは、CD、CD−R、DVDに加えてBD用の光ディスクの記録、再生可能な3波長対応の光ディスクシステムの需要が高まっている。
3波長対応の光ディスクシステムにおいては、光ピックアップの組み立て精度が最も必要なBD用光ディスクシステムの光学系の設計を優先することが多く、赤色レーザや赤外レーザの光ディスクシステム光学系におけるレーザ光の利用効率は、従来の光ディスクシステムと比較して、低くなっている。
また、2波長対応の光ディスクシステムの大型化を招かないためには、光学系の部品配置の設計尤度も厳しくなり、3波長対応の光ディスクシステムに使用される赤色レーザ及び赤外レーザのレーザ光放射パターン(遠方放射パターン:FFP(Far Field Pattern))の形状やビームの出射方向(光軸)は、低出力から高出力動作時のみならず、低温から高温動作時においても可能な限り一定となることが要望されている。この理由は、FFP形状や光軸の変化が大きいと、光ディスクシステムの光学系において設置された光出力をモニターする受光素子への光の入射光強度の変動につながり、温度変動に対し安定した光出力動作を得ることが困難となるからである。
また、光ディスクシステムの小型化のためには、光出力モニター用受光素子の小型化や設置位置の制限がより厳しくなる。従って、3波長対応の光ディスクシステムに要望される赤色レーザや赤外レーザの光軸やFFP形状は、温度や光出力の変化に対して、より安定、且つ、形状の乱れがない単峰性に優れた特性が要望されている。
さらに、3波長対応の光ディスクシステムでは、前述のように、赤色レーザ、赤外レーザの光の利用効率が低くなるため、更なる高温高出力動作とキンク発生の抑制、そして、低電圧動作が要望されている。
このような中、図20及び図21に示す従来の2波長半導体レーザ装置においては、上述のとおり、リッジ部140及び150のストライプ形状を最適化している。すなわち、共振器長方向に対し、光密度が高い前端面部でのリッジ幅は一定又は徐々に狭め、さらに後端面側に向かってはより急峻にリッジ幅を狭めるようにしてリッジ部を構成している。さらに、前端面部のリッジ幅が一定又は徐々に狭まる領域の長さは、赤外レーザの方を赤色レーザよりも長くすることにより、赤色レーザ及び赤外レーザのいずれについても、高いキンクレベル、低電流動作及び低電圧動作を実現している。
しかしながら、今後、85℃以上の高温動作及び350mW以上の高出力動作という、さらなる高温高出力動作が要求されてくると、素子の発熱量が増大してΔNが大きくなる結果、高次横モード光がカットオフされにくくなる。また、高次横モード光が発生すると基本横モード光と干渉し、光軸変動が生じたりFFP形状に乱れが生じたりするという問題がある。
この場合、特許文献2に開示される従来の半導体レーザ装置におけるリッジ部構造では、リッジ幅が変化する領域が1箇所であるので、リッジ幅が変化することによる基本横モード光の導波路損失の増大も抑制されてしまう。同様に、高次横モード光に対する導波路損失の増大も抑制されてしまうので、85℃以上及び350mW以上の高温高出力動作時における高次横モード光の抑制効果が不十分となる。従って、従来の半導体レーザ装置では、高温高出力動作時における光軸の不安定化やFFP形状の乱れにつながるという問題がある。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、85℃以上350mW以上の高温高出力動作時においても、高いキンクレベル、低電流及び低電圧で動作可能であるのみならず、光軸が安定し、FFP形状の乱れも少ない半導体レーザ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る半導体レーザ装置は、前端面から波長λ1の光を発する第一半導体レーザと、前記前端面から波長λ1よりも大きい波長λ2の光を発する第二半導体レーザとが、同一の基板上に集積化された半導体レーザ装置であって、前記第一半導体レーザは、前記基板の上に形成された第一導電型の第一クラッド層と、前記第一クラッド層の上に形成された第一活性層と、前記第一活性層の上に形成され、共振器方向に対してストライプ幅が変化する領域を有する第一リッジ部を有する第二導電型の第二クラッド層と、を備え、前記第二半導体レーザは、前記基板の上に形成された第一導電型の第三クラッド層と、前記第三クラッド層の上に形成された第二活性層と、前記第二活性層の上に形成され、前記共振器方向に対してストライプ幅が変化する領域を有する第二リッジ部を有する第二導電型の第四クラッド層と、を備え、前記第一リッジ部は、前記前端面からの長さがLR1でストライプ幅が一定のWR1である第一フロント側領域と、前記前端面とは反対側の端面である後端面からの長さがLR3でストライプ幅が一定のWR3である第一リア側領域と、前記第一フロント側領域と前記第一リア側領域との間に位置する領域であって、前記前端面側から前記後端面側に向かってストライプ幅が減少するように構成された、少なくとも2つ以上の複数の第一半導体レーザストライプ幅変化領域と、前記複数の第一半導体レーザストライプ幅変化領域のうち前記前端面に最も近い領域である第一ストライプ幅変化領域に隣接し、ストライプ幅が一定のWR2である第一中間領域と、を備え、前記第二リッジ部は、前記前端面からの長さがLS1でストライプ幅が一定のWS1である第二フロント側領域と、前記後端面からの長さがLS3でストライプ幅が一定のWS3である第二リア側領域と、前記第二フロント側領域と前記第二リア側領域との間に位置する領域であって、前記前端面側から前記後端面側に向かってストライプ幅が減少するように構成された、少なくとも2つ以上の複数の第二半導体レーザストライプ幅変化領域と、前記複数の第二半導体レーザストライプ幅変化領域のうち前記前端面に最も近い領域である第二ストライプ幅変化領域に隣接し、ストライプ幅が一定のWS2である第二中間領域と、を備え、前記前端面の反射率をRfとし、前記後端面の反射率をRrとすると、Rf<Rr、WR1>WR2>WR3、WS1>WS2>WS3、LR1<LS1、LR3>LS3の関係を満たすものである。
この構成により、電流の利用効率が向上するので、動作電流値を低減することができるとともに、温度特性を向上することができる。
さらに、ストライプ幅が一定の第一中間領域及び第二中間領域を備えるので、共振器を伝搬する高次横モード光の伝搬を抑制することが可能となる。この結果、高次横モード光と基本横モード光との結合によるFFP形状の変形及び光軸の変動を抑制することができる。
さらに、発振波長の長い第二半導体レーザの方が、ストライプ幅が狭い領域における高次横モード光の伝搬損失が小さくなる。従って、同一共振器の状態では、LR1<LS1、LR3>LS3の関係を満たすように構成することにより、波長の長い第二半導体レーザにおける電流注入面積を大きくしたとしても、高次横モード光の伝搬を抑制することができ、第一半導体レーザ及び第二半導体レーザ共に、キンク発生を抑制しつつFFP形状の乱れ及び光軸の変動を抑制することができるとともに、素子抵抗を低減することができる。
さらに、本発明に係る半導体レーザ装置において、前記複数の第一半導体レーザストライプ幅変化領域及び前記複数の第二半導体レーザストライプ幅変化領域におけるストライプ幅は、前記前端面側から前記後端面側に向かって単調減少することが好ましい。
これにより、さらに導波路損失を低減することができる。
さらに、本発明に係る半導体レーザ装置において、前記複数の第一半導体レーザストライプ幅変化領域は、前記第一フロント側領域と前記第一リア側領域との間に2箇所のみ設けられており、前記複数の第二半導体レーザストライプ幅変化領域は、前記第二フロント側領域と前記第二リア側領域との間に2箇所のみ設けられていることが好ましい。
この構成により、ストライプ幅が減少する領域を3箇所以上設けた構造に対して、高次横モード光と基本横モード光との導波路損失の差を大きくすることができる。この結果、高次横モード光の伝搬を抑制する効果をより高めることが可能となる。このため、FFP形状の乱れ及び光軸の変動を一層抑制することができる。
さらに、本発明に係る半導体レーザ装置において、前記第一中間領域の共振器方向の長さをLR2とし、前記第二中間領域の共振器方向の長さをLS2とすると、LR2>LS2の関係を満たすことが好ましい。
この構成により、波長の短い第一半導体レーザにおけるリッジ部の方が第二半導体レーザよりも、ストライプ幅変化領域間の距離が長くなる。この場合、高次横モード光の伝搬を抑制しにくい短波長側の第一半導体レーザにおいては、2つのストライプ幅変化領域で散乱された高次横モード光の分離をより効果的に行うことができる。また、高次横モード光の伝搬を抑制しやすい長波長側の第二半導体レーザにおいては、第二中間領域の長さを短くするとともに、前端面側のストライプ幅を大きくして第二フロント側領域の面積を大きくすることができる。これにより、長波長側の第二半導体レーザのストライプ面積を大きくすることができるので、素子抵抗を小さくすることが可能となる。
さらに、本発明に係る半導体レーザ装置において、前記λ1が波長660nm帯であって、前記λ2が波長780nm帯であることが好ましい。
この構成により、2波長光ディスクシステムに適した、赤外レーザ及び赤色レーザを備える光源を実現することができる。
さらに、本発明に係る半導体レーザ装置において、前記第一リッジ部内外における実効屈折率差をΔN1とし、前記第二リッジ部内外における実効屈折率差をΔN2とすると、ΔN1>ΔN2の関係を満たすことが好ましい。
この構成により、長波長側の第二半導体レーザにおいて高次横モード光の伝搬をさらに抑制することが可能となる。
さらに、本発明に係る半導体レーザ装置において、WR1<WS1の関係を満たすことが好ましい。
この構成により、短波長側の第一半導体レーザの高次横モード光の伝搬を抑制することができるので、短波長側の第一半導体レーザ及び長波長側の第二半導体レーザ共に、FFP形状の乱れと光軸変動のない2波長半導体レーザを実現することができる。
さらに、本発明に係る半導体レーザ装置において、前記第一クラッド層、前記第二クラッド層、前記第三クラッド層及び前記第四クラッド層は、AlGaInP系材料で構成されており、それぞれのAl組成を、X1、X2、X3及びX4とすると、X1<X2、X3<X4、X3<X1の関係を満たすことが好ましい。
この構成により、短波長側の第一半導体レーザ及び長波長側の第二半導体レーザ共に、電流注入のためのストライプから光分布を基板側寄りに形成することが可能となる。この場合、光分布は、リッジ部形状の共振器方向の変化に起因する散乱の影響を受けにくくなるため、導波路損失を低減することが可能となる。この結果、動作電流値が小さくなり素子の発熱が抑制されるため、低消費電力化を実現することが可能となる。さらに、素子の発熱を抑制することが可能となる結果、ΔNの増大の抑制も可能となり、高次横モード光の伝搬を防ぐことができるため、短波長側及び長波長側の半導体レーザ共にキンクレベルが高く、FFP形状の乱れ及び光軸変動のない2波長半導体レーザを実現することができる。
本発明によれば、複数の半導体レーザが同一基板上にモノリシックに集積化された半導体レーザ装置において、電流の利用効率が向上し、動作電流値の低減と温度特性の向上を図ることができる。また、高次横モード光と基本横モード光の結合によるFFP形状の変形を防止することができる。また、キンク発生を抑制しつつFFP波形乱れと光軸変動の抑制と素子抵抗の低減を実現することが可能となる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の断面構造を示す模式図である。 図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の上面図である。 図3(a)は、赤色レーザのリッジ部におけるテーパ角と単位長さ当りの伝搬損失増加との関係を示す図であり、図3(b)は、赤外レーザのリッジ部におけるテーパ角と単位長さ当りの伝搬損失増加との関係を示す図である。 図4(a)は、リッジ部に第二中間領域を備えた本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置における赤外レーザのリッジ部のストライプ構造を示す図であり、図4(b)は、リッジ部に第二中間領域を備えていない比較例に係る半導体レーザ装置におけるリッジ部のストライプ構造を示す図である。 図5(a)は、図4(a)に示す本発明に係る半導体レーザ装置におけるストライプ構造において光が共振器を一周するときの様子を示す図であり、図5(b)は、図5(a)に示す本発明に係る半導体レーザ装置のストライプ構造において光が共振器を一周するときにおけるビームの伝搬の計算に用いたストライプ構造を示す図である。 図6(a)及び図6(b)は、図4(a)に示す本発明に係る半導体レーザ装置及び図4(b)に示す比較例に係る半導体レーザ装置において、前端面から伝搬した光が後端面で反射して再び前端面側へ伝搬するときにおける高次横モード光のビーム伝搬の計算結果を示す図である。 図7(a)及び図7(b)は、本発明に係る半導体レーザ装置及び比較例に係る半導体レーザ装置の赤外レーザにおける伝搬前後の高次横モード光の光分布を示す図である。 図8(a)及び図8(b)は、本発明に係る半導体レーザ装置及び比較例に係る半導体レーザ装置の赤外レーザにおける伝搬前後の基本横モード光の光分布を示す図である。 図9(a)及び図9(b)は、本発明に係る半導体レーザ装置及び比較例に係る半導体レーザ装置の赤色レーザにおける伝搬前後の高次横モード光の光分布を示す図である。 図10(a)及び図10(b)は、本発明に係る半導体レーザ装置及び比較例に係る半導体レーザ装置の赤色レーザにおける伝搬前後の基本横モード光の光分布を示す図である。 図11(a)〜図11(d)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置において、赤外レーザにおける高次横モード光、赤外レーザにおける基本横モード光、赤色レーザにおける高次横モード光、及び、赤色レーザにおける基本横モード光の放射損の計算結果を示す図である。 図12(a)及び図12(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置及び比較例に係る半導体レーザ装置の赤色レーザにおける室温連続発振状態でのFFPの光出力依存性及を示す図である。 図13(a)及び図13(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置及び比較例に係る半導体レーザ装置の赤外レーザにおける室温連続発振状態でのFFPの光出力依存性及を示す図である。 図14(a)及び図14(b)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置において、赤色レーザ及び赤外レーザにおける電流−光出力特性を示す図である。 図15(a)〜図15(d)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ装置において、赤外レーザにおける高次横モード光、赤外レーザにおける基本横モード光、赤色レーザにおける高次横モード光、及び、赤色レーザにおける基本横モード光の放射損の計算結果を示す図である。 図16(a)〜図16(d)は、本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ装置において、赤外レーザにおける高次横モード光、赤外レーザにおける基本横モード光、赤色レーザにおける高次横モード光、及び、赤色レーザにおける基本横モード光の放射損の計算結果を示す図である。 図17は、本発明の第4の実施形態に係る半導体レーザ装置の上面図である。 図18は、本発明の第5の実施形態に係る半導体レーザ装置の上面図である。 図19は、従来の2波長半導体レーザ装置の断面構造を模式的に示した図である。 図20は、従来の2波長半導体レーザ装置の上面図である。 図21は、従来の2波長半導体レーザ装置において1つのリッジ部のストライプ構造を示す図である。 図22は、半導体レーザ装置における活性層の動作キャリアのホールバーニングを説明するための図である。
以下、本発明の実施形態に係る半導体レーザ装置について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の断面構造を示す模式図である。なお、図1は、当該半導体レーザ装置を前端面側から見た図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置は、複数波長(ここでは2波長)にて発光可能な半導体レーザ装置であり、(100)面から[011]方向に10度傾けた面を主面とするn型GaAsからなる基板10上に、異なる波長をもって発光する二つの発光部として、赤色レーザ1と赤外レーザ2とが集積化されて構成されている。尚、基板10の裏面(赤色レーザ1が形成されている面とは反対側の面)には、第三電極であるn側電極33が形成されている。以下、赤色レーザ1及び赤外レーザ2の各構造について、詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る赤色レーザ1の構造について説明する。赤色レーザ1は、660nm帯の波長である波長λ1の光を発する第一半導体レーザであって、基板10上に、n型GaAsからなるn型バッファ層11(膜厚0.5μm)と、第一導電型の第一クラッド層であるn型AlGaInPからなるn型クラッド層12(膜厚2.0μm)と、第一活性層である歪量子井戸構造を有する活性層13と、第二導電型の第二クラッド層であるp型AlGaInPからなるp型クラッド層14と、p型GaInPからなるp型の保護層15(膜厚50nm)と、p型GaAsからなるp型コンタクト層16(膜厚0.4μm)とが、下からこの順に積層された構造を有する。
ここで、p型クラッド層14には、二つの溝部14aが形成されており、その間の部分がリッジ部40(リッジストライプ部)となっている。赤色レーザ1におけるリッジ部40は、半導体レーザ装置における第一リッジ部であって、後述するように、共振器方向に対してストライプ幅(リッジ幅)が変化する領域を有する。
また、p型の保護層15及びp型コンタクト層16は、p型クラッド層14のうち溝部14a以外の部分(リッジ部40上を含む)の上に積層されて形成されている。また、p型コンタクト層16上及び溝部14a内を覆うように、SiNからなる電流ブロック膜17が形成されている。電流ブロック膜17は、リッジ部40の側面が露出しないようにリッジ部40の側面を覆うように形成され、また、電流注入を行うためにリッジ部40の上方が開口するように形成されている。
更に、電流ブロック膜17上(リッジ部40上の開口上を含む)には、第一電極であるp側電極31が形成されている。赤色レーザ1を駆動するための電流は、p側電極31と、基板10の裏面に形成されたn側電極33とを通して流すことができる。
尚、p型クラッド層14において、リッジ部40の上端から活性層13に達するまでの距離を1.4μmとし、リッジ部40の下端から活性層13に達するまでの距離dp1を0.15μmとする。また、p側電極31の幅(赤色レーザ1の共振器長方向に対して垂直且つ基板10の上面に平行な方向の幅)をW1とする。
また、活性層13は、歪量子井戸活性層であり、図1に示す構造を有する。つまり、GaInPからなる3層のウェル層13w1、13w2及び13w3と、その間に各々挟まれるAlGaInPからなる2層のバリア層13b1及び13b2(膜厚はそれぞれ5nm)と、これらの計5層を挟むように上下に位置し且ついずれもAlGaInPからなる第一ガイド層13g1及び第二ガイド層13g2(膜厚50nm)とが積層された構造を有している。
このように構成された赤色レーザ1において、p型コンタクト層16から注入された電流は、電流ブロック膜17によりリッジ部40の部分のみに狭窄され、リッジ部40の下方に位置する部分の活性層13に集中して電流注入されることになる。この結果、レーザ発振に必要なキャリアの反転分布状態が数十mA程度の小さい注入電流によって実現される。
このように活性層13に注入されたキャリアの再結合により発光した光に対し、活性層13に対して垂直な方向については、n型クラッド層12及びp型クラッド層14によって光閉じ込めが行われる。これと共に、活性層13に対して水平な方向についての光閉じ込めは、電流ブロック膜17がn型クラッド層12及びp型クラッド層14よりも低い屈折率を有することによって行われる。
また、電流ブロック膜17は、レーザ発振光に対して透明であるため光吸収が無く、低損失の導波路を実現することができる。更に、リッジ部内外の実効屈折率差ΔNについて、dp1の大きさを制御することによって10-3のオーダーをもって精密に制御することができる。
このようなことから、赤色レーザ1は、光分布を精密に制御することが可能であると共に低作電流動作である高出力半導体レーザとなっている。
次に、本実施形態に係る赤外レーザ2の構造について説明する。赤外レーザ2は、波長λ1よりも大きい波長である780nm帯の波長λ2の光を発する第二半導体レーザであって、活性層の構造を除いて赤色レーザ1と同様の構成を有し、また、発光する波長を除いて同様に動作する。詳しくは以下に説明する。
赤外レーザ2は、赤色レーザ1と同じ基板10上に、n型GaAsからなるn型バッファ層21(膜厚0.5μm)と、第一導電型の第三クラッド層であるn型AlGaInPからなるn型クラッド層22(膜厚2.0μm)と、量子井戸構造を有する活性層23と、第二導電型の第四クラッド層であるp型AlGaInPからなるp型クラッド層24と、p型GaInPからなるp型の保護層25(膜厚50nm)と、p型GaAsからなるp型コンタクト層26(膜厚0.4μm)とが、下からこの順に積層された構造を有する。
ここで、p型クラッド層24においても二つの溝部24aが形成されており、その間の部分がリッジ部50(リッジストライプ部)となっている。赤外レーザ2におけるリッジ部50は、半導体レーザ装置における第二リッジ部であって、後述するように、共振器方向に対してストライプ幅(リッジ幅)が変化する領域を有する。
また、p型の保護層25及びp型コンタクト層26は、p型クラッド層24のうち溝部24a以外の部分の上に積層されて形成されている。また、p型コンタクト層26上及び溝部24a内を覆うように、SiNからなる電流ブロック膜27が形成されている。電流ブロック膜27は、リッジ部50の側面が露出しないようにリッジ部50の側面を覆うように形成されて、また、電流注入を行うためにリッジ部50の上が開口するように構成されている。
更に、電流ブロック膜27上(リッジ部50上の開口上を含む)には、第二電極であるp側電極32が形成されている。赤外レーザ2を駆動するための電流は、p側電極32と、基板10の裏面に形成されたn側電極33とを通して流すことができる。
尚、p型クラッド層24において、リッジ部50の上端から活性層23に達するまでの距離を1.4μmとし、リッジ部50の下端から活性層23に達するまでの距離dp2を0.2μmとする。また、p側電極32の幅(赤外レーザ2の共振器長方向に対して垂直且つ基板10の上面に平行な方向の幅)をW2とする。
また、活性層23は、量子井戸活性層であり、図1に示す構造を有する。つまり、GaAsからなる2層のウェル層23w1及び23w2と、その間に挟まれAlGaAsからなる1層のバリア層23b1と、これらの計3層を挟むように上下に位置し且ついずれもAlGaAsからなる第一ガイド層23g1及び第二ガイド層23g2とが積層された構造を有している。
このように構成された赤外レーザ2においても、赤色レーザ1の場合と同様に、p型コンタクト層26から注入された電流は、電流ブロック膜27によりリッジ部50の部分のみに狭窄される。このため、リッジ部50の下方に位置する部分の活性層23に集中して電流注入されることになり、レーザ発振に必要なキャリアの反転分布状態が数十mA程度の小さい注入電流によって実現される。
また、活性層23に注入されたキャリアの再結合により発生した光の閉じ込めについても、赤色レーザ1と同様に行われる。つまり、活性層23に対して垂直な方向については、n型クラッド層22及びp型クラッド層24により光閉じ込めが行われる。これと共に、活性層23に対して平行な方向については、電流ブロック膜27がn型クラッド層22及びp型クラッド層24よりも低い屈折率を有することにより光閉じ込めが行われる。
また、電流ブロック膜27は、やはりレーザ発振光に対して透明であるため光吸収が無く、低損失の導波路を実現することができる。また、赤色レーザ1と同様に、更に、リッジ部内外の実効屈折率差ΔNについて、dp2の大きさを制御することによって10-3のオーダーをもって精密に制御することできる。
このようなことから、赤外レーザ2は、光分布を精密に制御すると共に低電流動作である高出力半導体レーザとなっている。
また、例えば85℃の高温動作時において、高い放熱性を得るために、350mW以上の高出力レーザの場合には、共振器長を1500μm以上とすることが好ましい。共振器長を1500μm以上とすることによって動作電流密度を低減することができるので、放熱性を向上させることができる。具体的には、本実施形態に係る半導体レーザ装置において、赤色レーザ1及び赤外レーザ2の共振器長は共に1700μmとしている。
次に、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置におけるリッジ部40及び50
のストライプ構造について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の上面図である。
本実施形態に係る半導体レーザ装置におけるリッジ部40及び50のストライプ構造によれば、温度特性に優れ、キンクレベルが高く、動作電圧が小さいのみならず、FFP形状の乱れと光軸変動のない2波長半導体レーザを実現することができる。以下、本実施形態に係る半導体レーザ装置のリッジ部のストライプ構造について詳細に説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る半導体レーザ装置は、前端面10a(フロント端面)と後端面10b(リア端面)とを両端として光導波路が構成されている。前端面10aは、赤色レーザ1及び赤外レーザ2のレーザ光を取り出す側の共振器端面であり、前端面10aからは赤色レーザ1及び赤外レーザ2のレーザ光が出射する。一方、後端面10bは、共振器方向において前端面10aとは反対側の共振器端面であり、前端面10aと対向する。
本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置においては、前端面10aと後端面10bとには、所定の反射率を有する誘電体膜がコーティングされている。本実施形態において、前端面10aの反射率をRfとし、後端面10bの反射率をRrとすると、Rf<Rrとなるように誘電体膜がコーティングされている。
具体的には、赤色レーザ1及び赤外レーザ2のいずれにおいても、それぞれ赤色レーザ光及び赤外レーザ光に対し、共振器の前端面10aにおける反射率が7%、後端面10bにおける反射率が94%となるように、誘電体膜によるコーティングが行なわれている。
一般的に、高出力レーザでは、通常前端面側の反射率(Rf)は10%以下の低反射率、後端面側の反射率(Rr)は75%以上の高反射率となるように、誘電体膜がコーティングされている。これは、前端面側の光取り出し効率を向上させ、且つ前端面内部での光密度を低減し、レーザ端面の溶融破壊(COD)が発生する光出力レベルを向上させるためである。このとき、導波路の共振器方向の光密度は、前端面側の方が後端面側よりも高くなり、レーザ発振のために消費される活性層のキャリア数は、前端面側の方が後端面側よりもより多く必要となる。そのため、電流の注入としては、共振器内部の光密度が相対的に高い前端面側により多くの電流を注入したほうが、電流−光出力特性でのスロープ効率を向上させ、温度特性に優れた素子を得ることができる。ここで、スロープ効率とは、単位電流注入量(ΔI)当たりの光出力の増大量(ΔP)であるΔP/ΔIを意味する。
そこで、本実施形態に係る半導体レーザ装置では、図2に示すように、前端面側により多くの電流を注入するために、赤色レーザ1におけるリッジ部40及び赤外レーザ2におけるリッジ部50は、いずれも、リッジ幅が前端面10aから後端面10bに向けて除々に狭まるようなストライプ形状としている。
図2に示すように、赤色レーザ1におけるリッジ部40(第一リッジ部)は、前端面10aからのストライプ方向長さ(共振器方向長さ)がLR1で、ストライプ幅が一定のWR1である第一フロント側領域41と、後端面10bからのストライプ方向長さがLR3で、ストライプ幅が一定のWR3である第一リア側領域45とを備える。
さらに、赤色レーザ1におけるリッジ部40は、第一フロント側領域41と第一リア側領域45との間に位置する領域であって、前端面10a側から後端面10b側に向かってストライプ幅が単調減少するように構成された、少なくとも2つ以上の複数の赤色レーザストライプ幅変化領域を備える。本実施形態において、複数の赤色レーザストライプ幅変化領域は、2箇所設けられており、図2に示すように、前端面10a側の第一フロント側ストライプ幅変化領域42と、後端面10b側の第一リア側ストライプ幅変化領域44とからなる。
さらに、赤色レーザ1におけるリッジ部40は、複数の赤色レーザストライプ幅変化領域のうち前端面10aに最も近い領域である第一フロント側ストライプ幅変化領域42に隣接し、ストライプ方向長さがLR2で、ストライプ幅が一定のWR2である第一中間領域43を備える。本実施形態において、第一中間領域43は、第一フロント側ストライプ幅変化領域42に加えて、第一リア側ストライプ幅変化領域44にも隣接している。
このように本実施形態において、赤色レーザ1におけるリッジ部40は、図2に示すように、前端面10aから後端面10bに向かって、第一フロント側領域41と、第一フロント側ストライプ幅変化領域42と、第一中間領域43と、第一リア側ストライプ幅変化領域44と、第一リア側領域45とで構成されている。そして、第一フロント側ストライプ幅変化領域42は、前端面10a側が第一フロント側領域41に隣接するとともに、後端面10b側が第一中間領域43に隣接している。また、第一リア側ストライプ幅変化領域44は、前端面10a側が第一中間領域43に隣接するとともに、後端面10b側が第一リア側領域45に隣接している。
一方、赤外レーザ2におけるリッジ部50(第二リッジ部)は、前端面10aからのストライプ方向長さ(共振器方向長さ)がLS1で、ストライプ幅が一定のWS1である第二フロント側領域51と、後端面10bからのストライプ方向長さがLS3で、ストライプ幅が一定のWS3である第二リア側領域55とを備える。
さらに、赤外レーザ2におけるリッジ部50は、第二フロント側領域51と第二リア側領域55との間に位置する領域であって、前端面10a側から後端面10b側に向かってストライプ幅が単調減少するように構成された、少なくとも2つ以上の複数の赤外レーザストライプ幅変化領域を備える。本実施形態において、複数の赤外レーザストライプ幅変化領域は、2箇所設けられており、図2に示すように、前端面10a側の第二フロント側ストライプ幅変化領域52と、後端面10b側の第二リア側ストライプ幅変化領域54とからなる。
さらに、赤外レーザ2におけるリッジ部50は、複数の赤外レーザストライプ幅変化領域のうち前端面10aに最も近い領域である第二フロント側ストライプ幅変化領域52に隣接し、ストライプ方向長さがLS2で、ストライプ幅が一定のWS2である第二中間領域53を備える。本実施形態において、第二中間領域53は、第二フロント側ストライプ幅変化領域52に加えて、第二リア側ストライプ幅変化領域54にも隣接している。
このように本実施形態において、赤外レーザ2におけるリッジ部50は、図2に示すように、前端面10aから後端面10bに向かって、第二フロント側領域51と、第二フロント側ストライプ幅変化領域52と、第二中間領域53と、第二リア側ストライプ幅変化領域54と、第二リア側領域55とで構成されている。そして、第二フロント側ストライプ幅変化領域52は、前端面10a側が第二フロント側領域51に隣接するとともに、後端面10b側が第二中間領域53に隣接している。また、第二リア側ストライプ幅変化領域54は、前端面10a側が第二中間領域53に隣接するとともに、後端面10b側が第二リア側領域55に隣接している。
そして、本実施形態では、リッジ部40及び50のストライプ構造において、ストライプ幅(リッジ幅)は、WR1>WR2>WR3、WS1>WS2>WS3の関係を満たすように構成されている。これにより、光密度の高い前端面側への電流注入量を増大させることができるので、電流利用効率が向上し、動作電流値の低減を図ることができる。
そして、動作電流値が小さくなると、活性層の動作キャリア密度が小さくなるため、熱的に励起されたキャリアが活性層からクラッド層へ漏れることにより生じるキャリアのオーバーフローも抑制できるため、高温動作時において熱飽和する最大光出力(熱飽和レベル)も増大する。この結果、動作電流値が低減され、高い熱飽和レベルが得られ、温度特性が向上する。
また、電流−光出力特性における非線形な折れ曲がり(キンク)が生じると、一定の光出力でレーザを動作させるAPC(Auto Power Control)駆動が困難になり、光ディスクシステムの光源として安定な記録再生動作を得ることが困難になる。このため、光ディスク用の光源に使用される半導体レーザには高温動作時においても高いキンクレベルが要望される。
キンクの発生を抑制するためには、高次横モード光を抑制する必要がある。このためには、リッジ幅を狭くし、高次横モード光をカットオフすれば良い。しかしながら、リッジ幅を狭くしすぎると、電流注入面積が小さくなるため、素子抵抗が増大し動作電圧の増大につながる。動作電圧が増大すると、レーザ素子の発熱も大きくなり熱飽和レベルの低下をもたらす。さらに、レーザの駆動回路の最大駆動電圧にも制限があり、動作電圧は低い方が良い。
従って、本実施形態においては、赤色レーザ1及び赤外レーザ2のいずれについても、後端面側には、リッジ幅が狭く且つリッジ幅が一定の領域である第一リア側領域45及び第二リア側領域55が設けられており、これにより、高次横モード光を減衰させてキンクの発生を抑制している。
ここで、発振波長の短い赤色レーザ1の方が、発振波長の長い赤外レーザ2よりも導波路内波長当たりの等価的なストライプ幅が広いために、同じストライプ幅であれば、波長の短い赤色レーザ1の方が高次横モード光はカットオフされにくい。
さらに、CD−R用の光ピックアップに用いられる対物レンズの開口数(NA)は0.45程度であり、DVD用光ピックアップの光源に用いられる対物レンズのNAは0.6程度である。従って、CD−R用光ピックアップの光源となる赤外レーザにはNAの小さなレンズに効率的にレーザ光を照射する必要がある。このためには、赤外レーザのFFPの水平方向の半値全幅を狭くすることが有効である。
このように、光ピックアップ光学系に用いられるNAの違いから、光ディスク用の光源として用いられる赤外レーザの水平方向FFPの半値全幅は、赤色レーザの水平方向FFPの半値全幅よりも狭い方が好ましい。一般的に、赤色レーザの水平方向FFPの半値全幅は8°から10°となるように、また、赤外レーザの水平方向FFPの半値全幅は6°から8°となるようにして、キンクレベルの低下を防止しつつ所望のビームスポット径となるFFPを実現している。このためには、導波路のリッジ部内外の実効屈折率差(ΔN)は赤色レーザ1の実効屈折率差ΔN1の方が、赤外レーザ2の実効屈折率差ΔN2よりも大きくし、赤色レーザ1の方がリッジ部内へより強く閉じ込められるようにすることが好ましい。
本実施形態では、赤色レーザ1のdp1(リッジ部の下端から活性層に達するまでの距離)を0.15μmとし、赤外レーザ2のdp2を0.2μmとして、赤色レーザ1のΔN1を5.4×10-3、赤外レーザ2のΔN2を3.5×10-3として、ΔN1>ΔN2の関係を満たすように構成している。
また、ΔNが大きいと、高次横モード光はカットオフされにくくなるため、ストライプ幅の狭い第一リア側領域45のストライプ方向長さLR3を、第二リア側領域55のストライプ方向長さLS3よりも長くして、高次横モード光の減衰率を高めることが好ましい。なお、第一リア側領域45及び第二リア側領域55の長さが長くなりすぎると素子の直列抵抗の増大につながるために、あまりに長くすることは好ましくない。
従って、高次横モード光の減衰率を高めつつ、素子の直列抵抗の増大を防止するためには、第一リア側領域45のストライプ方向長さLR3(共振器方向長さ)を共振器全体の長さ(共振器長)の35%から55%の範囲とし、第二リア側領域55のストライプ方向長さLS3を共振器長の25%から45%の範囲として、LR3>LS3とすることが好ましい。さらに好ましくは、LR3の長さを共振器長の40%から50%の範囲とし、LS3の長さを共振器長の30%から40%の範囲として、LR3>LS3とすればよい。
また、本実施形態において、第一リア側領域45のストライプ幅WR3及び第二リア側領域55のストライプ幅WS3は、高次横モード光をカットオフさせるために、いずれも1.9μmとし、また、第一リア側領域45のストライプ方向長さLR3は735μmとし、第二リア側領域55のストライプ方向長さLS3は580μmとして、LR3及びLS3の共振器長に占める割合がそれぞれ、43%及び34%として、LR3>LS3の関係を成立させている。
次に、リッジ部40及び50のリッジの幅が徐々に狭くなるように構成された赤色レーザストライプ幅変化領域及び赤外レーザストライプ幅変化領域におけるストライプ幅の変化の大きさについて、図2を用いて説明する。
図2に示すように、赤色レーザストライプ幅変化領域及び赤外レーザストライプ幅変化領において、第一フロント側ストライプ幅変化領域42、第一リア側ストライプ幅変化領域44、第二フロント側ストライプ幅変化領域52、第二リア側ストライプ幅変化領域54のリッジ部のテーパ角をそれぞれ、θr1、θr2、θs1、θs2とする。リッジ部のテーパ角が大きいとテーパ領域における基本横モード光の放射損失が大きくなり、素子のスロープ効率低下につながる。逆に、テーパ角が小さいと基本横モード光に加えて、高次横モード光の放射損失も小さくなり、高次横モード光が伝搬しやすくなる。高次横モード光が伝搬するとキンクの発生につながるのみならず、高次横モード光と基本横モード光とが同時に導波し、導波路を伝搬する光分布が変形してしまう。この結果、FFP波形の変形や、動作温度や動作光出力変化に対する光軸の変動につながる。従って、テーパ角は、基本横モード光の放射損失の大きな増大を招かない範囲で、高次横モード光の放射損失を増大させるように設定することが効果的である。
また、赤色レーザ1の前端面10aにおけるストライプ幅WR1及び赤外レーザ2の前端面10aにおけるストライプ幅WS1は、WR1<RS1の関係を満たすように構成されており、本実施形態では、それぞれ3.25μm、4μmとしている。これは、好適な水平方向FFPの半値全幅は赤色レーザ1よりも赤外レーザ2の方が狭いことに加え、電流注入面積を可能な限り大きくして赤外レーザ2の直列抵抗を低減するためである。
ここで、赤色レーザ1のリッジ部40及び赤外レーザ2のリッジ部50におけるテーパ角に対する単位長さ当たりの導波路損失増大量の計算結果について、図3(a)及び図3(b)を用いて説明する。図3(a)は、赤色レーザのリッジ部におけるテーパ角と単位長さ当りの伝搬損失増加との関係を示す図であり、図3(b)は、赤外レーザのリッジ部におけるテーパ角と単位長さ当りの伝搬損失増加との関係を示す図である。なお、図3(a)では、ストライプ幅WR1は3.25μmとし、図3(b)では、ストライプ幅WS1は4μmとした。
図3(a)及び図3(b)に示すように、導波路損失の増大量はΔNが小さい方が大きくなる。これはΔNが小さい方が、光分布がリッジ部の外へ広がり、共振器方向に対するストライプ幅の変化による散乱の影響を受けやすくなるからである。
ここで、図3(a)及び図3(b)の計算結果より、テーパ角の大きさは、赤色レーザ1においては0.6°以下とし、赤外レーザ2においては0.45°以下とすることにより、ΔN1が5×10-3以上の赤色レーザ1と、ΔN2が3×10-3以上の赤外レーザ2とにおいて、単位長さ当たりの導波路損失の増大量が0.001cm-1以下とすることができる。
この場合、第一フロント側ストライプ幅変化領域42、第一リア側ストライプ幅変化領域44、第二フロント側ストライプ幅変化領域52及び第二リア側ストライプ幅変化領域54のそれぞれの長さを150μm以下とすることにより、導波路損失の増大は2つのストライプ幅変化領域合計で0.3cm-1以下とすることができる。すなわち、導波路損失の増大は、第一フロント側ストライプ幅変化領域42及び第一リア側ストライプ幅変化領域44の合計で0.3cm-1以下、また、第二フロント側ストライプ幅変化領域52及び第二リア側ストライプ幅変化領域54の合計で0.3cm-1以下とすることができる。これにより、共振器全体の導波路損失は、フリーキャリア吸収損失、散乱損失、ミラー損失を合わせて10cm-1程度となるので、リッジ部におけるテーパ構造による導波路放射損失の増大分を0.3cm-1以下に抑えることができれば、共振器全体の導波路損失の増大を3%程度の小さな範囲に抑えることが可能となる。
本実施形態では、赤色レーザ1における第一フロント側ストライプ幅変化領域42のストライプ方向長さLRF1及び第一リア側ストライプ幅変化領域44のストライプ方向長さLRF2は、いずれも50μmとし、また、赤外レーザ2における第二フロント側ストライプ幅変化領域52のストライプ方向長さLSF1及び第二リア側ストライプ幅変化領域54のストライプ方向長さLSF2は、いずれも100μmとしている。このとき、赤色レーザ1におけるテーパ角θr1及びθr2は、いずれも0.39°となり、また、赤外レーザ2におけるテーパ角θs1及びθs2は、いずれも0.3°となり、ストライプ幅変化領域における放射損の増大は、赤色レーザ1及び赤外レーザ2のいずれも0.1cm-1以下の大きさに抑えることができる。
ここで、赤色レーザ1におけるテーパ角θr1及びθr2を、赤外レーザ2におけるテーパ角θs1及びθs2よりも大きくすることにより、ΔNが相対的に大きく高次横モード光が伝搬しやすい赤色レーザ1におけるストライプ幅変化領域の高次横モード光の放射損増大効果を、赤外レーザ2におけるストライプ幅変化領域の高次横モード光の放射損増大効果よりも大きくすることができる。
なお、テーパ角θr1とテーパ角θr2とは、あるいは、テーパ角θs1とテーパ角θs2とは、それぞれ互いに同じ大きさである必要はない。ここで、テーパ角θr1とテーパ角θr2との平均値をθraveとし、テーパ角θs1とテーパθs2との平均値をθsaveとした場合、テーパ角θr1、θr2、θs1及びθs2と、θrave及びθsaveは、θr1≦0.6°、θr2≦0.6°、θs1≦0.45°、θs2≦0.45°、θrave>θsaveの関係を満たすようにして、第一フロント側ストライプ幅変化領域42、第一リア側ストライプ幅変化領域44、第二フロント側ストライプ幅変化領域52及び第二リア側ストライプ幅変化領域54のそれぞれの長さを150μm以下とすればよい。これにより、基本横モード光の導波路損失の大きな増大を招くことなく、ΔNが相対的に大きく高次横モード光が伝搬しやすい赤色レーザ1でのストライプ幅変化領域の高次横モード光の放射損増大効果を、赤外レーザよりも大きくすることが可能となる。この結果、素子の温度特性の低下を招くことなく、キンクの発生を抑制することが可能となる。
次に、赤外レーザ2のリッジ部50のストライプ構造を例にとって、同一の共振器長の場合において、リッジ幅が一定の中間領域を設けた場合の本発明に係る半導体レーザ装置と、当該中間領域を設けない場合の比較例に係る半導体レーザ装置との違いについて、図4〜図8を用いて説明する。
まず、上記本発明に係る半導体レーザ装置と上記比較例に係る半導体レーザ装置におけるリッジ部のストライプ構造について、図4を用いて説明する。図4(a)は、リッジ部に第二中間領域53を備えた本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置における赤外レーザ2のリッジ部50のストライプ構造を示す図である。一方、図4(b)は、リッジ部に第二中間領域を備えていない比較例に係る半導体レーザ装置におけるリッジ部のストライプ構造を示す図である。
図4(b)に示すように、比較例に係る半導体レーザ装置のリッジ部は、テーパストライプ構造であり、ストライプ幅変化領域が1箇所のみで構成されている。この場合、徐々にストライプ幅が変化する領域が1箇所であるため、基本横モード光のテーパ領域における放射損の発生も小さくなるが、高次横モード光のテーパ領域における放射損の発生も同時に小さくなる。
そこで、図5(a)に示すように、高次横モード光において共振器を一周した場合に再びもとの位置に帰還する高次横モード光の割合(FB)を考える。ここで、図5(a)は、図4(a)に示す本発明に係る半導体レーザ装置におけるストライプ構造において光が共振器を一周するときの様子を示す図である。図5(b)は、図5(a)に示す本発明に係る半導体レーザ装置のストライプ構造において光が共振器を一周するときにおけるビームの伝搬の計算に用いたストライプ構造を示す図である。図5(b)において、光路1とは、前端面10aから後端面10bへのビームの伝搬を示し、光路2とは、後端面10bから前端面10aへのビームの伝搬を示している。なお、図4(b)に示す比較例に係る半導体レーザ装置についても同様に考えることができる。
そして、図6に、図4(a)及び図4(b)に示される本発明及び比較例に係る半導体レーザ装置におけるビーム伝搬の計算結果を示す。図6(a)及び図6(b)は、それぞれ、図4(a)に示す本発明に係る半導体レーザ装置及び図4(b)に示す比較例に係る半導体レーザ装置において、前端面から伝搬した光が後端面で反射して再び前端面側へ伝搬するときにおける高次横モード光のビーム伝搬の計算結果を示す図である。なお、図6(a)及び図6(b)では、図5(b)と同様に、光路1とは、前端面10aから後端面10bへのビームの伝搬を示し、光路2とは、後端面10bから前端面10aへのビームの伝搬を示している。
また、図6(a)及び図6(b)における計算では、後端面10bの端面反射率は100%として計算を行っている。さらに、図6(a)における計算では、本発明に係る半導体レーザ装置におけるリッジ部のストライプ構造において、WS1を4.0μm、WS2を2.95μm、WS3を1.9μm、LS1を570μm、LSF1を100μm、LS2を350μm、LSF2を100μm、LS3を580μmとしている。また、図6(b)における計算では、図4(b)に示す比較例に係る半導体レーザ装置において、前端面側の直線領域長(LS1)を570μm、後端面側の直線領域長(LS3)を580μmとし、その間の領域を直線状にストライプ幅を変化させている。また、前端面のストライプ幅WS1を4.0μm、後端面のストライプ幅WS3を1.9μmとしている。
図6(a)及び図6(b)に示すように、図6(a)に示される本発明に係る半導体レーザ装置(本発明)と、図6(b)に示される比較例に係る半導体レーザ装置(比較例)とを比べると、本発明に係る半導体レーザ装置の方が、光路2の領域において、リッジ部(リッジストライプ部)近傍の高次横モード光の光分布強度が小さくなり、共振器を1周期伝搬後には、高次横モード光の光分布が、よりリッジ部の外側に放射されていることが分かる。
次に、図6(a)及び図6(b)の計算で用いた本発明に係る半導体レーザ装置及び比較例に係る半導体レーザ装置におけるストライプ構造において、共振器1往復(光路1と光路2)の伝搬前後における高次横モード光の光分布の変化を計算し、その計算結果を図7(a)及び図7(b)にそれぞれ示す。図7(a)は、本発明に係る半導体レーザ装置の赤外レーザにおける伝搬前後の高次横モード光の光分布を示す図である。また、図7(b)は、比較例に係る半導体レーザ装置の赤外レーザにおける伝搬前後の高次横モード光の光分布を示す図である。
図7(a)及び図7(b)に示すように、高次横モード光は、共振器1往復分の伝搬前後において、その分布形状は大きく変化し、図7(a)に示すように、本発明に係る半導体レーザ装置では、伝搬後において、伝搬前の光分布の94%の強度がリッジ部の外に放射されていることが分かる。一方、図7(b)に示すように、比較例に係る半導体レーザ装置では、伝搬後において、伝搬前の光分布の80%の強度がリッジ部の外に放射されていることが分かる。
この結果から、ストライプ幅一定の中間領域が存在せずストライプ幅変化領域が1箇所のみのリッジ部構造である比較例に係る半導体レーザ装置では、高次横モード光は共振器1往復後に80%の放射損失を受けたが、ストライプ幅一定の中間領域を有するとともにストライプ幅変化領域が2箇所有するリッジ部構造である本発明に係る半導体レーザ装置では、共振器1往復後における高次横モード光はさらに大きな94%の放射損が生じていることが分かる。
すなわち、本発明に係る半導体レーザ装置は、比較例に係る半導体レーザ装置では1箇所であったテーパ領域を2箇所に分割したリッジ部を有しているので、比較例に係る半導体レーザ装置と比較して、共振器を一周した場合に再びもとの位置に帰還する高次横モード光の割合(FB)を小さくすることができるということが分かる。
次に、図6(a)及び図6(b)の計算で用いた本発明に係る半導体レーザ装置及び比較例に係る半導体レーザ装置の赤外レーザにおけるストライプ構造において、共振器1往復(光路1と光路2)の伝搬前後における基本横モード光の光分布の変化を計算し、その計算結果を図8(a)及び図8(b)にそれぞれ示す。図8(a)は、本発明に係る半導体レーザ装置の赤外レーザにおける伝搬前後の基本横モード光の光分布を示す図である。また、図8(b)は、比較例に係る半導体レーザ装置の赤外レーザにおける伝搬前後の基本横モード光の光分布を示す図である。
図8(a)及び図8(b)に示すように、基本横モード光は、共振器1往復分の伝搬前後において、その分布形状はほとんど変化しないことが分かる。図8(a)に示すように、本発明に係る半導体レーザ装置でも、図8(b)に示すように、比較例に係る半導体レーザ装置でも、伝搬後において、伝搬前の光分布の1%程度のみの強度がリッジ部の外へ放射されていることが分かる。
以上、図4〜図8の結果より、赤外レーザにおけるリッジ部のストライプ構造として、図4(a)に示すような本発明に係る半導体レーザ装置のストライプ構造を用いることにより、図4(b)に示すようなテーパストライプ構造のリッジ部である比較例に係る半導体レーザ装置と比較して、基本横モード光の放射損失を大きく増大させることなく、高次横モード光の放射損失をより大きくすることができるということが分かる。
次に、赤色レーザについても同様に、リッジ幅が一定の中間領域を設けた場合の本発明に係る半導体レーザ装置と、当該中間領域を設けない場合の比較例に係る半導体レーザ装置との違いについて、図9及び図10を用いて説明する。
赤色レーザにおいても、図4〜図6に示した計算と同様の高次横モード光のビーム伝搬の計算を行い、共振器1往復(光路1と光路2)の伝搬前後における高次横モード光の光分布の変化を計算し、その計算結果を図9(a)及び図9(b)に示す。図9(a)は、本発明に係る半導体レーザ装置の赤色レーザにおける伝搬前後における高次横モード光の光分布を示す図である。また、図9(b)は、比較例に係る半導体レーザ装置の赤色レーザにおける伝搬前後における高次横モード光の光分布を示す図である。
なお、赤色レーザに関する本発明に係る半導体レーザ装置と比較例に係る半導体レーザ装置におけるリッジ部とのストライプ構造については、図4と同様である。すなわち、赤色レーザにおいても、本発明に係る半導体レーザ装置は、ストライプ幅一定の中間領域を有し、ストライプ幅変化領域を2箇所有するリッジ部を備える。また、比較例に係る半導体レーザ装置は、ストライプ幅一定の中間領域が存在せず、ストライプ幅変化領域が1箇所のみのリッジ部を備える。また、以下の計算は、図5(a)及び図5(b)と同様にして行う。
また、図9(a)における計算では、本発明に係る半導体レーザ装置におけるリッジ部のストライプ構造において、LR1を400μm、LRF1を50μm、LR2を365μm、LRF2を50μm、LR3を735μmとし、WR1を3.25μm、WR2を2.575μm、WR3を1.9μmとしている。また、図9(b)における計算では、比較例に係る半導体レーザ装置において、前端面側の直線領域長(LR1)を400μm、後端面側の直線領域長(LR3)を735μmとし、その間の領域を直線状にストライプ幅を変化させている。また、前端面のストライプ幅WR1を3.25μm、後端面のストライプ幅WR3を1.9μmとしている。
図9(a)及び図9(b)に示すように、高次横モード光は、共振器1往復分の伝搬前後において、その分布形状は大きく変化し、図9(a)に示すように、本発明に係る半導体レーザ装置では、伝搬後において、伝搬前の光分布の60%の強度がリッジ部の外で放射されていることが分かる。一方、図9(b)に示すように、比較例に係る半導体レーザ装置では、伝搬後において、伝搬前の光分布の48%の強度がリッジ部の外で放射されていることが分かる。
この結果から、比較例に係る半導体レーザ装置では、高次横モード光は共振器1往復後に48%の放射損失を受けたが、本発明に係る半導体レーザ装置では、共振器1往復後における高次横モード光はさらに大きな60%の放射損が生じていることが分かる。
すなわち、赤色レーザについても、本発明に係る半導体レーザ装置は、比較例に係る半導体レーザ装置と比較して、共振器を一周した場合に再びもとの位置に帰還する高次横モード光の割合(FB)を小さくすることができる。
次に、図9(a)及び図9(b)の計算で用いた本発明に係る半導体レーザ装置及び比較例に係る半導体レーザ装置におけるストライプ構造において、共振器1往復(光路1と光路2)の伝搬前後における基本横モード光の光分布の変化を計算し、その計算結果を図10(a)及び図10(b)にそれぞれ示す。図10(a)は、本発明に係る半導体レーザ装置の赤色レーザにおける伝搬前後の基本横モード光の光分布を示す図である。また、図10(b)は、比較例に係る半導体レーザ装置の赤色レーザにおける伝搬前後の基本横モード光の分布を示す図である。
図10(a)及び図10(b)に示すように、基本横モード光は、共振器1往復分の伝搬前後において、その分布形状はほとんど変化しないことが分かる。図10(a)に示すように、本発明に係る半導体レーザ装置でも、図10(b)に示すように、比較例に係る半導体レーザ装置でも、伝搬後において、伝搬前の光分布の2%程度のみの強度がリッジ部の外へ放射されていることが分かる。
以上、図9及び図10の結果より、リッジ部のストライプ構造として、本発明に係る半導体レーザ装置におけるストライプ構造を用いることにより、赤色レーザにおいても、比較例に係る半導体レーザ装置と比較して、基本横モード光の放射損失を大きく増大することなく、高次横モード光の放射損失をより大きくすることができることが分かる。
この様に、図2に示される本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置は、赤色レーザ1のリッジ部40も赤外レーザ2のリッジ部50も、一定幅の中間領域と2箇所のストライプ幅変化領域を有するストライプ構造を備えるので、テーパストライプ構造の比較例に係る半導体レーザ装置と比較して、基本横モード光の放射損失をほぼ一定に保ちつつ、高次横モード光の放射損失を大きくし、高次横モード光の伝搬をより抑制することが可能である。
次に、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置のリッジ部のストライプ構造において、リッジ幅が一定の領域のうちリッジ幅が最も広い領域である第一フロント側領域41及び第二フロント側領域51におけるストライプ方向長さLR1及びLS1について説明する。
LR1及びLS1を長くすると、電流注入のストライプ面積が大きくなるため、素子の直列抵抗が小さくなり、動作電圧を低減することができる。動作電圧が低くなると、素子の低消費電力化に有効であり、高温動作時においても素子の発熱を抑制することができる。この結果、温度特性に優れた半導体レーザを得ることができる。但し、上記のLR1及びLS1が長くなりすぎると、高次横モード光の放射損が小さくなり、基本横モード光と結合する結果、FFP形状の乱れや光軸変動につながる。
従って、高次横モード光の減衰効果を高めつつ、素子の直列抵抗を低減するためには、上記のLR1及びLS1の長さは、FFP形状の乱れや光軸変動が生じない程度に、可能な限り長くすることが好ましい。この場合、第一リア側領域45及び第二リア側領域55におけるストライプ方向長さLR3及びLS3も影響すると考えられる。
そこで、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置におけるリッジ部のストライプ構造の共振器長が1700μmの場合について、種々のLS3やLR3の値に対し、LS1やLR1を変化させた場合の高次横モード光と、基本横モード光の放射損の見積もりを行い、LS1とLR1に対し、必要な長さの見積もりを行った。その計算結果を図11(a)〜図11(d)に示す。図11(a)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の赤外レーザにおける高次横モード光の放射損の計算結果を示す図であり、図11(b)は、同半導体レーザ装置の赤外レーザにおける基本横モード光の放射損の計算結果を示す図である。また、図11(c)は、同半導体レーザ装置の赤色レーザにおける高次横モード光の放射損の計算結果を示す図であり、図11(d)は、同半導体レーザ装置の赤色レーザにおける基本横モード光の放射損の計算結果を示す図である。
まず、高次横モード光に対する計算結果について、図11(a)及び図11(c)を用いて説明する。なお、図11(a)及び図11(c)において、破線で示す線は、前述のように、図4(b)に示すようなテーパストライプ構造を有する比較例に係る半導体レーザ装置における高次横モード光の放射損の計算結果を示している。
図11(a)及び図11(c)に示すように、LS3及びLR3を長くすると、赤色レーザ及び赤外レーザのいずれにおいても、高次横モード光の放射損が増大することが分かる。これは、ストライプ幅の狭い第一リア側領域45及び第二リア側領域55では、高次横モード光がリッジ部のストライプ外へ放射されやすくなり、放射損が大きくなるためである。
また、図11(a)に示す赤外レーザと図11(b)に示す赤色レーザとを比べると、赤色レーザの方が赤外レーザよりも、高次横モード光の放射損が小さいことが分かる。これは、赤色レーザの方が赤外レーザよりもリッジ部内外の実効屈折率差(ΔN)が大きく、ストライプ幅の狭い領域において高次横モード光が伝搬しやすくなり、放射損が相対的に小さくなるためである。
また、図11(a)及び図11(c)に示すように、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置と、ストライプ幅が変化する領域が一箇所のみからなる比較例に係る半導体レーザ装置とについて、同じLS1、同じLS3、同じLR1又は同じLR3で比べると、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の方が、比較例に係る半導体レーザ装置よりも、高次横モード光の放射損を大きくできることが分かる。
次に、基本横モード光に対する計算結果について、図11(b)及び図11(d)を用いて説明する。図11(b)に示すように、赤外レーザにおける基本横モード光については、LS1を200μmから600μmまで、LS3を380μmから780μmまで変化させても、放射損は3%程度以内の小さな値に抑制することが可能であることが分かる。また、図11(d)に示すように、赤色レーザにおける基本横モード光については、LR1を200μmから600μmまで、LS3を380μmから780μmまで変化させても、放射損は4%程度以内の小さな値に抑制することが可能であることが分かる。
ここで、リッジ部におけるストライプ幅が最も広い領域である第一フロント側領域41と第二フロント側領域51におけるストライプ方向長さLR1及びLS1について考える。
LR1及びLS1を長くすると、リッジ部のストライプの面積が大きくなるため、素子の直列抵抗を小さくすることができ、動作電圧を低減することができる。しかしながら、LR1及びLS1を長くすることにより、図11(a)〜(d)に示すように、基本横モード光及び高次横モード光の放射損失も小さくなる。高次横モード光の放射損が小さくなると、導波路を伝搬する高次横モード光と基本横モード光とが結合し、FFPの変形及び光軸の変動につながる。従って、あまりにLR1及びLS1を長くすることは好ましくない。
逆に、LR1及びLS1を短くすると、リッジ部のストライプの面積が小さくなるため、素子の直列抵抗が大きくなり、動作電圧の増大や高温動作時の動作電流値の増大、熱飽和レベルの低下といった高温特性の劣化につながる。
従って、LR1とLS1とは、高次横モード光の放射損をできるだけ大きくしつつ、素子の直列抵抗の増大による高温特性の劣化を招かない範囲に設定する必要がある。
ここで、共振器長が1700μmの場合の赤外レーザにおいては、LS3が380μmから780μmの範囲で、LS1を200μmから600μmまで変化させた場合、図11(a)に示すように、高次横モード光の放射損は90%以上の大きな値となり、また、図11(b)に示すように、基本横モード光の放射損は3%以下の小さな値を得ることが可能となる。従って、赤外レーザについては、LS1を共振器長の12%から35%の範囲では、高次横モード光に対しては90%以上の放射損、また、基本横モード光に対しては3%以下の小さな放射損を有する導波路を得ることができる。
一方、赤色レーザでは、赤外レーザと比較して高次横モード光の放射損が小さくなるために、LR1の長さを短くする必要がある。高次横モード光の放射損は、大きくしたほうが高次横モード光の伝搬を抑制することができ、FFPの乱れや光軸の変動を抑制することが可能となる。
前述のように、高次横モード光の減衰率を高めつつ、素子の直列抵抗の増大を防止するためには、LR3の長さを共振器長の35%から55%の範囲、つまり、共振器長が1700μmの場合においては、595μm以上、935μm以下にする必要がある。
ここで、LR3が595μmにおいて高次横モード光の放射損を40%以上とするためには、LR1を350μm以下、つまり、LR1を共振器長の21%以下とする必要がある。また、LR1を最大600μmまで大きくしても、高次横モード光の放射損を40%以上とするためには、LR3の大きさは650μm以上、つまり、LR3を共振器長の大きさの38%以上とする必要がある。
さらに、赤外レーザの高次横モード光の放射損は、LS1が600μm以下(つまり共振器長の35%以下)の長さでは、LS3を380μmから780μmの範囲(つまりLS3が共振器長の22%以上46%以下の範囲)では、放射損の大きさは90%以上となる。
そこで、LR1<LS1≦600μmの関係が成立するように、LR1及びLS1を決めることにより、赤色レーザ及び赤外レーザのいずれにおいても、リッジ部のストライプ面積を、可能な限り大きくすることができる。この結果、赤色レーザ及び赤外レーザ共に、可能な限り素子抵抗が低減され、動作電圧が小さくなるために、高い熱飽和レベル及び低い高温動作電流値を実現することができる。さらに、上記関係を満たすように、LR1及びLS1を決めることにより、赤色レーザ及び赤外レーザ共に、高次横モード光の放射損失を可能な限り大きくできるため、FFP乱れ及び光軸変動を低減することができ、また、高いキンクレベルを得ることが可能となる。
具体的に、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置における赤外レーザの構造では、図11(a)の白丸で表示する値、すなわち、LS1は570μmとし、LS3は580μmとしている。また、その他の領域については、LSF1は100μm、LS2は350μm、LSF2は100μmとしている。また、WS1は4.0μm、WS2は2.95μm、WS3は1.9μmとした。
赤外レーザにおけるリッジ部の構造をこのように構成することにより、高次横モード光の放射損失は94%となり、高い放射損失の値を得ることができるとともに、基本横モード光の放射損失は1.5%となり、低い放射損失の値を得ることができる。
また、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置における赤色レーザの構造では、図11(c)の白丸で表示する値、すなわち、LR1は400μmとし、LR3は735μmとしている。また、その他の領域については、LRF1は50μm、LR2は365μm、LRF2は50μmとし、さらに、WR1は3.25μm、WR2は2.575μm、WR3は1.9μmとしている。
赤色レーザにおけるリッジ部の構造をこのように構成することにより、高次横モード光の放射損失は60%となり、高い放射損失の値を得ることができるとともに、基本横モード光の放射損失は3%となり、低い放射損失の値を得ることができる。
なお、このように構成される本実施形態に係る半導体レーザ装置におけるリッジ部のストライプ構造においては、LR1<LS1、LR3>LS3の関係が成立している。
次に、上記の本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置において、室温連続発振状態でのFFPの光出力依存性及について、図12及び図13を用いて説明する。
まず、赤色レーザにおけるFFPの光出力依存性及について、図12を用いて説明する。図12(a)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の赤色レーザにおける室温連続発振状態でのFFPの光出力依存性及を示す図である。また、図12(b)は、図4(b)に示す構造のリッジ部を備える比較例に係る半導体レーザ装置の赤色レーザにおける室温連続発振状態でのFFPの光出力依存性及を示す図である。なお、図12(b)では、図4(b)に示す赤外レーザを赤色レーザとして用いたときに、同図に示すLS1をLR1として400μmとし、LS3をLR3として735μmとし、LR1とLR3との間の領域は直線状にストライプ幅を変化させたものを用いた。また、前端面におけるストライプ幅は3.25μm、後端面におけるストライプ幅は1.9μmとしている。
図12(a)に示すように、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の赤色レーザでは、FFPの形状が光出力の変化に対して対称性が良く乱れの少ない特性となっていることがわかる。一方、図12(b)に示すように、比較例に係る半導体レーザ装置の赤色レーザでは、FFPの形状は、光出力が100mW程度になると非対称性が生じ、光軸が若干変動していることが分かる。
このように、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の赤色レーザでは、リッジ部の構成を上記のストライプ構造とすることにより、FFPの対象性を向上させることができる。これは、高次横モード光の減衰を大きくすることができ、高次横モード光と基本横モード光との結合が抑制されたからであると考えられる。
次に、赤外レーザにおけるFFPの光出力依存性及について、図13を用いて説明する。図13(a)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の赤外レーザにおける室温連続発振状態でのFFPの光出力依存性及を示す図である。また、図13(b)は、図4(b)に示す構造のリッジ部を備える比較例に係る半導体レーザ装置の赤色レーザにおける室温連続発振状態でのFFPの光出力依存性及を示す図である。なお、図13(b)では、図4(b)に示すLS1を570μmとし、LS3を580μmとし、LS1とLS3との間の領域は直線状にストライプ幅を変化させたものを用いた。また、前端面におけるストライプ幅WS1は4.0μm、後端面におけるストライプ幅WS3は1.9μmとしている。
図13(a)に示すように、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の赤外レーザでは、FFPの形状が光出力の変化に対して対称性が良く乱れの少ない特性となっていることがわかる。一方、図13(b)に示すように、比較例に係る半導体レーザ装置の赤外レーザでは、FFPの形状は、光出力が175mW程度になると非対称性が生じ、光軸が若干変動していることが分かる。
このように、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の赤外レーザでは、リッジ部の構成を上記のストライプ構造とすることにより、赤色レーザと同様に、FFPの対象性を向上させることができる。これは、高次横モード光の減衰を大きくすることができ、高次横モード光と基本横モード光との結合が抑制されたとからであると考えられる。
次に、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置における電流−光出力特性について、図14を用いて説明する。図14(a)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の赤色レーザにおける電流−光出力特性を示す図であり、図14(b)は、同半導体レーザ装置の赤外レーザにおける電流−光出力特性を示す図である。なお、図14(a)及び図14(b)では、85℃、50ns、パルスデューティ比40%動作時における電流−光出力特性を示している。
図14(a)に示すように、本実施形態に係る赤色レーザは、光出力400mWまでキンクが発生しないことが分かる。また、本実施形態に係る赤外レーザは、電流−光出力特性の線形がきわめて良好であり、500mW以上のキンクレベルであることが分かる。
なお、本実施形態において、赤色レーザ1のリッジ部40における第一中間領域43の共振器方向の長さLR2と、赤外レーザ2のリッジ部50における第二中間領域53の共振器方向の長さLS2とは、LR2>LS2の関係を満たすように構成することが好ましい。
これにより、波長の短い赤色レーザ1におけるリッジ部40の方が赤外レーザ2よりも、ストライプ幅が一定の中間領域の長さ、すなわち、ストライプ幅変化領域間の距離が長くなる。具体的には、赤色レーザ1のリッジ部40における第一フロント側ストライプ幅変化領域42と第一リア側ストライプ幅変化領域44との間の距離が、赤外レーザ2のリッジ部50における第二フロント側ストライプ幅変化領域52と第二リア側ストライプ幅変化領域54との間の距離よりも長くなる。この場合、高次横モード光の伝搬を抑制しにくい短波長側の赤色レーザ1においては、2つのストライプ幅変化領域(第一フロント側ストライプ幅変化領域42と第一リア側ストライプ幅変化領域44)の間で散乱された高次横モード光の分離をより効果的に行うことができる。
さらに、この場合、高次横モード光の伝搬を抑制しやすい長波長側の赤外レーザ2においては、第二中間領域53の長さを短くするとともに、前端面10a側のストライプ幅を大きくして第二フロント側領域51の面積を大きくすることができる。これにより、長波長側の赤外レーザ2のストライプ面積を大きくすることができるので、素子抵抗を小さくすることが可能となる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ装置について説明する。
本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ装置は、基本的には、上述の本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置と同様の構成であり、第1の実施形態の構造に対して共振器長を短くし、共振器長を1500μmとしたものである。従って、本実施形態に係る半導体レーザ装置の断面構造は、図1に示す構造と同様であり、また、リッジ部のストライプ構造は図2に示す構造と同様であるので、本実施形態では、図1及び図2に示す符号を用いて説明を行う。なお、本実施形態でも、ストライプ幅が変化する領域を2箇所設けている。
本実施形態に係る共振器長が1500μmのストライプ構造を有する半導体レーザ装置において、第1の実施形態と同様に、種々のLS3やLR3の値に対し、LS1やLR1を変化させた場合の高次横モード光と、基本横モード光の放射損の見積もりを行い、LS1とLR1に対し、必要な長さの見積もりを行った。その計算結果を図15(a)〜図15(d)に示す。図15(a)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ装置の赤外レーザにおける高次横モード光の放射損の計算結果を示す図であり、図15(b)は、同半導体レーザ装置の赤外レーザにおける基本横モード光の放射損の計算結果を示す図である。また、図15(c)は、同半導体レーザ装置の赤色レーザにおける高次横モード光の放射損の計算結果を示す図であり、図15(d)は、同半導体レーザ装置の赤色レーザにおける基本横モード光の放射損の計算結果を示す図である。
まず、高次横モード光に対する計算結果について、図15(a)及び図15(c)を用いて説明する。なお、図15(a)及び図15(c)において、破線で示す線は、前述と同様に、図4(b)に示すようなテーパストライプ構造を有する比較例に係る半導体レーザ装置における高次横モード光の放射損の計算結果を示している。
図15(a)及び図15(c)に示すように、LS3及びLR3を長くすると、赤色レーザ及び赤外レーザのいずれにおいても、高次横モード光の放射損が増大することが分かる。これは、ストライプ幅の狭い第一リア側領域45及び第二リア側領域55では、高次横モード光がリッジ部のストライプ外へ放射されやすくなり、放射損が大きくなるためである。
また、図15(a)に示す赤外レーザと図15(b)に示す赤色レーザとを比べると、赤色レーザの方が赤外レーザよりも、高次横モード光の放射損が小さいことが分かる。これは、赤色レーザの方が赤外レーザよりもリッジ部内外の実効屈折率差(ΔN)が大きく、ストライプ幅の狭い領域において高次横モード光が伝搬しやすくなり、放射損が相対的に小さくなるためである。
また、図15(a)及び図15(c)に示すように、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ装置と、ストライプ幅が変化する領域が一箇所のみからなる比較例に係る半導体レーザ装置とについて、同じLS1、同じLS3、同じLR1又は同じLR3で比べると、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ装置の方が、比較例に係る半導体レーザ装置よりも、高次横モード光の放射損を大きくできることが分かる。
次に、基本横モード光に対する計算結果について、図15(b)及び図15(d)を用いて説明する。図15(b)に示すように、赤外レーザにおける基本横モード光については、LS1を200μmから600μmまで、LS3を380μmから780μmまで変化させても、放射損は3%程度以内の小さな値に抑制することが可能であることが分かる。また、図15(d)に示すように、赤色レーザにおける基本横モード光については、LR1を200μmから600μmまで、LS3を380μmから780μmまで変化させても、放射損は4%程度以内の小さな値に抑制することが可能であることが分かる。
ここで、リッジ部におけるストライプ幅が最も広い領域である第一フロント側領域41と第二フロント側領域51におけるストライプ方向長さLR1及びLS1について考える。
LR1及びLS1を長くすると、リッジ部のストライプの面積が大きくなるため、素子の直列抵抗を小さくすることができ、動作電圧を低減することができる。しかしながら、LR1及びLS1を長くすることにより、図15(a)〜(d)に示すように、基本横モード光及び高次横モード光の放射損失も小さくなる。高次横モード光の放射損が小さくなると、導波路を伝搬する高次横モード光と基本横モード光とが結合し、FFPの変形及び光軸の変動につながる。従って、あまりにLR1及びLS1を長くすることは好ましくない。
逆に、LR1及びLS1を短くすると、リッジ部のストライプの面積が小さくなるため、素子の直列抵抗が大きくなり、動作電圧の増大や高温動作時の動作電流値の増大、熱飽和レベルの低下いった高温特性の劣化につながる。
従って、LR1とLS1とは、高次横モード光の放射損をできるだけ大きくしつつ、素子の直列抵抗の増大による高温特性の劣化を招かない範囲に設定する必要がある。
ここで、共振器長が1500μmの場合の赤外レーザにおいては、LS3が380μmから780μmの範囲で、LS1を200μmから600μmまで変化させた場合、図15(a)に示すように、高次横モード光の放射損は85%以上の大きな値となり、また、図15(b)に示すように、基本横モード光の放射損は3%以下の小さな値を得ることが可能となる。従って、赤外レーザについては、LS1を共振器長の13%から40%の範囲では、高次横モード光に対しては85%以上の放射損、また、基本横モード光に対しては3%以下の小さな放射損を有する導波路を得ることができる。
一方、赤色レーザでは、赤外レーザと比較して高次横モード光の放射損が小さくなるために、LR1の長さを短くする必要がある。高次横モード光の放射損は、大きくしたほうが高次横モード光の伝搬を抑制することができ、FFPの乱れや光軸の変動を抑制することが可能となる。
前述のように、高次横モード光の減衰率を高めつつ、素子の直列抵抗の増大を防止するためには、LR3の長さを共振器長の35%から55%の範囲、つまり、共振器長が1500μmの場合においては、525μm以上、825μm以下にする必要がある。
ここで、LR3が525μmにおいて高次横モード光の放射損を40%以上とするためには、LR1を150μm以下、つまり、LR1を共振器長の10%以下とする必要がある。また、LR1を最大600μmまで大きくしても、高次横モード光の放射損を40%以上とするためにはLR3の大きさは550μm以上、つまり、LR3を共振器長の大きさの37%以上とする必要がある。
さらに、赤外レーザの高次横モード光の放射損は、LS1が600μm以下(つまり共振器長の40%以下)の長さでは、LS3を380μmから780μmの範囲(つまりLS3が共振器長の25%以上52%以下の範囲)では、放射損の大きさは85%以上となる。
そこで、LR1<LS1≦600μmの関係が成立するように、LR1及びLS1を決めることにより、赤色レーザ及び赤外レーザのいずれにおいても、リッジ部のストライプ面積を、可能な限り大きくすることができる。この結果、赤色レーザ及び赤外レーザ共に、可能な限り素子抵抗が低減され、動作電圧が小さくなるために、高い熱飽和レベル及び低い高温動作電流値を実現することができる。さらに、上記関係を満たすように、LR1及びLS1を決めることにより、赤色レーザ及び赤外レーザ共に、高次横モード光の放射損失を可能な限り大きくできるため、FFP乱れ及び光軸変動を低減することができ、また、高いキンクレベルを得ることが可能となる。
具体的に、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ装置における赤外レーザの構造では、図15(a)の白丸で表示する値、すなわち、LS1は570μmとし、LS3は580μmとしている。また、その他の領域については、LSF1は100μm、LS2は150μm、LSF2は100μmとしている。また、WS1は4.0μm、WS2は2.95μm、WS3は1.9μmとした。
赤外レーザにおけるリッジ部の構造をこのように構成することにより、高次横モード光の放射損失は89%となり、高い放射損失の値を得ることができるとともに、基本横モード光の放射損失は1.5%となり、低い放射損失の値を得ることができる。
また、本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ装置における赤色レーザの構造では、図15(c)の白丸で表示する値、すなわち、LR1は400μmとし、LR3は735μmとしている。また、その他の領域については、LRF1は50μm、LR2は165μm、LRF2は50μmとし、さらに、WR1は3.25μm、WR2は2.575μm、WR3は1.9μmとしている。
赤色レーザにおけるリッジ部の構造をこのように構成することにより、高次横モード光の放射損失は55%となり、高い放射損失の値を得ることができるとともに、基本横モード光の放射損失は3%となり、低い放射損失の値を得ることができる。
なお、このように構成される本実施形態に係る半導体レーザ装置におけるリッジ部のストライプ構造においては、LR1<LS1、LR3>LS3の関係が成立している。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ装置について説明する。
本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ装置は、基本的には、上述の本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置と同様の構成であり、第1の実施形態の構造に対して共振器長を長くし、共振器長を2200μmとしたものである。従って、本実施形態に係る半導体レーザ装置の断面構造は、図1に示す構造と同様であり、また、リッジ部のストライプ構造は図2に示す構造と同様であるので、本実施形態では、図1及び図2に示す符号を用いて説明を行う。なお、本実施形態でも、ストライプ幅が変化する領域を2箇所設けている。
本実施形態に係る共振器長が2200μmのストライプ構造を有する半導体レーザ装置において、第1の実施形態と同様に、種々のLS3やLR3の値に対し、LS1やLR1を変化させた場合の高次横モード光と、基本横モード光の放射損の見積もりを行い、LS1とLR1に対し、必要な長さの見積もりを行った。その計算結果を図16(a)〜図16(d)に示す。図16(a)は、本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ装置の赤外レーザにおける高次横モード光の放射損の計算結果を示す図であり、図16(b)は、同半導体レーザ装置の赤外レーザにおける基本横モード光の放射損の計算結果を示す図である。また、図16(c)は、同半導体レーザ装置の赤色レーザにおける高次横モード光の放射損の計算結果を示す図であり、図16(d)は、同半導体レーザ装置の赤色レーザにおける基本横モード光の放射損の計算結果を示す図である。
まず、高次横モード光に対する計算結果について、図16(a)及び図16(c)を用いて説明する。なお、図16(a)及び図16(c)において、破線で示す線は、前述と同様に、図4(b)に示すようなテーパストライプ構造を有する比較例に係る半導体レーザ装置における高次横モード光の放射損の計算結果を示している。
図16(a)及び図16(b)に示すように、LS3及びLR3を長くすると、赤色レーザ及び赤外レーザのいずれにおいても、高次横モード光の放射損が増大することが分かる。これは、ストライプ幅の狭い第一リア側領域45及び第二リア側領域55では、高次横モード光がリッジ部のストライプ外へ放射されやすくなり、放射損が大きくなるためである。
また、図16(a)に示す赤外レーザと図16(b)に示す赤色レーザとを比べると、赤色レーザの方が赤外レーザよりも、高次横モード光の放射損が小さいことが分かる。これは、赤色レーザの方が赤外レーザよりもリッジ部内外の実効屈折率差(ΔN)が大きく、ストライプ幅の狭い領域において高次横モード光が伝搬しやすくなり、放射損が相対的に小さくなるためである。
また、図16(a)及び図16(c)に示すように、本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ装置と、ストライプ幅が変化する領域が一箇所のみからなる比較例に係る半導体レーザ装置とについて、同じLS1、同じLS3、同じLR1又は同じLR3で比べると、本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ装置の方が、比較例に係る半導体レーザ装置よりも、高次横モード光の放射損を大きくできることが分かる。
次に、基本横モード光に対する計算結果について、図16(b)及び図16(d)を用いて説明する。図16(b)に示すように、赤外レーザにおける基本横モード光については、LS1を200μmから600μmまで、LS3を380μmから780μmまで変化させても、放射損は4%程度以内の小さな値に抑制することが可能であることが分かる。また、図16(d)に示すように、赤色レーザにおける基本横モード光については、LR1を200μmから600μmまで、LS3を380μmから780μmまで変化させても、放射損は4%程度以内の小さな値に抑制することが可能であることが分かる。
ここで、リッジ部におけるストライプ幅が最も広い領域である第一フロント側領域41と第二フロント側領域51におけるストライプ方向長さLR1及びLS1について考える。
LR1及びLS1を長くすると、リッジ部のストライプの面積が大きくなるため、素子の直列抵抗を小さくすることができ、動作電圧を低減することができる。しかしながら、LR1及びLS1を長くすることにより、図16(a)〜(d)に示すように、基本横モード光及び高次横モード光の放射損失も小さくなる。高次横モード光の放射損が小さくなると、導波路を伝搬する高次横モード光と基本横モード光とが結合し、FFPの変形及び光軸の変動につながる。従って、あまりにLR1及びLS1を長くすることは好ましくない。
逆に、LR1及びLS1を短くすると、リッジ部のストライプの面積が小さくなるため、素子の直列抵抗が大きくなり、動作電圧の増大や高温動作時の動作電流値の増大、熱飽和レベルの低下いった高温特性の劣化につながる。
従って、LR1とLS1とは、高次横モード光の放射損をできるだけ大きくしつつ、素子の直列抵抗の増大による高温特性の劣化を招かない範囲に設定する必要がある。
ここで、共振器長が2200μmの場合の赤外レーザにおいては、LS3が380μmから780μmの範囲で、LS1を200μmから600μmまで変化させた場合、図16(a)に示すように、高次横モード光の放射損は92%以上の大きな値となり、また、図16(b)に示すように、基本横モード光の放射損は4%以下の小さな値を得ることが可能となる。従って、赤外レーザについては、LS1を共振器長の9%から27%の範囲では、高次横モード光に対しては92%以上の放射損、また、基本横モード光に対しては4%以下の小さな放射損を有する導波路を得ることができる。
一方、赤色レーザでは、赤外レーザと比較して高次横モード光の放射損が小さくなるために、LR1の長さを短くする必要がある。高次横モード光の放射損は、大きくしたほうが高次横モード光の伝搬を抑制することができ、FFPの乱れや光軸の変動を抑制することが可能となる。
前述のように、高次横モード光の減衰率を高めつつ、素子の直列抵抗の増大を防止するためには、LR3の長さを共振器長の35%から55%の範囲、つまり、共振器長が2200μmの場合においては、770μm以上、1210μm以下にする必要がある。
ここで、LR3が770μmにおいては、LR1が700μmの長さであっても高次横モード光の放射損は60%以上の大きな値を得ることができる。つまり、LR3が共振器長の35%以上あれば、LR1は共振器長の31%程度あっても高次横モード光の放射損は60%以上の大きな値を得ることができる。
また、LR1を最大700μmまで大きくしても、高次横モード光の放射損を40%以上とするためには、LR3の大きさは600μm以上、つまり、共振器長の大きさの27%以上とする必要がある。
さらに、赤外レーザの高次横モード光の放射損は、LS1が700μm以下(つまり共振器長の32%以下)の長さでは、LS3を380μmから780μmの範囲(つまりLS3が共振器長の17%以上35%以下の範囲)では、放射損の大きさは95%以上となる。
そこで、LR1<LS1≦700μmの関係が成立するように、LR1及びLS1を決めることにより、赤色レーザ及び赤外レーザのいずれにおいても、リッジ部のストライプ面積を、可能な限り大きくすることができる。この結果、赤色レーザ及び赤外レーザ共に、可能な限り素子抵抗が低減され、動作電圧が小さくなるために、高い熱飽和レベル及び低い高温動作電流値を実現することができる。さらに、上記関係を満たすように、LE1及びLS1を決めることにより、赤色レーザ及び赤外レーザ共に、高次横モード光の放射損失を可能な限り大きくできるため、FFP乱れ及び光軸変動を低減することができ、また、高いキンクレベルを得ることが可能となる。
具体的に、本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ装置における赤外レーザの構造では、図16(a)の白丸で表示する値、すなわち、LS1は740μmとし、LR3は580μmとしている。また、その他の領域については、LSF1は100μm、LS2は150μm、LSF2は100μmとしている。また、WS1は4.0μm、WS2は2.95μm、WS3は1.9μmとした。
赤外レーザにおけるリッジ部の構造をこのように構成することにより、高次横モード光の放射損失は95%となり、高い放射損失の値を得ることができるとともに、基本横モード光の放射損失は1%となり、低い放射損失の値を得ることができる。
また、本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ装置における赤色レーザの構造では、図16(c)の白丸で表示する値、すなわち、LR1は520μmとし、LR3は735μmとしている。また、その他の領域については、LRF1は50μm、LR2は165μm、LRF2は50μmとし、さらに、WR1は3.25μm、WR2は2.575μm、WR3は1.9μmとしている。
赤色レーザにおけるリッジ部の構造をこのように構成することにより、高次横モード光の放射損失は70%となり、高い放射損失の値を得ることができるとともに、基本横モード光の放射損失は2%となり、低い放射損失の値を得ることができる。
なお、このように構成される本実施形態に係る半導体レーザ装置におけるリッジ部のストライプ構造においては、LR1<LS1、LR3>LS3の関係が成立している。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る半導体レーザ装置について、図17を用いて説明する。図17は、本発明の第4の実施形態に係る半導体レーザ装置の上面図である。
上述の本発明の第1〜第3の実施形態に係る半導体レーザ装置では、リッジ部のストライプ構造が、ストライプ幅の変化する領域が2箇所のみの構造であったが、本実施形態に係る半導体レーザ装置のリッジ部では、図17に示すように、ストライプ幅の変化する領域を3箇所にしている。なお、本実施形態に係る半導体レーザ装置の構成要素は、第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の構成要素と基本的には同じであるので、同じ構成要素には同じ符号を付している。
図17に示すように、第1〜第3の実施形態と同様に、本実施形態に係る半導体レーザ装置でも、リッジ部のストライプ構造は、LR1<LS1、LR3>LS3の関係を有している。そして、本実施形態に係る半導体レーザ装置では、共振器の前端面10aから後端面10bに向かって、前端面10aのストライプ幅WR1及びWS1から後端面10bのストライプ幅WR3及びWS3へ変化する間において、ストライプ幅が一定である中間領域が2箇所存在する。
すなわち、本実施形態では、赤色レーザ1Aにおけるリッジ部40Aは、ストライプ幅が一定の領域であって第一フロント側領域41側の領域である第一フロント側第一中間領域43aと、ストライプ幅が第一フロント側第一中間領域43aよりも小さく且つ幅が一定である領域であって第一リア側領域45側の領域である第一リア側第一中間領域43bとを備える。さらに、赤色レーザ1のリッジ部40Aは、第一フロント側第一中間領域43aと第一リア側第一中間領域43bとの間に、新たなストライプ幅変化領域として、テーパ角がθrmである第一中間ストライプ幅変化領域46を備える。
また、赤外レーザ2Aにおけるリッジ部50Aは、ストライプ幅が一定の領域であって第二フロント側領域51側の領域である第二フロント側第二中間領域53aと、ストライプ幅が第二フロント側第二中間領域53aよりも小さく且つ幅が一定である領域であって第二リア側領域55側の領域である第二リア側第二中間領域53bとを備える。さらに、赤外レーザ2のリッジ部50Aは、第二フロント側第二中間領域53aと第二リア側第二中間領域53bとの間に、新たなストライプ幅変化領域として、テーパ角がθsmである第二中間ストライプ幅変化領域56を備える。
ここで、赤色レーザ1Aのリッジ部40Aにおけるテーパ角θrmと赤外レーザ2Aのリッジ部50Aにおけるテーパ角θsmとは、前述のように、θrmについては0.6°以下、θsmについては0.45°以下とすることにより、ストライプ幅が最も広いフロント側領域からストライプ幅が最も狭いリア側領域にかけてのストライプ幅の変化のしかたが、ストライプ幅が変化する領域が一箇所のみであるテーパストライプ構造の比較例に係る半導体レーザ装置におけるストライプ幅の変化のしかたに近づいていく。このため、ストライプ幅が変化するストライプ幅変化領域における基本横モード光に生じる導波路損失を低減することが可能である。この結果、第1〜第3の実施形態と比べて、さらに、温度特性を向上させることが可能となる。
なお、本実施形態では、赤色レーザ及び赤外レーザの各リッジ部に3箇所のストライプ幅変化領域を設けたが、赤色レーザ及び赤外レーザのどちらか一方においてストライプ幅変化領域を3箇所設けても構わないし、また、ストライプ幅変化領域は4箇所以上設けても構わない。
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る半導体レーザ装置について、図18を用いて説明する。図18は、本発明の第5の実施形態に係る半導体レーザ装置の上面図である。
通常、半導体レーザ装置の共振器は、端面をへき開して素子分離することにより形成する。この場合、へき開位置は、素子作成工程のばらつき、又は、へき開位置の精度等により変動が生じる。ここで、半導体レーザ装置における前端面のストライプ幅は、その大きさにより水平方向FFPの半値全幅に影響を及ぼすことから、前端面側のストライプ幅一定領域のストライプ方向長さは、へき開位置のばらつき等の大きさを考慮して決定することが好ましい。例えば、へき開位置のばらつきは、最低20μm以上、好ましくは30μm以上考慮することが好ましい。
一方、第1〜第4の実施形態において説明したとおり、本発明は、共振器方向におけるストライプ幅の変化を考えた場合、前端面側の第一フロント側領域及び第二フロント側領域のストライプ幅が、それぞれ後端面側の第一リア側領域及び第二リア側領域のストライプ幅よりも広くなるように構成されている。
従って、上述のように、へき開分離して素子形成をする場合、本実施形態に係る半導体レーザ装置のように、リッジ部のストライプ構造が、図18に示すような構造となる場合がある。すなわち、本実施形態に係る半導体レーザ装置のリッジ部は、後端面10b側近傍の領域においてストライプ幅が前端面10a側のストライプ幅と同一となるように構成されるものであり、ストライプ幅の大きさが不連続に増加する部分を有する。
具体的には、図18に示すように、赤色レーザ1Bのリッジ部40Bは、第一リア側領域45と後端面10bとの間に、ストライプ幅がWR1で一定で、ストライプ方向長さがLREの領域である第一不連続領域47を備える。また、赤外レーザ2Bのリッジ部50Bは、第二リア側領域55と後端面10bとの間に、ストライプ幅がWS1で一定で、ストライプ方向長さがLSEの領域である第二不連続領域57を備える。この場合、第一リア側領域45と第一不連続領域47との間で、また、第二リア側領域55と第二不連続領域57との間で、ストライプ幅が不連続に変化するので、この不連続部分において導波路損失が発生する。なお、本実施形態では、第一不連続領域47のストライプ方向長さLREと、第二不連続領域57のストライプ方向長さLSEとは、30μm以下とした。
このように、本実施形態では、不連続部分において導波路損失が発生する。しかしながら、第一不連続領域47及び第二不連続領域57のストライプ方向長さが30μm以下であるので、導波光が、前端面10a側から後端面10bに向かって入射し、後端面10bで反射し、再び第一リア側領域45又は第二リア側領域55に入射しても、その光路長は60μm以下と短い。このため、導波光の形状はストライプ幅に応じて対して大きく変形することはなく、後端面10bで反射した導波光が第一リア側領域45又は第二リア側領域55に入射する際に受ける導波路損失は小さくなる。
従って、図18に示すように、後端面10b側に、ストライプ幅がストライプ方向(共振器方向)に対して不連続に変化するように、ストライプ幅が前端面10aのストライプ幅と同一でストライプ方向長さが30μm以下の領域を設けても構わない。
これにより、2波長レーザのストライプ構造を有する半導体レーザ装置を形成する場合において、へき開位置の共振器方向のばらつきによるストライプ幅の変化を無くすために、ストライプを各素子ごとに共振器方向に対して左右にずらすといった工程が不要となるので、素子作製工程を簡略化することが可能となる。また、素子の幅もストライプを左右ずらす距離の分だけ狭くすることが可能となり、一枚のウェハから作製可能な素子の数を大きくすることができ、素子作製コストを低減することができる。
以上、本発明に係る半導体レーザ装置について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、又は異なる実施形態おける構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
例えば、上記の実施形態では、共振器長が、1500μm、1700μm、2200μmの半導体レーザ装置を用いて、赤色レーザ及び赤外レーザ共に、可能な限り素子抵抗と動作電圧が小さく、高い熱飽和レベル、低い高温動作電流値を実現でき、さらに、高次横モード光の放射損失を可能な限り大きくし、FFP乱れ及び光軸変動を低減し、高いキンクレベルを得ることが可能なストライプ構造について説明を行ってきた。そして、それぞれの実施形態において共振器長でのストライプ形状におけるLS1、LR1、LS3及びLR3の共振器長に対する長さの割合の関係又はその大小関係について説明した。しかしながら、これらの実施形態に限定されるものではなく、LS1、LR1、LS3及びLR3の関係は、それぞれの共振器長に対して±50μmの範囲内の近い共振器長を有する半導体レーザ装置に対しても適用することができる。つまり、本発明の第1の実施形態におけるLS1、LR1、LS3及びLR3の共振器長に対する長さの割合の関係又はその大小関係は、共振器長が1650μmから1750μmまでの範囲の半導体レーザ装置に対して適用可能である。また、本発明の第2の実施形態におけるLS1、LR1、LS3及びLR3の共振器長に対する長さの割合の関係又はその大小関係は、共振器長が、1450μmから1550μmまでの範囲の半導体レーザ装置に対して適用可能である。さらに、本発明の第3の実施形態におけるLS1、LR1、LS3及びLR3の共振器長に対する長さの割合の関係又はその大小関係は、共振器長が2150μmから2250μmまでの範囲の半導体レーザ装置に対して適用可能である。
また、上記の本実施形態に係る2波長レーザの半導体レーザ装置において、赤色レーザ1のn型AlGaInPからなるn型クラッド層12、赤色レーザ1のp型AlGaInPからなるp型クラッド層14、赤外レーザ2のn型AlGaInPからなるn型クラッド層22、及び、赤外レーザ2のp型AlGaInPからなるp型クラッド層24におけるAl組成比を、それぞれ、X1、X2、X3、X4とすると、X1<X2、X3<X4、X3<X1とすることが好ましい。ここで、Al組成比Xとは、AlGaInP系材料の原子組成を(AlxGa1-x1-yInyPと表した場合のXのことである。ただし、X、Yは0以上、1以下の実数である。具体的には、X1を0.69とし、X2を0.7とし、X3を0.67とし、X4を0.7とすればよい。
Al組成の関係をこのように設定することにより、赤色レーザ及び赤外レーザ共に、電流注入のためのストライプから光分布を基板10側寄りに形成することが可能となる。この場合、光分布は、リッジ部形状の共振器方向の変化に起因する散乱の影響を受けにくくなるため、共振器方向にテーパ状のストライプ構造を設けたとしても効果的に導波路損失を低減することが可能となる。さらにn型クラッド層のフリーキャリア損失はp型クラッド層のフリーキャリア損失よりも小さいため、さらに導波路損失を小さくすることができる。このため、ストライプ幅の変化する領域が共振器方向に複数箇所形成されていても、基本横モード光の導波路損失の低減効果が大きくなり、導波路損失を小さくすることが可能となる。この結果、スロープ効率が増大し、高温動作時においても低電流動作の2波長レーザを得ることが可能となる。
本発明は、光ディスク装置のピックアップ用光源として、又は、その他の電子装置や情報処理装置などに必要な光源として広く利用することができる。
1、1A、1B、100 赤色レーザ
2、2A、2B、200 赤外レーザ
10、110 基板
10a、110a 前端面
10b、110b 後端面
11、21、111、121 n型バッファ層
12、22、112、122 n型クラッド層
13、23、113、123 活性層
13g1、23g1、113g1、123g1 第一ガイド層
13w1、13w2、13w3、23w1、23w2、113w1、113w2、113w3、123w1、123w2 ウェル層
13b1、13b2、23b1、113b1、113b2、123b1 バリア層
13g2、23g2、113g2、123g2 第二ガイド層
14、24、114、124 p型クラッド層
14a、24a 溝部
15、25、115、125 p型の保護層
16、26、116、126 p型コンタクト層
17、27 電流ブロック膜
31、32 p側電極
33 n側電極
40、40A、40B、50、50A、50B、140、150 リッジ部
41 第一フロント側領域
42 第一フロント側ストライプ幅変化領域
43 第一中間領域
43a 第一フロント側第一中間領域
43b 第一リア側第一中間領域
44 第一リア側ストライプ幅変化領域
45 第一リア側領域
46 第一中間ストライプ幅変化領域
47 第一不連続領域
51 第二フロント側領域
52 第二フロント側ストライプ幅変化領域
53 第二中間領域
53a 第二フロント側第二中間領域
53b 第二リア側第二中間領域
54 第二リア側ストライプ幅変化領域
55 第二リア側領域
56 第二中間ストライプ幅変化領域
57 第二不連続領域
117、127 電流ブロック層
141、151 リア領域

Claims (8)

  1. 前端面から波長λ1の光を発する第一半導体レーザと、前記前端面から波長λ1よりも大きい波長λ2の光を発する第二半導体レーザとが、同一の基板上に集積化された半導体レーザ装置であって、
    前記第一半導体レーザは、
    前記基板の上に形成された第一導電型の第一クラッド層と、
    前記第一クラッド層の上に形成された第一活性層と、
    前記第一活性層の上に形成され、共振器方向に対してストライプ幅が変化する領域を有する第一リッジ部を有する第二導電型の第二クラッド層と、を備え、
    前記第二半導体レーザは、
    前記基板の上に形成された第一導電型の第三クラッド層と、
    前記第三クラッド層の上に形成された第二活性層と、
    前記第二活性層の上に形成され、前記共振器方向に対してストライプ幅が変化する領域を有する第二リッジ部を有する第二導電型の第四クラッド層と、を備え、
    前記第一リッジ部は、
    前記前端面からの長さがLR1でストライプ幅が一定のWR1である第一フロント側領域と、
    前記前端面とは反対側の端面である後端面からの長さがLR3でストライプ幅が一定のWR3である第一リア側領域と、
    前記第一フロント側領域と前記第一リア側領域との間に位置する領域であって、前記前端面側から前記後端面側に向かってストライプ幅が減少するように構成された、少なくとも2つ以上の複数の第一半導体レーザストライプ幅変化領域と、
    前記複数の第一半導体レーザストライプ幅変化領域のうち前記前端面に最も近い領域である第一ストライプ幅変化領域に隣接し、ストライプ幅が一定のWR2である第一中間領域と、を備え、
    前記第二リッジ部は、
    前記前端面からの長さがLS1でストライプ幅が一定のWS1である第二フロント側領域と、
    前記後端面からの長さがLS3でストライプ幅が一定のWS3である第二リア側領域と、
    前記第二フロント側領域と前記第二リア側領域との間に位置する領域であって、前記前端面側から前記後端面側に向かってストライプ幅が減少するように構成された、少なくとも2つ以上の複数の第二半導体レーザストライプ幅変化領域と、
    前記複数の第二半導体レーザストライプ幅変化領域のうち前記前端面に最も近い領域である第二ストライプ幅変化領域に隣接し、ストライプ幅が一定のWS2である第二中間領域と、を備え、
    前記前端面の反射率をRfとし、前記後端面の反射率をRrとすると、
    Rf<Rr、WR1>WR2>WR3、WS1>WS2>WS3、LR1<LS1、LR3>LS3の関係を満たす
    半導体レーザ装置。
  2. 前記複数の第一半導体レーザストライプ幅変化領域及び前記複数の第二半導体レーザストライプ幅変化領域におけるストライプ幅は、前記前端面側から前記後端面側に向かって単調減少する
    請求項1に記載の半導体レーザ装置。
  3. 前記複数の第一半導体レーザストライプ幅変化領域は、前記第一フロント側領域と前記第一リア側領域との間に2箇所のみ設けられており、
    前記複数の第二半導体レーザストライプ幅変化領域は、前記第二フロント側領域と前記第二リア側領域との間に2箇所のみ設けられている
    請求項1又は2に記載の半導体レーザ装置。
  4. 前記第一中間領域の共振器方向の長さをLR2とし、前記第二中間領域の共振器方向の長さをLS2とすると、
    LR2>LS2の関係を満たす
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
  5. 前記λ1が波長660nm帯であって、前記λ2が波長780nm帯である
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
  6. 前記第一リッジ部内外における実効屈折率差をΔN1とし、前記第二リッジ部内外における実効屈折率差をΔN2とすると、
    ΔN1>ΔN2の関係を満たす
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
  7. さらに、WR1<WS1の関係を満たす
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
  8. 前記第一クラッド層、前記第二クラッド層、前記第三クラッド層及び前記第四クラッド層は、AlGaInP系材料で構成されており、それぞれのAl組成を、X1、X2、X3及びX4とすると、
    X1<X2、X3<X4、X3<X1の関係を満たす
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
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